裁判の記録 line
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2014年
(平成26年)
[7月〜12月]
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7月15日 学校向け収納管理ソフト事件
   大阪地裁/判決・請求棄却
 自治体向けコンピュータソフトウエアの開発販売会社である原告が、被告・尼崎市に対して、原告は原告を著作権者とする高校授業料収納管理ソフトの使用許諾契約を被告と締結し、被告の運営する複数の高校にこれをインストールしたが、被告の債務不履行(使用料不払い)により契約は解除され終了したと主張して、プログラムの使用差し止めや使用料、損害賠償金の支払いを求めた事件。
 裁判所は、契約や支払いの経緯から原被告間で原告の主張するような契約は成立していると認めることはできないと判断、その上で原被告間では代金は備品購入費として一括支払いされ、本件プログラムの複製物については所有権が移転しているという内容の合意があるとして、原告の請求を棄却した。
判例全文
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7月16日 テレビ番組送信サービス事件(韓国TV)
   東京地裁/判決・請求認容
 韓国法人である被告会社が、日本に在住するサービス利用者に対して、セットトップボックスと称する機器を送付するとともに、原告・韓国放送公社が放送するTV番組を受信し電子化してサーバに保存し、それをセットトップボックスに送信することにより、利用者に番組を視聴させ、原告の著作権および著作隣接権を侵害したとして、損害賠償金490万円の支払いを求められた事件。
 被告は口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の書面も提出せずに反論もなかった。裁判所は国際裁判管轄と準拠法について判断した上で、被告による著作権侵害を認めて、請求認容の判決を下した。
判例全文
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7月17日 電子教材の無断複製・翻案事件
   大阪地裁/判決・甲事件請求棄却、
           乙事件本訴請求一部認容、一部棄却、反訴請求棄却
 教育事業運営会社ピーシーアシスト社の株主らは、経営コンサルティング事業等を行うワールドインテック社と、ピーシー社の株式をワールド社に譲渡して完全子会社となる合意をしたが、後日解約を願い出、ワールド社およびその関連会社が教育事業を行うことにピーシー社が異議を唱えない条件で解約が合意された。
 甲事件は、原告ピーシー社が、ワールド社の子会社である教育事業運営会社・株式会社アドバン(被告)に対し、原告の著作権を侵害する行為および原告従業員の違法な引き抜き行為があったとして損害賠償を求めた事件。
 乙事件は原告ワールド社およびアドバンが被告ピーシー社に対し、債務不履行と虚偽の事実告知等による不競法違反行為による損害賠償を求め、反訴としてピーシー社が甲事件と同じ事実に基づく損害賠償請求を両社に対して求めた事件。
 裁判所は株式譲渡の合意および解約の合意に基づく細かい取り決めを分析判断して、ピーシー社の主張を認めず、甲事件においては原告の請求を棄却、乙事件においては本訴の請求を一部認容し、反訴請求を棄却した。
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7月30日 データベースソフトの著作権確認事件B(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 この裁判には前訴がある。前訴(一審2008年大阪地裁、二審2011年知財高裁)において、「中国塗料」から子会社「信友」に出向の際に、中国塗料専務から「船舶情報管理システム」の作成を命じられ、その後、子会社「中国塗料技研」の社長に就任して後も、同システムの開発の続行を命じられて、船舶塗料に関するデータベース、新造船受注システム、塗装仕様発行システム等を含む「船舶情報管理システム」を作成した中国塗料元従業員が、中国塗料に対して、このプログラム著作権が自分に属することの確認、及びこのシステムに対する自分の寄与分割合の確定を求めて提訴したが、一審で請求を棄却・却下され、二審も同様であった。それに対して元従業員が、子会社の「信友」および「中国塗料技研」をも被告に加えて、同様の著作権確認の訴えを起こしたのが今訴訟であり、これはその控訴審である。二審東京地裁は、訴訟物の特定、前訴確定判決の既判断力、前訴からの被告と追加された被告に対する訴えの適法性、について検討し、実質的には本訴は前訴の蒸し返しだとして、請求を却下したが、原告が控訴した。
 知財高裁は、不適法として却下した原審は相当ではないが、原審よりも控訴人に不利益となる判決は許されないからとして、控訴棄却に留めると判決した。
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7月30日 “修理規約”の著作物性事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 千年堂の屋号で時計修理サービス業を営む原告が、銀座櫻風堂の屋号で時計修理サービス業を営む被告に対して、被告がウェブサイトに掲載した文言等は、原告のウェブサイトの文言等を複製又は翻案したものであって、原告の著作権を侵害しているとして、損害賠償金1000万円の支払いとウェブサイト上での文言等の使用禁止を求めた事件。
 裁判所は、原告のウェブサイト文言、トップバナー画像、規約文言、サイト構成それぞれの著作物性を検討し、規約文言にのみ著作物性を認めて、他はありふれた表現に過ぎない等として著作物性を否定、被告に対し5万円の賠償金支払いと、サイト上での規約文言の使用禁止を命じた。
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7月31日 ソフトバンクBBへの発信者情報開示請求事件B
   東京地裁/判決・請求認容
 レコード製作会社である原告らが、氏名不詳者が原告らが送信可能化権を有しているレコードに収録された楽曲を無断で複製してサーバ内に記録して蔵置し、被告ソフトバンクBBの提供するインターネット接続サービスを経由して自動的に送信しうる状態にすることによって、原告らの送信可能化権が侵害されたとして、プロバイダ責任制限法に基づき、被告が保有する発信者情報の開示を求めた事件。
 被告はファイル交換ソフトにおけるIPアドレス検出の不正確性を争点にしたが、裁判所は検出の正確性を肯定し、被告サービスのユーザーである本件契約者が侵害したことは明らかであると判断して、被告に発信者情報の開示を命じた。
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8月6日 パチンコ・スロット用プログラムの著作権侵害事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 遊技場向け電子制御機器製造販売会社(一審原告)が、同業の一審被告会社と原告の従業員であった一審被告甲、同被告乙、同被告丙に対して、被告会社の製品は、原告の営業秘密であるパチンコ・スロット用の呼出ランプを開発製造するための技術情報を甲乙丙らが原告の許可なく持ち出し、それを使用して開発されたものであるとして、著作権侵害等により、被告会社製品の製造販売の差し止め、記憶媒体の廃棄等と、被告らに損害賠償金合計2億円の支払い等を要求した事件。一審東京地裁は、原告の技術情報を営業秘密と認めず、また被告らが原告技術情報を不正に取得したと認めず、被告らの著作権侵害を否定して、原告の請求を棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁も、控訴人の請求はいずれも理由がないとし、これを棄却した一審判決を妥当と判断して控訴を棄却した。
判例全文
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8月7日 ヤフー検索サービス名誉毀損事件
   京都地裁/判決・請求棄却(控訴・控訴棄却)
 インターネット検索サイトで名前を検索すると逮捕歴が表示されて名誉を傷つけられたとして、京都市在住の男性がサイトを運営する検索大手の「ヤフー」に対し、表示の差し止めや約1100万円の損害賠償金支払いを求めた事件。男性は2012年12月に京都府迷惑行為防止条例違反容疑で逮捕され、2013年4月に執行猶予付き有罪判決が確定したが、ヤフーサイトに名前を打ち込んで検索すると、逮捕記事を転載した複数のサイトが表示されるため提訴したもの。
 裁判所は、検索サイトは男性の名前が載ったウエブサイトの存在や所在、記事内容の一部を自動的に示しているだけで、公共の利害に関する事実であり、不法行為は成立しないとして、請求を棄却した。
 同様の訴訟として、グーグルの「サジェスト機能」で名誉を傷つけられたとして表示差し止めを求めた裁判があるが、2013年4月の一審東京地裁では請求一部認容、今年1月の二審東京高裁で一審判決が取消され請求が棄却された事例がある。

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8月11日 ジャニーズタレントの写真無断掲載事件(3)
   最高裁(二小)/判決・上告棄却(確定)
 ジャニーズ事務所所属のアイドルグループの写真を雑誌に無断で掲載されたとして、グループメンバーが版元のアールズ出版をパブリシティ権侵害で訴え、書籍の販売停止、廃棄と、賠償金合計約1億7000万円の支払いを求めた事件。一審東京地裁はパブリシティ権の侵害を認め、出版社に書籍の販売停止、廃棄と、合計約5400万円の支払いを命じ、二審知財高裁も一審の判断を支持して控訴を棄却したがアールズ出版が上告していた。
 最高裁第二小法廷は上告を退ける決定を下し、判決が確定した。

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8月27日 ERPソフトウェアの著作権侵害事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 一審原告ソフトウエア制作会社が、一審被告ソフトウエア制作会社との間のパートナー契約において、一審被告から提供されたソフトウエア中のプログラムにつき、著作権上の瑕疵があるとして、一審被告に対し、債務不履行に基づき、損害金205万5千円の支払いを求め、これに対し一審被告が、中間確認の訴えとして、上記プログラムが他のプログラムの著作権を侵害しないことの確認を求めた事件の控訴審。東京地裁は一審原告の主張を認め、請求を認容、一審被告の中間確認の訴えは却下したが、一審被告が控訴した。
 知財高裁は、原判決のうち一審原告の請求を認容した部分は相当であるとし、中間確認の訴えを却下した部分を民訴法142条のみに基づいて不適法としたのは誤りであったとした。ただ結論においては、中間確認の要件を欠き、確認の訴えの利益も認められないから不適法としたのは相当であるとして、本件控訴は理由がないとして控訴を棄却した。
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8月28日 「Forever21」ファッションショー事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 イベント企画制作会社と運営業者(一審原告ら)は「Forever21」の衣装等を使用したファッションショーを開催したが、NHKが服飾広告代理店を介してそのショーの映像の提供を受け、テレビ番組においてその一部を放送した。一審原告らはNHKとこの代理店に対して、一審原告会社の著作権(公衆送信権)と著作隣接権(放送権)を、また一審原告業者の著作者人格権と実演家人格権を侵害したとして、NHKに943万円余、代理店に110万円の賠償金支払いを請求した事件の控訴審。一審東京地裁は、一審原告らが著作権を主張する諸要素――モデルの化粧や髪形のスタイルから、アクセサリーの選択とコーディネイト、ポーズの振り付け等々――を検討し、いずれも本件映像部分に表れた点に著作物性は認められないとして、侵害を否定、原告らの請求を棄却したが、一審原告らが控訴した。
 知財高裁も控訴人らが著作権を主張する諸要素を検討し、いずれも控訴人らが著作権者であると認められないか、著作物性が認められないと判断して、原判決の結論を維持、控訴を棄却した。
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8月28日 ペット用サプリメントの販促資料事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 医療健康事業会社・株式会社ウェルブリッジ(被告)との間で、小動物用プラセンタサプリメントの販売事業開拓に関する販売協定を結んで、新商品の開発を推進しようとした健康食品事業会社・プラセンタ製薬株式会社(原告)が、被告会社がインターネットのウェブサイトやチラシに載せている写真やデータは原告が有する著作権や独占的利用権を侵害するものであるとして、ネット表示や印刷頒布の差し止めと削除および、損害金300万円の支払いを求めた事件。
 裁判では、協定に基づき原告より被告に交付され被告によって使用された本件各物件の著作物性の有無と、利用許諾の有無が争われたが、裁判所はまず利用許諾の有無について検討し、小動物用プラセンタ等の市場開拓を共同で行なって行くに際し、両社の間では被告会社が本件各物件を自由に利用することは当然の前提だったと認められると判断した。であるならば本件著作物が著作物であったとしても、被告には利用する権限があったとして、原告の請求を棄却した。
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8月29日 漫画「軍鶏」映画化事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 Aを原作者とし、Bを作画者とする「軍鶏」と題する漫画作品がある。Aはこの素材の映画化を望んでいたが、Bとの関係が悪くなったため、かねてより企画を進めていた映画制作会社アートポート(原告)と相談の上で、Aが新たに執筆した脚本を原作とする実写映画「軍鶏」を完成した。Bはこの映画は自らの著作権を侵害するものだとして、上映・頒布の差し止めを求める仮処分を申請、更には著作権確認請求を含む訴訟(前訴)を起こした。前訴は当事者間に和解が成立し、原告およびAは、Bに対して和解金を支払うことになった。原告はAおよびAが代表を務める会社(被告ら)に対し、原告は被告らが繰り返し本件映画の原作者であることを保証したのを信じて映画制作営業活動を行ったため、Bによる提訴を受け意に反する和解を余儀なくされた結果、映画制作にかかわる損害と和解金の損害を被ったとして、各3億2千万余の支払いを求めた事件。
 裁判所は、本件映画に描かれた漫画「軍鶏」固有の表現と共通する部分はAの原作にないもので、制作過程でAに関わりなく追加されたものであること、原告も当初から本件映画は漫画「軍鶏」の翻案ではなくA原作の作品であると認識・主張していたことなどを論じて、被告らに原告の被った損害について賠償する責任はないとして、請求を棄却した。
判例全文
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8月29日 ダイエット本の類似事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 『バンド1本でやせる! 巻くだけダイエット』および『スーパーChihiroバンド  巻くだけダイエット』という書籍を著作したカイロプラクター(原告)が、鍼灸医(被告)が著作し日本文芸社(被告出版社)が出版した『巻くだけでやせる!』および『巻くだけで痛みをとる!』は、原告書籍の著作権および著作者人格権を侵害し、また不正競争行為にあたるとして、被告らに対し、被告書籍の製造販売の差し止めと4546万円強の損害賠償金支払い等を求めた事件。
 裁判所は、表紙画像を含め原告が同一性を有すると主張する部分の創作性を検討し、原告書籍と被告書籍が表現上の創作性のある部分で共通しているとは言えないとして、著作権および著作者人格権の侵害を否定、不正競争行為も否定して、原告の請求を棄却した。
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8月29日 ダイエット本の類似事件B
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 前項と同じく、ダイエット本を著作したカイロプラクターが、内科医(被告)が著作し宝島社(被告出版社)が出版した『お腹が凹む! 巻くだけダイエット』という書籍の発行は、自らの著作した書籍の著名な商品等表示を冒用するものであるとして、不正競争防止法に基づき、製造販売の差し止めと廃棄、および386万円強の損害賠償金支払いを求めた事件。原告書籍・被告書籍とも、付録として折り畳んだバンドがついている。
 裁判所は、「巻くだけダイエット」という表示および折り畳んだバンドを添付する形態の著名性を検討して、著名であったとは認められないとして、原告の請求を棄却した。
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9月4日 “食べログ”の口コミ不正競争事件
   札幌地裁/判決・請求棄却(控訴・控訴棄却、上告・上告不受理、確定)
 「A丼B」という名称を用いて飲食店を経営している原告が、インターネット上に公開されている「食べログ」と称するウェブサイトを運営管理している被告に対して、同サイトのウェブページに掲載している原告の上記名称は著名商品等表示であるから、掲載は不正競争行為に当たり、また人格権に基づく名称権等を侵害するものであるとして、店舗に関する情報の削除と損害賠償金220万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は、本件名称の本件ページへの掲載が不正競争に当たるか、またその掲載が原告の商品等表示と同一のものの使用に当たるかを検討し、いずれの点からも掲載が不正競争に当たるということはできないとして請求を棄却、人格権に基づく名称権等の侵害の主張も理由がないとして棄却した。
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9月11日 警視庁向けシミュレーションソフト事件
   東京地裁/判決・本訴請求一部認容、一部棄却、反訴請求棄却
 コンピュータプログラムの作成などを業とする原告会社が、こちらもコンピュータプログラムの作成などを業とする被告会社から請け負った「警視庁向けLPシミュレーションソフト」の開発に関して、本訴において原告が被告に対し、主位的に、被告の責めに帰すべき事由により原告の債務が履行不能になったと主張して請け負い代金692万円強の支払いを、予備的に、信義則等に基づき401万円強の支払いを求め、反訴において被告が原告に対し、原告の債務の不完全履行があったと主張して損害金665万円強の支払いを求めた事件。
 裁判所は詳細な事実認定を行い、原告の本訴請求は、主位的請求には理由がなく、予備的請求は出来高分の報酬159万円強を限度に理由があるとして予備的請求の一部を認容した。その余の原告の請求および、被告の請求は棄却した。
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9月12日 清武元巨人取締役著書の復刊事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 読売新聞東京本社(原告)が、かつて「読売新聞社会部」を著作者とし『会長はなぜ自殺したか―金融腐敗=呪縛の検証』と題して単行本版、文庫版が出版された書籍を、七つ森書館(被告)が復刊したことに関して、著作権侵害に基づく当該書籍の頒布の禁止と688万円の損害賠償金支払い(A事件)、および当該書籍の出版権が被告に存しないことの確認(B事件)を求めた事件。被告は復刊に際し、著作者名を「読売社会部C班」と改め、著作者の書いた「本シリーズにあたってのあとがき」を追加しており、原告の社会部次長であったFと出版契約書を締結していた。
 裁判所は、本件書籍は執筆者による職務著作であるとして、原告に著作権があることを認め、出版契約書署名者のFは原告を代理する権限を有しておらず、本件出版契約が原告と被告との間で成立したと認めることはできないとして、被告の発売頒布行為は原告の著作権を侵害するものと判断した。更に、当該書籍への新たなあとがきの付与は著作者人格権・同一性保持権の侵害、著作者名の変更は同・氏名表示権の侵害であるとして、損害賠償金171万円の支払いを命じた。また、被告には出版権は存しないと認めた。
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9月26日 TVテロップの“フォント”事件(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却
 フォントベンダーである原告が、テレビ放送等で使用することを目的としたディスプレイフォントを製作して、番組等に使用するには個別の番組ごとの使用許諾および使用料の支払いが必要である旨を示して、これを販売していたところ、使用許諾していないのにこのフォントをテロップ上に使用した番組を多数制作・配給・放送し、更にその内容を収録したDVDを販売されたとして、それらを行ったテレビ朝日並びに映像制作会社に対して、損害賠償金ないし不当利得の返還を求めた事件の控訴審。一審大阪地裁は本件タイプフェイスを排他的に保護すべきものと認めず、被告らによる営業上の利益の侵害を否定、DVDに関する不法行為も、被告らの不当利得も成立しないとして、原告の請求を棄却したが、原告が控訴した。
 大阪高裁も原告の主張を認めず、原審の判決を踏襲して控訴を棄却した。
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9月29日 ワイナリー案内看板の広告契約事件(2)
   知財高裁/判決・取消
 広告看板製作会社(一審原告)が、ワイン製造販売会社(一審被告)に対して、原告の設置した工作物に被告の看板広告を5年間掲載して料金を支払い、双方に異議がなければ6年目以降も自動更新するという広告掲載契約を交わしたにもかかわらず、契約通りに料金が支払われなかったとして、1005万円余の支払いを求めた事件。一審東京地裁は、被告による債務不履行を認めて、315万円の支払いを命じたが、被告が控訴した。
 知財高裁は5点に及ぶ契約の内容と支払い状況を検討して、被告には更なる支払いの義務はないと判断し、一審の被告敗訴部分を取り消し、同部分の原告の請求を棄却した。
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9月30日 経営支援ソフトテンプレートの著作物性事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 経営可視化ソフトQPR本体の販売促進用テンプレート制作に関するコンサルティング業務委託契約、および販売インセンティブ契約を、公認会計士である原告と結んでいたソフト制作販売会社である被告が、製品を販売していながら契約に基づく報告および通知をしていなかったとして、原告が被告に対し、著作権に基づき被告製品の販売等差し止めと、損害金4500万円等の支払いを求めた事件。
 裁判所は、本件テンプレートが創作性を有するとは認めがたいと判断して著作権侵害性を否定、ロイヤリティ未払い分等の存在を否定して、請求を棄却した。
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9月30日 問題集の使用許諾料未払い事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 原告・図書教材制作販売会社は、被告・教育ソフト開発販売会社と、原告が高校入試問題および解答を編集してデータを被告に納品する業務委託契約を交わしたが、納品物の大部分が訴外教材会社製品のコピーだった。被告は訴外会社と交渉し使用料を支払う形で許諾を得て使用した。原告は被告に対して未払いの使用許諾料698万円余を支払うよう求めたが、被告は原告に対する損害賠償債権を自働債権とする相殺の抗弁をした。
 裁判所は、訴外教材会社製品のコピーだった本件納品物を債務の本旨に従った履行とは言えないとして、原告は被告に対し損害賠償義務を負うと判断、その額を被告が訴外会社に支払った635万円余とした。そして原告の有する使用許諾料のうち、被告の有するその損害賠償債権635万円余を対当額で相殺した残額の63万円余についてのみ、原告の請求を認めた。
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10月15日 「生命の實相」復刻出版事件B(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 日本教文社(一審原告)が、財団法人である生長の家社会事業団(一審被告)に対し、出版使用許諾契約に基づく著作物利用権の確認を求めた事件。別訴で原告が被告に出版権設定契約を受けたとして確認を求めた事件は、一審請求棄却(平成23年3月4日)、二審控訴棄却(24年1月31日)となっている。一審東京地裁は、別訴との二重訴訟だという被告側の主張は退けたが、本件における被告の契約更新拒絶は有効と判断して、原告の請求を棄却したが、原告側が控訴した。
 知財高裁も一審の判断を支持し、別訴判決とは別に本件訴えは適法であるとした上で、本件更新拒絶により本件出版使用許諾契約は終了したものと認め、控訴を棄却した。
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10月15日 データベースソフトの著作権確認事件C
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 
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10月15日 さくらインターネットへの発信者情報開示請求事件B
   東京地裁/判決・請求認容
 住宅等のトータルリフォーム等を業とする会社(原告)が、「みんなのおすすめ、塗装屋さん」と題するサイトの「口コミランキング」というページの虚偽の記載により不正競争が行われ、又は原告の名誉権が侵害されたとして、損害賠償請求等のため、プロバイダ責任制限法に基づき、サーバーを保有管理するさくらインターネット株式会社(被告)に対して、本件ページが蔵置されたサーバー領域の契約者に係る発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は、本件口コミが原告の名誉権を侵害することは明らかであるとして原告の請求を認容し、被告に対して発信者情報の開示を命じた。
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10月17日 類似ログハウスの不正競争事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 建築工事請負業者(原告)が、個人建築業者(被告)の建築し販売するログハウス調木造家屋は、原告の建築し販売する周知商品であるログハウス調木造家屋に類似するから不正競争防止法違反であり、また建築の著作物である原告家屋の著作権を侵害する、更に被告家屋の写真は写真の著作物である原告家屋の写真の著作権を侵害するとして、被告家屋の販売の差し止め、被告パンフレット等の製造販売の差し止めとホームページからの写真の削除、および賠償金264万円の支払い等を求めた事件。
 裁判所はまず原告家屋の特別顕著性と周知性を検討し、どちらも認められないとして不競法違反を否定し、次に原告家屋の著作物性を検討してこれを認めず、更に被告原告家屋写真による原告家屋写真の著作権侵害の成否を検討して侵害性を否定、原告の請求を棄却した。
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10月21日 リフォーム工事の写真事件
   大阪地裁/判決・請求棄却
 ソーラーシステム販売会社(原告)が、リフォーム工事会社の代表取締役(被告)に対して、被告は原告の従業員であったとして、(1)競業避止義務違反に基づく損害賠償として被告が第三者から受注した工事の報酬相当額の支払いを求め、(2)被告がウェブサイトに掲載する写真について原告が著作権を有するとして、その掲載差し止めを求めた事件。
 裁判所は、原被告間に競業避止義務を伴う雇用契約が成立したとの前提自体を認めず、本件写真についても被告が撮影したものであって職務著作も成立しないとして、原告の請求を棄却した。
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10月22日 “自炊”代行事件B(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却(上告)
 小説家・漫画家・漫画原作者である一審原告ら7人が、自炊代行業者である一審被告会社2社に対して、被告会社らは電子ファイル化の依頼のあった書籍について、権利者の許諾を受けることなくスキャナーで書籍を読み取って電子ファイルを作成し依頼者に納品しているから、注文を受けた、あるいはこれから受ける書籍には原告らが著作権を有する作品が含まれている可能性が高いとして、被告会社らに電子的方法による複製の差し止めと、各原告への損害賠償金各21万円の支払いを求めた事件。一審東京地方裁判所は、被告会社の、利用者の「私的複製」行為の手足となっていただけだという主張を退け、被告会社の著作権侵害を認めて、複製行為の差し止めと、各被告から各原告へのそれぞれ10万円の賠償金支払いを命じたが、被告側の1社が控訴した。
 裁判所は原審の判断を維持し、著作権侵害と差し止めの必要性、10万円の損害額を認めて、控訴を棄却した。
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10月23日 通信カラオケ「DAM」不正利用事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 通信カラオケ機器製造販売会社である原告が、機器リース業を営む被告会社およびその役員に対し、被告らが正規の手続きを取らずに飲食店等にカラオケ機器を利用させたことが一般不法行為に、原告がレコード製作者としての権利を有する楽曲を被告らが複製したことが著作隣接権侵害に当たるとして、損害賠償金7750万円余を請求した事件。被告らが情報利用料の支払いを免れるために不正行為(不正開局という)を繰り返していたこと等については原被告間に争いはなく、争点は(1)不正開局による損害額、(2)著作隣接権侵害の有無および額等であった。
 裁判所は(1)については原告の請求を認容、(2)については複製による侵害が発生しているとして損害額を算定し、合計4510万円余の支払いを被告らに命じた。
判例全文
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10月29日 退職社員による類似企画出版事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 出版編集会社である一審原告会社とその社員である一審個人原告20人が、その会社の社員およびアルバイトであった一審被告に対して、被告が原告会社を退職後に就業した別会社で企画編集に関わり出版された図鑑類は、原告会社が業務委託されて被告を交えて編集しA書房から刊行された図鑑類と類似するものであると主張し、被告の行為によってA書房の企画が中止になったり、原告会社とA書房との取引が減少したりして原告会社に損害を与え、信用を毀損したとして、被告に対して、原告会社に対する3000万円の、個人原告に対する各50万円の賠償金支払いを請求した事件。一審東京地裁立川支部は原告等の主張を認めず、請求を棄却したが、原告会社と個人原告19名(20名中1名は控訴せず)が控訴した。
 知財高裁は一審の判断を維持し、被控訴人の行為は正当な競争原理の範囲を逸脱するものとは言えず、原告らの主張する機密保持義務違反にもあたらない、また個人控訴人らに対する不法行為も成立しないとして、控訴を棄却した。
判例全文
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10月29日 自動車整備関連プログラムのリース契約事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 自動車整備業務における売り上げ管理や顧客管理を行うソフトウェアプログラムの著作権者であるコンピュータシステム開発販売会社(原告)が、当ソフトの使用許諾契約を締結していた相手の総合リース業務会社(被告)に対して、被告には原告に断りなく当ソフトの再リースを行う権限はないのであって、被告が石油会社に再リースを行って収受していた再リース料は不当利得であるとして、不当利得金68万円余の支払を求めた事件。
 裁判所は本件使用許諾権設定契約に使用許諾期間に関する記載がなく、再リースの際に被告が原告に支払うべき対価の定めもないことから、原告は被告に対して、被告と顧客との間でリース契約が更新された場合には、あらかじめ被告に対する当ソフトの使用許諾および再リースを承知したものと認めるのが相当であり、被告は適法に石油会社に再リースし再リース料を収受したものであると判断して、請求を棄却した。
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10月30日 業務管理ソフトの著作者人格権侵害事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 「BSS―PACK」という統合業務管理パッケージのソフトウェア商品に含まれるプログラムの著作権を有する一審原告会社が、一審被告会社が同プログラムのソースコードの記述を変更し、「ISS―PACK」という名称を付し原告名を表示せずに同ソフトウエア商品を販売し、原告の著作者人格権を侵害したとして、被告に対し、著作者名の表示、日経新聞紙面への謝罪文掲載、160万円の損害賠償金支払い等を請求した事件。一審東京地裁は、原告プログラムの著作物性を認めず、著作者人格権侵害を否定して、原告の請求を棄却したが、原告側が控訴した。
 知財高裁は、一審同様、被告による平成18年8月2日以降の製品販売の事実を認めず、原告の主張を排して、控訴を棄却した。
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10月30日 「四季の印」類似事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 文具デザイン絵画の展示・販売会社(原告)が、文具関連製品の企画・製造・販売を業とする会社(被告)に対して、被告商品(10の絵柄のシールを含む1セット32枚のシールセット)の製造販売は、原告が著作権を有する9の絵柄の著作物の著作権侵害するものだとして、被告商品の販売の差し止めと廃棄、および損害賠償金800万円の支払いを求めた事件。いずれの絵柄も植物等を相当デフォルメしてデザインしたものだが、原告著作物が単色の絵柄であるのに対して、被告著作物は色彩の素材に黒箔や金箔を使用して作られている。
 裁判所は複製の意義や解釈を論じた上で両者の類比を検討し、原告著作物の一「ひさご」について複製性を認め、それ以外は表現上の本質的な特徴部分の再製作ではないとして複製性を否定、被告に対し「ひさご」のシールを含む被告商品の販売の差し止めと廃棄、損害額2万円余の支払いを命じた。
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11月7日 マンション設計図の著作物性事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 建築設計会社(原告)が、かつてあったマンションの建て替えに際して、そのマンションの所有者ら(被告所有者ら)が、被告不動産会社、被告建築設計会社および被告建築設計会社代表と共同して、原告が作成した図面に依拠して本件建物の設計図である被告図面を作成し、原告の有する原告図面の著作権を侵害したとして、被告らに連帯して3285万円の損害金支払いを求めた事件。
 原告図面は、当初原告が依頼されて作成したものであり、被告図面はのちに被告所有者らが建て替えを依頼した被告不動産会社が被告建築設計会社に依頼して作成されたものである。
 裁判所は、「1、2階平面図」等5枚の図面からなる原告図面の著作物性を検討して、図面の創作性とは設計思想の創作性を言うのではなく、作図上の表現としての工夫に表れた創作性を言うのであるとした上で、原告の主張する創作性は設計思想の創作性に過ぎないとして原告図面の著作物性を認めず、請求を棄却した。
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11月13日 美容室予約管理システム「デジサロ」事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 原告会社はコンピュータシステム設計開発会社であり、原告Xはその代表者である。被告会社はコンピュータソフトウェア企画開発会社であり、被告Yはその代表者である。両社は美容室予約システムの開発・運営に関わっていたが思うような成果が出ず、両社間で金銭消費貸借契約、債務弁済契約が結ばれていた。本件は、原告Xが、被告会社に対し消費貸借契約に基づく貸金の返還を、被告Yに対し保証契約に基づく保証債務の履行を求め(甲事件)、原告会社が、被告会社に対し債務弁済契約に基づく弁済金の支払いを、被告Yに対し保証契約に基づく保証債務の履行を求めた(乙事件)ものである。原告Xに対する被告ら連帯して210万円余の、原告会社に対する被告ら連帯して344万円余の支払いを請求した。これに対し被告らは、(1) 甲事件乙事件双方の請求に対し、被告会社のプログラム著作権の侵害による損害賠償請求を、(2) 乙事件の請求に対し、被告会社の業務委託契約に基づく委託金請求権を、それぞれ自働債権とする相殺の抗弁を主張した。
 裁判所は、甲事件に関し、被告会社が損害賠償請求権を有するとは認めず、原告側の請求を認容して、請求通り原告Xに対する210万円余の支払いを命じた。乙事件に関しては、被告らの相殺の主張を一部認め、原告会社に対する238万円余の支払いを命じた。
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11月26日 ビッグローブへの発信者情報開示請求事件
   東京地裁/判決・請求認容
 スーパーファミコン用ゲームのパッチプログラムを制作した制作者(原告)が、氏名不詳者がインターネット上にアップロードしているプログラムは、原告のプログラムの複製物ないし翻案物であり、著作権を侵害しているのは明らかであるから、発信者に対し損害賠償請求権を行使するため、プロバイダ責任制限法に基づき、インターネット接続サービスを提供しているビッグローブ株式会社(被告)に対し、発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は、本件パッチの著作物性を認定し、本件発信者プログラムが本件パッチの複製物に当たると判断して、原告の請求を認容、被告に発信者情報の開示を命じた。
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11月28日 作詞家 vs 歌手 CD売買契約事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 歌手Aが作詞家Bに詞を依頼し、Bが作曲家Cに曲を依頼して楽曲が完成した。Aがスタジオ使用料を支払い、レコーディングをし、マスタリング費用を支払い、CDジャケット撮影代を支払い、CDが完成した。Bが代表を務めるレーベルは出来上がったCDを業者から受け取り、適宜Aへ転送していた。本件は、当レーベル(原告)がA(被告)に対して、(1) 主位的に、原告は被告に当CDを売り渡したと主張して、売買契約に基づき代金144万円の支払いを求め、(2) 予備的に、被告の一連の行為は原告に対する不法行為を構成するとして損害賠償金144万円の支払いを求めるとともに、更に、原告はBから著作権の譲渡を受けているが、被告による本楽曲の歌唱は原告の有する演奏権を侵害すると主張して、歌唱の差し止めを求めたものである。
 裁判所は、原告ないしBと被告Aとの間で話し合いがなく、CD引き渡し時の代金請求もないこと、CD製作代金のほとんどは被告Aが出していることなどから、原告主張の売買契約は明示的にも黙示的にも成立しておらず、本件CDは被告Aの所有に属すると判断して、原告の主張を否定した。演奏権侵害の主張に関しても、Bは被告Aに許諾を与えていたとして原告の主張を否定し、請求を棄却した。
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12月10日 小説「狂人失格」モデル事件(3)
   最高裁(二小)/決定・上告棄却(確定)
 作家の中村うさぎさんが書いた小説の登場人物のモデルとなった大阪在住の女性が、小説で名誉を傷つけられたとして、中村さんと発行元の太田出版に1000万円の損害賠償金支払いを求めた事件。中村さんはインターネット上で著作活動をしているこの女性をモデルにした小説を季刊誌に連載し、「狂人失格」のタイトルで出版した。一審大阪地裁堺支部は女性のネット上の活動を知る人が読めば容易に登場人物をこの女性と同一視できるとして名誉毀損を認め、中村さんに100万円の支払いを命じ、双方が控訴した大阪高裁の控訴審は、一審の判断を支持して双方の控訴を棄却、双方が上告していた。
 最高裁は双方の上告を退ける決定をし、二審判決が確定した。

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12月18日 復元「江戸・明治地図」事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 DVD―ROM版の「三層 江戸明治東京重ね地図」を発行しているマルチメディアコンテンツ開発制作会社である原告が、当該重ね地図に収録されている江戸図および明治図の著作権を有していると主張して、アニメーション映像制作会社(被告会社)とイラスト制作者(被告X)が著作権を有しているとして江戸東京博物館や不動産会社のマンション広告に提供している地図は、本件江戸図および本件明治図を複製ないし翻案したものである等として、被告らに対し、(1) 原告が本件各地図の著作権を有することの確認、(2) 被告ら提供地図の複製等の差し止めおよび廃棄、(3) 損害賠償金合計550万円の支払いを求めた事件。原告会社は、本件江戸図は被告会社から受領した地図データに補正・加工を加えて「江戸東京重ね地図」初版および改訂版の江戸図を作り、更にこれに創作的に手を加えて作った、また本件明治図は独自に創作的に創ったと主張、これに対して被告らは、どちらも被告らの地図を収録、複製したものに過ぎないと主張した。
 裁判所は、本件江戸図については、原告側が制作に際して新たに表現上の創作性を付加したとは認められないとして、その著作権確認主張は理由がないとし、本件明治図については創作的な表現行為があると認めて原告に著作権が帰属すると判断した。そして被告に対し、明治図の使用差し止めおよび廃棄、賠償金60万円の支払いを命じた。
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12月18日 さくらインターネットへの発信者情報開示請求事件C
   東京地裁/判決・請求認容
 インターネットの「ケノン公式ショップ」等において、家庭用脱毛器ケノンを販売している会社(原告)が、ドメイン名をそれぞれ「ケノンasia」「脱毛器徹底比較.com」「脱毛器徹底比較.jp」とする3つのウェブサイトによる不正競争行為によって権利を侵害されたとして、不正行為を行ったものに対する損害賠償請求権等の行使のため、プロバイダー責任制限法に基づき、各ウェブサイトが蔵置されたレンタルサーバーを保有・管理するさくらインターネット(被告)に対し、発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は1番目のドメイン名は不正競争に当たり、2番目3番目のサイトにおける表示行為も不正競争に当たると判断し、原告の権利が侵害されたのは明らかであるとして、原告の請求を認め、被告に発信者の情報を開示するよう命じた。
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12月19日 教科書「新しい日本の歴史」盗用事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 「新しい歴史教科書をつくる会」の理事(元会長)(原告)が、被告らが制作して出版する書籍1及び2は原告が著作権を有する書籍の記述を流用したものであり、原告の翻案権及び著作者人格権を侵害するとして、書籍1の出版・販売・頒布の差し止め・廃棄と、損害賠償金6031万円余の支払いを求めた事件。原告書籍と被告書籍2は検定に合格した教科書であり、被告書籍1は書籍2と内容を同じくする市販本である。被告育鵬社は書籍1と2の出版社、被告扶桑社は育鵬社の親会社で書籍1の発行者であり、かつての原告書籍の出版社、被告B、C、Dは「つくる会」の元関係者で、B、Dは書籍1・2の著作者である。
 原告は被告書籍と共通する原告書籍の47項目において、原告の記述に創作性があり、被告の記述は翻案に当たると主張したが、裁判所は、中学校用歴史教科書においては表現や項目選択の幅がきわめて狭いと述べた上で、被告の記述は、表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分で同一性を有するにすぎないから、翻案に当たるとは言えないとして、原告の請求を棄却した。
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12月24日 江戸文献の編纂事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 『問答集9 大目附問答・町奉行所問合挨拶留・公邊御問合』という書籍における「解題」を執筆した筆者(原告)が、法史学の会報誌に当該書籍の書評を寄稿した執筆者(被告)に対し、当該書評は本件解題の翻案物であり、被告は原告の著作権および著作者人格権を侵害したとして、損害賠償金300万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は、翻案の意義について述べた上で、主張対照表に則って27個所におよぶ双方の記述を検討し、結論として、原告の各記述部分はいずれも思想又はアイデアに過ぎない、あるいは事実それ自体に過ぎないなどとして著作物性を否定し、同一性保持権侵害、氏名表示権侵害も成立しないと判断して、原告の請求を棄却した。
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