判例全文 | ||
【事件名】映画「市民ケーン」等の著作権譲渡事件 【年月日】平成13年2月28日 東京地裁 平成11年(ワ)第25577号 損害賠償請求事件(第一事件) /平成12年(ワ)第2639号 損害賠償請求事件(第二事件) /平成12年(ワ)第3403号 損害賠償請求事件(第三事件) (口頭弁論終結日 平成12年11月22日) 判決 各事件原告 有限会社ユタカインダストリー 右代表者代表取締役 【A】 右訴訟代理人弁護士 林正紀 第一事件被告 株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下「被告ソニー・ミュージックエンタテインメント」という。) 右代表者代表取締役 【B】 第一事件被告 日本ビクター株式会社(以下「被告日本ビクター」という。) 右代表者代表取締役 【C】 第一事件被告 株式会社ビクターインタラクティブソフトウエア(以下「被告ビクターインタラクティブソフトウエア」という。) 右代表者代表取締役 【D】 第一事件被告 日本コロムビア株式会社(以下「被告日本コロムビア」という。) 右代表者代表取締役 【E】 第一事件被告 株式会社創美企画(以下「被告創美企画」という。) 右代表者代表取締役 【F】 第一事件被告 株式会社バップ(以下「被告バップ」という。) 右代表者代表取締役 【G】 第一事件被告 ナシヨナル物産株式会社(以下「被告ナシヨナル物産」という。) 右代表者代表取締役 【H】 第一事件被告 株式会社東北新社(以下「被告東北新社」という。) 右代表者代表取締役 【H】 第一事件被告 【H】(以下「被告【H】」という。) 第二事件被告 ソニー株式会社(以下「被告ソニー」という。) 右代表者代表取締役 【I】 第二事件被告 株式会社東芝(以下「被告東芝」という。) 右代表者代表取締役 【J】 右一一名訴訟代理人弁護士 末吉亙 同 田淵智久 同 渡邊肇 同 三好豊 同 野口祐子 同 松村祐土 第一事件被告 東芝イーエムアイ株式会社(以下「被告東芝イーエムアイ」という。) 右代表者代表取締役 【K】 第一事件被告 【L】(以下「被告【L】」という。) 第一事件被告 【M】(以下「被告【M】」という。) 第一事件被告 パイオニア株式会社(以下「被告パイオニア」という。) 右代表者代表取締役 【N】 第一事件被告 パイオニアエル・ディー・シー株式会社(以下「被告パイオニアエル・ディー・シー」という。) 右代表者代表取締役 【O】 右五名訴訟代理人弁護士 前田哲男 第三事件被告 株式会社東京放送(以下「被告東京放送」という。) 右代表者代表取締役 【P】 第三事件被告 株式会社毎日放送(以下「被告毎日放送」という。) 右代表者代表取締役 【Q】 第三事件被告 日本テレビ放送網株式会社(以下「被告日本テレビ」という。) 右代表者代表取締役 【R】 第三事件被告 讀賣テレビ放送株式会社(以下「被告讀賣テレビ」という。) 右代表者代表取締役 【S】 右四名訴訟代理人弁護士 遠山友寛 同 水戸重之 同 加畑直之 同 高橋聖 第三事件被告 株式会社フジテレビジョン(以下「被告フジテレビ」という。) 右代表者代表取締役 【T】 右訴訟代理人弁護士 松尾翼 同 加藤君人 同 森田貴英 主文 一 原告の請求をいずれも棄却する。 二 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第一 請求 (第一事件) 第一事件被告らは、原告に対し、各自金五億円及びこれに対する被告【M】及び被告【H】については平成一一年一一月二四日から、その余の被告らについては同月二五日からそれぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 (第二事件) 第二事件被告らは、原告に対し、各自金二〇〇万円及びこれに対する平成一二年二月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 (第三事件) 第三事件被告らはそれぞれ、原告に対し、各金一〇〇万円及びこれに対する被告東京放送及び被告日本テレビについては平成一二年二月二六日から、被告毎日放送については同月二七日から、被告讀賣テレビ及び被告フジテレビについては同月二九日からそれぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 第二 事案の概要 原告は、別紙映画著作物目録一ないし三六記載の映画の著作物(以下順に「本件映画著作物一ないし三六」といい、全体を「本件映画著作物」という。)に係る著作権を取得したところ、被告らが本件映画著作物に係るビデオグラムの販売、テレビ番組の放映等を行い、原告の右著作権及び営業権を侵害したと主張して、被告らに対し、損害賠償を求めた。 一 争いのない事実 1 RKO・ラジオ・ピクチャーズ・インク(その後、商号変更により、RKO・ジェネラル・インクとなった。以下「RKO」という。)は、もと本件映画著作物についての著作権(以下「本件著作権」という。)を有していた。 2 RKOは、一九五五年(昭和三〇年)一二月二二日、C&Cテレビジョンコープ(以下「C&C」という。)との間で、本件映画著作物に関して、RKOからC&Cに対して一定の権利を付与する旨の同日付契約(乙C五の一、二。以下「五五年契約」という。)を締結した(なお、契約の内容については争いがある。)。 3 C&Cの後身であるテレヴィジョン・インダストリーズ・インク(以下「インダストリーズ社」という。)は、一九六二年(昭和三七年)一一月一七日、オリエント・テレビジョン・インダストリー・インク(以下「オリエント社」という。)との間で、本件映画著作物に関して、インダストリーズ社がオリエント社に対して一定の権利をライセンスする旨の同日付契約(乙C八の三。以下「六二年契約」という。)を締結した。 さらに、インダストリーズ社は、一九六六年(昭和四一年)一月二八日、オリエント社との間で、新たな同日付契約(乙C八の四。以下「六六年契約」という。)を締結した。この契約は、六二年契約で規定されていた許諾の期間を一九七七年(昭和五二年)一月一日まで延長すること等を内容とするものである。 4 インダストリーズ社の後身であるトランスベアコン(以下「破産会社」という。)は破産したところ、その破産手続において、一九七一年(昭和四六年)六月一日付の米国ニューヨーク州南部連邦地方裁判所【U】破産判事(以下「【U】破産判事」という。)の決定に基づき、翌六月二日付で破産会社の【V】破産管財人から原告に対する本件映画著作物に関する一定の権利の譲渡(以下「本件バンクラプシー・セール」という。)がされた。 5 被告らの行為(この項において、争いある旨付記した部分は、原告の主張である。) 被告ソニー・ミュージックエンタテインメントは、本件映画著作物一、二、五、九、一一、一三、一六、一九、二一、二三、二四、二五、二六、二八及び二九をビデオグラムにして販売した。被告ソニーは、その子会社である右被告に前記行為を行わせた(争いがある。)。 被告ビクターインタラクティブソフトウエアは、本件映画著作物二〇をビデオグラムにして販売した。 被告バップは、本件映画著作物一四をビデオグラムにして販売した。 被告ナシヨナル物産(行為当時株式会社ビデオ・グラフ)は、本件映画著作物一ないし二九記載の映画著作物をビデオグラムにして販売した。 被告日本ビクターは、本件映画著作物一、九、一一、一六、一八、一九、二一、二二、二四及び二六をビデオグラムにして販売した。また、その子会社である被告株式会社ビクターインタラクティブソフトウエアに前記行為を行わせた(争いがある。)。 被告創美企画は、本件映画著作物一一及び二六をビデオグラムにして販売した。 被告パイオニアエル・ディー・シーは、本件映画著作物一、二、三、四、六、七、九、一一、一二、一四、一六、二〇、二一、二二、二四、二六、二七、二八、二九、三〇、三一、三二、三三、三四、三五及び三六をビデオグラムにして販売し、原告ユタカの著作権に係るRKO作品を含む別紙映画著作物目録三七ないし四〇の映画著作物を頒布した(二八、二九について争いがある。)。被告パイオニアは、その子会社である右被告に前記行為を行わせた(争いがある。)。 被告日本テレビは、平成七年三月二三日午後七時から午後九時の時間帯で、関東圏等で放映された「【W】、【X】世紀末特別番組、世界超偉人一〇〇〇万人伝説」の番組の中で、本件映画著作物一の映像の一部をテレビ放映した。また、同被告は、同月三一日午後七時から午後九時の時間帯で、関東圏等で放映された「世界大ボラ列伝」の番組の中で、本件映画著作物一六の映像の一部をテレビ放映した。 被告讀賣テレビ及び同日本テレビは、平成八年九月二四日午後一一時五〇分から翌二五日午前〇時四四分の時間帯で、日本テレビ系全国三〇局ネットで放映された「TVじゃん、【Y】のサルでもわかるニュース」の中で、本件映画著作物二六の映像の一部をテレビ放映した。 被告東京放送及び同毎日放送は、平成七年四月三〇日午前八時から午前九時五三分の時間帯で、TBS系列二八局で放映された「【Z】のサンデーモーニング」の番組の中で、本件映画著作物六の映像の一部をテレビ放映した。また、同被告らは、平成八年一一月二日午後九時から午後一〇時の時間帯でTBS系全国二八局で放映された「世界不思議発見!」の番組の中で、本件映画著作物二一の映像の一部をテレビ放映した。 被告毎日放送は、平成八年七月二八日午前二時一〇分から午前三時一〇分の時間帯で、近畿圏で放映された「映画の王様」の番組の中で、本件映画著作物一九の映像の一部をテレビ放映した。 被告フジテレビは、平成八年一〇月八日午前一時一〇分から午前一時四〇分の時間帯で関東圏等で放映された「ディレクターズ(仮題)」の番組の中で、本件映画著作物一六の映像の一部をテレビ放映した。被告パイオニア及び同パイオニアエル・ディー・シーは、これを幇助し容認した (争いがある。)。 被告東北新社及び同【H】は、テレビ会社である前記各被告をして、前記各テレビ放映等をさせた(争いがある。)。 被告東芝イーエムアイ及び被告東芝は、昭和五九年四月九日に東芝映像ソフト株式会社を設立し、その直後から同社をして、本件映画著作物三、四、六、七、八、一〇、一二、一五、一七、一八及び二七をビデオグラムにして販売させた。被告【L】及び同【M】は、東芝映像ソフト株式会社が右頒布行為を行っていた当時の同社の代表取締役として、同社に右頒布行為を行わせた(争いがある。)。 被告日本コロムビアは、本件映画著作物二二をビデオグラムにして販売した(争いがある。)。 二 争点 1 原告の著作権の取得 (原告の主張) 原告は、一九七一年(昭和四六年)六月一日の米国ニューヨーク州南部連邦地方裁判所【U】破産判事の決定に基づき、翌六月二日付の破産会社(トランスベアコン社)の【V】破産管財人の本件バンクラプシー・セールにおいて、本件映画著作物を含む七四二作の長編及び九〇〇作の短編からなる「アールケーオーライブラリー」の日本、沖縄、韓国、台湾(以下「本件地域」という。)における複製権、放送権、有線送信権、上映権、頒布権、その他すべての著作権(本件著作権)を譲り受けた。 被告らは、原告の前主である破産会社(破産財団)の保有していた権利は、本件著作権の一部にすぎない(ビデオテープを用いたテレビ放送又はビデオグラムの頒布を行う権利を含んでいない。)ので、原告は、破産会社(破産財団)の保有する権利を超えた権利を取得することはあり得ない旨反論するが、右主張は、以下のとおり失当である。 (一) 本件バンクラプシー・セールにおいて原告が取得した権利の内容 本件破産手続において、破産管財人が原告にどのような権利を譲渡したかを判断するに当たっては、破産財団に何が存するかについての破産管財人の認識を基準とすべきである。@ショーコーズオーダーには、六二年契約が添付され、同契約には、「著作権または更新著作権に基づいて、三五ミリまたは一六ミリの形式で、現在周知であるかまたは将来発見され考案される手段、方法、手順で、本件映画著作物のテレビ放映権及び劇場以外での頒布権を利用し、頒布し、上映すること、かつそれぞれの映画著作物について第三者をして利用させ、頒布させ、上映させること、また本件映画著作物の各々について下記に記載される領域において劇場上映、劇場以外での頒布、テレビ放映の方法で頒布させ上映させるための権利」と記載されているが、右記載を前提に解釈すべきであること、A五五年契約で、日本を含む域外領域においてC&Cに付与されていた権利は、「劇場上映権」「テレビ放映権」「劇場以外における頒布権」であるが、付与された三つの権利は、総体的概念としての「著作権」を構成するすべての権利であると考えるのが常識的判断といえること、B破産管財人の一般的な忠実義務は、配当原資となる破産財団の資産を極大化させることであるから、当時訴訟の相手方であったRKOの主張を前提とするはずはないし、範囲の不明確な五五年契約の制約を最大限に考慮することはあり得ないこと、Cその結果、本件バンクラプシー・セールにおける譲渡証書に、「日本、沖縄、韓国、台湾またはこれらが現在構成する地域を領域として、インダストリーズ社とオリエント社との間の六二年契約に記載された特定の映画著作物の初期著作権、更新著作権に基づく唯一かつ独占的権利及びライセンスにおけるすべての権利、資格、利益」と記載されていることに照らすならば、破産管財人は、本件映画著作物に関するすべての著作権を譲渡したとの意思を有していたことは明らかである。 (二) 信託的法律関係 被告らは、五五年契約において、原告の前主である破産会社(C&C、インダストリーズ社)が取得した権利は著作権の一部にすぎないので、原告の取得した権利も一部にすぎない旨主張するが、被告らの右主張は、以下の理由により失当である。 まず、五五年契約は、RKOがC&Cに対して、著作権の一部のみを付与し、一部を留保しているとしているが、右RKOに留保された権利は、信託的なものにすぎないと解すべきである。 当時実施されていた一九〇九年著作権法は、方式主義による登録制度を採用して、登録・更新登録を行う者をもって著作権者として、著作権としての不可分性を採用していた。そしてその不都合を補うために、リーガルオーナーとエクイタブルオーナー(ベネフィシャルオーナー)という信託的法律関係の理論が発展していた。 さらに、映画著作物については、@映画著作物に利用されたシナリオ、小説、音楽等の原著作物の権利の取扱いの問題があった。映画著作物の権利を維持するためには、原著作物の権利者の許諾が映画著作物との関係で維持されていなければならない。五五年契約では、原著作物の権利者とのライセンス関係の維持についてRKOの責任とし、RKOが原著作物の権利を保有することとし、映画著作物固有の権利が阻害されることを防止する一方で、C&CとRKOとの関係では、原著作物の権利である「リメークライツ」、「テレビ翻案権」、「舞台向け翻案権」、「ラジオ権」等をRKOに積極的な権利として帰属させている。そして、この趣旨は、一九五六年に米国著作権局に登録された五五年契約に関する「契約締結の通知」でも明白である。なお、RKOが有する「リメークライツ」「テレビ向け翻案権」「舞台向け翻案権」「ラジオ権」は、映画著作物固有の権利ではなく、映画著作物の中で使用された小説、シナリオ、音楽等の原著作物の権利にすぎない。Aまた、撮影時より存在するオリジナルのフィルムの管理の問題もあった。域外領域においては、フィルム素材はC&Cに引き渡されるものとし、リーガルタイトルがRKOに帰属することを宣言することによって、フィルム素材に信託関係が存在することを明確にしている。このように、五五年契約においては、著作権及びフィルム管理双方について、信託的法律関係を構築することによって、これをRKOとC&Cに分担させている。 五五年契約においては、C&Cの利益のためにRKOに第一次的な更新登録の義務を負わせている。更新登録は受託者たるリーガルオーナーが実質的権利を有するベネフィシャルオーナー(エクイタブルオーナー)のために行うものであるからリーガルオーナーであるRKOに著作権が帰属するのは当然のことである。現実の著作権者であるベネフィシャルオーナーが誰かを探るのであれば、更新登録が誰の費用と責任で行われるかを検討すべきであるところ、五五年契約では、C&CとRKOとは、双方の合意に基づき、C&Cが七〇パーセント、RKOが三〇パーセントの費用負担で著作権の更新登録を行うことになっている。ここでは、更新登録について信託的法律関係が表れており、受託者として第一次的にRKOを著作権者(リーガルオーナー)としつつも、C&CとRKOとは、ベネフィシャルオーナーとして著作権を共有している。さらに、RKOが更新登録の責任を果たさない場合にはC&Cが更新登録を行うこととなり、この場合C&Cがリーガルオーナーとなる。また、ベネフィシャルオーナーは、リーガルオーナーに対して信託的法律関係が解消された場合には、ベネフィシャルオーナーとしての地位のみならず、リーガルオーナーとしての地位も回復できる。 また、五五年契約では、C&Cの訴訟提起権が規定されており、C&Cは自らの名、RKOの名、又は双方の名においてこれを行使することができ、しかもその費用負担は、C&Cの単独の負担とされている。訴訟提起権が認められていれば、一九〇九年著作権法下において、著作権についての信託的法律関係の中での実質的著作権者「ベネフィシャルオーナー」であるという理論は、米国法上で明確に確立されている。 (三) 破産管財人の権限 被告らは、原告の前権利者である破産会社(C&C、インダストリーズ社)の取得した権利は著作権の一部にすぎないので、原告の取得した権利も一部にすぎない旨主張するが、被告らの右主張は、以下の理由によっても失当である。 すなわち、破産管財人が売却できるのは、原則として破産財団に属する資産であるが、これには次の例外がある。まず、破産財団に課せられた契約上の義務(contractual obligation)は排除される。また、破産財団に属しているか否かについて紛争のある権利(other’s rights in bona-fide dispute)は排除できる。五五年契約でRKOがC&Cに付与した「映画著作物固有の権利」は、著作権のベネフィシャルオーナーとして実質的に意味のある権利であり、これを空洞化させる危険性のあるものは、管財人の忠実義務の観点から判断すると「紛争ある権利」となる。 「劇場上映権」「テレビ放映権」及び「劇場以外における頒布権」について、五五年契約及び六二年契約において課せられた「ホームユース」の制約及び「一六ミリまたは三五ミリ」のフィルムを使用するという制約は、破産管財人が排除する権限のある「契約上の義務」あるいは「紛争のある第三者の権利」といえるから、本件バンクラプシー・セールにより既存の法律関係に上書きがなされた以上、その後の手続において、これに反する主張はできない。すなわち、「ホームユース」や「一六ミリ、三五ミリ以外の使用」は、RKOに留保された権利ではなく、単なる破産財団の資産に課せられた「契約上の義務」にすぎず、RKOが積極的に行使できる権利ではない。また、「一六ミリ、三五ミリ以外の使用」の抗弁については、一六ミリフィルムまたは三五ミリフィルムは、映画著作物の一時的固定手段にすぎないから、権利を限定する趣旨ではない。RKOが異議を述べていたとしても、RKOと破産管財人との間で当事者主義的訴訟構造が設定されると、RKOは、「ホームユース」や「一六ミリ、三五ミリ以外の使用」が、RKOの積極的権利であること(権利の有効性)、これがオリエント社に譲渡される権利と抵触することなくかつこれに優先すること(権利の優先性)、その権利がどの範囲まで及ぶのか(当該権利の範囲性)のすべてについて立証責任を負担するが、RKOがその権利性の立証に成功していたとは考えられない。 (四) 破産手続等における権利主張の制限 仮に、五五年契約により、C&Cが権利の一部のみ付与されていたとしても、破産手続において原告が著作権を取得したことは、以下の理論によって保護を受ける。すなわち、 (1) 本件バンクラプシー・セールにおいて、フリー・アンド・クリアーの法理の適用がある。本件では、フリー・アンド・クリアーの適切な手続が行われ、ショーコーズオーダーにおいて「免責証書を取り交し、特定の契約を批准する」(Exchanging Release and to affirm a certain contract)という記載が付されている。これにより、批准された契約書に書かれた内容の権利が移転し、それ以外の一切の債権債務関係がすべて消滅する。裁判所により特定の契約を批准する許可が与えられた以上、その契約にSale Free and Clearの趣旨を盛り込むことができる。本件バンクラプシー・セールは、申立後、権利の排除される第三者に対して通知が行なわれるという、Sale Free and Clearの形式に沿っている。 (2) 原告は、ボナファイドパーチェサーである。 五五年契約でC&Cに譲渡された権利に課せられたさまざまな制約についての議論は、免責証書を取り交して特定の契約を批准する(exchanging release and to affirm a certain contract)権限を破産管財人に付与する決定を行なうためのショーコーズオーダーの通知をRKOが受領した際に、弁論手続に参加して異議を申立てて行うべき事項である。RKOは、このような機会を与えられながら異議を述べなかった。その結果、事件は既に確定し、従前の法律関係は、本件バンクラプシー・セールの譲渡証書の契約条項で上書き(override)されている。したがって、被告らは、国家によって上書きされる以前の消滅した法律関係を前提に主張を展開できる立場にはない。 本件においてボナファイドパーチェサーとは、「裁判所の決定に基づくバンクラプシー・セールで権利を取得した者」を意味し、「裁判所の決定の部分が上訴で破棄されたとしても、バンクラプシー・セールで購入した権利は保護される」という米国判例法上で確定した法理を意味する。原告は、裁判所の決定によるバンクラプシー・セールで権利を取得したものであるから、ボナファイドパーチェサーである。さらに、本件では、バンクラプシー・セールを許可した決定が確定して既判力を獲得したわけであるから、ボナファイドパーチェサーか否かを議論するまでもなく、既判力を有する米国破産裁判所の決定に基づくバンクラプシー・セールで権利を取得したと主張することで充分である。 (3) 我が国の裁判所は、破産会社がいかなる権利を有していたかについて判断することはできない。 破産手続が係属中はもちろん、破産手続が終結した後においても、破産者の資産に対しては破産裁判所に専属管轄がある。したがって、本件バンクラプシー・セールにおいて権利を取得する際の原告のボナファイドネスの有無を判断する専属管轄は、バンクラプシー・セールの前後を通じてニューヨーク州南部連邦地方裁判所破産裁判所にある。この裁判管轄の問題は、国際私法上、外国国家政府によって、その管轄権に基づいてなされた国家行為を日本国政府が承認するかという問題に帰結するので、国際的協調の観点を尊重しなければならない。 (被告らの反論) 原告は、一九七一年六月二日、破産管財人の譲渡証書に基づき、本件映画著作物についてのすべての著作権を取得したと主張するが、右主張は否認する。その詳細は、別紙被告東北新社外二名の平成一二年四月七日付け、及び同年六月二二日付け各準備書面のとおりである(なお、被告らすべてが援用済みである。)。 すなわち、以下のとおり、原告の前主である破産会社(C&C、インダストリーズ社)の保有していた権利は、本件著作権の一部にすぎない(ビデオテープを用いたテレビ放送又はビデオグラムの頒布を行う権利を含んでいない。)。原告は、前主の保有する権利を超えた権利を取得することはあり得ない。 (一) 原告の前主である破産会社(C&C、インダストリーズ社)の取得した権利の内容 五五年契約において、破産会社の前身であるC&CはRKOから、本件映画著作物に関して権利を付与された。 しかし、右付与された権利の内容は、一六ミリ又は三五ミリフィルムという媒体を使用した劇場上映権など限定的な権利であって、右媒体を使用しないテレビ放送権やビデオグラム頒布権を含むものではない。さらに、C&Cは、RKOから、本件映画著作物に関する権利の一部につき、譲り受けたのではなく、ライセンスを受けたにすぎない。 (1) 五五年契約の内容について 五五年契約に係る契約書には、日本を含む域外地域における権利として、C&Cには、@一六ミリ又は三五ミリフィルムを用いた劇場上映権、A一六ミリ又は三五ミリフィルムを用いたテレビ放映権、B一六ミリによる非劇場上映権を付与する旨記載されているが、他方、著作権を含む右@からB以外のすべての権利は、RKOに留保される旨明示的に記載されている。 ア 米国における著作権に関する契約では、権利付与の規定の文言自体が充分に限定されたものである場合、この規定は他のいかなる権利も付与するものではないとの解釈原則が確立している。五五年契約の権利付与の文言は前記の権利に明確に限定されているから、五五年契約は、前記の明示的に付与した権利以外の何らの権利も含まない。 米国における著作権に関する契約では、権利の留保条項が存在する場合、権利付与の範囲をよりいっそう明確に限定的解釈される原則が確立している。五五年契約における権利の留保条項の存在していることにより、権利付与の範囲を限定的に解釈すべきことになる。 イ また、五五年契約において、フィルムと磁気テープを別個の媒体として扱っている規定が存在することに照らすならば、他の規定においても、フィルムと磁気テープとは別個の媒体であることを前提として解釈すべきであるから、五五年契約においては、RKOからC&Cに対して、一六ミリ及び三五ミリフィルムに基づく権利のみを付与し、ビデオグラムを使用する権利を付与していないものと解釈するのが相当である。 ウ 仮に、ビデオテープ及びビデオグラムが、「将来技術」に当たると解する余地があるとしても、五五年契約の中で、テレビ翻案権に関する規定においては、「将来技術」の文言が用いられているにもかかわらず、域外地域についての本件映画著作物に関する権利をC&Cに付与する規定においては用いられていない点に照らせば、本件映画著作物に関する権利の付与規定において、将来技術を含むものと解釈することは許されない。 エ 域外地域におけるテレビ放映権の付与規定においては、明確に「一六ミリ又は三五ミリフィルムの使用」によるものに限定されていることに照らすと、域外地域におけるテレビ放映権について、媒体に関する制限がないものと解釈することは許されない。したがって、域外地域において磁気テープ等によるテレビ放映権がC&Cに付与されていたと解する余地はない。 オ さらに、五五年契約において、RKOはC&Cに対し、本件映画著作物に関する権利の一部につき、譲渡したのではなく、ライセンス(使用許諾)したものと解すべきである。 五五年契約に適用される一九〇九年米国著作権法では、全体の権利に満たない一部の権利の「譲渡」は、著作権の譲渡ではなく、単なるライセンスであると取り扱われてきた。五五年契約では、C&Cに対して移転された権利が一部の権利に限定されていること、及びRKOには一定の権利が留保されることが明確に規定されていることから、五五年契約は権利全体の移転でない。したがって、RKOはC&Cに対し、本件映画著作物についてライセンスをしたと解すべきことになる。さらに、五五年契約は、文言上も「ライセンス」と明記している。 以上のとおり、五五年契約は、日本を含む域外地域においてビデオテープを用いたテレビ放送権又は家庭内使用のためのビデオグラム頒布権をC&Cに対し付与するものではないことは明らかである。 (2) 六二年契約の内容について インダストリーズ社(C&Cの後身)は、オリエント社に対して、一定の権利を付与したが、右権利の範囲は、五五年契約においてC&Cが取得した権利の範囲に限定されていた。六二年契約では、同契約が五五年契約に従い、その範囲内でのみ権利を付与するものであることが明記されているから、C&Cは、五五年契約に基づいて付与されていた権利を超える何らの権利も、六二年契約に基づいてオリエント社に対して付与していない。 また、六二年契約も、五五年契約の範囲内での権利の移転であり、すべての権利の移転ではないから、不可分性の原則に基づき、オリエント社に対してライセンスを与えたものと解すべきである。ライセンサーは、自己が有する権利以上のものを移転することができないから、五五年契約でライセンスしか受けていないC&Cは、六二年契約において、その範囲を超えてライセンスすることができない。さらに、六二年契約は、文言上も「ライセンス」と明記している。 (二) 原告が本件バンクラプシー・セールによって取得した権利の内容 以下のとおりの理由から、破産管財人の売却許可申請書、財産目録、鑑定書、売却許可決定、ビル・オブ・セール(譲渡証書)、権利放棄文書によれば、破産管財人は、六六年契約によって更新(修正)された六二年契約においてオリエント社に対して既に移転していた権利を、原告に移転したにすぎないと解すべきである。 (1) 破産会社の破産手続によって、RKOが破産会社に従前付与していた権利以上のものを原告が取得するものではないことは、米国破産法の原則から明らかである。破産財団は、当該財産を否認の対象とするか、破産管財人が破産財団管理の過程で破産法以外の法律に基づいて取得しない限りは、破産債務者が破産時点において所有していなかった財産上の利益を含むことはない。五五年契約でRKOに留保された本件映画著作物に関する権利について、RKO又はその承継人に対し否認訴訟が提起されていないのであるから、破産管財人は、一六ミリ又は三五ミリフィルム以外の媒体を用いたビデオグラム権又はその他の権利を原告に移転できない。 (2) 破産管財人は、売却許可申請書の中で「破産者のオリエント社との契約」を「承認する」ことの許可を破産裁判所に求めている。契約を「承認する」とは、米国破産法上、破産管財人が、当該契約上の一切の負担及び制限とともに、当該契約上の一切の利益を引き継ぐこと、すなわち、かかる契約に関して破産債務者の「後釜に座る」ことを意味しており、破産管財人は、破産者が所有していた権利のみを譲渡する権限を有するから、右売却許可申請書が、破産財団が有していた権利の範囲又は性質を拡大させるものではない。 なお、「管財人が何らの責任も負わない形で(without any liability to the trustee)」という文言は、破産財団に属する権利の譲渡が完了した場合は、破産管財人はもはや当該契約に関することから離れ、破産財団は当該契約に関してオリエント社及び原告からそれ以上の請求を一切受けることはない旨を意味するにすぎず、「オリエント社及び原告が何らの責任も負わない形で」ということを意味しない。また、「権利放棄(release)を取り交わすことによって」という文言は、破産管財人がオリエント社に対し有していた請求権の放棄を行い、同様にオリエント社が破産財団に対し有していた請求権の放棄を行うことを意味するものであって、和解の当事者ではない第三者の権利に影響を与えるものではないし、当該売却が第三者の何らの担保、請求及び負担も付されていないこと(セール・フリー・アンド・クリアー)を意味するものでもない。 (三) 原告が主張するその他の法理について (1) 原告が主張する「フリー・アンド・クリアー」の法理は、本件において適用の余地はない。原告が、同法理によって本件映画著作物に関する著作権を取得することはない。 そもそも「フリー・アンド・クリアー」の法理によって除去される可能性があるのは、破産者の有していた権利に付着していた「担保、請求又は負担」についてである。五五年契約においてRKOに留保された権利は、破産会社の映画に関する権利に対する「担保、請求又は負担」ではないのであるから、同法理による除去の対象とならない。 また、売却許可決定が、「セール・フリー・アンド・クリアー」である旨を明記しない限り、当該売却はこれらの負担の存在を前提にされることになるが、破産会社での本件売却許可決定は、売却が「フリー・アンド・クリアー」であるべきと規定していない。 さらに、米国憲法の適正手続原則の下では、「フリー・アンド・クリアー」が認められる場合であっても、売却前に第三者に対する告知を行って裁判所の審理を受ける機会を与えることなく、当該第三者の権利に影響を及ぼすことはできないとされている。RKO又はその承継人は、破産管財人が、本件映画著作物に関してRKOに留保された権利を、第三者に移転することを意図していたことを示す通知を受領していない。原告は、無担保債権者たる当事者に対する破産宣告及び破産手続の日程に関する通知をもって適正手続が履践されたと主張するが、これを「フリー・アンド・クリアー」の十分な告知とすることはできない。 (2) 原告が主張する「ボナファイド・セール」の法理は、本件とは無関係である。 「ボナファイド・セール」の理論は、偽装取引の対概念であり、本件においては、いずれの当事者も当該売却を無効にするよう求めているわけではないので、右理論とは無関係である。破産管財人による原告への売却がボナファイド・セールであったからといって、原告が破産会社の破産を通じてRKOに留保された権利を取得したとの結論は決して導かれない。 (3) 原告が主張する「ボナファイド・パーチェサー」の法理は、本件とは無関係である。「ボナファイド・パーチェサー」の法理は、未登録の瑕疵について何ら通知を受けていない善意の第三者が、売買目的物に関して従前の所有者が保有していた権原以上の権原を取得できることがあるとする理論である。本件においては、そもそもRKOに留保された権利を、一六ミリ及び三五ミリフィルムという媒体を用いた権利に関する破産管財人の権原に対する未登録の瑕疵と解することができない。また、原告は、関連する一切の契約を入手して調査することが可能である。そもそも原告とオリエント社との特殊な関係に照らすならば、破産会社及びオリエント社が保有していた権利が限定的なものであったことにつき、原告が善意無過失であったはずはない。よって、原告に「ボナファイド・パーチェサー」の法理は適用されない。 (4) 原告が主張する「我が国の裁判所は、破産会社がいかなる権利を有していたかについて判断する権限を有しない。」旨の主張は、以下の理由から失当である。 すなわち、我が国の裁判所は、本件バンクラプシー・セールの対象について判断することができる。そもそも、ビル・オブ・セール(譲渡証書)は、当事者でない者に対して、また、対象となっていない事項については、拘束力を生じない。本件破産手続では、譲渡の対象となった権利の範囲は、判断の対象となっておらず、また、被告らも同手続の当事者となっていない。したがって、本件訴訟において、同手続中の判断につき生じた拘束力は及ばない。また、破産裁判所は、破産者の資産が管理下にある間は、その資産に専属管轄権を有するが、破産管財人により売却された資産については専属管轄権を保持しない。したがって、我が国の裁判所は、破産管財人が原告に対して譲渡した権利に、原告が主張するような権利が含まれていないとの認定判断を行う権限を有する。 2 原告の対抗要件欠缺 (被告らの主張) 被告らは、本件映画著作物の著作権者であるRKOから、それぞれの行為について正当なビデオグラム権の再許諾又は再々許諾を受けており、対抗要件の欠缺を主張できる法的利害関係を有する第三者である。 すなわち、本件著作権は、もと、RKOが有していたものであるところ、RKOは、一九七五年(昭和五〇年)一一月六日、アトランティック・アート・エスタブリッシュメントに対し、本件著作物を含む映画の著作物についての日本での複製権及びビデオグラム頒布権を含む権利を、二〇年間の期間で独占的に許諾した。この際、アトランティック・アート・エスタブリッシュメントは、RKOより、第三者に再許諾する権利を同時に付与された。そして、被告らは、アトランティック・アート・エスタブリッシュメントの配給会社であるアトランティック・アート・エンタテインメントから再許諾を受けたか、さらにその者から再々許諾を受けてそれぞれの行為を行っている。 仮に原告が本件著作権の譲渡を受けたとしても、かかる譲渡について著作権登録を受けていない以上、原告は被告らに対し本件著作権の譲受けを対抗することができない(著作権法七七条一号)。 (原告の反論) 本件著作権の原告に対する譲渡については、登録を対抗要件とする制度の適用の前提を欠くから、被告らの主張は失当である。 すなわち、登録制度には保存登記に対応する制度がないから、外国著作物について著作物の本国の司法手続で権利を取得した原告には単独申請の方法がなく、登録制度の利用が制約されている。また、登録制度は外国著作物について方式主義による登録を義務づけることにもなり、ベルヌ条約上の無方式主義の履行義務に反する。したがって、米国著作物について米国内の取引法に基づいて著作権の帰属が決められたものについては、日本法に基づく取引関係を前提とする登録制度の適用の前提を欠く。 3 被告らの著作権侵害及び営業権侵害行為 (原告の主張) 被告らの頒布行為は、故意又は過失による原告の頒布権の侵害に当たり、被告らのテレビ放映は、故意又は過失による原告の公衆送信権の侵害に当たる。 第一事件及び第二事件被告らは、その頒布行為が著作権侵害であることを知りながら、あるいは過失により知らないで、随時、共謀して、「争いのない事実」欄5記載の行為を含む違法な頒布行為を行った。右被告らは、日本における有力なビデオ機器製造会社の関連会社や、ビデオカセット、ビデオディスク市場の有力な業者であり、その著作権侵害行為が繰り返されたことにより、RKO作品七四二作品の著作権者である原告による同作品の日本市場における頒布が不可能な状態となった。その結果、原告の業界での信用を失墜させて、原告を実質的な倒産状態、営業休止状態に追い込み、もって、原告のRKO作品七四二作品に係る日本における営業権を侵害した。 (被告らの認否) 原告の前記主張を争う。 4 損害 (原告の主張) 原告は、第一事件及び第二事件被告らの営業権侵害行為により、有形無形の利益を失い、その金額は、著作権侵害による損害を除いても、一五〇億円を下らないところ、一部請求として、第一事件被告らに対し各自五億円を、また、第二事件被告らに対し、各自二〇〇万円を請求する。 原告が、その著作権の行使につき第三事件被告らから通常受けるべき金額は、テレビ番組のコマーシャル収入の総額の二割を下らないと考えられるところ、一部請求として、第三事件被告らそれぞれに対し、各一〇〇万円を請求する。 (被告らの反論) 原告の前記主張を争う。 原告は、遅くとも昭和六二年三月二八日には、前記不法行為の損害及び加害者を知っていたから、被告らは、本訴提起より三年以前の不法行為に基づく損害については、消滅時効を援用する。 5 本案前の申立て (被告東北新社及び同【H】の主張) 本件訴訟において、原告は、被告東北新社及び被告【H】に対して、営業権侵害に基づく請求をしているが、右請求は、当庁平成一〇年(ワ)第五四三号事件(以下「前訴」という。)において既に請求済みである。すなわち、原告は、本件において、「被告東北新社及び被告【H】が訴外アトランティックアートエンタテインメントをしてAE企画等に昭和六三年六月二九日付警告状を発せしめ、以て原告のビデオ頒布をとん挫させた」と主張して、営業権侵害に基づく損害賠償を請求しているが、原告は、前訴の平成一一年一〇月一五日付準備書面の一1において、右と全く同一の事実を、原告の損害賠償請求を基礎付ける事実として主張している。原告が、本件訴訟において、右事実を重ねて損害賠償請求の基礎とすることは、二重起訴に該当して許されない。したがって、右被告らに対する本件訴えは却下されるべきである。 第三 争点に対する判断 一 まず、争点1(原告の著作権取得)について検討する。 当裁判所は、以下のとおり判断した。 すなわち、@五五年契約において、破産会社の前身であるC&CはRKOから、本件映画著作物に関して権利を付与(ライセンスないし使用許諾)されたが、その権利範囲は、一六ミリ又は三五ミリフィルムという媒体を使用した劇場上映権等に限定され、日本国内においてビデオテープを用いてテレビ放送する権利及び家庭用ビデオカセットを頒布する権利は含まれていなかった。A六二年契約及び六六年契約により、インダストリーズ社(C&Cの後身)は、オリエント社に対して、一定の権利を付与(サブライセンス、再使用許諾)したが、右権利の範囲は、五五年契約においてC&Cが取得した権利の範囲に限定されていた。B本件破産手続の経緯に照らすならば、本件バンクラプシー・セールは、五五年契約により破産会社(C&C)がRKOからライセンスを受け、六二年契約により破産会社(インダストリーズ社の後身)がオリエント社にサブライセンス(修正により期間の制限ないものとなった。)したという契約上の権利関係を、破産管財人が、原告に対して譲渡したものと解することができる。Cしたがって、原告は、日本国内においてビデオテープを用いてテレビ放送する権利及び家庭用ビデオカセットを頒布する権利を取得していない。 以下において、その詳細を述べる。 1 五五年契約について (一) 五五年契約の内容は、次のとおりと認められる(乙C五の一、二)。右は、RKOとC&C(破産会社の前身である。)との間で締結された契約であるが、右契約書には、RKOはC&Cに対して、本件映画著作物に関して、一定の権利を売却又は付与する旨記載がされている。 (1) 五五年契約においては、その対象となる映画著作物について、@短編映画、A長編映画、B独立長編映画の三種類に分類しているが、本件で問題となっている本件映画著作物はいずれも長編映画に属する(2・0)。 (2) 長編映画については、@域内地域(1・01)とAそれ以外の域外地域(1・02)との区分に応じて、C&Cに付与される権利が定められている。域内地域は、合衆国大陸部、アラスカ、ハワイ、カナダ自治領及びその海外県、ニューファンドランド並びにバハマとされ(1・01)、域外地域は日本を含む。域外地域において、C&Cに付与される権利は、次のとおりと定められている。 ア 劇場上映権(3・02a) 「各映画を、一六ミリ又は三五ミリフィルムを用いて、域外地域内の映画館において上映し、上映する権限を他者に付与する、著作権に基づく(又はその更新に基づく)単独で独占的かつ永続的な権利、ライセンス、及び特権」 イ テレビ放映権(3・02b) 「無料テレビ及び有料テレビの双方において、又は域外地域に所在するテレビ局において、一六ミリ又は三五ミリフィルムを用いて、かかる映画を放送し、配信する権利、及びかかる権利を他者に付与する、著作権に基づく(又はその更新に基づく)単独で独占的かつ永続的な権利、ライセンス、及び特権」 ウ 非劇場上映権(3・042、1・11) 「一六ミリフィルムのみを使用して、各映画を上映し、配給し、その他利用する独占的で世界規模の権利及びかかる映画を上映し、配給し、その他利用する権限を他者に付与する独占的で世界規模の権利」 (3) 他方、五五年契約においては、RKOに留保される権利についても規定されている。すなわち、長編映画について「3・02、3・03及び3・04に基づいてC&Cに対し明確に付与されてはいないすべての権利は・・・RKOに明確に留保されている」とされ、特に、リメイク権(3・2)、テレビ翻案権(1・08)、舞台向け翻案権、ラジオ権、著作権及び域内地域における劇場上映権(再上映を含む。)等は明示的に留保される旨が規定されている(3・1)。 (4) ところで、RKOに留保された権利の一つとしての前記「テレビ翻案権」は、「(a)ライブベースによるか、フィルム、エレクトロニカム又は磁気テープによるか、あるいは現在知られているか又は将来発見されるその他のいかなる記録手段によるかを問わず、テレビ放送での使用のみを目的とした映画の新バージョン又は映画に基づくプレゼンテーション・・・を作成し、かかる作成を行う権限を他者に付与する独占的で永続的な権利・・・並びに(b)かかる新バージョン又はプレゼンテーションをテレビ局で放送し、かつかかる放送を行うライセンス及び権限を他者に付与する独占的で永続的な権利」と定義されている。右規定では、「フィルム」と「磁気テープ」とが明確に区別されている。また、「現在知られているか又は将来発見されるその他のいかなる記録手段によるかを問わず」という文言も明確に示されている。 (5) また、域内地域における長編映画に関するテレビ放映権は、「映画を無料・有料テレビの双方によって、又は域内地域に所在するテレビ局において、かかる各映画を放送し、配信する権利、及びかかる権利を他者に付与する、著作権に基づく(又はその更新に基づく)単独で独占的かつ永続的な権利、ライセンス、及び特権」と定義されている(3・03)。域外地域における長編映画に関するテレビ放映権の前記定義と比較すれば、「一六ミリフィルム又は三五ミリフィルムを用いて」という媒体の限定文言が付加されていない点が異なる。 (二) 以上のとおり、右契約書の記載内容及び体裁によれば、五五年契約において、C&CがRKOから付与された権利は、一六ミリ又は三五ミリフィルムを使用した権利に限定され、日本国内においてビデオテープを使用してテレビ放送する権利及び家庭用ビデオカセットを頒布する権利は含まれていないことは明らかである。 その根拠は、以下のとおりである。 @ 五五年契約によれば、本件映画著作物を含む長編映画について、日本を含む域外地域においては前記の三つの権利(劇場上映権、テレビ放映権、非劇場上映権)のみを付与する旨明確に規定し、それらの三つの権利の内容についても、「一六ミリ又は三五ミリフィルムを用いた」又は「一六ミリフィルムを用いた」との文言の点も含めて詳細かつ具体的に規定しているから、C&CがRKOから付与された権利はこれに限定されると解すべきである。また、C&Cに明確に付与されていないすべての権利がRKOに留保される旨の権利留保規定を、明示的に定めていることもこの解釈を裏付ける。 A 長編映画に関するテレビ放映権の定義規定において、域外地域と域内地域を比較すると、域外地域に関する規定のみ「一六ミリフィルム又は三五ミリフィルムを用いて」という媒体の限定文言が付加されていることに照らすと、同契約における「一六ミリフィルム又は三五ミリフィルムを用いて」という文言は、厳密に媒体を限定したものと解するのが相当である。 B RKOに留保された「テレビ翻案権」の定義規定において、「フィルム」と「磁気テープ」とが明確に区別されていることに照らすと、「一六ミリフィルム又は三五ミリフィルム」という用語には、磁気テープを含まないと解するのが相当である。 C 「テレビ翻案権」の定義規定のみに、「現在知られているか又は将来発見されるその他のいかなる記録手段によるかを問わず」という将来技術も含む旨の文言が明記されていることに照らすならば、C&CがRKOから付与された前記三つの権利の内容にこのような将来技術を含むと解するのは合理的でないというべきである。 なお、五五年契約に適用される一九〇九年米国著作権法は、著作者及び著作権者の保有する権利は不可分であって、その一部の譲渡は許されないとの前提(不可分性の原則)に立っていることは、当事者間に争いがない。前記のとおり、五五年契約ではC&CにRKOの有していた権利のうち一部のみが売却又は付与されている旨記載されている点を考慮すると、同契約において、RKOがC&Cに対して付与した権利は、使用許諾権(ライセンス)と解するのが合理的である。五五年契約にはライセンスという語が多数用いられていることもこれを裏付ける。 2 六二年契約及び六六年契約について (一) インダストリーズ社(C&Cの後身)とオリエント社と締結した六二年契約の内容は、次のとおりと認められる(乙C八の三)。すなわち、インダストリーズ社は、オリエント社に対し、日本、沖縄、韓国及び台湾における、一六ミリフィルム又は三五ミリフィルムによる劇場、非劇場又はテレビにおける本件映画著作物の利用権を許諾する(3・1、4・2)。右契約書には、「本契約における付与及びライセンスは、五五年契約に記載の制限及び条件に従うものである。」とされ(1・4)、許諾の期間は、当初契約締結日から一〇年間(終期は一九七二年(昭和四七年)一一月一七日となる。)とされていた(4・1)。 さらに、インダストリーズ社がオリエント社と締結した六六年契約の内容は、次のとおりと認められる(乙C八の四)。すなわち、六二年契約で規定されていた許諾の期間を一九七七年(昭和五二年)一二月三一日まで延長すると共に、同年一月一日までに一定の対価を支払うことによって当該許諾に係る権利について期間の制限のない利用権を取得するオプションを与える(E)というものである。 (二) 以上の事実によれば、六二年契約及び六六年契約により、本件破産手続開始時において、オリエント社が有していた権利は、五五年契約に基づいてC&C(インダストリーズ社)が許諾を受けた権利のうちで、一定の期間内における一定地域内の利用権と、その利用権を期間の制限のないものとするオプション権ということができる。また、破産会社は、本件破産手続開始時において、C&C(インダストリーズ社)が有していた右各契約上の権利義務を引き継いでいたことが明らかである。 なお、六二年契約は五五年契約に基づきインダストリーズ社(C&C)がRKOから許諾(ライセンス)を受けた権利の一部を更にオリエント社に付与したものであるから、オリエント社が取得した権利も、再許諾(サブライセンス)を受けた権利と解するのが合理的である。 3 原告が本件バンクラプシー・セールにより取得した権利の内容 (一) 証拠によれば、本件バンクラプシー・セールに係る破産手続の経緯は以下のとおりと認められる。 (1) 破産管財人が破産管財業務の一環として作成した双務契約リスト(破産会社が破産宣告前に締結し、破産宣告後も承継すべき双務契約を記載したリスト)には、五五年契約が掲載されている(甲四二)。そして、破産管財人が提出した財産目録(破産管財人が覚知する破産会社の財産を記載した目録)の中にも、「RKO契約に記載される一六ミリ白黒ネガのプリント。ただし、破産会社に権利を付与したRKO契約には、一六ミリカラーフィルム、三五ミリ白黒フィルム及び三五ミリカラーフィルムも含まれていたが、これらは財団には含まれていない。」との記載がある(乙C一七)。 (2) 破産管財人の破産裁判所に対する一九七一年四月二〇日付け許可申請書には以下のとおりの記載がある(乙C八の二)。すなわち、RKOとC&C(破産会社の前身)との間の五五年契約やインダストリーズ社(破産会社の前身)とオリエント社との間の六二年契約及び六六年契約について、「これまで破産者は、破産者とRKOとの間で締結された契約書に特定される一定の本数からなるRKO映画ライブラリを頒布し上映する権利を取得していた。破産者は、当該映画ライブラリに関する自らの様々な権利を移転したが、その中には、日本、韓国、沖縄及び台湾において一九七六年末まで当該映画を頒布し上映する権利のオリエント社への移転も含まれていた。」と記載されている(二項)。そして、オリエント社の取得した権利について、「当該契約において、オリエント社は、破産者から当該権利を期限の制限なく利用するオプションを付与された。かかるオプションは価額二万一〇〇〇ドルとされ、その行使期限は一九七一年一二月末まで延長された。」と記載されている(三項)。その上で、オリエント社の買受申出について、「オリエント社は、申請人に対し、破産者のオリエント社との契約を、当該契約に基づいて管財人が何らの責任も負わない形で上記権利を期間の制限なくオリエント社に譲渡する(破産者により取得された権利の譲渡を除く。)ことのみを範囲として承認するよう要求している。オリエント社は買受価額一万ドルを提示している」、「オリエント社による上記提示は、申請人がオリエント社に対して有している上記契約に基づく総額一万三二五〇ドルのロイヤルティ請求権について、申請人がオリエント社を免責することを条件としている。オリエント社は、かかる契約に基づく様々な懈怠行為・・・について主張し、かかる懈怠行為により上映用プリントを販売できなかったため損害を被ったと主張した。」と記載されている(五項、六項)。 右買受申出に対する破産管財人の意見については、「申請人は、・・・かかる買取価額が公正かつ合理的であると考えている。」、「申請人は、免責の取り交わしが、少なくとも一万ドル(かかる免責の取り交わしがなければ取得できない可能性が高いと考えられるもの)を本破産財団にもたらすことになる限りにおいて、かかる取り交わしが本破産財団のために最も得策であると真に考えている。」と記載されている(五項、六項)。 (3) 右の許可申請を受けて発令された、【U】破産判事の一九七一年四月二〇日付ショー・コーズ・オーダー(債権者集会に対する理由開示命令)は、破産管財人が六二年契約を承認するに当たって考慮するために、債権者集会を開催すること等を命じたものである(乙C八の一)。 (4) 右許可申請及び債権者集会に基づいて行われた【U】判事の一九七一年六月一日付売却許可決定では、管財人による申請について審理をした結果、許可申請書に記載された前記の範囲で六二年契約を承認することを許可する旨記載されている(乙C九)。 (5) その後、翌二日、破産管財人は、原告に対して、破産財団に属する権利の一部について譲渡をしたが、そのビル・オブ・セール(譲渡証書)には、@【U】判事の右売却許可決定に基づいて、破産管財人が、原告又はその承継人に対して、一万ドルで、一定の権利を譲渡する旨、Aその譲渡対象となる権利に関しては、「日本、沖縄、韓国及び台湾の地域及び国々について、インダストリーズ社とオリエント社との間で締結された六二年契約並びに破産会社が破産申立を行った時点において有していた一切の補足及び修正に記載された、特定の映画著作物に関する初期著作権、更新著作権に基づく唯一かつ独占的権利及びライセンスにおけるすべての権利、資格、利益」とする旨が記載されている(乙C七)。 (二) 以上の事実によれば、@双務契約リストや財産目録の記載に照らすならば、破産管財人が、五五年契約の存在及び内容を十分認識していたこと、A買受申出人であるオリエント社は、破産管財人に対し、破産会社がオリエント社に対して六二年契約によって許諾した本件映画著作物に関する権利を期間の制限ないものとして利用する権利をオリエント社に譲渡する範囲でのみ、六二年契約を承認することを求めていたものであること、B破産管財人は、オリエント社の右買受申出を妥当なものと認め、承認の前提として債権者集会の開催等を破産裁判所に求めたこと、C【U】判事のショー・コーズ・オーダーや売却許可決定は、破産管財人の求めた前記の範囲で六二年契約を承認することの許可申請についてされたものであることが明らかである。 そうすると、右一連の破産手続の経緯に照らせば、ビル・オブ・セール(譲渡証書)によって原告に対して譲渡された権利の内容は、五五年契約により破産会社が付与された権利の範囲内で、かつ、六二年契約によりオリエント社に対して既にサブライセンス(再許諾、前記のとおり修正されて許諾期間の制限はなくなった。)したことに基づく破産会社の法的地位ないし権利であることは疑いの余地がない。 原告は、ビル・オブ・セールの文言は、「六二年契約において特定される映画著作物」に関する一切の権利を本件バンクラプシー・セールの対象とする旨解釈されるべきである旨主張する。 なるほど同ビル・オブ・セールには、「特定の映画著作物に関する初期著作権、更新著作権に基づく唯一かつ独占的権利及びライセンスにおけるすべての権利、資格、利益」と記載されている。しかし、前記のとおり、許可申請書、ショーコーズオーダー、売却許可決定等その他の破産記録の記載と照らし合わせれば、破産管財人の認識は、「六二年契約により、破産会社が既にオリエント社に付与した権利を期間の制限ないものとして利用する権利をオリエント社に付与する」ことの承認に関するものであったことは明らかであるから、右一連の経緯に照らすならば、「specified and described in an agreement of November 17,1962」は「films」ではなく「all of the right, title and interest」を形容、修飾するもの、すなわち、「六二年契約において特定される破産者の権利」と解釈すべきことは当然である。原告に対し譲渡された権利の内容が、本件映画著作物に関する一切の無制約な権利と解することは到底できない。この点に関する原告の主張は採用できない。 (三) 原告のその他の主張について判断する。 原告は、ショーコーズオーダーにおいて「免責証書を取り交し、特定の契約を批准する」(Exchanging Release and to affirm a certain contract)という記載が付されているが、右は、批准された契約書に書かれた内容の権利が移転し、それ以外の一切の債権債務関係がすべて消滅することを意味するから、フリー・アンド・クリアーの適切な手続が行われているものであり、したがって、「劇場上映権」「テレビ放映権」及び「非劇場における頒布権」について、五五年契約及び六二年契約において課せられた「ホームユース」の制約及び「一六ミリ又は三五ミリフィルム」を使用するという制約は、「契約上の義務」あるいは「紛争のある第三者の権利」として、破産管財人が排除したものである旨主張する。 しかし、そもそも、前記のとおり、破産管財人は、六二年契約における「ホームユース」の制約及び「一六ミリまたは三五ミリ」のフィルムを使用するという制約を前提として本件バンクラプシー・セールを行ったものと解されるから、原告の主張は、その前提において採用できない。のみならず、証拠(乙C一三)によれば、「フリー・アンド・クリアー」の法理によって除去される事項は、破産者の有していた権利に付着していた「担保、負担」であると解するのが相当であるが、そもそもC&Cは六二年契約によるライセンスに基づく権利しか取得していなかったことは前記のとおりであるから、RKOに留保された権利が破産会社の権利に対する「担保、負担」であるということは到底できない。さらに、同証拠によれば、「フリー・アンド・クリアー」の法理が適用されるためには、売却前に第三者に対する告知を行い、裁判所の審理を受ける機会を与えることが必要であると認められるところ、RKO又はその承継人が、その有する本件映画著作物に関する権利を、破産管財人からオリエント社ないし原告に譲渡する旨の通知を受領したことを認めるに足りる証拠もない。したがって、この点についての原告の主張は失当である。 その他、原告はるる主張するがいずれも理由がない。 二 結論 以上のとおりであるから、その余の点を判断するまでもなく、原告の本件請求はいずれも理由がない。原告の営業権侵害に係る主張も認められない。 なお、訴訟要件の有無について検討する。原告は、前訴において、被告東北新社及び同【H】が訴外アトランティックアートエンタテインメントをして警告状を発せしめ、原告のビデオ頒布をとん挫させた旨を陳述していることは当裁判所に顕著である。しかし、前訴は、著作権侵害に基づく請求であるから、右記載部分は、単なる事情を述べたものと解すべきである。これに対し、本件訴訟は、右被告らに対しては、営業権侵害に基づく損害賠償請求であるから、本件訴訟は、前訴と訴訟物を異にし、二重起訴であるとの指摘は当たらない。この点に関する被告東北新社及び同【H】の主張は理由がない。 よって、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第二九部 裁判長裁判官 飯村敏明 裁判官 沖中康人 裁判官 石村智 別紙 映画著作物目録
別紙 被告平成一二年四月七日付け準備書面(二) 別紙 被告平成一二年六月二二日付け準備書面(三) |
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