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1月23日 清酒「菊正宗」の標章事件(3) |
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最高裁(三小)/判決・上告棄却
大手酒造会社「菊正宗酒造」(神戸市)が「金盃酒造」(同)を相手取り、同社の清酒「金盃菊正宗」の標章差し止めを求めた訴訟の上告審は、使用中止を命じた一、二審を支持、金盃側の上告を棄却した。これにより菊正宗側の勝訴が確定した。金盃酒造は1997年、「金盃菊正宗」の製造、販売を始めたため、「菊正宗」の商標権を持つ菊正宗側が提訴した。一、二審判決は「『菊正宗』は菊正宗酒造の商品の標章として古くから著名。一般消費者に誤認混同を生じる恐れがある」と認定していた。 |
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1月23日 史跡ガイドブック著作権侵害事件 |
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東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(確定)
新撰組にまつわる東京・多摩地区の史跡を紹介するガイドブック『ふぃーるどわーく多摩』を出版した歴史研究者が「自分の作品を模倣され、著作権を侵害された」として、出版社「のんぶる舎」(八王子市)などに出版差し止めや損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は請求を認め、出版差し止めや約230万円の支払いを命じた。三村量一裁判長は「研究者の作品は、一般に知られていない史跡を紹介するなど創作性が認められる」とした上で、「出版社側の書籍には研究者のものと一字一句まで同じ部分があり、模倣したと認めざるを得ない」と述べた。歴史研究者は1995年、『ふぃーるどわーく多摩』を出版。「のんぶる舎」側は98年、類似したガイドブック『土方歳三の歩いた道―多摩に生まれ多摩に帰る』を発行した。 |
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1月23日 街路灯デザインの著作物性事件(2) |
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大阪高裁/判決・控訴棄却
平成9年大阪市が行った、通称「新世界」界隈の装飾街路灯の設置工事について、そのデザイン画の著作権をめぐる争いの控訴審である。市を相手に訴えたのは、昭和53年頃、当地通天閣界隈の街路灯設置を担当した電気工事業者(以下、業者)だった。当地商店会は、従来から保守、補修を行う業者を交え改修を検討、業者は新たな照明デザイン画を作成するなど対応した。その後、市の補助金利用の目途が立ち競争入札が行われたが、この業者は指名資格がないため改修工事を受注できなかった。市は別の業者に発注し、商店会のデザインの要望を取り入れつつ設計図デザインを描き、街路灯を設置した。
高裁判断は一審と同様「業者作成のデザインは産業デザインの一種」だとして、著作権は認めず、複製権、翻案権侵害を否定した。また、営業上の利益を侵害されたとの訴えにも不法行為にかかる事情の存在は証拠上ないと判断を示し、原審は相当、控訴棄却とした。 |
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1月23日 ケロケロケロッピ事件(2) |
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東京高裁/判決・控訴棄却(確定)
サンリオのキャラクター・ケロケロケロッピに対して、15年以上先に着目してカエルをモチーフにしたイラストレーションを描き、童話の原画を制作してきた作家が著作権侵害を理由に提訴していた。一審判決では、複製権、翻案権の侵害には当たらないと全ての請求が却下され、原判決取り消しの控訴請求を行った。
高裁では、作家は「基本となるキャラクターが同一である限り、特徴を同じくする同種の図柄であれば、見る者は同じ図柄と認識する」との主張を加えた。だが、裁判所は「カエルを擬人化するという手法は日本では周知である」との前提のもとに、著作権法で保護されるのは現実になされた具体的な表現のみだとの判断を示し、作家の論点を認めなかった。結論として、対比しても共通箇所はなく、サンリオの図柄からは作家の著作物を感得出来ないと、著作権侵害は認めず、控訴請求を棄却した。 |
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1月26日 ドメイン名の使用差し止め事件(ソニー) |
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工業所有権仲裁センター/申立
今年前半のインターネット専業銀行の開業を目指しているソニーは、SONYBANK(ソニーバンク)という名称を使ったインターネットのドメイン名を無断で登録されたとして、登録取り消しを求める訴えを民間紛争の仲裁機関である工業所有権仲裁センターに提出した。ソニーはネット専業銀行の名称を決めていないが、考えられ得る名前を先取りしたドメイン名の登録を黙認すれば、今後も無断登録が増えかねないことから対抗策を取ることにした。同社は「確立したブランドを使ったドメイン名の登録は明らかな商標権の侵害にも当たる」としている。 |
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1月26日 「ステューシー」の偽ブランド事件(刑) |
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千葉地裁/求刑
紳士服量販の「大三紳士服」が偽ブランド服を販売したとされる事件で、商標法違反の罪に問われた同社と元社員の初公判があった。罪状認否で同社の社長と元社員は、いずれも起訴事実を全面的に認め、検察側は同社に罰金500万円、元社員に懲役2年を求刑した。同社と元社員は千葉県四街道市などの51店舗で、若者に人気のブランド「ステューシー」の偽ジャンパー約200着を販売した。 |
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1月30日 ユトリロの展覧会事件 |
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東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却、一部却下
故ユトリロの絵画の鑑定人が、その著作権の二分の一を有するとして、国内5か所で開かれた展覧会について、贋作を真作として展示しカタログに複製したうえ、しかもカタログ制作は無許諾であったことを取り上げて、その主催者(大阪読売新聞社他)、カタログ制作者、カタログ販売業者らを、著作権(複製権、人格権)侵害を主張して訴えた。
カタログの複製、頒布の差止め、謝罪広告の掲載、損害賠償を求め、また、日本国に対しては、「主催者に贋作を展示したりしないよう、カタログについては許諾を得るように」指示、注意すべき注意義務を怠ったと国家賠償を求めた。
裁判所は「国への請求は却下し、人格権侵害、差止め、広告については認めず、複製権侵害は認め個別に算定して主催者、カタログ制作・販売業者に損害賠償」を命じた。 |
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1月30日 ショルダーバッグの不正競争事件 |
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東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
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1月31日 「フライデー」二子山親方夫人への接近禁止事件 |
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東京地裁/提訴
二子山親方夫人が、写真週刊誌「フライデー」記者から私生活を盗み撮りされ、プライバシーや肖像権を侵害されたとして、発行元の講談社に1100万円の損害賠償と記者を近づかせないよう求める訴訟を起こした。「フライデー」は今年2月2日号に「初場所中は二子山部屋にお泊り、夫人がなぜか渋谷でバーゲン買い漁り」の写真と記事を掲載、2月9日号にも自宅前にいる夫人の写真を載せた。夫人は「常に自分を監視してつけまわし、写真を盗み撮りしたもので、平穏な生活が送れなくなった」と主張。損害賠償に加え、「今後もつきまとわれる可能性がある」として、記者が半径50メートル以内に接近しないよう求めている。 |
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2月6日 Nシステムの肖像権侵害事件 |
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東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
警察庁が広域犯罪の捜査などを目的に全国の幹線道路に設置している「自動車ナンバー自動読み取りシステム」(Nシステム)をめぐり、東京など5都県の13人のドライバーが「不当な監視により肖像権を侵害され、行動の自由も制限される」として、国に1人あたり100万円の損害賠償を求めた訴訟は、請求が棄却された。西村則夫裁判長は「一時的に運転者が撮影されるとしても、すぐに消去されるので、肖像権を侵害するとは認められない」とした。Nシステムは警察庁が1986年から導入、全国500ヵ所以上に設置されているが、設置場所は明らかにされていない。 |
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2月6日 ドメイン名の使用差し止め事件(アイコム) |
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工業所有権仲裁センター/申立
アマチュア無線機大手のアイコム(大阪市)は、icomの名称を使ったインターネットのドメイン名を勝手に登録されたとして、ドメイン名の明け渡しを求める訴えを民間紛争の仲裁機関、工業所有権仲裁センターに提出した。アイコムは社名と同じブランドの無線機器を販売しており、ドメイン名を勝手に取得したのは商標権侵害の可能性があるとして、取得した相手にドメイン名の移転を求めたが、聞き入れられなかったため訴えたとしている。 |
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2月7日 ドメイン名の移転請求事件(NTT−X) |
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工業所有権仲裁センター/裁定・請求認容
NTT関連会社でインターネット検索サービスのNTT−Xが、よく似たドメイン名を利用しポルノサイトを運営されるのは、企業イメージの低下につながるとして、岡山県の企業にドメイン名の明け渡し(移転)を求めていた紛争で、移転を命じる裁定が下った。国内の民間機関がネット上の住所にあたるドメイン名紛争をめぐる裁定を出したのは初めて。同センターにはソニーなども訴えを出しており、今後の紛争解決に果たす役割が高まりそうだ。問題のドメイン名は「goo.co.jp」。関係者によると、このドメイン名は岡山県内の有限会社「ポップコーン」が1996年に取得。NTT−Xが99年に「goo.ne.jp」のドメイン名で情報検索サービスを始めると、「goo.co.jp」からポルノサイトに自動的につながるようになり、NTT−Xは広く知られた「goo」の商標権を傷つけられたと判断、昨年11月にドメイン名移転を申し立てていた。 |
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2月13日 「ときめきメモリアル」無断改変事件A(3) |
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最高裁(三小)/判決・上告棄却
人気ゲームソフト『ときめきメモリアル』をめぐり、途中のストーリーを省略できるメモリーカードの販売で著作権を侵害されたとして、ソフトメーカー「コナミ」(東京)がソフト販売会社「スペックコンピュータ」(福岡市)に損害賠償などを求めた訴訟の上告審判決があった。奥田昌道裁判長は「メモリーカードの使用により、ストーリーが予定された範囲を超えて展開、改変をもたらし、著作権上の同一性保持権を侵害する」と指摘。ス社に約115万円の支払いを命じた二審大阪高裁の判決を支持、ス社の上告を棄却した。これでス社の敗訴が確定した。ス社は1995年末から、コナミのソフトと併用すると、ゲーム途中のストーリーを省略し、一気にラストシーンから始めることのできる作者不明のメモリーカードを輸入、販売した。一審大阪地裁は97年11月、主人公の絵柄の無断使用だけを著作権侵害とし、「プログラム自体が書き換えられるわけではなく、ストーリー改変とまではいえない」と約15万円の賠償をス社に命令。二審大阪高裁は99年4月、「ストーリーの重大な改変」と認定していた。 |
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2月15日 『石に泳ぐ魚』のプライバシー侵害事件(2) |
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東京高裁/判決・控訴棄却(上告・上告受理申立)
雑誌「新潮」に発表された小説『石に泳ぐ魚』で、登場人物のモデルになった女性が「プライバシーを侵害された」として出版差し止めなどを求めた訴訟で、東京高裁は戦後初めて小説の出版差し止めと130万円の慰謝料支払いを命じた東京地裁判決を支持し、著者と新潮社側の控訴を棄却した。
浅生重機裁判長は差し止めの理由について「出版によって体に障害のある者の精神的苦痛は倍加する。このような人間的存在にかかわることは、表現の自由の名の下にあっても、発生させてはならない」と述べた。
99年6月の東京地裁判決は、作品公表の場合は訂正版を出版することで両者が合意していたと判断して、出版差し止めを命じたが、浅生裁判長はこの合意の存在を認めなかった。むしろ表現の問題点を正面からとらえ、(1)原告は公的な存在ではない、(2)問題の表現は公共の利益に関するものではない、(3)体に障害のある者の苦痛が倍加し、本を読む者が増えるごとに苦痛は倍加する−との理由を挙げて、「賠償金ですますことはできない」と判断した。
この前提として判決は、体の障害を無断で公表した点について「障害の苦痛に加え、好奇の目で受ける苦しみを倍加させる」と述べて、人格権とプライバシーの侵害を認めた。また「文学の社会的価値は否定してはならない」としながら、特に障害者をモデルにする時は心の痛みに敏感であるべきだと指摘し、「ことは人間の尊厳にかかわり、芸術の名によっても容認できない」と述べた。また原告側の控訴がないことを理由に変更しなかったが、地裁判決の慰謝料130万円は「低額にすぎる」と異例の言及をした。
著者側は控訴審で「小説は虚構で、登場人物は現実の人間とは異なるというのが、純文学の常識」と訴えた。腫瘍を表現した部分についても、「誰の心にもある偏見を浮き上がらせるため必要不可欠な描写。困難にみちた生をどう生き抜くかというテーマの普遍性を高めている」と反論していた。
著者は「このような判決が出たのは痛恨の極みです。プライバシー、名誉権の尊重は当然ですが、表現の自由との間には一定の規範が必要です」と言い、判決が「現実に表現を求める場合は、小説は現実と切断しなければいけない」とした点について、さらに「法の側が出す言葉として危険。一審よりも表現の自由にかなり介入してきている。私小説が書けなくなる恐れが強まった」と反発、「上告することは文学の世界に身を置いている限り、私の責任だと思う」と語った。 |
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2月15日 顧客情報の提供差し止め事件 |
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東京地裁/提訴
情報交換会社「テラネット」を通して消費者金融の顧客情報を銀行系ローン会社などに提供するのは、顧客のプライバシーを侵害するとして「武富士」など計55社とその顧客が、テラネットと情報管理会社「ジャパンデータバンク」に信用情報の提供差し止めなどを求める訴訟を起こした。
消費者金融の顧客情報はこれまで「全国信用情報センター連合会」が管理し、会員の消費者金融会社だけに情報を提供していたが、昨年12月からはテラネットを通し銀行系会社などにも情報を流すことになった。
このため武富士などは「消費者金融以外に情報を提供する同意を顧客から取り付けておらず、顧客のプライバシーが侵害される」と主張。顧客側も侵害を理由に一人110万円の損害賠償を求めている。
この件は昨年12月、武富士などが東京地裁に仮処分を申し立てていたが、受け入れられないため訴訟に切り替えたもの。 |
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2月23日 住民票データ流出事件 |
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京都地裁/判決・請求認容(控訴)
京都府宇治市の住民基本台帳のデータが流出した問題で、同市議の片岡英治さんら市民三人が「プライバシーを侵害された」として、宇治市とデータ作成に携わった大阪市北区のシステム開発会社の双方に、一人あたり33万円の損害賠償を求めた二つの訴訟の判決があった。
八木良一裁判長は「開発会社の社員を指揮、監督して、データ管理に万全を尽くすことが要請されていた」と宇治市の使用者責任を認め、慰謝料など一人あたり1万5千円の支払いを命じた。開発会社にも同額の賠償を言い渡した。
宇治市は「名簿を販売した男性は市の職員ではないので使用者責任はない」などと主張していたが、裁判長は原告側の主張を全面的に認めたうえで「自分のデータを不特定の者にいつ購入され、いかなる目的で利用されるか分からない、という不安感を原告に生じさせた」とプライバシーの侵害を認定した。 |
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2月26日 大原麗子さんの名誉毀損事件 |
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東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
女優大原麗子さんの私生活を取り上げた週刊誌「女性自身」の記事や広告について、大原さんが「名誉を傷つけられた」として発行元の光文社に5000万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は500万円の支払いを命じる判決を言い渡した。500万円の認容は同種の名誉毀損訴訟では極めて高額。
難波孝一裁判長は「記事の内容が真実と認められる証拠はない。著名な女優といえども私生活の平穏は保護されるべきで、好奇心の対象にすることが許されてよいわけではない」と述べた。
記事は「トラブル続出でご近所大パニック」などと同誌昨年3月7日・14日合併号に掲載されたもの。光文社側は控訴する。 |
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2月26日 商標共有者の一人による無効審決取消しの効力訴訟事件(2) |
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東京高裁/判決・請求却下(上告)
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2月28日 映画「市民ケーン」等の著作権譲渡事件 |
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東京地裁/判決・請求棄却(確定)
米国の破産手続きにおいて742作の長編と900作の短編からなる映画「RKOライブラリー」の日本、沖縄、韓国、台湾におけるすべての著作権を譲り受けたと主張する(有)ユタカインダストリー社(以下、ユタカという)は、ソニー、東芝他合わせて20社に対して、以下を訴えた。対象の映画をリスト化して、(1)ビデオグラムにして販売したこと、(2)映画著作物の一部をテレビ放映したこと、(3)子会社にビデオ販売行為をさせたこと等を理由に、ユタカの著作権及び営業権を侵害したと主張して、損害賠償を求めた。
裁判所は、破産会社に至る権利承継について1955年契約から始めて、複数社間で何度か交わされた契約内容の推移と破産手続きの経緯について事実確認を行った。地裁判断は「ユタカの権利範囲はフィルム使用の劇場上映権に限定され、ビデオテープを用いてテレビ放送する権利やビデオカセットを頒布する権利を取得していない」として、請求に理由が無く、営業権侵害の主張も認められないと、請求棄却とした。 |
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2月28日 映画のビデオ化事件 |
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東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
映画の著作物の著作権を取得したとする(有)ユタカインダストリー社(以下、ユタカという)は、映画著作物及びそのビデオグラムの複製販売をした東北新社とその代表取締役に対して、著作権(複製権及び頒布権)侵害だと、販売差止め、複製物の廃棄、各自5億円の損害賠償を求めた。
当該映画の著作物は、米国で1955年以来、数次にわたり数社間で契約が交わされ、一部の権利・映画フィルムの劇場上演権は移転していた。1971年、当時権利を所持していた会社の破産手続きがあり、その手続き最終段階でユタカに、日本、沖縄、韓国及び台湾についてに限り、権利移転範囲内の著作権譲渡が行われた。なお、本件映画著作物の著作権を持つ会社は健在し、東北新社はその社に残存する正当なビデオグラム権についてライセンスを受けたと争った。
裁判所は数次の権利移転に関する契約書及び破産手続きの経緯の事実確認を行い、ユタカはビデオグラム化の権利は取得していないとして、請求は失当とした。 |
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2月28日 デール・カーネギー商標事件(2) |
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東京高裁/判決・請求棄却(上告)
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3月1日 『石に泳ぐ魚』のプライバシー侵害事件(3) |
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最高裁/上告
雑誌「新潮」に発表された小説『石に泳ぐ魚』をめぐり、在日韓国人女性がプライバシー侵害を理由に単行本の出版差し止めなどを求めた訴訟で、著者が一審に続き出版差し止めと賠償を命じた東京高裁判決を不服として最高裁に上告した。
著者は「判決は表現の自由に対する理解に甚だしく欠けるもので、文学者として到底認めることはできません」とのコメントを発表した。発行元の新潮社側も2月28日に上告している。 |
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3月1日 中川秀直前官房長官の名誉毀損事件 |
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広島地裁/提訴
右翼団体幹部との交際や元交際相手の女性に捜査情報を漏らしたなどの疑惑が浮上し、官房長官を辞任した中川秀直衆議院議員が、疑惑の記事を掲載した写真週刊誌「フォーカス」を出版する新潮社と編集長、元交際相手の女性に対し、名誉を毀損されたとして、謝罪広告掲載と慰謝料1000万円の支払いを求める訴えを起こした。
訴状によると、同誌は昨年10月頃、無断で女性を中川氏の自宅寝室などに入れ撮影した写真を、中川氏が撮影したとして同誌に掲載。また女性は中川氏にストーカー行為を繰り返した上、愛人だったかのように装って同誌に虚偽の記事を掲載させ、それぞれ中川氏の名誉を傷つけ、損害を与えたとしている。 |
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3月2日 カラオケ無断使用事件(水戸市)(3) |
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最高裁(二小)/判決・一部破棄自判、一部上告棄却
スナックがカラオケの著作権料を支払わないのはカラオケ機器リース業者にも責任があるかどうかが争われた訴訟で、最高裁第2小法廷の亀山継夫裁判長は「業者はリース契約の締結時、相手方(スナック)が著作権者との間で著作物使用許諾契約を結ぶか、申し込みをしたことを確認したうえで機器を引き渡す注意義務を負う」との初判断を示した。そのうえで、茨城県つくば市のリース業者に対して、約754万円を日本音楽著作権協会(JASRAC)に支払うよう命じた。
一審の水戸地裁はスナック経営(茨城県伊奈町)の夫婦に約1250万円の支払いや機器撤去などを命じ、業者には約117万円を連帯して支払うよう命じた。二審の東京高裁は、スナックがJASRACと使用許諾契約を結んでいないことを知った後に再リース契約した1995年9月以降については業者に過失があると判断し、JASRAC側の控訴を棄却した。
このためJASRAC側が上告し、第2小法廷は「業者は漫然と機器を引き渡し、注意義務に違反した」と述べて、最初の契約時から業者に過失があったと判断し、一審判決よりも賠償額を増額した。 |
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3月8日 名馬の名前パブリシティ権事件(2) |
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名古屋高裁/判決・変更(上告)
ゲームソフトに競走馬の名前を無断使用したのは馬主の財産的権利(パブリシティ権)の侵害として、馬主がゲームソフト会社「テクモ」(東京都)に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決があり、名古屋高裁はテクモ側に約340万円の支払いを命じた一審判決を変更、約230万円の賠償を言い渡した。
小川克介裁判長は「著名人に限らず競走馬などの物のパブリシティ権も保護する必要があり、G1優勝馬の名称は顧客吸引力がある」とし、オグリキャップなど19頭のG1優勝馬に限定してパブリシティ権の侵害を認定した。 |
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3月14日 ドメイン名の使用差し止め事件(イトーヨーカ堂) |
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工業所有権仲裁センター/裁定・認容
大手スーパーのイトーヨーカ堂の社名を使ったインターネットのドメイン名を同社と無関係の会社が不当に登録、使用したとして、仲裁センターは、この会社にドメイン名登録をイトーヨーカ堂に移転するよう命ずる裁定を下した。
問題のドメイン名は「itoyokado.co.jp」で、神奈川県内の不動産会社が1999年に登録し、ホームページを開設した。その後、ホームページ上にドメイン名を「お譲りします」などと掲示したほか、2000年11月には「最低落札価格十億円」としてネットオークションに出品した。
仲裁センターは「イトーヨーカ堂の商標などと誤認混同を引き起こすほど類似している。ドメイン名販売を主たる目的として登録したと推認せざるを得ない」とした。 |
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3月21日 和菓子「ういろう」の商標事件(2) |
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東京高裁/判決・請求棄却(上告)
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3月22日 ドメイン名の使用差し止め事件(ソニー) |
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工業所有権仲裁センター/裁定・認容
ソニーがドメイン名「sonybannk.co.jp」を無断で取得されたとして、その明け渡しを求めていた問題で、仲裁センターは、ドメイン名を取得していた新潟県長岡市の投資コンサルタント会社に対し、名義の移転を命じる裁定を下した。
このドメイン名は、ソニーがインターネット専業の銀行に参入すると報じられた直後の昨年1月、ソニーと関係のない会社によって登録され、昨年暮に現在の会社に移転登録されていた。 |
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3月26日 『大地の子』の著作権侵害事件 |
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東京地裁/判決・請求棄却(確定)
中国残留孤児を描いた小説『大地の子』をめぐり、筑波大教授が「自分の著作物の表現などを無断で引用された」として、著者に出版差し止めや損害賠償などを求めた訴訟で、東京地裁は教授の請求を棄却した。
飯村敏明裁判長は「小説で他者の著作物と共通する事実を素材として利用することは、ある程度許される」とした上で、二人の作品について「大筋で共通点もあり、歴史的事実の範囲内では類似しているが、ストーリー展開や描写方法などに重要な相違点がある」と述べた。
教授は自分の引き揚げ体験を基にした作品『不条理のかなた』などを1983年から85年にかけて発表。『大地の子』は87年から91年にかけて「文芸春秋」に連載され、その後、単行本化された。
教授は「中国での悲惨な体験についての『大地の子』の記述は、自分の作品から引用したもの」と97年に提訴。50ヵ所以上を類似部分として指摘し、「著作者人格権を傷つけられた」と主張した。
著者は「現地で取材を重ねて書いた作品で、教授の著作物を不当に利用したということはない」と反論していた。 |
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3月27日 中古のゲームソフト販売事件(エニックス)(2) |
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東京高裁/判決・控訴棄却(上告)
中古のゲームソフトをめぐり、ゲーム販売会社「上昇」(山口県下松市)が「著作権侵害を理由に販売を禁止するのは不当」として、大手ソフトメーカー「エニックス」(東京都)に販売を差し止める権利がないことの確認を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は販売会社側の勝訴とした一審東京地裁判決を支持し、メーカー側の控訴を棄却した。
山下和明裁判長は「ゲームソフトは映画に類似することから、著作権法で作者の権利が保護された『映画の著作物』にあたる」と指摘。しかし「映画の作者に流通形態を決めることを認めた頒布権は、少数の複製物を製造し、多数の者が視聴する配給制度を前提としており、大量に製造され、少数にしか視聴されないゲームソフトには及ばない」と述べた。
さらに「現行制度ではゲームソフトの著作権保護は不充分で、作者に中古販売による利益を還元する立法措置が必要となる議論は成立しうる」としたが、「だからといって、ゲームソフトに映画のような強力な頒布権を認めることはできない」とした。
ゲームソフト販売では、著作権法が作者に流通手段をコントロールする権利を与えた「映画の著作物」にあたるかどうかをめぐって、メーカー側が販売業者と対立。一審の東京、大阪両地裁で正反対の判断が示され、高裁段階では今回が初の判決。大阪高裁の控訴審判決は29日に言い渡される。 |
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3月27日 珠算学習用ソフト事件 |
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大阪地裁/判決・請求認容
珠算学習用ソフトのプログラムを作成し、本件ソフトの著作権を有するとするソフト開発会社・エスジーエムソフト(原告)が、本件ソフトの複製物を公衆送信、頒布等をしているとしてシステムトラスト社(被告)に対し、それらの行為の差止めを求めた。
裁判所は事実関係を確認し「本件ソフトを制作したのは原告であり、被告は発注者にすぎず、著作権は原告に帰属する」とした。原告は訴外アドバンスシステムズ社を介して、被告から再委託を受けてソフト開発をしたが、アドバンスシステムズ社と被告との契約条項に基づき「本件ソフトの権利は被告へ移転していない」と、事実認定をした。次に被告の販売する同ソフトのフォルダ内のファイルのサイズ、更新日付等を検証し、原告ソフトと同一のものであると認めた。被告ソフトについては、複製、翻案、公衆送信、及び頒布の差止めと廃棄を命じた。 |
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3月27日 清原和博選手の名誉毀損事件 |
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東京地裁/判決・一部認容、一部棄却(控訴)
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3月28日 『企業主義の興隆』事件(2) |
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東京高裁/判決・控訴棄却
『企業主義の興隆』と題する書籍の著者(控訴人・一審原告)が、『ヒューマン・キャピタリズム』等と題する書籍の著者(被控訴人・一審被告)及びその出版社である講談社(被控訴人・一審被告)に対して、著作権(翻案権)侵害を理由に謝罪広告と損害賠償を求め、講談社には製作、販売の差止めも加えて請求した事件の控訴審である。一審では請求棄却となっていたが、同一の請求理由に著作者人格権(氏名表示権)の侵害も併せて控訴した。
高裁は、控訴人が主張する46の対比箇所について地裁に引き続き対象とし、表現内容の共通性の有無や程度、論理展開上の位置づけの類似性等について総合的に判断すると方針を示し、判断を下した。書籍全体としても、個別の対比箇所を取り上げても「被控訴人書籍からは、控訴人書籍の著作物としての表現形式上の本質的な特徴を感得できない」として翻案権侵害を認めず、また、著作者人格権の侵害をいう控訴人の主張も採用できないとして、原判決は相当だと、控訴を棄却した。 |
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3月29日 中古のゲームソフト販売事件B(アクト)(2) |
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大阪高裁/判決・控訴棄却(上告)
ソフトメーカーの「コナミ」(神戸市)など六社が、ゲーム販売会社「アクト」(岡山市)と同社のフランチャイズ店経営者に、中古ソフトの販売差し止めなどを求めた訴訟の控訴審判決があった。
鳥越健治裁判長は「ゲームソフトは『映画の著作物』にあたり、頒布権もある」としたが、自由市場保護の観点から「頒布権は一回の販売で消滅する」との初判断を示し、中古ソフト販売が著作権侵害にあたるとした一審大阪地裁判決を取り消し、メーカー側の請求を棄却した。
メーカー側は「劇場用映画に与えられた頒布権は消滅しないから、映画と同等のゲームソフトも消滅しない」と主張。一方、販売業者側は「欧米では、一回の販売で消滅する国がほとんどだ」と反論していた。
27日の東京高裁と同じ結論になったが、メーカー側は上告を検討している。 |
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3月29日 ドメイン名の移転請求事件(三共) |
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世界知的所有権機構(WIPO)/裁定・認容
大手製薬会社の「三共」はドメイン名「三共.com」を第三者に登録され、競売にかけられていた問題で、国際的な紛争処理機関のWIPOに申し立てていたドメイン名の三共への移転請求が認められた、と発表した。
WIPOが昨年11月から登録が始まったアルファベット以外の多言語ドメイン名に対して裁定を下したのは初めて。
三共の申し立ての相手は大阪在住の男性で、インターネット上の競売サイトで高額の値段をつけて売り出していた。裁定から10日以内に男性が不服をWIPOに申し立てなかった場合、ドメインの使用権は自動的に同社に移転する。 |
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3月30日 カラオケ著作権料不払い事件(名古屋市) |
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名古屋地裁/強制執行
長期にわたりカラオケ使用料の支払いに応じない飲食店に対し、名古屋地裁は日本音楽著作権協会(JASRAC)の申立てによりカラオケ機器撤去の強制執行を行なった。カラオケ著作権料をめぐり、機器そのものが撤去されたのは全国で初めて。
撤去を受けたスナックでは、1ヵ月3500円の使用料が必要なのに、1996年の開店以来、使用料を払っていない。
JASRACは97年から99年にかけ、同店に対し著作権侵害差し止めの仮処分申請や損害賠償を求める法的措置を取ってきた。しかし同店側は約80万円の使用料の支払いを命じた判決が確定した後も、責任者の名義を変えるなどして支払いを拒否してきた。 |
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