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9月4日 “食べログ”の口コミ不正競争事件 |
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札幌地裁/判決・請求棄却(控訴・控訴棄却、上告・上告不受理、確定)
「A丼B」という名称を用いて飲食店を経営している原告が、インターネット上に公開されている「食べログ」と称するウェブサイトを運営管理している被告に対して、同サイトのウェブページに掲載している原告の上記名称は著名商品等表示であるから、掲載は不正競争行為に当たり、また人格権に基づく名称権等を侵害するものであるとして、店舗に関する情報の削除と損害賠償金220万円の支払いを求めた事件。
裁判所は、本件名称の本件ページへの掲載が不正競争に当たるか、またその掲載が原告の商品等表示と同一のものの使用に当たるかを検討し、いずれの点からも掲載が不正競争に当たるということはできないとして請求を棄却、人格権に基づく名称権等の侵害の主張も理由がないとして棄却した。 |
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9月11日 警視庁向けシミュレーションソフト事件 |
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東京地裁/判決・本訴請求一部認容、一部棄却、反訴請求棄却
コンピュータプログラムの作成などを業とする原告会社が、こちらもコンピュータプログラムの作成などを業とする被告会社から請け負った「警視庁向けLPシミュレーションソフト」の開発に関して、本訴において原告が被告に対し、主位的に、被告の責めに帰すべき事由により原告の債務が履行不能になったと主張して請け負い代金692万円強の支払いを、予備的に、信義則等に基づき401万円強の支払いを求め、反訴において被告が原告に対し、原告の債務の不完全履行があったと主張して損害金665万円強の支払いを求めた事件。
裁判所は詳細な事実認定を行い、原告の本訴請求は、主位的請求には理由がなく、予備的請求は出来高分の報酬159万円強を限度に理由があるとして予備的請求の一部を認容した。その余の原告の請求および、被告の請求は棄却した。 |
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9月12日 清武元巨人取締役著書の復刊事件 |
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東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
読売新聞東京本社(原告)が、かつて「読売新聞社会部」を著作者とし『会長はなぜ自殺したか―金融腐敗=呪縛の検証』と題して単行本版、文庫版が出版された書籍を、七つ森書館(被告)が復刊したことに関して、著作権侵害に基づく当該書籍の頒布の禁止と688万円の損害賠償金支払い(A事件)、および当該書籍の出版権が被告に存しないことの確認(B事件)を求めた事件。被告は復刊に際し、著作者名を「読売社会部C班」と改め、著作者の書いた「本シリーズにあたってのあとがき」を追加しており、原告の社会部次長であったFと出版契約書を締結していた。
裁判所は、本件書籍は執筆者による職務著作であるとして、原告に著作権があることを認め、出版契約書署名者のFは原告を代理する権限を有しておらず、本件出版契約が原告と被告との間で成立したと認めることはできないとして、被告の発売頒布行為は原告の著作権を侵害するものと判断した。更に、当該書籍への新たなあとがきの付与は著作者人格権・同一性保持権の侵害、著作者名の変更は同・氏名表示権の侵害であるとして、損害賠償金171万円の支払いを命じた。また、被告には出版権は存しないと認めた。 |
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9月26日 TVテロップの“フォント”事件(2) |
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大阪高裁/判決・控訴棄却
フォントベンダーである原告が、テレビ放送等で使用することを目的としたディスプレイフォントを製作して、番組等に使用するには個別の番組ごとの使用許諾および使用料の支払いが必要である旨を示して、これを販売していたところ、使用許諾していないのにこのフォントをテロップ上に使用した番組を多数制作・配給・放送し、更にその内容を収録したDVDを販売されたとして、それらを行ったテレビ朝日並びに映像制作会社に対して、損害賠償金ないし不当利得の返還を求めた事件の控訴審。一審大阪地裁は本件タイプフェイスを排他的に保護すべきものと認めず、被告らによる営業上の利益の侵害を否定、DVDに関する不法行為も、被告らの不当利得も成立しないとして、原告の請求を棄却したが、原告が控訴した。
大阪高裁も原告の主張を認めず、原審の判決を踏襲して控訴を棄却した。 |
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9月29日 ワイナリー案内看板の広告契約事件(2) |
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知財高裁/判決・取消
広告看板製作会社(一審原告)が、ワイン製造販売会社(一審被告)に対して、原告の設置した工作物に被告の看板広告を5年間掲載して料金を支払い、双方に異議がなければ6年目以降も自動更新するという広告掲載契約を交わしたにもかかわらず、契約通りに料金が支払われなかったとして、1005万円余の支払いを求めた事件。一審東京地裁は、被告による債務不履行を認めて、315万円の支払いを命じたが、被告が控訴した。
知財高裁は5点に及ぶ契約の内容と支払い状況を検討して、被告には更なる支払いの義務はないと判断し、一審の被告敗訴部分を取り消し、同部分の原告の請求を棄却した。 |
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9月30日 経営支援ソフトテンプレートの著作物性事件 |
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東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
経営可視化ソフトQPR本体の販売促進用テンプレート制作に関するコンサルティング業務委託契約、および販売インセンティブ契約を、公認会計士である原告と結んでいたソフト制作販売会社である被告が、製品を販売していながら契約に基づく報告および通知をしていなかったとして、原告が被告に対し、著作権に基づき被告製品の販売等差し止めと、損害金4500万円等の支払いを求めた事件。
裁判所は、本件テンプレートが創作性を有するとは認めがたいと判断して著作権侵害性を否定、ロイヤリティ未払い分等の存在を否定して、請求を棄却した。 |
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9月30日 問題集の使用許諾料未払い事件 |
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東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
原告・図書教材制作販売会社は、被告・教育ソフト開発販売会社と、原告が高校入試問題および解答を編集してデータを被告に納品する業務委託契約を交わしたが、納品物の大部分が訴外教材会社製品のコピーだった。被告は訴外会社と交渉し使用料を支払う形で許諾を得て使用した。原告は被告に対して未払いの使用許諾料698万円余を支払うよう求めたが、被告は原告に対する損害賠償債権を自働債権とする相殺の抗弁をした。
裁判所は、訴外教材会社製品のコピーだった本件納品物を債務の本旨に従った履行とは言えないとして、原告は被告に対し損害賠償義務を負うと判断、その額を被告が訴外会社に支払った635万円余とした。そして原告の有する使用許諾料のうち、被告の有するその損害賠償債権635万円余を対当額で相殺した残額の63万円余についてのみ、原告の請求を認めた。 |
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10月15日 「生命の實相」復刻出版事件B(2) |
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知財高裁/判決・控訴棄却
日本教文社(一審原告)が、財団法人である生長の家社会事業団(一審被告)に対し、出版使用許諾契約に基づく著作物利用権の確認を求めた事件。別訴で原告が被告に出版権設定契約を受けたとして確認を求めた事件は、一審請求棄却(平成23年3月4日)、二審控訴棄却(24年1月31日)となっている。一審東京地裁は、別訴との二重訴訟だという被告側の主張は退けたが、本件における被告の契約更新拒絶は有効と判断して、原告の請求を棄却したが、原告側が控訴した。
知財高裁も一審の判断を支持し、別訴判決とは別に本件訴えは適法であるとした上で、本件更新拒絶により本件出版使用許諾契約は終了したものと認め、控訴を棄却した。 |
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10月15日 データベースソフトの著作権確認事件C |
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東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
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10月15日 さくらインターネットへの発信者情報開示請求事件B |
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東京地裁/判決・請求認容
住宅等のトータルリフォーム等を業とする会社(原告)が、「みんなのおすすめ、塗装屋さん」と題するサイトの「口コミランキング」というページの虚偽の記載により不正競争が行われ、又は原告の名誉権が侵害されたとして、損害賠償請求等のため、プロバイダ責任制限法に基づき、サーバーを保有管理するさくらインターネット株式会社(被告)に対して、本件ページが蔵置されたサーバー領域の契約者に係る発信者情報の開示を求めた事件。
裁判所は、本件口コミが原告の名誉権を侵害することは明らかであるとして原告の請求を認容し、被告に対して発信者情報の開示を命じた。 |
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10月17日 類似ログハウスの不正競争事件 |
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東京地裁/判決・請求棄却
建築工事請負業者(原告)が、個人建築業者(被告)の建築し販売するログハウス調木造家屋は、原告の建築し販売する周知商品であるログハウス調木造家屋に類似するから不正競争防止法違反であり、また建築の著作物である原告家屋の著作権を侵害する、更に被告家屋の写真は写真の著作物である原告家屋の写真の著作権を侵害するとして、被告家屋の販売の差し止め、被告パンフレット等の製造販売の差し止めとホームページからの写真の削除、および賠償金264万円の支払い等を求めた事件。
裁判所はまず原告家屋の特別顕著性と周知性を検討し、どちらも認められないとして不競法違反を否定し、次に原告家屋の著作物性を検討してこれを認めず、更に被告原告家屋写真による原告家屋写真の著作権侵害の成否を検討して侵害性を否定、原告の請求を棄却した。 |
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10月21日 リフォーム工事の写真事件 |
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大阪地裁/判決・請求棄却
ソーラーシステム販売会社(原告)が、リフォーム工事会社の代表取締役(被告)に対して、被告は原告の従業員であったとして、(1)競業避止義務違反に基づく損害賠償として被告が第三者から受注した工事の報酬相当額の支払いを求め、(2)被告がウェブサイトに掲載する写真について原告が著作権を有するとして、その掲載差し止めを求めた事件。
裁判所は、原被告間に競業避止義務を伴う雇用契約が成立したとの前提自体を認めず、本件写真についても被告が撮影したものであって職務著作も成立しないとして、原告の請求を棄却した。 |
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10月22日 “自炊”代行事件B(2) |
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知財高裁/判決・控訴棄却(上告)
小説家・漫画家・漫画原作者である一審原告ら7人が、自炊代行業者である一審被告会社2社に対して、被告会社らは電子ファイル化の依頼のあった書籍について、権利者の許諾を受けることなくスキャナーで書籍を読み取って電子ファイルを作成し依頼者に納品しているから、注文を受けた、あるいはこれから受ける書籍には原告らが著作権を有する作品が含まれている可能性が高いとして、被告会社らに電子的方法による複製の差し止めと、各原告への損害賠償金各21万円の支払いを求めた事件。一審東京地方裁判所は、被告会社の、利用者の「私的複製」行為の手足となっていただけだという主張を退け、被告会社の著作権侵害を認めて、複製行為の差し止めと、各被告から各原告へのそれぞれ10万円の賠償金支払いを命じたが、被告側の1社が控訴した。
裁判所は原審の判断を維持し、著作権侵害と差し止めの必要性、10万円の損害額を認めて、控訴を棄却した。 |
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10月23日 通信カラオケ「DAM」不正利用事件 |
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東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
通信カラオケ機器製造販売会社である原告が、機器リース業を営む被告会社およびその役員に対し、被告らが正規の手続きを取らずに飲食店等にカラオケ機器を利用させたことが一般不法行為に、原告がレコード製作者としての権利を有する楽曲を被告らが複製したことが著作隣接権侵害に当たるとして、損害賠償金7750万円余を請求した事件。被告らが情報利用料の支払いを免れるために不正行為(不正開局という)を繰り返していたこと等については原被告間に争いはなく、争点は(1)不正開局による損害額、(2)著作隣接権侵害の有無および額等であった。
裁判所は(1)については原告の請求を認容、(2)については複製による侵害が発生しているとして損害額を算定し、合計4510万円余の支払いを被告らに命じた。 |
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10月29日 退職社員による類似企画出版事件(2) |
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知財高裁/判決・控訴棄却
出版編集会社である一審原告会社とその社員である一審個人原告20人が、その会社の社員およびアルバイトであった一審被告に対して、被告が原告会社を退職後に就業した別会社で企画編集に関わり出版された図鑑類は、原告会社が業務委託されて被告を交えて編集しA書房から刊行された図鑑類と類似するものであると主張し、被告の行為によってA書房の企画が中止になったり、原告会社とA書房との取引が減少したりして原告会社に損害を与え、信用を毀損したとして、被告に対して、原告会社に対する3000万円の、個人原告に対する各50万円の賠償金支払いを請求した事件。一審東京地裁立川支部は原告等の主張を認めず、請求を棄却したが、原告会社と個人原告19名(20名中1名は控訴せず)が控訴した。
知財高裁は一審の判断を維持し、被控訴人の行為は正当な競争原理の範囲を逸脱するものとは言えず、原告らの主張する機密保持義務違反にもあたらない、また個人控訴人らに対する不法行為も成立しないとして、控訴を棄却した。 |
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10月29日 自動車整備関連プログラムのリース契約事件 |
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東京地裁/判決・請求棄却
自動車整備業務における売り上げ管理や顧客管理を行うソフトウェアプログラムの著作権者であるコンピュータシステム開発販売会社(原告)が、当ソフトの使用許諾契約を締結していた相手の総合リース業務会社(被告)に対して、被告には原告に断りなく当ソフトの再リースを行う権限はないのであって、被告が石油会社に再リースを行って収受していた再リース料は不当利得であるとして、不当利得金68万円余の支払を求めた事件。
裁判所は本件使用許諾権設定契約に使用許諾期間に関する記載がなく、再リースの際に被告が原告に支払うべき対価の定めもないことから、原告は被告に対して、被告と顧客との間でリース契約が更新された場合には、あらかじめ被告に対する当ソフトの使用許諾および再リースを承知したものと認めるのが相当であり、被告は適法に石油会社に再リースし再リース料を収受したものであると判断して、請求を棄却した。 |
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10月30日 業務管理ソフトの著作者人格権侵害事件(2) |
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知財高裁/判決・控訴棄却
「BSS―PACK」という統合業務管理パッケージのソフトウェア商品に含まれるプログラムの著作権を有する一審原告会社が、一審被告会社が同プログラムのソースコードの記述を変更し、「ISS―PACK」という名称を付し原告名を表示せずに同ソフトウエア商品を販売し、原告の著作者人格権を侵害したとして、被告に対し、著作者名の表示、日経新聞紙面への謝罪文掲載、160万円の損害賠償金支払い等を請求した事件。一審東京地裁は、原告プログラムの著作物性を認めず、著作者人格権侵害を否定して、原告の請求を棄却したが、原告側が控訴した。
知財高裁は、一審同様、被告による平成18年8月2日以降の製品販売の事実を認めず、原告の主張を排して、控訴を棄却した。 |
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10月30日 「四季の印」類似事件 |
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東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
文具デザイン絵画の展示・販売会社(原告)が、文具関連製品の企画・製造・販売を業とする会社(被告)に対して、被告商品(10の絵柄のシールを含む1セット32枚のシールセット)の製造販売は、原告が著作権を有する9の絵柄の著作物の著作権侵害するものだとして、被告商品の販売の差し止めと廃棄、および損害賠償金800万円の支払いを求めた事件。いずれの絵柄も植物等を相当デフォルメしてデザインしたものだが、原告著作物が単色の絵柄であるのに対して、被告著作物は色彩の素材に黒箔や金箔を使用して作られている。
裁判所は複製の意義や解釈を論じた上で両者の類比を検討し、原告著作物の一「ひさご」について複製性を認め、それ以外は表現上の本質的な特徴部分の再製作ではないとして複製性を否定、被告に対し「ひさご」のシールを含む被告商品の販売の差し止めと廃棄、損害額2万円余の支払いを命じた。 |
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