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【事件名】商標“ELLE”侵害事件(ロックバンド)B(2)
【年月日】平成21年2月24日
 知財高裁 平成20年(行ケ)第10347号 審決取消請求事件
 (口頭弁論終結日 平成21年1月22日)

判決
原告 株式会社グローイングアップ
訴訟代理人弁護士 関根修一
同 山田徹
同 森修一郎
被告 アシェット フィリパキ プレス ソシエテ アノニム
訴訟代理人弁護士 達野大輔


主文
1 特許庁が取消2006−30961号事件について平成20年8月18日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
 主文同旨
第2 事案の概要
1 本件は、原告が有する下記商標登録(本件商標登録)について、被告が商標法51条(不正使用による商標登録の取消し)に基づき商標登録の取消審判を請求したところ、特許庁がこれを認容する審決をしたことから、原告がその取消しを求めた事案である。
2 争点は、原告によりなされている下記表示(本件使用表示)の使用が、@商標的使用に当たるか、A下記引用商標を使用する被告の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものか、及び、Bそれが原告により故意になされたものであるか、である(商標法51条1項)。
 記
【本件商標】
 ・商標(商標イメージ略)
 ・指定商品及び指定役務
  第9類 「録音済みの磁気テープ・コンパクトディスク・光ディスクその他のレコード、録画済みのビデオディスク・ビデオテープ・コンパクトディスク・光ディスク」
  第41類 「音楽の演奏」
 ・登録日 平成14年7月5日
 ・商標登録 第4582074号
【本件使用表示】(イメージ略)
 ・使用態様 販売されている「録音済みのコンパクトディスク」の表面等に表示等
【引用商標】(商標イメージ略)
第3 当事者の主張
1 請求原因
(1) 特許庁における手続の経緯
 原告は、平成13年3月19日、本件商標について上記内容の商標登録出願(商願2001−30790号)をし、平成14年7月5日商標登録第4582074号として設定登録を受けた(甲1の1、2)。
 これに対し被告から、商標法51条1項(不正使用による商標登録の取消し)に基づき平成18年8月4日付けで本件商標に対し商標登録の取消しを求める審判請求がなされたので、特許庁はこれを取消2006−30961号事件として審理した上、平成20年8月18日、「登録第4582074号商標の商標登録は取り消す。」旨の審決をし、その謄本は同年8月28日原告に送達された。
(2) 審決の内容
 審決の内容は、別添審決写しのとおりである。
 その理由の要点は、商標権者である被請求人(原告)は、指定商品中の「録音済みのコンパクトディスク」について、本件商標に類似する商標(本件使用表示)を使用し、かつ、請求人(被告)の業務に係る商品とその出所について混同が生ずることを認識しながら故意にその使用を行ったものであるから、本件商標登録は商標法51条1項の規定により取り消すべきものである、というものである。
(3) 審決の取消事由
 しかしながら、以下に述べるとおり、本件使用表示は商標として原告により使用されたものではなく、被告の業務に係る商品等と混同を生ずるものでもなく、故意も存在しないから、商標法51条1項に該当しないというべきである。
ア 商標使用性について(争点@)
 本件使用表示の使用は、「商標の使用」としてなされたものではない。
(ア) 審決は、「…コンパクトディスクの表面に商標が表示されている実情がある(甲第69号証ないし甲第72号証)こと及び一つの表示がバンド名と出所表示と両方の機能を果たし得ることよりすれば、使用商標の使用が商標的使用でないとはいえない」(22頁31行〜34行)とした。
(イ) しかし、本件使用表示は、「ELLEGARDEN」(エルレガーデン)という名称のロックバンド(以下「本件ロックバンド」という。)を表示するものとして、本件ロックバンドの演奏を収録した「DON’T TRUST ANYONE BUT US」という表題のコンパクトディスク(以下「本件コンパクトディスク」という。甲2)に使用されたものである。
 本件ロックバンドは、その演奏を収録したコンパクトディスク(CD)等が音楽雑誌「オリジナル・コンフィデンス」(通称「オリコン」)の音楽チャートの売上ランキングにおいて1位にランクされるほどの人気を博している。
 なお、ロックバンド名「ELLEGARDEN」の由来は、本件ロックバンドのメンバーの一人が、外来語「エルレ」(ドイツ語)と野外の自由なスペースを意味する英語の「garden」という二つの語を組み合わせた造語を本件ロックバンド名として命名したものである。
(ウ) これに対し審決は、本件使用表示が本件コンパクトディスクの出所を表示する商標として使用されたものであるとするが、本件コンパクトディスク(付属のブックレットを含む)をみれば、本件使用表示は本件ロックバンドの名称として表示されたものであり、商標として使用されたものではないことが明らかである。
 すなわち、本件コンパクトディスクの帯には、本件使用表示と共に「エルレガーデン」と大きく表示されており、また、店頭で販売される際に需要者に見られる背表紙となる部分には、 「DON’T TRUST ANYONE BUT US」というアルバム名と共に「ELLEGARDEN」と表示されている。
 一方、本件コンパクトディスクには、「Dynamord Label」、「DISCUS CO.,Ltd」といったレーベル名等が付されており、これらこそが本件コンパクトディスクの出所(製造元、販売元)を表示する商標として表示されているものである。
イ 使用主体について(争点@)
 本件使用表示の本件コンパクトディスクへの使用は、本件商標の商標権者である原告によってなされたものではない。
(ア) 審決は、「…『録音済みのコンパクトディスク』の製造・販売に関しては、通常、依頼人は、アーティストのイメージに合わせて『外装』が作成されているか、商標(アーティスト名称)が適切に使用(表示)されているか等々につき、企画段階から参画し、発売までに商品のチェック(誤字・脱字、誤りがないか等)を細かく行った後に販売するものと考えるのが普通であって、被請求人の主張の如く、製造販売者が依頼者との事前の相談もなく、勝手にコンパクトディスクの『外装』も含めて製造し、販売するかのような主張は、極めて不自然としか言いようがない。…そうすると、本件については、…商標権者が『録音済みのコンパクトディスク』の製造・販売に関し、商標(アーティスト名称)の使用について事前に何らの行為(協議等)も行っていないと認めることはできないから、被請求人の主張は、採用することができない」(22頁10行〜28行)とした。
(イ) しかし、原告は、原盤供給業者として、本件ロックバンドの演奏を収録した原盤に関して第三者(株式会社A)と原盤供給契約(甲138)を締結し、楽曲の複製を許諾したにすぎず、本件コンパクトディスクを自ら行ったものではない。
(ウ) もっとも原告は、被告の指摘を受けて以降、あらぬ誤解を避けるため、製造販売業者(株式会社A等)を通じて卸業者から本件コンパクトディスクの在庫分の全てを回収し、販売店に対しても回収を依頼した。さらに、別訴(知的財産高等裁判所平成19年(ネ)第10057号・第10069号、原審東京地裁平成18年(ワ)第4029号)においても被控訴人たる請求人(被告)から指摘を受けたため、販売店に対して再度回収をするよう製造販売業者に依頼した。
 しかし、実際に製造販売行為を行っているのが製造販売業者であることから、回収が遅れ、あるいは、回収できずに市場に残ってしまうという事態が生じたものである。
ウ 被告の業務に係る商品等との混同惹起性について(争点A)
 本件使用表示の本件コンパクトディスクへの使用は、「他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるもの」とはいえない。
(ア) すなわち審決は、引用商標が著名商標であると認定(19頁16行〜21頁4行)した上で、本件使用表示と引用商標との類否につき「引用商標は…『ELLE』の文字からなるところ、その構成する各文字は、いずれも大文字を縦長に表してなり、その横線の右端部分は上下に長く伸びた『ひげ』を持ち、かつ、縦線が横線に比べて太いという、いわゆるローマン書体風の欧文字であることに特長を有し、その著名性とも相俟って『エル』と称呼されること明らかである。これに対し、使用商標は…黒地の横長長方形の図形内に、四隅を丸めてなる横長長方形輪郭を白抜きの実線で描き、その輪郭内に太字で大きく『ELLE』の欧文字を白抜きで表し、かつ、該『ELLE』の文字の左右端の『E』と『E』の文字の間(LLの文字の下)に、小さく『GARDEN』の欧文字を、同じく白抜きで表した構成からなるものであるが、その構成からみて顕著に表された『ELLE』の文字と、中央に小さく表された『GARDEN』の文字の組合せが、全体として1つの熟語を形成しているものとは認められず、他にこれらを常に一体のものとして把握しなければならないとする格別の事情も見当たらない。むしろ、枠内に大きく顕著に表された『ELLE』の文字が、上記の特長を有する引用商標と極めて類似したデザインを採用していることから、これに接する取引者、需要者は、『ELLE』の文字部分を、自他商品の識別標識としての機能を果たす部分(要部)であると把握し、引用商標の『ELLE』と同じ綴りであることから、これを単に『エル』と称呼するものとみるのが相当である。そうすると、引用商標と使用商標とは、『エル』の称呼を共通にする称呼上類似の商標であって、両者の書体も酷似するものであるから、外観上も引用商標に類似する商標と認めるのが相当である」(21頁7行〜29行)、「甲第74号証によれば、請求人は、引用商標を『録音済みのコンパクトディスク』に使用していることが認められる。…そうすると、両者の使用商品は、同一又は類似のものである」(21頁31行〜34行)として、混同のおそれにつき「…需要者も使用商標の要部が請求人の著名な引用商標と同一の『ELLE』と認識することから、被請求人が使用商標をその商品『録音済みのコンパクトディスク』に使用するときは、恰も、請求人又は請求人と組織的又は経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない」(21頁下4行〜22頁2行)とした。
(イ) しかし、「ELLE」という単語は、フランス語で「彼女」等を意味する代名詞であり、他の著名商標の一部としても多数使用され、特に他の文字と組み合わせて使用される場合には誤認混同の可能性が低いものである。この点、 例えば「CHANEL」(シャネル)、「LOUIS VUITTON」(ルイ・ヴィトン)、「PRADA」(プラダ)のような、本質的に固有名詞で自他識別力が強い商標とは異なっている。
a フランス語は、我が国においても一部の小・中学校のほか、高等学校・大学で第2外国語として教えられているが、フランス語における「ELLE」は英語における「she」と同じく「彼女」等を意味する代名詞であり、極めて平易な単語であるから、フランス語教育を受けた者はもちろん、そうでなくとも多くの日本人は「ELLE」の意味を一般常識として知っている。
b そして、「ELLE」の4文字を特徴的に含む登録商標は、例えば「ellesse」(イタリアのスポーツブランド)をはじめ、多数存在する(甲87〜119)。
 なお、「ELLEME」、「ELLEBELLE」、「elle et elles」、「ELLEVERRE」、「ELLESTEP」、「ELLESEINE」、「ELLEROSE」等の登録商標に対しては、被告から特許庁に異議申立てや無効審判請求がなされたが、これらの申立て等はことごとく認められなかった。
c また「ELLE」の4文字は、芸術作品の題号としても頻繁に用いられている。
 例えば、フランスを代表する作家ジョルジュサンドの「Elle et Lui」(彼女と彼)などである。また、音楽の分野では、例えば歌手クレモンティーヌの「ils et elle」(彼らと彼女)など、作品名・アーティスト名において多数存在する(甲127〜136〔枝番を含む〕)。
d さらに、人名その他の単語に「ELLE」の4文字を含むものは無数にある。
 例えば、 英語圏の人名としては、 著名人だけでも「Elle Macpherson」(イギリスの著名なモデル・女優)、「ELLE FANNING」(アメリカの女優)、「ELLE PETERSON」(アメリカの俳優)など枚挙に暇がない。そのほか、人名「ELLEGARD」(エレゴール)、人名「ELLEGAARD」(エレガード)、人名「ELLERY」、人名「ELLEN」、地名「ELLENBOROUGH」(エジンバラ)、単語「SELLER」、「TELLER」、「EXCELLENT」など「ELLE」を含むものは無数に存在する。
 フランス語にも、「ELLEBORE」(精神病の妙薬として知られる植物)、「ELLEBORINE」( ヘレボリン〔薬の名前〕)、「ELLE-MEME」(彼女ら自身)などの単語がある。
 ドイツ語にも、「ELLE」(尺骨に由来する長さの単位)、「ELLENBOGEN」(肘)、「ELLENHANDEL」(反物の小売)、「ELLENLANG」(1エルレの幅の)、「ELLENMAS」(エレ尺)、「ELLENREITER」(裁縫師)、「ELLENWAREN」(反物)、「ELLER」(はんのき)などという言葉が存在する。
e 以上のように、「ELLE」4文字の有する識別力は、一般に著名商標といわれる他の商標と比べて非常に弱いものといわざるを得ず、特に「ELLE」が同大・同字体で他の文字と組み合わされた場合の識別力は激減する。
 したがって、「ELLE」4文字からなる登録商標の保護範囲は必然的に狭く解されるべきであって、特にアーティスト名や作品名の表示が不可欠である音楽関係商品においては、「ELLE」及びこれを含む文字の表示を被告に独占させるべきではない。
(ウ) ところで引用商標の識別力は、上記から理解されるように「ELLE」4文字そのものによるのではなく、これらの各文字を極端に縦長にした上、かなりの間隔をおいて配置するという特殊なロゴタイプによるものである。
 これに対し本件使用表示は、極端な縦長の文字を用いたものではないし、「E」「L」「L」「E」の各文字の間には特別な間隔もない。むしろ「L」「L」の2文字は横長に表示されているのであり、二つの「E」にはさまれる形で「GARDEN」を取り囲むようにして「ELLEGARDEN」が一体的に表示されているものであり、字体も一般的な字体と特別に相違するものでもない。そして、ロックバンド名を示す意匠的な表示として不自然なものでもない。
(エ) そして、本件コンパクトディスクには、最も目を惹く位置に、片仮名で明確に「エルレガーデン」と表記され、本件使用表示は本件ロックバンドの名称を表すものであることが需要者に明らかである。
 加えて、本件で問題となっている時期に被告が音楽活動について顕著な活動を行った実績はなく、本件コンパクトディスクが被告の業務に関するものであると誤認される可能性はない。
エ 故意性について
 仮に本件使用表示が原告により商標として使用されたものであり、被告の業務に係る商品等と混同されるものであるとしても、少なくとも原告には、商標法51条1項にいう「故意」はない。
(ア) 審決は、「請求人が、平成15年1月30日付けの警告書(甲第75号証)において、使用の中止を求める通知を行い、これに対する平成15年2月6日付け報告書(甲第76号証)において、被請求人は『使用商標の使用を中止する』旨述べていたにもかかわらず、被請求人が当該録音済みのコンパクトディスクの発売を中止しないため、再度、請求人は、平成15年3月11日付警告書(甲第77号証)において、その中止を求めた事実が認められることからすれば、被請求人が、上記事実を認識しながら、使用商標を使用していたものとみる他なく、被請求人が、『他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあることを認識していた』というべきである。また、請求人は、被請求人が中止する旨述べていた『コンパクトディスク』がその後も販売されているのではないかという疑いを持ったため、被請求人に、その事実を明らかにするべく釈明を行ったところ(甲第67号証)、被請求人は、『一部増刷した事実はある。』と回答し、ー旦、使用商標の使用を中止するとの約束の後にも、使用商標を使用していたことを認めている(甲第68号証)。そうすると、被請求人は、引用商標の存在とその著名性を十分に知りながら、使用商標を使用していたものというべきであるから、被請求人の行為に、故意がなかったとはいえない」(18頁12行〜29行)とした。
(イ) しかし、そもそも本件使用表示は本件ロックバンドの名称を表示するものとして使用されたものであり、原告は、本件使用表示が引用商標と類似するなどとも、ましてそれにより被告の業務に係る商品等との混同が生じるとも認識していなかった。
 平成10年に本件ロックバンドが結成されて以来、需要者から、引用商標と混同したなどという連絡を受けたことは一度もなく、混同のおそれがあるとの認識は全くなかった。
(ウ) もっとも原告は、本件取消審判請求や別訴を受けて、本件使用表示を以後使用するつもりもないことから、念のため、製造販売業者に指示して、可能な限りの回収作業をするよう要請したものである。そして、本件コンパクトディスクの後に発売された10作品のコンパクトディスクについては、本件使用表示とは全く字体を異にした表示を使用している。
 なお、回収作業を要請した後にも本件使用表示を付したコンパクトディスクが販売されていたのは、原告とは別の業者(株式会社ゼロット等)が本件コンパクトディスクの製造販売を行っていたためである。製造販売業者が増刷の際、誤って本件使用表示が付された版を使用してしまったものと考えられる。
2 請求原因に対する認否
 請求原因(1)、(2)の各事実は認めるが、(3)は争う。
3 被告の反論
 審決の判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。
(1) 商標使用性に関する主張に対し
 原告は、本件使用表示は本件ロックバンドの名称を表示したものであって、商標としての使用ではないと主張する。
 しかし、本件使用表示は、飾り枠で囲まれデザイン化された「ELLE」と「GARDEN」が2段にわたって記載されたものであり、特に、左右の「E」の文字は上下に長く表記され、全体的に「ELLE」が殊更に大きく表示されたものとなっている。このようにデザイン化された表示の態様をみれば、これが単なるロックバンド名の表示ではないことが一目瞭然である。
 また、ロックバンド名であるならば商標としての使用ではないというものでもなく、およそ何らかの文字・図形が一定の商品又は役務の出所を表示するものとして使用されていれば、商標としての使用に当たる。本件使用表示も、上記のような図形により特定のアーティストのコンパクトディスクであることを示している点で、商標としての使用がなされているものといえる。
 なお、アーティストの所属事務所やレコード会社にとって、アーティスト名は重要なブランドなのであって、実際にもアーティストの名称につき商標登録されている例は多数存在するものである(乙1〜乙9)。
(2) 使用主体に関する主張に対し
 原告は、本件ロックバンドの演奏に関して第三者と原盤供給契約を締結し、原盤を供給したに過ぎないから、本件使用表示の使用主体ではないと主張する。
 しかし、原告主張のように原盤供給者の立場にあったとしても、業界の慣習上、アーティストの許諾なくコンパクトディスクのデザインが決定されることはあり得ない。まして、本件ロックバンドのように自ら作詞作曲等を行うアーティストであれば、デザインに関しても自己の意図を反映させるようにするものである。
 また、本件使用表示は、本件ロックバンドのホームページ(甲3の2)でも使用されており、このことから本件使用表示は原告が自ら使用するものであって本件コンパクトディスクの製造販売業者が考えついたものではないことは明らかである。
 したがって、本件使用表示の使用は原告自身により、あるいは原告の指示又は承認の下に行われていたものである。
(3) 被告の業務に係る商品等との混同惹起性に関する主張に対し
ア 原告は、本件使用表示が引用商標と類似しないと主張する。
(ア) しかし、本件使用表示は「ELLE」と「GARDEN」を2行に書して成るものであり、これらの間に特段のつながりもないため、「ELLE」と「GARDEN」のそれぞれが本件使用表示の要部をなすものである。そして、本件使用表示の「ELLE」の部分と被告の引用商標は同様であるから、本件使用表示は引用商標に類似する。
(イ) これに対し原告は、「ELLE」という単語はフランス語における代名詞であって識別力が強くないと主張する。しかし、引用商標は、様々なライセンス商品の販売により我が国を含め世界的に著名となった商標であって、強い識別力を有する。
 なお、原告は「ELLE」を含む文字についての商標登録の例や、かかる商標登録に対する異議申立て・無効審判の例を挙げるが、これらはいずれも平成11年に特許庁の審査基準が改正される(甲73)以前の登録例であるから、本件の参考とはならないものである。
イ また原告は、本件コンパクトディスクには「エルレガーデン」と表示されているから本件使用表示が本件ロックバンドの名称を示すものであることが明らかであると主張する。
 しかし、本件コンパクトディスクにおいて「エルレガーデン」というカタカナ書きが付されているのは、背の部分に付される紙製の背表紙部分のみであり、その他の部分にはこのようなカタカナ書きの表示はない。この背表紙となる部分は糊付けなどはされず、購入後は外されてしまう場合が殆どである。したがって、「エルレガーデン」というカタカナ書きの表示があるからといって、本件使用表示が本件ロックバンドの名称を示すことが需要者に明らかであるとはいえない。
 実際のところ、「ELLEGARDEN」というアルファベットの表記からこれを「エルガーデン」と読む人が絶えず、テレビ番組でも誤って「エルガーデン」と紹介されたことがあるほどである。
ウ また原告は、被告が音楽分野について顕著な活動を行っていないため本件コンパクトディスクが被告の業務に係る商品と誤認される可能性はないと主張する。
 しかし、被告は世界に100のライセンシーを有し、250種類のライセンス商品を販売している企業であり、このような状況下においては、被告が本件コンパクトディスクを自ら製造販売しているとはいえなくとも、少なくとも被告のライセンスの下に販売されているという広義の混同を生ずるおそれがあることは明白である。
(4) 故意性に関する主張に対し
 商標法51条1項にいう「故意」があるというためには、他人の利益を侵害する意思や不正競争の目的のように悪意があることを必要とするものではなく、使用の結果により商品の品質の誤認又は他人の業務に係る商品と混同を生じさせることを認識していれば足りる(最高裁昭和56年2月24日第三小法廷判決・裁集民132号175頁)。
 そして、引用商標のように著名な商標については、それが使用されていた事実を認識し、それにもかかわらず当該著名商標と類似する表示を採用したことをもって、故意は当然存在したものと認められるべきである。
 本件において、引用商標が著名であることは上記のとおりであり、原告は引用商標の使用の事実について当然知っていたものというべきである。それにもかかわらず原告は「ELLE」の部分だけが殊更大きく強調されている本件使用表示を使用したのであるから、本件コンパクトディスクを発売した時点において、原告には商標法51条1項にいう「故意」が存在していたものである。
 さらに、原告は本件コンパクトディスクについて被告から警告を受けた後もその販売を中止しなかったのであるから、この点においても原告の故意が裏付けられるものである。なおこの点に関し原告は、本件コンパクトディスクを製造販売していたのは別の業者であったと主張するが、警告後、文書等で関係各者に販売中止を周知徹底すれば中止できたはずであり、原告は販売中止の手段を結局とらずに販売を継続したものとみるのが妥当である。
第4 当裁判所の判断
1 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯)、(2)(審決の内容)の各事実は、いずれも当事者間に争いがない。
2 取消事由の有無
(1) 原告は、本件使用表示の使用が商標法51条1項に該当しない根拠として、ア商標使用性、イ使用主体性、ウ被告の業務に係る商品等との混同惹起性、エ故意性の4点を主張するが、事案の性質にかんがみ上記ウから検討する。
(2) 被告の業務に係る商品等との混同惹起性について(争点A)
ア 商標法51条1項は、商標権者が故意に登録商標に類似する商標の使用等であって他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるもの等をしたときは、何人もその商標登録を取り消すことについて審判を請求することができると規定し、同条2項は、前項の規定により商標登録を取り消すべき旨の審決がなされたときは、商標権者であった者は、審決が確定した日から5年を経過した後でなければ、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品等について、その登録商標又はこれに類似する商標についての商標登録を受けることができないと規定している。
 ところで商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有するが、そのほかに、他人による類似商標の使用等が商標権侵害とみなされるため事実上類似商標の使用等も独占していることから、商標法51条は、商標権者自らが故意により上記にいう類似商標等の使用を行い、その結果他人の業務に係る商品等と混同を生じさせたときは、商標権者としての商標の正当使用義務に違反するのみならず、他人の権利を侵害し、一般公衆の利益を害するものであるから、何人もその商標登録を審判により取り消し得ることとし、商標権を不法に行使する者に対して制裁を課すとともに、第三者の権利及び一般公衆の利益を保護しようとしたものである(最高裁昭和61年4月22日第三小法廷判決・裁集民147号587頁参照)。
 上記のような商標法の趣旨に照らせば、同法51条1項にいう「商標の使用であつて…他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるもの」に当たるためには、使用に係る商標が他人の商標と類似するというだけでは足りず、その具体的表示態様が他人の業務に係る商品等との混同を生じさせるおそれを有するものであることが必要と解される。
 以上のような観点から、@本件使用表示が引用商標に類似するか、A本件使用表示の具体的表示態様が被告の業務に係る商品等との混同を生じさせるおそれを有するものであるかについて、以下検討する。
イ 引用商標との類否につき
(ア) 本件使用表示
a 本件使用表示は、前記のとおり黒地の横長長方形の中に4隅を丸めてなる横長長方形の輪郭を白抜きの線で描き、その輪郭内に「ELLE」と「GARDEN」の文字を2段にわたって白抜きで表記したものである。そして大きく表示した「ELLE」の部分が「GARDEN」を取り囲むように、すなわち「GARDEN」の文字が「ELLE」の「E」と「E」の間に挟まれると共に「LL」の下になるようにデザインされている。
 また、大きく表示された「ELLE」の部分は、欧文字活字の基本書体の一つであるローマン体風の書体によって表記され、縦線が横線よりも太く、横線の右端部分には「ひげ」が付されている。なお、「LL」の部分は、その下に「GARDEN」の文字が配されているため、「E」に比べ字の縦幅が短くなっている。
b 「ELLE」という語は、フランス語で「彼女」や「それ」(女性名詞に関して)を意味する代名詞であり、フランス語としては極めて初歩的な言葉である。
 また、「GARDEN」は英語で「庭」等を意味する語であり、日本語の外来語としては「ガーデン」と表記される。
(イ) 引用商標
a 引用商標は、「ELLE」の文字から成り、本件使用表示と同様に、縦線が横線よりも太く、横線の右端部分に「ひげ」が付されたローマン体風の書体によって表記されている。「E」「L」「L」「E」の各文字は、通常の書体と比べて若干縦幅が長くなっており、そのため上下に細長い印象を与える。また、隣り合う文字と文字との間隔は若干離れている。
b 被告による引用商標の使用に関して、証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(a) 被告は、引用商標をその表題に付した雑誌「ELLE」を1945年(昭和20年)にフランスで創刊し(甲5)、その後イギリス、アメリカをはじめ世界各国で各国版が創刊されて、1997年(平成9年)までに総版数は30となり、その毎号の発行部数はフランス版で35万部、アメリカ版で97万部に達している(甲4、7)。同誌は、女性向けのファッションを中心に掲載し、同誌によって生み出されたファッションは「エル・ファッション」と呼ばれるようになった(甲9〜10)。
 また、インテリア雑誌である「ELLE DECO」(エル・デコ、甲16〜17)、料理雑誌である「ELLE a table」(エル・ア・ターブル、甲18)も発行され、いずれにおいても引用商標が用いられている。
(b) 我が国では、昭和57年、日本版「ELLE」である「ELLE JAPON」(エル・ジャポン)が創刊され、その後月刊誌として毎号22万部が発行されるに至った(甲12、13)。
(c) 被告は、昭和39年以来、帝人株式会社(以下「帝人」という。)に対して引用商標の独占使用を許諾し、帝人は自ら「エル・ファッション」に係る洋服を製造販売する一方、関係各社に対して再使用権を許諾し、これらのサブライセンシーと共同して「エル・ファッション」の宣伝・販売・普及に努め、その製造販売に係る商品に引用商標を使用した。
 昭和59年7月に至り、被告は帝人との独占的使用許諾関係を解消し、自ら「東洋ファッション株式会社」(現在の商号は「株式会社エルパリス」)を設立し、帝人のサブライセンシーに引き続き引用商標を使用させてその普及に努めた。さらに新たなサブライセンシーも加わり、我が国におけるサブライセンシーの数は平成12年4月現在で37社に上り、その業種も、被服のほか、バッグ、履き物、装身具、化粧雑貨、眼鏡、寝具、食器等に及んでいる(甲19の4)。
(d) 雑誌「ELLE」のほか、上記サブライセンシーにより製造販売される各商品、またこれらの商品に関する販売カタログには、ほぼ統一的に引用商標が付されている。
 なお、「ELLE」ブランドの派生ブランドとして、「ELLE PARIS」(「エル・パリ」)、「ELLE Lumiere」(「エル・ルミエール」)、「ELLE PLANETE」(エル・プラネット」) 、 「ELLE HOMME」( 「エル・オム」)、「ELLE PETITE」(「エル・プチ」)、「ELLE MAISON」(「エル・メゾン」)、「ELLE SPORTS」(「エル・スポーツ」)等があるが、その殆どにおいては、引用商標を大書した上で、これに近接した位置又はその直下に派生ブランドに関する表示を付加するという体裁をとっており、派生ブランド部分は著しく小さな文字であるか、引用商標部分とはフォント・色・大きさ等を変えて、引用商標の部分が目立つよう、デザイン上の工夫がなされている(甲4、22、25〜58〔枝番を含む〕)。
(e) なお、音楽CDの分野でも、引用商標を付した商品が販売されている(甲74)。
c 以上の事実によれば、引用商標は、我が国においても雑誌「ELLE」の刊行や多くのライセンスを通じてそのブランドが広く浸透しているということができ、遅くとも本件コンパクトディスクの販売が開始された平成14年4月3日当時(原告代表者A作成の平成15年2月6日付け報告書〔甲76〕によれば、原告は平成14年4月3日発売分として12646枚のコンパクトディスクを出荷していることが認められる)には著名であったということができる。
 もっとも、「ELLE」という語はフランス語としては極めて初歩的な代名詞(「彼女」等の意)であり、被告が「ELLE」ブランドを形成する過程においては、ライセンスをする各種の商品に引用商標を付し、派生ブランドの商標についても引用商標と結合した商標を使用するなどして統一的なブランドイメージを浸透させてきたものであり、「ELLE」ブランドの著名性は引用商標と密接不可分なものとして展開してきたものと認めることができる。
(ウ) 以上を前提として、本件使用表示と引用商標との類否につき検討する。
 本件使用表示は、前記(ア)のとおり、「ELLE」と「GARDEN」を2段に表記して成るものであるところ、「GARDEN」の部分は「ELLE」の部分に囲まれるようにして小さな文字で表記されていることから、本件使用表示の全体に接したときに強く印象付けられるのは「ELLE」の部分である。
 そして、本件使用表示における「ELLE」の部分は、引用商標のような上下に細長い書体により表記されているわけではないが、全体としてみれば引用商標と似通った印象を与えるものであり、本件使用表示を引用商標と離れて個別に観察するならば、本件使用表示をその指定商品又は指定役務に使用した場合には「ELLE」の派生ブランドないし「ELLE」ブランドと何らかの関係を有するものと誤認混同させるおそれがある。したがって、本件使用表示は引用商標と類似するものというべきである。
 そこで、進んで、本件使用表示の具体的表示態様の見地から検討する。
ウ 本件使用表示の具体的表示態様につき
(ア) 本件使用表示は、「ELLEGARDEN」(エルレガーデン)という名称の本件ロックバンドの演奏を収録した「DON’T TRUST ANYONE BUT US」という表題のコンパクトディスク(本件コンパクトディスク、甲2)等において表示されたものである。
(イ) 本件ロックバンドは、平成10年12月31日にメンバー4人により結成されたバンドで、結成当初から「ELLEGARDEN」(カタカナ表記で「エルレガーデン」)との名称で音楽活動を行っていた。
 バンドの結成後まもなく、音楽アーティストのマネージメントやCD等の原盤の企画制作を行う原告の所属となり、ライブ活動を中心とした音楽活動により若者を中心にクチコミで人気が広がった。そして、音楽業界誌「オリジナル・コンフィデンス」におけるCD、DVD等の推定週間売上数によるランキング(オリコン・チャート)において、本件ロックバンドの2枚目のアルバムが75位となって以降、着実に売上を伸ばし続け、4枚目のアルバム(平成17年4月20日発売)が初動売上5.7万枚を記録して3位になり、平成18年8月9日発売のDVDが1位となったが、平成20年10月以降、活動を休止している(甲82〜84、146、原告代表者A)。
 本件コンパクトディスクは、本件ロックバンドが発表した初めてのアルバムで、平成14年4月3日に販売が開始されたものである。
(ウ) 本件コンパクトディスクにおける本件使用表示の具体的表示態様は、次のようなものである(甲2、乙12)。
a(a) 本件コンパクトディスクの表紙の表側(甲2、1枚目)には、砂丘が広がる向こうに遊園地らしきものが望まれる風景が描かれ、その左上部分に「DON’T TRUST ANYONE BUT US」という本件コンパクトディスクの表題が記載されているところ、本件使用表示は、上記風景画の一部として表示されている。すなわち、砂丘の手前側に置かれた案内板のようなものに、遊園地の方向を示す矢印と共に本件使用表示が描かれている。
(b) そして本件コンパクトディスクの表紙の裏側(甲2、8枚目)には、メリーゴーラウンドの写真を背景に、白抜きの文字で、本件コンパクトディスクの表題や、本件ロックバンドのメンバーの氏名(アルファベット表記)、収録作品の題名などが記載されており、その1番上に本件使用表示が表示されている。
(c) 本件コンパクトディスクに付される帯(甲2、6枚目)には、表紙の表側に当たる部分に、本件使用表示と「エルレガーデン」というカタカナ文字が順に並んで横書きされている。「エルレガーデン」の文字は、本件使用表示と同程度の大きさにより、黒く縁取った白抜きの文字で目立つように記載されている。
(d) また、上記帯のうち本件コンパクトディスクの背側に当たる部分には、「DON’T TRUST ANYONE BUT US」という本件コンパクトディスクの表題と「ELLEGARDEN」というアルファベット文字が、異なる書体により1行に並んで横書きされている(なお、帯をはずした場合でも、本件コンパクトディスクの背側には「DON’T TRUST ANYONE BUT US」と「ELLEGARDEN」が上記と同様に並んで表記されている〔甲2、8枚目〕。)。
(e) なお、上記帯の裏表紙側に当たる部分には、有限会社グローイングアップが商標権者となっている登録商標(甲86)と同様の「Dynamord」の文字が、赤い眼のような形をした図形と共に表示され、同じ図形が表紙の裏側、背側等にも表示されている。また、裏表紙の1番下の部分には「Manufactured by Dynamord Label」との記載がある。
b 以上によれば、本件コンパクトディスクを購入しようとする需要者は、本件コンパクトディスクに帯が付されて透明ビニールで包装された状態(乙12参照)では、帯の背側に表記された「ELLEGARDEN」の文字、帯の表側に表記された「エルレガーデン」の文字を目にすることとなり、帯がはずされた中古品の場合でも、本件コンパクトディスクの背側に表記された「ELLEGARDEN」の文字を目にすることとなる。
(エ) 以上を前提として、本件使用表示の具体的表示態様が被告の業務に係る商品等との混同を生じさせるおそれを有するかについて検討する。
 需要者が本件コンパクトディスクを購入しようとするときには、本件使用表示と共に「ELLEGARDEN」や「エルレガーデン」の文字を見ることとなる。そして一般に音楽作品、特にロックバンドの演奏を収録したコンパクトディスクには、当該アーティスト名(ロックバンド名)と当該コンパクトディスクの表題が併記されるのが通常であることから、本件コンパクトディスクに表記された「ELLEGARDEN」「DON’T TRUST ANYONE BUT US」の一方がアーティスト名を示し、他方が表題を示すものであることが容易に推測でき、「ELLE」と「GARDEN」を組み合わせて成る本件使用表示がアーティスト名ないし表題である「ELLEGARDEN」を表すものであることが容易に理解される。
 したがって、「ELLEGARDEN」が本件ロックバンドの名称であることを知っている需要者はもちろん、これを知らない需要者であっても、本件コンパクトディスクに接した場合に本件使用表示が「ELLE」ブランドと何らかの関係を有するものと誤認混同するおそれはないというべきである。
(オ) なお、原告が運営するホームページ上でも本件使用表示が使用された(甲3の2)が、上記ホームページには「ELLEGARDENのホームページへようこそ。このページはバンドの最新情報やスケジュールを公開するとともに、応援してくれるみんなが交流できる場を設けることを目的として運営されています。」と記載され、本件ロックバンドが平成10年12月31日に結成されてからの活動の歩みについての説明文が掲載されている(甲3の1、2)ことから、本件ロックバンド及びその活動を紹介するためのものであることが明らかであり、上記ホームページ上における本件使用表示の使用も被告の業務等に係る商品等と混同を生じさせるおそれを有するものではない。
エ 以上によれば、本件使用表示は引用商標に類似するものの、本件コンパクトディスク等における具体的表示態様は被告の業務に係る商品等と混同を生じさせるおそれを有するものとはいえないから、商標法51条1項にいう「他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるもの」ということはできない。
3 結語
 以上のとおり、本件使用表示の本件コンパクトディスクにおける具体的表示態様が被告の業務に係る商品等と混同を生じさせるおそれを有するものでないから、これを肯定した審決の判断は、その余について判断するまでもなく誤りであることになる。
 よって、原告の請求は理由があるから認容することとして、主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第2部
 裁判長裁判官 中野哲弘
 裁判官 今井弘晃
 裁判官 清水知恵子
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