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【事件名】ケロケロケロッピ事件(2) 【年月日】平成13年1月23日 東京高裁 平成12年(ネ)第4735号 損害賠償等請求控訴事件 (原審・東京地裁平成12年(ワ)第4632号) (平成12年11月21日 口頭弁論終結) 判決 控訴人 【A】 被控訴人 株式会社サンリオ 代表者代表取締役 【B】 訴訟代理人弁護士 下山博造 同 石川道夫 同 石井光穂 主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人 原判決を取り消す。 被控訴人は、控訴人に対し、金100万円及びこれに対する昭和63年12月31日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 被控訴人は、控訴人に対し、別紙(一)記載@、C及びDの各図柄を著作したと被控訴人が主張する者の氏名及び同人の作品を提示してその内容を明らかにせよ。 被控訴人は、控訴人に対し、被控訴人が現在までに発表したキャラクターを明らかにせよ。 控訴人が別紙(一)記載@、C及びDの各図柄の著作権を有することを確認する。 訴訟費用は、第1、2審を通じて被控訴人の負担とする。 仮執行の宣言 2 被控訴人 主文と同旨 第2 当事者の主張 当事者双方の主張は、次のとおり付加するほか、原判決の「事実及び理由」中の「第二 事案の概要」記載のとおりであるから、これを引用する。 (当審における控訴人の主張の要点) 1 複製権又は翻案権の侵害について 控訴人は、控訴審では、別紙(一)@、C及びDの各図柄(以下、各図柄を順に「被控訴人図柄@」、「被控訴人図柄C」、「被控訴人図柄D」といい、これらを「被控訴人図柄」と総称することがある。)のみを、本件における複製権又は翻案権の侵害の対象となる被控訴人の作品であると主張する。 被控訴人図柄は、いずれも、控訴人の著作に係る別紙(二)記載(1)、(2)、(3)@ないしE並びに(4)@及びAの各図柄(以下、各図柄を順に「本件著作物(1)」・・・「本件著作物(4)A」といい、これらを「本件著作物」と総称することがある。)に、見る者に、同じ図柄であると認識させるほどに、その特徴が似ているものである。 もっとも、被控訴人図柄を含めて、被控訴人の作成する擬人化したカエルの図柄は、全体的に、ウインクをしたり口をゆがめたりしているものが少なく、いわば図柄の静止したものであるのに対して、本件著作物は、童話の中のキャラクターを表現したものであるため、会話をしたり口を開いたりといった動きが加味されていることから、その点に着目すれば、一見、両者の間にかなりの相違があるように感じられるかもしれない。しかしながら、通常、キャラクターを表現する図柄を作成するときには、まず基本となるキャラクターを決めた後、このキャラクターに様々な特徴を持たせて差別化を図り、それによりそれぞれの個性を出すことが行われるものであり、現に、被控訴人図柄を含めて被控訴人の作成する図柄においても、まつ毛の有無・本数、目の形態、持ち物によって、また、太らせたりやせさせたり、髪型を代えたりなどすることによって、個性化を企てていることが明らかである。その場合、基本となるキャラクターに様々な特徴を持たせて差別化しても、基本となるキャラクターが同一である限り、すなわち、特徴を同じくする同種の図柄である限り、形状、図柄を構成する個々の要素の配置、配色等に差異があっても、見る者は、同じ図柄であると認識するのであり、本件著作物と被控訴人図柄の関係についても、同様のことがいえるのである。 2 被控訴人図柄の著作者等の開示について 作品には、作者の体格や風貌が反映されるため、控訴人が作製した本件著作物と同様の図柄を描く被控訴人図柄の作者は、体格、風貌、生活環境等において、控訴人のそれとの間に多くの類似点を見出すことができるはずである。つまり、作者の作風は、たといそれが多岐にわたっても、その底辺には、共通の臭いが存在するはずなのである。これらを確認するためには、まず、本件著作物の作者とその作品を知ることが不可欠である。よって、被控訴人に対し、被控訴人図柄の作者の特定とその作品の提示を求める。 第3 当裁判所の判断 当裁判所も、控訴人らの本訴請求は理由がないものと判断する。その理由は、次のとおりである。 1 複製権又は翻案権の侵害について (1) 複製権又は翻案権の侵害の要件 著作権法は、21条で「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。」と規定し、27条で「著作者は、その著作物を・・・若しくは変形し、・・・その他翻案する権利を専有する。」と規定しているから、著作者に与えられている、「複製する権利」(複製権)や変形などの方法で「翻案する権利」(翻案権)の根拠となり得るのは、著作権法が「著作物」としているものということになる。そして、著作権法が、その2条1項1号において、「著作物」を「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と規定していることからすれば、著作権法にいう「著作物」と評価されるためには、「表現したもの」であること、言い換えれば、著作者の思想又は感情が外部に認識できる形で現実に具体的な形で表現されたものであることを要するものというべきである。そして、そうである以上、著作権法による「著作物」に対する保護が、思想又は感情自体に及ぶことはあり得ないのはもちろん、思想又は感情を創作的に表現するに当たって採用された手法や着想も、それ自体としては保護の対象とはなり得ないものというべきである。 これを前提にした場合、ある者(本件では被控訴人)のある作品(本件では被控訴人図柄)が他の者(著作者、本件では控訴人)の複製権又は翻案権を侵害しているといい得るためには、その作品(本件では被控訴人図柄)が他の者(著作者、本件では控訴人)の思想又は感情を創作的に現実に具体的に表現したものと同一のもの、あるいは、これと類似性のあるものであることが必要であるということができる。より具体的に言い換えれば、その作品(本件では被控訴人図柄)を著作者(本件では控訴人)が現実に具体的に表現したもの(本件では本件著作物)と比較した場合、後者(本件では本件著作物)中の、著作者(本件では控訴人)の思想又は感情が外部に認識できる形で現実に具体的な形で表現されたものとして、独自の創作性の認められる部分について、表現が共通しており、その結果として、前者(本件では被控訴人図柄)から後者(本件では本件著作物)を直接感得することができることが必要であるというべきである。 (2) 本件著作物 ア 本件著作物は、カエルを擬人化した図柄である。本件著作物において、その「表現したもの」における、基本的な表現に注目すると、@顔の輪郭が横長の楕円形であること、A目玉が丸く顔の輪郭から飛び出していること、B胴体が短く、これに短い手足をつけていること、を挙げることができる。 カエルを擬人化するという手法が、少なくとも我が国において広く知られた事柄であることは、鳥獣戯画などを持ち出すまでもなく、当裁判所に顕著である。そして、カエルを擬人化する場合に、作品が、顔、目玉、胴体、手足によって構成されることになるのは自明である。 擬人化されたカエルの顔の輪郭を横長の楕円形という形状にすること、その胴体を短くし、これに短い手足をつけることは、擬人化する際のものとして通常予想される範囲内のありふれた表現というべきであり、目玉が丸く顔の輪郭から飛び出していることについては、我が国においてカエルの最も特徴的な部分とされていることの一つに関するものであって、これまた普通に行われる範囲内の表現であるというべきである。 そうすると、本件著作物における上記の基本的な表現自体には、著作者の思想又は感情が創作的に表れているとはいえないことになる。 そこで、次に、上記基本的な表現を基礎とする細部の表現について検討する。 イ 本件著作物(1)(別紙(二)(1)) 本件著作物(1)は、擬人化されたカエルを正面から描いた図柄であり、顔の形状及び配置をみると、横長の楕円形の中央に、鼻を表す2個の点及びその下に略⌒状に結んだ口が描かれており、目玉の配置及び形状をみると、顔の上方には、飛び出した二つの大きな丸い目玉が若干のすき間を開けて配置され、これらの丸い目玉の上端に二重丸により瞳を表した黒目が描かれており、胴体の形状及び配置をみると、顔とほぼ同じ程度の大きさの略台形状をした胴体であり、その左右上方に細い腕が伸びて、その先端はグローブ様の手のひらとなっており、上記胴体の下部には細い足が伸びて長靴を履いていることが認められる。また、色彩の面をみると、全体の輪郭が細い藍色の線で描かれており、黒目と手足については、全面的に水色に彩色されていること、長靴がピンク色とされていることが認められる。 ウ 本件著作物(2)(別紙(二)(2)) 本件著作物(2)は、擬人化されたカエルを正面から描いた図柄であり、顔の形状及び配置をみると、横長の楕円形の中央に、鼻を表す2個の点及びその下に略状に結んだ口が描かれており、目玉の配置及び形状をみると、顔の上方には、飛び出した二つの大きな丸い目玉が若干のすき間を開けて配置され、これらの丸い目玉のほぼ中央に二重丸により瞳を表した黒目が描かれており、胴体の形状及び配置をみると、顔より小さい略台形状をした胴体であり、その左右上端に細く短い腕が出て、その先端はグローブ様の手のひらとなっており、上記胴体の下部には細く短い足が出て長靴を履いていることが認められる。また、色彩の面をみると、全体の輪郭が細い藍色の線で描かれており、黒目、顔、胴体及び手足について、全面的に水色に彩色されていること、長靴がピンク色とされていることが認められる。 エ 本件著作物(3)@(別紙(二)(3)@) 本件著作物(3)@は、擬人化されたカエルが前に倒れて顔を地につけているところを正面から描いた図柄であり、顔の形状及び配置をみると、横長の楕円形が描かれており、目玉の配置及び形状をみると、顔の下方に、飛び出した二つの大きな丸い目玉が若干のすき間を開けて配置され、これらの丸い目玉の下端に二重丸により瞳を表した黒目が描かれており、胴体の形状及び配置をみると、丸い胴体の一部が顔の背後に隠れるように描かれており、上記胴体の右下部には短い足の一部が見えていることが認められる。また、色彩の面をみると、全体の輪郭が細い藍色の線で描かれており、黒目、顔及び足について、全面的に藍色に彩色されていること、胴体が全面的にピンク色に彩色されていることが認められる。 オ 本件著作物(3)A(別紙(二)(3)A) 本件著作物(3)Aは、擬人化されたカエルを側面から描いた図柄であり、顔の形状及び配置をみると、楕円形の左側を大きくえぐって大きく口を開けた状態が描かれ、目玉の配置及び形状をみると、顔の上方に、飛び出した一つの大きな丸い目玉が配置され、この丸い目玉の左寄りに二重丸により瞳を表した黒目が描かれており、胴体の形状及び配置をみると、顔とほぼ同じ程度の大きさの略台形状をした胴体であり、その前後(正面視すれば左右)上方に細く短い腕が出て、その先端はグローブ様の手のひらとなっており、上記胴体の下部には細く短い足が出て長靴を履いていることが認められる。また、色彩の面をみると、全体の輪郭が細い藍色の線で描かれており、黒目、顔及び手足について全面的に藍色に彩色され、胴体が全面的にピンク色に彩色され、目と顔の開口部が全面的に水色に彩色されていること、長靴がピンク色とされていることが認められる。 カ 本件著作物(3)B(別紙(二)(3)B) 本件著作物(3)Bは、擬人化されたカエルを正面から描いた図柄であり、顔の形状及び配置をみると、横長の楕円形の中央に、大きく口を開けているところが描かれており、目玉の配置及び形状をみると、顔の上方には、飛び出した二つの大きな丸い目玉が若干のすき間を開けて配置され、これらの丸い目玉のほぼ中央に二重丸により瞳を表した黒目が描かれており、胴体の形状及び配置をみると、顔とほぼ同じ程度の大きさの略台形状をした胴体であり、その左右上方に細く短い腕が出て、その先端はグローブ様の手のひらとなっており、上記胴体の下部には足がみえず靴の一部と思われる楕円形のものが描かれていることが認められる。また、色彩の面をみると、全体の輪郭が細い藍色の線で描かれており、黒目、顔及び手について全面的に藍色に彩色され、口内、胴体及び靴様のものがピンク色に彩色されていることが認められる。 キ 本件著作物(3)C(別紙(二)(3)C) 本件著作物(3)Cは、擬人化されたカエルを側面から描いた図柄であり、顔の形状及び配置をみると、楕円形の右側を大きくえぐって大きく口を開けた状態が描かれ、目玉の配置及び形状をみると、顔の上方に、飛び出した一つの大きな丸い目玉が配置され、この丸い目玉の右寄りに二重丸により瞳を表した黒目が描かれており、胴体の形状及び配置をみると、顔とほぼ同じ程度の大きさの略円形状をした胴体であり、そのほぼ中央に細く短い腕が出て、何かを持っているかのような構成となっており、上記胴体の下部には細く短い足が出て長靴を履いていることが認められる。また、色彩の面をみると、全体の輪郭が細い藍色の線で描かれており、黒目、顔及び手足について藍色に彩色され、胴体及び長靴がピンク色に彩色され、目と顔の開口部が水色に彩色され、口内が黄色に彩色されていることが認められる。 ク 本件著作物(3)D(別紙(二)(3)D) 本件著作物(3)Dは、擬人化されたカエルの上半身を正面から描いた図柄(体は横向き)であり、顔の形状及び配置をみると、横長の楕円形の中央に、大きく口を開けているところが描かれており、目玉の配置及び形状をみると、顔の上方には、飛び出した二つの大きな丸い目玉が若干のすき間を開けて配置され、これらの丸い目玉のほぼ中央に笑っている表情を表す略∩型の目が描かれており、胴体の形状及び配置をみると、顔とほぼ同じ程度の大きさの略楕円形状をした胴体であり、そのほぼ中央に細く短い腕が出て、何かを持っているかのような構成となっていることが認められる。また、色彩の面をみると、全体の輪郭が細い藍色の線で描かれており、目、顔及び手について濃い藍色に彩色され、口内、胴体がピンク色に彩色されていることが認められる。 ケ 本件著作物(3)E(別紙(二)(3)E) 本件著作物(3)Eは、擬人化されたカエルをほぼ正面から描いた図柄であり、顔の形状及び配置をみると、横長の楕円形の中央に、大きく口を開けているところが描かれており、目玉の配置及び形状をみると、顔の上方には、飛び出した二つの大きな丸い目玉が若干のすき間を開けて配置され、これらの丸い目玉のほぼ中央に笑っている表情を表す略∩型の目が描かれており、胴体の形状及び配置をみると、顔とほぼ同じ程度の大きさの胴体であるが、テーブルによってその大半が隠されており、上記胴体の下部には細く短い足が出てスリッパを履いていることが認められる。また、色彩の面をみると、全体の輪郭が細い藍色の線で描かれており、目、顔及び手足について濃い藍色に彩色され、口内、胴体及びスリッパがピンク色に彩色されていることが認められる。 コ 本件著作物(4)@及びA(別紙(二)(4)@及びA) 本件著作物(4)@は、擬人化されたカエルを正面から描いた図柄であり、顔の形状及び配置をみると、横長の楕円形の中央に、鼻を表す2個の点及びその下に略Uの字に結んだ口が描かれており、目玉の配置及び形状をみると、顔の上方には、飛び出した二つの大きな丸い目玉が若干のすき間を開けて配置され、これらの丸い目玉の下端に接するように二重丸により瞳を表した黒目が描かれており、胴体の形状及び配置をみると、顔とほぼ同じ程度の大きさの胴体であり、略台形状の服を着ており、胴体の左右上端に、わずかに見える腕とその先端にグローブ様の手のひらが描かれ、上記胴体の下部には細く短い足が出て長靴を履いていること、両手には、Aの英文字を書いた四角い紙様のものを持っていることが認められる。また、色彩の面をみると、全体の輪郭が太い藍色の線で描かれており、黒目、顔、胴体及び手足について、全面的に水色に彩色されていること、長靴がピンク色とされていることが認められる。 本件著作物(4)Aは、本件著作物(4)@と比べると、両手に持っている四角い紙様のものに書かれた英文字がBであるという点で相違し、その余は同じである。 サ 以上、認定したところによれば、本件著作物のいずれについても、前記基本的表現自体には「著作物」の要件としての創作性を認めることができないという以外にない。しかし、それを現実化するに当たっての細部の表現においては、擬人化したカエルの図柄に、形状、配置、配色によるバリエーション(変形、変種)を与えることによって、表現全体として作者独自の思想又は感情が表現されているということができ、ここに創作性を認めることができる。 (3) 本件著作物と被控訴人図柄との対比 ア 上記認定のとおり、本件著作物は、上記認定の形状、図柄を構成する各要素の配置、色彩等による細部の表現により表現全体として独自の創作性を認めることができるものであるから、被控訴人図柄が本件著作物を複製又は翻案したものであるといい得るか否かは、上記細部の表現について、両者の表現が共通していて、その結果、被控訴人図柄から本件著作物を直接感得できる状態にあるか否かにより定まることになる。 以下、これについて考察する。 イ 被控訴人図柄@(別紙(一)@) 被控訴人図柄@は、擬人化されたカエルを正面から描いた図柄であり、顔の形状及び配置をみると、横長の楕円形の下方に略状に結んだ口が描かれており、目玉の配置及び形状をみると、顔の上方に、飛び出した二つの大きな丸い目玉が相互に接して配置され、左(見る者から見て)の目玉の右寄りには、ウインクしている表情を表す略>状の目が、右の目玉の左寄りには、丸く小さな黒目が描かれており、胴体の形状及び配置をみると、顔より小さい略台形状をした胴体であり、蝶ネクタイのついた緑色の縦の縞模様の服を着ており、胴体の左右上端に腕と手のひらの区別のない、太く短い手が出て、その先端には小さな三つの凹凸が描かれており、上記胴体の下部には、先端が緩い三つの凹凸となった足の先が出ていることが認められる。また、色彩の面をみると、全体の輪郭が太い黒色の線で描かれており、顔及び手足について、全面的に黄色に彩色され、両頬の中央が丸くピンク色に彩色されていることが認められる。 ウ 被控訴人図柄C(別紙(一)C) 被控訴人図柄Cは、被控訴人図柄@と比べると、口が略状に結ばれている点、二つの大きな丸い目玉の中の目が、略∩状であり、笑っている表情を表している点、服の縞模様が水色である点、手足の動きが異なる点で相違し、その余は同じである。 エ 被控訴人図柄D(別紙(一)D) 被控訴人図柄Dは、被控訴人図柄@と比べると、二つの大きな丸い目玉の中の目がいずれも丸く小さな黒目に描かれ、また、目玉の上方に3本の睫毛が描かれている点、服の縞模様がピンク色である点、手足の動きが異なる点で相違し、その余は同じである。 オ 上記のとおり、独自の創作性を認めることができる本件著作物の形状、図柄を構成する各要素の配置、色彩等による具体的な表現全体に関して、本件著作物(1)、(2)、(3)@ないしE、(4)@及びAと、被控訴人図柄@、C及びDを、それぞれ個別的に対比してみると、輪郭の線の太さ、目玉の配置、瞳の有無、顔と胴体のバランス、手足の形状、全体の配色等において、表現を異にしていることが明らかであり、このような状況の下で、被控訴人図柄を見た者が、これらから本件著作物を想起することができると認めることはできないから、被控訴人図柄を、そこから本件著作物を直接感得することができるものとすることはできないというべきである。 (4) 控訴人は、基本となるキャラクターが共通していれば、このキャラクターに特徴を持たせて差別化を図り、それにより個性を出すことが行われたとしても、同じキャラクターであると認識することができる限り、複製権又は翻案権の侵害に当たるという趣旨の主張をする。 しかし、著作権法によって保護されるのは、「表現したもの」、すなわち、現実になされた具体的表現を通じて示された限りにおいての創作性であり、その意味では、著作権法によって保護されるのは、現実になされた具体的な表現のみであるというべきである。ただし、現実になされた具体的な表現に創作性が認められる場合に、次に問題となるのは当該著作物の保護の範囲であり、具体的な保護の範囲を検討するに当たって、本来それ自体としては著作権法上の保護の対象とならない思想又は感情自体、あるいは、表現手法ないしアイデアの創作性、その延長上で、キャラクターの創作性が影響を及ぼすことがあることは否定できないところである。そして、キャラクターとして把握されるもの及びその創作性のいかんによっては、当該キャラクターを創作し、それを現実に具体的な図柄として表現した者は、その図柄を著作物とする保護の範囲として、当該キャラクターを現実化した図柄すべてを主張することが許されることもあり得るであろう。 しかしながら、前述したとおり、カエルを擬人化するという手法が広く知られた事柄であることは明らかであり、カエルを擬人化する場合に、顔、目玉、胴体、手足によって構成されることになることも自明である。そして、本件著作物の基本的な表現に着目してみる限り、前述のとおり、それは、通常予想されるありふれた表現といい得る範囲に属するものであるから、これ自体を保護に値するキャラクターの構成要素とすることはできず、細部の表現によって構成されるところから抽象化されるものを本件著作物のキャラクターと把握する場合には、被控訴人図柄を同一のキャラクターの具体化とみることができないものであることは、前述したところから明らかである。 そうすると、本件著作物の具体的表現を捨象した抽象的概念と考えられるキャラクターをいかなる内容のものとして把握するとしても、それを考慮することにより、前記(3)の判断が左右されることはあり得ないことになる。 (5) 以上によれば、被控訴人図柄が本件著作物の複製権又は翻案権を侵害したものということはできないことは、その余の点について判断するまでもなく明らかである。 2 被控訴人図柄の著作者等の開示について 被控訴人図柄の著作者等の開示に係る主張が、理由のないものであることは、上述したところに照らし明らかである。 3 結論 以上検討したところによれば、控訴人の本訴請求は、いずれも理由がないから、原判決は結論において相当であって、本件控訴は理由がない。よって、本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担について、民事訴訟法67条、61条を各適用して、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第六民事部 裁判長裁判官 山下和明 裁判官 山田知司 裁判官 宍戸充 別紙(一) 別紙(二)(1)〜(3)(4) |
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