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【事件名】データベースソフトの著作権確認事件C
【年月日】平成26年10月15日
 東京地裁 平成25年(ワ)第9989号 著作物使用差止等請求事件
 (口頭弁論終結日 平成26年5月19日)

判決
原告 A@
被告 中国塗料株式会社
同訴訟代理人弁護士 小山雅男


主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求の趣旨及び原因等
1 請求の趣旨及び原因は、別紙訴状(写し)のとおりである。
2 被告の請求の趣旨に対する答弁、請求原因に対する認否及び被告の主張は、別紙答弁書(写し)のとおりである。
第2 当裁判所の判断
1 原告の請求内容は必ずしも判然としないが、原告は、原告が被告の子会社である信友株式会社(以下「信友」という。なお、信友は、平成12年10月2日、大竹明新化学株式会社に吸収合併された。)及び中国塗料技研株式会社(以下「中国塗料技研」という。)に出向中に作成したプログラムの著作物である「船舶情報管理システム」(以下「本件システム」という。)について、信友や中国塗料技研の「発意」は無効であり、職務著作(著作権法15条2項)は成立せず、本件システムの著作権は原告に帰属すると主張して、本件システムの著作権に基づき、各請求をするものと解される(なお、当庁は、民事訴訟法13条2項、12条の規定により、本件につき管轄権を有する。)。
2 前提となる事実
 末尾に掲げた証拠等によれば、以下の事実が認められる。
(1) 原告は、昭和37年4月、被告に入社し、昭和60年、被告の子会社である信友に出向し、昭和61年6月から平成4年5月21日まで同社の取締役であった。原告は、平成4年6月、中国塗料技研に出向し、平成4年5月21日から平成5年1月30日まで同社の代表取締役であった。原告は、平成5年1月、中国塗料技研を退職した(甲2・30頁及び31頁、甲6、7、14の1・2、15、乙1)。
(2) 原告は、信友及び中国塗料技研に出向中に、本件システムの開発に従事した(甲2・31頁)。
(3) 1次訴訟
ア 1次訴訟第1審判決
 原告は、本件被告を被告として、本件システムの著作権確認及び本件システムに対する原告の開発寄与分の確認を求める訴え(大阪地裁平成19年(ワ)第11502号)を、大阪地方裁判所に提起した。大阪地方裁判所は、平成20年7月22日、概要、下記(ア)及び(イ)の理由により、原告の著作権確認請求を棄却し、開発寄与分確認の訴えを却下する判決(以下「1次訴訟第1審判決」という。)をした(甲2)。
(ア) 原告の本件システムの開発作成業務は、当初は信友の業務として、その後は中国塗料技研の業務として職務上行われたものであることが明らかであって、本件システムは、著作権法15条2項にいう「その法人等の業務に従事する者が職務上作成」したものである。
(イ) 本件システムの作成が、信友及び中国塗料技研(の代表者)の黙示の発意に基づくものであることを優に推認することができる。この推認を覆すに足りる証拠はない。
イ 1次訴訟第2審判決
 原告は控訴(知財高裁平成20年(ネ)第10064号)を提起し、控訴審において、原告が被告又は信友及び中国塗料技研との共同著作権を有することの確認を求める予備的請求を追加したが、知的財産高等裁判所は、平成22年12月22日、口頭弁論を終結し、平成23年3月15日、概要、下記(ア)ないし(ウ)の理由により、原告の控訴を棄却し、予備的請求を棄却する判決をした(甲3)。
(ア) 本件システムは、職務著作(著作権法15条2項)に該当し、その著作者は信友又は中国塗料技研であると認められるから、原告が作成した部分があるとしても、その著作権を有するものではない。
(イ) 信友においても、「新造船受注情報システム」が会社としての事業計画とされていたのであるから、本件システムの作成は、法人としての信友の発意に基づくものであると認められる。また、その後の本件システムの作成は、法人としての中国塗料技研の発意に基づくものと認められる。
(ウ) 本件システムの開発が、原告が在籍中の出向元である被告の指示により開始され、被告の完全子会社である信友及び中国塗料技研がその意向を受けて法人として本件システムの開発を発意しているのであるから、両社において当該開発業務に従事する原告が、その職務上作成した本件システムのプログラムの著作者は、その作成時における契約や勤務規則等の別段の定めがない限り、法人である信友又は中国塗料技研となるものと認められ(著作権法15条2項)、上記別段の定めについての主張立証はないのであるから、結局、本件システムのプログラムの著作者は、信友又は中国塗料技研、あるいはその双方であると認めるべきである。
ウ 原告は上告(最高裁平成23年(オ)第1066号)を提起するとともに上告受理の申立て(同23年(受)第1203号)をしたが、最高裁判所は、平成24年2月28日、原告の上告を棄却し、本件を上告審として受理しない旨の決定をした(甲1。以下、これら一連の訴訟を「1次訴訟」といい、原告が本件システムの著作権を有しないことを被告との間で既判力をもって確定した1次訴訟第1審判決を「1次訴訟確定判決」という。)。
3 上記によれば、原告と被告との間において、1次訴訟の事実審の口頭弁論終結時である平成22年12月22日(以下「基準時」という。)時点で、原告が本件システムの著作権を有しないことは既判力をもって確定している。
 原告は、信友又は中国塗料技研の「発意」は、原告が信友の取締役又は中国塗料技研の代表取締役として行ったもので、原告と信友・中国塗料技研間の自己取引に当たるところ、基準時後に中国塗料技研は自己取引の承認を拒絶したから、発意は無効であることが確定した、などと主張するが、このような主張は基準時前に主張することができた主張であるから、基準時後に新たに生じた事情の主張に当たらない。
4 そうすると、原告が本件システムの著作権を有しないことは1次訴訟確定判決により確定しており、基準時後の事情の変更も認められないから、原告の請求は全て理由がないことに帰する。
 よって、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第29部
 裁判長裁判官 嶋末和秀
 裁判官 鈴木千帆
 裁判官 西村康夫
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