判例全文 | ||
【事件名】通信カラオケ「DAM」不正利用事件 【年月日】平成26年10月23日 東京地裁 平成25年(ワ)第19107号 損害賠償請求事件 (口頭弁論終結日 平成26年9月2日) 判決 原告 株式会社第一興商 同訴訟代理人弁護士 龍村全 同 木村圭太 同 川野智弘 被告 株式会社ダイヤ電機 被告 A 被告 B 上記3名訴訟代理人弁護士 赤尾直人 同 岡本敬一郎 主文 1 被告らは、原告に対し、連帯して4510万9438円及びうち4248万5940円に対する平成25年3月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、これを5分し、その2を原告の、その余は被告らの各負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 被告らは、原告に対し、連帯して7752万9114円及びうち7314万1852円に対する平成25年3月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は、原告が、被告株式会社ダイヤ電機(以下「被告会社」という。)とその役員であった被告A(以下「被告A」という。)及び被告B(以下「被告B」という。)に対し、被告らが、(1) 原告との契約関係に基づいて飲食店等に設置すべきカラオケ機器につき正規の手続を執らずに飲食店等にカラオケ機器を利用させたことが一般不法行為に、(2) 原告がレコード製作者としての権利を有する楽曲データを複製したことが著作隣接権(複製権)侵害に当たるとして、不法行為(民法709条、719条1項)に基づく損害賠償金の支払を求めた事案である。 1 争いのない事実等(後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実を含む。) (1) 当事者等 原告は、業務用通信カラオケ機器の製造販売事業等を営む株式会社であり、業務用通信カラオケ機器「DAM」シリーズの提供を行っている。 被告会社は、通信カラオケ機器のリース業等を営む会社である。被告A及び被告Bは、平成20年3月から平成24年1月までを含む期間、被告会社の代表取締役であり、被告Aは被告会社の業務全般、被告Bは通信カラオケ機器のリース業務を統括していた。 (2) 「DAM」シリーズのカラオケ端末の販売 ア 「DAM」シリーズの概要 (ア) 「DAM」シリーズは、専用回線(ADSL等)や電話回線を利用して、専用のサーバーから定期的に新曲の楽曲データを配信するシステムを採用した業務用通信カラオケ端末である。 原告は、「DAM」シリーズのカラオケ端末を販売する際に、購入者との間で当該カラオケ端末によるカラオケサービスの利用に関する契約を締結する。購入者は、当該カラオケ端末を自ら利用し、あるいは、第三者にリースすると同時に再利用許諾することができ、原告に対し情報利用料(月額)を支払う。情報利用料は、専用サーバーからの楽曲データ等の配信を受け、HDD内に保存された楽曲データ等の演奏、再生をするなどカラオケサービス全体を利用することの対価である。 (イ) 「DAM」シリーズのカラオケ端末を利用するためには、利用前に専用サーバーと接続するための通信回線の設定(以下「開局手続」という。)を行う。開局手続を行うと、専用サーバーから当該カラオケ端末に新曲の楽曲データの配信を受けられるとともに、内蔵のHDDに保存されている楽曲データの再生ができるようになる。原告は、開局手続によって初めて利用中のカラオケ端末を把握することが可能になり、これに基づいて情報利用料を請求する。 さらに、「DAM」シリーズには、開局手続をしなくても試用期間(21日間)中は情報利用料の支払をせずにカラオケ端末を利用してサービスを体験できるセットアップ開局という機能があり、試用のために各利用者が1回だけ用いることが予定されている。試用期間経過後に正規の開局手続を経ることなく楽曲を選曲すると警告が表示され、通常のカラオケ端末としての利用はできないから、試用期間経過後に各利用者がカラオケ端末の使用を継続する場合には、開局手続をする必要がある。 (ウ) 原告は、「DAM」シリーズのカラオケ端末でカラオケ楽曲として使用するための音源を独自に作成し、最初に固定して楽曲データとした。これらの楽曲データはカラオケ端末に、あらかじめ複製・保存され、又は配信されて、カラオケ端末におけるカラオケ演奏に供される。 (エ) 被告会社が取り扱っていた「DAM」シリーズのカラオケ端末の機種名とそれぞれの情報利用料(月額)は次のとおりである。
(ア) 原告と被告会社は、平成14年8月21日付けで「通信カラオケ・ネットワーク・システム契約」(甲3。以下「本件契約」という。)を締結した。被告会社は、本件契約に基づいて、原告から購入したカラオケ端末を主に京都市内の利用者にリースし、各カラオケ端末の情報利用料を原告に支払っていた。 本件契約には、@ 原告は、被告会社が設置する保守端末装置の記憶媒体中に既存の楽曲データ等を複製して搭載するとともに、本件契約の締結日以降に新規に制作した楽曲データ等を通信回線を使用して保守端末装置に送信して保守端末装置の記憶媒体中に複製する(5条1項、6条1項)、A 原告は、カラオケ端末の開局日以降に新規に制作した楽曲データ等を通信回線を使用して送信するなどしてカラオケ端末に追加してカラオケ端末の記憶媒体中に保持する(5条2項)、B 原告は被告会社に対し、(a) 保守端末装置の記憶媒体中に複製・蓄積された楽曲データ等を本件契約に基づくサービス再利用の許諾に際してカラオケ端末に複製すること、及び、(b) カラオケ端末の記憶媒体中に複製・蓄積された楽曲データ等を再利用者が同カラオケ端末において再生して使用することを許諾すること(再利用の許諾)について、楽曲データ等の使用を許諾する(8条1項)、C 情報利用料は、各月初日にカラオケ端末を稼働した場合、当該月よりシステム利用の対価として支払う(15条1項)、D 情報利用料は、本サービス再利用の許諾を被告会社に認めること等の対価であり、楽曲データ等の著作権等の対価ではない(15条2項)、E 本件契約が月の途中で終了し、又は被告会社が月の途中で中途解約若しくは利用の一時休止を申し出た場合にも当該月について解約又は休止日以降の日数に応じた情報利用料の減額は行わない(15条3項)旨の規定がある(甲3)。 (イ) 被告会社は、原告が株式会社ワキタ(以下「ワキタ」という。)に対して販売したカラオケ端末(DAM−G30S)をワキタから購入し、主に京都市内の利用者にリースし、被告会社がワキタに、ワキタが原告に、順次各カラオケ端末の情報利用料を支払っていた。 (3) 被告らの行為 ア 不正開局 被告らは、原告又はワキタから購入したカラオケ端末を利用者にリースするに際し、情報利用料の支払を免れるために、本来は試用のために各利用者に一度しか認められていないセットアップ開局と解除の申請を途切れることなく繰り返し(以下、この行為を「本件不正開局」という。)、これにより、情報利用料を支払わずに利用者の利用に供した。 イ 楽曲データの複製 カラオケ端末は正規の開局手続を行わないと新しい楽曲データの配信を受けることができないため、被告らは、繰り返し、全楽曲データ(原告から正規に配信された最新の楽曲データとそれまでに保存されていた過去の全楽曲データを合わせた全曲)を複製・保存したHDDを作成し(以下、この行為を「本件複製」という。)、このHDDを上記アの不正に利用されている各カラオケ端末のHDDと随時交換していた。 (4) 損害の?補 ワキタは、平成25年3月27日、原告に対し、被告会社がワキタから購入したカラオケ端末の本件不正開局による損害の?補として311万2960円を支払った(以下、この金員を「本件既払金」という。)。 2 争点に関する当事者の主張 本件において、本件不正開局及び本件複製について被告らが共同不法行為責任を負うことについては争いがなく、@ 本件不正開局による損害額(争点1)、A 著作隣接権侵害による損害の有無及び額(争点2)、B 弁護士費用の損害額(争点3)が争点である。 (1) 本件不正開局による損害額(争点1)について (原告の主張) ア 平成20年3月から平成24年1月にかけて被告らが本件不正開局による不正利用に供していたカラオケ端末は、別紙「不正利用期間目録」の「機種名」及び「機械番号」欄記載のとおりであり、その不正利用期間は、同「不正利用期間」欄記載のとおりである。 イ DAM−G30Sの情報利用料(月額)は●省略●である。この点に関しては自白が成立している。 ウ 原告は、本件不正開局がなければ、アの不正利用期間に対応する情報利用料を受領できたはずであり、その額は別紙「逸失情報利用料目録」記載のとおり、813万5000円である。 (被告らの主張) ア ワキタから購入した機器であるDAM−G30Sに関しては、原告とワキタとの契約に基づく情報利用料額とすべきであり、その金額は次の計算式により月額●省略●となる。 (計算式) ●省略●×(311万2960円(本件既払金の額)÷409万6000円(被告会社がワキタに支払った損害賠償額)) 被告らは、被告会社がワキタに対して支払っていた情報利用料を認める陳述をしたものであり、原告が受領する情報利用料についての自白は成立していない。 イ 本件不正開局により免れた情報利用料は、ワキタから購入したカラオケ端末であるDAM−G30Sについては合計426万8160円(●省略●)を超えることはなく、その余のカラオケ端末については合計204万1000円である。 (2) 著作隣接権侵害による損害の有無及び額(争点2)について (原告の主張) ア 被告らは、本件不正開局とは別の行為である本件複製により、原告のレコード製作者としての著作隣接権を侵害した。 本件契約は、カラオケ端末の初期設定時に楽曲データを複製することを被告会社に許諾しているが(8条1項)、初期設定時以外の複製は許諾しておらず、情報利用料は初期設定時以外の複製の対価ではない。 したがって、前記(1)の情報利用料に係る逸失利益による損害とは別に本件複製による著作隣接権侵害の損害が発生している。 イ 本件複製ののべ曲数は合計841万5975曲を下らないところ、各楽曲データの複製を許諾する場合の使用料相当額(著作権法114条3項)は、1曲1回当たり7.5円を下らないから、著作隣接権侵害による損害額は少なくとも6311万9812円である。 (被告らの主張) ア 本件不正開局による逸失利益についての損害賠償請求(前記(1))と楽曲データの著作隣接権侵害についての損害賠償請求は重複する同一の内容であるから、両請求は両立しない。 本件契約8条1項は許諾される楽曲データの複製の時期を限定しておらず、むしろ、情報利用料は再利用の許諾の対価であるとされ(15条2項)、また、本件契約は複製の回数を不問としているから(同条3項)、本件複製は本件契約に基づく許諾の範囲に含まれ、その対価である情報利用料の逸失利益の損害賠償(前記(1))により全ての損害は?補される。 イ 楽曲データの使用料を1曲当たり7.5円とする根拠はない。また、複製の単位はHDDごとであるから、曲数を問わずHDDの複製回数を単位に算定すべきであり、1回のHDD複製についての使用料相当額は各機器の情報利用料(月額)と同額と考えられるから、著作隣接権侵害に基づく損害が発生したとしてもその合計額は99万3680円である。 (3) 弁護士費用の損害額(争点3)について (原告の主張) ア 本件不正開局及び本件複製による損害額は合計7125万4812円であり、被告らの不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は500万円を下らない。 イ 損害額の合計額7625万4812円についての平成24年2月1日から平成25年3月27日(本件既払金の支払日)までの遅延損害金は438万7262円である。本件既払金を損害額元本から控除するとその残額は7314万1852円である。 ウ よって、原告は被告に対し、7752万9114円及びうち7314万1852円に対する本件既払金支払日の翌日である平成25年3月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告らの主張) ア 弁護士費用の損害は弁護士の関与を必要不可欠とする訴訟提起の段階に至って発生するから、本件既払金を弁護士費用を除く損害から控除した上で、その金額を基準に弁護士費用を算定すべきである。 イ 被告会社はワキタに対し、被告らの行為についての損害賠償として409万6000円を支払った。原告はワキタから支払を受けた本件既払金(311万2960円)を損害から控除しているが、これによれば、被告会社は409万6000円と311万2960円の差額の98万3040円を二重払いすることになるから、損害から409万6000円を控除すべきである。 第3 当裁判所の判断 1 本件不正開局による損害額(争点1)について (1) 本件不正開局による不正利用期間を検討するに、前記争いのない事実等、証拠(甲1、5、7)及び弁論の全趣旨によれば、セットアップ開局は利用者の試用期間として設けられたものであり、正規のセットアップ開局であれば通常その解除の申請と次のセットアップ開局の申請が同日中に行われることはないことが認められるから、セットアップ開局解除の申請と次のセットアップ開局の申請が同日に行われた場合のセットアップ開局はいずれも不正なものであり、一連の最初のセットアップ開局申請の時点から試用期間として利用する意図はなかったものと推認される。したがって、一連の最初のセットアップ開局申請の時点から一連の最終のセットアップ開局に係る利用期間の終了時までが不正開局による不正利用期間であると認められる。 そして、原告のセンターサーバーに保存されている被告会社が取り扱うカラオケ端末に関するデータのうち、(a) セットアップ開局解除の申請と新たなセットアップ開局の申請が同日に行われているものを抽出し、(b) 最初のセットアップ開局の申請日を不正利用の始期とし、(c) 同じ日に次のセットアップ開局の申請がされなかったセットアップ開局解除の申請の日又はこのような解除の申請がされないまま試用期間が経過した場合はその試用期間経過の日を不正利用の終期として1回の不正利用とすると、平成20年3月から平成24年1月にかけての本件不正開局による不正利用の期間(なお、本件契約15条1項、3項により各月初日に不正利用された場合に1か月と計算される。)は別紙「不正利用期間目録」記載のとおりとなる(甲7〜9。なお、「機種名」欄が「DAM−G30S」のものは全て被告会社がワキタから購入した機器である。)。 (2) 原告は、被告らによる本件不正開局がなければ本件契約に基づき上記不正利用期間ののべ月数に対応する情報利用料を受領できたはずであるから(前記争いのない事実等(2)ア(イ)参照)、被告らによる本件不正開局により、不正利用期間ののべ月数に各機種の情報利用料(月額)を乗じた額の損害を被ったものと認められる。 不正利用に係るカラオケ端末のうちワキタから購入したDAM−G30Sの情報利用料(月額。なお、他の機種については、前記争いのない事実等(2)ア(エ)のとおり。)に関し、被告らは、平成26年4月18日の第5回弁論準備手続期日において、原告が被告会社を含む各契約者との間で定めているDAM−G30Sの情報利用料(月額)が●省略●であるとの訴状記載の事実を認める旨陳述しており、上記事実については自白が成立したものと認められる。被告らは、上記陳述は被告会社がワキタに支払うべき金額に係るものであるなどと主張して自白の成立を争うが、上記自白が真実に反すること及び錯誤に基づくことを認めるに足りる証拠はなく、被告らの主張は採用できない。 したがって、原告は、本件不正開局により、別紙「逸失情報利用料目録」記載のとおり合計813万5000円の損害を被ったと認めることができる。 (3) これに対し、被告らは、本件不正開局による逸失利益は、ワキタから購入したカラオケ端末(DAM−G30S)については合計426万8160円を超えることはなく、その余のカラオケ端末については合計204万1000円であると主張する。しかし、原告の主張を裏付ける原告担当者作成の報告書(甲8、9)は、原告のセンターサーバーに保存されているデータを調査したものであり信用性が高いのに対し、被告ら提出の証拠(乙4〜7)は刑事事件における捜査資料に基づいて示談のために調査をした結果であり、原資料の内容や調査の具体的方法が明らかではないし、調査の目的も異なるから、上記報告書の信用性を左右するには足りない。 2 著作隣接権侵害による損害の有無及び額(争点2)について (1) 損害の有無について 被告らは、本件不正開局による逸失利益についての損害賠償請求と楽曲データの複製権侵害についての損害賠償請求は重複し同一の内容であるから両立せず、また、被告らによる本件複製は正規の開局手続を経ていれば本件契約により許諾される範囲内の行為であるから、前記1の逸失利益のほかに本件複製による損害は発生していないと主張する。 そこで判断するに、本件不正開局と本件複製は別の行為であり、侵害される利益(前者は契約に基づく情報利用料請求権、後者はレコード製作者の著作隣接権)も異なるところ、本件契約は、@ 原告が、保守端末装置に既存の楽曲データを複製して搭載し、新規に制作した楽曲データを送信して保守端末装置の記憶媒体中に複製する(5条1項)、A 原告が、被告会社に対し、(a) 第三者に対する再利用の許諾に際して、保守端末装置の記憶媒体中に複製・蓄積された楽曲データを第三者にリースするカラオケ端末に複製すること(8条1項)、及び、(b) 第三者がカラオケ端末の記憶媒体中に複製された楽曲データをカラオケ端末において再生して使用することを許諾する(8条1項)と定めているが(前記争いのない事実等(2)イ(ア))、第三者にリースする際にカラオケ端末に上記(a)の複製をした後、更に他のHDDに全楽曲データを複製することが本件契約の許諾の範囲に含まれていないのは明らかである。被告らの上記主張は、本件契約の契約条項に反するものであって採用できない。 したがって、本件不正開局による情報利用料に係る逸失利益による損害のほか、本件複製による損害が発生したものと解される。 (2) 使用料相当額 ア 前記前提となる事実、証拠(甲1、5、8〜10)及び弁論の全趣旨によれば、被告らは、本件不正開局による不正利用1回ごとに少なくとも1回は、その時点における各機種の全楽曲データ(最新の楽曲データとそれまでに保存されていた全楽曲データ)を複製・保存したHDDを作成したものであり、不正利用の回数は別紙「不正利用回数目録」のとおりであること、カラオケ端末の楽曲データ数は配信により順次増加するところ、各機種の最初の不正利用の開始時における楽曲データ数は別紙「楽曲データ数目録」記載のとおりであることが認められる。 以上によれば、被告らが著作隣接権(複製権)侵害を行ったのべ曲数は、上記不正利用の回数に各機種の最初の不正利用時の楽曲データ数を乗じた曲数を下回らないものであり、少なくとも合計841万5975曲であると認められる。 したがって、原告は、本件複製により、上記のべ曲数に1曲ごとの楽曲データ複製の使用料相当額を乗じた額の損害を被ったものといえる(著作権法114条3項)。 イ 楽曲データ複製についてのレコード製作者としての著作隣接権の使用料相当額につき、原告は、1曲当たり7.5円であると主張する。 そこで検討するに、証拠(甲11、乙10の1及び2)及び弁論の全趣旨によれば、@ 原告は、業務用通信カラオケシステム用のカラオケ用楽曲データについて複製に関するレコード製作者の著作隣接権に係る使用料を定めていないこと、A 原告と同様の業務用通信カラオケ業を営む株式会社エクシングは、楽曲データの複製及び頒布を行う事業者に対し一定の条件の下に有償にてこれを許諾する場合の対価を1曲当たり7.5円と定めており、被告会社との間でカラオケ用楽曲データの著作隣接権侵害に関する和解をするに際し、上記の単価に基づいて損害金の額を算定したこと、B 一般社団法人日本音楽著作権協会は、著作権を管理する楽曲につき被告会社との間で著作権侵害に関する和解をするに際し使用料相当額を1曲当たり11円として算定したことが認められる。以上の事実に加えて、上記Aの単価には複製に加えて頒布の対価を含むこと、上記Bは楽曲の著作権に関するものであって本件におけるレコード製作者の著作隣接権とは性質を異にすること、被告らによる複製権侵害は本件不正開局に伴って行われたものであり、およそ正規の許諾を受け得る余地がないものであることなど本件の諸事情を考慮すれば、使用料相当額は1曲1回当たり4円と認めるのが相当である。 ウ よって、本件複製による損害は3366万3900円(4円×841万5975曲)であると認められる。 これに対し、被告らは、複製権侵害に基づく損害額は、曲数を問わずHDDの複製1回につき各機種の情報利用料(月額)を乗ずることにより算出すべきであると主張するが、このような計算方法が相当であることの根拠は明らかではなく、被告らの主張は採用できない。 3 弁護士費用の損害額(争点3)について (1) 前記1及び2によれば、本件不正開局及び本件複製による損害は合計4179万8900円であり、一方、原告は、損害の?補として本件既払金311万2960円の支払を受けている。なお、被告らは被告会社がワキタに支払った409万6000円を控除すべきであると主張するが、原告が損害の?補を受けたのは本件既払金の額であるから、被告らの主張は採用できない。以上に加え、本件事案の内容、訴訟経過等一切の事情を考慮すると、被告らの不法行為と相当因果関係があるものとして被告らに負担させるべき弁護士費用の額は380万円であると認められる。 (2) 原告の計算方法に従い本件既払金を上記損害の合計額4559万8900円から控除すると残額は合計4248万5940円となり、また、平成24年2月1日から本件既払金支払日までの遅延損害金は262万3498円である。 4 結論 以上のとおりであるから、原告の請求は、被告らに対し、連帯して4510万9438円及びうち4248万5940円に対する平成25年3月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、この限度で認容し、その余の請求は理由がないからいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官 長谷川浩二 裁判官 清野正彦 裁判官 橋彩 別紙 不正利用期間目録
別紙 逸失情報利用料目録 ・DAM−6400V ●省略●×1か月間=●省略● ・DAM−G30 ●省略●×31か月間=●省略● ・DAM−G30S ●省略●×702か月間=●省略● ・DAM−G70 ●省略●×62か月間=●省略● ・DAM−G128 ●省略●×2か月間=●省略● ・DAM−G50 ●省略●×29か月間=●省略● ・DAM−G50U ●省略●×57か月間=●省略● ・DAM−G100 ●省略●×79か月間=●省略● ・DAM−XG1000 ●省略●×7か月間=●省略● ・DAM−XG1000U ●省略●×10か月間=●省略● ・合計 8、135、000円 別紙 不正利用回数目録 DAM−6400V 1回 DAM−G30 6回 DAM−G30S 96回 DAM−G70 12回 DAM−G128 2回 DAM−G50 5回 DAM−G50U 7回 DAM−G100 9回 DAM−XG1000 1回 DAM−XG1000U 3回 別紙 楽曲データ数目録 DAM−6400V(平成20年9月30日時点) 3万7414曲 DAM−G30及びDAM−G30S(平成20年3月31日時点)4万7145曲 DAM−G70(平成22年2月18日時点) 8万0836曲 DAM−G128(平成23年4月21日時点) 7万5545曲 DAM−G50及びDAM−G50U(平成22年2月26日時点) 7万3143曲 DAM−G100(平成22年3月24日時点) 11万4545曲 DAM−XG1000及びDAM−XG1000U(平成23年6月1日時点) 13万5007曲 (なお、DAM−G30とDAM−G30S、DAM−G50とDAM−G50U、DAM−XG1000とDAM−XG1000Uの楽曲データの曲数はそれぞれ同じであるため、両者を併せて最も古い不正利用行為時の楽曲データの曲数を用いた。) |
日本ユニ著作権センター http://jucc.sakura.ne.jp/ |