判例全文 line
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【事件名】パチスロ「大ヤマト」事件
【年月日】平成18年12月27日
 東京地裁 平成17年(ワ)第16722号 損害賠償請求事件
 (口頭弁論終結日 平成18年9月21日)

判決
原告 株式会社東北新社
訴訟代理人弁護士 森伊津子
同 高後元彦
同 小川憲久
同 槐惟成
被告 株式会社三共
被告 株式会社ビスティ
被告 フィールズ株式会社
上記被告ら3名訴訟代理人弁護士 水谷直樹
同 岩原将文


主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
1 被告株式会社三共は、原告に対し、金10億円及びこれに対する平成17年8月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告らは、原告に対し、連帯して金1億円並びにこれに対する平成17年8月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は、別紙映画著作物目録記載の各映画(以下「本件映画」と総称し、そのうち、同目録記載の各映画を個別に指すときは、末尾に、当該映画の番号を付記して「本件映画1」のように表記する。)の著作権を有すると主張する原告が、被告株式会社三共(以下「被告三共」という。)、被告株式会社ビスティ(以下「被告ビスティ」という。)及び被告フィールズ株式会社(以下「被告フィールズ」という。)に対して、主位的に、被告三共において、本件映画の中の一部の映像を複製又は翻案した映像を用いてパチンコゲーム機を製造、販売し、被告ビスティにおいて、被告三共から提供を受けた同映像を用いてパチスロゲーム機を製造し、被告フィールズにおいて、同パチスロゲーム機を販売し、それぞれ本件映画の複製権又は翻案権を侵害しているとして、不法行為に基づく損害賠償(パチンコゲーム機による侵害については、被告三共の単独不法行為(民法709条)として10億円(著作権法114条3項)、パチスロゲーム機による侵害については、被告らの共同不法行為(719条1項)として1億円、いずれも一部請求である。)及び不法行為後である訴状送達の日(平成17年8月29日)から支払済みに至るまで年5分の割合による遅延損害金の支払を、予備的に、上記パチンコゲーム機及びパチスロゲーム機には、別紙被告商品表示目録記載の各表示(以下「被告表示」と総称し、そのうち、同目録記載の各表示を個別に指すときは、末尾に、当該表示の番号を付記して、「被告表示1」のように表記する。)が使用されているところ、同表示は、原告の商品表示として著名ないし周知である別紙原告商品表示目録記載の各表示(以下「原告表示」と総称し、そのうち、同目録記載の各表示を個別に指すときは、末尾に、当該表示の番号を付記して、「原告表示1」のように表記する。)と同一であり、又は少なくとも類似しており、被告表示を使用する行為は不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号又は2号の不正競争行為に該当するとして、同法4条に基づき、損害賠償(不競法5条3項1号、金額及び一部請求であることは主位的請求と同様である。)及び不正競争行為後である訴状送達の日(平成17年8月29日)から支払済みに至るまで年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を請求している事案である。
1 争いのない事実等(証拠によって認定した事実は末尾にその証拠番号を摘示した。)
(1) 当事者
ア 原告は、平成13年4月1日、形式上の存続会社株式会社センテスタジオが実質上の存続会社株式会社東北新社を合併するとともに株式会社東北新社に商号変更した株式会社であるところ、合併前の株式会社東北新社は、平成11年1月1日、株式会社東北新社フィルム(昭和36年4月1日設立)が株式会社東北新社(昭和54年8月30日設立)等を吸収合併して成立した株式会社であった。
 原告は、映画、テレビ番組、ビデオソフト、ゲームソフト、コンピューターグラフィックソフト等の各種ソフトウェアの企画、制作、輸出入、販売等を業務としている。(弁論の全趣旨)
イ 被告三共は、パチンコ機等遊戯具の製造、販売等を業務とする株式会社である。
ウ 被告ビスティは、パチンコ機及び遊戯具の製造、販売等を業務とする株式会社である。
エ 被告フィールズは、遊戯機械の販売及びメンテナンス、キャラクター商品の企画、開発等、並びに著作権等の取得、管理及び利用許諾等を業務とする株式会社である。
(2) 著作権譲渡の契約
 原告、P2(以下「P2」という。)、株式会社ウエスト・ケープ・コーポレーション(以下「ウエスト・ケープ」という。)及び株式会社ボイジャーエンターテインメント(以下「ボイジャーエンターテインメント」という。)は、平成8年12月20日、本件映画を含む映画の著作権の譲渡等を内容とする契約(以下「甲3契約」といい、その契約書を「甲3契約書」という。)を締結し、同契約により、原告は、P2から、本件映画の著作権の譲渡を受けた(甲3。なお、P2が、本件映画の製作者として本件映画の著作権を取得したか否かの点、及び甲3契約が譲渡の対象として翻案権も含めていたかの点については、争いがある。)。
(3) 著作権登録
 原告は、平成9年11月19日、本件映画についての著作権の移転の登録をした。
 本件映画の著作権登録原簿上には、本件映画の著作権が、平成9年7月4日に、P2からP3(以下「P3」という。)へ、同年11月19日に、P3から原告に譲渡された旨の記載がある。また、上記登録原簿の「登録の原因及びその発生年月日並びに登録すべき権利に関する事項」欄には、上記各譲渡のいずれにも、著作権法27条及び28条に規定する権利の譲渡があった旨の記載がある。(甲1の1ないし9、2)
(4) 原告とP1間の合意
 原告とP1(以下「P1」という。)は、平成11年1月25日付けで、「宇宙戦艦ヤマト等に関する合意書」と題する合意書(乙4。以下「乙4合意書」といい、乙4合意書に係る合意を「乙4合意」という。)を作成し、これに記名、押印した。
 乙4合意書4条の記載は次のとおりである。
ア 1項
 「甲は、乙の対象作品に関する上記の権利の行使が円滑に行われるように、全面的に協力する。」
イ 2項
 「乙は、甲がヤマト作品に関連する新作の企画を希望する場合、これに全面的に協力する。ただし、甲は、乙に対し事前に企画内容の詳細を通知し、説明する。」
(5) 被告らの行為
ア 被告三共は、平成16年11月ころから、別紙被告商品目録記載1のパチンコゲーム機(以下「被告パチンコゲーム機」という。)を製造し、全国のパチンコホールに販売している。
 被告パチンコゲーム機は、前面にパチンコ装置、液晶画面等を備え、背面には、映像面、音声面を含めパチンコゲームの展開を生起させ、制御するためのソフトウェアを格納したROM を含む数個のマイクロコンピューターが装着され、全体として一体を成している。
 被告パチンコゲーム機の液晶画面上には、パチンコゲームの進行に伴って、上記ROM に収録されたプログラムに基づいて抽出された影像についてのデータが液晶画面上の指定された位置に順次表示されることによって、全体が動きのある連続的映像となって表示される。この映像は、被告パチンコゲーム機が操作されない状態における待機映像、通常のプレイの状態における映像、大当たりとなった状態における映像から構成される。
 被告パチンコゲーム機には、別紙被告商品目録記載1の4機種があるが、これらの機種の液晶画面上に上映される映像は、共通している(被告パチンコゲーム機の液晶画面上に上映される映像を、以下「被告パチンコ映像」という。)。
イ 被告ビスティは、平成17年3月以前から、別紙被告商品目録記載2のパチスロゲーム機(以下「被告パチスロゲーム機」といい、被告パチンコゲーム機と被告パチスロゲーム機を併せて、以下「被告商品」という。)を製造し、被告フィールズは、被告パチスロゲーム機を、平成17年3月から、全国のパチンコホールに販売している。
 被告パチスロゲーム機は、前面にパチスロ装置、液晶画面等を備え、背面には、映像面、音声面を含めパチスロゲームの展開を生起させ、制御するためのソフトウェアを格納したROM を含む数個のマイクロコンピューターが装着され、全体として一体を成している。
 被告パチスロゲーム機の液晶画面上には、パチスロゲームの進行に伴って一定の動画映像が上映されるが、同映像は、パチスロゲーム機が操作されない状態における待機映像、通常のプレイの状態における映像、大当たりとなった状態における映像から構成される(被告パチスロゲーム機の液晶画面上に上映される映像を、以下「被告パチスロ映像」といい、被告パチンコ映像と被告パチスロ映像を併せて、以下「被告映像」という。)。
 被告パチスロ映像は、被告三共が制作し、被告ビスティに提供したものである。
(6) 別紙対比表1ないし30
 本件映画は、別紙対比表1ないし30の「被侵害映像」欄に掲載された最上段の写真と最下段の写真の区間に対応する動画映像を含んでいる(これらの動画映像を、以下「本件映画被侵害主張部分」という。)。
 被告パチンコ映像は、別紙対比表1ないし14の「侵害映像」欄に掲載された最上段の写真と最下段の写真の区間に対応する動画映像を含んでおり、被告パチスロ映像は、別紙対比表15ないし30の「侵害映像」欄に掲載された最上段の写真と最下段の写真の区間に対応する動画映像を含んでいる(これらの動画映像を、以下「被告映像侵害主張部分」という。)。
(7) 被告表示の使用
 被告パチンコ機の液晶画面の右側部分には、被告表示7が、被告パチスロゲーム機の筐体前面下部には、被告表示8が、それぞれ付されている(甲6及び12の各1及び2)。
 また、被告表示1、3及び5は、被告パチンコ映像中に、被告表示2、4及び6は、被告パチスロ映像中に、それぞれ表示される(甲8及び13の各1及び2)。
2 争点
(1) 著作権に基づく請求の可否
ア P2は、本件映画の映画製作者として、著作権法29条1項に基づき、本件映画の著作権を取得したか。
イ 原告は、甲3契約により、本件映画の翻案権を取得したか。
ウ 被告映像は、本件映画を複製又は翻案したものといえるか。
エ 原告は、被告製品について、本件映画の著作権の権利行使をすることができるか。
(2) 不競法に基づく請求の可否
(3) 損害額
3 争点に対する当事者の主張
(1) P2は、本件映画の映画製作者として、著作権法29条1項に基づき、本件映画の著作権を取得したか(争点(1)ア)について
(原告)
ア 本件映画は、既存の確立した映画製作会社が製作したものではない。当時、比較的無名であったP2が、その構想を練り、企画書を作成し、スタッフの人選をし、内容面にも関与し、また、資金的工面もするとの我が国では比較的珍しい「アメリカ型プロデューサー」の方式で製作したものである。
 すなわち、本件映画の製作の経緯は、次のとおりであった。
 P2は、本件映画1の企画書をよみうりテレビに持ち込み、同テレビ局が昭和49年10月から放映するよう交渉をした。本件映画1は、実際にテレビ放映されたが低視聴率であったため、P2は、赤字を背負い込むことになった。しかし、P2は、更に自らの資金を投入して劇場用の「宇宙戦艦ヤマト」を製作した上、上映先となる映画館回りをする等の努力をして、配給会社のない自主上映を実現した。P2は、上記各映画の製作に当たっても、P1その他のスタッフの人選及び体制作りを自ら行った。
 上記事実は、P2とP1との間で、本件映画の著作者が誰であるかが争われた東京地裁平成11年(ワ)第20820号事件(以下「P1P2訴訟」という。)の判決(以下「P1P2訴訟判決」という。)の判決内容からも裏付けられる。すなわち、P1P2訴訟判決は、本件映画1の著作者の認定において、「被告(P2)は、本件企画書を持ち込んで、よみうりテレビと交渉した結果、同局において、昭和49年10月6日から、週1回全39回(39話)を放映することが決まった。」、「被告は、ジェネラル・プロデューサーに就任して、製作に関して決定権限を一元化する体制を整え、被告の企画方針を実現するためのスタッフを選定することにした。」、「被告は、自身が製作のすべてに関与し、全体的な観点から具体的な指示、決定を行うべく、すべての決定権限を集中させる体制を採った。そして、被告は、練馬区桜台にスタジオを借り、常駐して製作を続けることにした。」と判示している。
イ この点、甲3契約書別紙(一)の本件映画の「製作者」欄には、株式会社オフィス・アカデミー(以下「オフィス・アカデミー」という。)及びウエスト・ケープが表示されているが、上記各会社は、いずれもP2のダミー会社であり、その実態はP2個人であるから、対外的にはこれらの会社が本件映画の映画製作者として表示されていても、実態はP2個人が本件映画の映画製作者である。
ウ したがって、P2は、本件映画の構想立案、企画書作成に始まり、本件映画の製作に主導的役割を果たし、かつ、自らの経済的危険と負担において本件映画を製作した者であるから、本件映画の映画製作者に該当することは明らかである。
 なお、観念的には、著作者としてのP2が、映画製作者としての同人との間の参加約束に基づいて本件映画の製作に参加し、その結果、本件映画の著作権は、著作権法29条1項に基づき、映画製作者としてのP2に帰属した。
(被告ら)
 本件映画の製作者は、オフィス・アカデミー又はウエスト・ケープであり、その著作権は、本件映画の共同著作者であるP1とP2が製作に参加することを約していたので、その完成と同時に製作者であるオフィス・アカデミー又はウエスト・ケープに帰属したものであり、P2が映画製作者として本件映画の著作権を取得したとはいえない。
(2) 原告は、甲3契約により、本件映画の翻案権を取得したか(争点(1)イ)について
(原告)
ア(ア) 甲3契約書1条において、譲渡の「対象権利」を「対象作品に対する著作権および対象作品の全部又は一部のあらゆる利用を可能にする一切の権利」と定義しているところ、この「対象作品の全部又は一部のあらゆる利用を可能にする・・・権利」が翻案権を含むものであることは当然である。
 したがって、甲3契約書には、翻案権は譲渡の目的として「特掲」されている。
(イ) この点、被告らは、「全ての著作権」、「一切の権利」の類の記載がされていたとしても、それは「特掲」に該当しない旨主張するが、本件においては、「対象作品の全部又は一部のあらゆる利用を可能にする」との修飾が付された「一切の権利」が譲渡の対象として掲げられているのであるから、被告らの主張には根拠がない。
イ また、著作権法61条2項は、推定規定であり、譲渡の目的として翻案権が著作権を譲渡する契約中に「特掲」されているか否かは、翻案権譲渡の成否の判定において決定的ではない。
 すなわち、当事者間においては、翻案権譲渡の意思の合致があれば翻案権は移転するものであるところ、「特掲」はこの当事者間の意思の有無の判定の際に働く推定である。したがって、仮に「特掲」がなされているといえない場合であっても、他の事実から翻案権譲渡についての当事者間の意思の合致が客観的に明らかであるときには、翻案権は移転する。
 しかるところ、本件においては、まず、原告とP2間の交渉の経緯、P2とP3間及びP3と原告間の著作権譲渡証書(及び単独申請承諾書)の記載からして、原告とP2間において、翻案権譲渡の合意があったことは客観的に明らかである。
ウ したがって、甲3契約において、本件映画の翻案権は譲渡の対象となっていたといえる。
(被告ら)
 本件映画の翻案権は、甲3契約において、譲渡の対象となっていなかった。理由は以下のとおりである。
ア 翻案権を譲り受けたといい得るためには、著作権法61条2項により、その旨を特掲する必要があるが、甲3契約書には、何らその旨の特掲がされていない。
 譲渡契約書中に、譲渡対象の権利について「全ての著作権」、「一切の権利」等の記載がされていたとしても、これは上記の「特掲」に当たらない。
イ 甲3契約書10条には、「対象作品に登場するキャラクターを使用し新たな映像作品を制作する権利は乙に留保される」と規定されているところ、この「対象作品に登場するキャラクターを使用して新たな映像作品を制作する権利」とは、本件映画の翻案権を意味するから、本件映画の翻案権がP2に留保されていることは、上記条項により明記されていることになる。
ウ 原告の主張によれば、原告は、著作権管理業務に豊富な経験を有しており、しかも、甲3契約を締結するに当たっては、旧ヤマト作品と新作との権利関係が錯綜しないように特に留意していたとのことであり、また、弁護士に甲3契約書の作成を依頼したとのことである。
 したがって、翻案権の譲渡を受けることになっていたというのであれば、当然にその旨が特掲されているはずであるところ、上述したとおり、最終的に締結された甲3契約書中には、その旨の特掲が全くされていない。
エ P2からP3への、また、P3から原告への本件映画の著作権の各譲渡証書は、取引の実体を反映していない虚偽の譲渡証書であるにすぎず、無効というべきものであるから、上記各譲渡証書に翻案権が譲渡の対象として記載されていたとしても、これを根拠に、甲3契約において翻案権が譲渡の対象となっていたということはできない。
 すなわち、本件映画の著作権登録がP3へと移転していたことは、原告にとっては予想外のことであったため、P2に問い合わせをしたところ、同人から、P3への移転登録は「預けてあるだけ」という回答を得たとのことであり(甲第30号証4頁20ないし28行)、このことから、P2からP3への移転登録は、移転の実体を伴わない架空の登録であることは明らかである。したがって、P2がP3に対して移転登録を行う際に提出した上記譲渡証書は、取引の実体を反映しない架空の内容が記載された文書であるにすぎない。
(3) 被告映像は、本件映画を複製又は翻案したといえるか(争点(1)ウ)について
(原告)
ア 対比の対象
 別紙対比表1ないし30のうち、それぞれの対比表の本件映画被侵害主張部分と被告映像侵害主張部分を対比する。
 なお、以下では、本件映画被侵害主張部分における宇宙戦艦ヤマトの艦首に設けられた発射口から発射される光線や同光線を発射するための装置を、「波動砲」ということがある。また、被告映像侵害主張部分における戦艦様の飛行物体の艦首に設けられた発射口から発射される光線や同光線を発射するための装置を、「大ヤマト砲」ということがある。
イ 被告パチンコ映像との対比
(ア) 別紙対比表1の対比
 別紙対比表1の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表1部分」という。)と別紙対比表1の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表1部分」といい、そのうち、「侵害映像1」欄に対応するものを「被告映像対比表1横バージョン部分」といい、「侵害映像2」欄に対応するものを「被告映像対比表1正面バージョン部分」という。)は、いずれも、後記(イ)ないし(オ)の映像の順番で上映されている点で共通している。また、後記(イ)ないし(オ)で主張するとおり、それぞれの映像の表現も本質的に同一である。
 したがって、被告映像対比表1部分は、いずれも、本件映画対比表1部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(イ) 別紙対比表2の対比
a 別紙対比表2の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表2部分」という。)と別紙対比表2の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表2部分」といい、そのうち、「侵害映像1」欄に対応するものを「被告映像対比表2横バージョン部分」といい、「侵害映像2」欄に対応するものを「被告映像対比表2正面バージョン部分」という。)とでは、縦長楕円形の艦首発射口を有する艦首部が極端に大きくデフォルメされて描かれていること、発射口の内部が明るく輝いて描かれていること、発射口底部が他の部分に比して輝きを増していくこと、背景が宇宙空間として暗青色に描かれ、艦体が暗灰色系統で描かれていること、艦首発射口に向かって明るい光の粒子が動いていく様子が描かれていることにおいて、表現の態様上、被侵害映像と共通している。また、看者の注意は、全体として暗く描かれた中で明るく描かれた発射口とそれに向かって動く明るい光の粒子に向けられるのであり、これから受ける印象も両映像に共通する。
b(a) この点、被告らは、本件映画対比表1部分においては、艦首斜め前方の視点から静止した艦首を描いており、波動砲を看者以外の者に向けているとの印象であるが、被告映像対比表1正面バージョン部分は、遊技者の視点から艦首を正面に向けて移動させながら描いており、大ヤマト砲を遊技者に向けているとの印象であると主張する。
 しかし、看者の注意は、全体として暗く描かれた中で明るく描かれた発射口とそれに向かって動く明るい光の粒子に向けられるのであり、相対的に暗く描かれた艦体の向きに向けられるのではないから、映像から受ける印象も、艦体の向きにかかわらず、エネルギーが艦首発射口に集中する印象であるところ、この点は、前記aのとおり、上記両映像に共通する。
(b) また、被告らは、本件映画対比表1部分では光の粒子の動きが直線的に描かれているが、被告映像対比表1部分では、光の粒子は渦巻状に引き寄せられるように描かれていると主張する。
 しかし、被告映像対比表1部分の光の粒子は、渦巻状であるにせよ、艦首発射口に向かって動いていくのであり、基本的運動方向は、本件映画対比表1部分と共通している。したがって、被告らの上記の指摘の点は、同一性、類似性否定の根拠とはならない。
(c) また、被告らは、本件映画対比表1部分においては艦首内部に「大」字型の回転部材が存在することを指摘するが、同部材の存在は映像上必ずしも明瞭ではなく、些細な差異にすぎない。
c したがって、被告映像対比表2部分は、いずれも、本件映画対比表2部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(ウ) 別紙対比表3の対比
 別紙対比表3の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表3部分」という。)と別紙対比表3の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表3部分」といい、そのうち、「侵害映像1」欄に対応するものを「被告映像対比表3横バージョン部分」といい、「侵害映像2」欄に対応するものを「被告映像対比表3正面バージョン部分」という。)とでは、暗い背景の中に画面の大部分を占めて金色に輝く円筒形の部材が描かれていること、この部材が画面右から左に移動する様子が描かれていること、そして、この部材が対向して設置されている別の部材に接続する様子が描かれていることにおいて、表現態様及び基本的構成が共通している。また、看者の注意は、暗い背景の中に描かれた円筒形の部材とその動きに向けられるのであるから、映像から受ける印象も共通する。
 したがって、被告映像対比表3部分は、いずれも、本件映画対比表3部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(エ) 別紙対比表4の対比
a 別紙対比表4の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表4部分」という。)と別紙対比表4の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表4部分」といい、そのうち、「侵害映像1」欄に対応するものを「被告映像対比表4横バージョン部分」といい、「侵害映像2」欄に対応するものを「被告映像対比表4正面バージョン部分」という。)とでは、暗い背景の中に縦長楕円形の発射口が大きく黄白色系統に明るく浮き上がって描かれていること、この発射口の輝きは当初は発射口内部に限られているが、それが発射口を越えて拡大する一瞬の様子が描写されていることにおいて、表現態様が共通している。
b(a) 被告らは、上記両映像は、発射口の光の形状及びこれが一旦収縮するか否かの点で異なると主張するが、このような相違点は、上記の共通性に比べれば、非本質的な相違にすぎない。
(b) また、被告らは、上記両映像は、艦体描写の視点、波動砲ないし大ヤマト砲が向けられる対象が異なると主張する。
 しかし、看者の注意は、全体として暗い背景の中に明るく浮き上がった発射口とその輝きの変化に向けられるのであり、相対的に暗く描かれた艦体の向きに向けられるのではないから、上記相違にかかわらず、両映像から受ける印象は同じである。
(c) 被告らは、相違点として、本件映画では、発射口の光が一旦収縮するのに対し、被告映像においては、光線が放射状に一方的に拡大していくように描かれている点を指摘するが、原告が対比対象として特定した本件映画は、本件映画対比表4部分であり、被告らの上記の指摘は、原告が対比対象として特定した部分と異なった部分を対象として対比をしており、失当である。
c したがって、被告映像対比表4部分は、いずれも、本件映画対比表4部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(オ) 別紙対比表5の対比
a 別紙対比表5の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表5部分」という。)と別紙対比表5の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表5部分」といい、そのうち、「侵害映像1」欄に対応するものを「被告映像対比表5横バージョン部分」といい、「侵害映像2」欄に対応するものを「被告映像対比表5正面バージョン部分」という。)とでは、暗い背景の中で輝度の高い光線が発射される様子が描かれていること、この光線が炎状に描かれていること、この光線が次第に画面の大部分を占めるように拡大していくように描かれていることにおいて、表現態様が共通している。また、上記両映像において、看者の注意を惹くのは、暗く表現された艦体の有無ではなく、輝いて描かれた光線であり、その拡大であるから、映像から受ける印象も、共通している。
b(a) 被告らは、上記両映像は、光線の表現が、その形状、色彩等の点で相違すると主張するが、上記aの共通性からすれば、被告ら主張の上記相違は非本質的なものにすぎない。
(b) 被告らは、被告映像対比表5部分では、光線はパチンコ機の大当りを決定するための図柄を表示する背景領域として描かれているが、本件映画対比表5部分では、光線は武器として描かれていると主張する。
 しかし、映像の同一性、類似性を判定するに当って重要なのは、表現自体であるところ、上記両映像の表現態様は、上記aのとおり炎状の光線が画面全体に拡大していく様の描写である点で共通している以上、被告らの指摘する上記の点は、非本質的な相違である。
c したがって、被告映像対比表5部分は、いずれも、本件映画対比表5部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(カ) 別紙対比表6の対比
a 別紙対比表6の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表6部分」という。)と別紙対比表6の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表6部分」という。)とでは、暗青色の背景の中に艦首先端上端の円形切れこみと艦首大型発射口を備えた艦首が極端に大きくデフォルメされた艦体が宇宙空間を航行する様子が描かれていること、同艦体が右舷前方下方から仰角で描かれていること、艦体の上部が暗灰色系統に下部が暗赤色系統に彩色されていること、同艦体周囲を飛行物体が飛び交い艦体後部等で爆発が生ずる様子が描かれていることにおいて、共通する。
b 被告らは、艦体が攻撃を受け爆発及び炎上する位置並びに爆発の規模等が異なるから、艦体の表現形態、映像から受ける印象が異なると主張する。
 しかし、被告らの指摘する上記の点は極めて軽微な差異にすぎない。
c したがって、被告映像対比表6部分は、本件映画対比表6部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(キ) 別紙対比表7の対比
a 別紙対比表7の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表7部分」という。)と別紙対比表7の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表7部分」という。)とでは、全体として暗い背景の中に艦首先端上端の円形切れこみと艦首大型発射口を備えた艦首が極端に大きくデフォルメされて描かれていること、この艦体が画面右奥から接近し左舷を見せて右に旋回する印象を与えた後画面奥に去っていく様子が描かれていること、画面奥に去っていく際に艦体像が次第に縮小していく映像として描かれていること、艦体の上部が暗灰色系統に下部が暗赤色系統に彩色されていること、艦尾のロケットエンジン、補助エンジンが輝いて描かれていること、艦尾の尾翼が放射状に描かれていることにおいて、表現態様が共通する。また、看者が受ける印象も、暗い宇宙を航行する宇宙戦艦ヤマトの孤独と速力であり、この点も、上記両映像は共通する。
b(a) 被告らは、被告映像対比表7部分は、地球に帰還する場面であり、背景に地球が描かれているのに対し、本件映画対比表7部分は、周囲に何も存在していない宇宙空間を航行する場面である点で相違すると主張する。
 しかし、艦体が航行する様子が描かれた映像が本件映画対比表7部分の複製物であることは明らかであり、この結論が画面上に地球が描かれることによって影響を受けるべき理由もないから、被告らの上記主張は失当である。
(b) 被告らは、艦体の尾翼の数、艦体が浮遊している印象か飛行している印象かの点で、上記両映像は相違する旨主張する。
 しかし、被告らの指摘する上記の相違点は、些細なものにすぎない。全体として暗い画面の中で、尾翼の数は必ずしも明瞭に認識されるものではなく、また、艦体が浮遊している印象か否かなどは、一方的、主観的印象にすぎない。
(c) 被告らは、上記両映像は、注視点(看者が画面上で注目する箇所、以下同じ。)が艦体側面にあるか艦橋にあるかの点でも相違する旨主張する。
 しかし、両映像とも、基本的に艦体が左舷を看者に見せながら看者の前を右に旋回するとの基本的動きにおいて完全に共通している以上、被告らの指摘する上記の点も、些細な差異にすぎない。
c したがって、被告映像対比表7部分は、本件映画対比表7部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(ク) 別紙対比表8の対比
a 別紙対比表8の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表8部分」という。)と別紙対比表8の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表8部分」という。)とでは、全体として変形T字型を成す一対のアンテナ様物体を艦橋最上部に有する艦橋部正面像が画面正面奥から接近する様子が、この艦橋像の拡大によって描かれ、最終段階ではこの艦橋正面像が画面を満たすように描かれていること、宇宙空間であることを示す全体として暗い背景の中で艦体が相対的に明るく描かれていることにおいて、共通する。したがって、上記両映像は、映像の基本的構成も、映像から受ける印象(艦体の力強さ)も、共通している。
b(a) 被告らは、上記両映像では、艦首及び甲板が描かれているか否かの相違がある旨主張する。
 しかし、看者の注意は、艦橋に向けられるのであるから、艦橋のほかに艦首や甲板が表現されているか否かは、非本質的な差異にすぎない。
(b) 被告らは、上記両映像では、艦体の明暗表現が異なる旨主張するが、艦体の明暗表現の絶対的相違は、背景の明るさとの相対的関係によるものであって、相対的に艦橋が背景に比して明るく表現されているとの基本的表現態様、印象において、両映像は、共通である。
c したがって、被告映像対比表8部分は、本件映画対比表8部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(ケ) 別紙対比表9の対比
a 別紙対比表9の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表9部分」という。)と別紙対比表9の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表9部分」という。)とでは、艦首先端上端円形切れこみと艦首発射口を備えた艦首部が大きくデフォルメされて描かれていること、宇宙空間であることを示す全体として暗い背景のなかで相対的に明るい暗灰色系統に艦体が彩色されていること、この艦体が看者に向かって接近してくる様子が艦体像の拡大によって描かれ、最終段階では艦首部が看者にのしかかるように描かれていることにおいて、共通しており、映像の基本的構成に基本的差異はない。
b(a) 被告らは、上記両映像では、主翼の有無の点で相違する旨主張する。
 しかし、両映像において、看者の注意を惹くのは、艦体自体の表現とその動きであるところ、両映像とも、上記の点は共通しており、主翼は、副次的付加的要素にすぎない。しかも、被告映像対比表9部分では、艦首部が暗灰色系統で暗い背景の中で浮き出して描かれているのに対して、主翼は黒色系統で背景との区別も定かでない。
(b) 被告らは、本件映画のうち、対比すべき部分を、艦体が画面奥から画面手前に向けて航行して来るに従って艦首が徐々に画面下方に消え去り、最終的には艦橋がアップになる部分であるとしているが、対比の対象をこのように特定するのは、原告の特定した対比対象と大きく異なり、不当である。
c したがって、被告映像対比表9部分は、本件映画対比表9部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(コ) 別紙対比表10の対比
a 別紙対比表10の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表10部分」という。)と別紙対比表10の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表10部分」という。)とでは、艦首先端上端の円形切れこみと艦首大型発射口を備えた艦体が正面から描かれていること、同艦体を飛行物体がかすめて飛ぶ様子が描かれていること、宇宙空間であることを示す暗い背景の中に惑星様の天体の一部が描かれていることにおいて共通する。
b(a) 被告らは、上記両映像では、艦体が小判形状であるか否かの点、主翼や補助中央部の補助エンジンの有無の点で相違する旨主張するが、被告映像対比表10部分は、艦体の輪郭全体が判然としておらず、主翼等も暗い背景に埋没して判然としないから、上記の相違点は、上記aの共通点に比較して些細な差異にすぎない。
(b) 被告らは、上記両映像では、艦体の動き、飛行物体が艦体の周囲を飛行している印象か、看者に向かって飛行してくる印象かにおいて、相違する旨主張するが、両映像から受ける印象は、宇宙空間を背景とする艦体と群舞する飛行物体との相対的スピード感の相違の点にあるのであるから、被告らが指摘する上記相違点は本質的なものではない。
(c) 被告らは、上記両映像では、飛行物体が看者に向かって飛行してくる状態で描かれているかの点で相違する旨主張するが、両映像とも、飛行物体は艦体の周囲を群舞しており、被告らの上記主張は失当である。
c したがって、被告映像対比表10部分は、いずれも、本件映画対比表10部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(サ) 別紙対比表11の対比
 別紙対比表11の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表11部分」という。)と別紙対比表11の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表11部分」という。)とでは、全体として遠近法を強調しており、基本的構図及びこれに起因する映像から受ける印象が共通する。また、上記両映像は、床には、手前に艦長席、前方にその他の者の席が置かれ、その中間の床中央部に1個の装置が配置され、これを挟んで2席が置かれている様子が描かれている点で共通する。
 したがって、被告映像対比表11部分は、本件映画対比表11部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(シ) 別紙対比表12の対比
 別紙対比表12の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表12部分」という。)と別紙対比表12の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表12部分」という。)とでは、描かれている人物が熟年の男性であること、この男性が、金色の徽章と金色の顎紐が付き、大きな山の部分が白色、その他の部分が黒色の軍帽を、目深に被っていること、顔面一杯に白色系統の鬚を生やしていること、この人物が大きな襟(赤色)、左胸の碇のマーク(金色)、両肩の肩章(金色)を有するユニフォームを着用していること、白色系統のマフラーを首に巻いていることにおいて、表現の構成が同一であり、かつ、これら構成部分の形状と配色も同一であるから、表現態様も同一である。
 したがって、被告映像対比表12部分は、本件映画対比表12部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(ス) 別紙対比表13の対比
a 別紙対比表13の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表13部分」という。)と別紙対比表13の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表13部分」という。)とでは、描かれている人物が、はげ頭で(しかも、頭頂部が瘤状に隆起し、また、耳の上には毛髪が残っている。)、頭が大きく(頭部の縦の長さが胴体の長さの1/2より大)、「八」字眉で、眼鏡をかけ、目は点で表現され、口が出ている中年男性である点、服装も少なくとも部分的には白で表現されている点、一方の腕を上げる動作が描かれている点で共通する。
b(a) 被告らは、上記両映像の相違点として、人物の顔の輪郭(洋ナシ形かひょうたん型か)、眉(細いか太いか)、眼鏡の形状(大きいか小さいか)、目と眼鏡の関係(目が眼鏡に納まっているか否か)、鼻の形状(山形か団子か)及び口の形状(顔の輪郭をはみ出しているか否か)、服装(医療関係者の服装か作業服か)を指摘するが、これらの相違点は、いずれも些細なものにすぎない。
(b) 被告らは、上記両映像では、人物の背景、状況が異なる旨主張する。しかし、人物の表現上の基本的特徴が共通であって両映像が少なくとも類似している限り、一方の映像は他方の映像の複製物(又は翻案物)なのであって、場面が異なることは、同一性及び類似性を否定するに足りない。
c したがって、被告映像対比表13部分は、本件映画対比表13部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(セ) 別紙対比表14の対比
a 別紙対比表14の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表14部分」という。)と別紙対比表14の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表14部分」という。)とでは、全体が小太りで寸胴のロボットの映像であること、頭部が半球形で目が離れていること、寸胴の胴体に手がついていること、頭部、胴体及び下半身が時に分離して独自の動きをする(しかも、接合部には歯型がある。)ことにおいて、共通する。
b 被告らは、上記両映像では、頭部及び胴部におけるアナログ計器及びホースの存否、下半身における足状のものの存否、並びに頭部及び胴部の形状において相違する旨主張するが、これらの相違点は、いずれも些細なものにすぎない。
c したがって、被告映像対比表14部分は、本件映画対比表14部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
ウ 被告パチスロ映像との対比
(ア) 別紙対比表15の対比
 前記イ(ア)での主張と同様の理由により、別紙対比表15の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表15部分」といい、そのうち、「侵害映像1」欄に対応するものを「被告映像対比表15待機映像部分」といい、「侵害映像2」欄に対応するものを「被告映像対比表15大ヤマト砲発射部分」という。)は、いずれも、別紙対比表15の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表15部分」という。)の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(イ) 別紙対比表16の対比
 前記イ(イ)での主張と同様の理由により、別紙対比表16の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表16部分」といい、そのうち、「侵害映像1」欄に対応するものを「被告映像対比表16待機映像部分」といい、「侵害映像2」欄に対応するものを「被告映像対比表16大ヤマト砲発射部分」という。)は、いずれも、別紙対比表16の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表16部分」という。)の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(ウ) 別紙対比表17の対比
 前記イ(ウ)での主張と同様の理由により、別紙対比表17の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表17部分」といい、そのうち、「侵害映像1」欄に対応するものを「被告映像対比表17待機映像部分」といい、「侵害映像2」欄に対応するものを「被告映像対比表17大ヤマト砲発射部分」という。)は、いずれも、別紙対比表17の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表17部分」という。)の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(エ) 別紙対比表18の対比
 前記イ(エ)での主張と同様の理由により、別紙対比表18の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表18部分」といい、そのうち、「侵害映像1」欄に対応するものを「被告映像対比表18待機映像部分」といい、「侵害映像2」欄に対応するものを「被告映像対比表18大ヤマト砲発射部分」という。)は、いずれも、別紙対比表18の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表18部分」という。)の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(オ) 別紙対比表19の対比
 前記イ(オ)での主張と同様の理由により、別紙対比表19の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表19部分」といい、そのうち、「侵害映像1」欄に対応するものを「被告映像対比表19待機映像部分」といい、「侵害映像2」欄に対応するものを「被告映像対比表19大ヤマト砲発射部分」という。)は、いずれも、別紙対比表19の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表19部分」という。)の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(カ) 別紙対比表20の対比
a 別紙対比表20の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表20部分」という。)と別紙対比表20の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表20部分」という。)とでは、全体として暗い画面中で暗いながらも相対的に浮き出すように砲身が描かれていること、各砲塔に3門ずつの砲身が描かれていること、それら砲身が上方に立ち上がる様子が仰角で描かれていることにおいて、表現態様が共通する。また、看者の受ける印象も、薄暗い中で仰角で描かれた主砲の威圧感と力強さであり、両映像で共通である。
b 被告らの指摘する、砲身全体、砲塔を含んで描かれているか否か、艦橋と主砲の距離感等における相違点は、薄暗い画面においては、看者の注意を惹き付けるものではなく、些細なものにすぎない。
c したがって、被告映像対比表20部分は、本件映画対比表20部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(キ) 別紙対比表21の対比
a 別紙対比表21の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表21部分」という。)と別紙対比表21の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表21部分」という。)とでは、全体として暗い画面中で暗いながらも相対的に浮き出すように砲身が描かれていること、各砲塔に3門ずつの砲身が描かれていること、砲身が仰角で描かれていること、この砲身から青白色の輝度の高い光線が3条発射される様子が描かれていること、発射時に青白色の爆焔が描かれていること、発射時の青白色の光線によって艦本体が一瞬明るく照らされる様子が描かれていることにおいて、表現態様が共通する。また、看者の注意は、暗い画面の中で唯一明るい3条の光線に向けられるのであり、それらから受ける印象は、仰角で描かれた主砲の威力であり、この点も両映像で共通する。
b 被告らの指摘する、砲身全体、砲塔を含んで描かれているか否か、主砲、艦橋の表現態様等における相違点は、薄暗い画面においては、明るい3条の光線が描かれる以上、看者の注意を惹き付けるものではなく、些細なものにすぎない。
c したがって、被告映像対比表21部分は、本件映画対比表21部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(ク) 別紙対比表22の対比
a 別紙対比表22の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表22部分」という。)と別紙対比表22の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表22部分」という。)とでは、全体として暗い中で小砲塔が暗灰色に薄暗く浮かび上がり唯一明るい映像として活発に動く破線が表現されていること、小砲塔がドーム型に描かれていること、この小砲塔の回転に伴って明るい破線が動く様子が描かれていることにおいて、表現態様が共通する。また、看者の注意も、暗い画面の中で唯一明るい破線に向けられるのであり、その受ける印象も、単に小砲塔の旋回に伴う破線の動きのみでなく、同一破線上の光の明滅から生ずるリズム感もあり、この点でも、上記両映像は共通する。
b 上記両映像は、全体として暗い画面中で明滅する光が描かれる以上、被告らの指摘する、画面構成、視点の相違等は、看者の注意を惹き付けるものではなく、些細な相違にすぎない。
 また、両映像は、リズム感の上では、大差ないのであるから、被告らの指摘するスピード感の相違なるものも、両映像の同一性、類似性を否定するに足るものではない。
c したがって、被告映像対比表22部分は、本件映画対比表22部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(ケ) 別紙対比表23の対比
a 別紙対比表23の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表23部分」という。)と別紙対比表23の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表23部分」という。)とでは、暗青色の背景の中に艦首先端上端円形切れこみと艦首大型発射口を備えた艦首が極端に大きくデフォルメされて描かれていること、喫水下のバルジも大きくデフォルメして描かれていること、この艦体には主艦橋のほか艦底部にも艦橋が描かれていること、この艦体は上半部を灰色系統に下半部を暗赤色系統に彩色されていること、この艦体が右舷を見せながら画面右方向を向いて宇宙空間を航行する様子が画面の大半を占めるように描かれていることにおいて、共通する。
b 被告らは、被告映像対比表23部分は、艦体が三角形に描かれているのに対し、本件映画対比表23部分は、艦体が台形に描かれていることから、艦体の表現態様を異にすると主張するが、苦し紛れの言い逃れにすぎない。
 また、艦体航行態様の相違点として被告らが指摘する点も、上記aの基本的な共通性に照らし、非本質的な差異にすぎない。
c したがって、被告映像対比表23部分は、本件映画対比表23部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(コ) 別紙対比表24の対比
 別紙対比表24の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表24部分」という。)と別紙対比表24の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表24部分」という。)とでは、暗く描かれた宇宙空間を背景として艦首先端上端の円形の切れこみと艦首大型発射口を備えた艦首が極端に大きくデフォルメされて描かれていること、主艦橋が3層に表現されていること、艦体上半部が暗灰色系統に下半部が暗赤色系統に彩色されていること、この艦体が画面右奥から左手前に左舷を見せながら横切る様子が若干仰角気味に次第に拡大していく映像として描かれていることにおいて共通する。
 したがって、被告映像対比表24部分は、本件映画対比表24部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(サ) 別紙対比表25の対比
 別紙対比表25の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表25部分」という。)と別紙対比表25の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表25部分」という。)とでは、暗く描かれた宇宙空間を背景として上半部が暗灰色系統に下半部が暗赤色系統に彩色された艦体が画面正面を左舷を見せながら横切る様子が左舷から若干仰角気味に描かれ、引き続き、この艦体が艦尾に放射状の尾翼を備え艦尾にロケット噴射口様の形状のメインエンジン1基と補助エンジンを有する艦体像となって、これらエンジンを輝かせながら画面奥に去っていく様子が次第に縮小する映像として描かれていること、この艦体の進行方向に地球が描かれていることにおいて、共通する。
 したがって、被告映像対比表25部分は、本件映画対比表25部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(シ) 別紙対比表26の対比
 別紙対比表26の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表26部分」という。)と別紙対比表26の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表26部分」という。)とでは、前記イ(サ)で挙げた共通点のほかに、被告映像対比表26部分には、側壁が描かれており、この点でも共通する。
 したがって、前記イ(サ)で主張したとおり、被告映像対比表26部分は、本件映画対比表26部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(ス) 別紙対比表27の対比
a 別紙対比表27の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表27部分」という。)と別紙対比表27の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表27部分」という。)とでは、全体として暗青色を基調とする画面の中で艦体を灰色系統の色彩で表現していること、画面上部には、上部に建築物が描かれた半球形の天体が、下部には艦体前半部が、俯瞰的に描かれていること、主砲が3門描かれていること、この主砲が天体に照準を定める様子が描かれていることにおいて、基本的表現態様が共通する。また、看者の注意は、天体と主砲との関係に向けられるのであり、この印象は両映像に共通である。
b(a) 被告らが指摘する、艦体、主砲と天体とが重なるか否かの点、視点の相違、これらによる印象の差異、砲身の放熱カバーの有無の点、天体下半部の表現上の差異は、上記aの共通点に比較すれば、いずれも些細な差異にすぎない。
(b) 被告らは、被告映像対比表27部分は、遊技者による停止ボタン操作により異なる映像が展開されることをもって、同一性、類似性否定の根拠の一つとする。
 しかし、被告映像対比表27部分においては、実際に本件映画対比表27部分と同一の映像が展開される以上、被告映像対比表27部分は、本件映画対比表27部分の複製物といえるのであり、被告映像対比表27部分が、遊技者のボタン操作によっていることは、上記侵害の事実に影響しない。
c したがって、被告映像対比表27部分は、本件映画対比表27部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(セ) 別紙対比表28の対比
 前記イ(シ)での主張と同様の理由により、別紙対比表28の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表28部分」という。)は、別紙対比表28の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表28部分」という。)の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(ソ) 別紙対比表29の対比
 前記イ(ス)での主張と同様の理由により、別紙対比表29の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表29部分」という。)は、別紙対比表29の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表29部分」という。)の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(タ) 別紙対比表30の対比
 前記イ(セ)での主張と同様の理由により、別紙対比表30の被告映像侵害主張部分(以下「被告映像対比表30部分」という。)は、別紙対比表30の本件映画被侵害主張部分(以下「本件映画対比表30部分」という。)の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(被告ら)
ア 被告パチンコ映像との対比
(ア) 別紙対比表1の対比
 本件映画の波動砲発射場面と被告パチンコ映像の大ヤマト砲発射場面とでは、個々の場面を検討すれば、後記(イ)ないし(ケ)のとおり、同一であるとも、類似しているともいえない。また、全体的な一連の流れを検討した場合にも、基本的な構成、表現態様、表現目的が異なっており、同一であるとも、類似しているともいえない。
(イ) 別紙対比表2の「正面バージョン」の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画のうちの別紙A 2 の静止画に対応する動画映像部分( 以下「A 2 映像」という。)と、被告パチンコ映像のうちの別紙B2−1の静止画に対応する動画映像部分(以下「B2−1映像」という。)である。
b 対比
(a) A2映像においては、艦首の斜め前方の視点から、艦首を静止させた状態で、艦首の発射口に光の粒子が直線状に集まっていく状態が描かれているのに対して、被告映像においては、画面に対峙する遊技者の視点で、視点に対して斜めを向いていた艦首を正面に向けて移動させながら、発射口に光の粒子が渦巻き状に引き寄せられる状態が描かれている。
 したがって、上記両映像は、映像の基本的構成を異にしている。
 また、映像から受ける印象についても、A2映像においては、発射口底部に光の固まりが形成されていく様子を客観的に眺めているとの印象を受けるのに対して、B2−1映像においては、看者(遊技者)自身に対して大ヤマト砲の照準を合わせて描いているとの印象を受け、両映像は、映像から受ける印象をも異にしている。
(b) A2映像においては、発射口内部が、暗黒からオレンジ色、オレンジ色から底部の黄変部を除いて暗転、と変遷していくのに対して、B2−1映像においては、発射口は常に明るい状態のままである。
 したがって、両映像は、発射口内部の明暗表現を異にしている。
(c) A2映像においては、発射口内部は、等間隔のリブを備えるほかは空洞であり、発射口に光の粒子が直線状に引き寄せられるように表現されている。これに対して、B2−1映像においては、発射口内部には、「大」字形状の部材を備え、「大」字形状の部材の回転により、光の粒子が渦巻き状に引き寄せられるように表現されている。
 したがって、両映像は、発射口内部の構造、及び光の粒子が発射口に引き込まれる際の表現態様を異にしている。
(d) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c 原告の主張に対する反論
(a) 原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は、いずれも概括的事項であるにすぎず、原告指摘の点が具体的にどのように表現されているかを検討すれば、上記bのとおり、両映像で大きく異なる。
(b) また、原告が上記両映像の共通点として指摘している点については、先行する漫画、アニメーション作品及びプラモデルの外箱等において、ごく一般的に表現されていた内容のものにすぎず、両映像を対比するに当たって、格別に重要な部分であるとはいえない。
 すなわち、縦長楕円形の艦首発射口を有する艦首部が大きくデフォルメされて描かれていることについては、乙第37号証の4、乙第69号証(55頁)、乙第68号証の1(2、3頁)に、背景が宇宙空間として暗青色に描かれ、艦体が暗灰色系統で描かれていることについては、乙第68号証の1(10頁)、乙第69号証(55頁)に、発射口の内部が明るく輝いて描かれていることについては、乙第68号証の1(9ないし12頁)、乙第68号証の2(6ないし9頁)、乙第70号証に、それぞれ表現されている。
(ウ) 別紙対比表2の「横バージョン」の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、A2映像と、被告パチンコ映像のうちの別紙B2−2の静止画に対応する動画映像部分(以下「B2−2映像」という。)である。
b(a) A2映像においては、艦首を静止させた状態で、艦首の暗黒の発射口に光の粒子が直線状に集まっていく状態が、艦首の斜め前方の固定された視点で描かれている。
 これに対して、B2−2映像においては、当初から発光している発射口が、光の粒子を吸い込むに従って更に光に満ち溢れていく状態が、艦首の斜め前方から徐々に発射口に近づいていく視点で描かれている。
 したがって、上記両映像は、映像の基本的構成を異にしている。
(b) A2映像においては、当初暗かった発射口が光の粒子を吸い込むに従って、吸い込まれた光が凝縮し発射口底部が黄変していき、底部に光の固まり(黄色発光球体)が形成されていくとの印象を受ける。
 これに対して、B2−2映像においては、当初から発光している発射口が光の粒子を吸い込むに従って、発射口が輝きを増していき、 発射口が溢れるほどの光に満ち溢れていくとの印象を受けるとともに、艦首に徐々に近づきながら描くことにより、発射口に引き寄せられるとの印象を受ける。
 したがって、上記両映像は、映像から受ける印象を基本的に異にしている。
(c) A2映像においては、発射口内部が、暗黒からオレンジ色、オレンジ色から底部の黄変部を除いて暗転、と変遷していくのに対して、B2−2映像においては、発射口は常に明るい状態のままである。
 また、A2映像においては、発射口の内部構造が明確に描かれているのに対して、B2−2映像においては、発射口に満ち溢れた光により内部構造は描かれていない。
 したがって、上記両映像は、発射口内部の表現態様を異にしている。
(d) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c 原告の主張に対する反論
 前記(イ)cのとおり。
(エ) 別紙対比表3の「正面バージョン」の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画対比表3部分と、被告パチンコ映像のうちの別紙B3−1の静止画に対応する動画映像部分(以下「B3−1映像」という。)である。
b 対比
(a) 対向配置される部材が、本件映画対比表3部分においては、シリンダー様部材とピストン様部材であるのに対して、B3−1映像においては、釣鐘状突起物が複数形成された円筒様部材と、6個の円筒状突起物が形成された円筒様部材である。
 したがって、上記両映像は、対向配置される部材の形状を全く異にしている。
(b) 本件映画対比表3部分においては、ピストン様部材が、シリンダー様部材に向かってゆっくりと移動して押し込まれる状態が描かれており、ピストン様部材がシリンダー様部材に接続され、動力がゆっくりと伝達されるという印象を受ける。
 これに対して、B3−1映像においては、円筒状突起物が形成された円筒様部材が、高速で回転しながら、他方の円筒様部材に向かって高速で移動し、激しく衝突、発光する状態が描かれており、衝突により大きなエネルギーが生み出されているという印象を受けるものである。
 したがって、上記両映像は、対向配置されている部材の動きが相互に異なり、その結果として、映像から受ける印象を全く異にしている。
(c) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c 原告の主張に対する反論
 原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は、いずれも概括的事項であるにすぎず、原告指摘の点が具体的にどのように表現されているかを検討すれば、上記bのとおり、両映像で大きく異なる。
(オ) 別紙対比表3の「横バージョン」の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画対比表3部分と、被告パチンコ映像のうちの別紙B3−2の静止画に対応する動画映像部分(以下「B3−2映像」という。)である。
b 対比
 前記(エ)で主張したのと同じ理由により、本件映画対比表3部分とB3−2映像とは、同一であるとも、類似しているともいえない。
(カ) 別紙対比表4の「正面バージョン」の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画のうちの別紙A 4 の静止画に対応する動画映像部分( 以下「A 4 映像」という。)と、被告パチンコ映像のうちの別紙B4−1の静止画に対応する動画映像部分(以下「B4−1映像」という。)である。
b 対比
(a) A4映像においては、艦体の斜め前方の離れた視点から、艦体全体が描かれるとともに、発射口の黄白色をした円が膨張及び収縮を繰り返す状態が描かれており、看者以外の何者かに波動砲を発射しようとしているとの印象を受ける。
 これに対して、B4−1映像においては、艦体全体は描かれておらず、画面に対峙する遊技者の視点で、画面中央に正面を向いた艦首の発射口が大きく描かれるとともに、膨張、収縮を繰り返すことなく発射口の光の一方的な拡大が描かれており、看者(遊技者)自身に対して、大ヤマト砲を発射しようとしているとの印象を受ける。
 したがって、上記両映像は、映像の基本的な構成及び映像から受ける印象を基本的に異にしている。
(b) A4映像においては、発射口の光(黄白色をした円)が一旦膨張した後に収縮するように描かれているのに対して、B4−1映像においては、発射口の光が一方的に拡大していくように描かれており、両映像は発射口における光線の表現態様を基本的に異にしている。
(c) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c 原告の主張に対する反論
(a) 原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は、いずれも概括的事項であるにすぎず、原告指摘の点が具体的にどのように表現されているかを検討すれば、上記bのとおり、両映像で大きく異なる。
(b) 原告は、被告らの対比の主張は、原告が特定した対比対象と異なる部分を対象としてされており、失当である旨主張する。
 しかし、被告らが、対比の対象とした部分は、対比を行う上で不可欠な部分であるから、原告の上記主張は失当である。
(c) また、原告が上記両映像の共通点として指摘している点については、先行する漫画、アニメーション作品及びプラモデルの外箱等において、ごく一般的に表現されていた内容のものにすぎず、両映像を対比するに当たって、格別に重要な部分であるとはいえない。
 すなわち、暗い背景の中に縦長楕円形の発射口が大きく黄白色系統に浮き上がって描かれていることについては、乙第68号証の1(11頁)、乙第68号証の3(4頁)、乙第70号証、乙第71号証に、発射口の輝きが、当初は発射口内部に限られているが、それが発射口を越えて拡大する様子が描写されていることについては、乙第68号証の1(3、4、8、10ないし12頁)、乙第68号証の2(2、3頁)に、それぞれ表現されている。
(キ) 別紙対比表4の「横バージョン」の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、A4映像と、被告パチンコ映像のうちの別紙B4−2の静止画に対応する動画映像部分(以下「B4−2映像」という。)である。
b 対比
(a) A4映像においては、発射口の光(黄白色をした円)が、一旦膨張した後に収縮する状態が繰り返して描かれており、一旦ON 状態(光の膨張)になったものが、再びOFF 状態(光の収縮)になることが表現されている。
 これに対して、B4−2映像においては、発射口から5本の太い白色の光線が、放射状に一方的に拡大する状態が描かれ、一旦ON状態(光の膨張)になったものが、再びOFF 状態(光の収縮)になることはなく表現されている。
 したがって、上記両映像は、映像の基本的な構成を異にしている。
(b) A4映像においては、膨張したエネルギーを繰り返し凝縮、集中させ、発射に備えているとの印象を受ける。
 これに対して、B4−2映像においては、臨界点に達したエネルギーが、多方向に弾け出したとの印象を受ける。
 したがって、両映像は、映像から受ける印象を異にしている。
(c) A4映像においては、発射口の光(黄白色をした円)が、円形状を維持したまま、膨張、収縮する様子が描かれている。
 これに対して、B4−2映像においては、発射口周辺に拡大した光の中から5本の白色光線が現れ、放射状に一方的に拡大する様子が描かれている。
 したがって、両映像は、発射口の光の表現態様を異にしている。
(d) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c 原告の主張に対する反論
 前記(カ)cのとおり。
(ク) 別紙対比表5の「正面バージョン」の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画対比表5部分と、被告パチンコ映像のうちの別紙B5−1の静止画に対応する動画映像部分(以下「B5−1映像」という。)である。
b 対比
(a) 本件映画対比表5部分においては、艦体の斜め前方の視点から、艦体が描かれるとともに、青白色の光線が発射され、発射された光線が攻撃対象物に向かって一直線に進み、光線の先頭が攻撃対象物に命中する状態が描かれている。
 これに対して、B5−1映像においては、そもそも艦体が描かれておらず、画面に対峙する遊技者の視点から、画面中央に正面を向いて大きく描かれた艦首の発射口から、5本の白色光線が高速回転しながら画面全体を白色光で満たしている状態が描かれた後、白色光の中心から順次図柄が生み出されてくる状態が描かれている。
 したがって、上記両映像は、映像の基本的な構成を異にしている。
(b) 本件映画対比表5部分においては、艦体が光線を画面左側に向けて発射し、攻撃対象物に命中したとの印象であるのに対し、B5−1映像においては、画面全体が一方的に白色光で満たされるとともに、発射された光線の中から順次パチンコ機の大当りを決定するための図柄が生み出されてくるとの印象を与えるものであり、両映像は、映像から受ける印象を異にしている。
(c) 本件映画対比表5部分においては、紫色の炎状最外層、寒色系の青色で表現された中間層及び白色の最内層の3層から成る光線が発射される状態が描かれている。
 これに対して、B5−1映像においては、層の区別がない暖色系の白色で表現された5本の光線が高速で回転しながら発射され、画面全体を白色光で満たす状態が描かれている。
 したがって、上記両映像は、光線の表現態様を基本的に異にしている。
(d) 本件映画対比表5部分においては、発射された光線が、攻撃対象物へ向かって一直線に進み、対象物に命中する状態が描かれており、対象物を攻撃する武器として描かれている。
 これに対して、B5−1映像においては、画面全体に拡がった光線の中から順次図柄が生み出されるように描かれており、光線は、パチンコ機における大当りを決定するための図柄を表示する背景領域を形成するためのものとして描かれている。
 したがって、上記両映像は、映像における光線の役割、位置付けを異にしている。
(e) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c 原告の主張に対する反論
(a) 原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は、いずれも概括的事項であるにすぎず、原告指摘の点が具体的にどのように表現されているかを検討すれば、上記bのとおり、両映像で大きく異なる。
(b) また、原告が上記両映像の共通点として指摘している点については、先行する漫画、アニメーション作品及びプラモデルの外箱等において、ごく一般的に表現されていた内容のものにすぎず、両映像を対比するに当たって、格別に重要な部分であるとはいえない。
 すなわち、暗い背景の中で輝度の高い光線が発射される様子が描かれていること、及びこの光線が炎状に描かれていることについては、乙第37号証の1、乙第37号証の5、乙第68号証の1(5ないし7、12ないし17頁)、乙第68号証の2(13ないし15頁)、乙第70号証に、光線が、次第に画面の大部分を占めるように拡大していくように描かれていることについては、乙第68号証の2(4、5頁)に、それぞれ表現されている。
(ケ) 別紙対比表5の「横バージョン」の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画対比表5部分と、被告パチンコ映像のうちの別紙B5−2の静止画に対応する動画映像部分(以下「B5−2映像」という。)である。
b 対比
(a) 本件映画対比表5部分においては、艦体の斜め前方の視点から、 艦体が描かれるとともに、青白色の光線が発射され、発射された光線が攻撃対象物に向かって一直線に進み、光線の先頭が攻撃対象物に命中する状態が、発射された光線の先頭側及び攻撃対象物を注視点として描かれている。
 これに対して、B5−2映像においては、艦体は基本的に描かれておらず、画面のほぼ全体に5本の相互に絡まった光線の束が、画面斜め方向に流れる状態が描かれた後、画面のほぼ全体に拡がった光線の束から、順次図柄が生み出されてくる状態が、発射された光線の途中部分及び光線の中から生み出される図柄を注視点として描かれており、光線により図柄が生み出されてくるとの印象を受ける。
 したがって、上記両映像は、映像の基本的構成を異にしている。
 また、本件映画対比表5部分においては、艦体が光線を画面左側に向けて発射し、攻撃対象物に命中したとの印象であるのに対し、B5−2映像においては、画面のほぼ全体に拡がった光線の束から、順次図柄が生み出されてくる状態が描かれており、光線により図柄が生み出されてくるとの印象を与えるものであり、両映像は、映像から受ける印象をも異にしている。
(b) 本件映画対比表5部分においては、紫色の炎状最外層、寒色系の青色で表現された中間層及び白色の最内層の3層から成る光線が発射される状態が描かれている。
 これに対して、B5−2映像においては、層の区別がない暖色系の白色で表現された5本の光線が相互に絡まり、更に太い光線の束となって、うねりながら発射される状態が描かれている。
 したがって、上記両映像は、光線の表現態様を基本的に異にしている。
(c) 本件映画対比表5部分においては、発射された光線が、攻撃対象物へ向かって一直線に進み、対象物に命中した状態が描かれており、対象物を攻撃する武器として描かれている。
 これに対して、B5−2映像においては、光線が画面のほぼ全体を満たすように拡がり、その光線の中から順次図柄が生み出されてくる状態が描かれており、光線は、対象物を攻撃する武器としてではなく、パチンコ機における大当りを決定するための図柄を表示する背景領域を形成するためのものとして描かれている。
 したがって、上記両映像は、映像における光線の役割、位置付けを異にしている。
(e) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c 原告の主張に対する反論
 前記(ク)cのとおり。
(コ) 別紙対比表6の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画対比表6部分と、被告パチンコ映像のうちの別紙B6の静止画に対応する動画映像部分(以下「B6映像」という。)である。
b 対比
(a) 本件映画対比表6部分においては、艦体後部が大きく炎上し、攻撃がされていない状況において、艦体後部で継続的に爆発が発生し、艦橋付近まで炎が拡大して大きく炎上していく状態が描かれている。
 これに対して、B6映像においては、艦体側面に攻撃を受け、その衝撃で艦体が振動するとともに、攻撃を受けた箇所で小規模な炎が一瞬生じるものの、その炎はすぐに消え去り、消失してしまう状態が描かれている。
 したがって、上記両映像は、映像の基本的な構成を異にしている。
(b) 本件映画対比表6部分においては、艦体後部が大きく炎上し、これとともに艦体後部で爆発が継続して発生し、艦橋付近まで炎を拡大していく状態が描かれており、危機的な状態との印象を受ける。
 これに対して、B6映像においては、攻撃は受けたものの、小規模な炎が一瞬生じるだけで、ダメージを全く負っていない状態が描かれており、艦体に格別の危険はないとの印象を受ける。
 したがって、上記両映像は、映像から受ける印象を異にしている。
(c) 本件映画対比表6部分においては、艦体側面に主翼や円盤を備えておらず、また、艦首に対して艦橋を比較的大きく描いており、艦首と艦橋がそれほど離れていない態様にて描かれている。
 これに対して、B6映像においては、補助エンジンを有する大きな主翼や円盤を艦体側面に備えており、また、艦首に対して艦橋を極端に小さく描いており、艦橋が艦首のはるか後方に存在する態様にて描かれている。
 したがって、上記両映像は、艦体の表現態様を異にしている。
(d) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c 原告の主張に対する反論
(a) 原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は、いずれも概括的事項であるにすぎず、原告指摘の点が具体的にどのように表現されているかを検討すれば、上記bのとおり、両映像で大きく異なる。
(b) また、原告が上記両映像の共通点として指摘している点については、先行する漫画、アニメーション作品及びプラモデルの外箱等において、ごく一般的に表現されていた内容のものにすぎず、両映像を対比するに当たって、格別に重要な部分であるとはいえない。
 すなわち、暗青色の背景の中に艦首先端上端の円形の切れこみと艦首大型発射口を備えた艦首を極端に大きくデフォルメした艦体が宇宙空間を航行する様子が描かれていることについては、艦体を撮影する際の一般的な手法としても定着していた上に、乙第37号証の4、乙第39号証の1、乙第40号証、乙第42号証、乙第44号証の1、乙第72号証(2頁)に、艦体が右舷前方下方から仰角で描かれていることについても、艦体を撮影する際の一般的な手法として定着し、乙第39号証の1、乙第40号証に、艦体の上部が暗灰色系統に、下部が暗赤色系統に彩色されていることについては、戦艦等において一般的に採用され、乙第69号証(58頁)、乙第73号証に、同艦体周囲を飛行物体が飛び交い、艦体後部等で爆発が生ずる様子が描かれていることについては、乙第52号証(6ないし9頁)、乙第76号証(2ないし4頁)に、それぞれ表現されている。
(サ) 別紙対比表7の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画対比表7部分と、被告映像対比表7部分である。
b 対比
(a) 本件映画対比表7部分においては、艦体が画面右奥から左手前へ向けて航行してくるに従って、艦体側面が画面中央に拡大して描かれた後、艦体が画面左奥に向けて航行していく状態が、艦体斜め後方の視点から仰角の角度で描かれ、周囲に何も存在していない暗黒の宇宙空間を斜め方向に航行して消えていく場面が描かれている。
 これに対して、被告映像対比表7部分においては、艦体が画面奥左寄り中央から画面手前へ向けて航行してくるに従って、艦橋が画面中央に拡大して描かれた後、艦体が画面奥の地球に向けて航行していく状態が、艦体真後ろ上方の視点から俯角の角度で描かれ、艦体が地球に帰還する場面が描かれているものであり、画面奥の地球に向かう艦体を、斜め後方からではなく、真後ろからの視点で描くことで、地球に帰還する印象を強く与えている。
 したがって、上記両映像は、描かれている場面及び映像の基本的な構成を異にしている。
(b) 本件映画対比表7部分における艦体は、メインエンジンと補助エンジンとを艦尾にのみ備え、相互に120度の角度で開いた3本の尾翼を備えているのに対して、被告映像対比表7部分における艦体は、主翼を備え、かつ、その主翼に補助エンジンを備えているほか、相互に90度の角度で開いた4本の尾翼を備えており、両映像は、艦体の基本構成を異にしている。
 また、本件映画対比表7部分においては、艦体が斜め後方から仰角の角度で艦底が見えるように描かれているため、飛行体が浮遊しているような印象を与えるのに対して、被告映像対比表7部分においては、主翼を有する艦体が、真後ろから俯角の角度で描かれているため、飛行機が飛行しているような印象を与えている。
 したがって、上記両映像は、艦体の基本構成及び該映像から受ける印象を異にしている。
(c) 本件映画対比表7部分においては、艦体が画面手前に来たときに、艦体側面が注視点となるように描かれている。
 これに対して、被告映像対比表7部分においては、艦体が画面手前に来たときに、艦橋が注視点となるように描かれている。
 したがって、上記両映像は、映像における注視点を異にしている。
(d) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c 原告の主張に対する反論
(a) 原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は、いずれも概括的事項であるにすぎず、原告指摘の点が具体的にどのように表現されているかを検討すれば、上記bのとおり、両映像で大きく異なる。
(b) また、原告が上記両映像の共通点として指摘している点については、先行する漫画、アニメーション作品及びプラモデルの外箱等において、ごく一般的に表現されていた内容のものにすぎず、両映像を対比するに当たって、格別に重要な部分であるとはいえない。
 すなわち、全体として暗い背景の中に艦首先端上端の円形切れこみと艦首大型発射口を備えた艦首が大きくデフォルメして描かれていることについては、乙第37号証の4、乙第39号証の1、乙第40号証、乙第42号証、乙第44号証の1、乙第72号証(2頁)に、艦体の上部が暗灰色系統に、下部が暗赤色系統に彩色されていることについては、戦艦等において一般的に採用されていた上に、乙第69号証(58頁)、乙第73号証に、艦尾のロケットエンジン、補助エンジンが輝いて描かれていること、及び艦尾の尾翼が放射状に描かれていることについても、乙第37号証の3、乙第46号証、乙第47号証、乙第69号証(90頁)に、艦体が画面右奥から接近し、左舷を見せて右に旋回する印象を与えた後、画面奥に去っていく様子が描かれていること、及び画面奥に去っていく際に、艦体像が次第に縮小していく映像として描かれていることについても、乙第68号証の1(18ないし21頁)、乙第74号証、乙第75号証に、それぞれ表現されている。
(シ) 別紙対比表8の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画対比表8部分と、被告映像対比表8部分である。
b 対比
(a) 本件映画対比表8部分においては、艦体が画面手前方向に航行してくるに従って、艦首上部中央が画面中央に拡大され、その後画面下方に消え去っていく状態が、艦首前下方の視点から仰角の角度で描かれている。
 これに対して、被告映像対比表8部分においては、艦体が画面手前方向にゆっくり航行してくる途中に、艦体や背景とは関連なく、画面上に文字を表示するための白色光が、画面中央部に発生して画面全体に拡大し、その後白色光の中から遊技者(看者)に対するメッセージ「チャンスタイム100回」が現れる状態が、甲板上方の視点から俯角の角度で描かれている。
 また、本件映画対比表8部分においては、暗黒の背景の中に、艦体が暗灰色に暗く描かれ、惑星のごく一部を除き、全体的に暗い色調で目立たない態様にて表現されている。
 これに対して、被告映像対比表8部分においては、暗青色の背景の中に、艦体がメタリック調、かつ、光に照らされて描かれ、艦体背後に星雲が輝いて描かれるとともに、画面中央部に拡大する白色光及び白色光の中から現れた文字が輝いて描かれ、全体的に明るい色調でメリハリのある態様にて表現されている。
 したがって、上記両映像は、映像の基本的な構成を異にしている。
(b) 本件映画対比表8部分においては、艦首越しに艦橋が見える状態(1コマ目)から艦首が消え去り艦橋のみがアップになる状態(6コマ目)までが、35フレーム(約1秒)で表現されている。
 これに対して、被告映像対比表8部分においては、艦橋の大きさが画面の縦幅の約半分の状態(1コマ目)から画面の縦幅と同等となる(6コマ目)までに、378フレーム(約12秒)を要して表現されており、非常にゆっくりと移動していることが表現されている。
 したがって、上記両映像は、航行速度の表現態様を基本的に異にしている。
(c) 本件映画対比表8部分においては、全体的にほの暗く描かれており、背後の惑星から離脱した艦体が暗い色調のまま静かにかつ急速に接近してきており、全体として地味な印象を受ける。
 これに対して、被告映像対比表8部分においては、艦体が当初から光に照らされており、これに加えて「チャンスタイム100回」の文字の周囲から発せられる光により、艦体が更に明るく照らされる状態が描かれ、光により艦体を際立たせて描かれている。このため、艦体が非常にゆっくりと移動していることと相まって、全体として非常に華やかな印象を受ける。
 したがって、上記両映像は、艦体の明暗表現及び映像から受ける印象を異にしている。
(d) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c 原告の主張に対する反論
(a) 原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は、いずれも概括的事項であるにすぎず、原告指摘の点が具体的にどのように表現されているかを検討すれば、上記bのとおり、両映像で大きく異なる。
(b) また、原告が上記両映像の共通点として指摘している点については、先行する漫画、アニメーション作品及びプラモデルの外箱等において、ごく一般的に表現されていた内容のものにすぎず、両映像を対比するに当たって、格別に重要な部分であるとはいえない。
 すなわち、艦体の艦橋正面像が、艦橋像の拡大により、最終段階では画面全体を満たすように描かれることについては、艦体を撮影する際の一般的な手法として定着していた上に、乙第41号証(8ないし11頁)、乙第43号証(2、3頁)、乙第72号証(3頁)、乙第76号証(5頁)に、宇宙空間であることを示す暗い背景の中で、艦体が相対的に明るく描かれることについても乙第44号証の1、乙第44号証の2に、それぞれ表現されている。
(ス) 別紙対比表9の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画のうちの別紙A 9 の静止画に対応する動画映像部分( 以下「A 9 映像」という。)と、被告パチンコ映像のうちの別紙B9の静止画に対応する動画映像部分(以下「B9映像」という。)である。
b 対比
(a) A9映像においては、艦体が画面奥から画面手前に向けて航行してくるに従って、艦首が徐々に画面下方に消え去った後、艦橋がアップになって強調され、更には艦橋が視点の下方を通過していく状態が描かれている。
 これに対して、B9映像においては、艦体正面の視点から、艦体が画面奥から画面手前に向けてゆっくり航行してくるに従って、艦首発射口がアップになって強調されるとともに、航行してくる途中に、艦体や背景とは関連なく、画面中央部に文字を表示するための光の帯が発生し、その後、光の帯の中から遊技者(看者)に対するメッセージ「」FEVER が現れ、艦体(艦首発射口)がその文字に衝突する直前で停止する状態が描かれている。
 また、A9映像においては、暗黒の背景の中に、艦体が暗灰色及び暗赤色に暗く描かれ、惑星のごく一部を除き、全体的に暗い色調で目だたない態様にて表現されている。
 これに対して、B9映像においては、暗青色の背景の中に、艦首発射口及び主翼の補助エンジンが輝いて描かれ、艦体背後に星雲が輝いて描かれるとともに、画面中央部に発生する光の帯及び光の帯から現れた文字が輝いて描かれており、全体的に明るい色調でメリハリのある態様にて表現されている。
 したがって、上記両映像は、映像の基本的な構成を異にしている。
(b) A9映像においては、略正五角形の艦体上に、三角形状の艦橋が描かれている。
 これに対して、B9映像においては、下記に示すように、八の字型の艦体の左右に、三角形状の巨大な翼が描かれているが、艦橋は全く描かれていない。
 したがって、上記両映像は、艦体の基本的な構成及び表現態様が全く異なっている。
(c) A9映像においては、1コマ目から8コマ目までの約6秒の間に、艦体全体が描かれた状態(1コマ目)から艦橋のみがアップとなり消え去る状態(7,8コマ目)までが描かれている。
 これに対して、B9映像においては、1コマ目から8コマ目までの約6.5秒の間に、艦首発射口の大きさが画面の縦幅の1/5程度の状態(1コマ目)から画面の縦幅の1/3程度の状態(8コマ目)となるまでが描かれており、艦体が非常にゆっくりと移動していることが表現されている。
 したがって、上記両映像は、航行速度の表現態様を異にしている。
(d) A9映像においては、全体的に暗い色調の中で、背後の惑星から離脱した艦体が、暗い色調のまま静かにかつ急速に接近した後、看者の下を通過していく様子が描かれており、全体として地味な印象を受ける。
 これに対して、B9映像においては、全体的に明るく照らされた中で、艦体が非常にゆっくりと移動しており、稲妻を伴った光の帯が画面中央に発生した後、「FEVER」の文字が輝き、この文字から発せられる光により、艦体自体が明るく照らされており、全体として非常に華やかな印象を受ける。
 したがって、上記両映像は、映像から受ける印象を異にしている。
(e) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c 原告の主張に対する反論
(a) 原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は、いずれも概括的事項であるにすぎず、原告指摘の点が具体的にどのように表現されているかを検討すれば、上記bのとおり、両映像で大きく異なる。
(b) 原告は、B9映像の艦体においては、主翼が明確に描かれていないから、主翼の有無は副次的な要素にすぎない旨主張する。
 しかし、B9映像においては、左右の主翼のほぼ中央部に、明るく光る補助エンジンが描かれており、特に画面右部分は背景が明るく輝いているため、右側部分の主翼について明確に確認することができるから、原告の上記主張は根拠を欠いている。
(c) 原告は、被告らが、対比部分の対象とした本件映画の部分は、原告が対比の対象として特定している範囲を越えている旨主張する。
 しかし、動画においては、一連の映像から受ける印象を基に対比すべきであるところ、本件映画対比表9付近の部分においては、画面奥に比較的小さく描かれた艦体が、徐々に手前に向けて航行し、艦首が画面下方に消え去り、最終的には艦橋がアップになることによって、看者の真下を艦体が通過することを印象付けている点において、表現上の特徴を有している。
 したがって、被告らが指摘をした本件映画中の上記一連のコマ部分は、対比を行う上で不可欠な部分であり、上記コマ部分に対応する映像の有無は、同一性ないし類似性を判断する上で不可欠というべきであり、原告の上記主張は理由がない。
(d) また、原告が上記両映像の共通点として指摘している点については、先行する漫画、アニメーション作品及びプラモデルの外箱等において、ごく一般的に表現されていた内容のものにすぎず、両映像を対比するに当たって、格別に重要な部分であるとはいえない。
 すなわち、艦首先端上端に円形の切れこみと艦首発射口を備えた艦首部が大きくデフォルメされて描かれていることについては、乙第37号証の4、乙第39号証の1、乙第40号証、乙第42号証、乙第44号証の1、乙第72号証(2頁)に、宇宙空間であることを示す全体として暗い背景の中で、相対的に明るい暗灰色系統に艦体が彩色されていることについては、乙第44号証の1、乙第44号証の2に、艦体が看者に向かって接近してくる様子が、艦体像の拡大によって描かれ、最終段階では艦首部が看者にのしかかるように描かれていることについては、乙第41号証(8ないし11頁)に、それぞれ表現されている。
(セ) 別紙対比表10の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画対比表10部分と、被告パチンコ映像のうちの別紙B10の静止画に対応する動画映像部分(以下「B10映像」という。)である。
b 対比
(a) 本件映画対比表10部分においては、画面を上下に2分し、下半分に暗緑色の天体が大きく描かれるとともに、画面中央部に艦体が天体と宇宙空間の境界線に重なるように、艦底を天体側に向けて描かれており、天地を逆転させることなく表現されている。
 これに対して、B10映像においては、画面の左上角部分に、青白く輝く地球が画面の3分の1程度を占めるように斜線を画して描かれるとともに、画面中央部に艦体が、地球と宇宙空間の境界線に重なることなく、甲板側を地球に向けて小さく描かれており、天地を逆転させて表現されている。
 また、本件映画対比表10部分においては、宇宙空間を移動することなく浮遊、静止している艦体の周りを、複数の飛行機が様々な方向に飛行している状態が描かれている。
 これに対して、B10映像においては、艦体が宇宙空間を画面奥から画面手前に向けて航行してくるとともに、艦体から発射された炎状の物体のすべてが軌跡を残しつつ、画面手前方向に向かって来る状態が描かれている。
 さらに、本件映画対比表10部分においては、暗青色の宇宙空間の中に、天体が暗緑色に描かれるとともに、艦体も薄暗く描かれ、全体として暗い色調で目立たない態様にて表現されている。
 これに対して、B10映像においては、暗青色の宇宙空間の中に、地球が青白く輝いて描かれ、明るく輝く艦首発射口や補助エンジンを含め艦体が明るく描かれるとともに、艦体から発射された炎状の物体の軌跡も明るく描かれ、全体的に明るい色調でメリハリのある態様にて表現されている。
 したがって、上記両映像は、映像の基本的な構成を全く異にしている。
(b) 本件映画対比表10部分においては、艦体が、艦体正面から、艦橋部分を除きほとんど凹凸のない小判形状で描かれている。
 これに対して、B10映像においては、艦体は、艦橋が描かれていない一方で、左右に伸びた主翼及び主翼中央部の補助エンジンを有し、凹凸のある形状で描かれている。
 したがって、上記両映像は、艦体の表現態様を全く異にしている。
(c) 本件映画対比表10部分においては、薄暗い宇宙空間の中で、艦体が天体の上方に浮遊、静止しているとの印象を受ける。
 これに対して、B10映像においては、艦体が青白く輝く地球の横を、画面手前方向へ航行して来るとの印象を受ける。
 したがって、上記両映像は、映像から受ける印象を異にしている。
(d) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c 原告の主張に対する反論
(a) 原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は、いずれも概括的事項であるにすぎず、原告指摘の点が具体的にどのように表現されているかを検討すれば、上記bのとおり、両映像で大きく異なる。
(b) 原告は、B10映像においては、艦体の輪郭や主翼は判然としない旨主張するが、B10映像においては、背景である暗黒の宇宙に対して、主翼中央部の補助エンジンと左右の主翼が、白色で明確に描かれており、また、看者の注意を惹くように描かれており、十分に確認可能である。
(c) また、原告が上記両映像の共通点として指摘している点については、先行する漫画、アニメーション作品及びプラモデルの外箱等において、ごく一般的に表現されていた内容のものにすぎず、両映像を対比するに当たって、格別に重要な部分であるとはいえない。
 すなわち、艦首先端上端円形切れこみと艦首大型発射口を備えた艦体が正面から描かれていることについては、乙第37号証の4、乙第41号証(8頁)、乙第72号証(2頁)に、艦体を飛行物体がかすめて飛ぶ様子が描かれていることについては、乙第76号証(2ないし4頁)に、宇宙空間であることを示す暗い背景の中に、惑星様の天体の一部が描かれていることについては、乙第69号証(55、90頁)に、それぞれ表現されている。
(ソ) 別紙対比表11の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画対比表11部分と、被告映像対比表11部分である。
b 対比
(a) 本件映画対比表11部分においては、前方正面上方には、中央に向かって狭まっていく逆台形状の上方パネル、同中央には、中央に向かって狭まっていく太い格子を複数有する窓、同下方には、中央に向かって狭まっていく台形状の床が描かれるとともに、左右には、中央に向かって狭まっていく三角形状の側壁が描かれており、全体として奥行き感のある構図で描かれている。
 これに対して、被告映像対比表11部分においては、上部には、長方形状の上方パネル、中央には、格子を有しない長方形状の中央パネル、下部に長方形状の床が描かれ、左右の側壁は描かれておらず、全体として奥行き感のない平面的な構図で描かれている。
 また、本件映画対比表11部分は、暗青色や茶系色を基調とした、全体的に暗い色調で描かれているのに対して、被告映像対比表11部分は、発光した青色系の色を基調とした、全体的に明るい色調で描かれており、両映像は全体的な色調を異にしている。
 さらに、被告映像対比表11部分においては、艦橋内部が、半透明化された状態で上方から下方に移動している図柄の後方に描かれており、これに対して、本件映画対比表11部分においては、艦橋内部が半透明化された図柄を介することなく描かれている。
 したがって、上記両映像は、映像の基本的な構成を異にしている。
(b) 本件映画対比表11部分においては、上方パネル、格子を有する窓及び床のすべてが、全体的に暗い中に描かれており、また、それぞれの境界を明確に区切って描かれていることから、閉鎖的な室内にいるような印象を受ける。
 これに対して、被告映像対比表11部分においては、上方パネル、前方パネル及び床のすべてが、青く発光して描かれており、また、それぞれの境界を明確に区切ることなく一体的に描かれていることから(前方パネルに格子がないのも区切りなく表現するためである。)、全体として開放的な空間の印象を受ける。
 したがって、上記両映像は、上方パネル、前方パネル及び床の表現態様において異なっており、映像から受ける印象を異にしている。
(c) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c 原告の主張に対する反論
(a) 原告は、上記両映像では、遠近法が強調されている点が共通していると主張するが、被告映像対比表11部分においては、遠近法が強調されているとはいえない。
(b) 原告は、上記両映像では、床には、手前に艦長席、前方にその他の者の席が置かれ、その中間の床中央部に一個の装置が配置され、これを挟んで2席が置かれている様子が描かれていることにおいても、共通している旨主張する。
 しかし、原告の指摘する上記の点は、先行する映画、アニメーション作品である、乙第48号証(3頁)、乙第68号証の4(2、3頁)、乙第76号証(6頁)に、一般的に表現されており、上記両映像を対比するに当たって、重要な事項であるとはいえない。
(c) また、原告は、P1P2訴訟において、本件訴訟の乙第93号証の152頁に記載されている、P1作成に係る艦橋内部の図柄について、「丁5 152ページには、第一艦橋・ラフ稿のP1図柄が存在するが、同P1図柄は曖昧模糊としており、著作物性を有し得ない。また、同ページの第一艦橋・天井及び時計・ラフ稿のP1図柄の表現は、明らかに本件映画対比表11部分中の表現と異なっている。」と主張し、上記の図柄と本件映画対比表11部分とは非類似であると主張している。
 ところで、上記の図柄には、原告が、本件映画対比表11部分と被告映像対比表11部分との間の共通点として指摘している点がそのまま表現されており、それにもかかわらず、原告は、上記の図柄と本件映画対比表11部分は非類似であると主張していることから、本件映画対比表11部分と被告映像対比表11部分とが類似していないことが裏付けられる。
(タ) 別紙対比表12の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画のうちの別紙A12の静止画に対応する動画映像部分(以下「A12映像」という。)と、被告映像対比表12部分である。
b 対比
(a) A12映像における艦長は、垂れ下がった帽子、顔面全体にわたり一体的かつ丸みを帯びた輪郭で生えた真っ白な鬚、襟に張りがない服装をしており、このことからおおらかな印象を与えるとともに、襟が大きく開いており、顔全体がどの角度からでも見えることから、開放的な印象を与え、全体として慈父のような人物として描かれている。
 これに対して、被告映像対比表12部分における艦長は、上部が大きく張りを持って膨らんだ帽子、襟に張りを持った服装をしており、このことから神経質な印象を与えており、これとともに、口髭と顎鬚に分離したギザギザした輪郭をもったくすんだ灰色の鬚、大きな襟がほぼ目の高さまで覆いかぶさり、ほぼ正面からしか顔をみることができない服装をしていることから、閉鎖的で近寄り難い人物として描かれている。
 したがって、上記両映像は、人物に関する印象を基本的に異にしている。
(b) A12映像においては、艦長は、ゆっくりと立ち上がり口を開く様子が描かれており、冷静に意見を述べているとの印象を受ける。
 これに対して、被告映像対比表12部分(FEVER 映像)においては、手を体の横に下げた状態で、口を開くことも身動きすることもなく佇んでいる様子が描かれており、緊迫した状況を静かに見守っているとの印象を受ける。
 したがって、上記両映像は、映像から受ける印象を基本的に異にしている。
(c) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c 原告の主張に対する反論
 原告が指摘している上記両映像の共通点は、先行するアニメーション作品である乙第49号証において、一般的に表現されていたものにすぎず、両映像の対比において、さほど重要であるとはいえない。
(チ) 別紙対比表13の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画対比表13部分と、被告映像対比表13部分である。
b 対比
 本件映画対比表13部分における医師と被告映像対比表13部分における医師とでは、顔の輪郭、眉の形状、鼻の形状、口の形状、かけている眼鏡の形状及び眼鏡と目との位置関係、服装が異なっており、全く別人との印象を受ける。
 また、本件映画対比表13部分においては、書斎風の部屋で酒を飲んでいる様子が描かれているのに対して、被告映像対比表13部分においては、機械室で佇んでいる様子が描かれている。
 したがって、上記両映像は、描かれている人物及び場面を基本的に異にしており、同一であるとも、類似しているともいえない。
c 原告の主張に対する反論
(a) 原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は、いずれも概括的事項であるにすぎず、原告指摘の点が具体的にどのように表現されているかを検討すれば、上記bのとおり、両映像で大きく異なる。
(b) 本件映画対比表13部分における医師のキャラクターは、P1が作成したものであるところ、本件映画対比表13部分に先行してP1が作成した同一作品中で、本件映画対比表13部分における医師とほぼ同一のキャラクターと、被告映像対比表13部分における医師とほぼ同一のキャラクターが、それぞれ全く別個の人物として描き分けられている(乙39の2、3)。
(ツ) 別紙対比表14の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画対比表14部分と、被告映像対比表14部分である。
b 対比
(a) 本件映画対比表14部分においてのロボットは、頭部や胴体にアナログ計器を有し、背面と肘部分とがホース様部材で接続され、アナログ的で現代のロボットとの印象を受ける。
 これに対して、被告映像対比表14部分においてのロボットは、アナログ計器を有することもなければ、各部がホース様部材で接続されていることもなく、更には下半身に人間の足状のものを有していないため、常に浮遊しているような、未来的なロボットであるとの印象を受ける。
 したがって、上記両映像は、ロボットの基本的な構成及び印象を異にしている。
(b) 本件映画対比表14部分においては、頭部が胴体よりも幅狭かつ縦長であり、頭頂部が鶏冠状の3つの部分で分断され、その左右部分は斜面状にガラスで覆われるとともに、正面中央部に3つのアナログ計器が縦に配置され、下部左右端にアンテナ状のものが設けられている。
 これに対して、被告映像対比表14部分においては、頭部が胴体と同幅かつ横長であり、頭頂部に小さな帽子状の突起物が形成され、該突起物の左右に眼球状のものが設けられ、その下部に鼻様のものが設けられており、頭頂部左右部分のガラス、アナログ計器、アンテナ状のものは設けられていない。
 したがって、上記両映像は、頭部の形状、構成を基本的に異にしている。
(c) 本件映画対比表14部分においては、下半身が全体として人間の下半身状であり、人間同様に2本の足状のものが設けられ、地面を歩くというような印象を受ける。
 これに対して、被告映像対比表14部分においては、下半身が、人間の下半身状ではなく円錐状であり、人間の足状のものが設けられておらず、常に浮遊しているような印象を受ける。
 したがって、上記両映像は、下半身の形状、構成及び印象を異にしている。
(d) 本件映画対比表14部分においては、当初、隙間なく接合されていた頭部、胴体及び下半身が、それまでの接合状態が解除されて完全に分離し、頭部及び胴体がそれぞれ独立した物体として、別々の方向へ飛んでいく状態が描かれている。これに対して、被告映像対比表14部分においては、頭部、胴体及び下半身の間には常時隙間が存在し、この隙間の量が変化することにより、身をよじる状態が描かれている。
 このため、本件映画対比表14部分においては、頭部、胴体及び下半身が完全に分離し、頭部及び胴体が、全く別個の物体を形成しているとの印象を受ける。これに対して、被告映像対比表14部分においては、頭部、胴体及び下半身の間の隙間の量は変化するものの、頭部、胴体及び下半身が完全分離することはなく、不即不離の関係を保ちつつ、1個のロボットを形成しているとの印象を受ける。
 したがって、上記両映像は、頭部、胴体、下半身が分離する際の表現態様及び映像から受ける印象を異にしている。
(e) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c 原告の主張に対する反論
(a) 原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は、いずれも概括的事項であるにすぎず、原告指摘の点が具体的にどのように表現されているかを検討すれば、上記bのとおり、両映像で大きく異なる。
(b) 寸胴の胴体に手足がついていることや、ロボットの頭、胴及び下半身が分離することは、いずれもアイデアにすぎない。
(c) 寸胴の胴体に手足が付いてるロボットは、先行作品である乙第50号証(3頁)に、頭部、胴部及び下半身が分離するロボットも、先行作品である乙第51号証に表現されており、一般的なものである。
イ 被告パチスロ映像との対比
(ア) 別紙対比表15の対比
 本件映画の波動砲発射場面と被告パチスロ映像の大ヤマト砲発射場面とでは、個々の場面を検討すれば、後記(イ)ないし(ケ)のとおり、同一であるとも、類似しているともいえないが、全体的な一連の流れを検討した場合にも、基本的な構成、表現態様、表現目的が異なっており、同一であるとも、類似しているともいえない。
(イ) 別紙対比表16の「待機映像」の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画のうちの別紙A16の静止画に対応する動画映像部分(以下「A16映像」という。)と、被告パチスロ映像のうちの別紙B16−1の静止画に対応する動画映像部分(以下「B16−1映像」という。)である。
b 対比
 前記ア(イ)と同じ理由により、A16映像とB16−1映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
(ウ) 別紙対比表16の「大ヤマト砲発射確定バージョン」の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、A16映像と、被告パチスロ映像のうちの別紙B16−2の静止画に対応する動画映像部分(以下「B16−2映像」という。)である。
b 対比
 前記ア(ウ)と同じ理由により、A16映像とB16−2映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
(エ) 別紙対比表17の「待機映像」の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画対比表17部分と、被告映像対比表17待機映像部分である。
b 対比
 前記ア(エ)と同じ理由により、本件映画対比表17部分と被告映像対比表17待機映像部分は、同一であるとも、類似しているともいえない。
(オ) 別紙対比表17の「大ヤマト砲発射確定バージョン」の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画対比表17部分と、被告映像対比表17大ヤマト砲発射部分である。
b 対比
 前記ア(エ)と同じ理由により、本件映画対比表17部分と被告映像対比表17大ヤマト砲発射部分は、同一であるとも、類似しているともいえない。
(カ) 別紙対比表18の「待機映像」の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画のうちの別紙A18の静止画に対応する動画映像部分(以下「A18映像」という。)と、被告パチスロ映像のうちの別紙B18−1の静止画に対応する動画映像部分(以下「B18−1映像」という。)である。
b 対比
 前記ア(カ)と同じ理由により、A18映像とB18−1映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
(キ) 別紙対比表18の「大ヤマト砲発射確定バージョン」の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、A18映像と、被告パチスロ映像のうちの別紙B18−2の静止画に対応する動画映像部分(以下「B18−2映像」という。)である。
b 対比
 前記ア(キ)と同じ理由により、A18映像とB18−2映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
(ク) 別紙対比表19の「待機映像」の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画のうちの別紙A19−1の静止画に対応する動画映像部分(以下「A19−1映像」という。)と、被告パチスロ映像のうちの別紙B19−1の静止画に対応する動画映像部分(以下「B19−1映像」という。)である。
b 対比
(a) A19−1映像においては、艦体の斜め前方の離れた視点から、艦体全体が描かれるとともに、青白色の光線が艦首部の黄白色の光の球体を打ち破って、これと直交する方向に繰り返し短い周期で強弱をつけて発射される状態が描かれている。
 これに対して、B19−1映像においては、そもそも艦体が描かれておらず、画面に対峙する遊技者の視点から、画面中央に正面を向いて大きく描かれた艦首の発射口から、5本の白色光線が相互に絡まりながら、画面全体を、一方的に白色光で満たした後、原作者名等が表示される。
 したがって、上記両映像は、映像の基本的な構成を異にしている。
(b) A19−1映像においては、艦体の画面左側の対象物を、光線で攻撃しているとの印象であるのに対し、B19−1映像においては、発射口に対峙する看者に向けて光線が発射され、画面全体が真っ白になっていくことにより、看者に命中したとの印象を与えるものである。
 したがって、上記両映像は、映像から受ける印象を異にしている。
(c) A19−1映像においては、暖色系の黄白色の光の球体の中心部を突き破るように、寒色系の青白色の光線が、短い周期で強弱をつけて、繰り返し発射される状態が描かれており、寒暖や強弱という正反対の表現を組み合わせて表現がされている。
これに対して、B19−1映像においては、5本の白色光線が、
 相互に絡まりながら、画面全体を白色光で満たす状態が描かれており、一方的に発射される様子が表現されている。
 したがって、上記両映像は、光線の表現態様を基本的に異にしている。
(d) A19−1映像においては、発射された光線が、攻撃対象物へ向かって一直線に進み、命中した状態が描かれており、対象物を攻撃する武器として描かれている。
 これに対して、B19−1映像においては、大ヤマト砲の発射は、原作者名等を表示する前段階として、画面を白色光で満たす(ホワイトアウトさせる。)ための画面切り換え手段として描かれている。
 したがって、上記両映像は、映像における光線の役割及び位置付けを異にしている。
(e) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c 原告の主張に対する反論は、前記ア(ク)で主張したとおりである。
(ケ) 別紙対比表19の「大ヤマト砲発射確定バージョン」の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画のうちの別紙A19−2の静止画に対応する動画映像部分(以下「A19−2映像」という。)と、被告パチスロ映像のうちの別紙B19−2の静止画に対応する動画映像部分(以下「B19−2映像」という。)である。
b 対比
(a) A19−2映像においては、艦体全体を描き、青白色の光線が 艦首部の黄白色の光の球体を打ち破って、これと直交する方向に繰り返し短い周期で強弱をつけて発射される状態が描かれている。
 これに対して、B19−2映像においては、艦体は基本的には描かれておらず、画面のほぼ全体に、5本の光線が相互に絡まった光線の束が画面斜め方向に流れる状態が描かれている。
 したがって、上記両映像は、映像の基本的構成を異にしている。
(b) A19−2映像においては、収縮した黄白色の光の球体を、青白色の光線が突き破った上で、繰り返し短い周期で、強弱をつけて発射される状態が描かれており、一旦ON 状態(光の球体の形成、発射後の強の状態)になったものが、再びOFF 状態(光の球体が突き破られる、発射後の弱の状態)になることが表現されている。
 これに対して、B19−2映像においては、放射状に拡大した5本の太い白色の光線が相互に絡まって、更に太い光線の束となって、うねりながら発射し続けられることが描かれており、一旦ON 状態となったものは、その後にOFF 状態となることなく表現されている。
 また、A19−2映像においては、光の球体を暖色系の黄白色、突き破って発射される光線を寒色系の青白色とし、光の寒暖のコントラストを強調して描かれているのに対して、B19−2映像においては、光線はすべて黄白色で統一されて描かれている。
 したがって、上記両映像は、光線の表現態様を基本的に異にしている。
(c) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c 原告の主張に対する反論は、前記ア(ケ)で主張したとおりである。
(コ) 別紙対比表20の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画対比表20部分と、被告映像対比表20部分である。
b 対比
(a) 本件映画対比表20部分においては、主砲の砲身の先端部分のみが、発射口を強調した態様で、画面下半分に薄暗く描かれているところ、各砲身が、画面中央奥に薄暗く描かれた艦橋の前方を横切りながら、上方に大きく立ち上がり、左側に3本、右側に3本の各砲身の一部が、左右対称かつ画面全体にわたって配置されるように移動していく様子が描かれている。これに対して、被告映像対比表20部分においては、画面右奥に艦橋全体が明るく描かれ、その左側に、砲身のみならず砲台を含む1基の砲塔全体が、光のコントラストを強調して画面中央に描かれており、この砲身が艦橋を横切ることなく、わずかに上方に立ち上がるように移動する様子が描かれている。
 したがって、上記両映像は、映像の基本的な構成を異にしている。
(b) 本件映画対比表20部分においては、全体として光を強調することなく、同系色で薄暗く目立たない態様で描かれているとの印象を受けるのに対し、被告映像対比表20部分においては、全体として光のコントラストを強調した態様で描かれているとの印象を受ける。
 したがって、上記両映像は、映像から受ける印象を基本的に異にしている。
(c) 本件映画対比表20部分においては、2基の主砲の、砲身全体ではなく、一部のみが描かれており、艦橋を挟んでほぼ左右均等に薄暗く描かれているのに対して、被告映像対比表20部分においては、砲塔、砲身を含め、1基の主砲全体を画面中央に大きく描き、その後方にもう1基の主砲を小さく描くことで、前方の主砲をより強調しており、また、光を受けている部分とそうでない部分とで光の明暗のコントラストを強調して描き分けている。
 また、本件映画対比表20部分においては、最初は、2基の主砲の各砲身の大きさはばらばらであったが、砲身が艦橋前方を横切って大きく上方に移動することにより、ほぼ同程度の大きさに描かれ、2基の主砲が、艦橋を挟んでほぼ左右対称な位置に移動し、画面全体に配置される状態が描かれているのに対して、被告映像対比表20部分においては、画面中央に描かれた1基の主砲の砲身が、若干上方に移動する様子が描かれているにすぎない。
 さらに、本件映画対比表20部分においては、艦体正面から艦橋と砲身の一部のみが描かれているため、艦橋と主砲との距離感を認識できないのに対して、被告映像対比表20部分においては、艦体略左斜め前方から、主砲の後方に艦橋が描かれるとともに、主砲と艦橋との間の甲板上の物体が描かれているため、艦橋と主砲との距離感を認識できる表現となっている。
 したがって、上記両映像は、主砲及び艦橋の表現態様を基本的に異にしている。
(d) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c 原告の主張に対する反論
(a) 原告が、上記両映像において共通していると主張している部分は、各砲塔に3門ずつの砲身が描かれていること、それらが上方に立ち上がるという程度の概括的事項であるにすぎない。本件においては、これらが具体的にどのように表現されているのかが、本来検討すべき対象というべきであり、このような観点から両映像を対比した場合には、両映像は、上記bのとおり、基本的に相違しているものであり、同一であるとも、類似しているともいえない。
(b) また、原告が指摘している上記両映像の共通点については、先行する映画、アニメーション作品中において、ごく一般的に表現されていたものにすぎず、両映像を対比するに当たって、格別重要な部分であるとはいえない。
 すなわち、全体として暗い画面中で、相対的に浮き出すように砲身が描かれていること、及び各砲塔に3門ずつの砲身が描かれていることについては、乙第52号証(2、3頁)、乙第53号証、乙第72号証(4ないし6頁)に、砲身が上方に立ち上がる様子が仰角で描かれていることについては、乙第72号証(7ないし9頁)に、薄暗い中で仰角の主砲の威圧感と力強さが描かれていることは、乙第41号証(6頁)に、それぞれ表現されていた。
(サ) 別紙対比表21の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画対比表21部分と、被告映像対比表21部分である。
b 対比
(a) 本件映画対比表21部分においては、主砲の砲台部分及び砲身の根本の部分が艦首に隠れた状態にあり、砲身の一部分のみが、艦体正面からの視点で、艦首及び艦橋の一部とともに薄暗く描かれている。
 これに対して、被告映像対比表21部分においては、砲身の一部分のみではなく、砲身及び砲台を含む砲塔全体が画面中央に大きく、光り輝く艦橋及び甲板とともに、艦体の左斜め前方からの視点で描かれている。
 また、本件映画対比表21部分においては、主砲から球形の光が広がり、その後に左右交互に、長い光線が左右斜め上方に発射される状態が描かれている。
 これに対して、被告映像対比表21部分においては、光線が左右交互に発射されることはなく、前方中央の主砲から、上方に光線が発射される様子が、発射口を強調して描かれている。
 したがって、上記両映像は、映像の基本的な構成を異にしている。
(b) 本件映画対比表21部分においては、左右の主砲から交互に光線が発射される状態が描かれているのに対して、被告映像対比表21部分においては、前側の主砲から光線が発射される状態のみが描かれている。
 また、本件映画対比表21部分においては、発射に先立ち、砲身から暖色系の黄白色を帯びた球形の光が広がり、その後に3本の砲身からそれぞれ黄白色の光線が発射されるのに対して、被告映像対比表21部分においては、球形の光が形成されることはなく、画面の約半分を覆う巨大な光が炸裂すると同時に、3本の砲身から寒色系の青白色の光線が発射されている。
 さらに、被告映像対比表21部分においては、光線を発射する主砲に近接した視点から、画面手前に向かって発射される光線が描かれているため、本件映画対比表21部分とは異なり、看者の頭上を発射された光線が横切っていくかのような、臨場感溢れる印象を受ける映像となっている。
 したがって、上記両映像は、光線発射時の表現態様を異にしており、映像から受ける印象をも異にしている。
(c) 本件映画対比表21部分においては、艦体外の艦首前方の位置から描かれているため、艦橋等に比較して、主砲が特に強調されているとの印象を受けないのに対して、被告映像対比表21部分においては、艦体左斜め前方の主砲に近接した位置から描かれているため、艦橋等に比較して、画面中央の主砲が大きく強調されているとの印象を受ける。
 また、本件映画対比表21部分においては、砲身の発射口からは光線が発射され、看者の注意を惹くように描かれているが、艦橋は終始薄暗く、看者の注意を惹くようには描かれていない。これに対して、被告映像対比表21部分においては、発射される光線と同様に、艦橋の窓も光り輝いて描かれているため、艦橋も光線と同様に、看者の注意を惹くように描かれている。
 また、本件映画対比表21部分においては、艦体正面から艦橋と砲身のみが、両方ともに同様に薄暗く描かれているため、艦橋と主砲との距離感を認識することができない。
 これに対して、被告映像対比表21部分においては、艦体左斜め前方から、主砲とともに、その後方に艦橋が描かれており、主砲と艦橋との間の甲板上の物体が描かれているため、艦橋と主砲との距離感を認識できる表現となっている。
 したがって、上記両映像は、主砲及び艦橋の表現態様を異にしている。
(d) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c(a) 原告が上記両映像に共通していると主張している部分は、暗い画面の中に3門の砲身が描かれており、砲身から青白色の輝度の高い光線が発射され、明るく照らされるという程度の概括的事項にすぎない。本件においては、これが具体的にどのように表現されているのかが、本来検討すべき対象というべきであり、このような観点から上記両映像を対比した場合には、上記bのとおり、両映像は、映像の基本的な構成、発射時の表現態様、主砲及び艦橋の表現態様において、基本的に異なっており、相互に同一であるとも、類似しているともいえない。
(b) 原告が上記両映像の共通点として指摘している点については、先行する漫画、映画、アニメーション作品中において、ごく一般的に表現されていたものにすぎず、A19−2映像と被告映像を対比するに当たって、格別重要な部分であるとはいえない。
 すなわち、全体として暗い画面中で相対的に浮き出すように砲身が描かれていること、各砲塔に3門ずつの砲身が描かれていること、砲身が仰角で描かれていることについては、乙第41号証(6頁)乙第52号証(2、3頁)、乙第53号証、乙第72号証(4ないし6頁)に、砲身から輝度の高い光線が3条発射される様子が描かれていることについては、乙第37号証の1(3、4頁)、乙第41号証(2、3頁)に、発射時に爆焔が描かれていること、発射時の光線によって、艦体本体が一瞬明るく照らされる様子が描かれていることについては、乙第52号証(4頁)に、それぞれ表現されていた。
(シ) 別紙対比表22の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画対比表22部分と、被告パチスロ映像のうちの別紙B22の静止画に対応する動画映像部分(以下「B22映像」という。)である。
b 対比
(a) 本件映画対比表22部分においては、艦体外の固定的な視点で、艦体上に設置された多数の薄暗く描かれた小砲塔から、爆焔等を伴うことなく、暖色系の地味な橙色の細い光線を、順次淡々と発射している状態を描いているのに対して、B22映像においては、画面の下半分に小砲塔1基をコントラストを強調しつつ大きく描き、パチンコ機の遊技者側からの視点で、当該小砲塔が大きな爆焔を伴いながら、寒色系の青白色の太い光線を発射している状態が描かれている。
 したがって、上記両映像は、画面構成、光線発射の態様、色調、明暗及び視点のいずれの点においても、映像の基本的な構成を異にし、その結果として、本件映画対比表22部分からは、発射シーンが客観的に描かれているとの印象を受けるのに対して、B22映像からは、パチンコ機の遊技者自身が参加して、画面上に大きく描かれた小砲塔から光線を発射しているとの印象を受けるもので、映像から受ける印象をも異にしている。
(b) 本件映画対比表22部分においては、艦体外の固定的な視点から、多数の小砲塔が同一方向にゆっくり旋回しながら(具体的には、光線発射の方向が、左上方(1コマ目)から真上(4コマ目)までの約45度旋回するのに、01:13:28:11 から01:13:30:04 までの53フレーム(約2秒)を要している。)、光線を発射している状態が描かれており、スピード感に乏しい映像となっているのに対して、B22映像においては、画面の下半部に大きく描かれた小砲塔が、高速で旋回しながら(具体的には、光線発射の方向が、左上方(1コマ目)から約45度旋回するのに、01:01:02:03 から01:01:02:11 までの8フレーム(約0.27秒)しか要しておらず、小砲塔が、本件映画対比表22部分の約7倍の速度で旋回していることが明らかである。)、光線を発射している状態が描かれており、スピード感溢れる映像となっている。
 また、発射された光線自体についてみた場合にも、本件映画対比表22部分においては、画面のおおよそ縦幅分の4分の1相当を移動するのに、10フレーム(約0.3秒)を要しており、これを、画面の縦幅分を移動する場合に換算すると、40フレーム(約1.3秒)を要することになるのに対して、B22映像においては、画面の縦幅分を移動するのに10フレーム(約0.3秒)しか要していない。
 したがって、上記両映像者は、映像のスピード感を異にしており、看者に与える印象が基本的に異なっている。
(c) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c(a) 原告が上記両映像に共通していると主張している内容は、小砲がドーム型に描かれていること、ドーム型の小砲塔から明るい破線が発射されることという程度の概括的事項にすぎない。本件においては、これらが具体的にどのように表現されているのかが、本来検討すべき対象というべきであるが、このような観点から両映像を対比した場合には、上記bのとおり、両映像は、相互に同一であるとも、類似しているともいえない。
(b) また、原告が指摘している上記両映像の共通点は、先行する漫画、映画、アニメーション作品等において、ごく一般的に表現されていたものにすぎず、両映像を対比するに当たって、格別重要な部分であるとはいえない。
 すなわち、全体として暗い中で、小砲塔が暗灰色に薄暗く浮かび上がり、明るい映像として活発に動く破線が表現されていることについては、乙第37号証の2、乙第48号証(2頁)、乙第50号証に、小砲塔がドーム型に描かれていることについても、ドーム型の小砲塔は、艦体において一般的なものであった上、乙第37号証の2、乙第43号証(4、5頁)、乙第54号証ないし56号証に、小砲塔が回転すること、及びこれに伴って明るい破線が動く様子が描かれることについては、乙第76号証(7ないし10頁)に、それぞれ表現されていた。
(ス) 別紙対比表23の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画対比表23部分と、被告映像対比表23部分である。
b 対比
(a) 本件映画対比表23部分においては、艦体が、艦体右斜め前下方の視点から艦体の丸みを強調して描かれているため、以下に示すように、艦体が、奥行きをそれほど感じさせない台形状で表現されている。
 これに対して、被告映像対比表23部分においては、艦首右斜め前方の視点から遠近法に忠実に描かれているため、艦体が奥行きを強く感じさせる三角形状に表現されている。
 また、本件映画対比表23部分においては、艦首に対して艦橋が比較的大きく描かれており、艦首と艦橋がそれほど離れていない態様にて描かれている。
 これに対して、被告映像対比表23部分においては、艦首に対して艦橋が極端に小さく描かれており、艦橋が艦首のはるか後方に存在する態様にて描かれている。
 したがって、上記両映像は、艦体の表現態様を異にしている。
(b) 本件映画対比表23部分においては、暗青色の背景の中、画面中央の艦体が徐々に拡大して描かれることで、艦体が画面手前方向へ航行してくる様子が表現されている。
 これに対して、被告映像対比表23部分においては、多数の星が輝く暗青色の宇宙空間において、画面左奥に星雲、画面中央手前に艦体がそれぞれ描かれるとともに、惑星が左へ移動することに伴って、艦体側面の明暗が変化する様子が描かれており、艦体が右方向へ移動している様子が表現されている。
 また、本件映画対比表23部分においては、艦体が若干拡大表示されるだけであるため、低速で航行しているとの印象を受ける。
 これに対して、被告映像対比表23部分においては、星や惑星が次々と画面上を移動するため、艦体が高速で航行しているとの印象を受ける。
 したがって、上記両映像は、航行の表現態様及び映像から受ける印象を異にしている。
(c) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c 原告の主張に対する反論
(a) 原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は、いずれも概括的事項であるにすぎず、原告指摘の点が具体的にどのように表現されているかを検討すれば、上記bのとおり、両映像で大きく異なる。
(b) また、原告が上記両映像の共通点として指摘している点については、先行する漫画、アニメーション作品及びプラモデルの外箱等において、ごく一般的に表現されていた内容のものにすぎず、両映像を対比するに当たって、格別に重要な部分であるとはいえない。
 すなわち、前記ア(サ)c(b)で主張したことに加え、喫水下のバルジが大きくデフォルメされて描かれていることについても、実在の戦艦等において一般的に採用されていた上に、乙第39号証の1、乙第44号証の1、乙第72号証(10頁)に、艦体が右舷を見せながら、画面右方向を向いて宇宙空間を航行する様子が、画面の大半を占めるように描かれていることについては、乙第44号証の1、乙第74号証(7、9頁)、乙第77号証に、艦底部にも艦橋が描かれていることについても、飛行船においてはごく一般的であった上に、乙第86ないし88号証に、それぞれ表現されている。
(セ) 別紙対比表24の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画のうちの別紙A24の静止画に対応する動画映像部分(以下「A24映像」という。)と、被告パチスロ映像のうちの別紙B24の静止画に対応する動画映像部分(以下「B24映像」という。)である。
b 対比
(a) A24映像においては、周囲に何も存在していない宇宙空間を、薄暗く描かれた艦体のみが航行している場面が、仰角気味の視点で描かれている。
 これに対して、B24映像においては、太陽と艦体との間に存在する惑星の影に隠れていた艦体が、画面手前側に航行するに従い、惑星の影を脱して、太陽の光に照らされ、次第に明るく輝きながら姿を現す場面が、光のコントラストを強調して、俯角の視点で描かれている。
 したがって、上記両映像は、描かれている場面及び映像の基本的な構成を異にしている。
(b) A24映像においては、艦体の航行速度が、視点からの距離に関係なく、ほぼ等速で画面上を移動するように描かれている。
 これに対して、B24映像においては、艦体の航行速度が、視点に近づくにつれて画面上を徐々に速くなるように描かれており、より現実に近い表現態様となっている。
 したがって、上記両映像は、航行シーンの速度表現の態様を基本的に異にしている。
(c) A24映像においては、艦体が画面手前に近づいて来たときに、艦体側面が注視点(看者が画面上で注目する箇所)となるように描かれている。
 これに対して、B24映像においては、艦体が画面手前に近づいて来たときに、艦橋が注視点となるように描かれている。
 したがって、上記両映像は、映像における注視点を異にしている。
(d) A24映像においては、艦体には翼、円盤等がなく、船の形状そのものとして描かれているのに対して、B24映像においては、艦体側面前方に巨大な円盤、艦体側面後方に巨大な翼が備わっており、飛行物体を想起させる形状として描かれている。
 また、A24映像においては、艦体全体が薄暗く描かれており、細部まで十分認識できないように描かれているのに対して、B24映像においては、艦橋等の自ら発光している部位のほか、太陽の光を受けて輝いて描かれており、細部まで十分認識できるように、コントラストを強調して描かれている。
 したがって、上記両映像は、艦体の構成及び表現態様を異にしている。
(e) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c 原告の主張に対する反論
(a) 原告が上記両映像の共通点として指摘する事項は、いずれも概括的事項であるにすぎず、原告指摘の点が具体的にどのように表現されているかを検討すれば、上記bのとおり、両映像で大きく異なる。
(b) また、原告が上記両映像の共通点として指摘している点については、先行する漫画、アニメーション作品及びプラモデルの外箱等において、ごく一般的に表現されていた内容のものにすぎず、両映像を対比するに当たって、格別に重要な部分であるとはいえない。
 すなわち、前記ア(サ)c(b)で主張したことに加え、主艦橋が3層で表現されていることについては、既存の戦艦大和を初めとして、数多くの艦体において、実際に採用されており(乙43。原告自身も、「宇宙戦艦ヤマト」は、実在していた「旧日本海軍戦艦大和を改造して建造された」ものであることを認めている。)、艦体が画面右奥から左手前に左舷を見せながら横切る様子が若干仰角気味に次第に拡大していく映像として描かれていることについては、乙第41号証(4ないし6頁)、乙第94号証、乙第95号証に、それぞれ表現されている。
(ソ) 別紙対比表25の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画対比表25部分と、被告パチスロ映像のうちの別紙B25の静止画に対応する動画映像部分(以下「B25映像」という。)である。
b 対比
 前記ア(サ)と同じ理由により、本件映画対比表25部分とB25映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
(タ) 別紙対比表26の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画対比表26部分と、被告映像対比表26部分である。
b 対比
(a) 本件映画対比表26部分と、被告映像対比表26部分では、基本的構図が異なる。
(b) 本件映画対比表26部分は、暗青色や茶系色といった、全体的に暗い目立たない色調で描かれているのに対して、被告映像対比表26部分は、発光した青色を基調とした、全体的に明るい色調で描かれており、上記両映像は全体的な色調を異にしている。
 したがって、上記両映像は、基本的構図、色調といった映像の基本的な構成を異にしている。
(c) 本件映画対比表26部分においては、上方パネル、格子を有する窓及び床のすべてが、全体的に暗い中に描かれており、また、それぞれの境界を明確に区切って描かれていることから、閉鎖的な室内にいるような印象を受ける。
 これに対して、被告映像対比表26部分においては、上方パネル、前方パネル及び床のすべてが、青く発光して描かれており、また、それぞれの境界を明確に区切ることなく一体的に描かれていることから(前方パネルに格子がないのも区切りなく表現するためである。)、全体として広がりのある空間の印象を受ける。
 したがって、上記両映像は、上方パネル、前方パネル及び床の表現態様において異なっており、全体から受ける印象を異にしている。
(d) 本件映画対比表26部分における上方パネルは、床に対して大きく傾斜するように描かれているのに対して、被告映像対比表26部分における上方パネルは、天井と一体となり、かつ、床と平行に近い面として描かれており、両映像は、上方パネルの表現態様を異にしている。
(e) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c 原告の主張に対する反論は、前記ア(ソ)で主張したとおりである。
(チ) 別紙対比表27の対比
a 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画対比表27部分と、被告パチスロ映像のうちの別紙B27の静止画に対応する動画映像部分(以下「B27映像」という。)である。
b 対比
(a) 本件映画対比表27部分においては、左舷斜め後方の視点から、艦首、2基の主砲が天体の一部に重なる態様で描かれているのに対して、B27映像においては、画面中央手前に艦首及び主砲が、岩石と重なることなく描かれている。
 また、本件映画対比表27部分においては、暗青色の背景の中に、天体が暗灰色に描かれるとともに、艦体が灰青色に暗く描かれ、全体的に暗い色調で目立たない態様にて描かれているのに対して、B27映像においては、艦体がメタリック調、かつ、輝いて描かれるとともに、多数の輝く星が描かれており、全体的に明るい色調でメリハリのある態様にて表現されており、全体の色調が異なっている。
 また、本件映画対比表27部分においては、艦体が主砲の照準を天体に合わせる状態が客観的に描かれているとの印象を受けるのに対して、B27映像では、パチスロ機の遊技者の視点で、画面中央奥に描かれた天体に対して、遊技者自身が主砲を発射しているとの印象を受ける。
 また、本件映画対比表27部分においては、艦首が天体に大きく重なるように描かれており、艦体と天体とがかなり接近しているとの印象を受けるのに対して、B27映像においては、艦首が岩石と重なることなく描かれており、艦体と岩石とが離れているとの印象を受ける。
 したがって、上記両映像は、映像の基本的な構成及び映像から受ける印象を異にしている。
(b) 本件映画対比表27部分においては、3基の砲塔が、砲身のみならず砲台をも含めて描かれているのに対して、B27映像においては、1基の砲塔が、砲台は描かれずに砲身のみが大きく描かれており、その根本の部分には本件映画対比表27部分の砲身には存在していない放熱カバーを備えている。
 また、本件映画対比表27部分においての天体は、下半分が滑らかな半球形であり、かつ、上部に多数の構造物が描かれており、天体都市との印象を受けるのに対して、B27映像においての岩石は、下半分が大きな凹凸を伴った円錐形であり、かつ、上部には構造物も描かれておらず、巨大な岩石との印象を受ける。
 したがって、両映像は、砲身の構成、攻撃対象物の形状及び印象を異にしている。
(c) 本件映画対比表27部分は、あらかじめ展開の決まった映像であり、しかも、主砲が発射される場面は描かれていないのに対して、B27映像は、あらかじめ展開の決まった映像ではなく、3つの停止ボタンの操作順序や操作間隔により、光線を発射する砲身の順序や発射間隔が変化し、遊技者の操作手順により、異なる映像が展開される。
 したがって、両映像は、映像展開を異にしている。
(d) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c(a) 原告が上記両映像の共通点として主張している部分は、艦体が灰色系統の色彩で表現されていること、半球形の天体に対して艦体が俯瞰的に描かれており、天体に照準を定めていること等という程度の概括的事項であるにすぎない。本件においては、これらが具体的にどのように表現されているのかを検討すべきであり、このような観点から両映像を対比した場合には、両映像は、上記bのとおり、基本的に相違しているから、同一であるとも、類似しているともいえない。
 なお、原告は、上記両映像は、灰色系統の色彩で表現されていること、及び、上部に構築物が描かれている半球形の天体が画面上部に描かれていることにおいても共通していると主張している。しかし、B27映像においては、艦体はメタリック調、かつ、輝いて描かれており、背景とのコントラストを強調して描かれている。また、B27映像における攻撃対象は、上部に構築物が存在しておらず、半球形でもない。したがって、原告の上記主張は、B27映像を正確に捉えた上でのものではなく、失当である。
(b) 原告が指摘する上記両映像の共通点は、先行する漫画、映画、アニメーション作品等において、ごく一般的に表現されていたものにすぎず、両映像を対比するに当たって、格別検討すべき重要な部分であるとはいえない。
 すなわち、画面上部に半球形の天体が、下部に艦体前半部が俯瞰的に描かれていることについては、乙第68号証の4(4頁)、乙第69号証(55頁)に、主砲が3門描かれ、この主砲が天体に照準を定める様子が描かれていることについては、乙第52号証(4頁)に、それぞれ表現されていた。
(ツ) 別紙対比表28の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、A12映像と、被告映像対比表28部分である。
b 対比
 前記ア(タ)と同じ理由により、A12映像と被告映像対比表28部分は、同一であるとも、類似しているともいえない。
(テ) 別紙対比表29の対比
a 対比映像
以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画対比表29部分と、被告映像対比表29部分である。
b 対比
 前記ア(チ)と同じ理由により、本件映画対比表29部分と被告映像対比表29部分は、同一であるとも、類似しているともいえない。
(ト) 別紙対比表30の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画対比表30部分と、被告映像対比表30部分である。
b 対比
 前記ア(ツ)と同じ理由により、本件映画対比表30部分と被告映像対比表30部分は、同一であるとも、類似しているともいえない。
(4) 原告は、被告製品について、本件映画の著作権の権利行使をすることができるか(争点(1)エ)について
(被告ら)
ア 乙4合意書4条2項の意味
(ア) 原告とP1との間で、平成11年1月25日、乙4合意が締結されたが、乙4合意書4条2項は、「乙(原告)は、甲(P1)がヤマト作品に関連する新作の企画を希望する場合、これに全面的に協力する。ただし、甲は、乙に対し事前に企画内容の詳細を通知し、説明する。」と定めており、同条項により、原告は、P1が原告に対して、事前に企画内容を通知して、説明した場合には、P1が作成する、「宇宙戦艦ヤマト」に関する一連の映画(以下「宇宙戦艦ヤマト作品」という。)に関連する新作について、全面的に協力する義務を負っている。
(イ) これに対して、原告は、乙4号証中の4条2項の条項は、原告とP1との協力関係を一般的に定めたものにすぎないと主張する。
 しかし、同条項は、もともとの原案では、P1が宇宙戦艦ヤマト作品に関連する新作を作成するに当たって、原告から「同意を得る必要がある。」と記載されていたものであって、単なる協力関係を一般的に定めたとか、精神的、営業政策的観点から作成された取り決めなどとはいえないものであった。ところが、 上記条項中の「同意を得る必要がある。」の部分が、P1からの要求により削除されて、「説明する。」と訂正され、宇宙戦艦ヤマト作品に関連する新作に関しては、原告に対する事前の説明を行った場合には原告の許諾を必要とするものではない旨改められた上で、合意がされたものである。
 したがって、原告の上記主張は失当である。
イ 乙4合意書4条2項が定めている協力義務は、原告がP1に対して、P1だけでなく、P1から、直接、間接に利用許諾を得た第三者に対しても、権利行使をしないことを約している内容である。
 理由は以下のとおりである。
(ア) 原告が、乙4合意書4条2項によりP1に対して負う義務は、宇宙戦艦ヤマト作品の新作である「大銀河シリーズ大ヤマト零号」(以下「大ヤマト作品」という。)に関する協力義務であるところ、当該新作が完成した場合には、それが映像作品であることから、これをP1自身が上映することよりも、第三者による映画館での上映や放送局を通じての放送が行われることが通常であり、また、第三者に対して、別途二次的利用が許諾されることも少なくないことから、P1の新作は、完成後に、製作者以外の第三者によって様々な態様で利用されることが、当然のように予定されていた。
 そうすると、乙4合意書4条2項が定めている協力義務は、P1に対する直接の協力を含んでいることだけでなく、新作完成後の第三者による上映、放送や映像DVD 作品としての販売、第三者に対する二次的利用の許諾に伴う第三者による各種製品の製造、販売等に対しても、著作権侵害等を理由とする権利行使や、その他の妨害、干渉を行わないことを、その内容として当然包含しているというべきである。
(イ) 原告が、P1以外の者に対して、乙4合意書4条2項の制約は受けないとすると、何のために協力義務を約定したのかが不明となる。
(ウ) 乙4合意書4条2項ただし書は、当初、「(原告の)同意を得る必要がある。」と記載されていたが、「(原告に)通知、説明する。」と変更され、その上で、乙4合意が合意されたのであるが、P1以外の者が同条項の制約を受けないとすると、このように乙4合意書の文言を変更した趣旨も、実質的に没却されてしまう。
(エ) P1は、宇宙戦艦ヤマト作品の新作を自由に制作できる立場と同新作の完成後の自由な利用を確保するために乙4合意を締結したものであるところ、P1以外の者が乙4合意4条2項の制約を受けないとすると、P1において自由に宇宙戦艦ヤマト作品の新作を制作等できるとの立場の確保も、実質的に無意味となる。
ウ 被告映像の基となった大ヤマト作品の制作については、ベンチャーソフト社がP1に代わって、原告に対して、その旨の説明をしているから、原告は、大ヤマト作品に対して、本件映画の著作権に基づく権利行使をすることはできない。そして、被告らは、大ヤマト作品の利用につき、ベンチャーソフト社から許諾を受け、大ヤマト作品に基づき被告映像を制作したのであるから、原告は、被告映像に対しても、本件映画の著作権に基づく権利行使をすることができない。
エ さらに、本件映画に登場するキャラクターや艦隊等の絵画の著作権は、P1に帰属しており、P2に帰属していなかった以上、甲3契約によって、原告がこれを取得するということもあり得ず、したがって、原告は、本件映画の著作権に基づき、上記キャラクターや艦隊を使用している被告映像に対して、権利行使することはできない。
(原告)
ア 乙4合意書4条2項の意味
 乙4合意書4条2項は、原告とP1との協力関係を一般的に定めたものにすぎず、P1に対して、宇宙戦艦ヤマト作品に関連する新作の制作を包括的に許諾したものではない。
 理由は以下のとおりである。
(ア) 乙合意書4条2項の文言が、一般的協力条項にすぎないことは、その文言から明らかである。
(イ) 乙4合意書4条2項末尾は、当初の「その同意を得る必要がある」との記載が、「説明する」と修正されたが、これは、原告とP1との良好な協力関係を定める同条において、対決的で法律的な「同意を得る」などとする記述がそぐわないからであって、当然のことにすぎない。仮に、同項を、原告が、P1らに対して、宇宙戦艦ヤマト作品の新作について、権利行使しないことを約したものと解釈するのであれば、これに対する相当の対価があって当然であるところ、そのような対価はない。
イ また、乙4合意書は、原告とP1との間の債権債務関係を規定したにすぎないのであるから、仮に、乙4合意書4条2項を、原告がP1に対して、宇宙戦艦ヤマト作品の新作を制作することを包括的に許諾したものと解したとしても、被告らは、原告に対して、同条項に基づく権利を有していない。
ウ したがって、乙4合意を根拠に、原告が本件映画の著作権に基づき被告製品に対して権利行使をすることが許されないと解することはできない。
(5) 不競法に基づく請求の可否(争点(2))について
(原告)
ア 原告表示
(ア) 原告は、平成8年12月20日に締結した甲3契約により、P2から、本件映画の著作権のほか、宇宙戦艦ヤマト作品の商品化権を譲り受け、それ以後、上記商品化権に基づき、宇宙戦艦ヤマト作品の商品化に関心のある複数の企業に対し、原告表示の使用を許諾して、一定の許諾料を得る商品化事業を展開してきた。
 原告表示は、原告が原告表示の使用を許諾した商品(以下「原告許諾商品」という。)の商品表示として著名であり、少なくとも周知である。
 なお、被告表示1ないし6は、被告映像のうちの一部分の映像であるが、このような映像も商品表示になり得る。
(イ) 被告らは、原告表示が、@原告自ら、原告表示を付した商品を製造、販売していないこと、A原告許諾商品には、原告の出所表示が付されていないこと、B原告表示を付した同一種類の商品を、複数の企業が製造、販売していることを根拠として、その出所として原告を表示していない旨主張する。
a しかし、原告表示は、原告許諾商品を表示するものであるところ、この場合、不競法関係規定上の保護法益は、このような意味での商品表示を付された商品についての市場開拓、育成、その一環としての当該商品表示の希釈化防止等の事業活動に投下された人員、資本とこれによる正当な利益であり、このことは、商品を自ら直接製造、販売している場合と何ら選ぶところはない。
 したがって、この点に関する被告らの主張は失当である。
b また、原告表示が、原告の商品表示というためには、原告許諾商品と原告との関連性が明らかとなっていれば足り、原告許諾商品に原告自身を具体的に特定するための表示は必要ではない。
 しかも、最高裁昭和56年(オ)第1166号同59年5月29日第三小法廷判決・民集38巻7号920頁(以下「NFL事件判決」という。)が判示するとおり、商品の出所先たる「他人」には、「特定の表示に関する商品化契約によって結束した同表示の使用許諾者、使用権者及び再使用権者のグループのように、同表示の持つ出所識別機能、品質保証機能及び顧客吸引力を保護発展させるという共通の目的のもとに結束しているものと評価することのできるようなグループも含まれる」ところ、原告が、上記「使用許諾者」に該当することは明らかである。
 したがって、この点に関する被告らの主張は失当である。
c 同一種類の商品について、複数の製造、販売者に原告表示の許諾をしていることが、不競法の保護の障害となることはあり得ない。
 したがって、この点に関する被告らの主張は失当である。
(ウ) また、被告らは、NFL事件判決を引用して、ライセンス先を1業種1社と定めること、厳格な商品の品質管理、証紙の添付、広告等の要件を満たさなければ不競法2条1項1号、2号の「他人」と認定され得ないとし、原告はこの要件を満たしていないとする。
 しかし、上記判決は、これらの点について、経緯的、叙述的に触れているだけであって、これらを規範的に「他人」性の要件として定立しているものでないことは、同判決自体から明らかであるから、被告らの上記主張は失当である。
(エ) 被告らは、原告は、原告表示の希釈化防止に何ら努めていないと主張するが、原告は、原告表示の希釈化防止に努めてきており、被告らの上記主張は失当である。
イ 原告表示の著名性、周知性
(ア) 宇宙戦艦ヤマト作品は、昭和49年のテレビ放送及びその後の劇場公開によって全国民的人気を博した。
 具体的には、宇宙戦艦ヤマト作品は、昭和49年から翌50年にかけてのテレビ放送によって熱心なファンを獲得し、昭和52年の劇場公開によって観客動員数230万人を記録して社会現象とまでいわれた空前のブームを巻き起こした。このブームは、一時的な現象に止まることなく、後続作品は観客動員数400万人にも達した。こうして、宇宙戦艦ヤマト作品は、1970年代から80年代にかけて一時代を画する作品となったが、その後現在に至るも、繰り返しテレビ放映されるなど高い人気を保っている。
(イ) また、宇宙戦艦ヤマトは、キャラクターとしても、極めて高い知名度を得ている。特に、社会人男子の間においては、現在も、キャラクターとしての宇宙戦艦ヤマトは、知名率第2位を誇っているのである。
 そして、原告表示は、1980年代後半から宇宙戦艦ヤマト関連商品であることを表示するものとして継続的かつ独占的に使用されて今日に至っている。
(ウ) 以上より、原告表示は、遅くとも原告が甲3契約を締結した平成8年12月までには全国的規模で著名性、周知性を獲得し、その後現在に至るも、これを維持していることが明らかである。
ウ 原告表示と被告表示の類似性
(ア) 原告表示1と被告表示1及び2との類似性
a 原告表示1のうち、「宇宙戦艦」は「ヤマト」を修飾する説明的な語句であるから、原告表示1の要部は、「ヤマト」の部分である。このことは、宇宙戦艦ヤマト作品中には、「ヤマトよ永遠に」のように、「宇宙戦艦」という語句を伴わない作品もあるが、そのような作品でも宇宙戦艦ヤマト作品であることを何人も疑わないことからも明らかである。
 被告表示1、2の「大」の文字は、それ自体は一般的形容詞にすぎない。また、被告表示1の「2」の記号は、それ自体は単なる序数字にすぎず、被告三共が被告パチンコゲーム機に先行して製造、販売したパチンコゲーム機「大ヤマト」との識別のための記号にすぎない。
 したがって、被告表示1、2において遊技者ないし需要者の注意を特に惹くのは、「ヤマト」の部分であって、これが要部である。
 そこで、原告表示1と被告表示1、2を比較するに、被告表示1、2の「ヤマト」の表示は、原告表示1の「ヤマト」の表示と同様にカタカナ書きをするのみでなく、書体も墨書風の書体である上、「ヤ」と「ト」が大きく「マ」が小さく表記され、「マ」が「ヤ」と「ト」の中間に嵌まり込む配置をとっており、原告表示1とその形態も類似している。また、この「ヤマト」は、明らかに宇宙戦艦ヤマト作品を想起させるものであって、観念において、原告表示1と同一である。
 したがって、被告表示1、2のロゴマークは、全体としても、原告表示1のロゴマークと類似している。
b 被告らは、「ヤマト」のカタカナ表記が多種多様に使用されているとして具体例を挙げる。
 しかし、被告らが挙げる具体例の内、「ヤマト車検」、「ヤマト査定」、「ヤマトと音頭の瀬戸」(乙13の1、13の2、13の5)以外のものはいずれも「ヤマト」の字体、表記態様が異なっている。
 他方、上記の3つの表記は、「マ」が相対的に小さく「ヤ」、「ト」の中にはめ込まれている点において原告表示1に類似しているところ、これらは、いずれも宇宙戦艦ヤマトの艦体類似のイラストを伴っているか(乙13の2、13の5)又はこのような表示を使用している業者の用いている表示(乙13の1)である。このことは、すなわち、原告表示1の「ヤマト」の表示が一般的な表示ではなく、逆に、宇宙戦艦ヤマト作品との関連性において使用するものとの一般的認識があることを示すものであり、つまり、この「ヤマト」の表示が要部であることを明らかに示しているのである。
(イ) 原告表示2と被告表示3ないし8との類似性
a 被告表示3ないし8において、遊技者ないし需要者の注意を特に惹く点は、艦首部に先端上端円形切れこみと楕円形の巨大な発射口を備えていること、艦首部が大きくデフォルメされていること、艦尾に放射状の尾翼とロケット型噴射口を備えていること、及び全体として旧日本海軍戦艦大和をモデルとしていることであり、これらが被告表示3ないし8の要部である。
 しかるに、被告表示3ないし8は、原告表示2と上記の要部について類似している。
 また、被告表示3ないし8の艦体も「ヤマト」の称呼を有しており、この称呼は明らかに宇宙戦艦ヤマト作品を想起させるものであって、観念において、原告表示2と同一である。
 したがって、被告表示3ないし8は、全体としても、原告表示2と類似している。
b(a) 被告らは、原告表示2(1)と被告表示3、4、7、8とは、@艦体が、巨大な円盤と巨大な翼を伴っているか否か、A艦首発射口が、黄金色に輝いているか否か、また、花びら状の蓋で覆われているか否かで異なり、これにより艦体の全体構成、印象が異なることを挙げる。
 しかし、上記aの共通点に比して、上記相違点は、非本質的な相違にすぎない。しかも、被告表示8は、巨大な円盤と巨大な翼が他のものによってほとんど覆われていて目立たず、その他の被告表示も、円盤及び翼は目立った存在ではない。
 したがって、被告らの上記主張は失当である。
(b) 被告らは、原告表示2(2)と被告表示5、6は、@艦体側面が表示されているか否か、A尾部の表示の態様の点で、全体構成、印象が異なる旨主張する。
 しかし、上記相違点は、前記aの共通点に比較すれば、非本質的なものにすぎない。
 したがって、被告らの上記主張は失当である。
エ 被告許諾商品との混同
 被告商品は、その識別上の本質的要素として、宇宙戦艦ヤマト作品との関連性を用い、そのために原告表示に類似する表示を随所に使用している。
 しかも、その商品識別のために「ヤマト」という称呼を用い、また、「宇宙戦艦ヤマト」の主題歌、主題曲そのものを流しており、さらに、液晶画面上にも、「西暦3199年・・・」などの宇宙戦艦ヤマト作品の設定を想起させるテロップを流している。
 その結果として、被告商品は、遊技者ないし需要者の間において、宇宙戦艦ヤマト作品の関連作品であると誤認されており、遊技者ないし需要者の間には、原告許諾商品と被告商品との混同が生じている。
(被告ら)
 原告は、以下の理由から、不競法に基づき、被告商品について、損害賠償請求をすることはできない。
ア 原告表示
 原告表示は、宇宙戦艦ヤマト作品の映像中から特定の映像を抽出したものであるところ、映像作品において、再生途中に一時的に登場することがあるにすぎない特定の映像を、当該作品の商品表示であるということはできないから、原告表示は、商品等表示といえない。
イ 原告表示の出所
 原告表示は、以下の理由から、その出所として原告を示すものということはできない。
(ア) 原告は、宇宙戦艦ヤマト作品の著作権者として、第三者に対して、宇宙戦艦ヤマト作品について利用許諾を行うことはあるが、宇宙戦艦ヤマト作品を複製してビデオテープ又はDVD として販売することも、原告表示を付して玩具や書籍等を販売することについても、直接何ら関与していない。
(イ) 原告表示の出所が原告であると認識されるためには、原告表示の出所が原告であることを当該商品上において客観的に認識可能でなくてはならない。
 原告許諾商品には、原告の名称や当該商品が原告の許諾商品であることを示す表示はない。他方で、原告から利用許諾を受けている第三者は、自己の商品上に自己の出所を示す表示を積極的に付している。
 したがって、需要者としては、原告表示が付された商品を一見した場合に、これらの商品が、原告表示の使用を許諾された企業の商品であると理解するにすぎず、原告の商品であるとは何ら認識しない。
(ウ) 原告は、原告表示を複数の企業に許諾し、複数の企業が、原告表示を付して商品を製造、販売している。
 そうすると、原告表示を付した同一種類の商品が、それぞれ複数の企業から製造、販売されていることになるから、これらの個別の商品において、原告表示により個別の出所を特定することはできない。
(エ) NFL事件判決は、許諾元企業が許諾先企業に対して表示の使用許諾をなすに際して、@ライセンス先を一業種一社と定めていること、Aライセンシーはライセンサーによる商品の厳格な品質管理に服すること、Bライセンシーの商品上には、ライセンサーの商号及び許諾商品である旨を表示した証紙が貼付されること、Cライセンシーは商品化事業に携わる者であることにつき積極的に広告を行うこと等の条件が課されている場合に、初めて「商品化契約によって結束した同表示の使用許諾者、使用権者、再使用権者のグループ」が、不競法所定の「他人」となり得ることを判示している。
(オ) 原告は、原告表示の希釈化防止に何ら努めていない。
ウ 原告表示と被告表示の類似性
(ア) 原告表示1と被告表示1及び2との類似性
 「宇宙戦艦ヤマト」は、実在の「戦艦大和」を改造したものであるから、原告表示1の「宇宙戦艦ヤマト」も、実在の「戦艦大和」に由来し、「宇宙戦艦」の漢字表記部分の「大和」を、カタカナ表記の「ヤマト」に変更して、「戦艦」の文字の冒頭に「宇宙」の2文字を付加したことにより構成されているものである。
 また、これまで数多くの企業が、「ヤマト」という語句を社名やサービス名等として使用してきており、原告のみがその使用を独占できるものではない。
 したがって、原告表示は、全体として一連一体のものとして認識することが相当であり、その一部である「戦艦ヤマト」や「ヤマト」が要部となることは、基本的にはないと解することが相当である。
 一方、被告表示1、2の「大ヤマト」は、4文字のみから成る名称であり、全体が一連一体の名称である。
 そこで、原告表示1と被告表示1、2を対比すると、両映像は、明らかに外観において類似しておらず、また、称呼、観念においても類似しているとはいえない。
(イ) 原告表示2(1)と被告表示3、4、7、8との類似性
 被告表示3、4、8の艦体には、巨大な円盤と巨大な翼が左右の弦側に設けられているが、原告表示2(1)の艦体には、これらが艦体に備えられておらず、艦体の基本的な構成を異にしている。
 また、被告表示3、4、7、8では、艦首前方の発射口の部分が黄金色に輝いているか、又は花びら状の蓋で覆われているが、原告表示2(1)の艦体は、当該発射口の部分は暗黒のままである。
 したがって、原告表示2( 1)と被告表示3ないし8とは、艦体の全体構成においても、また、これから受ける印象においても、基本的に異なり、類似していない。
(ウ) 原告表示2(2)と被告表示5、6との類似性
 被告表示5、6は、真後ろから見た艦体が描かれているだけであり、艦体の側面が全く描かれておらず、左斜め後方から艦体左舷も含めて描かれている原告表示2(2)とは、全体の構成も、印象も大きく異なっており、また、被告表示5、6では、最後尾のメインエンジンの大きな噴射口に接する周辺部に、相互に90度の角度をなす4つの補助エンジンの噴射口が描かれており、これら4つの補助エンジンが存在する部分から、4本の尾翼が相互に90度の角度で放射状に延びているのに対して、原告表示2(2)では、メインエンジンの大きな噴射口の真下に、2つの補助エンジンの小さな噴射口が描かれているだけであり、尾翼についても、相互に120度の角度で開いた3本が備えられているだけであり、上記2つの小さな噴射口が存在している位置とは全く異なる位置から外側に延びている。
 したがって、原告表示2(2)と被告表示5、6とは、全体の構成においても、これから受ける印象についても大きく異なり、類似していない。
エ 小括
 原告表示は、前記イ、ウで主張したように、その出所として原告を示すものとは認められず、また、原告表示と被告表示とは類似していないから、原告許諾商品と被告商品との間に混同も生じない。
オ 権利行使をしないことの合意
 また、原告は、前記(3)で主張したように、乙4合意書により、P1に対して、事前の通知、説明がなされた場合には、宇宙戦艦ヤマト作品に関連する新作の作品に対して、全面的に協力し、宇宙戦艦ヤマト作品の権利行使をしないことを合意した。
 したがって、原告は、P1が関与して作成された大ヤマト作品につき利用許諾を受けている被告らに対して、著作権のみならず、不競法に基づく請求も行うことはできない。
(6) 損害額(争点(3))について
(原告)
ア 被告パチンコゲーム機による損害
 被告三共は、既に被告パチンコゲーム機を、少なくとも20万台、製造、販売している。
 被告パチンコゲーム機の1台当りの販売価格は、20万円を下らない。
 被告パチンコゲーム機に対する著作物利用許諾料は、販売価格の5パーセントが相当であるから、被告パチンコゲーム機に対する著作物利用許諾料は、少なくとも1台当たり1万円を下らない。
 したがって、被告三共が被告パチンコゲーム機を製造、販売することにより、原告が被った著作物利用許諾料相当損害額合計は、20億円を下らない(著作権法114条3項。予備的に、不競法5条3項1号)。
 原告は、そのうち、10億円を請求する。
イ 被告パチスロゲーム機による損害
 被告ビスティは、既に被告パチスロゲーム機を、少なくとも1万台、製造し、被告フィールズは、被告パチスロゲーム機を、同数販売し、また、被告三共は、被告パチスロゲーム機の侵害映像を制作して被告ビスティにその使用を許した。
 被告パチスロゲーム機の1台当りの販売価格は、38万円を下らない。
 被告パチスロゲーム機に対する著作物利用許諾料は、販売価格の5パーセントが相当であるから、被告パチスロゲーム機に対する著作物利用許諾料は、少なくとも1 台当たり1万9000円を下らない。
 したがって、被告らの上記の行為によって原告が被った著作物利用許諾料相当損害額合計は、1億9000万円を下らない(著作権法114条3項。予備的に、不競法5条3項1号)。
 原告は、そのうち、1億円を請求する。
(被告ら)
 否認する。
第3 当裁判所の判断
1 P2は、本件映画の映画製作者として、著作権法29条1項に基づき、本件映画の著作権を取得したか(争点(1)ア)について
 原告は、本件映画には、著作権法29条1項の映画製作者と参加約束が存在することを前提として、本件映画の映画製作者として本件映画の著作権を取得したP2から、甲3契約に基づき、本件映画の著作権の移転を受けた旨主張するのに対し、被告らは、本件映画の製作者は、P2ではなく、オフィス・アカデミー又はウエスト・ケープであり、原告は、本件映画の著作権を取得していない旨主張するので、以下、P2が本件映画の映画製作者であったか否かについて検討する。
(1) 本件映画の製作の経緯
 証拠(甲3、4、37ないし39)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められ、これに反する証拠はない。
ア 宇宙戦艦ヤマト作品について
(ア) 本件映画1について
 本件映画1は、全26話のテレビ放送用アニメーションシリーズであり、昭和49年10月から昭和50年3月まで、よみうりテレビ系列の全国ネットでテレビ放送された。
 本件映画1の企画の立案、企画書の作成、スタッフの人選、及びテレビ放映の実現についてのテレビ局との交渉は、P2が行った。また、本件映画の監督は、映画における表示では補助参加人P1とされていたが、その制作に当たっての実質的な監督業務は、P2が行った。
(イ) 本件映画1以外の宇宙戦艦ヤマト作品について
 本件映画1のテレビにおける上記放送の視聴率は低迷したが、熱心な漫画ファンやSFファンには、高く評価され、シリーズの放送終了後、次第にその魅力が広く伝わるようになり、人気が出てきたため、本件映画1に基づいて劇場用の「宇宙戦艦ヤマト」が製作された(昭和52年8月6日製作)。同映画は、昭和52年8月に劇場公開され、観客動員数が約230万人、興行収入が約21億円に達し、興行的に大きな成功を収めたため、劇場用映画である本件映画2が製作され(昭和53年8月5日製作)、東映洋画系劇場で、昭和53年8月に劇場公開されたが、同映画も、観客動員数が約400万人、興行収入が約43億円に達し、興行的に更なる成功を収めた。そして、同年10月14日には、テレビ用アニメである本件映画3が製作され、同月から昭和54年4月まで、テレビ放送された。さらに、同年7月には、本件映画3の続編として、テレビ用アニメの「宇宙戦艦ヤマト新たなる旅立ち」がテレビ放送され、昭和55年8月には、劇場用の「ヤマトよ永遠に」が劇場公開され、その観客動員数は約220万人に達し、興行収入として約25億円をあげた。その後、同年10月から昭和56年4月までの間、テレビ用アニメの本件映画4がテレビ放送され、昭和58年3月には、劇場用の「宇宙戦艦ヤマト完結編」が劇場公開され、その観客動員数は約160万人に達し、興行収入として約21億円をあげた。
イ 甲3契約書の記載
 原告、P2、ウエスト・ケープ及びボイジャーエンターテインメントとの間で、平成8年12月20日、甲3契約が締結されたが、甲3契約書の内容は後記2のとおりであり、同契約書には、譲渡の対象権利である「対象作品」を記載した「別紙(一)」が添付されている。その別紙(一)は、「A項:現存作品」、「B項:将来作品」、「制作年月日」、「製作者名」、「著作者名」、「原作者名」、「著作権者」及び「利用の制限」の各欄のある表となっており、「A項:現存作品」欄には、39作品の作品名が記載され(この39作品を以下「甲3契約対象作品」という。)、本件映画もそこに含まれている。そして、本件映画に対応する「製作者名」欄には、「オフィス・アカデミー」、「著作権者」欄には、「P2」との各記載がある。なお、甲3契約書のウエスト・ケープの記名捺印欄には、代表取締役としてP2の記載がある。
(2) 以上の事実を前提に判断する。
ア 著作権法2条1項10号は、映画製作者について、「映画の製作に発意と責任を有する者」と規定しているところ、同規定は、映画の製作には、通常、相当な製作費が必要となり、映画製作が企業活動として行われることが一般的であることを前提としているものと解されることから、映画製作者とは、自己の責任と危険において映画を製作する者を指すと解するのが相当である。そして、映画の製作は、企画、資金調達、制作、スタッフ等の雇入れ、スケジュール管理、プロモーションや宣伝活動、配給等の複合的な活動から構成され、映画を製作しようとする者は、映画製作のために様々な契約を締結する必要が生じ、その契約により、多様な法律上の権利を取得し、また、法律上の義務を負担する。したがって、自己の責任と危険において製作する主体を判断するに当たっては、これらの活動を実施する際に締結された契約により生じた、法律上の権利、義務の主体が誰であるかが重要な要素となる。
 そこで、検討するに、前記(1)で認定したとおり、P2は、本件映画1の制作を企画し、スタッフの人選やテレビ局とのテレビ放映についての交渉を行っているが、本件証拠中には、上記スタッフやテレビ局と契約を締結した主体がP2であったと認めるに足る証拠はない。また、本件映画1のための資金の調達についても、本件証拠上、P2が自己の名義で資金調達をしたものと認めるに足りない。
 かえって、甲3契約書に添付された「別紙(一)」の、本件映画1の「製作者」欄には、前記(1)のとおり、オフィス・アカデミーの社名が記載されているところ、P2がP1P2訴訟において提出した陳述書(甲38)には、「映画の著作物の“製作”というのは“作品の制作”実務のことだけをいうのではなく、企画制作を行って出来上がった作品の上映される劇場の確保等配給、又は、テレビの放映される番組の決定等『営業』、“制作費”“宣伝費”“一般管理費”等を含む『資金の負担』、『損益の責任』を持って『作品の制作』を行うことをいうのであります。これを“映画会社”、“テレビ局”に所属をして行うのではなく、私のように“個人の責任”、“個人の会社”に於いて行った場合に、“製作者”と言われるのであって、」と記載されており(43頁)、同記載によれば、P2は、映画製作者の法的意味を十分に認識した上で、「制作」と「製作」を明確に区別して使用していることが認められることから、P2は、上記別紙(一)の「製作者」は「映画製作者」を意味すること、したがって、甲3契約締結に当たっては、本件映画1の映画製作者は、オフィス・アカデミーであると認識していたことが認められる。
 なお、上記の別紙(一)の、本件映画1の「著作権者」欄には、P2の名前が記載されているが、例えば、P2が映画製作者であるオフィス・アカデミーから、本件映画1の著作権の譲渡を受けた場合もあり得るから、上記「著作権者」欄の記載があるからといって、上記別紙(一)の「製作者」を映画製作者を意味すると解することが必ずしも不合理ということはできない。
 したがって、P2が本件映画1の映画製作者であると認めることはできない。
 また、本件映画2ないし4については、その製作の経緯についての証拠が全く提出されていない。しかも、本件映画2及び3については、本件映画1と同様、甲3契約書に添付された、上記別紙(一)の本件映画2及び3の「製作者」欄にオフィス・アカデミーの社名が記載され、本件映画4についても、上記「製作者」欄にウエスト・ケープの社名が記載されていることからすれば、P2は、甲3契約締結に当たり、本件映画2ないし4の映画製作者はオフィス・アカデミー又はウエスト・ケープであると認識していたものと認められる。したがって、P2が、本件映画2ないし4の映画製作者であると認めることはできない。
イ この点、P2がP1P2訴訟において提出した陳述書(甲38、39)には、「すべての責任はプロデューサー(製作制作者)である<私>が負うことになり、赤字も背負い、次のテレビシリーズの企画もなく、本当に悲惨な状態でした。」(甲38の57頁)、「私は、『宇宙戦艦ヤマト』という作品について、自分が“発想”、“企画”して、自己の資金で製作を行い、且つ、制作に当たって『適正なる人材』を、その資質を理解して各部門に起用し、」(甲38の58頁)、「私は『宇宙戦艦ヤマト』を劇場で上映する決意をし、これで失敗すれば私自身二度と立ち上がれなくなるかもしれないという背水の陣で『宇宙戦艦ヤマト』の制作を開始したのです。・・・私は、完成した劇場版『宇宙戦艦ヤマト』をもって映画館を回り、上映させて欲しいと頼みました。最終的には、配給会社のない自主上映という形でしたが、東急が上映してくれることになりました。」(甲39の17頁)、「低視聴率で終わり忘れられた作品を、私が辛抱強く、お金をかけて、一文無しになるのも覚悟で劇場作品として配給をして、『宇宙戦艦ヤマト』を有名にした」(甲39の40、41頁)との各記載があるが、上記記載のみからは、P2個人が、スタッフ、テレビ局や映画配給会社との契約を締結するなどの権利、義務の主体となっていたと認めることはできない。むしろ、前記アで認定したとおり、甲3契約書に添付された別紙(一)には、本件映画の映画製作者はオフィス・アカデミーである旨の記載があること、上記のP2の陳述書(甲39)によれば、オフィス・アカデミーはP2が映画製作のために設立した個人会社であると推測されるところ、このように映画製作のための株式会社が存在しているのであれば、映画製作のための各種契約は、その代表者個人で締結するのではなく、会社が主体となって締結するのが一般的であることからすると、P2の上記陳述書のうちの法的責任及び経済的負担に係る部分の記載は、P2が個人の立場ではなく、オフィス・アカデミーの代表者としての立場で記載したものと推測される。
(3) まとめ
 以上のとおり、本件証拠上、本件映画の映画製作者がP2であると認めることはできない。そして、原告は、映画製作者として本件映画の著作権を取得したP2から、甲3契約により、本件映画の著作権の譲渡を受けたと主張するのみで、映画製作者がオフィス・アカデミーなどP2以外の者である場合に、その者から著作権の譲渡を受けた旨の主張、立証をしていないのであるから、結局、原告の本件映画の著作権の取得は認められない。
2 原告は、甲3契約により、本件映画の翻案権を取得したか(争点(1)イ)について
 前記1で判示したように、そもそも、本件証拠上、P2が本件映画の映画製作者であると認めることはできず、したがって、原告が、甲3契約により、本件映画の著作権を取得したものと認めるに足りないが、念のため、P2が本件映画の映画製作者であったか、又は、P2が本件映画の映画製作者から本件映画の著作権の譲渡を受けていたものと仮定した上、争点?イについて、検討する。
(1) 甲3契約締結に至る経緯等
 証拠(甲1の1ないし4、2、3、30、31の1ないし9、32の1及び2、33)並びに弁論の全趣旨によれば、次の各事実が認められ、これに反する証拠はない。
ア 原告は、平成8年9月ころから、P2との間で、宇宙戦艦ヤマト作品等の著作物の著作権を譲り受けるための交渉を始め、同年12月20日、同交渉がまとまり、同日付けで、甲3契約を締結した。なお、甲3契約書の草案は森伊津子弁護士(以下「森弁護士」という。)が作成した。
イ 甲3契約書には、次のとおりの条項がある。
(ア) 前文
 「株式会社東北新社フィルム( 以下「甲」という、 P 2 ( 以下「乙」という)、株式会社ウエスト・ケープ・コーポレーション(以下「丙」という)、株式会社ボイジャーエンターテインメント(以下「丁」という)とは、以下のとおり合意した。」
(イ) 「第1条定義
 本書において用いられるとき下記の用語は下記の意味を有する。
1.現存作品
 本書に添付され本書の一部を成す別紙(一)のA項記載の映像著作物をいう。
2.将来作品
 本書に添付された本書の一部を成す別紙(一)のB項記載の内容を有する作品であって、甲乙協議の上決定する制作費で乙が完成させる映像著作物をいう。
3.対象作品
 現存作品および将来作品をいう。
4.対象権利
 対象作品に対する著作権および対象作品の全部又は一部のあらゆる利用を可能にする一切の権利。
6.既存契約
 乙または丙丁などが1996年9月10日以前に対象作品つき締結した契約であって、本書に添付され本書の一部を成す別紙(二)に列記され、 その内容が同表記載のものである契約をいう。」
(ウ) 「第2条譲渡
 乙は甲に対し、対象権利および権利行使素材の所有権の一切を、本書の日付をもって譲渡し、甲は乙からこれを譲り受けた。但し、対象権利と権利行使素材のうち将来作品に関するものについては、それらの完成を条件に乙は甲に対し譲り渡し甲は乙からこれを譲り受けた。」
(エ) 「第4条既存契約譲渡
 乙は甲に対し既存契約の契約上の地位を本契約締結日を有効日として譲渡し、甲はこれを譲り受ける。既存契約の当事者が乙でない場合には、乙は、これらの者に上記譲渡をさせる。
 乙は既存契約の当事者に既存契約の相手方に対し可能な限り速やかに、ただし遅くとも1997年2月28日までに、乙から甲への同契約上の地位の譲渡を通知し、その通知書の副本に相手方の同意を示す調印を取得して甲に交付する。既存契約の当事者が乙でない場合には、乙は、これらの者に上記通知および交付をさせる。」
(オ) 「第5条著作権登録
 乙は、現存作品に関する著作権の乙から甲に対する譲渡についての著作権登録を本契約締結日から三か月以内に行う。」
(カ) 「第6条対価
 甲は、乙に対して、本契約上行われる一切の譲渡その他の乙の義務履行に対する対価として金450,000,000円(消費税別)を分割して以下の期日に乙の指定する銀行口座への振込みにより支払う。
 支払期日 本契約締結時 175,000,000円
 (ただしうち100,000,000円については、乙は、甲より既に受領済みであることを確認する。)
 本契約締結時から1か月後 75,000,000円
 本契約締結時から2か月後 75,000,000円
 本契約締結時から6か月後 75,000,000円
 本契約締結時から8か月後 50,000,000円
(キ) 「第7条追加対価の額と支払
1.甲は乙に対し、第6条記載の対価の追加対価として下記の金額を支払う。
 『下記(1)(2)及び(3)の合計が450,000,000円を越えたとき、その超過部分の50%の金額。』
(1) 対象権利の利用から発生するもの。
 甲の総収入(万一、1996年9月11日以降本契約締結時までの間に乙が対象作品につき得た収入(下記(2)によるものを除く)があるときは、これを甲の収入とするよう、乙は甲に対し、収受した金員を本契約締結日から7日以内に引き渡す)の75%から、利用に伴い必要な第三者への配分金及び諸費用を控除した額。
(2) 既存契約から発生するもの。
 甲の総収入(本契約締結日以降第4条の通知の到達日以前に発生する乙の収入は、これを甲の収入とするよう、乙は甲に対し、収受した金員を製造原価を差し引いて14日以内に引き渡す)の85%から、利用に伴い必要な第三者への配分金及び諸費用(販売契約の場合は製造原価を含む)を控除した額。
(3) 将来作品に関するもの。
 甲の総収入から甲乙協議の上決定し乙が支出した制作費を控除した額の85%から、利用に伴い必要な他社への配分金及び諸費用を控除した額(甲乙協議の上決定した制作費分は乙によるリクープのため甲からすみやかに乙に支払われる)。
2.甲は、四半暦年中に発生した追加対価を、四半暦年終了後1か月以内に乙の指定する預金口座への振り込みにより、支払う。」
(ク) 「第9条保証および免責
1.乙は、甲に対し、下記を保証する。
(1) 本契約締結時において乙が対象権利を専有(本書に添付され本書の一部を成す別紙(一)のA項記載の利用制限を除く)していること。但し、将来作品に関する権利については、作品完成時に専有するにいたり、専有権と同時に甲に移転出来るものであること。
(2) 本契約締結時において権利行使素材の所有権を有しており、これにつき何ら制限物権が存在しないこと。
(3) 現存作品につき一切の権利行使素材が存在しており、将来作品については存在し得るにいたること、そして、甲の対象権利の行使に何らの支障がないこと。
(4) 甲による対象権利の全部又は一部の行使が第三者の権利を何ら侵害せず、第三者に対する支払を何ら要しないこと。但し、本書に添付され本書の一部を成す別紙(三)記載の第三者への支払義務を除く。また、既存契約に基づく義務として、本書添付の本書の一部を成す別紙(二)記載の内容(相手方、権利の内容、期間、要支払額、支払日)の制約の存在を甲は承認する。
(5) 既存契約以外の契約が対象作品に関して有効に存在していないこと。
2.乙は甲に対し下記の免責をする。
 万一、甲の対象権利の行使および権利行使素材の利用に関し、甲又は甲の被許諾者が第三者より異議を申し立てられ又は請求を受けたときは、これにより生じた損害および費用の一切を、合理的範囲の弁護士費用を含めて、乙は甲に甲の請求後速やかに支払い、甲に何らの負担迷惑をかけない。
(ケ) 「第10条キャラクター使用作品
 対象作品に登場するキャラクター(人物、メカニック等の名称、デザインを含む)を使用し新たな映像作品(但し、キャラクター使用以外の行為で対象作品の著作権を侵害しないものに限る)を制作する権利は乙に留保されるものとし、その場合のM/D権その他の権利の運用については別途協議とする。但し、乙は制作の一か月前までにその内容の詳細を書面で甲に通知する。」
(コ) 「第12条連帯保証
 丙および丁は、本契約に基づく乙の甲に対する一切の債務の履行につき乙と連帯してその履行の責に任ずる。乙、丙および丁は、丙および丁が本契約を締結することにつき、取締役会の承認を取得済みであることを甲に対し確認する。」
(サ) 別紙(一)
 前記1のとおり。
(シ) 別紙(二)
 甲3契約書に添付された別紙(二)は、「既存契約一覧表」という表題の一覧表であって、同表には、「契約相手先」、「作品名」、「許諾権利」、「条件(MG、ロイヤリティ%、掛率)」、「契約期間」、「MG残金」及び「96.11.20現在のリクープ残」の欄があり、「契約相手先」欄には、「バンダイビジュアル」、「日本コロンビア」等が記載され、「作品名」欄には、宇宙戦艦ヤマト作品等が記載され、「許諾権利」欄には、「ビデオグラム独占販売」、「LD独占販売」、「DVD化権」、「ビデオカセット化権」、「音楽原盤、キャラクター」、「プラモデル」等が記載されている。
(ス) 別紙(三)
 甲3契約書に添付された別紙(三)は、「配分金一覧表」という表題の一覧表であって、同表には、「対象控除%(素材−出庫、経費)」、「P2」、「宇宙戦艦ヤマトシリーズのM/D、ゲーム化権のP2とP1の印税配分」、「P1」、「脚本家連盟」等の欄があり、「対象控除%(素材−出庫、経費)」欄には、別紙(一)の「A項:現存作品」の欄に記載された著作物名と同一の著作物名が記載され、「宇宙戦艦ヤマトシリーズのM/D、ゲーム化権のP2とP1の印税配分」欄の宇宙戦艦ヤマト作品に対応する部分には、「作品毎の契約のため、現在明確な取決めがない。従って、P2が責任をもって両者分を10〜15%の間で1997年2月28日迄に協議の上決定する。」との記載がある。
ウ 上記イのとおり、甲3契約対象作品の著作権譲渡登録が、甲3契約締結日から3か月以内に行うことと合意されたことから、原告は、平成9年3月に至り、上記著作物の著作権の譲渡登録の手続をしようとしたところ、甲3契約対象作品のうち、本件P3経由著作物の著作権については、平成8年11月25日付けで、P2からP3への譲渡登録がされていることが判明した(なお、本件映画は、本件P3経由著作物に含まれている。)(甲1の1ないし4、30、31の1ないし9)。
 そこで、原告は、P2に、上記の譲渡登録がされていることについての説明を求めたところ、P2から、宇宙戦艦ヤマト作品の著作権はP3に預けてあるだけであるとの説明を受けたことから、森弁護士と相談し、その結果、本件P3経由著作物の著作権については、P3から原告へ譲渡登録をする形をとることとし、その旨P2に連絡して、P2の合意を得た(甲30)。
 その後、原告は、P3に対して、甲3契約対象作品のうち、本件P3経由著作物についての、平成9年3月26日付け著作権譲渡証書(本件P3譲渡証書)2通を作成させ、同人からその交付を受け、P2に対しては、甲3契約対象作品のうち、本件P3経由著作物以外の著作物についての、平成9年3月26日付け著作権譲渡証書(以下「本件P2譲渡証書」という。)を作成させ、同人からその交付を受けた。そこで、原告は、平成9年3月26日、文化庁長官に対し、上記各著作権譲渡証書を添付資料として、甲3対象作品についての著作権譲渡登録の申請をし、その結果、平成9年11月19日付けで、本件P3経由著作物については、P3から原告への著作権譲渡登録が、それ以外の甲3対象作品については、P2から原告への著作権譲渡登録がそれぞれされた(甲1の1ないし4、31、32の1及び2、33)。
エ 本件P3譲渡証書には、2通とも、譲渡人(登録義務者)の欄にP3の記名捺印が、譲受人(登録権利者)の欄に原告の記名捺印があり、「下記の各著作物の著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む)を平成8年12月20日に譲渡したことに相違ありません。」との記載がある(甲32の1及び2)。
 本件P2譲渡証書には、譲渡人(登録義務者)の欄にP2の記名捺印が、譲受人(登録権利者)の欄に原告の記名捺印があり、「下記の各著作物の著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む)を平成8年12月20日に譲渡したことに相違ありません。」との記載がある(甲33)。
カ 本件P3経由著作物の一部である宇宙戦艦ヤマトシリーズの著作権登録原簿には、P2からP3への著作権譲渡の欄には、「この著作物について平成八年十一月二十五日、左記の者の間に著作権(著作権法第二十七条及び第二十八条に規定する権利を含む)の譲渡があった。」との記載、P3から原告への著作権譲渡の欄には、「この著作物について平成八年十二月二十日、左記の者の間に著作権(著作権法第二十七条及び第二十八条に規定する権利を含む)の譲渡があった。」との記載がある(甲1の1ないし4)。
(2) 前記(1)で認定した事実を前提にして、以下、甲3契約において、本件映画の翻案権も譲渡の対象となっていたか否かについて検討する。
ア 著作権法61条2項は、「著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。」と規定するところ、これは、著作権の譲渡契約がなされた場合に直ちに著作権全部の譲渡を意味すると解すると著作者の保護に欠けるおそれがあることから、二次的な利用権等を譲渡する場合には、これを特に掲げて明確な契約を締結することを要求したものであり、このような同項の趣旨からすれば、上記「特掲され」たというためには、譲渡の対象にこれらの権利が含まれる旨が契約書等に明記されることが必要であり、契約書に、単に「すべての著作権を譲渡する」というような包括的な記載をするだけでは足りず、譲渡対象権利として、著作権法27条や28条の権利を具体的に挙げることにより、当該権利が譲渡の対象となっていることを明記する必要があるというべきである。
 原告は、著作権法61条2項の「特掲」があったというためには、翻案権が当該譲渡の目的に含まれていることを終局的一義的文言で記載する必要はなく、翻案権も譲渡の目的に含まれていることを十分認識できる程度の記載で足りる旨主張するが、上記の説示に照らして、同主張が採用できないことは明らかである。
 そこで、甲3契約書に翻案権譲渡の特掲があったといえるかについて検討するに、前記( )のとおり1 、甲3契約書には、「対象権利および権利行使素材の所有権の一切を・・・譲渡し」(2条)との記載、及び「対象権利」の定義として、「対象作品に対する著作権および対象作品の全部又は一部のあらゆる利用を可能にする一切の権利」(1条の4)との記載があるのみであり、「著作権法27条の権利」又は「翻案権」等の文言を具体的に挙げて明記して、同権利を譲渡する旨の記載はない。
 したがって、甲3契約書には、翻案権を譲渡の目的とする特掲があったということはできず、また、契約書に明記はしないが譲渡の対象に含まれる旨が合意されたなどの特段の事情も認められないから、著作権法61条2項により、甲3契約において、本件映画の翻案権は、著作権を譲渡した者、すなわちP2に留保されたものと推定される。
イ 原告は、前記(1)で認定した甲3契約締結における事情を基に、甲3契約において、甲3契約対象作品の翻案権も譲渡された旨を主張する。
 しかしながら、以下の理由により、甲3契約によって原告が翻案権を取得したと認めることはできない。
(ア) まず、甲3契約締結当時、原告のように映画、テレビ、ビデオソフトなどの企画、制作、販売等を行い、映像に関わる著作権を日常的に処理する業界においては、高額な対価支払を伴う著作権の譲渡契約を行う場合、当該譲渡の対象である著作権に翻案権を含めて契約を締結するときには、著作権法61条2項の規定が存在する以上、作成される契約書に翻案権が譲渡対象となる旨の特掲がなされていることが一般的であると推測される。
 また、本件においては、甲3契約書の草案の作成に原告側の弁護士が関与しており、このように弁護士などの法律専門家が譲受人側として著作権譲渡契約書の作成に関与する場合、譲渡の対象に翻案権も含める旨の合意が成立しているにも関わらず、その特掲のない契約書を作成し、又は、そのような契約書に署名をすることは、通常、想定し難いというべきである。
 しかも、前記( )エのと1 おり、原告が、P3から本件P3経由著作物の著作権譲渡登録をするために、弁護士が関与してP3に作成させた本件P3譲渡証書には、著作権法27条及び同法28条の権利が譲渡対象に含まれていることの特掲があり、本件P2譲渡証書にも、同様の特掲があったのであるから、原告及びその代理人弁護士は、著作権法61条2項の内容を十分理解し、翻案権の譲渡を受ける場合には、その旨の特掲の必要性を十分認識していたものと認められ、それにもかかわらず、甲3契約書に、翻案権譲渡の特掲がなかった以上、当該契約において翻案権の譲渡がなかったものと推測せざるを得ない。
(イ) 原告は、甲3契約書9条2項について、P2は、対象権利の行使に関して原告が第三者から異議を申し立てられ、請求をされることがないことを保証する旨規定していることから、P2は、甲3契約により、対象作品のあらゆる利用を第三者から異議を述べられずに行うことが可能な権利を譲渡したことになるところ、そのような権利保証をすることは、翻案権の譲渡をせずしては不可能である旨主張する。
 しかしながら、甲3契約書9条2項の上記文言は、前記(1)イ(ク)のとおりであり、P2から原告に譲渡された「対象権利の行使」に関して、原告が第三者から異議等を受けた場合に、P2がそれに関する一切の費用負担等を行うことを約するものであり、本件映画に即していえば、映画に関する著作権を行使して複製や上映などをした場合に、第三者から異議を受けたときを念頭においたものと解することも可能であって、上記文言が、原告に翻案権があることを常に前提とするとは限らないから、原告の上記主張は、その前提において誤りがあり、採用することができない。
(ウ)  原告は、本件P3譲渡証書は、P3から一旦P2に交付された後、P2から原告に交付されたものであるところ、本件P3譲渡証書には、譲渡の対象に著作権法27条及び同法28条に規定する権利が含まれる旨の特掲があるのであるから、P2は、本件P3譲渡証書の上記記載内容を認識しており、甲3契約において、上記権利も譲渡の対象とする意思を有していた旨主張する。
 しかしながら、本件P3譲渡証書は、前記(1)ウ認定のとおり、原告がP3に作成させて同人から交付を受けたものと認められ、P2が本件P3譲渡証書の具体的な記載内容を認識していたということができない以上、原告の上記主張は、その前提において誤りである。また、確かに、本件P3譲渡証書には、前記(1)エのとおり、著作権法27条及び同法28条の権利が譲渡対象に含まれていることの特掲があるが、同証書は、甲3契約に利害関係がなく、P2に依頼されて著作権登録原簿上の権利者となっていたにすぎないP3が、原告の依頼により作成したものであり、前記(1)ウで判示した本件P3譲渡証書作成に関する状況からすると、同証書は、原告の利益のために作成されたものと認められ、したがって、その内容も、原告の希望を反映したものとなると考えられることから、本件P3譲渡証書に、上記特掲があるからといって、それが甲3契約締結当時における、当事者間の意思を反映したものであるということはできない。
 いずれにしても、原告の上記主張を採用する余地はない。
 この点、P4陳述書には、本件P3譲渡証書は、P3が一旦P2に交付したものを、P2が原告に交付したものであり、P2は、本件P3譲渡証書の記載内容を認識し、同内容の譲渡証書を交付することを承諾していた旨の記載がある。
 しかしながら、仮に、上記権利も譲渡対象に含まれることについてP2の承諾を得ていたのであれば、P3から原告への譲渡証書ではなく、本件P3経由著作物の著作権登録原簿上の著作権をP2に戻すとともに、P2から原告への上記特掲のある譲渡証書を作成するのが、上記特掲の必要性を認識していた原告にとって確実であり、通常とるべき手段であると考えられるところ、実際には、P3から原告への譲渡証書である本件P3譲渡証書が作成されるにとどまり、上記の通常とるべき手段が行われなかったことについての合理的な説明はないから、P4陳述書の上記記載部分は採用できない。
(エ) なお、甲3契約により、原告が権利取得の対価として支払義務を負った金額は、4億5000万円であるが、前記1(1)で判示したように、甲3契約対象作品の中に含まれている宇宙戦艦ヤマト作品は、その最初の作品である本件映画1が昭和49年に製作され、昭和58年に劇場公開された「宇宙戦艦ヤマト完結編」までの、合計8作のシリーズ作品であり、劇場公開された4本の作品は、21億円ないし43億円と巨額の興行収入をもたらし、また、宇宙戦艦ヤマト作品は、日本中に空前のブームを引き起こしたものであることが認められ、このように、甲3契約対象作品の中に、極めて著名な映画である宇宙戦艦ヤマト作品が含まれていることからすると、同作品が、甲3契約締結時においては、テレビ放映ないし劇場公開がされてから13年ないし22年が経っていることを考慮しても、甲3契約対象作品の複製権の対価が4億5000万円であることが、不自然であるということはできない。
ウ 以上のとおり、甲3契約においては、本件映画の翻案権は譲渡の対象となっていたと認めることはできず、甲3契約によって原告が本件映画の翻案権を取得したと認めることはできない。
3 被告映像は、本件映画を複製又は翻案したといえるか(争点(1)ウ)について
 前記1で判示したとおり、P2は本件映画の映画製作者と認めることはできず、したがって、原告は、甲3契約により、本件映画の著作権を取得したものとは認められないが、念のため、P2が本件映画の映画製作者であったか、又は、P2が本件映画の映画製作者から本件映画の著作権の譲渡を受けていたものと仮定して、争点(1)ウについても検討する。ただし、前記2で判示したように、原告が、甲3契約によって、P2から本件映画の著作権の譲渡を受けたと仮定したとしても、甲3契約の譲渡の対象となった著作権は複製権のみであり、翻案権は対象となっていなかったのであるから、以下では、被告映像が本件映画の複製権を侵害するか否かについて検討する。
(1) 本件映画の内容について
 証拠(甲1の1ないし4、4、37、38)及び弁論の全趣旨によれば、本件映画の内容は、次のとおりであると認められる。
 本件映画1は、地球が、異星人からの攻撃により放射能に汚染され、地表の大部分は溶岩に覆われて地表に棲息する生物は絶滅したが、人類は、地下都市を築いて生き続けていたところ、地表の放射能が次第に地下を浸食してきたため、地下都市も、あと1年で放射能に汚染される状態となったという設定のもと、放射能汚染消去装置の部品と設計図を求めて、宇宙の遙か彼方のイスカンダル星まで往復するために、かつて海底に沈没していた戦艦大和を改造して建造された宇宙戦艦ヤマトが、イスカンダル星への往復の途中で、数々の戦闘を繰り返しながら、侵略者に立ち向かっていくという物語である。宇宙戦艦ヤマトは、戦闘の際、その最大の兵器である、艦首から発射される波動砲のほか、主砲、パルスレーザー砲等を使用する。
 本件映画2ないし4も、設定は異なるものの、宇宙戦艦ヤマト及びその乗組員が、地球ないし人類を滅亡から救出するために、困難に立ち向かう物語となっている。
(2) 本件映画の被侵害主張部分における映像について
 証拠(甲9の1、14の1)、上記?で認定した本件映画の内容及び弁論の全趣旨によれば、本件映画被侵害主張部分に描かれている艦船は、宇宙戦艦ヤマトであること、その艦首にある穴は波動砲の発射口であること、その波動砲発射口から発射される光線様のものは波動砲であることが認められる。
(3) 本件映画と被告映像との対比
 証拠(甲9の1、14の1)及び弁論の全趣旨によれば、以下のとおり認められる。
ア 被告映像対比表1正面バージョン部分は、本件映画対比表1部分の複製物といえるか。
 被告映像対比表1正面バージョン部分は、戦艦様の飛行物体の艦首部の発射口から、大量の光線が発射される様子を描いた動画映像であるが、その重要な構成部分である映像が、被告映像対比表2正面バージョン部分、被告映像対比表3正面バージョン部分、被告映像対比表4正面バージョン部分及び被告映像対比表5正面バージョン部分である。一方、本件映画対比表1部分は、宇宙戦艦ヤマトの艦首部の発射口から、波動砲が発射される様子を描いた動画映像であるが、その重要な構成要素である映像は、本件映画対比表2部分、本件映画対比表3部分と極めて類似した映像、本件映画対比表4部分と極めて類似した映像、本件映画対比表19部分と極めて類似した映像である。
 そして、後記イないしエのとおり、被告映像対比表2正面バージョン部分、被告映像対比表3正面バージョン部分及び被告映像対比表4正面バージョン部分は、それぞれ、本件映画対比表2部分、本件映画対比表3部分及び本件映画対比表4部分の複製物ということはできず、また、後記で判示する被告映像対比表5正面バージョン部分と本件映画対比表19部分との各表現内容及び表現形式を比較すれば、被告映像対比表5正面バージョンは、本件映画対比表19部分の複製物ということはできない。
 このように、被告映像対比表1正面バージョン部分の重要な構成要素である4つの映像部分は、いずれも、本件映画対比表1部分の重要な構成要素である4つの映像部分の複製物ということはできないから、被告映像対比表1正面バージョン部分は、本件映画対比表1部分の複製物ということはできない。
イ 被告映像対比表1横バージョン部分は、本件映画対比表1部分の複製物といえるか。
 被告映像対比表1横バージョン部分は、前記アと同様の理由により、本件映画対比表1部分の複製物ということはできない。
ウ 被告映像対比表2正面バージョン部分は、本件映画対比表2部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表2部分
 本件映画対比表2部分は、約2秒間の動画映像であり、暗青色の宇宙空間を背景に、宇宙戦艦ヤマトの艦首部に設置された波動砲発射口内部で、無数のオレンジ色の光の粒子が奥の方へ吸い込まれていき、それに伴い発射口内部の色が変化する様子が、波動砲発射口の左斜め前方の位置から、波動砲発射口を拡大して描かれたものである。
 視点は一定で、移動せず、また、発射口の大きさも終始一定である。発射口は、画面を見る者には照準を合わせていない。
 画面の8割強を艦首部の一部が占めており、その中心部に波動砲発射口が描かれ、同発射口は画面の4割程度を占めている。画面の2割弱を占める背景には、暗青色の宇宙空間が描かれている。艦首部は、発射口以外は、ほとんど描かれておらず、喫水線下の部分も描かれていない。
 波動砲発射口の内部には、内壁に等間隔のリブが存在しており、最奥部にプロペラ様のものがあるという構造が明確に描かれている。
 波動砲発射口内部では、発射口の出口部分から無数のオレンジ色の光の粒子が発射口奥部に、直線状に、引き寄せられていき(この光の粒子の発生源は、発射口内部に限定されており、発射口外部から発射口内に入ってくるものはない。)、発射口内部の色は、当初、暗いオレンジ色であるのが、徐々にオレンジ色の明るさが増していき、最奥部は、最終的には、黄色に変色するが、最奥部以外の部分は、途中で明るさが減じ、暗いオレンジ色に戻る。
b 被告映像対比表2正面バージョン部分
 被告映像対比表2正面バージョン部分は、約1秒余りの動画映像であり、宇宙空間を背景にして、画面の中央部にある戦艦様の飛行物体の艦首部の黄白色に発光した発射口に向かって、画面全体から無数の白色の光の粒子が吸い込まれていく様子が、発射口を中心にして描かれている。
 視点は、当初、艦首部のやや右側にあるが、正面に移動し、それとともに、艦首部が徐々に拡大されるように描かれている。発射口は、画面を見る者に照準を合わせている。
 発射口は、当初、画面の1割程度を占める大きさであるが、その後、画面の2割足らずを占める大きさとなる。
 画面には、艦首部の上端部は映っておらず、発射口の下の赤色の部分の一部が描かれている。また、両側部には、半円盤状の翼様のものが設置され、その翼様のものが明確に描かれている。
 背景の左奥には、明るい水色をした、惑星の一部と思われるものが描かれている。
 発射口内部は、黄白色に発光しており、内部の様子は明確には認識できないが、ヒトデのような形、又は「大」の字のような形をした部材が取り付けられているのが見える。発射口は、常に明るい状態のままである。
 また、発射口に向かって画面全体から吸い込まれる白色の光の粒子は、発射口内部の発光部分に渦を巻くようにして吸い寄せられている。
(イ) 対比
 本件映画対比表2部分と被告映像対比表2正面バージョン部分とは、前記(ア)のとおり、画面の中心部に、宇宙空間を背景にして、戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光している様子が描かれていること、その発光部分は、映像の中で、中心的に描かれていること、発光部分の中心部に向かって光の粒子が移動していく様子が描かれていることが共通している。
 しかしながら、証拠(乙37の4、69)によれば、本件映画が制作された時点で、先端に穴の空いた飛行物体が宇宙を航行している様子を描いた画像、先端に穴の空いた戦艦が海上を航行している様子を描いた画像、先端部から光線を発している飛行物体を描いた画像、及び宇宙空間を暗青色に描く画像が存在していることが認められ、このことから、先端部に存在する発射口から光線を発する飛行物体が暗青色の宇宙空間を航行するという映像や、そのような飛行物体が先端部の発射口から光線を発射する前段階として、発射口部分が発光することを描いた映像も、特に目新しい表現ということはできない。また、飛行物体の先端部に設置された発射口が発光するのを描く際に、その発射口を中心に描くことも、ありふれた表現方法である。そして、戦艦が宇宙空間を飛行すること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。
 したがって、上記両映像の上記共通点のうち、宇宙空間を背景にして、戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光している様子が中心に描かれている部分は、両映像にとって特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。そして、宇宙空間を背景にして、戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光しているという部分の具体的な表現形式については、前記(ア)のとおり、大きく異なる。
 また、発光部分の中心部に向かって光の粒子が移動していくという部分は、ありふれた表現ということはできないが、その具体的な表現形式は、前記(ア)のとおり、大きく異なっている。
 さらに、その他の表現形式も、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なっている。
 以上の事実を総合考慮すると、被告映像対比表2正面バージョン部分と本件映画対比表2部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表2正面バージョン部分は、本件映画対比表2部分の複製物ということはできない。
エ 被告映像対比表2横バージョン部分は、本件映画対比表2部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表2部分
 本件映画対比表2部分の表現内容及び表現形式は、前記ウ(ア)で判示したとおりである。
b 被告映像対比表2横バージョン部分
 被告映像対比表2正面バージョン部分は、1秒弱の動画映像であり、宇宙空間を背景にして、画面の中央部左よりにある戦艦様の飛行物体の艦首部の黄白色に発光した発射口に向かって、発射口の外部から無数の白色の光の粒子が吸い込まれていく様子が、発射口を中心にして描かれている。
 視点は、当初、艦首部の左側にあるが、発射口に接近しながら、やや正面よりに移動している。発射口は、画面を見る者には照準を合わせていない。
 発射口の大きさは、当初は、余り大きくないが、徐々に拡大していき、最終的には画面の1割程度を占める大きさとなる。
 画面には、艦首部が映っているが、画面奥に、艦橋もわずかに見える。飛行物体の喫水線下の部分は描かれていない。
 発射口内部は、黄白色に発光しており、内部の様子は全く認識できない。
 また、発射口内部の発光部分に向かって、主に、発射口の正面方向から、帯状に、白色の粒子が吸い寄せられるが、その他の場所からも、白色の粒子が若干吸い寄せられている。
(イ) 対比
 本件映画対比表2部分と被告映像対比表2横バージョン部分とは、前記(ア)のとおり、画面の概ね中心部に、宇宙空間を背景にして、戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光している様子が、艦船の左側の位置から描かれていること、その発光部分は、映像の中で、中心的に描かれていること、発光部分の中心部に向かって光の粒子が移動していく様子が描かれていることが共通している。
 しかしながら、前記ウで判示したとおり、艦首の先端部に光線の発射口を設置した飛行物体が、その発射口から光線を発射する前段階として、その発射口部分が発光することを描いた映像は、特に目新しい表現ということはできない。また、飛行物体の艦首に設置された発射口が発光するのを描く際に、その発射口を中心に描くこと、また、その際の視点を艦首の左側とすることも、ありふれた表現方法である。そして、戦艦が宇宙空間を飛行すること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。
 したがって、上記両映像の上記共通点のうち、宇宙空間を背景にして、戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光している様子が中心に描かれている部分は、両映像にとって特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。そして、宇宙空間を背景にして、戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光しているという部分の具体的な表現形式は、前記(ア)のとおり、大きく異なる。
 また、発光部分の中心部に向かって光の粒子が移動していくという部分は、ありふれた表現ということはできないが、その具体的な表現形式は、前記(ア)のとおり、大きく異なっている。
 さらに、その他の表現形式も、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なっている。
 以上の事実を総合考慮すると、被告映像対比表2横バージョン部分と本件映画対比表2部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表2横バージョン部分は、本件映画対比表2部分の複製物ということはできない。
オ 被告映像対比表3正面バージョン部分は、本件映画対比表3部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表3部分
 本件映画対比表3部分は、約1秒間の動画映像であり、画面左奥側にシリンダー様部材が、画面右側手前側にピストン様部材が、それぞれ対向して配置されており、上記シリンダー様部材の中心部には、上記ピストン様部材の直径と同程度の直径の円筒状の中空部分があり、同中空部分に上記ピストン様部材が、回転することなく、徐々に押し込まれていく様子が描かれている。
 上記シリンダー様部材の断面は、台座に半円が乗ったような形状をしており、所々に光った計器様の円形の部材が配置されている。
 上記シリンダー様部材の中空部分及びピストン様部材は、光に照らされているように、濃いオレンジ色に着色され、また、上記シリンダー部材のその余の部分は、同様に薄いオレンジ色に着色されている。上記ピストン状部材が上記シリンダー様部材の中空部分に押し込まれても、画面の明るさに変化はない。
b 被告映像対比表3正面バージョン部分
 被告映像対比表3正面バージョン部分は、約1秒間の動画映像であり、画面右奥側の部材が、回転しながら、画面左手前側の部材に向かっていき、衝突する様子が描かれている。
 画面右奥側には、先端に合計5個の円筒状突起物が設置された円筒状部材が、画面左手前側には、釣り鐘状の突起物が複数設置された円筒状部材が、それぞれ対向して配置されており、右奥側の円筒状部材と左手前側の円筒状部材の各中心部は、細長い円柱状の部材で連結されている。
 そして、右奥側に配置された円筒状部材が高速で回転しながら、左手前側の円筒状部材の方向に高速で移動し、右奥側の円筒状部材に設置された5個の円筒状突起物が、左手前側の円筒状部材に設置された複数の釣り鐘状の突起物に激しく衝突し、その際に、強く発光する。
 画面は、当初、点灯された室内程度の明るさであるが、上記円筒状突起物が上記釣り鐘状の突起物に衝突すると、その衝突部分である画面中央部やや左よりの部分が白色に発光し、その後、その発光が、大きくなり、画面のほとんどの部分が、白色の発光部分で満たされていく。
(イ) 対比
 本件映画対比表3部分と被告映像対比表3正面バージョン部分とは、前記(ア)のとおり、画面の右側と左側に、部材が対向して配置され、両部材が近づく様子が描かれている点で共通するが、この共通点は、極めて抽象的なものであるから、両映像の同一性の有無の判断においては、大きな意味を有しない。
 そして、上記両映像間の複製権侵害の有無の判断においては、両映像の具体的な表現形式の比較が重要であるところ、その部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく相違する。
 以上の事実を総合考慮すると、被告映像対比表3正面バージョン部分と本件映画対比表3部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表3正面バージョン部分は、本件映画対比表3部分の複製物ということはできない。
カ 被告映像対比表3横バージョン部分は、本件映画対比表3部分の複製物といえるか。
 被告映像対比表3横バージョン部分は、被告映像対比表3正面バージョン部分とほぼ同一の映像であるから、前記オと同じ理由により、被告映像対比表3横バージョン部分は、本件映画対比表3部分の複製物とはいえない。
キ 被告映像対比表4正面バージョン部分は、本件映画対比表4部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表4部分
 本件映画対比表4部分は約3秒間の動画映像であり、宇宙空間を背景にして、宇宙戦艦ヤマトの艦首部の波動砲発射口から、波動砲が発射される様子が描かれている。
 発射口は、画面を見る者に照準を合わせていない。
 前半部分は、宇宙戦艦ヤマトの艦首部が、同戦艦の左斜め前方の位置から、艦首部が拡大され、同部が画面の中心部付近に位置するように描かれている。艦首の発射口は、当初、画面全体の約10分の1程度の大きさで、内部は、最奥部が黄白色に、その余の部分はオレンジ色に発光しており、内壁に等間隔のリブや多数の光の粒子が存在していることが認識できるが、途中で、最奥部の黄白色の光の強度が増すとともに、オレンジ色部分が黄白色に変化していき、発射口内部の様子がはっきりとは分からなくなると、画面が切り替わる。
 画面が切り替わると、宇宙戦艦ヤマト全体が、同じく左斜め前方の、離れた位置から、艦首の発射口が画面の中心部付近に位置するように描かれている。発射口は、当初、空洞の状態であるが、途中で黄白色に発光し、続いて、その光が徐々に強まっていくとともに、大きくなり、最終的には、画面の約8割程度を占め、宇宙戦艦ヤマトを覆い隠すようになる。
b 被告映像対比表4正面バージョン部分
 被告映像対比表4正面バージョン部分は、約1秒間の動画映像であり、宇宙空間を背景に、戦艦様の飛行物体の艦首部の発射口から光線が発射される様子が、発射口の正面の位置から描かれている。
 画面中央部に、画面全体の10分の1程度の大きさで、発射口が描かれている。発射口は、画面を見る者に照準を合わせている。
 発射口は、最初は、その全体が白色に発光しているが、画面全体から、多数の白色の光の粒子が吸い寄せられながら、徐々に発光が弱まり、発射口の奥の方へ減退していき、発射口内部の手前付近の様子がある程度認識できるようになると、今度は、逆に、発射口内部の発光部分が拡大していき、画面全体が白色の光で満たされる。さらに、その後、白色の光が収縮し、その白色部分の周囲から、等間隔で5本の帯状の光線が発せられている状態になり、次いで、帯状の光線が乱れ飛ぶようにして、画面全体が白色の光で満たされるようになる。
 白色の発光部分が、発射口内部ないしその周辺にとどまっている状況においては、画面には、艦首部の上端部は映っておらず、発射口の下の赤色の部分の一部、両側部に設置された半円盤状の翼様のもの、背景の左奥に明るい水色をした惑星の一部と思われるものが、それぞれ映っている。
(イ) 対比
 本件映画対比表4部分と被告映像対比表4正面バージョン部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空間を背景に、戦艦の艦首の発射口から光線が発射され、その発光部分が拡大していく様子が描かれている点で共通している。
 しかしながら、前記ウで判示したとおり、本件映画が制作された時点で、先端に穴が空いた飛行物体が宇宙を航行している様子を描いた画像、先端に穴の空いた戦艦が海上を航行している様子を描いた画像、先端部から光線を発している飛行物体を描いた画像が存在していることが認められ、このことから、先端部に存在する発射口から光線を発する飛行物体が、その発射口から光線を発射するという映像は、特に目新しい表現ということはできない。しかも、宇宙空間を戦艦が飛行すること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。さらに、飛行物体から発射された光線が拡大するように描くことも、ありふれた表現である。しかも、上記の共通点は極めて抽象的なものにとどまる。
 したがって、上記両映像の上記共通点は、両映像にとって特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の事実を総合考慮すると、本件映画対比表4部分と被告映像対比表4正面バージョン部分との間に同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表4正面バージョン部分は、本件映画対比表4部分の複製物ということはできない。
ク 被告映像対比表4横バージョン部分は、本件映画対比表4部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表4部分
 本件映画対比表4部分の表現内容及び表現形式は、前記キ(ア)で判示したとおりである。
b 被告映像対比表4横バージョン部分
 被告映像対比表4横バージョン部分は、約1秒間の動画映像であり、宇宙空間を背景に、戦艦様の飛行物体の艦首部から光線が発射される様子が、艦首部の左側の位置から描かれている。
 画面中央部やや左よりの部分に、画面全体の10分の1程度の大きさで、発射口が描かれている。発射口は、画面を見る者に照準を合わせていない。
 発射口は、最初は、その全体が白色に発光していたが、発射口の前方から、白色の光の粒子が帯状に吸い寄せられながら、徐々に発光が強まるとともに、拡大していき、最終的には、画面全体が白色の光で満たされるようになる。
 白色の発光部分が、発射口内部ないしその周辺にとどまっている段階では、画面上に、艦首部が映っているが、画面奥に、艦橋もわずかに見える。飛行物体の喫水線の下部分は映っていない。
 発射口内部は、黄白色に発光しており、内部の様子は全く認識できない。
(イ) 対比
 本件映画対比表4部分と被告映像対比表4横バージョン部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空間を背景に、戦艦の艦首の発射口から光線が発射され、その発光部分が拡大していく様子が、艦首部の左側の位置から描かれている点で共通している。
 しかしながら、前記キで判示したとおり、先端部に存在する発射口から光線を発する飛行物体が、その発射口から光線を発射するという映像は、特に目新しい表現ということはできず、しかも、戦艦に宇宙空間を飛行させること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。さらに、飛行物体から発射された光線が拡大するように描くことも、ありふれた表現である。
 したがって、上記両映像の上記共通点は、両映像にとって特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の事実を総合考慮すると、本件映画対比表4部分と被告映像対比表4横バージョン部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表4横バージョン部分は、本件映画対比表4部分の複製物ということはできない。
ケ 被告映像対比表5正面バージョン部分は、本件映画対比表5部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表5部分は、約4秒間の動画映像であり、宇宙空間を背景に、宇宙戦艦ヤマトの艦首部の波動砲発射口から発射された波動砲の様子が、同戦艦の左斜め前方の位置から描かれている。
 画像は、当初、宇宙戦艦ヤマトの艦首部のみが映っているが、発射口から波動砲が発射されると、視点は、対象から遠ざかり、宇宙戦艦ヤマト全体が映るようになり、その後、勢いよく発射された波動砲及びその先端部に移り、相当の距離を移動していく波動砲の行き先を追いかけていき、それに伴い、宇宙戦艦ヤマトは画面から消えていく。
 なおも、視点は、波動砲の行き先を追いかけ、徐々に対象に近づき、波動砲の先端を捉えると、波動砲が画面のほとんどを占めるようになる。その直後に、それまで直進していた波動砲が、突然、遠景として急上昇する場面が描かれ、さらに、再び波動砲に近づいて対象が拡大され、波動砲ないし宇宙戦艦ヤマトに向かってくる敵のミサイル様のものを波動砲が包み込み、焼き尽くそうとしている様子が拡大されて描かれている。
 波動砲は、発射口内及びその周辺にとどまっているときは、略円形状で、中心部が白色、その周辺部が水色に発光しているが、発射されると、帯状となり、中心部が白色、その両端部が青色に発光し、さらに、その両端部に、紫色の炎状のものが描かれている。
b 被告映像対比表5正面バージョン部分
 被告映像対比表5正面バージョン部分は、約2秒間の動画映像であり、戦艦様の飛行物体の艦首部に設置された発射口から大量の光線が発射されている状態が、真正面の位置から描かれている。
 画面は、当初、そのほとんどが白色に発光しており、発光部分が回転している状況が、わずかに認識できる状態であるが、途中から、いくつかの帯状の光線が回転しているように描かれるようになり、画面の中心部から、人の上半身が飛び出してくる。
 当該映像部分だけからは、どのような場面が描かれているかは分からないが、前後の映像から、真正面の視点から、宇宙空間を背景にして、画面の中央に位置する戦艦様の飛行物体の艦首部の発射口から、画面を見る者に向かって、白色に発光する光線が大量に勢いよく発射されている状況が描かれた画像であることが分かる。
(イ) 対比
 本件映画対比表5部分と被告映像対比表5正面バージョン部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空間を背景にして、戦艦の艦首部に設置された発射口から光線が勢いよく大量に発射されている状況が描かれている点で共通する。
 しかしながら、前記キで判示したとおり、宇宙空間を背景に、先端部に存在する発射口から光線を発する飛行物体を描いた映像は、特に目新しい表現ということはできない。また、その光線が大量に発射されているように描くことも、ありふれた表現形式である。さらに、戦艦に宇宙空間を飛行させること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。
 したがって、上記両映像の上記共通点のうち、宇宙空間を背景に、先端部に存在する発射口から大量の光線を発する戦艦が描かれている点は、両映像にとって特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の点を総合考慮すると、両映像が同一であるということはできないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表5正面バージョン部分は、本件映画対比表5部分の複製物ということはできない。
コ 被告映像対比表5横バージョン部分は、本件映画対比表5部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表5部分
 本件映画対比表5部分の表現内容及び表現形式は、前記ケ(ア)で判示したとおりである。
b 被告映像対比表5横バージョン部分
 被告映像対比表5横バージョン部分は、約3秒間の動画映像であり、戦艦様の飛行物体の艦首部に設置された発射口から、大量の光線が発射されている状態が描かれている。
 画面の中央部は、当初、画面の約8割程度を占める大きさの白色の発光部分が描かれているが、その後、当該白色の発光部分の左側から、画面左方向に大量の光線が発射されると、視点が、発光部分から一旦遠ざかり、光線が発射されている状態が描かれ、次に、視点が徐々に発光部分に近づきながら、光線の行き先を追うようになり、その後再び、発光部分が画面のほとんどすべてを占めるようになり、その状態が暫く続くと、画面右側の発光部分の中から、数多くのキャラクターの絵が、次々と飛び出してきて、画面左側に移動し、消滅していく。
 上記映像部分は、当該部分だけでは、どのような場面の映像であるかは判別できないが、前後の映像から、上記白色の光は、戦艦様の飛行物体の艦首部の発射口から発射された光線であること、背景が宇宙空間であることが分かる。
(イ) 対比
 本件映画対比表5部分と被告映像対比表5横バージョン部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空間を背景に、戦艦の艦首の発射口から光線が発せられている点、その光線が画面の右側から左側に向かって大量に発射されている点、視点が光線の行き先を追っている点で共通している。
 しかしながら、前記キで判示したとおり、宇宙空間を背景に、先端部に存在する発射口から光線を発する飛行物体を描いた映像は、特に目新しい表現ということはできない。また、その光線が大量に発射されているように描くことも、ありふれた表現形式である。また、戦艦に宇宙空間を飛行させること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。
 したがって、上記両映像の上記共通点のうち、宇宙空間を背景に、先端部に存在する発射口から大量の光線を発する戦艦が描かれている点は、両映像にとって特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像の表現形式には、前記(ア)の認定から明らかなように、大きな相違があるのであるから、視点が光線の行き先を追っていくという点で表現形式が共通しているということを考慮しても、両映像が同一であるということはできないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表5横バージョン部分は、本件映画対比表5部分の複製物ということはできない。
サ 被告映像対比表6部分は、本件映画対比表6部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表6部分
 本件映画対比表6部分は、約2秒間の動画映像であり、宇宙空間を飛行中の宇宙戦艦ヤマトが、攻撃を受け、艦体の後部が爆発し、炎上している様子が、同戦艦の右斜め前方の位置から描かれている。
 宇宙戦艦ヤマトは、戦艦の形状をしており、艦首部に発射口が設置され、同発射口は発光しておらず、艦首部の先端上端部には円形の切れ込みがあり、喫水線付近で上下に色分けされて、上部は灰色、下部は赤色となっており、艦体中央部の後ろ寄りの部分には艦橋が見え、側面に、翼様のものは設置されていない。
 宇宙戦艦ヤマトの艦首部は、特段、強調されて描かれてはいない。
 攻撃の態様としては、宇宙戦艦ヤマトの周りを、複数の戦闘機が飛行し、その戦闘機により攻撃を受けているように描かれている。宇宙戦艦ヤマトでは、上記の攻撃により、艦尾部付近から、赤色や黄白色の非常に大きな炎と煙が生じており、大きな爆発で甚大な被害を受けているように描かれている。
 背景は、暗青色で、全体的に暗い。
b 被告映像対比表6部分
 被告映像対比表6部分は、約1秒間の動画映像であり、宇宙空間を飛行中の戦艦様の飛行物体が、艦体の右側部分に攻撃を受けている様子が、当該飛行物体の前方右側の位置から描かれている。
 飛行物体は、概ね戦艦の形状をしており、艦首部に発射口が設置され、同発射口は白色に発光しており、艦首部の先端上端部には円形の切れ込みがあり、喫水線付近で上下に色分けされて、上部は灰色、下部は赤色となっており、艦体後部には艦橋がわずかに見え、側面中部に、半円盤状の翼様のものが、その後方に、通常の戦闘機の翼様のものが、それぞれ設置されている。半円盤状の翼様のものの側面前方部分には、4か所に、白色に発光している部分があり、戦闘機の翼様のものには、白色に発光した補助エンジン様のものが1つ設置されている。
 飛行物体の艦首部は、飛行物体全体の構図としては、極端に大きく強調されて描かれている。
 攻撃の態様としては、画面左側から飛来してくる何条もの光線が、飛行物体の右側の、主に半円盤状の翼様のものの前方部分に当たり、当該部分には、爆発により白色に発光した炎が生じるが、その炎はすぐに消え去り、上記攻撃による被害は小規模なものにとどまっているように描かれている。上記炎の画面上に占める大きさの割合は、本件映画対比表6部分における炎の大きさの割合の10分の1程度である。
 飛行物体の周りには、戦闘機は飛行していない。
 背景は、所々に、白色に発光している部分があるため、全体的に明るい。
(イ) 対比
 本件映画対比表6部分と被告映像対比表6部分とでは、前記(ア)のとおり、宇宙空間を飛行する戦艦が、攻撃を受け、その部分に爆発による炎が生じている様子が、戦艦の右側前方の位置から描かれている点、その戦艦の艦首部には発射口が設置されている点、艦首部の先端上端部には円形の切れ込みがあり、喫水線付近で上下に色分けされて、上部は灰色、下部は赤色となっている点、戦艦には艦橋がある点で共通する。
 しかしながら、前記ウのとおり、本件映画が制作された時点で、先端に穴が空いた飛行物体が宇宙を航行している様子を描いた画像が存在していたことが認められ、そのような表現形式はありふれており、また、証拠(乙40)によれば、本件映画が制作された時点で、戦艦の艦首部の先端上端部に円形の切れ込みがある映像も存在していたことが認められ、そのような表現形式もありふれたものである。さらに、証拠(乙73)によれば、昭和35年5月に発売された戦艦大和のプラスチック模型は、宇宙戦艦ヤマトの艦首に発射口があることを除けば、宇宙戦艦ヤマトと類似した形態及び色彩をしていることが認められ(宇宙戦艦ヤマトの形状及び色彩は、戦艦大和ないし一般的な戦艦の形状及び色彩に基づいて制作され、これに艦首の発射口を設けたものと認められる。)、したがって、宇宙戦艦ヤマトの形状及び色彩は、艦首に発射口がある点を除いて、ありふれたものであり、上記共通点の、艦橋が設置され、その前方に主砲が設置されており、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色となっている点もありふれた表現形式というべきである。
 しかも、戦艦を宇宙空間を飛行させること自体は、アイデアにすぎず、また、暗青色の空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。
 さらに、戦艦が攻撃を受けている様子を描くこと、それを戦艦の右側前方の位置から描くこと、攻撃を受けた場所から炎が生じるように描くことは、ありふれた表現形式である。
 したがって、上記両映像の上記共通点は、いずれも両映像にとって特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の点を総合考慮すると、両映像が同一であるということはできないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表6部分は、本件映画対比表6部分の複製物ということはできない。
シ 被告映像対比表7部分は、本件映画対比表7部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表7部分
 本件映画対比表部分7部分は、宇宙戦艦ヤマトが宇宙空間を飛行している様子が描かれた約10秒間の動画映像である。
 上記映像部分は、何もない宇宙空間を宇宙戦艦ヤマトが、画面の中央やや右寄りの部分から近づいて来て、次いで、画面の中央やや左寄りの部分の奥の方向へ遠ざかって行く様子が描かれたものである。最初の場面では、宇宙戦艦ヤマトの艦首部、左舷及び艦橋が左斜め前方の離れた位置から描かれているが、宇宙戦艦ヤマトがそのままの状態で画面に近づいて来て、左舷部が拡大され、画面全体を左舷部が占めるようになり、その後、視点が、宇宙戦艦ヤマトの左後方に徐々に移動して、画面を見る者の目の前を通過して行くような印象を与え、さらに、視点が、宇宙戦艦ヤマトの左斜め後方まで移動すると、その位置から、宇宙戦艦ヤマトが、画面の中央よりやや左よりの奥の方へ、遠ざかって行く様子が描かれている。
 宇宙戦艦ヤマトの形状は、艦首部に発射口が設置され(発射口は発光していない。)、発射口が設置されている以外は、通常の戦艦と同様の形状であり、艦首部の先端上端部に円形の切れ込みがあり、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色となっており、艦体中央部の後ろよりの部分には艦橋があり、艦橋の前には主砲が設置されている。艦体の側面に、翼様のものは設置されていない。宇宙戦艦ヤマトの艦尾は円形をしており、全体がメインエンジンの噴出口となっており、同噴出口はオレンジ色に発光している。また、艦尾の底部には、補助エンジンの噴出口が2つ設置されており、同噴出口もオレンジ色に発光している。艦尾には、相互に120度の角度に開いた3本の尾翼が設置されている。
 背景は、暗青色で、全体的に暗く描かれている。
b 被告映像対比表7部分
 被告映像対比表7部分は、戦艦様の飛行物体が宇宙空間を飛行している様子が描かれた約27秒間の動画映像である。
 上記映像部分は、宇宙空間を、戦艦様の飛行物体が、画面の中央部辺りから、近づいて来て、次いで、画面の中央部の方向へ遠ざかって行く様子が描かれたものであり、最初の場面では、飛行物体の艦首部、左舷及び艦橋が、左斜め前方の、それらが全部見渡せる程度にやや離れた位置から描かれていたが、飛行物体がそのままの状態で画面に近づいて来て、艦橋部分がある程度拡大され、その後、視点が飛行物体の左後ろへ徐々に移るように移動し、画面を見る者の目の前を通過していくような印象を与え、視点が飛行物体の真後ろの位置まで移動すると、その位置から、飛行物体が、画面の中央の奥の方へ、遠ざかって行く様子が描かれている。視点が飛行物体の真後ろにくると、まず、画面中央奥に、画面の概ね4分の1を占める程度の大きさで、人間の上半身が現れ、その後、上記の人間の映像は消え、代わりに、画面中央奥に、飛行物体に一部が隠れた状態で、地球が現れ、飛行物体が地球に向かっているという印象を受けるように描かれている。
 飛行物体は、概ね戦艦の形状をしており、艦首部に発射口が設置され、同発射口は白色に発光しており、艦首部の先端上端部には円形の切れ込みがあり、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色となっており、艦体後部には艦橋があり、艦橋の前には、主砲が設置され、側面中部に、半円盤状の翼様のものが、その後方に、通常の戦闘機の翼様のものが、それぞれ設置されている。
 上記飛行物体の艦尾は、円形をしており、全体がメインエンジンの噴出口となっており、同噴出口は、前方に人間の姿が現れているときは、白色の発光が点滅し、人間の姿が消えると、黄白色に発光するようになる。また、上記飛行物体の両側面に大きな主翼が設置されており、同飛行物体を真後ろから見ると戦闘機ないし飛行機のように見える。艦尾の上部と底部に、補助エンジンの噴出口が、それぞれ2つずつ設置され、上記各翼にも、各1つずつ補助エンジンの噴出口が設置されており、いずれの噴出口も黄白色に発光している。さらに、艦尾には、相互に90度の角度に開いた4本の尾翼が設置されている。
 背景は、暗青色であるが、飛行物体が画面に向かって近づいて来る場面では、一部、光が当たっているように、明るくなっている部分がある。また、飛行物体が、遠ざかって行く場面では、途中から、画面奥にある地球の上部付近の宇宙空間から白色の発光が生じ、その発光部分が大きくなり、画面全体を覆うと、今度は、縮小し、最終的に、発光部分に「完」という文字が現れる。
(イ) 対比
 本件映画対比表7部分と被告映像対比表7部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空間を戦艦が画面に近づいて来て、その後、奥へ遠ざかって行く様子が描かれている点、視点が変化していき、最終的には戦艦の後ろの位置から描写している点、艦首部に発射口が設置され、艦首部の先端上端部には円形の切れ込みがあり、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色となっており、艦体後部には艦橋があり、艦橋の前には、主砲が設置されている点、戦艦の艦尾の全体がエンジンの噴出口となっており、同部分が発光している点で共通している。
 しかしながら、前記ウのとおり、本件映画が制作された時点で、先端に穴が空いた飛行物体が宇宙を航行している様子を描いた画像が存在していたことが認められ、そのような表現形式は、ありふれたものであり、また、前記サのとおり、戦艦の艦首部の先端上端部に円形の切れ込みを描くことも、ありふれた表現形式である。さらに、前記サのとおり、宇宙戦艦ヤマトの上記形状及び色彩は、艦首に発射口がある点を除いて、ありふれたものであり、上記共通点の、艦橋とその前方に主砲が設置されており、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色となっている点もありふれた表現形式というべきである。
 また、証拠(乙37の3、46、68の1、69、75)よれば、本件映画が制作された時点で、飛行物体の後部の全面がエンジンの噴出口となっている画像が存在していたことが認められ、このような表現も、特に目新しい表現ということはできない。
 しかも、戦艦を宇宙空間を飛行させること自体は、アイデアにすぎず、また、暗青色の空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。
 したがって、上記両映像に上記共通点が存在することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の点を総合考慮すると、両映像が同一であるということはできないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表7部分は、本件映画対比表7部分の複製物ということはできない。
ス 被告映像対比表8部分は、本件映画対比表8部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表8部分
 本件映画対比表8部分は、宇宙空間を背景にして、宇宙戦艦ヤマトの艦橋が、前方の位置から、見上げるようにして描かれた、約1秒間の動画映像である。
 上記映像部分は、最初、画面中央に、艦首の先端上端部越しに艦橋及びその前方にある主砲が描かれており、主砲は、艦首先端上端部にある円形の切れ込みの部分から見えている。その後、視点が艦橋の方向に直進するように移動し、艦橋が徐々に拡大されていき、最終的には、艦首先端上端部は画面下方に消え去り、画面一杯に、艦橋が映し出される。
 艦橋には、一対のアンテナ様の物体及び翼様の物体が左右に設置されている。
 背景は、暗青色の宇宙空間であり、艦橋の後方に、土星様の惑星が画面の5分の1程度の大きさで描かれている。同惑星の上方部分は、光に照らされているように明るいが、画面全体は、暗く描かれている。
b 被告映像対比表8部分
 被告映像対比表8部分は、宇宙空間を背景にして、戦艦様の飛行物体の艦橋及びその前方の甲板が、前方の位置から俯瞰して描かれた約2秒間の動画映像である。
 上記映像部分は、最初、画面中央に、艦橋の正面上方から、艦橋部分とその前方の甲板が俯瞰して描かれており、艦首部分は画面上現れない。その後、視点が艦橋の方向に直進するように移動し、艦橋部分が徐々に拡大されていき、それに伴い、艦橋の最上部付近から白色の光が生じ、その発光部分が次第に拡大していき、画面のほとんどが発光部分で覆われるようになると、今度は、発光部分が縮小していき、艦橋の最上部付近に「チャンスタイム」という文字が、その下の艦橋の最下部付近に「100回」との文字が現れる。
 艦橋には、一対のアンテナ様の物体及び翼様の物体が左右に設置されている。
 背景は、艦橋の最上部付近から光が生じる以前は、暗青色の宇宙空間であるが、一部に白色に発光している部分があり、また、艦橋が光に照らされているように、非常に明るく描かれており、全体的に明るい。その後、艦橋の最上部付近から光が生じて以降は、画面全体が非常に明るくなる。
(イ) 対比
 本件映画対比表8部分と被告映像対比表8部分とでは、暗青色の宇宙空間を背景にして、戦艦の艦橋が、前方の位置から描かれている点、視点が艦橋にあり、艦橋が徐々に拡大されていく点、艦橋には、一対のアンテナ様の物体及び翼様の物体が左右に設置されている点で共通する。
 しかしながら、証拠(乙43、72、76)によれば、本件映画が制作される以前にも、艦橋の左右にアンテナ様の物体や翼様の物体が設置されている画像が存在していることが認められ、したがって、上記共通部分のうち、艦橋に一対のアンテナ様の物体及び翼様の物体を左右に設置して描いた点は、ありふれた表現形式である。また、艦橋を前方の位置から描き、艦橋を徐々に拡大していくことは、ありふれた表現形式であり、宇宙空間を暗青色に描くことも、前記のとおり、ありふれた表現形式である。さらに、戦艦を宇宙空間を飛行させること自体は、アイデアにすぎず、また、暗青色の空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。
 したがって、上記両映像に上記共通点が存在することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の点を総合考慮すると、両映像が同一であるということはできないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表8部分は、本件映画対比表8部分の複製物ということはできない。
セ 被告映像対比表9部分は、本件映画対比表9部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表9部分
 本件映画対比表9部分は、暗青色の宇宙空間を背景に、宇宙戦艦ヤマトが、画面中央奥から、画面を見る者に向かって直進してくる様子が、宇宙戦艦ヤマトの前方正面から、同戦艦を見上げる角度で描かれた、3秒弱の動画映像である。
 上記映像部分は、最初、画面の中央の上半面部分に宇宙戦艦ヤマトが描かれ、その後、徐々に、宇宙戦艦ヤマトが画面を見る者に向かって、上から降りてくるように接近し、艦首部及びその奥の艦橋が拡大され、最終的には、艦首部のうち発射口より上の部分と、艦首越しに艦橋が、画面の約3分の1程度を占める大きさで、前方下方の位置から描かれるようになる。発射口は発光していない。
 宇宙戦艦ヤマトは、艦首部に発射口が設置されているが、その点を除けば、概ね普通の戦艦の形状をしており、艦首部の上端部には、円形の切れ込みが、中央部に1つ、その左右対称の位置に各1つ、描かれており、喫水線付近を境に色分けがされており、上部は灰色に、下部は赤色に着色されている。
 艦橋には、一対のアンテナ様の物体及び翼様の物体が左右に設置されている。
 映像部分の最終場面では、上記の艦首部の先端上端部の中央の切れ込み部分から、主砲らしきものが見える。
 背景は、暗青色の宇宙空間であり、艦橋の後方に、土星様の惑星が画面の5分の1程度の大きさで描かれている。同惑星の上方部分は光に照らされているように明るいが、画面全体は、暗く描かれている。
b 被告映像対比表9部分
 被告映画対比表9部分は、宇宙空間を背景に、戦艦様の飛行物体が、画面中央奥から、画面を見る者に向かって直進して来る様子が、当該飛行物体の前方正面の、飛行物体と同じ高さの位置から描かれた6秒余りの動画映像である。
 上記映像部分は、最初、白色に発光した発射口が画面の中心となるように、画面の中央部に、戦艦様の飛行物体の艦首部のうち、喫水線下のバルジの下端部分を除いたすべての部分が描かれているが、その後、画面右側から左側に稲妻が落ちるように、画面の中段部が激しく白色に発光し、その発光度が増して、飛行物体のうちの喫水線より上の部分が全く見えなくなり、その後、その発光が収まるとともに、発光部分が「FEVER」という文字に変化する。その文字の後ろに飛行物体が見えるようになり、そのころから、飛行物体は、徐々に、画面に接近してきて、最終的には、発射口とその周辺部分が画面一杯に描かれるようになる。上記の「FEVER」という文字が画面に現れた後も、少量ではあるが、稲妻様の光は発生している。
 戦艦様の飛行物体は、艦首部に発射口が設置されており、その発射口が白色に発光しており、艦首部の上端部には、円形の切れ込みが、中央部に1つ、その左右対称の位置に各1つ、描かれており、喫水線付近を境に色分けがされており、上部は灰色に、下部は赤色に着色されている。艦体の左右の側面には、前方に半円盤状の翼様のものと、その後方に戦闘機の翼様のものが設置されている。また、翼様のものには、白色に発光した補助エンジンが各1個ずつ設置されている。
 戦艦様の飛行物体は、発射口と補助エンジン部分を除いて、薄暗く描かれ、白色に発光した発射口と補助エンジンが、かなり目立つように描かれている。
 艦橋と主砲は、画面上現れない。
 背景の宇宙空間は、稲妻様の光が生じる以前は、所々が明るく描かれているが、稲妻様の光が生じた以降は、画面が全体的にかなり明るく描かれている。
(イ) 対比
 本件映画対比表9部分と被告映像対比表9部分とは、宇宙空間を背景に、戦艦が、画面中央奥から、画面を見る者に向かって直進して来る様子が、前方正面から描かれている点、戦艦の艦首部に発射口が設置されており、艦首部の上端部には、円形の切れ込みが、中央部に1つ、その左右対称の位置に各1つ、描かれており、喫水線付近を境に色分けがされており、上部は灰色に、下部は赤色に着色されている点で共通している。
 しかしながら、前記のとおり、先端に穴が空いた飛行物体が宇宙を航行している様子を描いたこと、艦首先端上端部に円形の切れ込みを描いたこと、艦体を喫水線付近を境に色分けし、上部は灰色に、下部は赤色に着色した点は、いずれも、ありふれた表現形式であり、また、艦体が画面に向かって直進して来る様子を、その正面の位置から描くこともありふれている。さらに、戦艦を宇宙空間を飛行させること自体は、アイデアにすぎず、また、暗青色の空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。
 したがって、上記両映像に上記共通点が存在することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の点を総合考慮すると、両映像が同一であるということはできないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表9部分は、本件映画対比表9部分の複製物ということはできない。
ソ 被告映像対比表10部分は、本件映画対比表10部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表10部分
 本件映画対比表10部分は、黄緑色の惑星の上方の宇宙空間で停止している宇宙戦艦ヤマトと、その周辺を飛行している戦闘機の様子が、宇宙戦艦ヤマトの前方の位置から描かれた約3秒弱の動画映像である。
 上記映像部分では、宇宙戦艦ヤマトは、画面中央に、画面の約10分の1程度の大きさで描かれ、停止しており、その前方及び後方から、複数の戦闘機が現れ、宇宙戦艦ヤマトの周りを飛行しているように描かれている。
 上記戦闘機は、後部にあるエンジン噴出口及びその周辺が黄白色に発光しているが、排気を噴出していない。
 宇宙戦艦ヤマトは、艦首部に発射口が設置されているが、それ以外は通常の戦艦と同じ形状であり、喫水線付近で色分けがされ、喫水線付近の上部は灰色に、下部は赤色に着色され、艦首部の先端上端部には、円形の切れ込みが、中央に1つ、その左右対称の位置に各1つ存在し、翼は設置されていない。また、艦橋も描かれており、発射口は発光していない。
 背景は宇宙空間であるが、画面の下側6割には、黄緑色の惑星の一部が描かれており、その惑星の地表部分の様子がある程度描かれているため、宇宙戦艦ヤマトは、惑星上空の近距離の位置で停泊しているように描かれている。
b 被告映像対比表10部分
 被告映像対比表10部分は、宇宙空間を、画面の若干右側に向かって直進している戦艦様の飛行物体と、その周辺を飛行している戦闘機の様子が、戦艦様の飛行物体の前方の位置から描かれた1秒弱の動画映像である。
 上記映像部分では、戦艦様の飛行物体は、画面の中央の奥から、画面を見る者の若干右側に向かって直進しており、同飛行物体の後ろから、複数の戦闘機が、黄白色に発光した非常に大量の排気を噴出しながら、飛行物体を追い抜いて行く様子が描かれている。戦艦様の飛行物体の大きさは、概ね画面の約20分の1程度である。そして、上記戦闘機から噴出された排気の軌跡は、長く明確に描かれ、上記映像部分の終盤の場面では、上記排気の面積が大きくなり、戦艦様の飛行物体と同程度の大きさに描かれている。
 戦艦様の飛行物体は、艦首部に発射口が設置され、同発射口は白色に発光しており、艦首部の先端上端部に円形の切れ込みがあり、喫水線付近で色分けがされ、喫水線付近の上部は灰色に、下部は赤色に着色されている。上記飛行物体には、左右の側面に大きな翼が設置されているが、艦橋は描かれていない。
 背景は、宇宙空間であるが、画面左上角の、画面全体の3分の1を占める程度の部分には、地球様の水色と白色の混ざった惑星の一部が描かれている。
(イ) 対比
 本件映画対比表10部分と被告映像対比表10部分とは、宇宙空間において、戦艦とその周辺を飛行する戦闘機が、戦艦の前方の位置から描かれている点、背景に惑星の一部が描かれている点、戦艦の形状として、その艦首部には発射口があり、艦首部の先端上端部には円形の切れ込みがあり、喫水線付近で色分けがされ、喫水線付近の上部は灰色に、下部は赤色に着色されている点が共通している。
 しかしながら、前記のとおり、艦首先端上端部に円形の切れ込みを描いたこと、艦体を喫水線付近を境に色分けし、上部は灰色に、下部は赤色に着色した点は、いずれも、ありふれた表現形式であり、また、艦体を正面から描くこと、背景に惑星の一部を描くこともありふれている。さらに、戦艦を宇宙空間を飛行させること自体は、アイデアにすぎず、また、暗青色の空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。
 したがって、上記両映像に上記共通点が存在することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の点を総合考慮すると、両映像が同一であるということはできないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表10部分は、本件映画対比表10部分の複製物ということはできない。
タ 被告映像対比表11部分は、本件映画対比表11部分の複製物といえるか。
 本件映画対比表11部分は、本件映画対比表26部分と同一の映像であり、被告映像対比表11部分は、被告映像対比表26部分と極めて類似する映像であるところ、被告映像対比表26部分は、後記ヤのとおり、本件映画対比表26部分の複製物といえない。そして、被告映像対比表11部分は、被告映像対比表26部分に比べて、側壁の有無、前面のパネルの形状等において、更に本件映画対比表11部分(及び本件映画対比表26部分)との共通点が少なくなり、それに対応して、相違点が多くなるのであるから、被告映像対比表11部分は、当然、本件映画対比表11部分の複製物ということはできない。
チ 被告映像対比表12部分は、本件映画対比表12部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表12部分
 本件映画対比表12部分は、室内の黒い壁を背景に、黒色のコート様のユニフォームを着て、軍帽を目深に被り、口を動かして、話をしている体格のよい熟年男性が描かれた8秒余りの動画映像である。
 上記映像部分では、最初、男性の顔が拡大され、正面から若干左にずれた位置から描かれ、次に、画面が切り替わり、男性が椅子に腰掛けている様子が、その肩より上の部分について描かれ、その後、男性が椅子から立ち上がり、立った状態の男性の、胸部から上の部分が正面から描かれている。
 男性の顔は、帽子に隠れていない部分では、目、頬骨、鼻、耳以外は、白い髭で覆われており、下唇にも髭が生えているため、唇は全く見えない。男性の髭は、口髭と顎髭が分離しておらず、顔の輪郭に沿った形をしており、短い。この顔の大部分を覆っている髭部分は、印象が強い。
 帽子は、上部が白色、下部が黒色であり、中央に金色の徽章と金色の顎紐が付いている。
 コート様のユニフォームは、黒色で、左前に合わせるようになっており、合わせ部分が大きく、左の胸部分に金色の碇様の図形が描かれている。両肩には金色の肩章が付いており、襟は大きく、折り返されて肩に被さっており、折り返された裏地部分は、白く縁取られた赤色である。男の襟元からは、白いスカーフ様のものが見えている。
b 被告映像対比表12部分
 被告映像対比表12部分は、青色の背景の屋内で、青色のコート様のユニフォームを着て、軍帽を目深に被り、手を下に垂らした状態で直立して、口を終始閉じている体格のよい熟年男性が、男性の右前方から描かれている約19秒間の動画映像である。
 上記映像部分では、最初、男性の胴体部分しか描かれていないが、すぐに視点が男性の顔の方へ移動して、男性の胸部より上の部分が描かれるようになり、以後、その状態が続く。
 男性の顔は、灰色の口髭と顎髭が生えているが、下唇は髭に覆われておらず、耳は、コート様のユニフォームの襟部分に隠れて見えない。男性の顎髭は、下方に若干伸びている。また、髭で覆われている部分が、本件映画対比表12部分で描かれている男性よりも少ないことから、鼻や口部分の印象が強くなっている。
 帽子は、上部が白色、下部が黒色であり、中央に金色の徽章と金色の顎紐が付いている。帽子の上部の白色の部分は、丸くふくらんだような形をしている。
 コート様のユニフォームは、身体の中央からやや右側にずれた位置でボタンで留めるようになっており、左の胸部に金色の碇様の図形が描かれている。両肩には金色の肩章が付いており、襟は大きく、立ち上がった部分が男性の顔の半分程度を覆うほどの高さがあり、折り返された裏地部分は、白く縁取られた赤色である。男性の襟元から、白いスカーフ様のものが見える。
(イ) 対比
 本件映画対比表12部分と被告映像対比表12部分とは、前記(ア)のとおり、屋内で、コート様のユニフォームを着て、軍帽を目深に被り、体格のよい熟年男性が描かれている点、画面の後半の場面では、頭、顔及び肩ないし胸の付近が映っている点、男性の顔には口髭と顎髭が生えている点、帽子は、上部が白色、下部が黒色であり、中央に金色の徽章と金色の顎紐が付いている点、両肩に肩章が付いている点、コート様のユニフォームの襟は大きく、折り返された裏地部分が白く縁取られた赤色である点、襟元から白いスカーフ様のものが見える点で共通する。
 しかしながら、上記両映像中に描かれている男性には、前記(ア)のとおりの相違点があるが、アニメーション映画の登場人物は、顔や服装といった細部の違いから、相当に異なった印象を受けることが多いものと解されるところ、上記のような顔(とりわけ髭の分量から受ける印象)や服装に大きな違いがあれば、別人として認識されると解される。また、その他の表現形式や、上記の共通する表現形式における具体的な表現形式において、前記(ア)の認定で明らかなように、両映像は大きく異なる。
 以上の点を総合考慮すると、両映像が同一であるということはできないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表12部分は、本件映画対比表12部分の複製物ということはできない。
ツ 被告映像対比表13部分は、本件映画対比表13部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表13部分
 本件映画対比表13部分は、約10秒間の動画映像であり、室内で、眼鏡をかけ、頭髪のほとんどない男性が、椅子に腰掛けて、画面には映っていない者に対して話しかけながら、湯飲み茶碗で日本酒を飲んでいる様子が、男性の右斜め前方から描かれている。
 男性の人相は、@頭頂部が比較的尖った下ぶくれの輪郭で、髪の毛は、耳の上の辺りだけにわずかに生えており、A口が大きく誇張され、B目は黒い点であり、C小さな丸いフレームの眼鏡をかけており、D眼鏡は、ずれ落ちて、目が眼鏡の上に露出しており、E鼻は、山型をし、F眉毛は、細く、長い八の字の形をしている。
 男性の右横には、小さな金属製の机があり、男性は、椅子に腰掛けて、右の肘を机の上に載せている。机の上には、日本酒の一升瓶が置いてある。
 男性は、左手で日本酒を飲もうとし、一口飲む前に、舌なめずりをするように長い舌をほおの辺りまで出し、飲み終わると、右手で口を拭うような仕草をする。
 男性は、半袖の白色の服を着ており、左胸部に赤色の十字の図形が描かれており、襟元は赤く着色されている。
 男性の背後には、本棚があり、百科事典のような体裁の本が並んでいる。
b 被告映像対比表13部分
 被告映像対比表13部分は、眼鏡をかけて頭髪のほとんどない男性が、右手を肩の位置まで挙げて立っている様子が、ほぼ正面から描かれた約9秒間の動画映像である。
 男性は、最初の1秒間に、体を全く動かさない状態のままで、画面左側から右側に移動する。
 男性の人相は、@頭頂部は尖っておらず、下ぶくれの輪郭で、髪の毛は、耳の上の辺りだけにわずかに生えており、A口は大きいが、誇張されておらず、B目は黒い点であるが、眼鏡の奥に描かれており、C普通の大きさの、角が丸味を帯びた四角いフレームの眼鏡をかけており、D眼鏡はずれ落ちておらず、E鼻は、団子鼻であり、F眉毛は、短く、太い八の字の形をしている。
 男性は、挨拶をするように、右手を肩の位置まで挙げて、手のひらを画面を見る者の方に向けている。
 男性は、袖をまくった緑色のジャンパーを、前を開けて羽織り、内側に着ている白いTシャツが見えている。
(イ) 対比
 本件映画対比表13部分と被告映像対比表13部分とは、前記(ア)のとおり、頭髪がほとんどなく、眼鏡をかけた男性が描かれている点、その男性の口が大きい点で共通するが、上記(ア)の認定から明らかなように、その他の表現形式や、上記の共通する表現形式のうちでも具体的な表現形式は、大きく異なる。特に、眼鏡の形や大きさ、鼻の形、口部分の形状において、両映像の男性の人相が大きく異なり、両人物は、アニメーション映画の登場人物としては完全に別人と認識されるものといえる。
 したがって、両映像が同一であるということはできないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表13部分は、本件映画対比表13部分の複製物ということはできない。
テ 被告映像対比表14部分は、本件映画対比表14部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表14部分
 本件映画対比表14部分は、約2秒間の動画映像であり、室内において、赤色をした人型のロボットが、頭部、胴部、下半身の3つのパーツに分離する様子が、正面から描かれている。
 ロボットは、青色の壁と茶色の床を背景として、画面上にすべての部分が入るように描かれており、途中で、頭部が分離して、浮遊し始め、続いて、胴部が右側に回転した後、左側に回転して元の位置に戻り、その後、胴部が下半身と分離して、浮遊し始める。
 ロボットの頭部は、半球状をしており、頭頂部に3つの大きな鶏冠状の突起物があり、両側面はガラスで覆われ、そのガラスの中に円形の目が付いている。頭部の正面中央部には、円形の計器が3つ付いており、その両側にも小さな円形の計器がそれぞれ1つずつ付いているが、これらの計器は、ときどき、白色や黄色に発光する。鼻に相当するものはない。頭部の最下部には、多数の小さな長方形の黄色いパネル様のものが一列の帯状に付いており、同パネル様の部分は、ときどき発光する。また、頭部の両側面の下部から、1本ずつ短いアンテナが出ている。
 胴部には腕が付いており、手には5本の指がある。胴部の中央部には、円形の計器が1つ、その下に黄色の部品が2つ、更にその下に小さな白色の部品が5つ、それぞれ付いている。
 下半身には、人と同様の太い足が付いている。
b 被告映像対比表14部分
 被告映像対比表14部分は、ロボットが、両腕を振りながら、頭部、胴部、下半身の3つのパーツを分離したり、一体となったりを繰り返して踊っている様子が、正面から描かれた約12秒間の動画映像である。
 ロボットは、頭部、胴部、下半身部分とに分離され、いずれのパーツも、その大部分がオレンジ色をしている。
 ロボットの頭部は、半球状をしており、頭頂部に小さな突起物があり、両側面に円形の青色の目が付いており、鼻の位置が黄色に色分けされている。頭部には、計器様のものは一切付いていない。頭部の最下部には、多数の小さな長方形の黄色いパネル様のものが一列の帯状に付いている。
 胴部には、腕が付いており、手には、指様のものが付いているが、具体的な形状は不明確である。胴部の中央部分には、緑色の円形のものがあり、その左右に小さな白色の突起物が付いている。胴部には、計器様のものは一切付いていない。胴部の最下部には、多数の小さな長方形の黄色いパネル様のものが一列の帯状に付いている。
 下半身は、人間の足の代わりに半球状のものが付いている。下半身の最上部には、多数の小さな長方形の黄色いパネル様のものが一列の帯状に付いている。
(イ) 対比
 本件映画対比表14部分と被告映像対比表14部分とは、前記(ア)のとおり、頭部、胴部、下半身の3つのパーツから成るロボットが、3つのパーツに分離する場面が正面から描かれた点、ロボットの頭部が半球状をしており、両側面に円形の目が付いており、その最下部には、多数の小さな長方形のパネル様のものが一列の帯状に付いている点、胴部には腕が付いている点において共通する。
 しかしながら、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。特に、両映像のロボットの形状が大きく異なり、両ロボットは、アニメーション映画に登場するロボットとしては完全に別のロボットと認識されるものといえる。
 以上の点を総合考慮すると、両映像が同一であるということはできないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表14部分は、本件映画対比表14部分の複製物ということはできない。
ト 被告映像対比表15待機映像部分は、本件映画対比表15部分の複製物といえるか。
 前記アと同様の理由により、被告映像対比表15待機映像部分は、本件映画対比表15部分の複製物ということはできない。
ナ 被告映像対比表15大ヤマト砲発射部分は、本件映画対比表15部分の複製物といえるか。
 前記アと同様の理由により、被告映像対比表15大ヤマト砲発射部分は、本件映画対比表15部分の複製物ということはできない。
ニ 被告映像対比表16待機映像部分は、本件映画対比表16部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表16部分
 本件映画対比表16部分は、本件映画対比表2部分と同一であり、前記ウ(ア)aで判示したとおりである。
b 被告映像対比表16待機映像部分
 被告映像対比表16待機映像部分は、約0.1秒の動画映像であり、暗青色の宇宙空間を背景にして、画面の中央部にある戦艦様の飛行物体の艦首部の光線の発射口が黄白色に発光しており、その発光部分に向かって、画面全体から無数の白色の光の粒子が吸い込まれていく様子が、発射口が拡大されて、正面から描かれている。
 上記映像部分では、正面からの視点が移動せず、発射口の大きさは終始一定である。
 発射口は、画面全体の約3分の1程度を占めており、発射口の周辺以外の艦首部は、ほとんど画面に映っていない。発射口は、画面を見る者に照準を合わせている。
 飛行物体の左右底部の両側面には、半円盤状の翼様のものが設置されており、翼様のものの前面には、緑色に発光している小さな部材が複数付いているため、翼様のものの存在は明確に認識できる。
 発射口内部は、奥の部分が白色に強く発光し、その周辺部分が黄白色に弱く発光しており、内部の様子は明確には認識できない。発射口は、常に明るい状態のままである。
 また、発射口に向かって画面全体から吸い込まれる白色の光の粒子は、発射口内部に渦を巻くようにして吸い寄せられている。
(イ) 対比
 本件映画対比表16部分と被告映像対比表16待機映像部分とは、前記(ア)のとおり、画面の中心部に、宇宙空間を背景にして、戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光している様子が、発射口が拡大されて、描かれている点、発光部分の中心部に向かって光の粒子が移動していく様子が描かれている点で共通している。
 しかしながら、前記のとおり、宇宙空間を飛行する飛行物体の艦首に発射口を設けること、その発射口が発光することを描くことは、特に目新しい表現形式ということはできない。そして、戦艦が宇宙空間を飛行すること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。さらに、宇宙空間を暗青色に描くこと、発射口を拡大して描くことも、ありふれた表現形式である。
 したがって、上記両映像の上記共通点のうち、宇宙空間を背景にして、戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光している様子が、発射口を拡大して描かれている部分は、両映像にとって特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。そして、宇宙空間を背景にして、戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光しているという部分の具体的な表現形式については、前記(ア)のとおり、大きく異なる。
 また、発光部分の中心部に向かって光の粒子が移動していくという部分は、ありふれた表現ということはできないが、その具体的な表現形式は、前記(ア)のとおり、大きく異なっている。
 さらに、その他の表現形式も、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なっている。
 以上の事実を総合考慮すると、被告映像対比表16待機映像部分と本件映画対比表16部分との間に同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表16待機映像部分は、本件映画対比表16部分の複製物ということはできない。
ヌ 被告映像対比表16大ヤマト砲発射部分は、本件映画対比表16部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表16部分
 本件映画対比表16部分は、本件映画対比表2部分と同一であり、前記ウ(ア)aで判示したとおりである。
b 被告映像対比表16大ヤマト砲発射部分
 被告映像対比表16大ヤマト砲発射部分は、暗青色の宇宙空間を背景に、戦艦様の飛行物体の艦首部の黄白色に発光した発射口に向かって、画面全体から無数の黄白色の光の粒子が吸い込まれていく様子が、発射口を中心にして、艦首部のやや左側の位置から描かれた約6秒間の動画映像である。
 視点は、一定の位置にあり、移動しないが、発射口は、徐々に拡大され、最終的には、画面全体の約3分の1程度を占める。発射口は、画面を見る者に照準を合わせていない。
 画面の右側上の奥に、黄白色に点灯された艦橋が見えるが、翼様のものは映っていない。
 黄白色の光の粒子は、画面全体から大量に発射口に吸い寄せられていき、画面全体に、黄白色の粒子が充満している。
(イ) 対比
 本件映画対比表16部分と被告映像対比表16大ヤマト砲発射部分とは、前記(ア)のとおり、画面の中心部に、宇宙空間を背景にして、戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光している様子が、発射口を中心に描かれている点、発光部分の中心部に向かって光の粒子が移動していく様子が描かれている点で共通している。
 しかしながら、前記のとおり、宇宙空間を飛行する飛行物体の艦首に発射口を設けること、その発射口が発光することを描くことは、特に目新しい表現形式ということはできない。そして、戦艦が宇宙空間を飛行すること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。さらに、宇宙空間を暗青色に描くこと、発射口を中心にして描くことも、ありふれた表現形式である。
 したがって、上記両映像の上記共通点のうち、宇宙空間を背景にして、戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光している様子が、発射口を中心にして描かれている部分は、両映像にとって特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。そして、宇宙空間を背景にして、戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光しているという部分の具体的な表現形式については、前記(ア)のとおり、大きく異なる。
 また、発光部分の中心部に向かって光の粒子が移動していくという部分は、ありふれた表現ということはできないが、その具体的な表現形式は、前記(ア)のとおり、大きく異なっている。
 さらに、その他の表現形式も、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なっている。
 以上の事実を総合考慮すると、被告映像対比表16大ヤマト砲発射部分と本件映画対比表16部分との間に同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表16大ヤマト砲発射部分は、本件映画対比表16部分の複製物ということはできない。
ネ 被告映像対比表17待機映像部分は、本件映画対比表17部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表17部分
 本件映画対比表17部分は、本件映画対比表3部分と同一であり、前記オ(ア)aで判示したとおりである。
b 被告映像対比表17待機映像部分
 被告映像対比表17待機映像部分は、約1秒間の動画映像であり、画面右奥側の部材が、回転しながら、画面左手前側の部材に向かっていき、衝突する様子が描かれている。
 画面右奥側には、先端に合計5個の円筒状突起物が設置された円筒状部材が、画面左手前側には、釣り鐘状の突起物が複数設置された円筒状部材が、それぞれ対向して配置されている。
 右奥側に配置した円筒状部材の中心部から細長い円柱状の部材が突出してきて、同部材は、左手前側の円筒状部材の中心部まで伸び、これと連結する。そして、右奥側に配置された円筒状部材が高速で回転しながら、左手前側の円筒状部材の方に移動しようとすると、画面が切り替わり、操縦席と推測される場所に設置された操縦用レバーのサイドボタンを右手の親指で押す様子が拡大されて描かれ、その後、画面が元に戻り、右奥側の円筒状部材に設置された5個の円筒状突起物が、高速で回転しながら、左手前側の円筒状部材の方向に移動し、同部材に設置された複数の釣り鐘状の突起物に激しく衝突し、その際に、強く発光する。
 画面は、当初、点灯された室内程度の明るさであったが、上記円筒状突起物が上記釣り鐘状の突起物に衝突すると、その衝突部分である画面中央部が白色に発光する。
(イ) 対比
 本件映画対比表17部分と被告映像対比表17待機映像部分とは、前記(ア)のとおり、画面の右側と左側に、部材が対向して配置され、両部材が近づく様子が描かれている点で共通するが、この共通点は、極めて抽象的なものであるから、両映像の同一性の有無の判断においては、大きな意味を有しない。
 そして、上記両映像間の複製権侵害の有無の判断においては、両映像の具体的な表現形式の比較が重要であるところ、その部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく相違する。
 以上の事実を総合考慮すると、被告映像対比表17待機映像部分と本件映画対比表17部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表17待機映像部分は、本件映画対比表17部分の複製物ということはできない。
ノ 被告映像対比表17大ヤマト砲発射部分は、本件映画対比表17部分の複製物といえるか。
 被告映像対比表17大ヤマト砲発射部分は、被告映像対比表17待機映像部分とほぼ同一の映像であるから、前記ネと同じ理由により、被告映像対比表17大ヤマト砲発射部分は、本件映画対比表17部分の複製物とはいえない。
ハ 被告映像対比表18待機映像部分は、本件映画対比表18部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表18部分
 本件映画対比表18部分は、本件映画対比表4部分と同一であり、前記キ(ア)aで判示したとおりである。
b 被告映像対比表18待機映像部分
 被告映像対比表18待機映像部分は、約0.1秒間の動画映像であり、暗青色の宇宙空間を背景に、戦艦様の飛行物体の艦首部の発射口から光線が発射される様子が、発射口の正面の位置から描かれている。
 画面中央部に、画面全体の3分の1弱の大きさで、発射口が描かれており、発射口の周辺以外の艦首部は、ほとんど画面に映っていない。発射口は、画面を見る者に照準を合わせている。
 発射口は、最初、白色に発光し、その発光の影響で、画面全体が白色の光で満たされているが、次第に、発光部分が収縮して発射口内部に収まっていき、全体の状況が明確になり、戦艦様の飛行物体の形状が認識できるようになる。そして、発光部分が更に収縮して、発射口の奥の中心部に収まり、発射口内が、奥の中心部の黄白色の発光に照らされているような状態となり、その後、発射口の奥から、外部に向かって黄白色の光の粒子が放出され、引き続き、発射口から大量の黄白色の光線が発射される。発射口から発射された光線は、当初は円形であるが、その後、5方向に帯状に伸びていくようになる。
 飛行物体の左右底部の両側面には、半円盤状の翼様のものが設置されており、翼様のものの前面には、緑色に発光している小さな部材が複数付いているため、翼様のものの存在は明確に認識できる。
(イ) 対比
 本件映画対比表18部分と被告映像対比表18待機映像部分とは、前記(ア)のとおり、暗青色の宇宙空間を背景に、戦艦の艦首の発射口から光線が発射される様子が描かれている点で共通している。
 しかしながら、前記のとおり、先端部に存在する発射口から光線を発する飛行物体が、その発射口から光線を発射するという映像は、特に目新しい表現ということはできない。そして、宇宙空間を戦艦が飛行すること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。
 しかも、上記の共通点は極めて抽象的なものにとどまる。
 したがって、上記両映像の上記共通点は、両映像にとって特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の事実を総合考慮すると、本件映画対比表18部分と被告映像対比表18待機映像部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表18待機映像部分は、本件映画対比表18部分の複製物ということはできない。
ヒ 被告映像対比表18大ヤマト砲発射部分は、本件映画対比表18部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表18部分
 本件映画対比表18部分は、本件映画対比表4部分と同一であり、前記キ(ア)aで判示したとおりである。
b 被告映像対比表18大ヤマト砲発射部分
 被告映像対比表18大ヤマト砲発射部分は、暗青色の宇宙空間を背景に、画面中央に位置する、戦艦様の飛行物体の艦首部の発射口から光線が発射される様子が、飛行物体の左斜め前方の位置から描かれた約1秒弱の動画映像である。
 視点は、固定されており、また、対象に接近したり、離れたりもしない。発射口は、画面を見る者に照準を合わせていない。
 画面の最初では、艦首部の周辺が黄白色に発光しているが、その後、発光部分が5つの方向に分かれ、それぞれが帯状になって拡大していき、画面の枠部分まで届くと、回転して、画面のすべてが黄白色に発光する。
 飛行物体は、全体が描かれており、艦橋が画面右奥に見えるが、明るく照らされて、目立つように描かれている。また、飛行物体の左側面に半円盤状の翼様のものが設置されており、翼様のものの前面には、緑色に発光している小さな部材が複数付いている。
(イ) 対比
 本件映画対比表18部分と被告映像対比表18大ヤマト砲発射部分とは、前記(ア)のとおり、暗青色の宇宙空間を背景に、戦艦の艦首の発射口から光線が発射される様子が描かれている点で共通している。
 しかしながら、前記のとおり、先端部に存在する発射口から光線を発する飛行物体が、その発射口から光線を発射するという映像は、特に目新しい表現ということはできない。そして、宇宙空間を戦艦が飛行すること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を、艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。しかも、上記の共通点は極めて抽象的なものにとどまる。
 したがって、上記両映像の上記共通点は、両映像にとって特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の事実を総合考慮すると、本件映画対比表18部分と被告映像対比表18大ヤマト砲発射部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表18大ヤマト砲発射部分は、本件映画対比表18部分の複製物ということはできない。
フ 被告映像対比表19待機映像部分は、本件映画対比表19部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表19部分
 本件映画対比表19部分は、約2秒間の動画映像であり、宇宙空間を背景に、宇宙戦艦ヤマトの艦首部の波動砲発射口から発射された波動砲の様子が描かれている。
 上記映像部分は、宇宙戦艦ヤマト全体が、その左斜め前方の、離れた位置から、艦首の発射口が画面の中心部付近に位置するように描かれている。
 発射口からは、黄白色の光が発せられており、この光は、最初は、画面の3分の1程度を占め、宇宙戦艦ヤマトの3分の1程度を覆い隠しているが、徐々に拡大していき、画面の6割程度を占めるまで拡大すると、収縮し、発射口を覆い隠す程度の大きさの時点で、その中央部から青白い光線が、勢いよく先端部を拡大しながら発射される。光線の先端が画面の左端に達すると、その先端部は、画面の左端と発射口との中間地点付近まで戻り、その後、再び画面の左端まで拡大してから、上記中間地点付近まで戻った後、また、画面の左端まで拡大し、画面左端に達すると、宇宙戦艦ヤマトが画面の右方向へ移動する(すなわち、視点が光線の先端方向へ移動する。)。それとともに、上記光線の画面に占める割合が高くなり、上記光線は、最終的に画面の7割程度を占めるようになり、光線が大量に発せられている様子が描かれる。
b 被告映像対比表19待機映像部分
 被告映像対比表19待機映像部分は、戦艦様の飛行物体の艦首部の発射口から発射された大量の光線の様子が、発射口の正面から描かれた4秒弱の動画映像である。
 前半部分では、白色に発光した光線が、5方向に分かれ、それぞれが帯状に回転しながら伸びていく様子が、視点を発射口から徐々に離しながら描かれている。その後、それぞれの帯状の光線が、回転方向に折れ曲がり、更に回転しながら1つの円形の発光体となり、画面全体が白色に発光した状態が続いた後、最終的に、水色を帯びた白色に変化する。
 画面上は、終始、発光した大量の光線のみが映っているため、どのような場面を描いているのか、上記映像部分だけでは分からないが、前後の映像から、戦艦様の飛行物体の艦首部の発射口から大量に光線が発射された状況と推測できる。
(イ) 対比
 本件映画対比表19部分と被告映像対比表19待機映像部分とでは、前記(ア)のとおり、戦艦の艦首部の発射口から大量に発射された発光した光線の状況が描かれている点で共通している。
 しかしながら、前記のとおり、宇宙空間を背景に、先端部に存在する発射口から光線を発する飛行物体を描いた映像は、特に目新しい表現ということはできない。さらに、その光線が大量に発射されているように描くことも、ありふれた表現形式である。そして、戦艦に宇宙空間を飛行させること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を、艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。
 したがって、上記両映像の上記共通点のうち、宇宙空間を背景に、先端部に存在する発射口から大量の光線を発する戦艦が描かれている点は、両映像にとって特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の点を総合考慮すると、両映像が同一であるということはできないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表19待機映像部分は、本件映画対比表19部分の複製物ということはできない。
ヘ 被告映像対比表19大ヤマト砲発射部分は、本件映画対比表19部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表19部分
 本件映画対比表19部分は、前記フ(ア)aで判示したとおりである。
b 被告映像対比表19大ヤマト砲発射部分
 被告映像対比表19大ヤマト砲発射部分は、5秒弱の動画映像であり、宇宙空間を背景に、戦艦様の飛行物体の艦首部に設置された発射口から大量に勢いよく発射された黄白色に発光した光線の様子が描かれている。
 上記映像部分の最初の場面では、黄白色に発光した光線の発射元となる部分が、画面中央右よりの部分に、画面の5分の1程度の大きさの円形状に描かれており(戦艦様の飛行物体は、発光部分に隠れて見えない。)、そこから、画面左側の端まで、画面の3分の2程度の太さの帯状の光線が伸びており、その後、光線の発射元の部分は、画面の右奥の方向へ徐々に移動していき(すなわち、視点が光線の先端部に移っていき)、それに伴い、上記の黄白色の光線が、火炎放射器から発せられる火炎のように波を打ち、勢いよく大量に発せられている状況が描かれ、最終的には、画面のほぼすべての部分が黄白色の光で覆われる。
 画面上には、戦艦様の飛行物体は映らないが、前後の映像から、戦艦様の飛行物体の艦首部の発射口から大量に光線が発射された状況と推測できる。
(イ) 対比
 本件映画対比表19部分と被告映像対比表19待機映像部分とでは、前記(ア)のとおり、宇宙空間を背景に、戦艦の艦首部の発射口から大量に勢いよく発射された光線の状況が描かれている点、描写対象が光線の発せられている元の部分から光線の先端部へと移っていく点で共通している。
 しかしながら、前記のとおり、宇宙空間を背景に、先端部に存在する発射口から光線を発する飛行物体を描いた映像は、特に目新しい表現ということはできない。また、その光線が大量に勢いよく発射されているように描くことも、ありふれた表現形式である。しかも、戦艦に宇宙空間を飛行させること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を、艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。
 したがって、上記両映像の上記共通点のうち、宇宙空間を背景に、先端部に存在する発射口から大量の光線を発する戦艦が描かれている点は、両映像にとって特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
そして、両映像の表現形式には、前記(ア)の認定から明らかなように、大きな相違があるから、描写対象が光線の発射元の部分から光線の先端部へと移っていくという点で表現形式が共通していることを考慮しても、両映像が同一であるということはできないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表19待機映像部分は、本件映画対比表19部分の複製物ということはできない。
ホ 被告映像対比表20部分は、本件映画対比表20部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表20部分
 本件映画対比表20部分は、約1秒間の動画映像であり、宇宙空間を背景に、宇宙戦艦ヤマトの主砲が立ち上がる様子が描かれている。
 上記映像部分では、宇宙戦艦ヤマトの2基の主砲とその背後の艦橋部分が、主砲を拡大して発射口を中心に、正面のかなり接近した位置から描かれているため、砲台部分は画面に入っておらず、映像の前半は、砲身の下部の一部は画面に現れていない。また、画面全体に明暗はなく、青色系の薄暗い色で描かれている。
 主砲は、画面の手前側と奥側にそれぞれ1基配置され(奥側の主砲は手前側の主砲より若干高い位置にある。)、1基の砲台に3門の砲身が取り付けられており、手前側の3門の砲身は、若干、画面の左上方向を向き、奥側の3門の砲身は、若干、画面の右上方を向いており、その背後の画面中央部分に艦橋が配置された構図となっている。手前側と奥側の主砲の大きさは、ほぼ同じである。
 そして、艦橋を中心にして、左右対称に近い形で、まず、右奥側の3門の砲身が右上方に向かって立ち上がり、同砲身がある程度立ち上がると、今度は、左手前側の3門の砲身が左上方に立ち上がる。
b 被告映像対比表20部分
 被告映像対比表20部分は、宇宙空間を背景に、戦艦様の飛行物体の主砲が立ち上がる様子が描かれた、1秒弱の動画映像である。
 上記映像部分では、左斜め前方の位置から、戦艦様の飛行物体の3門の砲身を有する1基の主砲が、画面中央に大きく描かれており、そのすぐ後ろに、1基の主砲が、手前の主砲に比べてかなり小さく描かれ、更に後方の右に寄った位置に艦橋が描かれている。手前の主砲は、すべての部分が画面に入っているが、後ろの主砲は、手前の主砲の陰に隠れており、最初の場面では、2門の砲身しか見えない。艦橋は、光に照らされたように、明るく描かれているが、その他の部分は、濃紺色で描かれている。
 そして、手前の主砲の3門の砲身は、上方に立ち上がり、それとともに、後方の主砲の砲身が上方にわずかに移動する。
(イ) 対比
 本件映画対比表20部分と被告映像対比表20部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空間を背景に、戦艦の主砲が上方に立ち上がる様子が、主砲が拡大されて描かれた点、その主砲は、1基の砲台に3門の砲身が設置されている点、主砲の後ろに艦橋が描かれている点で共通する。
 しかしながら、前記のとおり、宇宙空間に戦艦を飛行させること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を、艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、特徴あるものとはいえない。そして、戦艦に、3門の砲身を有する主砲を描くこと、及びその主砲が立ち上がることは、極めてありふれた表現形式である。また、主砲を正面から大きく描くこと、その主砲の後ろに艦橋を描くこともありふれた表現形式である。
 したがって、上記共通点は、上記両映像にとって、特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の点を総合考慮すると、両映像が同一であるということはできないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表20部分は、本件映画対比表20部分の複製物ということはできない。
マ 被告映像対比表21部分は、本件映画対比表21部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表21部分
 本件映画対比表21部分は、約2秒の動画映像であり、宇宙空間を背景に、宇宙戦艦ヤマトの主砲が発射される様子が描かれている。
 上記映像部分では、正面下方の接近した位置から、艦首部の先端上部部分、2基の主砲及び艦橋が描かれている。艦橋は、画面中央部に薄暗く描かれ、その左側手前と右奥側に、それぞれ1基の砲台とその砲台上の3門の砲身から成る主砲が設置されている。左手前側の3門の砲身は、画面左上方を向き、右奥側の3門の砲身は、画面右上方を向いており、艦橋を中心に概ね左右対称の形となっている。左側の砲身に比べ、右側の砲身は小さく、両方の砲身とも、その根元部分が艦首部分に隠れている。
 そして、まず、右奥側の3門の砲身から、1つの巨大な白色に発光した光線(発射時の爆焔を表すように、光線の根元の部分が大きな円形になっており、この円形部分により砲身の上方の3分の1部分が隠れている。)が発射され、その後、その巨大な円形の発光部分が割れて、3門の砲身の先端部が現れ、各砲身からは、それぞれ砲身の直径と同じ径の光線が発射され、その光線の発射が止むと、左手前側の砲身から、同じ態様で光線が発射される。
b 被告映像対比表21部分
 被告映像対比表21部分は、宇宙空間を背景にして、戦艦様の飛行物体の主砲が発射される様子が描かれた1秒弱の動画映像である。
 上記映像部分では、戦艦様の飛行物体が、その主砲を中心にして、左斜め前方の位置から描かれている。主砲は、手前に1基の砲台及び上方を向いた3門の砲身が大きく、その後方に1基の砲台が小さく、それぞれ描かれており、さらに、その右後方に、艦橋が、光に照らされたように、明るく描かれている。
 そして、まず、画面中央部が明るくなり、その直後に手前の主砲の3門の砲身から青白色に発光した光線が発射され、続いて、艦橋の右側から3条の白色の光線が発射され、その際、画面が明るくなる。
(イ) 対比
 本件映画対比表21部分と被告映像対比表21部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空間を背景にして、戦艦の主砲から白色の光線が発射される様子が描かれた点、主砲は、1基の砲台に3門の砲身が設置されている点で共通する。
 しかしながら、宇宙空間に戦艦を飛行させること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を、艦船又は飛行物体が、進んで行くという表現は、特徴あるものとはいえない。そして、戦艦に、3門の砲身を有する主砲を描くこと、及びその主砲から光線が発射される様子を描くことは、極めてありふれた表現形式である。
 したがって、上記両映像の上記共通点は、いずれも、両映像にとって特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の点を総合考慮すると、両映像が同一であるということはできないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表21部分は、本件映画対比表21部分の複製物ということはできない。
ミ 被告映像対比表22部分は、本件映画対比表22部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表22部分
 本件映画対比表22部分は、約2秒間の動画映像であり、宇宙空間を背景にして、宇宙戦艦ヤマトに設置された多数の小砲から光線が発射される様子が描かれている。
 上記映像部分では、多数の小砲から、間欠的な破線状の光線が一斉に発射されている様子が、小砲の正面からの視点で描かれている。
 小砲の設置された砲塔は、いずれもドーム型をしており、画面上は9基の砲塔が描かれている。各砲塔は、上下3段に、上段に2基、中段に3基、下段に4基の砲塔が配置され、上段と下段の各砲塔には2門の砲身が、中段の各砲塔には4門の砲身が設置されている。いずれの砲身も、画面の左斜め上方を向いている状態から真上を向いている状態へ徐々に旋回し、同じ速度で、同じ動きをする。砲身から発射される光線はオレンジ色をしており、発射時に発射口の爆焔は発生せず、砲塔の一部分が、爆焔のために発光することもない。
b 被告映像対比表22部分
 被告映像対比表22部分は、宇宙空間を背景にして、複数の小砲から光線が発射される様子が描かれた約1秒間の動画映像である。
 上記映像部分では、主に2基の小砲から、間欠的な破線状の光線が、発射されている様子が、小砲の手前上方の非常に接近した位置から描かれているため、画面上、小砲の設置された砲塔の一部しか見えないが、ドーム型をしていることが推測され、各砲塔には各2門の砲身が設置されている。
 中心的に描かれた手前の砲塔は、左右へと高速で旋回し、各砲身は、それぞれ別の動きをしている。砲身から発射される光線は白色であり、発射時には、発射口から白色に発光する爆焔が生じ、また、光線の速度は、本件映画対比表22部分における光線の速度に比べて、高速である。さらに、奥側の小砲の砲塔の一部分は、光線の発射時の爆焔のため、白色に発光している。
(イ) 対比
 本件映画対比表22部分と被告映像対比表22部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空間を背景に、間欠的な破線状の光線を発射している小砲が描かれている点、同小砲の砲塔はドーム型をしている点、1基の砲塔に2門の砲身が設置されているものがある点で共通する。
 しかしながら、乙第37号証の2によれば、宇宙空間において、間欠的な破線状の光線を発射している小砲を描いている画像が、本件映画の制作の前に既に存在していたことが認められ、また、証拠(乙54ないし56)によれば、戦艦の小砲の砲塔がドーム型であること、1基の砲塔に砲身が2門設置されていることも一般的であると認められる。
 したがって、上記両映像の上記共通点は、いずれも、両映像にとって特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の点を総合考慮すると、両映像が同一であるということはできないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表22部分は、本件映画対比表22部分の複製物ということはできない。
ム 被告映像対比表23部分は、本件映画対比表23部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表23部分
 本件映画対比表23部分は、青白い宇宙空間を宇宙戦艦ヤマトが飛行していく様子が、同戦艦の右斜め前方から描かれた約6秒間の動画映像である。
 宇宙戦艦ヤマトは、最初、画面の中央やや左よりの地点から右端から4分の1程度のところまでの範囲で描かれているが、徐々に拡大する。背景は、青白い宇宙空間であり、惑星や白色の粒子が宇宙戦艦ヤマトの背後を移動していくことはない。
 宇宙戦艦ヤマトは、艦首部に発射口があり、艦橋が甲板の後部に設置されており、喫水線付近のところで上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色となっている。艦首部の先端の上端部には、円形の切れ込みがある。
 また、艦首部及び喫水下のバルジが、強調されて大きく描かれている。
b 被告映像対比表23部分
 被告映像対比表23部分は、青白い宇宙空間を戦艦様の飛行物体が、飛行していく様子が、飛行物体の右斜め前方の位置から描かれた約16秒間の動画映像である。
 上記飛行物体は、終始、画面の左端から右端の近くまでを占める大きさで描かれているが、左右に揺れ、背景にある白色の光の粒子や青色の惑星が画面左奥の方向へ移動していくことから、飛行物体が、画面右手前の方向に向かって飛行していることが分かる。
 戦艦様の飛行物体は、艦首部に白色の発射口があり、艦橋が甲板の後部に設置されており、喫水線付近のところで上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色となっており、側面に大きな翼様のものが設置されている。艦首部の先端の上端部には、円形の切れ込みがある。また、艦首部及び喫水下のバルジが強調されて大きく描かれている。
 画面の左端中央部分には、円形の星雲様のものが明るく描かれている。
(イ) 対比
 本件映画対比表23部分と被告映像対比表23部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空間を背景にして、戦艦が、同戦艦の右斜め前方の位置から描かれている点、戦艦には、艦首部に発射口があり、艦橋が甲板の後部に設置されており、喫水線付近のところで上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色となっている点が共通する。
 しかしながら、前記のとおり、上記共通点のうち、戦艦の形状及び色彩として、艦橋が甲板の後部に設置され、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色として描くこと、艦首部の先端の上端部に円形の切れ込みを入れることは、ありふれた表現形式というべきである。また、前記のとおり、艦首部に発射口のある戦艦が特に目新しい表現ということはできない。戦艦をその右斜め前方から描くことも、ありふれた表現形式である。さらに、宇宙空間に戦艦を飛行させること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、特徴あるものとはいえない。
 したがって、上記両映像に上記共通点が存在することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の点を総合考慮すると、両映像が同一であるということはできないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表23部分は、本件映画対比表23部分の複製物ということはできない。
メ 被告映像対比表24部分は、本件映画対比表24部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表24部分
 本件映画対比表部分24部分は、宇宙戦艦ヤマトが宇宙空間を飛行し、画面を見る者に接近して通過しようとしている様子が、宇宙戦艦ヤマトの左斜め前方の位置から描かれた約2秒間の動画映像である。
 上記映像部分は、何もない宇宙空間を、宇宙戦艦ヤマトが、画面の右上方の奥から近づいて来て、左側面部が徐々に拡大され、画面のほとんどを占めるようになり、画面を見る者に、宇宙戦艦ヤマトが目の前を通過しようとしている印象を与える。通過の際、艦体の側面部分が画面の中心に大きく描かれるため、同部分が特に注目される。
 宇宙戦艦ヤマトは、艦首部に発射口が設置されている(発射口は発光していない。)ことを除けば、通常の戦艦と同様の形状であり、艦首部の先端上端部に円形の切れ込みがあり、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色、下部は赤色となっており、艦体中央部の後方に艦橋があり、艦橋の前には主砲が設置されている。艦体の側面に、翼様のものは設置されていない。
 背景は、暗青色で、全体的に暗く描かれている。
b 被告映像対比表24部分
 被告映像対比表24部分は、戦艦様の飛行物体が宇宙空間を飛行し、画面を見る者に接近して通過しようとしている様子が、飛行物体の左斜め前方の位置から描かれた約3秒間の動画映像である。
 戦艦様の飛行物体は、画面中央奥から、左手前に向かって、画面を見る者に近づいて来るように飛行して、徐々に大きくなり、最終場面では、画面の下半分を占めるように描かれ、その時点では、同飛行物体が、見下ろすような角度から描かれているため、画面を見る者に、同飛行物体が、目の前の下方の直近を通過しようとしている印象を与える。同飛行物体の通過の際、主砲及び艦橋部分が画面の中心に大きく描かれるため、同部分が注目される。
 上記飛行物体の後方には、画面中央部分に、大きな惑星の右下4分の1程度が描かれ、また、同惑星の右側に、その陰に左半分が隠れている状態で、小さな惑星が描かれ、両惑星の右端の一部にのみ光が当たっている。大きな惑星の光が当らない部分は、背景の宇宙空間と同じ暗青色であり、輪郭が不明確である。両惑星は、映像の進行に伴い、右方向へ移動し、小さな惑星は、途中で画面から外れる。
 上記飛行物体には、艦首部に黄色に発光した発射口があり、艦橋が甲板の後部に、主砲が艦橋の前に、それぞれ設置されており、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色となっており、また、側面に大きな翼様のものが設置されている。画面上は、艦首部の先端上端部に円形の切れ込みがあるか否かは分からない。さらに、飛行物体は、画面を見る者に近づいて来ると、光に照らされているように明るく描かれている。
(イ) 対比
 本件映画対比表24部分と被告映像対比表24部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空間をゆっくりと飛行している戦艦が、画面を見る者の近くを通過しようとしている様子が、同戦艦の左斜め前方の位置から描かれている点、戦艦が徐々に大きくなり、画面を見る者に、戦艦が自分の直近を通過しようとしている印象を与えるように描かれている点、戦艦の艦首部に発射口があり、艦橋が甲板の後部に、主砲が艦橋の前に、それぞれ設置されており、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色となっている点で共通する。
 しかしながら、前記のとおり、上記共通点のうち、戦艦の形状及び色彩として、艦橋が甲板の後部に設置されており、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色として描くことは、ありふれた表現形式というべきである。また、前記のとおり、艦首部に発射口のある戦艦が特に目新しい表現ということはできない。さらに、宇宙空間に戦艦を飛行させること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、特徴あるものとはいえない。
 そして、戦艦が宇宙空間を飛行している様子を、その左斜め前方の位置から、戦艦が画面を見る者の近くを通過して行くように描き、その際、戦艦が近づいて来るに従って大きくなり、画面を見る者としては、戦艦が自分の直近を通過していく印象を持つように描くことも、ありふれた表現形式である。
 したがって、上記両映像に上記共通点が存在することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の点を総合考慮すると、両映像が同一であるということはできないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表24部分は、本件映画対比表24部分の複製物ということはできない。
モ 被告映像対比表25部分は、本件映画対比表25部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表25部分
 本件映画対比表25部分は、宇宙戦艦ヤマトが、宇宙空間を飛行し、画面を見る者の近くを通過し、遠ざかって行く様子が描かれた約11秒間の動画映像である。
 上記映像部分は、最初の場面では、画面全体を宇宙戦艦ヤマトの左側面部の一部分が占めるように、宇宙戦艦ヤマトの左側面部が拡大して描かれ、その後、視点が、宇宙戦艦ヤマトの左後方に徐々に移動して、宇宙戦艦ヤマトが画面を見る者の目の前を通過して行くような印象を与える。さらに、視点が、宇宙戦艦ヤマトの左斜め後方、真後ろへと移動して、宇宙戦艦ヤマトが、画面の中央奥へ向かい、右側に多少傾いて遠ざかって行く様子が描かれている。
 宇宙戦艦ヤマトの左後方部分が映った場面で、地球が、画面左側から現れ、上記の視点の移動に伴い、地球も画面の中央部へ移動し、宇宙戦艦ヤマトが真後ろの位置から描かれた場面では、その背景として、画面の約3分の1の大きさの地球が描かれている。
 宇宙戦艦ヤマトは、通常の戦艦と同様の形状であり、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色、下部は赤色となっており、艦体中央部の後方に艦橋が設置され、艦橋は点灯されていない。艦体の側面に、翼様のものは設置されていないが、艦体の左側面後方の部分に、白色の碇型のマークが記されている。艦尾は、円形をして、全体がメインエンジンの噴出口となっており、同噴出口は、オレンジ色に発光している。また、艦尾の底部には、補助エンジンの噴出口が2つ設置されているが、同噴出口は発光していない。艦尾には、相互に120度の角度に開いた3本の尾翼が設置されている。
 背景は、暗青色で、全体的に暗く描かれている。
b 被告映像対比表25部分
 被告映像対比表25部分は、戦艦様の飛行物体が、宇宙空間を飛行し、画面を見る者の近くを通過し、遠ざかって行く様子が描かれた約12秒間の動画映像である。
 上記映像部分では、飛行物体の左側面部が、同飛行物体の左斜め前方の位置から拡大して描かれた場面から始まり、飛行物体が、画面に向かって進むと、視点は、艦橋に向かって移動し、艦橋が拡大されると、視点が、艦橋の側面部、艦橋の後部、後部甲板、艦尾へと移動し、飛行物体が画面を見る者の目の前を通過していくような印象を与える。さらに、視点が、飛行物体の真後ろの位置に移動して、飛行物体が、画面の中央奥へ向かい、艦体を左右に傾けずに遠ざかって行く様子が描かれている。
 飛行物体の後方部分が映った場面で、地球と思われる天体が画面の左側から現れ、上記の視点の移動に伴い、同天体も画面の中央部へ移動し、飛行物体が真後ろの位置から描かれた場面では、その背景として、画面の約3分の1の大きさの上記天体が描かれている。
 飛行物体は、艦首部に発射口が設置されていることを除いて、概ね戦艦の形状をしており、同発射口は白色に発光し、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色、下部は赤色となっている。艦体後部には艦橋があり、艦橋の前には主砲が設置され、側面中部に半円盤状の翼様のものが、その後方に通常の戦闘機の翼様のものが、それぞれ設置されている。飛行物体が近づいて来るときは、艦橋が点灯されているが、艦体の側面に、碇型のマークは付いていない。
 艦尾は、円形をして、全体がメインエンジンの噴出口となっており、同噴出口は、黄白色に発光している。また、飛行物体を真後ろから見ると、両側面に大きな主翼が設置されていることから、戦闘機ないし飛行機のように見える。さらに、艦尾の上部と底部に、補助エンジンの噴出口が、それぞれ2つずつ設置されており、上記主翼にも、各1つずつ補助エンジンの噴出口が設置され、いずれの噴出口も黄白色に発光している。艦尾には、相互に90度の角度に開いた4本の尾翼が設置されている。
 背景は、暗青色であるが、所々、光に照らされて明るくなっている部分がある。
(イ) 対比
 本件映画対比表25部分と被告映像対比表25部分とは、前記(ア)のとおり、戦艦が、宇宙空間を飛行し、画面を見る者の近くを通過し、画面中央奥へ遠ざかって行く様子が描かれている点、戦艦が画面を見る者の前を通過して行くような印象を与えるように視点が移動する点、戦艦の後方部分が映った場面で、地球と思われる天体が画面の左側から現れ、同天体は徐々に画面の中央部へ移動し、戦艦が真後ろの位置から描かれた場面では、戦艦の背景として、画面の約3分の1の大きさの天体が描かれている点、戦艦には艦橋があり、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色となっている点で共通している。
 しかしながら、前記のとおり、上記共通点のうち、戦艦の形状及び色彩として、艦橋が設置されており、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色として描くことは、ありふれた表現形式というべきである。そして、宇宙空間に戦艦を飛行させること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、特徴あるものとはいえない。さらに、その他の共通点も、それ自体は抽象的なものであり、その抽象化された部分では、ありふれた表現形式である。
 したがって、上記両映像に上記共通点が存在することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の点を総合考慮すると、両映像が同一であるということはできないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表25部分は、本件映画対比表25部分の複製物ということはできない。
ヤ 被告映像対比表26部分は、本件映画対比表26部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表26部分
 本件映画対比表26部分は、艦橋内部の様子を描いた約3秒間の動画映像である。
 上記映像部分では、画面全体が薄暗く、艦橋内部の様子が、艦橋内部奥側から外を見る方向で、内部全体を見渡せるように、俯瞰する位置から描かれている。
 前方正面上方に巨大なパネルが描かれ、前方中央部に、4本の太い格子で区分された5つの窓があり、手前の床上には、手前側に操縦席が、正面の窓と両側壁の手前側に複数の机と椅子が、中央部に半球状のものが、それぞれ設置されており、その半球状のものの両側の左右対称となる位置に、1つずつ机と椅子が設置されている。
 上記パネルは、上辺が下辺よりも長い台形で、黒色をしており、碁盤目を有し、中央部に、中心部が赤色で、周辺部がオレンジ色の円形の物体が映し出されており、上記物体の周りは青くなっている。
 前方の5つに区分された窓は、中央部分の窓を中心にして、左右対称にそれぞれ2つの窓が配置されており、黒色である。窓を仕切る格子は、右側の2本が、くの字の形をしており、左側の2本は、逆くの字の形をしている。パネルと窓及び側壁との境界には仕切りがある。
 床及び床に設置された半球形の物体は、暗い茶色をしており、発光していない。両側面の壁部分には、それぞれの壁に、円形の大小の窓が1つずつ設置されている。
b 被告映像対比表26部分
 被告映像対比表26部分は、艦橋内部の様子が描かれた動画映像である。
 上記映像部分では、画面全体が青白く、明るく、艦橋内部の様子が、艦橋内部奥側から外を見る方向で、内部全体を見渡せるように、俯瞰する位置から描かれている。
 前方正面上方に、本件映画対比表26部分のパネルの幅の半分程度の幅の巨大なパネルが設けられ、前方中央部に、窓様のものがあり、手前の床上には、手前側に操縦席が、正面の窓様のものの手前と両側壁に複数の机と椅子が、中央部に円錐状の物体が、それぞれ設置されており、その円錐状の物体の両側の左右対称となる位置に、1つずつ机様のものが設置されている。
 上記パネルは、上辺が下辺よりも長い台形で、青白く発光し、碁盤目を有し、中央部に、龍がとぐろを巻いているような物体が映し出されている。
 前方の窓は、横に細長い長方形をしており、仕切りがなく、中央部分は青白く発光し、右側の一部は白く発光し、左側の3分の1部分は黒色である。窓とパネルとの境界には仕切りがない。
 床は、青白く発光している。両側壁には、その中ほどの高さのところに小さな円形の発光体が横一列に並んで配置してあり、窓はない。
(イ) 対比
 本件映画対比表26部分と被告映像対比表26部分とは、前記(ア)のとおり、艦橋内部の様子が、艦橋内部奥側から外を見る方向で、内部全体を見渡せるように、俯瞰する位置から描かれている点、前方正面上方に巨大なパネルが設けられ、前方中央部に、窓ないし窓様のものがあり、手前の床上には、手前側に操縦席が、正面の窓ないし窓様のものの手前に机と椅子が、中央部に物体が、それぞれ設置されており、その物体の両側の左右対称となる位置に、1つずつ机様のものが設置されている点で共通する。
 しかしながら、証拠(乙93)及び弁論の全趣旨によれば、本件映画対比表26部分と構図、各設置物の配置及び寸法がほとんど同一の、本件映画のために作成された、本件映画対比表26部分の原図柄(乙93の152頁。以下「本件原図柄」という。)が存在することが認められるところ、上記のように、本件映画対比表26部分と本件原図柄とは、構図、各設置物の配置及び寸法がほとんど同一であるから、本件映画対比表26部分から本件原図柄の表現上の本質的な特徴を直接感得することができ、しかも、本件原図柄は本件映画のために作成されたものであるから、本件映画対比表26部分は、本件原図柄の上記部分に依拠して制作されたものと認められ、したがって、本件映画対比表26部分は、本件原図柄の上記部分の二次的著作物であると解するのが相当である。そうすると、本件映画の本件映画対比表26部分の著作権は、原著作物である本件原図柄の上記部分と共通し、その実質を同じくする部分には生じないというべきであるところ、上記共通点のうち、艦橋内部の様子が、艦橋内部奥側から外を見る方向で、内部全体を見渡せるように、俯瞰する視点から描かれている点、前方中央部に窓があり、手前に床があり、その床上には、手前側に操縦席が、床の中央部から左右対称の両側の位置に机と椅子が、それぞれ設置されている点は、本件原図柄に表現されているから、同部分については、本件映画対比表26部分の著作権は生じない。
 また、証拠(乙68の4)によれば、本件映画が制作される以前に制作されたアニメーション映画において、見上げるような高さの位置に巨大なパネルが設置されている様子を描いた場面があることが認められることから、上記共通点のうち、巨大なパネルを設置した点は特に目新しい表現ということはできない。また、床の中央部に何らかの物体を設置することも特徴のある表現ということはできない。
 したがって、上記両映像に上記共通点が存在することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、相当異なる。
 以上の点を総合考慮すると、両映像が同一であるということはできないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表26部分は、本件映画対比表26部分の複製物ということはできない。
ユ 被告映像対比表27部分は、本件映画対比表27部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表27部分は、約3秒間の動画映像であり、宇宙空間において、3基の主砲(1基の砲台に3門の砲身がある。)が画面左側奥の天体に狙いを定めている場面が、同主砲の手前左側の、同主砲に接近した位置から描かれている。
 3基の主砲のうち、最も手前の砲台の3門の砲身が中心的に描かれ、左端の砲身が、最初は上方を向いていたのが、下降して、他の2門の砲身と並んで、まっすぐ前方を向くまでの様子が描かれている。なお、砲身からの発砲はない。
 攻撃対象となっている天体は、画面左側奥に描かれており、全体的に灰色で、半球状の天体の上に略円錐状の山が乗っているような形状であり、その円錐状の山には、多数の高層構造物が築造されており、天体上に都市が造られているような印象を与える。
b 被告映像対比表27部分
 被告映像対比表27部分は、宇宙空間において、3門の砲身が、画面中央奥にある赤色の天体を実際に攻撃している様子が、同砲身の手前上方の、同砲身に接近した位置から描かれている10秒余りの動画映像である。
 3門の砲身は、最初は、左下方を向いているが、立ち上がって、正面の天体の方向を向き、まず、左端の砲身から、次に、真ん中の砲身から、最後に右端の砲身から、順に、光線を天体に向けて発射する。
 攻撃対象となっている天体は、画面中央奥に描かれ、全体的に赤色をしており、逆円錐形状をした天体の上に略円錐状の山が乗っているような形状である。天体上には、発光部分が散見される。
(イ) 対比
 本件映画対比表27部分と被告映像対比表27部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空間において、主砲が天体に向いている場面が、主砲に接近した位置から描かれている点、攻撃対象である天体が画面上に描かれている点で共通する。
 しかしながら、主砲が攻撃対象を向き、その攻撃対象を画面上に映すという表現形式は、極めてありふれており、また、その様子を主砲側の、主砲に接近した位置から描くこともありふれている。したがって、上記共通点は、いずれも、ありふれた表現形式であり、このような共通点が存在することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の点を総合考慮すると、両映像が同一であるということはできないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表27部分は、本件映画対比表27部分の複製物ということはできない。
ヨ 被告映像対比表28部分は、本件映画対比表28部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表28部分
 本件映画対比表28部分は、本件映画対比表12部分と同一であり、前記チ(ア)aで判示したとおりである。
b 被告映像対比表28部分
 被告映像対比表28部分は、屋内で、青色のコート様のユニフォームを着て、軍帽を目深に被り、椅子に腰掛けて、口を小さく動かして、話をしている体格のよい熟年男性の胸より上の部分が、目の粗い網目越しに正面から描かれた約3秒間の動画映像である。
 上記映像部分では、視点は一定であり、また、男性の大きさに変化はなく、口以外は全く動かない。
 男性の顔には、灰色の口髭と顎髭が生えているが、下唇は髭に覆われておらず、耳は、よく見えない。男性の顎髭は、下方に若干伸びている。
 帽子は、上部が白色、下部が黒色であり、中央に金色の徽章と金色の顎紐が付いている。
 コート様のユニフォームは、身体の右側にずれた位置で留めるようになっており、左の胸部に金色の図形が描かれている。両肩には金色の肩章が付いており、襟は大きく、立った状態で折り返されており、折り返された裏地部分は、白く縁取られた赤色である。男性の襟元から、白いスカーフ様のものが見える。
(イ) 対比
 本件映画対比表28部分と被告映像対比表28部分とは、前記(ア)のとおり、屋内で、コート様のユニフォームを着て、軍帽を目深に被り、体格のよい熟年男性が描かれている点、画面の後半の場面では、頭、顔及び肩ないし胸の付近までが映っている点、男性の顔には口髭と顎髭が生えている点、帽子は、上部が白色、下部が黒色であり、中央に金色の徽章と金色の顎紐が付いている点、両肩に肩章が付いている点、コート様のユニフォームの襟は大きく、折り返された裏地部分が白く縁取られた赤色である点、襟元から白いスカーフ様のものが見える点で共通する。
 しかしながら、上記両映像中に描かれている男性には、前記(ア)のとおりの相違点があるところ、アニメーション映画の登場人物としては、このような相違点があれば、別人として認識されると解される。また、その他の表現形式や、上記の共通する表現形式における具体的な表現形式において、前記(ア)の認定で明らかなように、両映像は大きく異なる。
 以上の点を総合考慮すると、両映像が同一であるということはできないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表28部分は、本件映画対比表28部分の複製物ということはできない。
ラ 被告映像対比表29部分は、本件映画対比表29部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表29部分
本件映画対比表29部分は、本件映画対比表13部分と同一であり、前記ツ(ア)aで判示したとおりである。
b 被告映像対比表29部分
 被告映像対比表29部分は、眼鏡をかけて頭髪のほとんどない男性が、艦橋内で立って話をしている様子が、正面から描かれた約7秒間の動画映像である。
 男性の人相は、@頭頂部は尖っておらず、下ぶくれの輪郭で、髪の毛は、耳の上の辺りだけにわずかに生えており、A口は大きいが、誇張されておらず、B目は黒い点であるが、眼鏡の奥に描かれており、C普通の大きさの、角が丸味を帯びた四角いフレームの眼鏡をかけており、D眼鏡はずれ落ちておらず、E鼻は、団子鼻であり、F眉毛は、短く、太い八の字の形をしている。
 男性は、口を大きく開けたり閉めたりして話をし、目も開いたり閉じたりしている。
 男性は、袖をまくった緑色のジャンパーを、前を開けて羽織り、内側に着ている白いTシャツが見えている。
(イ) 対比
 本件映画対比表29部分と被告映像対比表29部分とは、前記(ア)のとおり、頭髪がほとんどなく、眼鏡をかけた男性が描かれている点、その男性の口が大きい点で共通するが、上記(ア)の認定から明らかなように、その他の表現形式や、上記の共通する表現形式のうちでも具体的な表現形式は、大きく異なる。特に、眼鏡の形や大きさ、鼻の形、口部分の形状において、両映像の男性の人相が大きく異なり、両人物は、アニメーション映画の登場人物としては完全に別人と認識されるものといえる。
 以上の点を総合考慮すると、両映像が同一であるということはできないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表29部分は、本件映画対比表29部分の複製物ということはできない。
リ 被告映像対比表30部分は、本件映画対比表30部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表30部分
 本件映画対比表30部分は、本件映画対比表14部分と同一であり、前記テ(ア)aで判示したとおりである。
b 被告映像対比表30部分
 被告映像対比表30部分は、ロボットが、両腕を振りながら、頭部、胴部、下半身の3つのパーツを分離したり、一体となったりを繰り返して、踊っている様子が、正面から描かれた約3秒間の動画映像である。
 ロボットは、頭部、胴部、下半身部分とに分離され、いずれのパーツも、その大部分がオレンジ色をしている。
 ロボットの頭部は、半球状をしており、頭頂部に小さな突起物があり、両側面に円形の青色の目が付いており、鼻の位置が、黄色に色分けされている。頭部には、計器様のものは一切付いていない。頭部の最下部には、多数の小さな長方形の黄色いパネル様のものが一列の帯状に付いている。
 胴部には、腕が付いており、手には、指様のものが付いているが、具体的な形状は不明確である。胴部の中央部分には、緑色の円形のものがあり、その左右に小さな白色の突起物が付いている。胴部には、計器様のものは一切付いていない。胴部の最下部には、多数の小さな長方形の黄色いパネル様のものが一列の帯状に付いている。
 下半身には、人間の足の代わりに半球状のものが付いている。下半身の最上部には、多数の小さな長方形の黄色いパネル様のものが一列の帯状に付いている。
(イ) 対比
 本件映画対比表30部分と被告映像対比表30部分とは、前記(ア)のとおり、頭部、胴部、下半身の3つのパーツから成るロボットが、3つのパーツに分離する場面が正面から描かれた点、ロボットの頭部が半球状をしており、両側面に円形の目が付いており、その最下部には、多数の小さな長方形のパネル様のものが一列の帯状に付いている点、胴部には腕が付いている点において共通する。
 しかしながら、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。特に、両映像のロボットの形状が大きく異なり、両ロボットは、アニメーション映画に登場するロボットとしては完全に別のロボットと認識されるものといえる。
 以上の点を総合考慮すると、両映像が同一であるということはできないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表30部分は、本件映画対比表30部分の複製物ということはできない。
4 不競法に基づく請求の可否(争点(2))について
(1) 原告表示は、原告の商品を示す商品表示として、著名、周知といえるかについて
ア 原告の商品表示としての著名又は周知であることを要する時期
 自己の商品等表示が不競法2条1項1号にいう周知の商品等表示に当たる、あるいは、同項2号にいう著名な商品等表示に当たると主張して、これに類似の商品等表示を使用する者に対して損害賠償を請求する場合には、損害賠償請求の対象とされている類似の商品等表示の使用等をした時点において、請求人の商品等表示が周知性又は著名性を獲得していることを要し、かつ、これをもって足りるというべきである(最高裁昭和61年(オ)第30号、第31号同63年7月19日第三小法廷判決・民集42巻6号489頁参照)。
 本件で、原告は、被告商品の製造・販売による損害として使用料相当額の逸失利益を主張し、被告パチンコゲーム機については、平成16年11月ころから少なくとも20万台を製造、販売したこと、被告パチスロゲーム機については、平成17年3月以前から少なくとも1万台を製造、販売したとしており、その請求の対象となる期間は必ずしも明確ではないものの、被告パチンコゲーム機については、平成16年11月から本件口頭弁論終結日である平成18年9月21日までの期間、被告パチスロゲーム機については、平成17年3月から本件口頭弁論終結日である平成18年9月21日までの期間の損害を主張しているものと解されるので、これらの期間における原告表示の周知性ないし著名性について、まず検討する。
イ 著名性ないし周知性に関する事実認定
 証拠(甲16、17)及び弁論の全趣旨によれば、原告が、ライセンス契約に基づいて、ライセンシーに商品化を許諾した商品のうち、バンダイ製のプラモデルの5種類の商品には、原告表示1、原告表示2(1)又は真横若しくは左斜め前方からカラーで描いた宇宙戦艦ヤマトの絵が表示されていること、バンプレスト製のAM景品の2種類の商品には、原告表示1又は左斜め前方からカラーで描いた宇宙戦艦ヤマトの絵が表示されていること、ソースネクスト製のタイピングソフトの1種類の商品には、原告表示1及び原告表示2?が表示されていること、フルタ製菓製の玩具菓子の1種類の商品には、原告表示1及び原告表示2?が表示されていること、日本コロムビア販売のCDの1種類の商品には、原告表示1が表示されていること、竹書房発行の書籍の1種類の商品には、原告表示1及び原告表示2(1)が表示されていること、バンダイ製のゲームソフトの4種類の商品には、原告表示1と真正面又は左斜め前方からカラーで描いた宇宙戦艦ヤマトの絵が表示されていること、バンダイビジュアル発売のDVDの6種類の商品には、原告表示1とほぼ同様の表示がされ、また、上記商品のうち4種類のものには、原告表示2?と類似する左斜め前方からカラーで描いた宇宙戦艦ヤマトの絵が記載されていることが認められる。
 なお、原告は、平成8年12月20日から平成17年3月31日までの間に、46社のライセンシーに対し、22ジャンル、50品種、244商品について、その商品化を許諾したこと、品種としては、「ビデオ」、「DVD」、「プラモデル」、「トレーディングカード」、「超合金」、「ガレージキッド」、「フィギュア」、「メタルスタチュー」、「ボールペン」、「ゲームソフト」、「Tシャツ」、「鞄」、「ストラップ」、「ライター」、「腕時計」、「ジグゾーパズル」、「菓子」、「コミック本」、「書籍」等があることを記載した、原告の映像本部エンタテイメント事業部版権営業部部長のP5作成の陳述書(甲16)を提出するが、上記認定事実以外の同陳述書に記載された事実を裏付ける客観的な証拠は提出されておらず、それらの事実を認めることはできない。
ウ 検討
 上記認定事実によれば、原告は、ライセンス契約に基づいて、複数の企業に対し、原告表示等の使用を許諾していると推認されるが、これらの販売地域、販売時期、売上額等を示す証拠は全く提出されておらず、また、原告表示を付した各商品において、原告との結びつきを示すような表示があると認めることもできないから、結局、原告表示が原告の商品表示としてどの程度認識されているかを示す事情を認定することは困難であり、原告の商品表示として著名又は周知であると認めることはできない。
エ 原告の主張の検討
(ア) 原告は、原告表示は、遅くとも、甲3契約を締結した平成8年12月までには、著名性、周知性を獲得した旨主張しており、甲3契約締結前に甲3契約の相手方であるP2から、同人の獲得した著名性ないし周知性を譲り受けたことを前提とした主張をする。
(イ) この点に関し、甲3契約書には、原告が、P2から、「既存契約」、すなわち、「同人が平成8年9月10日以前に、宇宙戦艦ヤマト作品について締結した契約」の契約上の地位を譲り受ける旨の条項(甲3契約書1条、4条)があり、上記のP2が締結していた契約には、宇宙戦艦ヤマト作品のDVD化や、キャラクター使用等の許諾に関する契約が含まれていること(甲3契約書1条、4条、別紙(二))からすれば、P2は、甲3契約締結前に、宇宙戦艦ヤマト作品のキャラクター等を利用した商品等の宇宙戦艦ヤマト作品の関連商品の製造、販売等を許諾する事業を行っていたものと推認される。
 しかしながら、P2が、上記事業において、どのような商品表示を使用していたか、それがP2の商品表示として周知又は著名であったかについては、これらを裏付ける証拠が全く提出されておらず、これらの事実を認めることはできないから、P2の商品表示としての原告表示の著名性又は周知性を承継した旨の原告の主張は、まず、その前提を欠くことになる。
(ウ) また、商品表示の著名性、周知性については、以下のとおり、営業譲渡を伴う場合などの特段の事情がある場合を除き、原則としてこれを譲渡することはできないと解するのが相当である。
 すなわち、不競法は、権利の発生や変動についての一般的な規定を欠いており、また、当該権利についての登記や登録制度に関する規定も設けていないのであるから、同法は、不法行為に関する訴えの特別法として(最高裁平成15年(許)第44号同16年4月8日第一小法廷決定・民集58巻4号825頁参照)、同法所定の要件を充足する保護主体に対し、差止請求権や損害賠償請求権等を認めたにとどまり、上記保護主体に、譲渡可能な差止請求権や損害賠償請求権自体を付与したものではないと解するのが相当である。仮に、同法の認める保護主体性を譲渡可能なものと解すると、同保護主体性は、性質上、重畳的に譲渡されることが十分想定され、しかも、登記や登録制度がないことから、第三者に不測の損害を与えるおそれが生じることになり、妥当性を欠くものといわなければならない。
 ただし、不競法によって保護される地位は、営業と一体となって構成されるものであり、当該営業がすべて譲渡されたにもかかわらず、その営業について獲得された不競法上の保護主体性は譲渡できないと解することは、経済活動の実態に合致するものではないと考えられるところ、事業の実体を伴う営業譲渡が重畳的になされることは一般的には想定し難く、また、営業譲渡に伴い不競法上の保護主体性が譲渡される場合には、譲渡人の競業避止義務の存在などにより、第三者に不測の損害を与える可能性が少ないことを考慮すると、営業譲渡がなされた場合には、当該営業と一体として構成される不競法上の保護主体性も承継されることがあり得るものと解するのが相当である。
 そこで、本件について検討するに、原告とP2との間の甲3契約においては、前記のとおり、原告が、P2から、平成8年9月10日以前に締結した契約の契約上の地位を譲り受ける旨の条項(1条、4条)が定められているものの、甲3契約に示された契約(別紙(二))が、P2の行っていた宇宙戦艦ヤマト作品に関する事業のすべてであったことを示す条項は定められておらず、それを認めるに足りる証拠もない。そして、宇宙戦艦ヤマト作品のキャラクターを使用した新たな映像作品を制作する権利はP2に留保され、その際の商品化権等の権利の運用については別途協議する旨の条項(10条)が定められていることからすると、宇宙戦艦ヤマト作品に関する事業全体が、P2から原告に譲渡されたとは言い難く、これを認めることはできない。
 その他、本件では、営業譲渡に類するような特段の事情も認められないから、P2の商品表示の著名性又は周知性を譲り受けたとする原告の主張を採用することはできない。
(エ) なお、原告は、本件映画を含む宇宙戦艦ヤマト作品の著名性を理由に、原告表示1に著名性、周知性が認められると主張するところ、原告表示1は、本件映画の題名に係る表示として著名であるとしても、あくまでも著作物である本件映画自体を特定するものであって、それが直ちに商品やその出所ないし放映・配給事業を行う営業主体を識別する機能を有するものとしての商品等表示ということはできないから、本件映画を含む宇宙戦艦ヤマト作品の映画としての著名性を理由に、原告表示の著名性又は周知性を主張する原告の上記主張は、到底、採用することができない。
(2) 以上より、原告の不競法に基づく請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。
5 結論
 よって、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がないから、これらを棄却することとし、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第29部
 裁判長裁判官 清水節
 裁判官 山田真紀
 裁判官 佐野信


(別紙)
被告商品目録
1 被告三共製造・販売に係る下記機種名のパチンコゲーム機
 CR フィーバー大ヤマト2 ZX
 CR フィーバー大ヤマト2 ZF
 CR フィーバー大ヤマト2 SF
 CR フィーバー大ヤマト2 SE
2 被告ビスティ製造・被告フィールズ販売に係る下記機種名のパチスロゲーム機
 大ヤマトA

(別紙)
映画著作物目録
 1「宇宙戦艦ヤマト」TV シリーズ(昭和49年10月6日製作)
 2「さらば宇宙戦艦ヤマト」(昭和53年8月5日製作)
 3「宇宙戦艦ヤマト2」TV シリーズ(昭和53年10月14日製作)
 4「宇宙戦艦ヤマトIII」(昭和55年10月11日製作)
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日本ユニ著作権センター
http://jucc.sakura.ne.jp/