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【事件名】国語テストへの作品無断使用事件(教材出版6社)(2)
【年月日】平成18年12月6日
 知財高裁 平成18年(ネ)第10045号 損害賠償請求控訴事件
 (原審・東京地裁平成15年(ワ)第29709号)
 (平成18年9月20日 口頭弁論終結)

判決
 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり


主文
 本件控訴をいずれも棄却する。
 控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由
 本判決において、当事者の呼称は、控訴人(原審原告)については氏のみで表示し、被控訴人(原審被告)については株式会社の表示を省略する。
第1 控訴の趣旨
1 原判決を次のとおり変更する。
(1) 控訴人X1関係
ア 被控訴人青葉出版は、控訴人X1に対し、1004万0850円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に352万8847円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
イ 被控訴人教育同人社は、控訴人X1に対し、1070万8655円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に433万6652円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
ウ 被控訴人光文書院は、控訴人X1対し、1328万7271円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に568万3334円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
エ 被控訴人新学社は、控訴人X1に対し、951万3484円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に370万9081円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
オ 被控訴人日本標準は、控訴人X1に対し、2000万5420円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に817万4551円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
カ 被控訴人文溪堂は、控訴人X1対し、1493万7296円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に664万1766円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
(2) 控訴人X2関係
ア 被控訴人青葉出版は、控訴人X2に対し、273万4678円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に28万3595円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
イ 被控訴人教育同人社は、控訴人X2に対し、320万7528円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に47万5850円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
ウ 被控訴人光文書院は、控訴人X2に対し、329万2925円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に59万3570円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
エ 被控訴人新学社は、控訴人X2に対し、286万8705円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に40万5421円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
オ 被控訴人日本標準は、控訴人X2に対し、426万6916円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に98万7060円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
カ 被控訴人文溪堂は、控訴人X2に対し、369万4238円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に79万6363円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
(3) 控訴人X3関係
ア 被控訴人青葉出版は、控訴人X3に対し、138万0523円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に25万2687円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
イ 被控訴人教育同人社は、控訴人X3に対し、154万7441円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に40万1963円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
ウ 被控訴人光文書院は、控訴人X3に対し、162万5965円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に47万8029円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
エ 被控訴人新学社は、控訴人X3に対し、147万5526円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に34万4357円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
オ 被控訴人日本標準は、控訴人X3に対し、196万4106円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に69万4345円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
カ 被控訴人文溪堂は、控訴人X3に対し、179万6236円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に62万1914円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
(4) 控訴人X4関係
ア 被控訴人青葉出版は、控訴人X4に対し、75万7172円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に9万7172円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
イ 被控訴人教育同人社は、控訴人X4に対し、79万1812円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に13万1812円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
ウ 被控訴人光文書院は、控訴人X4に対し、79万8590円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に13万8590円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
エ 被控訴人新学社は、控訴人X4に対し、75万4466円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に9万4466円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
オ 被控訴人日本標準は、控訴人X4に対し、98万4835円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に32万4835円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
カ 被控訴人文溪堂は、控訴人X4に対し、99万3879円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に33万3879円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
(5) 控訴人X5関係
ア 被控訴人青葉出版は、控訴人X5に対し、233万0789円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に110万1398円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
イ 被控訴人教育同人社は、控訴人X5に対し、256万5401円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に136万3084円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
ウ 被控訴人光文書院は、控訴人X5に対し、314万5926円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に184万7932円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
エ 被控訴人新学社は、控訴人X5に対し、229万8683円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に105万5523円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
オ 被控訴人日本標準は、控訴人X5に対し、408万6586円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に241万0554円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
カ 被控訴人文溪堂は、控訴人X5に対し、325万3485円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に192万7791円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
(6) 控訴人X6関係
ア 被控訴人青葉出版は、控訴人X6に対し、66万9972円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に9972円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
イ 被控訴人教育同人社は、控訴人X6に対し、66万8979円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に8979円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
ウ 被控訴人光文書院は、控訴人X6に対し、68万0453円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に2万0453円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
エ 被控訴人新学社は、控訴人X6に対し、66万6775円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に6775円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
オ 被控訴人日本標準は、控訴人X6に対し、70万1985円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に4万1985円及びこれに対する別紙利息金目録記載)を支払え。
カ 被控訴人文溪堂は、控訴人X6に対し、67万7213円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に1万7213円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
(7) 控訴人X7関係
ア 被控訴人青葉出版は、控訴人X7に対し、387万6243円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に84万2868円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
イ 被控訴人教育同人社は、控訴人X7に対し、361万9637円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に61万9015円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
ウ 被控訴人光文書院は、控訴人X7に対し、352万2600円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に53万9300円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
エ 被控訴人新学社は、控訴人X7に対し、385万0017円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に85万5851円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
オ 被控訴人日本標準は、控訴人X7に対し、384万8704円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に67万4340円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
カ 被控訴人文溪堂は、控訴人X7に対し、401万8846円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に94万3873円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
(8) 控訴人X8関係
ア 被控訴人青葉出版は、控訴人X8に対し、216万8133円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に2万8813円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
イ 被控訴人教育同人社は、控訴人X8に対し、217万5699円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に4万4513円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
ウ 被控訴人光文書院は、控訴人X8に対し、218万5781円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に3万7972円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
エ 被控訴人新学社は、控訴人X8に対し、214万9867円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に2万0377円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
オ 被控訴人日本標準は、控訴人X8に対し、228万7401円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に9万0996円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
カ 被控訴人文溪堂は、控訴人X8に対し、222万6261円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に4万5600円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
(9) 控訴人X9関係
ア 被控訴人青葉出版は、控訴人X9に対し、272万9558円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に26万7765円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
イ 被控訴人教育同人社は、控訴人X9に対し、326万0466円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に49万1064円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
ウ 被控訴人光文書院は、控訴人X9に対し、332万2551円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に55万8066円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
エ 被控訴人新学社は、控訴人X9に対し、304万5007円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に46万0999円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
オ 被控訴人日本標準は、控訴人X9に対し、560万1472円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に122万6573円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
カ 被控訴人文溪堂は、控訴人X9に対し、381万3675円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に85万6451円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
(10) 控訴人X10関係
ア 被控訴人青葉出版は、控訴人X10に対し、80万0297円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に14万0297円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
イ 被控訴人教育同人社は、控訴人X10に対し、67万7288円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に1万7288円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
ウ 被控訴人光文書院は、控訴人X10に対し、78万0754円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に12万0754円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
エ 被控訴人新学社は、控訴人X10に対し、69万1901円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に3万1901円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
オ 被控訴人日本標準は、控訴人X10に対し、75万8741円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に9万8741円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
カ 被控訴人文溪堂は、控訴人X10に対し、90万7778円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に24万7778円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
(11) 控訴人X11関係
ア 被控訴人青葉出版は、控訴人X11に対し、230万1295円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に26万6423円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
イ 被控訴人教育同人社は、控訴人X11に対し、216万9993円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に15万4778円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
ウ 被控訴人光文書院は、控訴人X11に対し、228万1216円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に28万0986円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
エ 被控訴人新学社は、控訴人X11に対し、377万0524円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に155万6042円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
オ 被控訴人日本標準は、控訴人X11に対し、284万2205円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に49万7639円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
カ 被控訴人文溪堂は、控訴人X11に対し、256万9662円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に42万9020円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
(12) 控訴人X12関係
ア 被控訴人青葉出版は、控訴人X12に対し、188万8670円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に24万7332円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
イ 被控訴人教育同人社は、控訴人X12に対し、189万3769円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に26万3054円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
ウ 被控訴人光文書院は、控訴人X12に対し、180万5568円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に17万9286円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
エ 被控訴人新学社は、控訴人X12に対し、170万4607円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に9万9707円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
オ 被控訴人日本標準は、控訴人X12に対し、208万3951円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に39万3776円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
カ 被控訴人文溪堂は、控訴人X12に対し、196万3886円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に31万1161円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
(13) 控訴人X13関係
ア 被控訴人青葉出版は、控訴人X13に対し、304万5165円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に91万8372円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
イ 被控訴人教育同人社は、控訴人X13に対し、259万6126円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に81万0240円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
ウ 被控訴人光文書院は、控訴人X13に対し、406万3520円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に167万3069円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
エ 被控訴人新学社は、控訴人X13に対し、287万2226円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に113万9900円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
オ 被控訴人日本標準は、控訴人X13に対し、685万9937円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に292万3529円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
カ 被控訴人文溪堂は、控訴人X13に対し、599万4577円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に298万4726円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
(14) 訴人X14関係
ア 被控訴人青葉出版は、控訴人X14に対し、374万9066円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に48万7071円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
イ 被控訴人教育同人社は、控訴人X14に対し、305万6832円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に9万8803円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
ウ 被控訴人光文書院は、控訴人X14に対し、309万0550円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に13万2348円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
エ 被控訴人新学社は、控訴人X14に対し、305万4706円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に10万1709円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
オ 被控訴人日本標準は、控訴人X14に対し、339万2669円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に23万0526円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
カ 被控訴人文溪堂は、控訴人X14に対し、354万6030円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に13万4877円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
(15) 控訴人X15関係
ア 被控訴人青葉出版は、控訴人X15に対し、575万8221円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に100万4273円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
イ 被控訴人教育同人社は、控訴人X15に対し、656万1517円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に141万5223円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
ウ 被控訴人光文書院は、控訴人X15に対し、577万1303円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に115万7822円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
エ 被控訴人新学社は、控訴人X15に対し、571万1855円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に112万1915円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
オ 被控訴人日本標準は、控訴人X15に対し、798万8914円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に207万0292円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
カ 被控訴人文溪堂は、控訴人X15に対し、743万3029円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に204万8561円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
(16) 控訴人X16関係
ア 被控訴人青葉出版は、控訴人X16に対し、270万6489円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に28万6802円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
イ 被控訴人教育同人社は、控訴人X16に対し、242万7172円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に16万6409円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
ウ 被控訴人光文書院は、控訴人X16に対し、232万7126円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に13万2128円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
エ 被控訴人新学社は、控訴人X16に対し、235万7227円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に13万2320円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
オ 被控訴人日本標準は、控訴人X16に対し、323万8411円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に50万6392円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
カ 被控訴人文溪堂は、控訴人X16に対し、267万3250円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に29万0033円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
(17) 控訴人X17関係
ア 被控訴人青葉出版は、控訴人X17に対し、751万1883円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に72万3217円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
イ 被控訴人教育同人社は、控訴人X17に対し、836万9580円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に88万7922円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
ウ 被控訴人光文書院は、控訴人X17に対し、752万2957円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に88万8917円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
エ 被控訴人新学社は、控訴人X17に対し、707万0476円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に71万3722円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
オ 被控訴人日本標準は、控訴人X17に対し、971万0856円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に157万6984円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
カ 被控訴人文溪堂は、控訴人X17に対し、986万6972円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に147万2459円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
(18) 控訴人X18関係
ア 被控訴人青葉出版は、控訴人X18に対し、182万9712円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に2万8011円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
イ 被控訴人教育同人社は、控訴人X18に対し、240万8561円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に46万1730円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
ウ 被控訴人光文書院は、控訴人X18に対し、185万1939円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に5万3003円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
エ 被控訴人新学社は、控訴人X18に対し、279万7531円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に2万3876円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
オ 被控訴人日本標準は、控訴人X18に対し、197万2875円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に11万2717円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
カ 被控訴人文溪堂は、控訴人X18に対し、187万6448円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に5万6222円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
(19) 控訴人X19関係
ア 被控訴人青葉出版は、控訴人X19に対し、125万0311円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に12万4325円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
イ 被控訴人教育同人社は、控訴人X19に対し、145万7496円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に18万4179円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
ウ 被控訴人光文書院は、控訴人X19に対し、138万3279円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に17万9586円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
エ 被控訴人新学社は、控訴人X19に対し、137万4990円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に20万0247円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
オ 被控訴人日本標準は、控訴人X19に対し、174万2257円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に31万3478円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
カ 被控訴人文溪堂は、控訴人X19に対し、174万0909円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に31万1974円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
(20) 控訴人X20関係
ア 被控訴人青葉出版は、控訴人X20に対し、255万0790円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に16万2945円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
イ 被控訴人教育同人社は、控訴人X20に対し、287万4154円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に26万7196円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
ウ 被控訴人光文書院は、控訴人X20に対し、290万5791円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に29万4722円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
エ 被控訴人新学社は、控訴人X20に対し、269万1820円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に22万4767円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
オ 被控訴人日本標準は、控訴人X20に対し、379万2343円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に59万0163円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
カ 被控訴人文溪堂は、控訴人X20に対し、323万5570円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に38万9514円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
(21) 控訴人X21関係
ア 被控訴人青葉出版は、控訴人X21に対し、245万6357円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に120万9299円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
イ 被控訴人教育同人社は、控訴人X21に対し、256万4384円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に127万1261円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
ウ 被控訴人光文書院は、控訴人X21に対し、244万8201円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に124万8425円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
エ 被控訴人新学社は、控訴人X21に対し、242万5090円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に121万2268円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
オ 被控訴人日本標準は、控訴人X21に対し、397万5293円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に238万4643円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
カ 被控訴人文溪堂は、控訴人X21に対し、343万3663円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に210万2176円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
(22) 控訴人X22関係
ア 被控訴人青葉出版は、控訴人X22に対し、436万0233円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に120万2079円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
イ 被控訴人教育同人社は、控訴人X22に対し、414万6279円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に115万0136円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
ウ 被控訴人光文書院は、控訴人X22に対し、325万2872円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に26万4424円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
エ 被控訴人新学社は、控訴人X22に対し、302万3813円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に20万8493円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
オ 被控訴人日本標準は、控訴人X22に対し、397万8632円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に47万2038円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
カ 被控訴人文溪堂は、控訴人X22に対し、738万7826円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に364万9708円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
(23) 控訴人X23関係
ア 被控訴人青葉出版は、控訴人X23に対し、153万9719円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に87万9719円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
イ 被控訴人教育同人社は、控訴人X23に対し、181万1104円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に115万1104円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
ウ 被控訴人光文書院は、控訴人X23に対し、200万2893円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に134万2893円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
エ 被控訴人新学社は、控訴人X23に対し、137万6429円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に71万6429円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
オ 被控訴人日本標準は、控訴人X23に対し、226万1222円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に160万1222円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
カ 被控訴人文溪堂は、控訴人X23に対し、273万4436円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の金員(予備的に207万4436円及びこれに対する別紙利息金目録記載の金員)を支払え。
2 訴訟費用は、第1、2審とも、被控訴人らの負担とする。
3 仮執行の宣言
第2 事案の概要
1 手続の経緯
(1) 控訴人(被承継人を含む。)らは、小学生用国語教科書に掲載された著作物の著作権者であるところ、原審において、被控訴人らに対し、被控訴人らが上記著作物を掲載した国語テストを製作販売したことについて、主位的に、被控訴人らが国語テストを製作販売した行為は控訴人らの上記著作物に対する複製権及び著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権)を侵害すると主張して、不法行為に基づく損害賠償を求め、予備的に、上記損害賠償請求権が時効消滅した場合には、被控訴人らが法律上の原因なくして使用料相当額の支払いを免れたと主張して、不当利得の返還を求めた。
(2) 原審は、主位的請求において、被控訴人らが国語テストを製作販売した行為は控訴人らの上記著作物に対する複製権及び著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権)を侵害するが、控訴人X19を除く控訴人らについては損害賠償請求権の全部又は一部が時効消滅したとして、控訴人X13を除く控訴人らについて、不法行為に基づく損害賠償請求の一部を認容し、予備的請求において、損害賠償請求権が時効消滅した部分に関して、被控訴人らが法律上の原因なくして使用料相当額の支払いを免れたとして、控訴人X19を除く控訴人らについて、不当利得返還請求の一部を認容した。
(3) 控訴人らは、原判決を不服として控訴した。当審において控訴人らが請求する金額は、第1の1記載のとおりであり、原審における請求額と比較すると、主位的請求のうちの著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)侵害による慰謝料額とこれに対する弁護士費用の額(上記慰謝料額の10%)において、上記慰謝料額につき、原審では、被控訴人1社当たりかつ1年度ごとに30万円(控訴人X1及び同X17については50万円)としていたものを、当審では、被控訴人1社当たりかつ1年度ごとに10万円(ただし、最終年度(平成11年度)は、被控訴人1社当たり30万円(控訴人X1及び同X17については50万円))とした点が異なるものの、その余、すなわち、主位的請求のうちの複製権侵害による損害(弁護士費用を含む。)の額及び予備的請求の不当利得の額は同一である。
2 争いのない事実、争点等
 争いのない事実等、争点及び争点に関する当事者の主張は、3において原判決を訂正し、かつ、4において当審における当事者の主張を付加する外は、原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の「2 争いのない事実等」及び「3本件の争点」並びに「第3 争点に関する当事者の主張」に記載のとおりであるから、これを引用する。
3 原判決の訂正
 原判決42頁26行目から43頁3行目までを、次のとおり改める。
 「Y(以下「亡Y」という。)は、学者であるが、別紙4(著作物目録)中、同人欄の「著作物名」欄記載の各著作物(本件著作物18−1及び2)を、各「創作年度」欄記載の年に著述したことにより、これらの各著作物について、著作権を取得した。
 亡Yは、平成18年2月3日死亡した。控訴人X18は、同人の妻であるところ、他に相続人がいないことから、相続により、被控訴人らに対する各著作物に係る権利侵害を理由とする損害賠償請求権及び不当利得返還請求権を取得した。」
4 当審における当事者の主張
(1) 控訴人ら
ア 争点(1)(訴えの追加的変更の許否)について
 原判決は、「訴えの追加的変更申立てを攻撃方法の提出とみても、少なくとも原告らの重大な過失により、時機に後れてされたものといわざるを得ず、訴訟の完結を遅延させることとなることは明らかである。」(原判決94頁26行目ないし95頁2行目)と判断した。
(ア) 控訴人らは、被控訴人らに対し、本件訴えを提起する前から、複製権侵害の作品及びその部数を明らかにするよう求めていたが、被控訴人らは、これに応じなかったために、控訴人らは、結局、本件訴えの提起を余儀なくされた。被控訴人らが複製権侵害の作品及びその部数等を明らかにしたのは、平成17年12月8日付準備書面(12)においてであり、控訴人らは、上記準備書面が提出されるまでは、訴えの追加的変更申立てをすることができなかった。
(イ) したがって、「原告らの重大な過失により、時機に後れてされたものといわざるを得ず、」とした原判決の判断は、誤りである。
イ 争点(3)(著作者人格権侵害の有無)について
(ア) 同一性保持権侵害の有無
 原判決は、平成10年度以前の本件国語テストについて、「同一性保持権を侵害されたことによる慰謝料は、改変という行為によって生じるものであり、年度ごとに毎年別個の損害が発生するという性質のものとはいえないから、改変という行為が同一である以上、同一の改変行為として損害を算定すべきものである。」(原判決106頁12ないし15行目)と判断した。
a 同一性保持権を侵害する行為は、複製する行為に伴う(従属する)ものであり、改変する行為と改変したものを複製する行為からなる。そして、複製行為(著作権侵害行為)自体は、年度ごとに(そして、当事者ごと、作品ごとに)、別々の行為であるから、著作権侵害行為に従属する同一性保持権侵害行為も、当然に年度ごとに別々の行為と判断すべきである。
b 原判決は、改変行為と複製行為とを人為的に切り離して、複製行為をことさらに捨象し、改変行為のみに注目して、年度をまたがって同一の行為としているから、原判決の上記判断は、誤りである。
(イ) 氏名表示権侵害の有無
 原判決は、平成10年度以前の本件国語テストについて、「氏名表示権を侵害されたことによる慰謝料は、著作者名を表示しないで著作物を公衆に提供するという行為によって生じるものである。よって、年度ごとに毎年別個の行為が行われ別個の損害が発生するという性質のものとはいえず、」(原判決108頁11ないし14行目)と判断した。
a 氏名表示権を侵害する行為は、同一性保持権を侵害する行為と同様に、複製する行為に伴う(従属する)ものである。そして、複製行為(著作権侵害行為)自体は、年度ごとに(そして、当事者ごと、作品ごとに)、別々の行為であるから、著作権侵害行為に従属する氏名表示権侵害行為も、当然に年度ごとに別々の行為と判断すべきである。
b 原判決は、著作者名を表示しないで著作物を公衆に提供する行為(実際には年度ごとの複製行為)を無理矢理に一つの行為であると強弁して、年度をまたがって同一の行為としているから、原判決の上記判断は、誤りである。
ウ 争点(5)(消滅時効の成否)について
(ア) 民法724条の「損害及び加害者を知った時」はいつか
a 原判決は、「ある教材会社が教科書掲載著作物をその著作権者に無断で長年にわたって広範囲に国語テストに複製して販売してきたという一般的事実が存在し、以前から教科書に掲載されている著作物に係る著作権者が上記事実を認識していたという事実関係の下において、当該著作権者が、教科書に掲載された自己の著作物がある特定の教材会社との関係で同社の製作販売する国語テストに複製されたことを認識した時は、それ以前における複製権侵害による損害についても、継続的かつ牽連一体をなす損害であって、その時点で著作権者においてその認識があったものと解される。」(原判決116頁24行目117頁5行目)と判断した。
(a) 複製権を侵害する行為は、被害者、加害者、侵害年度、侵害した著作物の各々によって特定される別個の不法行為の集積であるから、行為自体も、行為のときも、消滅時効の起算点もそれぞれ異なるのであって、この点についての原判決の判断は、あいまいである。
(b) 本件で問題となっているのは、著作権者の認識であるのに、原判決は、著作権者の認識とは無関係の一般的事実を問題にしたり、長年、広範囲、一般的事実などとあいまいな文言を用いて、問題をあいまいなものにしている。
(c) 自己の著作物がある特定の教材会社との関係で同社の製作販売する国語テストに複製されたことを認識したとしても、それ以前において同じ著作物が同社の製作販売する国語テストに複製されていたことを認識することはできないし、また、それ以前において別の著作物が同社の製作販売する国語テストに複製されていたことを認識することもできない。
(d) 例えば、平成7年度の製作販売行為と平成8年度の製作販売行為とは、(準拠する教科書も違えば(平成8年に教科書が改訂されている。)、被害者となる著作権者も違い、作成する国語テストも違うものであって、継続的でもなければ、牽連一体をなすものでもない。
(e) 教科書に使用されることと教材会社に使用されることとは全く別の問題であって、教科書に使用された作品がすべて教材会社に使用されるわけではないのに、原判決はこれらを混同している。
(f) また、原判決は、「現に、原告らは、本件訴状において、上記の諸点について特定することなく被告らに対する賠償請求をしたものであり、」(原判決118頁10、11行目)と説示するが、弁護士に委任すれば訴訟提起が可能であるからといって、被害者が損害を認識していない場合にまで、消滅時効の進行を認めることは許されない。
(g) したがって、原判決が、上記判断を前提に、控訴人X19を除く控訴人らについて、複製権侵害を理由とする損害賠償請求権の全部又は一部が時効により消滅したと判断したことは、誤りである。
b 原判決は、氏名表示権侵害について、「複製権侵害に基づく損害賠償請求につき、被害者である著作者が、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度に損害の発生を現実に認識したのと同時に、氏名表示権侵害についても、これと牽連一体をなす損害として同様の認識をしたと認めるのが相当である。」(原判決142頁22ないし26行目)として、複製権侵害に基づく損害賠償請求権の消滅時効が完成しているものについて、氏名表示権侵害に基づく慰謝料請求権も時効により消滅したと判断した。
(a) 上記aのとおり、複製権侵害を理由とする損害賠償請求権の消滅時効は完成していないから、氏名表示権侵害に基づく慰謝料請求権も時効により消滅していない。
(b) 複製権侵害に基づく損害賠償請求権と氏名表示権侵害に基づく慰謝料請求権とは別個であり、前者が可能である場合に後者が可能であることにはならない。氏名表示権に基づく慰謝料請求権について一般人が訴えを提起するためには、国語テストの現物を見て、氏名が表示されていないことを一つ一つ確認しなければならないから、控訴人らは、弁護士に依頼するまでは、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度に損害の発生を現実に認識していなかったのであって、消滅時効は完成していない。
(c) したがって、原判決が、控訴人X19を除く控訴人らについて、氏名表示権に基づく慰謝料請求権の全部又は一部が時効により消滅したと判断したことは、誤りである。
(イ) 時効中断・時効援用権の喪失の成否
a あっせんの申請について
 原判決は、「あっせんの申請をもって、債務の承認ということはできない。」(原判決148頁6、7行目)と判断した。
(a) 被控訴人らのあっせん申請書には、「申請出版社が、相手方作家の別紙作品目録1記載の著作物(平成12年度の小学校教科書に掲載された作品)を申請出版社の国語テストなどの図書教材に複製して利用したことについて、相手方作家にお支払いすべき著作物使用料の金額」他に関する紛争の解決について、あっせんを求めると記載され、「申請出版社は、平成12年度(3学期を除く)の小学校国語教科書に掲載された相手方作家の文学作品(別紙作品目録1)の全部又は一部を国語テストなどの図書教材に複製して使用したことについて(可能であれば、平成11年度以前の利用についても)、相手方作家に著作物使用料をお支払いしたいと考えております。また、相手方作家もこれ(相手方作家のお立場からは損害金)を請求されようとしていますが、その金額については合意の成立には至らず、この点について著作権法に規定する権利に関する紛争が存在します。」と記載されている。
(b) 被控訴人らは、あっせん申請書において、控訴人らのうちの7名(控訴人X1、亡I、控訴人X10、同X14、同X15、同X17及び同X20)に対し、その著作物を無断で複製したことについて損害賠償義務を負うことを認めていたから、債務を承認していたのであって、原判決の上記判断は、誤りである。
b 平成13年8月31日付回答書について
 原判決は、「被告らの代理人が、上記回答書を上記7名の代理人に対して送付したことは、上記7名の被告らに対する複製権又は著作者人格権侵害に基づく損害賠償請求の債務の承認とはいえない。」(原判決149頁4ないし6行目)と判断した。
(a) 被控訴人らは、平成13年8月31日付回答書において、控訴人らのうちの7名に対し、上記aのあっせん申請について、出版各社から通知人各位に対し、平成9年度から平成12年度までの間の小学校国語教科書に掲載された作品を出版各社の国語テストなどの図書教材に利用したことについて、出版各社からお支払いすべき著作物使用料の金額他に関する合意の成立を求めるものであった旨再言し、出版各社が一貫して誠実な話合いにより問題を解決することを望んでいると述べている。
(b) 被控訴人らは、同回答書において、控訴人らのうちの7名に対し、その著作物を無断で複製したことについて、損害賠償義務を負うことを認めていたから、債務を承認していたのであって、原判決の上記判断は、誤りである。
c 平成13年12月26日付回答書について
 原判決は、「被告らが、その後に消滅時効や除斥期間を主張することは、何ら信義則に反するものではないというべきである。」(原判決149頁24ないし26行目)と判断した。
(a) 控訴人らのうちの7名は、平成13年10月31日、被控訴人らに対し、消滅時効及び除斥期間を考慮せず、適正な賠償額の算定をしたい旨を提案したところ、被控訴人らは、平成13年12月26日付回答書において、控訴人らのうちの7名に対し、消滅時効や除斥期間の問題は、和解協議の中で柔軟に対応したい旨回答した。
(b) したがって、被控訴人らは、控訴人らのうちの7名に対して、信義則上消滅時効の援用権を喪失したのであって、原判決の上記判断は、誤りである。
d 「過去分補償のお支払いについて」と題する書面について
 原判決は、「同文書の送付をもって、直ちに被告ら自身が過去の損害賠償債務を承認したものと認めることはできないというべきである。」(原判決152頁21ないし23行目)と判断した。
(a) 「過去分補償のお支払いについて」と題する書面には、小学校国語教科書に掲載された作品を複製したことについて、補償額が明示されていて、被控訴人らが教材への使用に関する過去分補償の支払がされる旨明記されている。
(b) 被控訴人ら6社は、同書面において、控訴人らのうちの10名(亡K、控訴人X11、同X12、同X13、同X16、亡Y、控訴人X19、同X21、同X22及び同X23)に対し、控訴人らの著作物を無断で複製したことについて、損害賠償義務を負うことを認めていたから、債務を承認していたのであって、原判決の上記判断は、誤りである。
エ 争点(7)(損害の発生及びその額)について
(ア) 原判決は、「著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を算定する基礎となる価格として、消費税相当額を控除する方法を用いることが不合理であるとはいえない。」(原判決156頁19ないし21行目)と判断した。
 単価については、消費税相当額を含めた金額を損害額算定の基礎として使用しなければならないから、原判決の上記判断は、誤りである。
(イ) 原判決は、「著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額の算定に当たっては、使用率として、・・・使用頁(2分の1頁)を本件国語テストの総頁数で除した数字を用いるのが相当である。」(原判決158頁7ないし10行目)と判断した。
 1頁のうちの使用された面積をもとに使用率を算出する方法は全く合理的でなく、使用率は、純粋に使用頁を国語テストの総ページ数で除した数字を用いるべきであるから、原判決の上記判断は、誤りである。
(ウ) 原判決は、「同一性保持権侵害行為に対する慰謝料として、特定の著作者の1つの著作物に対応する同一被告の国語テスト(ただし、改変の態様が異なる国語テストについては、別個に損害を算定した。)についてそれぞれ10万円と認めるのが相当である。」(原判決161頁2ないし5行目)と判断した。
 同一性保持権侵害行為に対する慰謝料として、10万円という金額は、あまりにも低額であり、不合理であるから、原判決の上記判断は、誤りである。
(エ) 原判決は、「氏名表示権侵害行為に対する慰謝料として、特定の著作者の1つの著作物に対応する同一被告の国語テストについてそれぞれ5万円と認めるのが相当である。」(原判決161頁18ないし20行目)と判断した。
 氏名表示権侵害行為に対する慰謝料として、5万円という金額は、あまりにも低額であり、不合理であるから、原判決の上記判断は、誤りである。
(オ) 原判決は、「同一性保持権を侵害されたことによる慰謝料は改変という行為によって生じるものであり、氏名表示権を侵害されたことによる慰謝料も、著作者名を表示しないで著作物を公衆に提供又は提示するという行為によって生じるものであって、年度ごとに毎年発生するという性質のものとはいえない。」(原判決163頁16ないし20行目)と判断した。
 著作者人格権を侵害する行為は、被害者、加害者、侵害年度、侵害した著作物の各々によって特定される別個の不法行為の集積であるから、同一性保持権侵害について、改変行為のみに注目して同一の改変行為として損害を算定すべきであるとし、また、氏名表示権侵害について、著作者名を表示しないで著作物を公衆に提供する行為を無理矢理に一つの行為であると強弁して同一の行為として損害を算定すべきであるとした原判決の上記判断は、誤りである。
オ 争点(8)(利得と損失の発生及びその額)について
(ア) 原判決は、「不当利得返還請求における利得額の算定の基礎とすべき使用料率は、5%(翻訳については2.5%)が相当である。」(原判決166頁26行目ないし167頁2行目)と判断した。
 文芸作品の単行本の印税率は通常10%とされていること等にかんがみると、不当利得返還請求における利得額の算定の基礎とすべき使用料率は、10%として算定すべきであるから、原判決の上記判断は、誤りである。
(イ) 原判決は、「利息の利率は、民法所定の年5分によるべきである。」(原判決169頁24行目)と判断した。
 被控訴人らの不当利得返還義務は、教材出版行為という商行為に起因し、商行為よって生じた債務であって、利息の利率は商事法定利率の年6分によるべきであるから、原判決の上記判断は、誤りである。
(2) 被控訴人ら
ア 争点(1)(訴えの追加的変更の許否)について
 「国語ドリル」等の存在は、平成17年2月3日の第8回弁論準備手続において被控訴人らが提出した乙29、31、33、35、37及び39(各枝番を含む。)により既に明らかであったから、「原告らの重大な過失により、時機に後れてされたものといわざるを得ず、」とした原判決の判断に誤りはない。
イ 争点(3)(著作者人格権侵害の有無)について
(ア) 同一性保持権侵害の有無
 控訴人らの主張は、複製権侵害行為と著作者人格権侵害行為とを混同するものであり、また、改変行為が一つである以上、数年にわたって複製が継続したとしても、同一性保持権侵害による慰謝料算定に当たって新たな改変行為と評価することはできないから、平成10年度以前の本件国語テストについて、「同一性保持権を侵害されたことによる慰謝料は、改変という行為によって生じるものであり、年度ごとに毎年別個の損害が発生するという性質のものとはいえないから、改変という行為が同一である以上、同一の改変行為として損害を算定すべきものである。」とした原判決の判断に誤りはない。
(イ) 氏名表示権侵害の有無
 控訴人らの主張は、同一性保持権侵害についてと同様に、複製権侵害行為と著作者人格権侵害行為とを混同するものであるから、平成10年度以前の本件国語テストについて、「氏名表示権を侵害されたことによる慰謝料は、著作者名を表示しないで著作物を公衆に提供するという行為によって生じるものである。よって、年度ごとに毎年別個の行為が行われ別個の損害が発生するという性質のものとはいえず、」とした原判決の判断に誤りはない。
ウ 争点(5)(消滅時効の成否)について
(ア) 民法724条の「損害及び加害者を知った時」はいつか
a 不法行為の個数の問題と不法行為の「被害者」が複数の牽連する不法行為によって発生した損害をどの範囲まで認識していたかの問題とは別個のものであり、控訴人らが「複製権を侵害する行為は、被害者、加害者、侵害年度、侵害した著作物の各々によって特定される別個の不法行為の集積である」と主張しても、その結果と原判決の牽連一体性の判断との間には関連性がなく、無意味である。
 教科書改訂時に特定の作家の同一の作品(複製する作品)が再掲載されている場合、改訂前後の特定の被控訴人の行為に牽連一体性があることは明らかである。
 控訴人ら代理人(弁護士)は、依頼者(一般人)の認識が「提訴可能な程度」にあるからこそ、それを反映して現実の訴訟提起を行ったのであり、弁護士が依頼者に欠けている「提訴可能な程度の認識」に基づき訴訟を提起することなどあり得ない。
 したがって、控訴人X19を除く控訴人らについて、原判決が、複製権侵害を理由とする損害賠償請求権の全部又は一部が時効により消滅したと判断したことに誤りはない。
b 控訴人らは、現に弁護士に依頼して氏名表示権侵害の主張を含めた本件訴訟を提起しているのであり、また、弁護士に依頼することにより、初めて加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況に到達するというものでもないから、控訴人X19を除く控訴人らについて、原判決が、氏名表示権に基づく慰謝料請求権の全部又は一部が時効により消滅したと判断したことに誤りはない。
(イ) 時効中断・時効援用権の喪失の成否
a あっせんの申請について
 原判決は、あっせん申請書の記載内容等を精査した上で、それが被控訴人らによる債務の承認とはならないと判断しているのであって、「あっせんの申請をもって、債務の承認ということはできない。」とした原判決の判断に誤りはない。
b 平成13年8月31日付回答書について
 原判決は、平成13年8月31日付回答書の趣旨が、「著作物使用料を損害金と認めるものではないことを前提として、紛争の解決のために誠実に話し合いたい旨を述べているにすぎない」(原判決148頁24ないし26行目)ことを理由に控訴人らの主張を排斥しているのであって、「被告らの代理人が、上記回答書を上記7名の代理人に対して送付したことは、上記7名の被告らに対する複製権又は著作者人格権侵害に基づく損害賠償請求の債務の承認とはいえない。」とした原判決の判断に誤りはない。
c 平成13年12月26日付回答書について
 平成13年12月26日付回答書は、被控訴人らが、消滅時効や除斥期間の主張についての権利を留保しつつ、和解協議が調うのであれば、条件次第では放棄又は一部放棄もあり得るとの意思を表明したものであって、「被告らが、その後に消滅時効や除斥期間を主張することは、何ら信義則に反するものではないというべきである。」とした原判決の判断に誤りはない。
d 「過去分補償のお支払いについて」と題する書面について
 原判決は、「過去分補償のお支払いについて」と題する書面の作成者(日図協)、作成目的、内容を検討し、「同文書の送付をもって、直ちに被告ら自身が過去の損害賠償債務を承認したものと認めることはできないというべきである。」と判断したのであって、その判断に誤りはない。
エ 争点(7)(損害の発生及びその額)について
(ア) 消費税を含むか含まないかは、結局は使用料率の割合と関係するのであるから、原判決が「著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を算定する基礎となる価格として、消費税相当額を控除する方法を用いることが不合理であるとはいえない。」と判断したことに誤りはない。
(イ) 原判決は、「著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額の算定に当たっては、使用率として、上記のような意味での使用頁(2分の1頁)を本件国語テストの総頁数で除した数字を用いるのが相当である。」と判断したところ、上記使用率は、日本文藝家協会と日図協との間で平成13年3月27日に締結された協定書の運用細則によって採用された合理的なものであるから、原判決の上記判断に誤りはない。
(ウ) 原判決は、同一性保持権侵害行為に対する慰謝料額を10万円と算定すべき理由を詳しく説示しているところ、原判決の判断は極めて合理的である。
(エ) 原判決は、氏名表示権侵害行為に対する慰謝料額を5万円と算定すべき理由を詳しく説示しているところ、原判決の判断は極めて合理的である。
(オ) 控訴人らの主張は、複製権侵害行為と著作者人格権侵害行為とを混同するものであって、「年度ごとに毎年発生するという性質のものとはいえない。」とした原判決の判断に誤りはない。
オ 争点(8)(利得と損失の発生及びその額)について
(ア) 日本文藝家協会と日図協との間で平成13年3月27日に締結した協定書の運用細則によると、作品の使用料は頁割により5%とし、作品の翻訳物は2.5%とするとされており、同協会が定めて文化庁長官に届け出ている使用料規程で使用料を本体価格の5%と定めていることが認められるから、「不当利得返還請求における利得額の算定の基礎とすべき使用料率は、5%(翻訳については2.5%)が相当である。」とした原判決の判断に誤りはない。
(イ) 控訴人らの不当利得返還請求権は、商行為によって生じたものでないから、「利息の利率は、民法所定の年5分によるべきである。」とした原判決の判断に誤りはない。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、控訴人らの請求は、原判決が認容した限度で理由があるものと判断する。その理由は、当審における控訴人の主張に対する判断を以下に付加するほかは、原判決の「事実及び理由」中の「第4 争点に対する判断」に記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、「第4 争点に対する判断」中に「原告X18」とあるのを「亡Y」に改め、原判決の113頁4行目に「亡I、」とあるのを削除し、154頁21行目に「日本児童文藝家協会」とあるのを「日本文藝家協会」と改める。)。
2 当審における控訴人らの主張について
(1) 争点(1)(訴えの追加的変更の許否)について
ア 控訴人らは、被控訴人らに対し、本件訴えを提起する前から、複製権侵害の作品及びその部数を明らかにするよう求めていたところ、被控訴人らが複製権侵害の作品及びその部数等を明らかにしたのは、平成17年12月8日付準備書面(12)においてであり、控訴人らは、同準備書面が提出されるまでは、訴えの追加的変更申立てをすることができなかったから、控訴人らの重大な過失により、時機に後れてされたものではないと主張する。
イ 控訴人らは、平成18年1月13日付け訴え変更申立書により、原判決別紙5−2(年度別部数等一覧表)の「教材名」欄記載のとおり、「国語テスト」とは別の教科書準拠副教材である「国語ドリル」、「国語の達成」、「国語の確認」、「国語プリント」、「マイペア」、「国語形成プリント」、「国語Vドリル」及び「サマー16」について、これらに係る損害賠償請求を追加したのであって、これは訴えの追加的変更に当たるものである。そして、これにより著しく訴訟手続を遅延させることとなるのは、引用した原判決が説示するとおりであるから、上記「国語ドリル」等に関する訴えの追加的変更は、民事訴訟法143条1項ただし書により、許されない。
ウ 引用した原判決の説示によれば、原判決は、「上記「国語ドリル」等に関する訴えの追加的変更は、民事訴訟法143条1項ただし書により、許されない。」(原判決94頁16、17行目)と判断した上、念のために、「訴えの追加的変更申立てを攻撃方法の提出とみても、少なくとも原告らの重大な過失により、時機に後れてされたものといわざるを得ず、訴訟の完結を遅延させることとなることは明らかである。」(原判決94頁26行目ないし95頁2行目)と判断しているのであって、仮に「原告らの重大な過失により、時機に後れてされた」との判断に誤りがあるとしても、民事訴訟法143条1項ただし書においては、「原告らの重大な過失により、時機に後れてされた」ことは要件とされていないから、「国語ドリル」等に関する訴えの追加的変更が許されないとの結論に影響を及ぼすことはない。
 のみならず、上記「国語ドリル」等の存在は、平成17年2月3日の弁論準備手続の期日において被控訴人らが提出した乙29の1ないし22、31の1ないし19、33の1ないし21、35の1ないし22、37の1ないし21及び39の1ないし19(いずれも、平成11年11月ころに被控訴人らが作成し控訴人らに宛てて送付した「使用許諾申請書」である。)により既に明らかになっていたこと、原審は、平成17年12月26日に弁論準備手続を終結して、平成18年1月13日に口頭弁論を行い、同月20日の口頭弁論期日に口頭弁論を終結していることを考えると、仮に訴えの追加的変更申立書を攻撃方法の提出とみることができたとしても、控訴人らが重大な過失により時機に後れて提出したものであるといわざるを得ない。
エ 控訴人らの上記主張は、採用することができない。
(2) 争点(3)(著作者人格権侵害の有無)について
ア 同一性保持権侵害の有無
(ア) 控訴人らは、同一性保持権を侵害する行為は、複製する行為に伴う(従属する)ものであり、改変する行為と改変したものを複製する行為からなるところ、複製行為(著作権侵害行為)自体は、年度ごとに(そして、当事者ごと、作品ごとに)、別々の行為であるから、著作権侵害行為に従属する同一性保持権侵害行為も、当然に年度ごとに別々の行為と判断すべきであると主張する。
(イ) しかしながら、著作権法20条1項は、同一性保持権について、「著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。」と定めていて、改変行為を同一性保持権を侵害する行為としているから、同一性保持権を侵害されたことによる慰謝料は、改変行為によって生じるものであって、年度ごとに毎年別個の損害が発生するというものではないというべきである。そうであれば、改変行為が同一であれば、同一の改変行為としてこれに基づく損害を算定するのが相当である。
(ウ) 控訴人らの上記主張は、採用することができない。
イ 氏名表示権侵害の有無
(ア) 控訴人らは、氏名表示権を侵害する行為は、複製する行為に伴う(従属する)ものであり、複製行為(著作権侵害行為)自体は、年度ごとに(そして、当事者ごと、作品ごとに)、別々の行為であるから、著作権侵害行為に従属する氏名表示権侵害行為も、当然に年度ごとに別々の行為と判断すべきであると主張する。
(イ) しかしながら、著作権法19条1項は、氏名表示権について、「著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。・・・」と定めていて、著作者名を表示し又は表示しないで著作物を公衆に提供する行為を氏名表示権を侵害する行為としているから、氏名表示権を侵害されたことによる慰謝料は、著作者名を表示し又は表示しないで著作物を公衆に提供する行為によって生じるものであって、年度ごとに毎年別個の行為が行われ別個の損害が発生するというものではないというべきである。そうであれば、上記の提供行為が同一であれば、同一の提供行為としてこれに基づく損害を算定するのが相当である。
(ウ) 控訴人らの上記主張は、採用することができない。
(3) 争点(5)(消滅時効の成否)について
ア 民法724条の「損害及び加害者を知った時」はいつか
(ア) 複製権侵害について
a 民法724条にいう「損害及び加害者を知った時」とは、被害者において、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度にこれらを知ったときを意味するものと解すのが相当であり(最高裁昭和45年(オ)第628号同48年11月16日第二小法廷判決・民集27巻10号1374頁参照)、また、そのうちの「損害を知った時」とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうと解すべきである(最高裁平成8年(オ)第2607号同14年1月29日第三小法廷判決・民集56巻1号218頁参照)。これを本件についてみると、被害者が「損害及び加害者を知った時」とは、教科書掲載著作物の著作権者において、ある特定の教材会社が自己の特定の著作物を国語テストに掲載していたことを認識した時をいうと考えられる。
 ところで、教科書掲載著作物の著作権者は、著作物を教科用図書に掲載する旨の通知を受けるとともに、補償金の支払いを受けるから(著作権法33条2項)、当然に、自己の著作物が教科書に掲載されていることを認識しているものである。そして、ある教材会社が教科書掲載著作物をその著作権者に無断で長年にわたって広範囲に国語テストに複製して販売してきたという一般的事実が存在し、以前から教科書に掲載されている著作物に係る著作権者が上記事実を認識していたという事実関係の下においては、教科書掲載著作物の著作権者が、ある教材会社が教科書に掲載された自己の著作物を国語テストに複製したことを認識した時には、経験則上、教科書に掲載されていたそれ以前の期間、上記教科書掲載著作物を国語テストに複製していたことを認識したものと推認することができる。なお、教科書掲載著作物の著作権者が、ある教材会社が教科書に掲載された自己の著作物を国語テストに複製したことを認識したとしても、それ以外の著作物についても国語テストに複製していたことを認識することはないし、それ以外の教材会社が国語テストに複製していたことを認識することもない。
b 控訴人らは、以下のように主張するが、控訴人らの主張は、いずれも採用することができない。
(a) 控訴人らは、複製権を侵害する行為は、被害者、加害者、侵害年度、侵害した著作物の各々によって特定される別個の不法行為の集積であるから、行為自体も、行為のときも、消滅時効の起算点もそれぞれ異なるのであって、この点についての引用した原判決の説示はあいまいであると主張する。しかしながら、上記aのとおり、教科書掲載著作物の著作権者において、ある教材会社が教科書に掲載された自己の著作物を国語テストに複製したことを認識した時には、経験則上、教科書に掲載されていたそれ以前の期間、上記教科書掲載著作物を国語テストに複製していたことを認識したものと推認することができるから、これにより、特定の著作物について、特定の教材会社に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度に損害及び加害者を知ったということができるのである。引用した原判決の説示は、この趣旨をいうものであって、あいまいであるということはできない。
(b) 控訴人らは、本件で問題となっているのは、著作権者の認識であるのに、著作権者の認識とは無関係の一般的事実を問題にしたり、長年、広範囲、一般的事実などとあいまいな文言を用いて、問題をあいまいなものにしていると主張する。しかしながら、上記aのとおり、本件において、被害者が「損害及び加害者を知った時」とは、教科書掲載著作物の著作権者において、ある特定の教材会社が自己の特定の著作物を国語テストに掲載していたことを認識した時をいうところ、引用した原判決も同様の説示をしているのであって、問題をあいまいなものにしているということはできない。
(c) 控訴人らは、自己の著作物がある特定の教材会社との関係で同社の製作販売する国語テストに複製されたことを認識したとしても、それ以前において同じ著作物が同社の製作販売する国語テストに複製されていたことを認識することはできないし、また、それ以前において別の著作物が同社の製作販売する国語テストに複製されていたことを認識することもできないと主張する。しかしながら、上記aのとおり、ある教材会社が教科書掲載著作物をその著作権者に無断で長年にわたって広範囲に国語テストに複製して販売してきたという一般的事実が存在し、以前から教科書に掲載されている著作物に係る著作権者が上記事実を認識していたという事実関係の下においては、教科書掲載著作物の著作権者が、ある教材会社が教科書に掲載された自己の著作物を国語テストに複製したことを認識した時には、経験則上、教科書に掲載されていたそれ以前の期間、上記教科書掲載著作物を国語テストに複製していたことを認識したものであると推認することができるのである。なお、このときに、それ以外の自己の著作物を国語テストに複製していたことを認識することがないのは、上記aのとおりである。
(d) 控訴人らは、例えば、平成7年度の制作販売行為と平成8年度の制作販売行為とは、(準拠する教科書も違えば(平成8年に教科書が改訂されている。)、被害者となる著作権者も違い、作成する国語テストも違うものであって、継続的でもなければ、牽連一体をなすものでもないと主張する。しかしながら、教科書の改訂の前後で同一の著作物が掲載されているのであれば、複製権侵害による損害としては、継続した牽連一体をなす損害であるということができる。
(e) 控訴人らは、教科書に使用されることと教材会社に使用されることとは全く別の問題であり、教科書に使用された作品がすべて教材会社に使用されるわけではないのであって、原判決はこれらを混同していると主張する。確かに、教科書に使用されたからといって、その作品がすべて教材会社に使用されるわけではないとしても、本件は、教材会社が教科書に掲載された著作物を国語テストに複製したことを問題としているのであるから、教科書に使用されることと教材会社に使用されることを混同しているわけではない。
(f) 控訴人らは、弁護士に委任すれば訴訟提起が可能であるからといって、被害者が損害を認識していない場合にまで、消滅時効の進行を認めることは許されないと主張する。しかしながら、控訴人らは、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度に損害及び加害者を知ったからこそ、弁護士に委任して本件訴訟を提起したのであって、被害者が損害を認識していなかったということではない。
(g) 以上のとおりであって、控訴人らの主張は、いずれも採用することができない。
(イ) 氏名表示権侵害について
a 控訴人らは、複製権侵害を理由とする損害賠償請求権の消滅時効が完成していないから、氏名表示権侵害に基づく慰謝料請求権も時効により消滅していないし、また、複製権侵害に基づく損害賠償請求が可能である場合に氏名表示権侵害に基づく慰謝料請求権が可能であることにはならないから、複製権侵害を理由とする損害賠償請求権の消滅時効が完成したとしても、氏名表示権侵害に基づく慰謝料請求権は時効により消滅していないと主張する。
b しかしながら、著作者の会が控訴人X19を除く控訴人らに送付した1999年(平成11年)10月18日付書面(乙3)には、著作者名の表示のない本件国語テストの実例2通が添付され、また、被控訴人ら及び正進社が控訴人X19を除く控訴人らに送付した本件許諾申請文書(乙6の1及び2)には、サンプルとして「現行の同学年の使用例」が添付されていたから、控訴人X19を除く控訴人らは、これにより、本件国語テストに使用されているのが教科書掲載著作物の全部又は一部であること、使用される際に著作者名が表示されていないことを認識したと認められる。
 そうであれば、複製権侵害に基づく損害賠償請求について、被害者である著作者が、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度に損害の発生を現実に認識した時には、氏名表示権侵害に基づく慰謝料請求についても、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度に損害の発生を現実に認識したと認められる。
 控訴人らの主張は、採用の限りでない。
イ 時効中断・時効援用権の喪失の成否
 控訴人らは、被控訴人らが、@あっせん申請書(甲290の1ないし7)、A平成13年8月31日付回答書(甲291の1、2)及びB同年12月26日付回答書(甲292の1)において、控訴人らのうちの7名(控訴人X1、亡I、控訴人X10、同X14、同X15、同X17及び同X20)に対して債務を承認し、また、C「過去分補償のお支払いについて」と題する書面(甲293の3、4及び7)において、控訴人らのうちの10名(亡K、控訴人X11、同X12、同X13、同X16、亡Y、控訴人X19、同X21、同X22及び同X23)に対して債務を承認したと主張するが、控訴人らの上記主張を採用することができないのは、引用した原判決が説示するとおりである。
(4) 争点(7)(損害の発生及びその額)について
ア 控訴人らは、単価については、消費税相当額を含めた金額を損害額算定の基礎として使用しなければならないと主張する。
 しかしながら、日本文藝家協会が定めて著作権等管理事業法に基づき文化庁長官に届け出ている著作物使用料規程(乙45)8条には、「著作物を入試問題集・一般教養問題集・学習参考書・学校用図書教材等に複製し、公衆に譲渡する場合の使用料」を「本体価格の5%に発行部数を乗じた額を本文総ページで割り、使用ページ割合を乗じた額もしくは2000円のいずれかの高い額」と記載され、著作者の会、日本児童文学者協会及び日本児童文芸家協会と被控訴人ら及び日図協との間で平成11年9月30日に締結された協定(乙22の1)の運用細則(乙22の3)には、使用料は「本体価格×発行部数×印税率×使用割合(ページ割)」で算出すると記載され、日本文藝家協会と日図協との間で平成13年3月27日に締結された協定(乙23の1)の運用細則(乙23の2)には、使用料は「本体価格×発行部数×印税率×使用割合(ページ割)」で算出すると記載されているところ、これらの事実に照らすと、著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を算定する基礎となる価格として、消費税相当額を控除する方法を用いることが不合理であるとはいえない。控訴人らの上記主張は、採用することができない。
イ 控訴人らは、1頁のうちの使用された面積をもとに使用率を算出する方法は全く合理的でなく、使用率は、純粋に使用頁を国語テストの総ページ数で除した数字を用いるべきであると主張する。
 しかしながら、本件国語テストは、本件各著作物が、表面の上段のほぼ全面に罫線によって四角に囲まれた中に挿絵又は写真とともに掲載され、下段の半面又はほぼ全面に、上段に掲載された本件各著作物に対応した選択式又は記述式の設問が設けられている。そして、上記アのとおり、著作者の会、日本児童文学者協会及び日本児童文芸家協会と被控訴人ら及び日図協との間で平成11年9月30日に締結された協定(乙22の1)の運用細則(乙22の3)には、「ページ割とは、教材出版物の全ページ(広告ページなどは除く)のうち、作品使用の部分を算定の対象とする。例えば、現行のテスト教材の例でいうと、概ね1ページの上段全部が作品部分にあたっており、この場合は1/2となる。」と記載され、日本文藝家協会と日図協との間で平成13年3月27日に締結された協定(乙23の1)の運用細則(乙23の2)には、「「ページ割」とは、教材出版物の全ページ数(広告ページなど除く)のうち、作品が使用されているページ数の割合をいう。教材出版物中に作品が使用されている部分が1ページに満たない場合には、各ページごとの作品使用の割合をもって算定するものとし、1/2ページ、1/3ページのように分子を1とし、分母を整数とする分数によって定める。・・・」と記載されていることを併せ考えると、著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額の算定に当たっては、使用率として、2分の1頁を本件国語テストの総頁数で除した数字を用いるのが相当である。控訴人らの上記主張は、採用することができない。
ウ 控訴人らは、同一性保持権侵害行為に対する慰謝料として、10万円という金額は、あまりにも低額であり、不合理であると主張するが、引用した原判決に現れた事情を考慮すれば、同一性保持権侵害行為に対する慰謝料として、特定の著作者の1つの著作物に対応する同一被告の国語テストについてそれぞれ10万円と認めるのが相当であるから、控訴人らの主張は、採用の限りでない。
エ 控訴人らは、氏名表示権侵害行為に対する慰謝料として、5万円という金額は、あまりにも低額であり、不合理であると主張するが、引用した原判決に現れた事情を考慮すれば、氏名表示権侵害行為に対する慰謝料として、特定の著作者の1つの著作物に対応する同一被告の国語テストについてそれぞれ5万円と認めるのが相当であるから、控訴人らの主張は、採用の限りでない。
オ 控訴人らは、著作者人格権を侵害する行為は、被害者、加害者、侵害年度、侵害した著作物の各々によって特定される別個の不法行為の集積であるから、同一性保持権侵害について、改変行為のみに注目して同一の改変行為として損害を算定すべきであるとし、また、氏名表示権侵害について、著作者名を表示しないで著作物を公衆に提供する行為を無理矢理に一つの行為であると強弁して同一の行為として損害を算定すべきであるとした原判決の判断は誤りであると主張するが、上記(2)のとおりであるから、控訴人らの上記主張は、採用することができない。
(5) 争点(8)(利得と損失の発生及びその額)について
ア 控訴人らは、文芸作品の単行本の印税率は通常10%とされていること等から、不当利得返還請求における利得額の算定の基礎とすべき使用料率は、10%として算定すべきであると主張する。しかしながら、上記(4)アの著作物使用料規程(乙45)8条に「本体価格の5%」と記載されていること、著作者の会、日本児童文学者協会及び日本児童文芸家協会と被控訴人ら及び日図協との間で平成11年9月30日に締結された協定(乙22の1)には、「著作物の使用料は、原則として印税によるものとし、ページ割で計算する。印税率は5%とする。」と記載されていること、日本文藝家協会と日図協との間で平成13年3月27日に締結された協定(乙23の1)の運用細則(乙23の2)には、「作品の印税率は、5%とする。作品の翻訳物の印税率は、2.5%(左作品の印税率の1/2)とする。」と記載とされていることにかんがみると、不当利得返還請求における利得額の算定の基礎とすべき使用料率は、5%(翻訳については2.5%)として算定するのが相当である。控訴人らの上記主張は、採用の限りでない。
イ 被控訴人らの不当利得返還義務は、教材出版行為という商行為に起因し、商行為よって生じた債務であって、利息の利率は商事法定利率の年6分によるべきであると主張するが、本件の不当利得返還請求は、商行為を契機として生じたものではあるが、商行為から生じたものではないから、控訴人らの主張は、採用の限りでない。
第4 結論
 以上のとおりであって、控訴人らの請求は、原判決が認容した限度で理由があり、本件控訴は理由がないから、これを棄却すべきである。

知的財産高等裁判所第4部
 裁判長裁判官 塚原朋一
 裁判官 高野輝久
 裁判官 佐藤達文


(別紙)
当事者目録
控訴人X1
控訴人X2
控訴人X3
控訴人X4
控訴人X5
控訴人X6
控訴人X7
控訴人X8
控訴人X9
控訴人X10
控訴人X11
控訴人X12
控訴人X13
控訴人X14
控訴人X15
控訴人X16
控訴人X17
控訴人X18(原審原告Y訴訟承継人)
控訴人X19
控訴人X20
控訴人X21
控訴人X22
控訴人X23
上記23名訴訟代理人弁護士 本田俊雄
同 金子悦司郎
同 水成直也
同 森哲也
同 國吉歩
同 土田慎太郎
同 岡林俊夫
同 冨本和男
同 山本雄祐
同 日下隆浩
被控訴人 青葉出版株式会社
被控訴人 株式会社教育同人社
被控訴人 株式会社光文書院
被控訴人 株式会社新学社
被控訴人 株式会社日本標準
訴訟代理人弁護士 朝倉正幸
上記5名訴訟代理人弁護士 岡邦俊
同 近藤夏
同 前田哲男
被控訴人 株式会社文溪堂
訴訟代理人弁護士 石田英遠
同 青柳良則
同 八木俊則
line
 
日本ユニ著作権センター
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