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【事件名】“食べログ”の口コミ不正競争事件
【年月日】平成26年9月4日
 札幌地裁 平成25年(ワ)第886号 ホームページ情報削除等請求事件

判決


主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
1 被告は、インターネット上に公開されている「食べログ」と称するウェブサイト(http://tabelog.com)から、別紙店舗目録記載の店舗に係る情報が掲載された部分(http://tabelog.com/hokkaido/*****)を削除せよ。
2 被告は、原告に対し、220万円及びこれに対する平成25年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 本件は、別紙店舗目録記載の店舗(以下「本件店舗」という。)を経営している原告が、インターネット上に公開されている「食べログ」と称するウェブサイト(http://tabelog.com)(以下「本件サイト」という。)を運営管理している被告に対し、本件サイトのウェブページ(http://tabelog.com/hokkaido/*****)(以下「本件ページ」という。)に本件店舗に係る情報(店舗の名称を含む。)を掲載していることについて、不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項2号(以下「本号」という。)所定の不正競争に該当し、又は原告の人格権に由来する名称権等を侵害するものであるなどと主張して、不競法3条1項に基づく差止請求又は名称権等に基づく妨害排除請求として本件ページの削除を求めるとともに、不競法4条又は民法709条に基づく損害賠償及びこれに対する原告が被告に対して本件ページの削除を求めた後の平成25年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。
2 前提事実(争いのない事実のほか、後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1) 原告は、平成**年**月**日会社成立の、宅地建物取引業等を目的とする有限会社であり、「A丼B」という名称(以下「本件名称」という。)を用いて、本件店舗を経営している。
(2) 被告は、平成**年**月**日会社成立の、広告宣伝の情報媒体の販売等を目的とする株式会社であり、本件サイトを運営管理している。
(3) 本件サイトは、全国各地の飲食店に関して、本件サイトに会員登録をした一般ユーザー(以下「ユーザー会員」という。)等が行う、店舗の名称、ジャンル、住所、電話番号、営業時間等の基本情報、店舗に対する評価、店舗や料理の写真に関する投稿(以下、ユーザー会員が本件サイトに投稿する情報を、被告が用いる用語に従い、「口コミ」ということがある。)を集積したウェブサイトである。
 一般消費者は、本件サイトを利用し、飲食したいジャンルや地域から飲食店を検索するなどして、飲食店ごとに掲載されている基本情報や口コミ等の情報を入手し、飲食店選びの参考にすることができる。また、ユーザー会員は、掲載されている飲食店について、口コミを投稿することができるほか、未登録の飲食店については、その飲食店の基本情報を新たに登録することもできる。
 他方、飲食店の側も、本件サイトに店舗会員(以下「店舗会員」という。)として登録すれば、自店舗の基本情報の登録や編集に加え、説明文や写真の掲載を行うなどして、顧客を吸引するための情報を自ら発信することができる(乙5)。
(4) 平成25年3月における本件サイトの月間利用者数は約4546万人であり、月間総ページビュー数は約11億2495万ページである。
 また、同年9月20日時点で、本件サイトに登録されている店舗数は約75万件であり、ユーザー会員による口コミの投稿数は約473万件であった(乙23の7)。
(5) 原告ないし原告の関係者は、平成24年1月16日、ユーザー会員として、本件サイトに本件店舗の基本情報を登録した。これ以降、本件サイト内には本件ページが掲載され続けている。
 原告は、同年7月31日、本件サイトに店舗会員として登録した。
(6) 原告は、平成24年12月頃、本件名称及び原告代表者名を用いて、被告の担当窓口に宛てた電子メールにより、ユーザー会員による本件店舗に関する投稿のうち、食べかけの料理の写真(以下「本件写真」という。)の削除を、次いで、「料理が出てくるまで40分くらい待たされ」た旨の口コミ(以下「本件口コミ」という。)の削除を求めた。
 これを受け、被告は、本件写真を削除した。しかし、本件口コミについては、被告は、原告に対し、本件サイトに掲載されている飲食店側から、投稿されている口コミの内容が事実と異なるとの指摘があった場合、被告では実際の食事内容や店舗の営業内容を把握していないので、投稿者に対し、当該店舗から指摘を受けたことを説明した上で口コミの修正を依頼している旨回答し、被告自らは本件口コミの削除をすることはしなかった。(乙4の1ないし3)
(7) 原告は、被告に対し、平成25年3月25日、本件ページの削除を求めたが、被告はこれに応じなかった。
 また、原告は、被告に対し、同年4月、本件ページの削除及び損害賠償を求める文書を送付したが、被告はこれにも応じなかった。
3 争点
(1) 本件ページへの本件名称の掲載が本号(不競法2条1項2号)所定の不正競争に当たるか(争点1)
ア 本件名称が著名な商品等表示に当たるか
イ 本件ページへの本件名称の掲載が原告の商品等表示と同一のものの使用に当たるか
(2) 本件ページへの本件名称の掲載が原告の人格権に由来する名称権等の侵害に当たるか(争点2)
(3) 原告の損害及びその額(争点3)
(4) 店舗会員の会員規約による制限及び免責(争点4)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(本件ページへの本件名称の掲載が本号(不競法2条1項2号)所定の不正競争に当たるか)
(1) 原告
ア (本件名称が著名な商品等表示に当たるか)
 本件店舗は、本件訴え提起の時点でオープンから約2年6か月が経過し、札幌市及びその周辺地域で広く読まれている雑誌やフリーペーパー等で紹介され、テレビ番組や個人のブログでも取り上げられている。インターネットが普及した現代社会にあっては、一般消費者も全国各地の情報を容易に入手できるから、全国的な知名度を必要とする本号の伝統的理解にとらわれるべきではなく、本件店舗は、北海道内におけるA丼専門店として一定の知名度と信用、評価を得ているから、本件名称は著名であるといえる。
イ (本件ページへの本件名称の掲載が原告の商品等表示と同一のものの使用に当たるか)
 本件サイトは、新聞や雑誌、一般のブログ等とは異なり、掲載された情報に経済的価値を認め、広告価値を最大化して利益を得ることを目的としているから、本件ページを含め、飲食店の情報が掲載されたウェブページは、それぞれが独立して経済的価値を有し、取引の対象となっているということができ、商品性があるので、被告は、本件名称が表示された本件ページを本件サイトに掲載することにより、原告の商品等表示に当たる本件名称を使用しているものである。
(2) 被告
ア (本件名称が著名な商品等表示に当たるか)
 原告の主張は、否認ないし争う。
 本号の「著名」とは、著名表示の保護が広義の混同さえ認められない全く無関係な分野にまで及ぶものであることから、通常の経済活動において、相当の注意を払うことにより、その表示の使用を避けることができる程度に知られていることが必要であり、具体的には全国的に知られているようなものが想定されているところ、本件名称は、著名であるとはいえない。
イ (本件ページへの本件名称の掲載が原告の商品等表示と同一のものの使用に当たるか)
 原告の主張は、否認ないし争う。
 本件ページに掲載されている本件名称は、本件店舗を特定するために表示されているにすぎず、被告が本件店舗や本件名称の出所であることを示すものではなく、被告は、本件名称を自他識別機能又は出所表示機能を果たす態様で使用していない。
 したがって、本件ページへの本件名称の掲載は、商品等表示の使用には当たらない。
2 争点2(本件ページへの本件名称の掲載が原告の人格権に由来する名称権等の侵害に当たるか)
(1) 原告
 個人の氏名や法人、団体の名称は、個人や法人、団体を象徴し、その人格の枢要部分を構成するものであって、法的保護に値するものである。そして、屋号や通称であっても、それが個人や法人、団体を象徴するものであれば、氏名や名称と同様に保護されるべきである。本件名称も、原告を象徴するものであるから、原告は、人格的利益に基づき、本件名称を排他的に利用し、第三者に利用されない権利を有している。したがって、被告が本件サイトの本件ページに本件名称を掲載することは、原告の上記権利を侵害するものである。
 そして、本件サイトは、純粋な営利目的により広範かつ大規模な態様で運営、公開されているから、本件ページを掲載して公開することは、報道に当たる新聞や雑誌及び表現行為である個人のブログへの掲載とは全く性質を異にするものである。また、一般消費者からの情報提供により成り立っているいわゆる口コミサイトの中には口コミの削除要求に応じるものもあるのであって、これらの運営管理者と被告との間に特段の差異はなく、被告は口コミの削除要求に応じることによる影響を過大視して、これを拒否しているのである。実際に、原告には、本件店舗について否定的な内容の口コミが投稿された翌日、来客数が減少する実害が生じている。
 原告には、特定の営業形態を強制されない自由が保障されているところ、被告による本件サイトへの本件名称の掲載が、原告の意に反して続けられることにより、原告は、いつ、いかなる形で本件店舗の情報を発信していくかの自由を害されることになり、原告の営業権が侵害されている。
 飲食店が、利用者から評価を受け、それに応えていくべきことは当然ながらも、原告は、端的に、本件サイトにおいて本件店舗の情報を掲載することを拒絶するものである。
(2) 被告
 原告の主張は、否認ないし争う。
 本件名称は、飲食店の店舗名であり、原告の名称(商号)ではなく、飲食物の提供というサービスを識別するためのマーク(役務標章)である。飲食店の店舗名称は、人格的なものの象徴となるものではなく、単に他の店舗と識別し特定するための機能を有するにすぎず、商品等表示であるから、不競法にその規律をゆだねるべきものであり、名称権は認められない。
 仮に、飲食店の店舗名称に名称権が認められるとしても、一般的に公表されている本件名称を本件サイトに掲載する行為は、名称権の侵害とはなり得ないものである。そして、本件ページに掲載された情報は知的財産権関係法で保護される範囲に含まれず、原告に本件店舗に関する情報一般の掲載を差し止める権利は存在しないから、原告は、本件ページの削除を求めることはできない。さらに、本件ページにはユーザー会員が投稿した多数の口コミも含まれているから、本件ページの削除はユーザー会員の表現の自由に対する過度な制約に当たり、許されるべきではない。
 また、営業権に基づく差止請求権等は、物権侵害、人格権侵害、知的財産権関係法違反以外に認めることはできないか、仮に認められるとしても、極めて限定的な場合にのみ認められるべきである。原告は、営業権が侵害されている事実を具体的に主張しておらず、原告が他のウェブサイトにおいては自ら情報発信を行っていることも考慮すれば、本件差止請求等は認められるべき場合に当たらない。
3 争点3(原告の損害及びその額)
(1) 原告
 原告は、被告が本件サイトに本件ページを掲載し続けたことにより、本件店舗の売上げの減少等少なくとも470万8800円の損害を被っており、そのうち200万円及び弁護士費用20万円を請求する。
(2) 被告
 原告の主張は否認する。
 原告に損害は生じていない。
4 争点4(店舗会員の会員規約による制限及び免責)
(1) 被告
 原告は、本件サイトの店舗会員として登録したもので、店舗会員の会員規約には、本件サイトに掲載された情報に関して、被告は、情報の削除義務を負わず、被告は、店舗会員に対して、法的根拠如何に関わらず、一切の損害賠償義務を負わない旨の規定がある。
(2) 原告
 被告の主張は争う。
 被告が主張する会員規約の規定は、店舗会員の権利を、人格的利益の枢要部分を構成する名称権を含め、無制限、無限定に放棄させるものであるから、公序良俗に反し無効である。
第4 当裁判所の判断
1 争点1(本件ページへの本件名称の掲載が本号(不競法2条1項2号)所定の不正競争に当たるか)について
(1) (本件名称が著名な商品等表示に当たるか)
 本号(不競法2条1項2号)は、自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示(以下「著名商品等表示」という。)と同一又は類似のものを使用する等の行為(以下「著名表示冒用行為」という。)を不正競争としている。
 これに対し、同項1号(以下「1号」という。)は、他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものと同一又は類似の商品等表示を使用する等して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為を不正競争としている。
本号は、1号のように混同を生じさせることを要件としておらず、混同が生じるか否かを問わずに、著名表示冒用行為を不正競争としているのであり、本号の著名商品等表示というためには、1号のように商品等表示が需要者の間に広く認識されているだけでは足りず、当該表示がされた商品等の需要者や営業地域の枠の内外を問わず広く知られ、高い名声、信用、評価等を獲得したものであることを要するというべきである。
 原告は、本件店舗は、札幌市及びその周辺地域で広く読まれている雑誌やフリーペーパー等で紹介されたり、テレビ番組等で取り上げられたりしており、インターネットが普及した現代社会にあっては、一般消費者も全国各地の情報を容易に入手できるから、全国的な知名度を必要とする本号の伝統的理解にとらわれるべきではなく、本件店舗は、北海道内におけるA丼専門店として一定の知名度と信用、評価を得ているから、本件名称は著名であるなどと主張する。
 しかし、原告の上記主張は、特定の地域における特定の商品等の需要者に一定の知名度と信用、評価を得ているにすぎない商品等の表示について、一般消費者がインターネットを通じた情報入手が容易であることを理由として、混同が生じるか否かを問わず、同一又は類似のものを他の商品等に表示する行為や他の地域において表示する行為についても、不正競争に該当し、差止め等ができるとするものであり、本号と1号との相違を無視するもので、他者の営業活動の自由を妨げること甚だしく、かえって事業者間の公正な競争や国民経済の健全な発展(不競法1条)を妨げることになるのであって、到底採用できないものであり、それ自体失当である。
 そして、本件名称については、札幌市及びその周辺地域で発行されている雑誌やフリーペーパー等に何回か掲載されたり、テレビ番組で紹介されたりした(甲6ないし9、10の4)というにとどまり、原告の営業地域及びその周辺のA丼専門店等飲食店の需要者の枠を超えて広く知られ、高い名声、信用、評価等を獲得していると認めるに足りる証拠はない。
 したがって、本件名称は、著名商品等表示に該当すると認めることはできない。
(2) (本件ページへの本件名称の掲載が原告の商品等表示と同一のものの使用に当たるか)
 本号にいう、自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一又は類似のものを使用したというためには、単に他人の商品等表示(類似のものを含む。)が何らかの形で自己の商品等に付されていれば足りるというものではなく、それが商品等の出所を表示し、自他の商品等を識別する機能を有する態様で用いられていることを要するというべきである。
 これを本件についてみると、本件サイトでは、そのユーザーヘルプ内に、本件サイトの概要として、飲食店で実際に食事した客が提供した主観的な感想や評価、写真等を公開し、飲食店の選択の際に参考となるレストランガイドとなることを目的としたウェブサイトである旨が記載されている(乙1)。また、本件ページにおいても、写真欄には「写真はユーザーが食事をした当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。」との断り書きが記載されており、口コミ欄にも「これらの口コミは、ユーザーがお食事された当時の内容に基づく主観的なご意見・ご感想です。あくまでも一つの参考としてご活用ください。」との断り書きが記載されている(乙6)。そして、本件サイトを利用する者は、上記各記載のほか、本件サイトの体裁自体によっても、本件サイトが各地の飲食店の基本情報や口コミを集積し、一般消費者の利用に供するウェブサイトであることを、容易に認識することができる(甲2、乙6、16、23の7)。
 そうすると、被告が本件サイト内に本件ページを掲載して一般に公開することにより行っている本件名称を表示する行為は、ユーザー会員が本件店舗の評価等に関する口コミを投稿し、一般消費者が本件サイトを利用するに当たって、本件店舗を本件サイト内において特定したり、本件ページのガイドや口コミが本件店舗に関するものであることを示したりするために用いているもので、本件サイトの内容の一部を構成するにすぎないものといえる。
 したがって、被告による本件ページへの本件名称の掲載は、被告の商品等の出所を表示したり、被告の商品等を識別したりする機能を有する態様で本件名称を使用しているということはできず、被告が自己の商品等表示として原告の商品等表示と同一又は類似のものを使用していると認めることはできない。
(3) 以上のとおり、いずれの点からしても、被告が本件サイト内の本件ページに本件名称を表示する行為が、本号所定の不正競争に当たるということはできず、原告の本号及び不競法3条1項に基づく差止請求、並びに本号及び不競法4条に基づく損害賠償請求は、いずれも理由がない。
2 争点2(本件ページへの本件名称の掲載が原告の人格権に由来する名称権等の侵害に当たるか)について
(1) 氏名は、その個人の人格の象徴であり、人格権の一内容を構成するものというべきであるから、人は、その氏名を他人に冒用されない権利を有する(最高裁昭和63年2月16日第三小法廷判決・民集42巻2号27頁参照)ところ、これを違法に侵害された者は、加害者に対し、損害賠償を求めることができるほか、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることもできると解される(最高裁昭和61年6月11日大法廷判決・民集40巻4号872頁参照)。
 そして、法人も人格的利益を有しており、その名称がその法人を象徴するものとして保護されるべきことは、個人の氏名と同様であるから、法人は、その名称を他の法人等に冒用されない権利を有し、これを違法に侵害されたときは、加害者に対し、侵害行為の差止めや損害賠償を求めることができると解すべきである。
(2) しかし、本件についてみると、法人の名称ではない店舗の名称について個人の氏名と同様の保護が与えられるべきか否かはともかくとして、被告は、本件ページを掲載することにより本件名称を表示していることが認められるものの、その態様は、前記1(2)のとおり、本件店舗を本件サイト内において特定したり、本件ページのガイドや口コミが本件店舗に関するものであることを示したりするために本件名称を表示しているものにすぎず、本件名称を用いて、被告が本件店舗を営業しているかのように装ったり、原告が本件サイトを運営管理しているかのように装ったりしているわけではなく、本件店舗や本件サイトの運営主体の特定や識別を困難にするものではないから、冒用には当たらない。
 そうすると、仮に、本件名称が原告を象徴するものであって、原告が本件名称を冒用されない権利を有しているとしても、被告による本件名称を表示した本件ページの掲載行為は、本件名称の冒用ではなく、原告の上記権利を侵害するものではないし、他に原告の法的に保護された何らかの権利ないし利益を違法に侵害したと認めるべき根拠もない。
 なお、原告は、本件サイトは、純粋な営利目的により広範かつ大規模な態様で運営、公開されているから、本件ページを掲載して公開することは、報道に当たる新聞や雑誌及び表現行為である個人のブログへの掲載とは全く性質を異にする旨、また、一般消費者からの情報提供により成り立っているいわゆる口コミサイトの中には、口コミの削除要求に応じるものもあり、これらの運営管理者と被告との間に特段の差異はなく、被告は口コミの削除要求に応じることによる影響を過大視している旨主張する。
 しかし、ウェブサイトの規模や影響力の大小、本件サイトと他の類似のウェブサイトとの間の削除要求に対する対処の相違等は、被告による本件ページの掲載行為が原告の本件名称に関する権利等を侵害するものであるか否かを左右するものではなく、原告の上記主張も理由がない。
(3) また、原告は、原告には特定の営業形態を強制されない自由が保障されているところ、被告による本件サイトへの本件名称の掲載が原告の意に反して続けられることにより、原告は、いつ、いかなる形で本件店舗の情報を発信していくかの自由を害され、原告の営業権が侵害されている旨主張する。
 しかし、原告の主張自体その趣旨が明らかではなく、本件サイトに本件ページが掲載され、本件店舗の情報が発信されたからといって、飲食店としての本件店舗の営業内容が変更されるものではないし、営業形態が強制されるとすることについて具体的に主張するものでもないから、原告の上記主張も理由がない。
(4) そのほか、原告は、飲食店が、利用者から評価を受け、それに応えていくべきことは当然ながらも、端的に、本件サイトにおいて本件店舗の情報を掲載することを拒絶するものであるとも主張する。
 しかし、原告は、法人であり、会社であって、広く一般人を対象にして飲食店営業を行っているのであるから、個人と同様の自己に関する情報をコントロールする権利を有するものではない。そして、上記のような原告の要求を認めれば、原告に本件店舗に関する情報が掲載される媒体を選択し、原告が望まない場合にはこれを拒絶する自由を与えることになるのであり、その反面として、他人の表現行為や得られる情報が恣意的に制限されることになってしまうのであって、到底容認できるものではなく、原告の上記主張も理由がない。
(5) 以上のとおり、原告の名称権等の侵害を理由とする差止請求及び損害賠償請求は、いずれも理由がない。
3 結論
 よって、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。

札幌地方裁判所民事第3部
 裁判長裁判官 長谷川恭弘
 裁判官 安江一平
 裁判官 山下智史

別紙は、添付省略
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