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1月9日 廃墟写真の模倣事件 |
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東京地裁/提訴
廃墟写真の草分けとして知られる丸田祥三さんが、同業の小林伸一郎さんを、廃墟を題材にした写真を模倣されたとして、5点の写真について、写真集の差止や損害賠償を求めて東京地裁に訴えを起こした。
小林さんの写真には、同じ被写体を似た角度で撮影した写真があると主張。 |
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1月27日 商標“つつみのおひなっこや”侵害事件(2) |
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知財高裁/判決・請求棄却
被告商標「つつみのおひなっこや」について、原告が無効審判を請求したが、特許庁が請求不成立の審決をしたため、原告がその取消を求めて提訴した事案。
差戻前一審裁判所(知財高裁)は、商標法4条1項十一号の他人の登録商標に類似する商標に該当するとして審決を取消す旨の判決をしたところ、最高裁(二小)は十一号に該当しないとして一審判決を破棄し、知財高裁に差戻した。本事件はその差戻し審である。
知財高裁は、十一号以外の登録無効事由の存否を検討した。「つつみのおひなっこや」は、原告の愛称ないしは略称であるとする原告の主張に対し、「仙台市堤町で製造された土人形は、昭和初期以降は『堤人形』と呼称されたもので、……一般的に表した歴史的呼称として存在して来たに過ぎないものであり、この呼称が原告を表す略称として……使用されていたものとまでは認められない」等として同項八号該当性を否定し、他人の周知商標該当性や他人の登録商標の使用についてもこれを否定し、審決取消理由は失当であるとして、請求を棄却した。 |
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1月27日 テレビ番組送信サービス事件(ロクラクU)(2) |
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知財高裁/判決・取消、附帯控訴棄却(上告)
「ロクラクU」と呼ばれる2台の機器を利用者に貸与し、1台を日本国内に録画・送信機器、もう一方を海外に受信機器として置いてインターネットで結び、日本のTV番組を海外で視聴できるサービスの運営会社「日本デジタル家電」(浜松市)のサービスは、TV局が持つ著作権を侵害していると、NHKと民放9社が提訴した事件で、一審の東京地裁判決で敗訴したサービス運営会社がこれを不服として控訴したものである。
一審は、「親機ロクラクの設置場所を提供して管理支配することで、国外の利用者が格段に利用しやすい仕組みを構築し、いまだ、大多数の利用者の利用に係る親機ロクラクを、東京都内や静岡県内において管理支配しているものということができる」として、私的使用に当たらず、運営会社は、TV番組の複製行為を行っており、複製権、著作隣接権としての複製権を侵害しているとした。
知財高裁は、「利用者が親子ロクラクを設置・管理し、番組を受信・録画し、これを海外に送信してその放送を個人として視聴する行為が適法な私的利用行為」であり、運営会社のサービスは「利用者の自由な意志に基づいて行われる適法な複製行為の実施を容易ならしめるための環境、条件を提供しているにすぎない」として、録画・送信サービスの差止めと損害賠償を命じた一審判決の、サービス会社の敗訴部分を取り消し、TV局側の付帯控訴請求を棄却した。 |
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1月29日 類似ホームページ事件 |
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東京地裁/判決・請求棄却
原告は、「消費者金融ナビ」というホームページを管理、運営し、「Mobiledoor」の営業表示を用いているが、被告が原告ホームページと外観が全く同一のホームページ(本件ホームページ)を作成して、原告の周知の営業表示「Mobiledoor」を自己の営業表示として使用しており、不正競争防止法第2条1項一号の周知の「商品等表示」に当たるとして、使用の禁止、損害賠償などを求めて提訴した。
知財高裁は、一般消費者の間で広く知れ渡っている営業表示とまでは言えないとして、周知性を否定した。また、被告は、本件ホームページの開設、運営の事実を否定しており、原告ドメイン名と一部一致するドメイン名の登録についても関与していないと主張しており、ドメイン名登録手続会社は登録者の身元の確認をしておらず、第三者によって、被告代表と同姓同名名義によって登録される可能性もあったなどとして、請求を棄却した。 |
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1月29日 黒澤作品のDVD化事件(松竹作品)(2) |
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知財高裁/判決・控訴棄却、附帯控訴一部認容、一部棄却(上告)
東京地裁の判決に対する控訴審判決。一審原告である映画会社「松竹」が黒澤明監督の劇場用映画「醜聞」(1950年公開)、「白痴」(1951年公開)2作品について、その著作権譲渡を受けているとして、廉価版DVDを海外において製造させ、輸入・販売しているコスモ・コーディネート(一審被告)を著作権を侵害するとして、複製、輸入、販売の差止めを求めた事件。
一審は、黒澤は「本件映画作品の著作者の1人であり」、「黒澤は松竹に対して本件両作品の著作権を譲渡していたと推認できる」とし、旧著作権法の保護期間は著作者の死後38年の2036年12月31日であるとして、被告にDVD輸入・頒布の禁止、在庫品・録画原版の破棄を命じた。
一審被告が一審判決を不服としての控訴。控訴審の争点は、本件両作品は旧著作権法6条にいう団体著作物かどうかという点と、一審原告に生じた損害額の2点であった。
知財高裁は、「本件両作品が団体名義ないし法人名義で上映されたのであれば旧著作権法6条により30年間の保護期間に服し、一方、同作品が自然人の実名で上映されたのであれば旧著作権法3条により著作者の生存中及び死後30年間継続する」ことを前提に、両作品の冒頭部分には、「松竹映画」の表示、「脚本黒澤明、菊島隆三」「監督黒澤明」などと表示され、また、両作品のポスターの「監督黒澤明・脚本黒澤明・菊島隆三」などの表示があるところから、両作品は「社会一般の者としては、黒澤明が監督を務めた映画であると受け止め、『松竹映画』の部分はあくまでも製作者ないし配給元を表示したに過ぎないと認めるのが相当である」として、両映画の著作者は、自然人である黒澤明ほかの著作者名を表示した実名著作物であって、旧著作権法6条にいう団体著作物ではないと判断し、控訴請求を棄却した。
付帯控訴による一審原告の損害賠償請求については、「一審被告には著作権侵害につき過失があることは明らか」であるとして、これを認めた。 |
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1月30日 ネット掲示板の中傷事件(ラーメンチェーン)(刑)(2) |
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東京高裁/判決・破棄自判(上告)
ホームページに、ラーメンチェーン店を経営する企業がカルト集団と関係があるかのような書き込みをし、企業の名誉を傷つけたとして名誉毀損の罪に問われた事件の控訴審。
東京高裁は、一審の東京地裁の無罪判決を破棄し、検察の求刑どおり罰金30万円の有罪判決を言い渡した。
一審は、インターネット上の書き込みに関して、名誉毀損罪が成立するか否かを検討し、「ネットでは利用者が互いに反論できる上、情報の信頼性が低いため、従来の基準は当てはまらない」と指摘し、「真実でないと知りながら発信した場合か、インターネット個人利用者に要求される水準の事実確認を行わずに発信した場合に、名誉毀損罪が成立する」との新たな基準を示していたが、控訴審で東京高裁は、「名誉毀損の危険性はマスコミなど従来のメディアと異ならない」などとして、名誉毀損罪の成立を認めた。 |
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2月4日 貴乃花親方夫妻への名誉棄損事件 |
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東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
大相撲の故二子山親方の相続問題に関し、貴乃花親方夫妻が、二子山の相続財産を独占しようとしたなどとする『週刊新潮』の記事で、名誉を傷つけられたとして、貴乃花親方が新潮社、新潮社社長、『週刊新潮』編集長らに損害賠償と謝罪広告の掲載を求めた訴訟で、東京地裁は、社長ら被告の過失を認定し、計375万円の損害賠償の支払いを命じた。
今回の判決では、「出版社の代表取締役には、名誉毀損の権利侵害を防止する有効な体制を作っておく義務や責任がある」として社長の過失を認定し、「名誉毀損の権利侵害を防止するための体制を整備する義務は、『編集権の独立』と必ずしも対立しない」とした。 |
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2月9日 オバマ大統領の選挙ポスター事件 |
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米ニューヨーク州連邦地裁/提訴
アメリカのオバマ大統領が、選挙キャンペーンに使ったポスターの肖像イラスト(シェパード・フェアリーの作品)が、作品の基になった写真(AP通信が撮影・配信)の著作権を侵害しているとの疑義が持たれている問題で、フェアリー氏は、9日、ポスターのイラストがAP通信の著作権を侵害していないとの確認を求める訴えをニューヨークの連邦地裁に起こした。
フェアリー氏は、写真を基に創作したことは認めているが、その使用は「公正利用(フェアユース)」に当たるとしている。 |
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2月12日 刑事事件容疑者の実名報道事件(3) |
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最高裁(一小)/決定・上告棄却
中学生の少女にみだらな行為をしたとして、沖縄県青少年保護育成条例違反容疑で逮捕され、2007年11月に不起訴(起訴猶予)となった沖縄県の公立中学校の男性教諭が、逮捕時、実名報道したNHKと民放3社に対して名誉棄損による損害賠償を求めた裁判の上告審で、最高裁第一小法廷は、「上告できる理由に当たらない」として、上告を退ける決定をした。
この裁判では、福岡高裁那覇支部は、一審判決を支持し、報道での実名の必要性を認めたが、一方、「逮捕後、不起訴にいたった経過を報道しない姿勢にも考えるべき点がある」と、報道のあり方に異例の付言をして注目された。 |
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2月19日 NPO法人の海外調査報告書無断転用事件 |
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東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
首都高速道路に勤務する原告Aは、海外レポート「フランスの運河を巡って」と題する紀行文を、季刊『道路と自然』に寄稿するとともに、それに補筆したもの(原告著作物)を自ら開設するインターネットホームページに公開している。
被告東洋建設(株)の執行取締役副社長である被告Bは、環境の保全に関する事業を行うNPO法人被告リサイクルソリューションが主宰したフランスの運河を巡る研修調査に参加し、帰国後、研修調査報告書(被告著作物)を被告リサイクルソリューションに寄稿し、被告リサイクルソリューションはそれを自ら開設するホームページに公表した。
原告Aは、被告らの行為は著作権(複製権、翻案権、譲渡権、公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)の侵害に当たり、被告東洋建設は、被用者である被告Bに関して使用者責任を負うなどとして、複製、公衆送信の差止め、データの廃棄、謝罪文の掲載等を求めて提訴した。
東京地裁は、被告の表現は、「原告著作物における表現の一部をそのまま引き移したが、語尾を伝聞形式に修正したり、一部を削って要約したものにすぎない」もので、「被告Bの行為は原告著作物に対する著作権(複製権又は翻案権)の侵害行為に当たる」と認定し、また、公衆送信に関しては被告リサイクルソリューションと被告Bは共同不法行為責任を負うなどとして損害賠償等々を命じた。また、被告リサイクルソリューションには、ホームページに謝罪文を30日間掲載することを命じたが、被告東洋建設に関しては、「紀行文」の作成、提出行為が被告東洋建設の業務と密接に関連するとは言い難いとして、使用者責任を認めなかった。 |
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2月24日 「地下鉄路線案内図」の著作物性事件 |
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大阪地裁/判決・主意的請求棄却、予備的請求棄却
原告Xは、小冊子「交通ガイド革命(交通ガイド自由自在システム)」と「大阪市地下鉄デジタルインフォメーションシステム(計画案)1997」(本件システム)の著作者として、被告の大阪市が作成した「大阪市営地下鉄路線案内図」は、上記原告の著作物に依拠しこれを模倣したもので、原告の著作権(複製権)及び著作者人格権(公表権、氏名表示権)を侵害するとして、上記行為の差止を求めるとともに、著作権及び著作者人格権侵害の不法行為に基づき、実施料相当額(著作権法114条3項)の支払いを求めて提訴した。
判決は、原告が著作物だと主張する「全バス・鉄道路線の各路線に番号を付ける、全停車場に一定の関連性を持った独自記号を付けて停車場名と併用する方法(本システム)」自体はアイディアであって、著作権法の保護対象ではないとして著作物性を否定し、“著作権侵害と認められないとしても原告が考案したシステムは原告の知的財産であり、また、被告の行為は民法の不法行為に相当する”とする不当利得返還請求や慰謝料請求等の予備的請求については、「特許権や実用新案権等の知的財産権と離れて、不法行為法上法的保護に値するものとは言い難い」などとしてこれを退け、請求を棄却した。 |
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2月24日 商標“おおたかの森”侵害事件B(2) |
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知財高裁/判決・請求棄却
ふるさと産品として「自然が美しい流山おおたかの森」と称する酒の製造販売を始めた会社が、特許庁に不使用を理由とする取消審判請求を行い、酒類の商品については登録取消の審決が行われた。「おおたかの森」を出願登録して環境ビジネスを企画していた研究者は、商標不使用の理由書を提出したが、その事情に正当性があるかが問われた事件。研究者は「ハワイ大学で博士号取得のための研究、論文執筆に努めた国外在住」を説いたが、商標法上の規定の根拠とはならないと、裁判所は研究者の審決取消請求を棄却した。 |
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2月24日 商標“ELLE”侵害事件(ロックバンド)B(2) |
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知財高裁/判決・請求認容
ロックバンド「ELLEGARDEN(エルレガーデン)」が所属する会社が出願登録した商標に対して、雑誌『ELLE』をはじめ250種類ものライセンス商品を販売しているアシェット フィリパキ プレス ソシエテ アノニム社が取消審判請求を行い、特許庁はこれを認めていた。これを不服とした商標出願登録者である会社がその審決取消しを求めた事件。裁判所は、CDのバンド名表示とブランド商標との類似は認めたが、アシェット社業務の商品と混同を招くおそれはないとして、特許庁の審決判断を誤りとして取り消した。 |
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2月26日 自動連結システムの著作権確認事件 |
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大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
原告セプロ(株)は、被告のJFEスチール(株)やJFE物流(株)に対し、被告JFEスチールが使用する装置に組み込まれたプログラム(本件プログラム)の著作権が原告に帰属することの確認、本件プログラムの使用料支払契約に基づく使用料ないし不当利得相当額の支払いを求めて提訴した。
この裁判では、本件プログラムの著作物性、プログラム著作権承継の有無、使用料支払契約の成否、不当利得の成否等々が争われた。
大阪地裁は、本件プログラムは全体として新規な表現であり、選択配列の幅が十分にある中から選択配列されたものであり、作成者の個性が表れているとして著作物性を認め、著作権の帰属については、昭和61年当時、プログラムは湯浅通信機の法人著作物であったが、少なくとも平成11年ころまでには原告に譲渡されており、著作権は原告が承継し原告に帰属するとしたが、金銭支払請求については、使用料支払契約の合意が確認できない等として、原告の請求を棄却した。 |
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2月26日 キャノン元社員の“発明の対価”請求事件(2) |
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知財高裁/判決・A事件控訴棄却、B事件変更
キヤノン(原審被告)の元社員(原審原告)がレーザービームプリンターの製造技術の「ゴースト線を除去する走査光学系」の職務発明対価として、同社に10億円の支払いを求めて提訴した事件で、一審で3352万円の支払を命じられたキヤノンが控訴したが、知財高裁は、一審同様、対価を受け取る原告の権利を認めた上で、支払額を約6956万円に増額、変更した。
この発明による特許で得た同社の利益を10億7000万円と算定、原審原告の元社員の発明による貢献度を一審の3%から6%に変更した。 |
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2月27日 ニンテンドーDSソフトのコピー機(マジコン)事件 |
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東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
任天堂及びゲームソフトメーカー54社は、「ニンテンドーDS」用ソフトを不正コピーしてDS本体で使用することを可能にする「マジコン」の輸入販売業者5社に対して、「マジコン」の輸入販売は、「技術的制限手段を無効化するための専用機器等を販売する行為」にあたり、不正競争防止法2条1項十号の不正競争行為にあたるとして、被告装置の輸入・販売の差止め、在庫の廃棄を求めて提訴した。
不競法2条1項十号は、「技術的制限手段」を回避するための機能「のみ」を有する装置の輸出入、販売等を不正競争行為と規定しており、原告仕組みはこの「技術的制限手段」にあたるか、「マジコン」の装置は技術的制限手段を無効化する機能「のみ」を有すると言えるかなどが争われた。
東京地裁は、立法趣旨及び立法経緯に照らして、原告仕組みは「技術的制限手段」にあたるとし、同号の「のみ」とは、「必要最小限の規制という観点から……管理技術の無効化を専らその機能とするものとして提供されたものに限定し、別の目的で製造され提供されている装置が偶然『妨げる機能』を有している場合を除外していると解釈できる」とし、被告装置は「のみ」の要件を満たしているとして、営業利益の侵害を認め、輸入販売の差止め、所持する装置の廃棄を命じた。 |
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2月27日 復刻版歴史資料の編集著作権事件 |
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東京地裁/判決・第1事件請求棄却、第2事件請求一部認容、一部棄却
被告・不二出版が出版した、公文書である歴史資料の復刻本に関わる不二出版の発言及びファックス送信が高麗書林の名誉及び信用を毀損したとして、原告・高麗書林(第二事件では被告。以下、原告高麗書林という)が被告・不二出版(第二事件の原告)と不二出版の代理人弁護士B(以下、被告らという)に対し、謝罪広告と損害賠償の支払いを求めた第一事件と、被告・不二出版が、原告高麗書林とA(高麗書林の代表取締役、退任後会長の名義、以下原告という)に対し、著作権侵害の不法行為に基づき損害賠償を求めた第二事件が併合されて審理された。
第一事件は、被告らが弁護士会館で報道関係者に、韓国で無断複製された本件韓国書籍を日本国内に輸入し、日本国内の大学図書館などに販売した高麗書林の行為は著作権侵害行為である旨発言し、また、警視庁に告訴状を提出したことを記者会見に出席した報道各社に送信したことは、高麗書林の名誉及び信用を毀損したとして、被告らに謝罪広告と損害賠償の支払いを求めたもの。裁判所は、「本件発言及び本件ファックス送信は、公共の利害に関する事実であり、……摘示事実の重要な部分は真実であることの証明があったから、…不法行為法上違法であると認めることはできない。」と判断し、請求を棄却した。
第二事件は、不二出版が出版し、韓国で無断複製された、(1)『特高警察関係資料集成』(編・解題者 荻野富士夫)等6タイトルの海賊版を輸入し、日本国内の大学図書館などに販売した原告・高麗書林の行為は著作権侵害行為であるとして、被告・不二出版が高麗書林に対し、損害賠償を求めた。
判決は、原告らは、(1)『特高警察関係資料集成』の編集著作権と、6冊に付されている解説、解題等の著作権(各執筆者から出版社に譲渡されていると認定)を侵害したもの(113条1項二号)として、被告らに計144万円の損害賠償を命じた。
なお、予備的に請求された「版面権」侵害について判決は、「他の出版社の版面をそのまま複写して出版物を製作する行為は、出版業に携わる者として道義にもとるものであることは明らかである。しかし、法はそのような場合でもこれを直ちに違法なものと評価しているわけではなく、著作権等の存在を前提に、かつ、一定の範囲の類型に限って違法であると明示的に規定しているものであり(著作権法113条参照)、著作権法で違法とされていない行為を一般不法行為により違法と判断することは、謙抑的にされるべきである。」と判示している。 |
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2月27日 JASRAC「包括利用許諾契約」事件 |
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公正取引委員会/排除命令
公正取引委員会は、テレビやラジオなどで放送される音楽の著作権使用料について、(社)日本音楽著作権協会(JASRAC)と放送局の間で結ばれている「包括利用許諾契約」は、同業者の新規参入を拒んでいるとして、(社)日本音楽著作権協会に対し、独占禁止法に基づく排除命令を出した。 |
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