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【事件名】さくらインターネットへの発信者情報開示請求事件C
【年月日】平成26年12月18日
 東京地裁 平成26年(ワ)第18199号 発信者情報開示請求事件
 (口頭弁論の終結の日 平成26年11月18日)

判決
原告 株式会社エムロック
同訴訟代理人弁護士 神田知宏
被告 株式会社さくらインターネット
同訴訟代理人弁護士 小栗久典


主文
 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
 主文同旨
第2 事案の概要
 本件は、インターネット上のウェブページにおける不正競争によって権利を侵害されたとする原告が、不正競争防止法2条1項12号又は同項13号の不正競争を行った者に対する損害賠償請求権等の行使のために、各ウェブページが蔵置されたレンタルサーバーを保有、管理する被告に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき、発信者情報(氏名又は名称、住所及び電子メールアドレス)の開示を求める事案である。
1 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる事実)
(1) 原告は、インターネットの「ケノン公式ショップ」(http://以下省略)等において、家庭用脱毛器に「ケノン」との特定商品表示(以下「原告表示」という。)を付してこれを販売している(以下、この家庭用脱毛器を「原告商品」という。)。
(甲3の1の1ないし3)
(2) 被告は、インターネット上に公開されている別紙ウェブページ目録記載1ないし3の各閲覧用URLをトップページとする各ウェブサイト(以下、それぞれ番号に従い「本件サイト1」のようにいい、併せて「本件各サイト」という。)のウェブページが蔵置されたレンタルサーバー(以下「本件レンタルサーバー」という。)を保有、管理し、その契約者情報として、本件各サイトのウェブページが蔵置されたサーバー領域利用者である各契約者(以下、各契約者を「本件サイト1の契約者」のようにいう。)の住所、氏名又は名称、メールアドレス等の情報を保有している。
(3) 本件各サイトのトップページ等のURLにおいて使用されているドメイン名及び内容は、次のとおりである。
ア 本件サイト1
(ア) 本件サイト1のトップページのURLにおいて使用されているドメイン名は、「ケノン.asia」(以下「本件ドメイン名」という。)であり、平成25年2月15日における登録者は「LAVIE Inc.」で、現在の登録者は「<以下略>」であるが、登録者IDは同一である。
(甲2の1の1ないし3、7)
(イ) 本件サイト1のトップページは、冒頭に、「あの超人気脱毛器を中心に脱毛性能を徹底検証してみました」、「ケノンと同等の性能で3万円安い脱毛器発見か!?」と記載され、その下に、「ケノンのスゴイ点」として、「@圧倒的な販売実績」、「A実績に裏付けされた性能」、
「B長年の経歴からの完成度」との見出しのもとに、それぞれを説明する文章が記載され、「ケノン唯一の弱点」として、「あえて難点をあげるとすれば価格が7万円超というその価格でしょうか。」と記載された後、「性能だけで見るとケノンと同等で2万円以上安い家庭用脱毛器があるんです。」との記載に続き、訴外株式会社LA VIE(以下「訴外会社」という。)が販売する家庭用脱毛器(商品名「ラヴィ」。以下「訴外会社商品」という。)や他の家庭用脱毛器と原告商品との価格や性能等を比較する記載が続き、その間、訴外会社商品について、所々に、「特に注目すべき点は、ケノンと同等の脱毛性能がありながら、価格が3万円も安いということです。」、「つまり、ラヴィの方がおまけを込にしても13、000円ぐらい安いということになりますね。」、「確かに脱毛性能に関して、ラヴィとケノンが同等と言うことはわかりました。」などの記載が挿入され、終わり近くに、「結局、、、」との見出しのもと、「断然ラヴィ。なぜなら性能が「ほぼ」同じなのに安いから。」、「家庭用選ぶなら、性能的にケノンとラヴィの二択だとは思いますが、質実剛健な感じのラヴィをオススメします。」などと記載され、末尾に、「>>>ラヴィの販売サイトをチェック」と訴外会社商品の販売サイトへのハイパーリンクが張られている。
(甲1の1、3の2の1及び2)
イ 本件サイト2
(ア) 本件サイト2のトップページ等のURLにおいて使用されているドメイン名は「脱毛器徹底比較.com」であり、このドメイン名の登録者は「LAVIE Inc.」である。
(甲2の2の1及び2)
(イ) 本件サイト2のトップページには、冒頭に、「《脱毛器徹底比較》2013年みんなが選ぶナンバーワン脱毛器」、「脱毛器徹底比較!!」との記載があり、それに続き「コスパNo.1脱毛器はどれ??」などと記載された後、「人気の脱毛器」との見出しのもとに、訴外会社商品や原告商品の紹介がされ、それぞれについて、価格等とともに記載され、評価を表す「レビュースコア」として、訴外会社商品が3.7ポイントであり、原告商品が3.3ポイントであると表示されているほか、訴外会社商品について、「78ジュールの出力は業界ナンバー1」と記載されている。
 「おすすめ脱毛器2013」のページには、家庭用脱毛器としての「パワー」に関し、訴外会社商品は78ジュールであり、原告商品は52ジュールであると記載されている。
 「人気脱毛器ランキング」のページには、訴外会社商品や原告商品のそれぞれについて、「みんなの評価」の見出しのもと、「パワー」、「痛みの少なさ」、「コスト」、「デザイン」、「使用感」、「サポート」の6項目についてのポイント数がこれを表す星の数とともに表示され、いわゆる口コミとしての評価が記載されている。訴外会社商品に関する「みんなの評価」の末尾には、総合評価で1番高い3.7ポイントであるとの表示に加え、「このパワー・機能でこの値段は超破格。王者ケノンとの違いは細かな使用感ぐらいなので、予算を抑えたいなら間違いなくラヴィ。とにかく総合力が高いので、迷ったらコレ。」と記載され、原告商品に関する「みんなの評価」の末尾には、原告商品が総合評価で2番目に高い3.3ポイントであるとの表示に加え、「脱毛パワー、使い勝手、デザインと三拍子揃ってるのはさすがの一言。評判も高いので、金額的に折り合いつけば文句なくケノン。」と記載されている。また、「みんなのレビュー」の見出しのもと、星の数で表示されたレビュースコアとともに、訴外会社商品については「痛くないので高い出力に挑戦!」等、ケノンについては「お肌にも優しく、安心して使えます」等のタイトルを付されたレビュー(コメント)が表示されている。
 本件サイト2についての説明が記載されたページには、レビュー集計について、「ランキングは採点フォームからの一般投票を元に集計しています。」と記載され、「下記6項目を5点満点で採点していただきます。」として「パワー」等の6項目が挙げられている。
 口コミを入力する「アンケート」のページには、採点フォームとして、「パワー」等の6項目について星の数を入力し、コメントを入力する等の欄はあるが、コメントのタイトルを入力する欄はない。
(甲1の2の1ないし4、4)
ウ 本件サイト3
(ア) 本件サイト3のトップページ等のURLにおいて使用されているドメイン名は「脱毛器徹底比較.jp」であり、このドメイン名の登録者は「株式会社LAVIE」である。
(甲2の3の1及び2)
(イ) 本件サイト3のトップページには、冒頭に、「人気の家庭用脱毛器ランキング」、「2012年人気の家庭用脱毛器ランキング」との記載があり、「家庭用脱毛器2013年人気TOP3」との見出しのもとに、家庭用脱毛器それぞれの「パワー」、「照射回数」、「照射面積」、「価格」、「痛み」の5項目についての評価が正五角形のグラフにより示されて、各商品の公式ホームページへのハイパーリンクが張られているが、1位が訴外会社商品で、2位が原告商品であるとされている。訴外会社商品に関する説明として、「業界1の高出力&広面積で、効率のいい脱毛が可能に!」、「業界初・業界トップに挑戦した高性能の脱毛器が、家庭用脱毛器ランキング堂々の1位に輝きました!注目は、業界初の高出力である78ジュールを誇ること。通常は20ジュール程度ですが、4連射することにより刺激を分散し、お肌への負担を最小限にまで抑えることに成功しました。」と記載され、「人気脱毛器の比較一覧」の見出しのもとに、家庭用脱毛器の比較表が掲載されているが、そのうちの「パワー」の項目において、訴外会社商品は「78ジュール」、原告商品は「52ジュール」と記載されている。
 訴外会社商品を紹介するページにおいては、「ラヴィは、自宅でできる脱毛器の中でも業界ナンバー1の出力である78ジュールを誇ります。」と記載され、「ラヴィの口コミ」との見出しのもとに、「痛くないので高い出力に挑戦!」等の5件の口コミが掲載されているが、そのうち少なくとも4件の内容は、本件サイト2の「人気脱毛器ランキング」のページの訴外会社商品に関する「みんなのレビュー」に記載されているものと同一である。
 原告商品を紹介するページには、「ケノンの口コミ」との見出しのもと、「お肌にも優しく、安心して使えます」等の5件の口コミが掲載されているが、そのうち少なくとも4件の内容は、本件サイト2の「人気脱毛器ランキング」のページの原告商品に関する「みんなのレビュー」に記載されているものと同一である。
(甲1の3の1ないし3)
2 争点
 本件の主たる争点は、本件各サイトに係る情報によって原告の権利が侵害されたことが明らかであるといえるか否かであり、具体的には次の点である。
(1) 本件ドメイン名を使用する行為が不正競争防止法2条1項12号の不正競争に当たるか否か、特に、本件ドメイン名が原告表示と同一又は類似するか否か、また、本件サイト1において、本件ドメイン名が図利加害目的で使用されているか否か(争点1)
(2) 本件サイト2及び3に訴外会社商品の出力に関する表示をする行為が不正競争防止法2条1項13号の不正競争に当たるか否か、特に本件サイト2及び3において、商品の広告にその商品の品質について誤認させるような表示をしているか否か(争点2)
3 争点に関する当事者の主張
(1) 争点1(本件ドメイン名を使用する行為が不正競争防止法2条1項12号の不正競争に当たるか否か)について
(原告)
 本件ドメイン名は、不正競争防止法2条1項12号の特定商品等表示たる原告表示に類似する。
 本件ドメイン名の登録者は訴外会社であり、本件サイト1は、原告商品を紹介した後に訴外会社商品の販売サイトへ誘導するものであるから、本件サイト1の契約者が本件ドメイン名を使用する目的は、原告商品の周知性、顧客吸引力に乗じて訴外会社商品を販売することにあり、これは、「不正の利益を得る目的」又は「他人に損害を加える目的」に当たる。
(被告)
 本件ドメイン名が原告表示と同一又は類似するとはいえない。
 本件ドメイン名の登録者が訴外会社であることの証拠はないし、現在の本件ドメイン名の登録者である「<以下略>」と「LAVIE Inc.」や訴外会社との関係は明らかでないし、同人が個人として原告商品と訴外会社商品とを比較するサイトを運営しているとしても、直ちに図利加害目的があるとはいえないのであって、本件サイト1の契約者が「不正の利益を得る目的」や「他人に損害を加える目的」を有するかどうかは明らかでない。
(2) 争点2(本件サイト2及び3に訴外会社商品の出力に関する表示をする行為が不正競争防止法2条1項13号の不正競争に当たるか否か)について
(原告)
ア 本件サイト2について
 本件サイト2は、訴外会社商品の広告で、訴外会社商品について「78ジュールの出力は業界ナンバー1」とし、原告商品は52ジュールであると記載されているが、原告は原告商品の出力ジュール数を公表しておらず、原告商品が52ジュールであるとする根拠は不明であるし、同一条件で測定した結果(甲5)によれば、原告商品が訴外会社商品より1.4倍も出力ジュール数が高いから、訴外会社商品についての上記記載は、虚偽の表示であって、その品質を誤認させるような表示に当たる。なお、本件サイト2のドメイン名の登録者は訴外会社である。
イ 本件サイト3について
 本件サイト3は、訴外会社商品の広告で、訴外会社商品について「業界1の高出力」、「業界初の高出力である78ジュールを誇ること。通常は20ジュール程度」、「業界ナンバー1の出力である78ジュールを誇ります」とし、原告商品は52ジュールであると記載しているが、前記アと同様に、訴外会社商品についての上記記載は、虚偽の表示であって、その品質を誤認させるような表示に当たる。なお、本件サイト3のドメイン名の登録者は訴外会社である。
(被告)
 本件サイト2及び3のドメイン名の登録者が訴外会社であることの証拠はないし、本件サイト2及び3は、訴外会社商品の広告ではなく、家庭用脱毛器の比較サイトである。
 原告が援用する出力の測定結果(甲5)が客観的に正しいものであるかは不明であり、これによって本件サイト2及び3における訴外会社商品の出力に関する表示が虚偽であると断ずることはできないから、訴外会社商品の品質を誤認させるような表示であることが明らかであるとはいえない。
第3 当裁判所の判断
1 本件各サイトに係る情報によって原告の権利が侵害されたことが明らかであるといえるか否かについて
(1) 争点1(本件ドメイン名を使用する行為が不正競争防止法2条1項12号の不正競争に当たるか否か)について
ア 本件ドメイン名の「ケノン.asia」のうち、「.asia」の部分はいわゆるトップレベルドメインであって識別力が弱いから、本件ドメイン名の要部は、「ケノン」の部分であるところ、これは、原告表示と少なくとも外観及び称呼が同一又は類似するから、本件ドメイン名は、原告の特定商品表示である原告表示と類似のドメイン名であると認められる。
イ 前記前提事実に、証拠(甲2の1の1ないし3、7、8)を総合すれば、平成25年2月15日時点における本件ドメイン名の登録者は、「LAVIE Inc.」であるが、これは、訴外会社の商号の英語表記に類似すること、「LAVIE Inc.」の所在地は、訴外会社が同年1月6日に現在の本店所在地に移転する前の訴外会社の本店所在地(以下「旧所在地」という。)と同じであり、訴外会社の現在の本店所在地とビル名及び所在階を異にするものの番号までは同じであること、同年8月15日時点における本件ドメイン名の登録者は、現在の登録者である「<以下略>」に変わっているが、同人の登録者IDは「LAVIE Inc.」のものと同じであることが認められる。そして、本件サイト1には本件ドメイン名が使用されていることからして、本件サイト1の契約者は、本件ドメイン名を使用する権原を有するなど、本件ドメイン名の契約者と何らかのつながりがあると考えられるところ、本件サイト1のトップページの内容は、圧倒的な販売実績を有する優れた家庭用脱毛器であるとして原告商品を紹介した後、価格が高いのがその唯一の弱点であると指摘し、結局は、同じ性能であるのに安いとして訴外会社商品を紹介し、その販売サイトへ誘導するというものである。
 これらの事実を総合考慮すると、本件ドメイン名の現在までの登録者や本件サイト1の契約者は、訴外会社又はその関係者など訴外会社商品の販売に関わる者(以下「訴外会社商品関係者」という。)である蓋然性が高いと認められるのであって、本件サイト1の契約者は、原告表示と類似する本件ドメイン名を使用して、原告商品との混同を生じさせ、その顧客吸引力を利用して、訴外会社商品に誘引して販売利益を上げようとして、本件ドメイン名を本件サイト1に使用していると認められる。
ウ したがって、本件サイト1の契約者は、不正の利益を得る目的で、原告の特定商品表示である原告表示と類似の本件ドメイン名を使用するものであり、不正競争防止法2条1項12号の不正競争に当たる。
(2) 争点2(本件サイト2及び3に訴外会社商品の出力に関する表示をする行為が不正競争防止法2条1項13号の不正競争に当たるか否か)について
ア 本件サイト2について
(ア) 証拠(甲2の2の1及び2、8)によれば、本件サイト2において使用されているドメイン名「脱毛器徹底比較.com」の登録者は、「LAVIE Inc.」であり、その所在地は訴外会社の旧所在地と同じであると認められるから、やはり訴外会社商品関係者であると考えられる。そして、本件サイト2には本件ドメイン名が使用されていることからして、本件サイト2の契約者は、本件ドメイン名を使用する権原を有するなど、本件ドメイン名の登録者と何らかのつながりがあると考えられるところ、本件サイト2の内容は、訴外会社商品が出力もコストパフォーマンスも総合評価も1番高い家庭用脱毛器であるとの事実を摘示して、家庭用脱毛器を購入するなら訴外会社商品が最もよいと勧めるというものである。
 これらの事実を総合考慮すると、本件サイト2の契約者もまた、訴外会社商品関係者である蓋然性が高いものと認められるから、本件サイト2は、単なる家庭用脱毛器の比較サイトではなく、訴外会社商品の広告であると認めるのが相当である。
(イ) 本件サイト2には、訴外会社商品について「78ジュールの出力は業界ナンバー1」であり、原告商品は52ジュールである旨の記載があるが、証拠(甲5)によれば、家庭用脱毛器の出力を表すジュール数の計測方法には統一的な基準がなく、測定条件によって数値が大きく異なるところ、訴外会社商品の出力が約78ジュールとなる測定条件と同一の条件下で原告商品の出力を計測した結果は、約1.4倍の約110ジュールとなることが認められる。
 そうすると、本件サイト2において、訴外会社商品の出力について上記のような断定的な記載をすることは、訴外会社商品の出力性能という品質について誤認させるような表示をするものであると認めるのが相当である。
 被告は、上記証拠の測定結果が客観的に正しいものであるかは不明であると主張するが、原告商品と訴外会社商品のそれぞれにつき、測定条件を揃えてジュール数を計測して上記の結果が得られたことに疑いを差し挟むべき事情は特に窺えない。被告の上記主張は、採用することができない。
(ウ) したがって、本件サイト2に「78ジュールの出力は業界ナンバー1」などと記載することは、訴外会社商品の広告にその品質について誤認させるような表示をする行為であるから、不正競争防止法2条1項13号の不正競争に当たる。
イ 本件サイト3について
(ア) 証拠(甲2の3の1及び2)によれば、本件サイト3において使用されているドメイン名「脱毛器徹底比較.jp」の登録者は、「株式会社LAVIE」であり、商号が訴外会社のそれと極めて類似し、その所在地は訴外会社の旧所在地と同じであると認められるから、やはり訴外会社商品関係者であると考えられる。そして、本件サイト3には本件ドメイン名が使用されていることからして、本件サイト3の契約者は、本件ドメイン名を使用する権原を有するなど、本件ドメイン名の登録者と何らかのつながりがあると考えられるところ、本件サイト3の内容は、訴外会社商品が出力(パワー)も総合評価も1番高い家庭用脱毛器であるとの事実を摘示して、家庭用脱毛器を購入するなら訴外会社商品が最もよいと勧めるというものである。
 これらの事実を総合考慮すると、本件サイト3の契約者もまた、訴外会社商品関係者である蓋然性が高いものと認められるから、本件サイト3は、単なる家庭用脱毛器の比較サイトではなく、訴外会社商品の広告であると認めるのが相当である。
(イ) 本件サイト3には、原告商品が52ジュールであると記載する一方、訴外会社商品について「業界1の高出力」、「業界初の高出力である78ジュールを誇ること。通常は20ジュール程度」、「業界ナンバー1の出力である78ジュールを誇ります」との記載があるが、証拠(甲5)に照らすと、訴外会社商品の出力についてこのような断定的な記載をすることは、前記ア(イ)で説示したのと同じ理由により、疎外会社商品の出力性能という品質について誤認させるような表示をするものであると認めるのが相当である。
(ウ) したがって、本件サイト3に「業界1の高出力」などと記載することは、訴外会社商品の広告にその品質について誤認させるような表示をする行為であるから、不正競争防止法2条1項13号の不正競争に当たる。
(3) そして、原告が家庭用脱毛器の販売を営んでいることに照らすと、原告は、前記の各不正競争により、営業上の利益を侵害され、また、今後もこれを侵害されるおそれがあると認められるから、本件サイト1に使用される本件ドメイン名、本件サイト2及び3における「78ジュールの出力は業界ナンバー1」、「業界1の高出力」等の記載といった侵害情報の流通によって原告の権利が侵害されたことは明らかである。
2 本件各サイトがいわゆるホームページであることに鑑みれば、本件各サイトの各契約者は、それぞれ本件各サイトに係る情報を本件レンタルサーバーに入力した者であると認められるから、これらの者がプロバイダ責任制限法4条1項にいう侵害情報の発信者に当たり、また、本件レンタルサーバーを保有、管理する被告が同項の開示関係役務提供者に当たると認められる。
 そして、各不正競争に係るそれぞれの行為態様に鑑みると、本件各サイトの各契約者は、不正競争を行うにつき、少なくとも過失があると認められるから、原告は、各不正競争について、不正競争防止法4条に基づく損害賠償請求権の行使のために、被告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報の開示を受ける必要があると認められる。
3 以上の次第であるから、原告の請求は、全て理由がある。
 よって、原告の請求を認容することとして、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第47部
 裁判長裁判官 高野輝久
 裁判官 三井大有
 裁判官 宇野遥子


発信者情報目録
 別紙ウェブページ目録記載の各閲覧用URLにより表示される各ウェブページが蔵置されたサーバー領域の各契約者に関する情報であって、次に掲げるもの
1 氏名又は名称
2 住所
3 電子メールアドレス

ウェブページ目録
 閲覧用URL
1 http:// 以下省略
2 http:// 以下省略
3 http:// 以下省略
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