判例全文 line
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【事件名】「シェーン」格安DVD事件
【年月日】平成18年10月6日
 東京地裁 平成18年(ワ)第2908号 著作権侵害差止等請求事件
 (口頭弁論終結日 平成18年9月5日)

判決
原告 パラマウント・ピクチュアズ・コーポレーション
原告 株式会社東北新社
上記両名訴訟代理人弁護士 遠山友寛
同 升本喜郎
同 宮澤昭介
被告 株式会社ブレーントラスト
訴訟代理人弁護士 浅野憲一
同 冨永敏文
被告 有限会社オフィスワイケー
訴訟代理人弁護士 赤沼康弘


主文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由
第1 請求
1 被告株式会社ブレーントラストは、別紙映像素材目録記載の映像素材を販売してはならない。
2 被告株式会社ブレーントラストは、別紙映像素材目録記載の映像素材を廃棄せよ。
3 被告有限会社オフィスワイケーは、別紙商品目録記載のDVD商品を製造、販売してはならない。
4 被告有限会社オフィスワイケーは、別紙商品目録記載のDVD商品の在庫品を廃棄せよ。
5 被告らは、原告株式会社東北新社に対し、連帯して、2355万円及びこれに対する平成18年3月31日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は、別紙映画目録記載の映画(以下「本件映画」という。)を収録した別紙映像素材目録記載の映像素材(以下「本件マスターフィルム」という。)を製造、販売する被告株式会社ブレーントラスト(以下「被告ブレーントラスト」という。)の行為及び本件映画を複製した別紙商品目録記載のDVD商品(以下「本件DVD」という。)を製造、販売する被告有限会社オフィスワイケー(以下「被告オフィスワイケー」という。)の行為について、本件映画の著作権者であると主張する原告パラマウント・ピクチュアズ・コーポレーション(以下「原告パラマウント」という。)が、本件映画の著作権(複製権及び頒布権)を侵害するとして、著作権法112条に基づき、被告ブレーントラストに対して本件マスターフィルムの販売差止め及び廃棄を、被告オフィスワイケーに対して本件DVDの製造、販売の差止め及び廃棄をそれぞれ求め、本件映画に関する日本における恒久的な全メディアの独占的利用権を有すると主張する原告株式会社東北新社(以下「原告東北新社」という。)が、同独占的利用権を侵害する共同不法行為であるとして、民法709条、719条1項に基づき、逸失利益等の損害賠償を求めたのに対し、被告らが、本件映画の著作権は存続期間の満了により消滅している等と主張して争っている事案である。
1 争いのない事実等(証拠によって認定した事実は末尾に当該証拠番号を表記した。)
(1) 当事者
 原告パラマウントは、アメリカ合衆国(以下「米国」という。)に本社を有する映画製作配給を業とする法人である。
 原告東北新社は、映画コンテンツの製作、販売、配給等を主たる目的とする株式会社である。
 被告ブレーントラストは、著作権の存続期間が満了した映画の映像素材の販売等を主たる目的とする株式会社である。
 被告オフィスワイケーは、著作権の存続期間が満了した映画のDVD商品の製造、販売等を業としている有限会社である。
(2) 本件映画の著作権法による保護
 本件映画の著作者は、米国法人である原告パラマウントであり(甲1、2、64、弁論の全趣旨)、本件映画は原告パラマウントにより米国において最初に公表されたが、日本及び米国は、文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約(以下「ベルヌ条約」という。)に加盟しているから、本件映画は日本の著作権法による保護を受け(ベルヌ条約3条(1)、著作権法6条3号)、その保護期間については、日本の法律が適用される(ベルヌ条約7条(8)本文)。
(3) 原告東北新社の本件映画に関する権利
 原告パラマウントは、ヴィ・スミス−リデル・リミテッド(以下「スミス社」という。)に対して、本件映画に関する日本における恒久的な全メディアの独占的利用権を与え、原告東北新社は、昭和48年4月26日、スミス社から、上記権利の譲渡を受けた(甲2、3)。
(4) 被告らの行為
 被告ブレーントラストは、本件マスターフィルムを製造し、これを被告オフィスワイケーに販売し、被告オフィスワイケーは、本件マスターフィルムを基に、本件DVDを製造し、販売している。
(5) 映画の著作物の著作権の保護期間についての規定
ア 旧著作権法(明治32年法律第39号)における保護期間
 旧著作権法22条の3は、「活動写真術又ハ之ト類似ノ方法ニ依リ製作シタル著作物・・・ノ保護ノ期間ニ付テハ独創性ヲ有スルモノニ在リテハ第三条乃至第六条・・・ノ規定ヲ適用シ」と、同法6条は、「官公衙学校社寺協会会社其ノ他団体ニ於テ著作ノ名義ヲ以テ発行又ハ興行シタル著作物ノ著作権ハ発行又ハ興行ノトキヨリ三十年間継続ス」と、それぞれ規定し、独創性のある映画の著作物のうち、団体の著作名義で発行又は興行した著作物の著作権の保護期間は30年としていた。なお、旧著作権法下においては、団体名義の映画の著作物の著作権の保護期間は、2回の暫定的な延長措置(昭和42年法律第87号、昭和44年法律第82号)により33年に延長されている。
イ 昭和45年法律第48号(以下「45年改正法」という。)により改正され、平成15年法律第85号(以下「本件改正法」という。)による改正前の著作権法(以下「改正前著作権法」又は「現行の著作権法」という。)における保護期間旧著作権法は、45年改正法により全部が改正され、現行の著作権法(昭和45年法律第48号)として、昭和46年1月1日から施行された(45年改正法附則1条)。
 改正前著作権法54条1項は、「映画の著作物の著作権は、その著作物の公表後五十年・・・を経過するまでの間、存続する。」と規定し、映画の著作物の著作権の保護期間を公表後50年とした。
 なお、45年改正法附則2条1項は、「改正後の著作権法・・・中著作権に関する規定は、この法律の施行の際現に改正前の著作権法・・・による著作権の全部が消滅している著作物については、適用しない。」と規定し、昭和46年1月1日の時点で著作権が消滅していない著作物について改正前著作権法を適用することとした。
ウ 本件改正法により改正された著作権法(以下「改正著作権法」という。)における保護期間
 改正著作権法54条1項は、「映画の著作物の著作権は、その著作物の公表後七十年・・・を経過するまでの間、存続する。」と規定し、映画の著作物の著作権の保護期間を70年に延長した。
 本件改正法は、平成16年1月1日から施行された(同法附則1条)。
 そして、同附則2条は「改正後の著作権法・・・第五十四条第一項の規定は、この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物について適用し、この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が消滅している映画の著作物については、なお従前の例による。」と規定し、平成16年1月1日の時点で著作権が消滅していない著作物について改正著作権法を適用することとした。
2 争点
(1) 本件映画についての改正著作権法54条1項の適用の有無−本件映画の著作権は存続期間満了により消滅しているか。
(2) 被告らの原告東北新社に対する不法行為の成否
(3) 原告東北新社の損害の発生の有無及びその額
3 争点に対する当事者の主張
(1) 争点(1)(本件映画についての改正著作権法54条1項の適用の有無−本件映画の著作権は存続期間満了により消滅しているか。)について
(原告ら)
ア 本件映画は、昭和28年5月27日に米国において公表された。このことは、本件映画の著作権登録証には、「1953年5月27日に米国において公表された」と記載されていることから明らかである。
 これに対し、被告ブレーントラストは、原告パラマウントが米国で販売している本件映画のDVD及びそのパッケージに、「COPYRIGHT(C)1952、(C)RENEWED1980」及び「1952/COLOR/117MIN」という表示があることを根拠として、本件映画が公表された年は昭和27年であると主張する。
 しかしながら、上記表示の「1952」という数字は本件映画の公表日を示すものではない。すなわち、万国著作権保護条約は、無法式主義国において発行された著作物について、適切な(C)表示を付すことを条件に、方式主義国においても保護することを目的として成立したものであり、当時方式主義国であった米国においては、公表された著作物を他国において保護するために、万国著作権保護条約に基づき(C)表示を付する必要はなく、本件映画のDVD及びそのパッケージに付された上記表示は、1909年米国著作権法10条、19条に基づくものである。そして、同法10条は、資格のある者は誰でも同法に基づき要求される著作権表示を伴った公表をなすことにより、著作権を取得することができると規定し、同法19条は、著作権表示の具体的方法について、著作権者の名前を付した上で「Copyright」、「Copr.」又は「(C)」を表示することを要求しているが、映画の著作物には公表年の表示を要求していないから、本件映画の著作権表示としても、公表年を表示する法的義務はなく、原告パラマウントは、あくまでも任意に「1952」の表示を付したのである。
 したがって、被告ブレーントラストの上記主張は理由がない。
イ 上記アのとおり、本件映画の公表された日は昭和28年5月27日であるから、改正前著作権法54条1項における本件映画の保護期間は、本件映画の公表年の翌年である昭和29年1月1日から起算して、その後50年間、すなわち、平成15年12月31日午後12時までとなる(改正前著作権法54条1項、57条)。
 ところで、平成15年12月31日午後12時は、本件改正法の施行日である平成16年1月1日午前零時と同時刻であるから、本件映画の著作権は本件改正法の施行の際に存していることになり、本件改正法附則2条により、改正著作権法54条1項が適用される。したがって、本件映画の著作権の保護期間は、同項により、公表後70年、すなわち、平成35年12月31日午後12時まで延長された。
ウ 上記のとおり、本件映画は、本件改正法附則2条の「この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物」に当たるが、この点について、以下補足して説明する。
(ア) 旧著作権法から現行の著作権法への移行の際における解釈の考慮
a 旧著作権法は、制定時は、著作者の生前に公表された実名の著作物の著作権の保護期間を、その著作者の死後30年間としていたが、昭和37年に旧著作権法から現行の著作権法への改正作業を開始した時点で、梶井基次郎(昭和7年死亡)や宮沢賢治(昭和8年死亡)などが著作権を有する著作物の著作権の保護期間が満了しかかっていたため、上記改正作業中に著作権の保護期間が満了する著作物の著作権者を救済することを目的として、以下のとおり、合計4回の暫定的な著作権の保護期間の延長措置がとられた。
@ 第1次暫定延長措置
 著作権の保護期間を3年間延長する第1次暫定延長措置が昭和37年4月5日に施行され、これにより、昭和7年に死亡した作家(梶井基次郎など)の著作権は、本来であれば、昭和37年12月31日で保護期間が満了するところ、昭和40年12月31日まで保護期間が延長された。
A 第2次暫定延長措置
 第1次暫定延長措置により保護された著作物の著作権の保護期間を2年間延長する第2次暫定延長措置が昭和40年5月18日に施行され、これにより、昭和7年に死亡した作家(梶井基次郎など)の著作権は、本来であれば、第1次暫定延長措置により昭和40年12月31日で保護期間が満了するところ、昭和42年12月31日まで保護期間が延長された。
B 第3次暫定延長措置
 第2次暫定延長措置により保護された著作物並びに従来暫定延長措置が採られていなかった団体名義の著作物及び写真の著作物の著作権の保護期間を2年間延長した第3次暫定延長措置が昭和42年7月27日に施行され、これにより、昭和7年に死亡した作家(梶井基次郎など)の著作権は、本来であれば、昭和42年12月31日で保護期間が満了するところ、昭和44年12月31日まで保護期間が延長された。
C 第4次暫定延長措置
 第3次暫定延長措置により保護された著作物の著作権の保護期間を1年間延長する第4次暫定延長措置が昭和44年12月8日に施行され、これにより、昭和7年に死亡した作家(梶井基次郎など)の著作権は、本来であれば、昭和44年12月31日で保護期間が満了するところ、昭和45年12月31日まで保護期間が延長された。
b 45年改正法は、昭和46年1月1日から施行されたが、同法附則2条1項において、「改正後の著作権法中著作権に関する規定は、この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権の全部が消滅している著作物については、適用しない。」と規定された。
 そして、上記の合計4回の暫定延長措置により著作権保護期間が随時延長された昭和7年に死亡した作家の著作物の著作権は、その保護期間が満了する昭和45年12月31日午後12時は、45年改正法の施行日である昭和46年1月1日午前零時と同時刻であるから、同法の施行の際現に「全部が消滅してい」ないものとみなされ、現行の著作権法により50年の著作権保護期間の適用を受けて、昭和57年まで保護されることとなった。
 なお、このように、旧著作権法における著作権の保護期間が昭和45年12月31日午後12時までとされていた著作物は、昭和45年12月31日午後12時と45年改正法の施行日である昭和46年1月1日午前零時とが同時刻であるから、現行の著作権法の適用を受けるという解釈は、45年改正法制定当時の文部省著作権課長である佐野文一郎氏や極めて著名な学者が支持している解釈であり、これに対して異論を唱える学説等は存在しない。
c ところで、本件改正法の施行日は平成16年1月1日午前零時であり、昭和28年に公表された本件映画の著作権の旧著作権法における保護期間は平成15年12月31日午後12時までなのであるから、旧著作権法から現行の著作権法への移行の場合と同様に、本件映画の著作権の保護期間は、改正著作権法の適用を受けて、平成35年12月31日まで延長されることとなるのは至極当然の解釈である。
 なぜなら、著作権の保護期間を50年に延長することを主たる改正の内容の一つとする45年改正法も、映画の著作物の著作権の保護期間を70年に延長することを主たる改正の内容の一つとする本件改正法も、いずれも、その改正当時、著作権の保護期間が満了しそうになる著作物を救済することをその改正の主たる目的としている点で共通しており、本件改正法の解釈が45年改正法の解釈と異なる必要性はまったく存在しないからである。
 また、本件改正法の解釈が45年改正法の解釈と異なるのであれば、著作権法の改正に基づく著作権の保護期間の延長という同一の法的手続の中で、法的に論理一貫しない解釈が無秩序に混在することになるとともに、万一、昭和28年に公表された映画の著作物の著作権の保護期間が平成15年12月31日で満了しているとなると、昭和28年に公表された映画の著作物は平成35年12月31日まで延長されているとの解釈に基づき現在までに行われていたあらゆる権利処理等について、極めて重大な影響を及ぼすことになる。
(イ) 本件改正法附則2条の文言
 本件改正法附則2条は、「この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物」と規定しているが、このように、同附則が、この法律の施行の「日」ではなく、わざわざ「際」という文言を使用したのは、平成15年側から見れば平成15年12月31日午後12時であり、平成16年側から見れば平成16年1月1日午前零時であるという、同一時点が法律上の二面性を有しているということを表現するためである。
(ウ) 本件改正法の立法者意思
a 本件改正法は、関係省庁等との意見調整等を経て、著作権法を所管する文化庁がその原案を作成し、内閣法制局第2部における審査、国会提出のための閣議決定及び国会による審議を経て、平成15年6月12日、成立した。
 ところで、文化審議会著作権分科会は、著作権制度に関する重要事項を調査審議する権限を付された機関であり、その中の法制問題小委員会は、情報化等に対応した著作者等の権利の在り方及び権利制限の在り方等について検討する権限を付与された機関であるが、上記の立法作業中、同法制問題小委員会において、映画の著作物の著作権保護期間の延長等についての検討がされた。同法制問題小委員会においては、平成14年7月30日ころ、当時、映画製作者連盟の事務局長及び常務理事であったA(以下「A委員」という。)によって作成された「映画著作権の保護期間延長が必要」と題する書面(以下「本件資料1」という。)が配布されたが、本件資料1は、小津安二郎監督の「東京物語」を含む日本映画の黄金期の昭和28年に公表された映画の著作物の著作権保護期間を延長することを意図して作成されたものであり、本件資料1には、「2. 日本映画の黄金期の作品の著作権が、消滅しようとしている。→(別紙資料1.)」と記載され、昭和28年に公表された映画のタイトルのみをリスト化した別紙資料が添付されている。A委員は、同法制問題小委員会において、本件資料1を示して、昭和28年に公表された映画の著作物の著作権保護期間を延長する必要性について説明し、その後、同法制問題小委員会において議論を重ね、最終的に、映画の著作物の著作権保護期間を20年間延長するという結論となった。
 このような経緯からすれば、上記法制問題小委員会が、映画の著作物の著作権保護期間を20年間延長するという結論に至ったのは、昭和28年以降に公表された映画の著作物の著作権保護期間を20年間延長するためであったことは明らかである。
 そして、法制問題小委員会の上記結論を受けて、著作権法を所管する文化庁が本件改正法の原案を作成し、内閣法制局の審査を受けることとなったのである。
b 平成15年4月に、内閣法制局第2部において、著作権担当の参事官が担当の部長に、本件改正法における映画の著作物の著作権保護期間についての経過措置の内容を説明することになっていたが、文化庁は、その説明のための資料として、「平成15年法改正法制局第2部長説明資料」と題する書面(以下「本件資料2」という。)を作成し、実際に、内閣法制局第2部では、著作権担当の参事官が本件資料2を示して担当部長に説明を行った。本件資料2には、「第54条の映画の著作物の保護期間延長の規定が来年(2004年)1月1日に施行される場合、本年(2003年)12月31日まで著作権が存続する著作物については、12月31日の午後12時と1月1日の午前0時は同時と考えられることから、『施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存するもの』として保護期間が延長されることとなる」と明確に記載されているが、本件資料2に記載された「映画の著作物の保護期間についての経過措置」の原案がそのまま第156回国会において「著作権法の一部を改正する法律案」として提出されていることから、内閣法制局が平成15年12月31日の午後12時と平成16年1月1日の午前零時は同時である、すなわち、昭和28年に公表された映画の著作物は、改正著作権法の適用を受けると考えていたことは明らかである。
 そして、上記「著作権法の一部を改正する法律案」が第156回国会による審議を経てそのまま成立していることから、立法者である国会も、平成15年12月31日の午後12時と平成16年1月1日の午前零時は同時である、すなわち、昭和28年に公表された映画の著作物は、改正著作権法の適用を受けると考えていたことも明らかである。
(エ) 本件改正法制定当時の新聞報道
 著作権法を改正して映画の著作物の著作権保護期間を20年間延長すべきか否かについての議論が、文化審議会著作権分科会法制問題小委員会においてされていた平成14年11月ころから、既に、新聞等のマスメディアでは、映画の著作物の著作権保護期間が延長されるか否かが重要なトピックの一つとして扱われており、日本映画の黄金期である1950年代の作品の著作権切れが目前に迫っていること、その中でも特に1953年(昭和28年)に公表された小津安二郎監督の「東京物語」の著作権が消滅する可能性があること、映画の著作物の著作権保護期間を20年間延長するという意向は、松竹、東宝、東映をはじめとする映画会社の強い要望であることなどが報じられていた。
 また、現実に本件改正法が成立した時点においても、映画の著作物の著作権保護期間が延長される契機となったのは「東京物語」であること、したがって、改正著作権法により昭和28年に公表された「東京物語」の著作権保護期間は20年間延長されることが全国的に大々的に報じられた。
(オ) 現に施行された法律の解釈については、所管官庁の解釈をもって政府見解とすることとなっており、著作権法についての解釈は、著作権法についての所管官庁である文化庁著作権課の見解が政府見解となるところ、文化庁著作権課は、昭和28年に公表された映画の著作物にも改正著作権法が適用される旨の見解を採っている。
エ 小括
 したがって、本件映画には、改正著作権法54条1項が適用され、公表後70年、すなわち、平成35年12月31日午後12時まで存続することになるから、消滅していない。
(被告ブレーントラスト)
ア 本件映画が公表された時期について
 原告パラマウントが米国で販売している本件映画のDVDには、「COPYRIGHT(C)1952、(C)RENEWED1980」と、また、同DVD及びそのパッケージには「1952/COLOR/117MIN」との表示があるが、本件映画についてこのような表示がされたのは、万国著作権条約に加盟している米国において、同条約3条が「最初の発行の年と共に(C)の記号を表示する」、「(C)の記号、著作権者の名及び最初の発行の年を適当な場所に掲げなければならない」と規定しているからである。そして、上記の「発行」とは、同条約6条において、「読むこと又は視覚によって認めることができるように著作物を有形的に複製し及びその複製物を公衆に提供することをいう」と規定していることから、著作権法の公表と同義であると解される。
 したがって、本件映画が公表された年は、昭和27年(1952年)である。
イ 仮に、本件映画が昭和28年に公表されたとしても、改正前著作権法による本件映画の著作権の保護期間は、平成15年12月31日に満了するのであるから、本件改正法の施行日である平成16年1月1日には著作権が消滅しており、本件改正法附則2条により、本件映画に対して改正著作権法は適用されない。したがって、いずれにせよ、本件映画の著作権は、平成15年12月31日の終了をもって存続期間が満了しており、既に消滅している。
ウ この点、原告らは、平成15年12月31日午後12時と平成16年1月1日午前零時は同時刻であるから、本件改正法の施行の際、本件映画の著作権は存していた旨主張するが、以下の理由から、原告らの同主張は明らかに誤っている。
(ア) 民法140条は、初日不参入の原則を規定し、端数を切り捨てることを規定しているが、切り捨てる端数のないときは全一日として計算するものとし、ただし書きにより、「ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。」と規定している。これは、民法が1日は午前零時に始まることを明らかにしたものであると解される。
 このように、民法は1日の始まりを午前零時としたのであるから、1日は午前零時を含み、翌日の午前零時、すなわち、当日の午後12時未満となる。
 したがって、12月31日の午後12時は12月31日には含まれず、翌年の1月1日に含まれることになる。
(イ) 仮に、12月31日が午後12時、すなわち、翌年の1月1日午前零時までであるとすると、1月1日午前零時は12月31日でもあり、1月1日でもあることになり不合理である。
 このように1日に当日でもあり翌日でもあるという時間が存在することは、時間の概念、日の概念に矛盾が生じることとなり、かつ、物理、数学の公理、定理に反する。
(被告オフィスワイケー)
 本件映画が昭和28年5月27日に公表されたことは認める。
 しかし、改正著作権法は、本件改正法の施行された日である平成16年1月1日に著作権が消滅していない著作物に適用されるところ、本件映画の著作権の保護期間は平成15年12月31日までであり、この12月31日と平成16年1月1日が重なることはないから、本件映画の著作権は本件改正法の施行時には消滅しており、本件映画に対して改正著作権法は適用されない。
 したがって、本件映画の著作権は、既に消滅している。
(2) 争点(2)(被告らの原告東北新社に対する不法行為の成否)について
(原告東北新社)
 原告パラマウントは、スミス社に対して、本件映画に関する日本における恒久的な全メディアの独占的利用権を与え、原告東北新社は、昭和48年4月26日、スミス社から、上記権利の譲渡を受けた。
 被告ブレーントラストは、本件マスターフィルムを製作し、被告オフィスワイケーに対してこれを販売し、被告オフィスワイケーは、購入した本件マスターフィルムを利用して本件DVDを製造し、販売しており、原告東北新社の有する上記独占的利用権を共同で侵害した。
 そして、平成15年12月31日に著作権の保護期間が満了する映画の著作物は、改正著作権法が適用され、平成35年12月31日まで著作権の保護期間が延長されるということは、本件改正法が施行された当初から広く認識され、この見解に対する異論も公表されていない。したがって、被告らは、本件マスターフィルム及び本件DVDの製造、販売を開始した時点で、本件映画の著作権の保護期間が平成35年12月31日まで延長されたことは認識していたはずであり、原告東北新社の有する上記独占的権利を侵害することに故意があった。仮に、被告らに上記の認識がなかったとしても、本件マスターフィルム及び本件DVDの製造、販売をするに当たって、本件映画がパブリックドメインとなっているか否かについて調査をしなかったことは重過失となるというべきである。また、仮に、本件マスターフィルム及び本件DVDの販売を開始した時点では被告らに故意又は重過失が認められなかったとしても、原告東北新社は、平成17年4月1日以降、たびたび、本件映画がパブリックドメインとなっていないことを警告していたのであるから、被告らには、遅くとも、上記の日以降は故意又は重過失があったというべきである。
 したがって、被告らが本件マスターフィルム及び本件DVDを製造、販売した上記行為は、共同不法行為を構成する(民法719条1項)。
(被告ら)
 争う。
(3) 争点(3)(原告東北新社の損害の発生の有無及びその額)について
(原告東北新社)
ア 主位的主張
 原告東北新社は、昨今、DVDのパッケージ商品の売れ行きが好調なことから、平成17年2月ころ、本件映画のDVDパッケージ商品を少なくとも1万本を、同年秋ころには製造し、販売することを企画した。
 一般に、原告東北新社が、スペシャル版や廉価版を除いたDVDのパッケージ商品を販売する場合の定価は3800円であり、定価の75%の価格(2850円)で小売店又は卸店等の取引先に納品するため、本件映画のDVDパッケージ商品1万本を納品した場合の売上は2850万円となる。そして、本件映画のDVDパッケージ商品の製造原価は合計795万円であるから、原告東北新社が当初の企画どおり、本件映画のDVDのパッケージ商品を製造、販売していたならば、少なくとも2055万円(2850万円−795万円)の利益を得ていたことになる。
 ところが、原告東北新社が本件映画のDVDのパッケージ商品を製造、販売しようとしていた矢先に、被告オフィスワイケーが本件DVDを販売したため、原告東北新社としては、当初購買層としてターゲットにしていた消費者を奪われてしまい、本件映画のDVDパッケージ商品を製造、販売することを中止せざるを得なくなった。
 したがって、被告らが本件マスターフィルムを利用して本件DVDを製造、販売したことにより、原告東北新社には2055万円の逸失利益が発生した。
イ 予備的主張
 原告東北新社は、本件映画に関する日本国内における恒久的な全メディアの独占的利用権を有しているから、原告東北新社の日本国内における法的地位は本件映画の著作権者に準じる地位にあるといえる。したがって、原告東北新社が上記独占的利用権の侵害により被った損害を算定することが極めて困難な本件においては、著作権法114条1項を類推する基礎があるものと考えるべきである。
 そして、被告オフィスワイケーが製造、販売した本件DVDの本数は1万本を下らず、前記アで主張したように、原告東北新社が本件映画のDVDを1万本製造、販売していれば、少なくとも2055万円の利益を得ることができたのであるから、著作権法114条1項による損害額は2055万円となる。
ウ 弁護士費用
 原告東北新社が本件訴訟を遂行するために要する弁護士費用は、300万円を下らない。
(被告ブレーントラスト)
ア 主位的請求に対して
 争う。
 本件映画のDVDが定価980円で1万枚売れたはずであるという原告東北新社の主張は、何ら立証されていない。
 なお、原告東北新社は、著作権が消滅していない映画のDVDを定価1500円で販売しているところ、原告東北新社の主張によれば、原告東北新社の取引先への納入価格は定価の75%であること、DVD1枚当たりの製造原価は795円であることからすると、原告東北新社が本件映画のDVDを販売することにより得られる利益は1枚当たり330円となる。
イ 予備的請求に対して
 争う。
 なお、原告東北新社は、本件映画のDVDの販売価格を3800円としても被告オフィスワイケーが販売した枚数を販売できたかのように主張するが、販売価格を3800円とすれば、本件映画のDVDの販売枚数は少なくなる。
(被告オフィスワイケー)
 争う。
 ただし、被告オフィスワイケーが本件DVDを少なくとも1万枚製造、販売したことは認める(製造した枚数は2万2000枚、販売した枚数は1万9000枚である。)。
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(本件映画についての改正著作権法54条1項の適用の有無−本件映画の著作権は存続期間満了により消滅しているか。)について
(1) 本件映画が公表された年について
 米国著作権局作成の本件映画についての著作権登録証明書(甲1、64)には、「公表された作品の欄(最初に、発売、販売または公開された日付)」に「最初に合衆国で公開された」日付として、「1953年5月27日」と記載されていることから、本件映画は、米国において、昭和28年5月27日に公表されたことが認められる。
 これに対し、被告ブレーントラストは、原告パラマウントが米国で販売している本件映画のDVDには、「COPYRIGHT(C)1952、(C)RENEWED1980」と、また、同DVD及びそのパッケージには「1952/COLOR/117MIN」との表示があり、同表示は、本件映画が1952年に発行されたことを意味することを根拠として、本件映画は昭和27年(1952年)に公表された旨主張するので、この点について検討する。
 確かに、乙第1号証によれば、原告パラマウントが米国で販売している本件映画のDVDには、「COPYRIGHT(C)1952、(C)RENEWED1980」と、また、同DVD及びそのパッケージには「1952/COLOR/117MIN」との表示があることが認められる。
 しかしながら、そもそも、上記のDVD及びそのパッケージにおいて、「1952」との表示が、本件映画が最初に公表された年自体を示す旨の記載はなく、他にこのことを認めるに足りる明確な証拠もない上、上記の著作権登録証明書(甲1、64)には、著作権局の注として、「著作権表示はC 1952年」と記載されていることからすると、著作権表示は1952年とされているものの、本件映画が公表された時期としては、上記のとおり、1953年5月27日と認定されているということができる。そうすると、原告パラマウントが米国内で発売している本件映画のDVDにおいて上記のとおり表示されているとしても、この表示のみから、上記著作権登録証明書の記載の信用性を損なわせることはできないというべきであり、被告ブレーントラストの上記主張は採用できない。
 したがって、本件映画が公表された年は、昭和28年である。
(2) 本件映画の著作権の存続期間(旧著作権法、改正前著作権法)
 本件映画は、上記のとおり、昭和28年に公表されたものであるところ、前記争いのない事実等?記載のとおり、本件映画の公表時に映画の著作物の著作権の保護期間を定めていた旧著作権法は、独創性のある映画の著作物のうち、団体の著作名義で発行又は興行した著作物の著作権は、発行又は興行から30年継続するものと定め(旧著作権法6条、23条の3)、その期間は、著作物を発行又は興行した年の翌年から起算することとしている(旧著作権法9条)。その後、旧著作権法下において、団体名義の映画の著作物の著作権の保護期間は、2回の暫定的な延長措置(昭和42年法律第87号、昭和44年法律第82号)により33年に延長された。さらに、45年改正法が施行され、映画の著作物の著作権は公表後50年を経過するまでの間存続する旨定められた(改正前著作権法54条1項)。同法附則2条1項は、同法の施行の際現に旧著作権法による著作権の全部が消滅している著作物については、改正前著作権法を適用しない旨規定しているから、45年改正法が施行された昭和46年1月1日の時点で著作権が消滅していない著作物については、改正前著作権法を適用することとされた。
 そこで、本件映画についてみると、本件映画は、独創性のある映画の著作物であり、また、原告パラマウントの著作名義で公表された著作物であると認められる(甲1、64、弁論の全趣旨)から、旧著作権法のもとでは、その発行又は興行のとき、すなわち、本件映画が公表された昭和28年の翌年である昭和29年から著作権の保護期間が起算され、その後の延長措置により、著作権の保護期間は昭和29年から33年間となる昭和61年12月31日までとされていた。そうすると、本件映画は、45年改正法施行時にその著作権が消滅していない著作物であり、改正前著作権法54条1項が適用されることとなるから、本件映画の著作権は、公表の翌年である昭和29年から起算して(同法57条)、50年後の末日である平成15年12月31日が終了するまでの間存続することとなった(同法54条1項、民法141条、143条1項)。
(3) 改正著作権法54条1項の適用の有無
 ところで、前記争いのない事実等で判示したとおり、平成16年1月1日から本件改正法が施行され、改正著作権法54条1項は、映画の著作物の著作権の保護期間を公表後70年に延長し、本件改正法附則2条は、「改正後の著作権法・・・第五十四条第一項の規定は、この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物について適用し、この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が消滅している映画の著作物については、なお従前の例による。」と規定しているので、これにより、平成16年1月1日の時点で著作権が消滅していない著作物の著作権存続期間は、70年に延長された。
 本件映画については、上記のとおり、平成15年12月31日の終了をもって著作権の存続期間が満了しており、平成16年1月1日の時点で著作権が消滅しているから、改正著作権法54条1項は適用されないと解される。
 原告らは、改正前著作権法54条1項に基づく本件映画の存続期間の満了点である平成15年12月31日午後12時は、本件改正法が施行された平成16年1月1日午前零時と同時刻であるから、本件映画の著作権は、本件改正法が施行された際存続しており、改正著作権法54条1項が適用されて、同著作権は、公表後70年を経過するまでの間、すなわち、平成35年12月31日まで存続する旨主張するので、以下、この点について検討する。
ア 著作権法における存続期間の解釈
 著作権法における映画の著作物の著作権の存続期間は、年によって定められているから(改正前著作権法54条1項、57条、民法140条)、その期間はその末日の終了により満了し(民法141条)、その期間の認定は日を単位としてされ、一方、改正著作権法の適用の可否の基準となる本件改正法の施行日も日をもって定められており(本件改正法附則1条)、改正著作権法の適用区分の認定も日を単位としてされるところ、このように、日を単位として見れば、平成15年12月31日と本件改正法の施行日である平成16年1月1日とは異なることになり、両者に重なりも認められないというべきであるから、本件改正法が施行された時点では、平成15年12月31日は既に終了しており、この日に著作権の存続期間が満了する映画の著作物は、既に消滅していると解するのが相当である。
 また、著作権法は、保護の対象とする権利の範囲やその権利を侵害することになる行為の範囲を規定し、その権利を侵害する行為について、民事上の差止請求や損害賠償請求の対象とするだけでなく、懲役刑や罰金刑などの刑事上の罰則の対象ともしていることから、著作権法により保護されている権利の範囲やその権利を侵害することになる行為の範囲は一義的に明確にされている必要性が高く、その規定が一義的に明確といえないような場合は、社会一般人に対して不測の損害を与えることのないよう、その解釈も社会一般人が通常読み取ることのできる解釈によるべきものといえる。このような観点から本件改正法附則2条の文言について検討するに、通常、社会一般人が同条項の文言に接した場合、本件改正法の施行日の前日が存続期間の満了日である映画の著作物に対しては同法は適用されないものと解すものと考えられ、原告らの主張するように、本件改正法の施行日である平成16年1月1日の前日である平成15年12月31日の午後12時は平成16年1月1日の午前零時と同時刻であることから、平成15年12月31日に著作権の存続期間が満了する映画の著作物の著作権は平成16年1月1日には消滅していないとの考えに至り、改正著作権法が適用されると解釈する者を想定することは困難であるから、上記附則2条の解釈としても、本件改正法の施行日の前日に著作権の存続期間が満了する映画の著作物には、改正著作権法は適用されないものと解するのが相当である。
イ 他の法令における解釈との整合性
 そして、他の改正法の経過規定に関する附則においても、例えば、所得税法等の一部を改正する法律(平成16年法律第14号)附則1条、17条1項では、同法による改正後の国税通則法70条1項は、平成16年4月1日以後に法人税に係る法定申告期限が到来する法人税について適用し、上記の日前にその期限が到来した法人税については、適用しない旨規定しており、この附則の解釈としては、法定申告期限を同年3月31日とする法人税、すなわち、法定申告期限が同日の終了によって到来する法人税に対しては、上記改正後の国税通則法70条1項は適用されないと解されるところ、本件改正法附則2条についての原告らの前記解釈を前提とすると、同年3月31日の午後12時は、同年4月1日の午前零時と同時刻であるから、同年4月1日の時点では同年3月31日は終了しておらず、したがって、上記法律の施行日前に上記申告期限は到来していないとして、上記法人税に対しても改正後の国税通則法70条1条が適用されるとする解釈も可能となるが、このような解釈が不当であることは明らかである。
 また、例えば、平成16年法律第84号により行政事件訴訟法が改正され(施行日は平成17年4月1日)、同法附則4条は、「この法律の施行前にその期間が満了した処分又は裁決に関する訴訟の出訴期間については、なお従前の例による。」と規定しているが、同附則4条の解釈としては、平成17年3月31日に上記改正前の行政事件訴訟法14条1項の規定による出訴期間が満了した取消訴訟等については上記改正後の行政事件訴訟法14条1項の適用はないと解されるところ、本件改正法附則2条についての原告らの前記解釈を前提とすると、同年3月31日の午後12時は、同年4月1日の午前零時と同時刻であるから、同年4月1日の時点では同年3月31日は終了しておらず、したがって、上記改正法の施行日前に上記取消訴訟等の出訴期間は満了していないとして、同訴訟に対しても上記改正後の行政事件訴訟法14条1項が適用されるとする解釈も可能となるが、このような解釈が不当であることも明らかである。
 このように、他の改正法における経過規定に関する附則の解釈との整合性の観点からも、原告らの前記解釈は採用できない。
ウ 立法者意思
 原告らは、立法者意思を根拠として、平成15年12月31日に著作権の存続期間が満了する本件映画の著作権は、本件改正法が施行された際存しており、本件映画に対して、改正著作権法が適用される旨主張するので、この点について検討する。
(ア) 本件改正法の立法過程における検討状況
 証拠(甲29、30、44ないし50)及び弁論の全趣旨によれば、本件改正法の立法過程における検討状況について、以下の各事実が認められる。
a 1950年代に公表された映画の著作物の著作権の存続期間の満了が眼前となってきた1990年代の末ころ、映画製作者等の映画産業の関係者の間では、映画の著作物の著作権の保護期間を延長すべく著作権法を改正する旨の要求が高まっていた。
 このような状況の中で、文化庁文化審議会においても、映画の著作物の著作権の保護期間の延長に関する審議がされるようになり、平成14年7月30日に開催された文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第2回)においては、まず、事務局から文化審議会における映画の著作物の著作権の保護期間の延長についてのこれまでの検討状況の説明がされ、その後、法制問題小委員会の構成員であるA委員から、当日の配布資料である同人作成の「映画著作権の保護期間延長が必要」と題する本件資料1(同委員会では資料11として配布された。)を基に、日本映画の黄金時代といわれる昭和20年代後半に公表された映画作品の著作権の存続期間が満了しつつあること、及び映画の著作物の著作権の保護期間は他の著作物の著作権の保護期間に比して短く不均衡であることから、映画の著作物の著作権保護期間を70年に延長すべきであること、並びに映画の著作物の著作権保護期間を70年に延長すると、映画産業にとって非常に大きな経済的効果があること等が説明された(甲29)。
b 本件資料1には、以下の記載がある(甲29)。
 「1.現行法は、映画の著作物の保護期間を、『公表後50年』(創作後50年以内に公表されないときは、創作後50年)と定めているが、改正の必要がある。」
 「2.日本映画の黄金期の作品の著作権が、消滅しようとしている。→(別紙資料1.)
 ※小津安二郎監督作品
 ・昭和27年までの公開作品(『宗方姉妹』『お茶漬の味』等)は、今年12月31日で著作権消滅・昭和28年公開作品(『東京物語』)は、来年12月31日に著作権消滅」
 ※溝口健二監督作品
 ・昭和26年までの公開作品(『武蔵野夫人』等)は、既に著作権消滅
 ・昭和27年公開作品(『西鶴一代女』)は、今年12月31日で著作権消滅
 ・昭和28年公開作品(『雨月物語』)は、来年12月31日で著作権消滅」
 世界的にも極めて高い評価を得ている昭和20年代後半の映画の著作権が、続々と消滅しつつある。
 → 一刻も早く保護期間の延長をはかることが、映画関係者の悲願」
 「3.他の著作物の保護期間との違い映画以外の著作物は、『創作〜著作者の死亡時プラス50年間』の保護を受けているのに、映画の著作物は『公表後50年間』の保護しかない。」
 「以上のことから、映画の著作物と他の著作物とのバランスをとる必要がある。そこで、公表後50年ではなく、一定期間を追加すべき。
 追加すべき期間は、『公表〜著作者の死亡時』までの平均的期間であるが、アメリカ合衆国法(25年追加)をも参酌しつつ、さしあたり20年が適切」
 「よって、映画の著作物の保護期間は、公表後70年(創作後70年以内に公表されなかったときは創作後70年)とするべき。」
 「5.商業的利用の継続
 ・旧作映画は、ビデオ化やテレビ放映などによる経済的利用が活発に継続されている。
 ・資産価値を現に有し、経済的利用が行われている作品の著作権を消滅させるべきでない。
 ・著作権を消滅させると、かえって円滑な利用が行われなくなる。
 ・経済的効果の試算(別紙資料2.) 映画の保護期間を20年延長した場合の経済的効果を試算すると、映連加盟社の映画につき、184億1100万円となる。」
 「6 主要先進国との比較
 ●アメリカ合衆国(アメリカ著作権法302条)・・・
 ●EU指令・・・」
 また、本件資料1には、「別紙資料1」と「別紙資料2」の2枚の資料が別紙として添付されており、そのうちの一つの資料である「別紙資料1」には、昭和28年に公開された合計26作品の日本映画の作品名並びにその製作会社名及び監督名が記載されており、もう一つの資料である「別紙資料2」には、著作権の保護期間を20年間延長した場合の昭和28年から昭和52年までに公開された映画の収入増加予想額について、各年毎の額とその合計額とを算定した表が記載されている。
c さらに、上記法制問題小委員会において、A委員からの上記説明の後に、各委員の間で意見交換が行われ、各委員から、以下の@からIまでのような意見が出され、また、JからMまでの質問がされた。
@ 映画の著作物の著作権の保護期間を延長すべき理由としてA委員が挙げた、日本の映画の黄金期の作品の著作権の消滅を避けるという点は、知的財産権の存続期間がその利用価値のあるうちに満了することは社会全体のウェルフェアが増すという観点からは、保護期間延長の理由とはならないこと。
A 映画の著作物と他の著作物の著作権の保護期間の違いについては大いに議論すべきであること。
B 日本の著作権法において映画の著作物の著作権の保護期間を50年とすると、逆に、欧州の映画の著作物の著作権の保護期間も日本において50年となり、保護期間を延長しないことが日本にとって一方的に不利とはいえないのであるから、社会全体にとって何がいいかを検討する必要があること。
C 日本の著作権法において映画の著作物の著作権の保護期間を50年とすることにより、日本映画の名作が海外に流出することによって被る日本の経済的損失も考えるべきであること。
D 日本における映画の著作物の著作権の保護期間が主要先進国に比較して短いと国際的な非難を浴びるおそれがあるから、国際的な基準に合わせるべきであること。
E 映画の著作物の著作権の保護期間を70年とすることの妥当性は日本独自に考えるべきであること。
F 映画作品の配信を行う者として最適なのは、著作権者である映画製作者なのか、それとも流通市場を担う人たちなのかを検証すべきであること。
G 映画の著作物の著作権の保護期間を延長する理由をはっきりしないと歯止めがなくなり、いずれ保護期間が70年、100年となり、また、映画の著作物以外の著作物の著作権の保護期間にも波及する懸念があるから、映画の著作物の著作権の保護期間を延長することの理由を明確にすべきこと。
H 工業所有権法に関しては、保護期間を延長してほしいとの意見はそれほどないことにも留意する必要があること。
I 映画の著作物の定義について更に議論をする必要があること。
J 映画の著作物の著作権の保護期間を延長することは、パブリックドメインとなった映画を供給するビジネスにいかなる影響を及ぼすのか。
K A委員の要望は、映画の著作物の著作権については、常に映画以外の著作物より長い保護期間にして欲しいというものなのか。
L 映画の著作物の著作権の保護期間の終期を著作者の死後70年という要望が出てこないのはなぜか。
M 映画の著作物の著作権の保護期間を延長しないことによる国レベルの損失を試算したらどのような数字になるのか。
 また、A委員又はB委員からは、他の委員に対して、以下のような説明がされた。
@ 保護期間の延長の対象となる映画の著作物とは、主として劇場用映画であること。
A 映画作品は、パブリックドメインとなっても売れるものではなく、著作権者が販売のための努力をしないと売れないものであり、著作権者のこうした努力が文化の振興につながるので、映画の著作物の著作権の保護期間の延長を要望すること。
B 映画の著作物がパブリックドメインとなって自由に使用できることは一見重要であるが、文化遺産として保護するという観点からは一元的な管理が必要であること。
C 映画の著作物の著作権の保護期間の延長を要望する理由は、他の著作物の著作権の保護期間との不均衡を是正して欲しいというものであるから、少なくとも現時点では映画の著作物の著作権の保護期間を他の著作物の著作権の保護期間より長くして欲しいということは考えていないこと。
D 映画の著作物の著作権の保護期間の延長の要望は、ハリウッド映画との戦いという経済的側面があることも理解して欲しいこと。
d 平成14年10月7日に開かれた文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第5回)においては、A委員から、配付資料である「映画著作権の保護期間の延長について」と題する資料3(以下「本件資料3」という。)が示され、本件資料3に記載された内容に沿って、映画の著作物の著作権の保護期間の延長についての説明がされた。
 本件資料3には、以下のような記載がある。
 「繰り返し申し上げておりますとおり、今回の改正提案は、死後50年との実質的不均衡を是正することを目的とするものであります。たまたまEUの原則的保護期間が『死後70年』であり、70年という数字が一致しておりますが、決してEUに合わせるべきであるという趣旨のご提案ではありません。死後50年の場合には、『創作時から著作者の死亡時』までプラス『死後50年』の保護を受けており、『公表時から50年』と比べると、『公表時〜著作者の死亡時』までの期間だけ長くなっております。そこで、その平均的な期間がどれくらいか、ということが問題となります。」
 「この調査結果に基づきますと、死後50年との実質的不均衡を是正するためには、公表時から『78.5年』(参考資料1)の保護が映画に認められるべきということになりますが、今回の提案は、多少控えめに、固いところで公表後70年の保護をご提案させていただいております。」
 「今回の改正提案は、映画の著作物と他の著作物との間で、保護期間に実質的な不均衡が生じていることを是正するためのものであり、その是正に必要な範囲という限定付きでの保護期間の延長を求めるものであります。したがって、今回の改正提案は、他の著作物の保護期間の延長に波及するものではありません。また、もし将来、著作物の原則的な保護期間を『死後50年』から延長する場合は別として、そうでない限りは、映画の保護期間のみを公表後80年とか、95年とかに再延長することは考えられません。」
 「映画を良好な状態で保存し、その利用開発を進めるためには、それなりの経済的投資を必要とします。保護期間の延長により、投下資本を回収し、今後の映画の再生産、映画の良好な状態での保存と管理、国民による映画の利用のための開発を行うことによって、映画文化の発展に努めることが、文化の振興の一端を担う映像コンテンツ製作者の責務だと考えており、今回の提案に御理解いただきたいと思います。」
 なお、本件資料1とは異なり、日本映画の黄金期の昭和20年代後半に公表された映画の著作物の著作権が消滅しつつあるから、一刻も早く著作権の保護期間の延長を図る必要がある旨の記載はない。
 A委員からの上記説明の後、上記法制問題小委員会において、各委員の間で意見交換が行われたが、その中では、映画の著作物と他の著作物との間には著作権の保護期間の点で不均衡があり、これを解消するために映画の著作物の著作権の保護期間を20年延長することの要望は合理的であり、したがって、A委員の提案に賛成であるという意見が主流であった。
e その後、文化庁において、本件改正法の原案が作成され、同原案が内閣法制局の審査を受けた。上記原案における附則2条は、本件改正法附則2条と同一の文言であるところ、内閣法制局において、著作権担当の参事官が担当部長に対して、同条の文言についての説明をしたが、その際に上記参事官が使用した説明資料である本件資料2には、「第54条の映画の著作物の保護期間延長の規定が来年1月1日に施行される場合、本年12月31日まで著作権が存続する著作物については、12月31日の24時と1月1日の0時は同時と考えられることから、『施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存するもの』として保護期間が延長されることとなる。」との記載があり、上記説明の内容は、本件資料2に沿ったものであった(甲47、49)。
 内閣法制局における上記審査の後、本件改正法の法律案が平成15年第156回国会に提出され、国会における審議を経た上で、平成15年6月18日、本件改正法が成立した(甲50)。
 上記法律案の提案理由説明書には、映画の著作物の著作権の保護期間を延長することについての提案理由として、映画の著作物の著作権の保護期間は一般の著作物の著作権の保護期間と比較すると著作者の生存期間の分だけ実質的に短いという状況にあり、また、他の先進諸国においては、公表後50年という条約上の義務を超えて、より長い保護期間を法定することが一般化しており、このような状況を踏まえ、内外における我が国の映画の著作物の保護を強化するため、映画の著作物の著作権の保護期間を公表後70年に延長する旨の記載がある。
(イ) 検討
 以上の事実関係をもとに、検討する。
a 前記(ア)のとおり、本件改正法の法律案が国会に提出された際に示された提案理由のうち、映画の著作物の著作権の保護期間を延長することについての提案理由は、映画の著作物の著作権の保護期間が他の著作物の著作権の保護期間より短く、また、他の先進諸国における映画の著作物の著作権の保護期間は一般に日本よりも長いという状況を踏まえて、映画の著作物の著作権の保護期間を延長して映画の著作物の保護を強化するというものであり、いわゆる日本映画の黄金期に公表された各作品の著作権の消滅を防ぐという点、さらに具体的には、昭和28年に公表された映画の著作権の消滅を防ぐという点は、提案理由として挙げられていなかったのであるから、国会における審議において、昭和28年に公表された映画の著作権の存続期間が満了することを防ぐことの必要性に関する議論はなされていたものとは認められない。
 また、文化庁文化審議会著作権分科会法制問題小委員会での検討状況については、前記(ア)のとおり、平成14年7月30日に開催された同委員会では、A委員から、映画の著作物の著作権の保護期間の延長の提案がされ、その提案理由として、映画の著作物の著作権の保護期間は他の著作物の著作権の保護期間より短く、この不均衡を是正する必要があること等の理由とともに、日本映画の黄金期である昭和20年代後半の作品の著作権が消滅しようとしており、これを防ぐ必要があることも説明されたが、その後の意見交換において、各委員から、同提案に対する消極的な意見が少なからず提出され、その中には、日本映画の黄金期の作品の著作権の消滅を避けるということは映画の著作物の著作権の保護期間の延長の理由にはならない、映画の著作物の著作権の保護期間を延長する理由を明確にしないと、保護期間の更なる延長の要望がされる懸念があるなどの意見も表明された。同年10月7日に開催された委員会では、映画の著作物の著作権の保護期間延長の理由が再度説明されたが、そこでは、他の著作物の著作権の保護期間との不均衡の是正を図ることが強調され、日本映画の黄金期である昭和20年代後半の作品(とりわけ昭和28年に公表された作品)の著作権の消滅を防ぐという点は挙げられないまま審議が行われ、最終的に映画の著作物の著作権の保護期間の延長に対する各委員からの賛同が得られた。
 このような経緯からすれば、同小委員会においても、日本映画の黄金期である昭和20年代後半の作品の著作権の消滅を防ぐという点は、映画の著作物の著作権の保護期間の延長という法律改正において、その明確な目的とはされていなかったというべきである。
 そして、本件証拠上、前記(ア)で認定したほかに、本件改正法の立法過程において、昭和28年に公表された映画の著作物の著作権の消滅を防ぐことの必要性に関する議論がなされたような事情は認められない。
 したがって、本件改正法の制定の際の国会の審議において、昭和28年に公表された映画の著作物の著作権の存続期間が満了してしまうという点を考慮して、それを防ぐための必要性が議論されたとは認められず、その観点から本件改正法附則2条1項の解釈について議論がされたとも認められないから、昭和28年に公表された映画の著作物の著作権の存続期間が満了するのを防ぐことが本件改正法の制定時の立法者意思であるという原告らの主張には、理由がない。
b なお、前記aのとおり、本件改正法の法律案が国会に提出された際の提案理由として、昭和28年に公表された映画の著作物の著作権の消滅を防ぐという点は挙げられていなかったことからすると、内閣法制局において、著作権担当の参事官から同部長に対して本件改正法附則2条に係る前記(ア)eのとおりの解釈についての説明がされたからといって、この点が国会でも議論されたと認めることはできない。したがって、本件改正法の法律案についての内閣法制局における審査での上記の説明の存在は、国会における審議状況についての前記aの認定を左右するものではない。
エ 45年改正法附則の解釈
 また、原告らは、45年改正法附則2条1項の解釈としては、45年改正法が施行された昭和46年1月1日の前日である昭和45年12月31日に著作権の存続期間が満了する著作物に対しても改正前著作権法が適用されるとの解釈が確立されているところ、改正前著作権法54条1項と改正著作権法54条1項とは、著作権の存続期間が満了しそうになっている著作物を救済するという同一の目的で制定ないし改正されたのであるから、45年改正法附則2条1項と本件改正法附則2条とで異なる解釈をすべきではない旨の主張をする。
 しかしながら、45年改正法附則2条1項の解釈としては、前記イで判示したのと同じ理由から、同法の施行日の前日である昭和45年12月31日に著作権の存続期間が満了する著作物に対しては、同法は適用されないと解するのが文理解釈として相当である。
 したがって、原告らの上記主張には、理由がない。
 この点、原告らは、旧著作権法下における4回にわたる暫定延長措置と45年改正法制定の経緯を指摘して、昭和45年12月31日に著作権の存続期間が満了する著作物にも改正前著作権法が適用される旨主張する。
 しかし、旧著作権法下において、昭和37年法律第74号、昭和40年法律第67号、昭和42年法律第87号、昭和44年法律第82号により4回にわたり実施された暫定的な著作権の保護期間の延長措置は、新たな法律の成立に必要な時間を考慮すると、著作権の存続期間の満了が間近に迫っている著作物に限定せずに、概ね数年以内に迫っている著作物について、その存続期間を延長することを目的としたものと解するのが合理的であり、上記各暫定措置を受けて制定された45年改正法及び同法附則2条1項も、同趣旨を目的としてたものと解されるから、上記の延長措置及び改正法制定の経緯が、本件改正法附則2条についての前記解釈を左右するものではない。
 したがって、原告らの上記主張も理由がない。
オ 文化庁著作権課の見解等
 さらに、原告らは、本件改正法附則2条の解釈についての原告らの主張の根拠として、著作権行政を所管する文化庁著作権課の見解も原告らの主張と同じであることを指摘するが、文化庁著作権課の見解はあくまでも所管官庁である文化庁における解釈にすぎず、これが直ちに立法者意思に結び付くものとはいえない。そして、前記ウで判示したとおり、本件改正法の制定の際の国会の審議において、昭和28年に公表された映画の著作物の著作権の存続期間が満了してしまうという点を考慮して、それを防ぐ必要があるという観点から、本件改正法附則2条1項の解釈が議論されたものとは認められず、また、文化庁著作権課の上記見解が国会審議において反映されたものとも認められない。したがって、原告らの上記主張は理由がない。
 その他、原告らは、本件改正法附則2条の解釈についての原告らの主張の根拠として、新聞記事や学説の状況など種々の点を指摘するが、それらの点は、上記検討の結果を左右するものではない。
カ まとめ
 以上により、本件改正法附則2条の解釈としては、平成15年12月31日に著作権の存続期間が満了する映画の著作物に対して、改正著作権法54条1項は適用されないと解するのが相当であるから、改正前著作権法の規定に従い上記の日に著作権の存続期間が満了する本件映画に対しては、改正著作権法54条1項は適用されないことになる。
 したがって、本件映画の著作権は、既に、平成15年12月31日が満了した時点で消滅している。
2 したがって、その余の点について判断するまでもなく、原告らの請求はいずれも理由がないことになる。
第4 結論
 以上の次第で、原告らの請求はいずれも理由がないから、これらを棄却することとし、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第29部
 裁判長裁判官 清水節
 裁判官 山田真紀
 裁判官 佐野信


別紙映像素材目録
 被告株式会社ブレーントラストが頒布用に製造する別紙映画目録記載の映画を収録した映像素材

別紙映画目録
 題名 シェーン
 監督 ジョージ・スティーヴンス
 制作 ジョージ・スティーヴンス
 出演 アラン・ラッド、ヴァン・ヘフリン、ジーン・アーサー

別紙商品目録
 題名 シェーン
 盤種 DVD
 商品番号 DYK−019
 レーベル オフィスワイケー
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日本ユニ著作権センター
http://jucc.sakura.ne.jp/