裁判の記録 line
line
2011年
(平成23年)
[1月〜6月]
line

 
line
1月18日 テレビ番組送信サービス事件(まねきTV)(3)
   最高裁(三小)/判決・破棄差戻し
 インターネットを通じて日本のテレビ番組を海外で視聴できるようにした有料サービス事業「まねきTV」は著作権法に違反するとして、NHKと在京民放5社が、運営会社にサービスの停止と計約1000万円の損害賠償を求めた事件の上告審。運営会社は顧客が購入したソニー製の送信機「ロケーションフリー」のベースステーションを国内で預かり、まとめてアンテナとネット回線につないで管理し、海外にいる顧客が手元の設定済み端末で見たい番組を選ぶと、ベースステーションで受信したテレビ放送がデータ化されてネットを通じて転送される仕組みになっていた。
 一審・二審とも、ベースステーションは「1対1」の送信を行う機能しか有しておらず、「公衆」に対する送信ではないので運営会社は公衆送信行為を行っておらず、また、入力の主体は顧客であるとしていた。
 最高裁第三小法廷は、装置が1対1の送信を行う機能しか有していないにしても、顧客からのリクエストを受けてネットを通じて自動的に送信する機能を持つ装置は自動公衆送信装置に当たり、また、送信の主体も装置に入力している者=運営会社であって、原審の判断には判決の結論に影響を及ぼすことが明らかな違法があるとして、原判決を破棄、事件を知財高裁に差し戻した。
判例全文
line
1月19日 元逗子市長“セクハラ”報道事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却(上告)
 逗子市長時代に女性二人にセクハラ行為をしたなどと報じた「週刊新潮」の記事で名誉を傷つけられたとして、民主党の長島一由衆院議員が発行元の新潮社に1000万円の損害賠償等を求めた事件の控訴審。一審ではセクハラの真実相当性を一部認めたものの、記事内容には裏付けのない記述があったと、新潮社に50万円の賠償を命じ、双方が控訴していた。
 裁判所は、一人に対する記事は真実でないとして新潮社に50万円の支払いを命じた一審判決を支持する一方、もう一人へのセクハラを否定する長島の主張も採用せず、双方の控訴を棄却した。

line
1月20日 テレビ番組送信サービス事件(ロクラクU)(3)
   最高裁(一小)/判決・破棄差戻し
 1月18日の「まねきTV」判決に続き、テレビ番組を録画し、ネット経由で転送して海外でも視聴可能にした機器を使ったサービスを行っている業者に対して、著作権侵害であるとして、NHKと民放9社がサービスの停止と1億3800万円の損害賠償等を求めた事件の上告審。問題のサービスは、業者の開発したHDDレコーダー「ロクラクU」を使って、同社は顧客にレンタルした親機を国内に設置して管理し、顧客は購入またはレンタルされた手元の子機を使ってネット経由で親機に録画を指示したのち、親機から録画のデータの送信を受けて再生視聴できるというもの。一審判決は、録画を行う主体は業者であるとして業者に差止めおよび733万円の支払いを命じたが、控訴審判決は、業者は顧客が複製を容易にするための環境等を提供しているに過ぎないから主体ではないとしてNHKらの請求を棄却していた。
 最高裁第一小法廷は、業者がその管理下で放送を複製機器に入力している場合には、顧客が指示をしているとしても、業者が複製の主体であると解するのが相当であり、業者を複製の主体でないとして請求を棄却した原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな違法があるとして、原判決を破棄、事件を知財高裁に差し戻した。
判例全文
line
1月20日 矢野絢也元公明党委員長脅迫報道事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 矢野絢也元公明党委員長を脅迫したかのように「週刊新潮」に報じられ、名誉を傷つけられたとして、創価学会副会長が、発行元の新潮社や取材を受けた矢野氏らに計1100万円の損害賠償等を求めた事件。記事は08年5月15日号。学会員らが矢野氏が週刊誌に寄せた手記について謝罪を求めた際、副会長が「人命に関わるかもしれない」と脅したと報じていた。
 裁判所は、「息子がどうなってもいいのか」という趣旨の脅迫があったと認定した一方、人命云々の発言は確認できないとして「記述の重要部分が真実と証明できていない」と判断し、計33万円の支払いを命じた。

line
1月25日 元「コメディNo.1」前田五郎氏への名誉棄損事件(週刊朝日)
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 漫才師の中田カウスさん宅に脅迫状が送られた事件をめぐり、「週刊朝日」に犯人と疑われるような記事を掲載され名誉を傷つけられたとして、元「コメディNo.1」の前田五郎氏が、発行元の朝日新聞出版と記事執筆者に計8300万円の損害賠償等を求めた事件。
 朝日新聞出版等は、前田氏が否認しているとの記載もあり、犯人とは断定していない、と主張したが、裁判所は、「『犯人』は吉本芸人だった!」という見出しとともに前田氏の顔写真を掲載したことについて触れて、読者は前田氏が犯人であるとの強い印象を持つ、と述べて名誉毀損の成立を認め、朝日新聞出版等に550万円の支払いを命じた。

line
1月28日 相場チャート「NEW増田足」の著作権侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 「NEW増田足」という名称の株価チャートを作成、分析するためのソフトウェアを顧客に提供する事業を行っている会社(原告)が、同様のソフトウェアを制作してHP上で顧客への公衆送信を行っている会社およびその取締役(被告)に対して、被告ソフトに係るプログラムとこれにより表示される画面は、原告の著作物を複製または翻案したものであるから著作権・著作者人格権侵害だとして、被告プログラムの差止め・廃棄と、損害賠償金約530万円の支払い、および謝罪広告の掲載を求めた事件。被告である取締役は原告会社を退社後数ヶ月の間に、被告プログラムを作成していた。
 裁判所は両プログラムの実質的同一性ないし類似性を認め、著作権・著作者人格権侵害を肯定し、差止め・廃棄を命じた上、損害賠償額200万円を認めた。謝罪広告についてはその必要性を認めなかった。
判例全文
line
1月28日 「アバター」海賊版BD販売事件(刑)
   大阪府警生活安全特捜隊/逮捕
 大阪府警生活安全特捜隊等は、人気映画の海賊版ブルーレイディスクをインターネットで販売したとして、伊丹市在住の無職の男性を著作権法違反の疑いで逮捕した。男性は「アバター」など3作品を代金2800円で販売した容疑がかけられている。海賊版BDの摘発は全国初とのこと。

line
2月5日 漫画「ぬらりひょんの孫」無断送信事件(刑)
   警視庁/逮捕
 インターネットで画像などを保管できる海外のサーバー、オンラインストレージサービスで人気漫画の画像を配信したとして、警視庁は秋田県潟上市の18歳の生徒を著作権法違反の容疑で逮捕した。生徒は自宅のPCを使って、少年誌に連載中の人気漫画「ぬらりひょんの孫」等の画像データを無断でアップロードした疑いが持たれている。生徒の立ち上げたブログにはサーバーにアップロードした漫画作品260タイトル、3800冊分へのリンクが掲載され、昨年3月以降250万回のアクセスがあったという。

line
2月9日 都議選候補の写真無断転用事件
   東京地裁/判決・本訴請求一部認容、一部棄却、反訴請求棄却(控訴)
 原告カメラマンが、被告政治活動家に対して、被告が公明党所属都議会議員のHPから原告撮影による都議会議員の写真データをダウンロードし、自らの配布するビラやウェブページ、および街宣車の看板に加工して掲載したのは、原告の有する著作権・著作者人格権を侵害するものだとして、被告に掲載差止めと廃棄、および損害賠償金400万円等を請求した事件。被告は報道目的による引用を主張した。
 裁判所は引用の成立を否定して、被告の著作権侵害・著作者人格権侵害を認め、損害額78万5000円を認定して支払いを命じた。
判例全文
line
2月10日 鬼頭史郎元判事補への名誉棄損事件
   名古屋地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 「週刊新潮」の記事で名誉を傷つけられたとして、元判事補が発行元の新潮社と週刊誌編集長に500万円の慰謝料を求めた事件。記事は2010年2月18日号のもので、元判事補が過去の事件に関連して法曹資格を失った後の情況などを報じた。
 裁判所は、過去の事件や前科に関する部分以外の生活状況などに関する報道は、公表の意義や必然性がなく、一部の記事は真実と認められないとして、名誉毀損を認め、慰謝料125万円の支払いを命じた。

line
2月21日 元「コメディNo.1」前田五郎氏への名誉棄損事件(2)
   大阪高裁/和解
 漫才師の中田カウスさんに脅迫状が送られた事件に関するスポーツ紙「デイリースポーツ」の記事で、犯人と疑われるような書き方をされ、名誉を傷つけられたとして、前田五郎さんが発行元の神戸新聞社に約1100万円の損害賠償を求めた事件。第一審大阪地裁は名誉毀損の成立を認め、同社に280万円の支払いを命じていたが、同社が300万円の解決金を支払うことで、大阪地裁で和解が成立した。

line
2月25日 商標“今治タオル”侵害事件(中国)
   中国商標局/異議申立
 国内最大のタオル産地である愛媛県今治市にある四国タオル工業組合が、中国での「今治タオル」の商標登録を、出願済みの中国企業による類似商標を理由に拒否された問題で、中国の商標局に異議を申し立てた。審査には約3年かかる模様で、その間は双方とも商標を自由に使える。

line
2月25日 商標“青森”侵害事件(中国)B
   中国商標局/裁定・申立認容(確定)
 青森県は、中国で青森によく似た文字(「青森」の「森」が、「木」ではなく「水」3つ)とリンゴの図柄を組み合わせた商標が登録申請されていた問題で、中国商標局が同県の異議申し立てを受けて商標登録を無効とする裁定を下したと発表した。当局は、県の文字は離れて見ると青森と読め勘違いされるという主張を受け入れ、消費者が産地を誤解する恐れがあると認めた。申請者から期限までに裁定に対する不服申し立てはなく、裁定は確定したという。

line
2月28日 携帯電話向けコンテンツの著作権侵害事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、取消
 ソフトウエア開発販売会社(原告)がモバイルコンテンツ開発配信会社ら(被告)に対して、携帯端末又はパソコン向けコンテンツ配信用ソフト「恋愛の神様」に関連して、被告の行為が、原告の有する著作権、著作者人格権侵害であると主張して損害賠償金の支払いを求めた事件の第二審。原審では一部分にのみ侵害を認め、38万円の賠償金支払いを被告に命じたが、双方が控訴していた。
 第二審では、原告の追加主張したプログラムの創作性を否定して侵害性はないとした上、第一審で認めた一部分(カラー画像の部分)における侵害も否定し、原告側の全面敗訴となった。
判例全文
line
2月28日 “中小企業診断士”教材の侵害事件B
   東京地裁/判決・請求棄却
 資格獲得講座を開講する株式会社(被告A)の講座におけるビデオ講座を担当した中小企業診断士(原告)が、講義のために作成した資料を経営コンサルティング会社(被告B)に提出したところ、被告らが原告に無断でこれを複製、改竄し、被告Aの講義用のテキストとして作成配布したとして、原告が被告らに対し、著作権侵害および著作者人格権侵害で140万円の賠償金支払いを求めた事件。この原被告らによる別件訴訟では、被告Aの注意義務違反も肯定されて被告らの著作権侵害が認められていた。
 裁判所は、原告の提出した資料(メモ)と被告Aの講義用テキストを比較検討し、講義用テキストは原告提供の資料に依拠したものとはいえないとして、原告の請求を棄却した。
判例全文
line
3月2日 小型USBメモリの類似事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 台湾法人である電子機器製造メーカーが、小型USBフラッシュメモリを台湾の会社に製造委託してこれを輸入・販売するソニー株式会社に対して、当該メモリは自分のところの製造する商品の形態を模倣したものであるから、製造や輸入・販売は不正競争防止法の不正競争行為であり、メモリは自分のところのメモリの設計図の著作権侵害であるとして、20億円の損害賠償を求めた事件。原被告間でメモリ製造委託の際に技術情報のやり取りがあり、その情報の取り扱いをめぐって紛争になった。
 裁判所は、不正競争防止法の該当性を否定し、原告側メモリ設計図の著作物性を否定して、請求を棄却した。
判例全文
line
3月4日 「生命の實相」復刻出版事件
   東京地裁/判決・第1事件請求一部認容、一部棄却、第2事件請求棄却、
            第3事件請求棄却(控訴)
 この裁判には3つの訴訟が絡んでいる。
 【第1事件】財団法人である生長の家社会事業団が、生長の家の創始者である故谷口雅春が戦前に創作した多数の著作物の集合体としての「生命の實相」の著作権は、創始者が財団法人の設立者として行なった寄付行為により財団法人に帰属しているが、出版契約を締結して「生命の實相」復刻版を刊行した日本教文社には印税に未払いがある上、復刻版に無断で真実と異なる著作権表示をしたとして、財団法人が日本教文社を訴えた事件。【第2事件】生長の家および創始者の遺族が、「生命の實相」の著作権は生長の家に帰属すると主張して、財団法人及び出版社光明思想社(以下、出版社)が出版した谷口雅春の書籍は著作権・著作者人格権を侵害したものであるとして、財団法人と出版社を訴えた事件。【第3事件】日本教文社が、財団法人から出版権の設定を受けたにもかかわらず、財団法人と出版社が日本教文社に無断で谷口雅春の書籍を刊行し又は刊行しようとしているとして、財団法人に対しては出版権が日本教文社に帰属することの確認を、財団法人と出版社の双方に対しては出版等の差し止めを求めた事件。
 裁判所は、【第1事件】について、創始者の寄付行為により著作権は財団法人に帰属していると認め、印税支払いについては消滅時効を援用して50万円の限度で認めた。著作権表示については日本教文社の不法行為と判断したが、謝罪広告掲載は認めなかった。【第2事件】については、生長の家および創始者の遺族の主張を容れなかった。【第3事件】については、生長の家の管理・指示のもとに財団法人と合意して日本教文社が出版を行ったという日本教文社の主張を認めず、また契約は出版権設定契約ではないとして、差し止め請求を認めなかった。
判例全文
line
3月4日 大相撲「八百長疑惑」報道事件D
   東京地裁/提訴
 大相撲の八百長疑惑を報じた2007年の「週刊現代」記事をめぐって、日本相撲協会から名誉毀損訴訟を起こされ、2010年に最高裁で敗訴が確定したフリーライターが、最近の八百長メール発覚を受けて、協会に1000万円の慰謝料を求める訴訟を東京地裁に起こした。ライターは、協会が八百長は存在しないという虚偽の主張をしたため、本来はあり得ない判決が確定して、名誉を傷つけられた、再審請求はせずに、新たな訴訟で立証したい、としている。

line
3月8日 「アルゼ王国の闇」不競法違反事件(2)
   知財高裁/判決・変更、控訴棄却、予備的請求棄却
 パチスロ遊技機メーカーの旧社名アルゼが、アルゼと競合関係にあるSNKとサミーが、アルゼの営業上の信用を害する虚偽の内容を掲載した『アルゼ王国の闇』等4点の書籍を鹿砦社に出版させ、これを多数買い上げて全国のパチンコ店等に頒布させた行為は不競法に定める不法行為であるとして、20億円の損害賠償を求めた事件の第二審。第一審では、出版行為の主体は鹿砦社であり、被告らの行為は書籍の内容を提供して出版行為を幇助したに過ぎないから、不正競争行為とは認められない等として、請求を棄却していたが、アルゼ側が控訴していた。
 裁判所は、SNKが4点のうち1点の書籍に付された虚偽事実一覧表の1項目が虚偽でありアルゼの営業上の信用を害するものであることを十分に知りながらこれを流布したとして、原審判決を変更してSNKに200万円の支払い等を命じ、その他の請求およびサミーに対する控訴を棄却した。
判例全文
line
3月10日 「読むサプリ」出版事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 医療器具の製造販売会社(原告)が、出版社(被告)に対して、出版権設定契約を交わした書籍「読むサプリ」シリーズ(全24種)の未払い代金約700万円の支払いと、引き渡した原稿の返却を求めて提訴した事件の第二審。原告会社は、株主である株式会社への納品を目的として出版コードを持たない書籍を作成したが、株主である株式会社への納入後に大量の在庫を抱えていた。そこで被告出版社と契約を締結し、被告出版社は出版コードを取得し表紙および奥付に修正シールを添付して、自社の書籍として販売していた。第一審は原告の主張をほぼ認め、出版社に対し約600万円の支払い等を命じたが、被告が控訴した。
 裁判所は、第一審の判断を引用して、原判決認容部分を認容し、控訴を棄却した。
判例全文
line
3月10日 経営戦略書の職務著作事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 医療・福祉経営コンサル会社(原告)が、この会社の元従業員である被告がある出版社から発行しようとした『病院の新経営管理項目読本(仮題)』と題する著作物は、職務著作物であり原告に著作権があるとして、その書籍の出版差止めと損害賠償を求めて提訴した事件の控訴審。原審では職務著作性を否定して請求を棄却したが、原告側が控訴していた。
 裁判所は、この著作物は原告が具体的に被告に作成を命じたものとも、被告が原告の承諾を得て作成したものとも、また原告との契約に従って被告が作成したものともいうことはできないとして、原審同様、職務著作の要件を欠くとして、控訴を棄却した。
判例全文
line
3月15日 データベースソフトの著作権確認事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、予備的請求棄却
 (上告・上告棄却、上告受理申立・上告不受理、確定)
 被告会社元従業員(原告)は、被告「中国塗料(株)」から子会社「信友」に出向の際に、被告会社専務から「船舶情報管理システム」の作成を命じられ、その後、子会社「中国塗料技研」の社長に就任して後も、同システムの開発の続行を命じられて、船舶塗料に関するデータベース、新造船受注システム、塗装仕様発行システム等を含む「船舶情報管理システム」を作成した。原告は、このプログラムの著作権が原告に属することの確認、及びこのシステムに対する原告の寄与分割合の確定を求めて提訴したが、第一審の大阪地裁は職務著作物性を認めて著作者は被告法人であるとし、原告の請求を棄却、原告が控訴していた。
 裁判所は、従業員が職務としてシステム開発を行った場合に、開発過程において会社から具体的な指示がない場合であっても、職務著作は成り立つとして、第一審の判断を維持して控訴を棄却した。
判例全文
line
3月16日 「ストリートビュー」プライバシー権侵害事件
   福岡地裁/判決・請求棄却(控訴)
 福岡県に住む女性が、グーグル社のストリートビューによって、自宅のベランダに干していた洋服や下着を撮影されインターネット上で公開されたとして、同社をプライバシー権侵害、個人情報保護法違反で訴え、損害賠償金60万円を求めた事件。
 裁判所は、映像からは洗濯物らしきものが干してあるのは分かるがそれが何であるかは分からず、原告個人を特定できるものではないこと、公道から撮影されており、訴状の送達と同時に映像の公開を停止していることなどから、プライバシー権の侵害を否定、またこれらが個人情報に当たるかどうか疑問であり、仮に当たるとしても、保護法の規定に違反しているとは到底言えないとして、請求を棄却した。
判例全文
line
3月17日 元「コメディNo.1」前田五郎氏への名誉棄損事件(週刊朝日)(2)
   大阪高裁/和解
 漫才師の中田カウスさん宅に脅迫状が送られた事件をめぐり、「週刊朝日」に犯人と疑われるような記事を掲載され名誉を傷つけられたとして、元「コメディNo.1」の前田五郎氏が、発行元の朝日新聞出版と記事執筆者に計8300万円の損害賠償等を求めた事件。第一審は名誉毀損の成立を認め朝日新聞社等に550万円の支払いを命じたが、朝日新聞社等が控訴していた。
 大阪高裁では、朝日新聞社と記事執筆者が550万円を前田氏に支払い、誌面にお詫び記事を掲載することで和解が成立した。

line
3月17日 商標“天使のチョコリング”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 人気のドーナツ「天使のチョコリング」を作る製パン会社CLUB ANTIQUEが、商品名の商標登録を、森永製菓が「天使」の商標権を有していることを理由に無効とした特許庁の審決に対して、取消しを求めた事件。CLUB社は2009年9月に「天使のチョコリング」を商標登録したが、「天使」の商標権を持っていた森永製菓が特許庁に審判を求め、昨年9月の審決でCLUB側の登録は無効とされていた。
 裁判所は、CLUB社の商標は出所を誤認、混同させる恐れがあるとして、特許庁の審決を妥当とし、請求を棄却した。
判例全文
line
3月22日 “売上高データ”の著作物性事件C(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 2010年1月27日および2月25日東京地裁判決の事件と被告書籍を同じくする裁判の控訴審(原審判決は2010年6月17日)。原告出版社が刊行する雑誌「月刊ネット販売」に掲載された図表9点が、被告が執筆した書籍『図解入門業界研究 通販業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本』に無断で使用されたとして損害賠償等を請求した事件。第一審は原告図表の編集著作物性を否定し、原告の主張する財産権侵害の不法行為や名誉・信用毀損も否定して、請求をすべて棄却した。
 裁判所は、第一審同様、各原告図表の編集著作物性を否定し、不法行為の成立も否定して、控訴を棄却した。
判例全文
line
3月22日 Google書籍電子化事件(米)
   米ニューヨーク州連邦地裁/決定・和解案承認拒絶
 米Googleによる書籍電子化訴訟で、ニューヨークの連邦地裁は、2009年11月にGoogleと作家・出版者協会とから出された修正和解案を認めない判断を下した。チン判事の判断によれば、修正和解案はGoogleに有利になりすぎており、著作権者の承認を得た書籍のみを電子化の対象とするように和解案を更に修正すべきだという。原告の作家出版者側と、被告Googleの双方は、更なる修正を策定するか、それとも従来の訴訟を続けるかを検討することになる。

line
3月23日 映画「やわらかい生活」シナリオ収録拒否事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、拡張請求一部棄却、一部却下(上告受理申立)
 芥川賞受賞作家の著作である小説を原作とする映画「やわらかい生活」のシナリオを、シナリオ作家協会が発行する『年鑑代表シナリオ集』に収録・刊行しようとしたところ、作家に拒絶されたため、シナリオを執筆した脚本家とシナリオ作家協会が、作家に対して収録を妨害しないよう求めた事件。第一審は、原作者が収録を許諾しなかったことに違法性はないなどとして、原告の請求を棄却したが、原告側が請求を一部変更して控訴した。
 裁判所は、原作者の行為は正当な権利行使の範囲内のものであるとして、原告側の主張を認めず、控訴を棄却した。また、変更追加した差止請求権不存在確認の訴えについては却下した。
判例全文
line
3月24日 TBS「愛の劇場」テーマ曲事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 作曲家らが、彼らの作曲した楽曲が東京放送の制作するテレビ番組「愛の劇場」のオープニングテーマとして長期間にわたって使用されたものの、一部の期間については彼らの許諾を得ずに使用されたとして、TBSテレビに対して使用料相当額の不当利得の返還を求めて提訴した事件。作曲家らは2003年に映像制作会社の依頼を受けて作曲し納品して20万円を受け取っていた。楽曲は2004年から使用されたが、2006年4月1日からは、彼らが音楽出版社と著作権譲渡契約を締結し、音楽出版社がJASRACに信託譲渡したことにより、使用料の配分を受けていた。作曲家らは2006年4月1日以前の使用料の支払いを求めた。
 裁判所は、(1)東京放送と映像制作会社との間で権利処理された上で納品することが確認されていること、(2)作曲家らは楽曲使用の事実を知りながら5年間使用料を請求していないこと、(3)7秒程度の短い楽曲であるので20万円という額が使用料を含むものであると考えても不自然ではないこと、(4)JASRACへの信託譲渡は着メロ配信のためであって東京放送に支払い義務があることを前提としたものではないこと、などの点から、作曲家らは20万円を対価としてオープニング映像に使用することを許諾していたと判断して、請求を棄却した。
判例全文
line
3月28日 商標“ドーナツ”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 
判例全文
line
3月29日 “ひこにゃん”瓜二つ事件(2)
   大阪高裁/決定・仮処分認容
 滋賀県彦根市の人気キャラクター「ひこにゃん」は、彦根市が原作者から著作権を買い取って商標登録しているが、市と原作者の間で、市側は3ポーズに限り業者に製造販売を依頼する、原作者は「ひこにゃん」以外の創作活動をするという形で合意している。だが、原作者の考案した「ひこねのよいにゃんこ」のグッズが出回るようになり、市はこのグッズに対して不正競争防止法に基づき販売差止めを求める仮処分を申請した。大阪地裁は差し止め請求を権利の乱用として却下したが、市側が即時抗告していた。
 高裁は、合意は「ひこねのよいにゃんこ」の新作絵本の出版を念頭においてなされたもので、グッズの製造・販売を承諾したとはいえないとして、地裁の決定を変更し、原作者が所属するデザイン会社による販売の差止めを命じた。

line
3月31日 “ミンサー織”不正競争事件
   那覇地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 八重山ミンサーを加工した小物などを製造・販売する石垣市の会社が、福岡県で製造した織物をミンサー織と表示して販売していた糸満市の業者に対して、類似商品の販売差し止めを求めて提訴した事件。
 裁判所は、「ミンサー」「ミンサー織」と呼ばれる織物は沖縄県外にはなく、「ミンサー織」の表示は消費者に商品の産地を県内と誤認させ、不正競争に該当すると判断し、被告業者に、商品に「ミンサー織」を表示して販売してはならない等と命じて、損賠賠償金約700万円の支払いを命じた。

line
4月19日 “住宅ローン金利比較表”の著作物性事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、追加請求棄却
 金融情報サイトの運営者が、住宅金融普及協会がウェブ上に公開している情報ページに掲載されている図表は自分の著作物である図表を複製したものであり、著作権侵害だとして、約700万円の損害賠償等を求めた事件の第二審。一審東京地裁では当該図表の著作物性を否定し原告の請求を棄却したが、原告は、被告ウェブサイトの運営は原告の営業活動に対する侵害行為である等の、一般不法行為の成立を追加主張して控訴した。
 第二審裁判所では、原審の判断を維持して著作物性を否定した上、追加主張も認めず、控訴を棄却した。
判例全文
line
4月19日 大相撲「八百長疑惑」報道事件(刑)
   警視庁/告訴
 大相撲の八百長疑惑を報じた「週刊現代」の記事をめぐって、日本相撲協会側から名誉毀損訴訟を起こされて敗訴が確定した講談社は、相撲協会側が虚偽の主張や立証で勝訴し同社から賠償金を騙し取ったとして、同協会の理事長だった北の湖親方など5人について、警視庁に詐欺容疑での告訴状を提出した。
 「週刊現代」の八百長報道をめぐっては、同じく敗訴が確定したフリーライターが協会に対して慰謝料を求める訴訟を起こしている。

line
4月21日 「沖縄ノート」の“集団自決”名誉棄損事件(3)
   最高裁(一小)/決定・上告棄却(確定)
 太平洋戦争末期の沖縄戦で旧日本軍が住民に「集団自決」を命じたとする、作家・大江健三郎の「沖縄ノート」をめぐり、旧日本軍の当時の守備隊長らが虚偽の記述で名誉を傷つけられたとして、大江氏と版元の岩波書店に、出版差止めと損害賠償などを求めた事件の上告審。2008年3月の一審大阪地裁は、記述には合理的根拠があり、真実と信じる相当の理由があったとして原告の請求を棄却し、同年10月の二審大阪高裁も一審を支持して原告側控訴を棄却していたが、原告側が上告していた。
 最高裁第一小法廷は、原告側の上告理由は事実誤認や単なる法令違反の主張で、民事訴訟で上告が許される場合に該当しないとして上告を退ける決定をし、大江氏側の勝訴が確定した。

line
4月21日 立体商標“ゴルチエ・クラシック”事件(2)
   知財高裁/判決・請求認容(確定)
 女性の胴体をモチーフにした「ジャンポール・ゴルチエ」ブランドの香水瓶の形状に対して、立体商標としての登録を認めなかった特許庁の審決は不当であるとして、販売元のフランスの化粧品会社が審決の取消しを求めた事件。対象となったのは1994年に日本で販売された香水「クラシック」で、女性の胸部から腹部のラインをかたどったデザインの瓶に、首の部分が噴霧器になったもの。2006年4月に特許庁に国際商標の出願をしたが認められず、10年7月の不服審判の審決でも登録を拒否されていた。
 裁判所は、「クラシック」は女性の体をモチーフとした香水容器の中でも、ほかに見当たらない形状をしていると指摘し、ファッション雑誌などでも評価されていてゴルチエの商品と認識できると認定、特許庁の審決を取り消した。コカコーラの瓶やヤクルトの容器に続き、香水「クラシック」の容器が立体商標として認められた。
判例全文
line
4月21日 立体商標“ローディッセイ”事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却(確定)
 同日判決が下った“ゴルチエ・クラシック”事件と同時に、原告は香水瓶「ローデイッセイ」の形状に立体商標を認めなかった特許庁の審決の取消しを求めて提訴していたが、知財高裁は形状に特異性がないなどとして取消し請求を棄却した。
判例全文
line
4月21日 立体商標“ゴルチエ・ルマル”事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却(確定)
 同日判決が下った“ゴルチエ・クラシック”事件と同時に、原告は香水瓶「ゴルチエ・ルマル」の形状に立体商標を認めなかった特許庁の審決の取消しを求めて提訴していたが、知財高裁は形状に特異性がないなどとして取消し請求を棄却した。
判例全文
line
4月25日 「ロス疑惑」三浦和義さんへの名誉棄損事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 ロス疑惑の容疑者として米自治領サイパンで拘束され、ロス市警の留置場で自殺した三浦和義元会社社長の妻が、掲載記事で名誉を傷つけられたとして「日刊ゲンダイ」に990万円の損害賠償を求めた事件。問題とされたのは2008年に掲載された、「量刑は死刑か終身刑」「ロス市警は有罪にする絶対の自信を持っている」等の見出しで三浦氏の逮捕などを報じた3本の記事。
 裁判所は、記事掲載当時、三浦氏は東京高裁の無罪判決が確定しており、事件の犯人であるという社会的評価が形成されていたとはいえないとして、記事の一部に名誉毀損を認め、同社に220万円の支払いを命じた。

line
4月27日 “取扱説明文”の著作物性事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 ご飯に具を振りかけてお弁当を作る際の枠を作ったり型を抜いたりする道具である商品の、台紙裏面およびリーフレットに掲載された取り扱い説明文と写真が、自分が実用新案登録出願した際の手続補正書に書いたものの著作権を侵害している等として、原告男性が、商品の製造販売をしている日用品雑貨販売会社に300万円の損害賠償を求めた事件。
 裁判所はまず、原告の主張する本件手続き補正書の編集著作物性についてこれを退け、次に言語または美術の著作物としてもこれを認めず、更に本件出願願書は著作物として登録されており、手続き補正書はこれと実質的に同一であるから著作物であるという原告の主張も、本件願書の登録は第一発行年月日の登録であって、登録に係る対象が著作物性を有することが推定されるものではないとしてこれを退けた。
判例全文
line
4月28日 医療事故報道の名誉棄損事件(共同通信)(3)
   最高裁(一小)/判決・上告棄却(確定)
 東京女子医大で心臓手術を受けた女児が死亡した事故で業務上過失致死罪に問われ、無罪が確定した医師が、共同通信配信記事で名誉を棄損されたとして、記事を掲載した地方紙3紙に損害賠償を求めた事件の上告審。共同通信に対する上告は既に退けられている。
 裁判所は、通信社に賠償責任がなければ、記事を掲載した地方紙も賠償責任を負わないとして医師の上告を棄却した。
判例全文
line
4月28日 顧客データの不正競争事件(保安用品販売)
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 繊維、雑貨等輸出入販売会社(原告)が、かつて取引先であった保安用品販売会社(被告会社)と原告の元上司・同僚ら(被告個人)が、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を第三者に告知した等として、不正競争防止法による差し止め、損害賠償等を求めると同時に、被告らが営業に用いている保安用品カタログは、原告のカタログを利用したものだとして、著作権侵害に基づく差し止め、廃棄を求めた事件。
 裁判所は、不正競争防止法上の争点については「粉飾決算」についてのみ該当性を認め損害賠償額等13万円を認容、他の要求を認めなかった。カタログについては原被告両社の共同著作物と位置付けて、原告が被告に対して、共同著作物の著作権者としての権利を行使して被告カタログの利用行為の差し止めを求めることは許されないとした。
判例全文
line
5月10日 廃墟写真の模倣事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 廃墟写真を手がけるプロ写真家(原告)が、同業の写真家(被告)に自分の作品を真似されたとして、著作権・著作者人格権侵害および名誉毀損を主張して訴えた事件の控訴審。原審は被写体の選択はアイデアであって表現ではないとして著作権侵害を認めず、また被写体発見に多大な労力を要したとしても他者の撮影を制限はできず法的保護には値しないとしたが、原告が控訴した。
 控訴審判決は、被写体は既存の廃墟建造物であって、撮影者が意図的に被写体を配置したり対象物を付加したりしたものでないから、撮影対象自体をもって表現上の本質的特徴とすることはできず、撮影者の表現手法に本質的特徴がある、とした上で、被告写真は原告写真を翻案したものでないとして著作権・著作者人格権侵害を否定、名誉毀損も先駆者の法的保護も、原審同様に認めなかった。
判例全文
line
5月11日 YouTube動画違法投稿事件(刑)
   埼玉県警/逮捕
 埼玉県警大宮警察署とサイバー犯罪対策課は、人気グループ「嵐」のコンサートなどを収めた市販のDVD映像を、動画投稿サイトYouTubeに無断アップロードしていた福岡県在住の男性を、著作権法違反の疑いで逮捕した。動画アップロード者に対する摘発は全国で初めてだという。

line
5月17日 商標“出版大学”審決取消事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 「出版大学」の商標を認めなかった特許庁の審決は不当であるとして、申請者の編集プロダクションが審決の取消しを求めた事件。商標は頭の部分に「SHUPPAN DAIGAKU」の文字を配し、中央に地球儀をデザインした図案を中心にした図形を、下部の大きな弓なりの黒塗り帯状図柄に「出版大学」を白抜き文字で表したもの。2008年6月に出願したが認められず、10年11月の不服審判の審決でも請求不成立として登録を拒否されていた。
 裁判所は、日本においては学問ないし学術分野として「出版学」と称して出版に関する学術研究等がなされ、大学における教授の対象となっていること、また「教育内容を想起させる語+大学」という組み合わせの名称の大学が少なからず存在することから、本願商標の文字部分は、学校教育法に基づいて設置された大学の名称を表示したものであるかのように誤認される恐れがあり、公の秩序を害する恐れのある商標だとした特許庁の審決に誤りはないとして、請求を棄却した。
判例全文
line
5月20日 折り紙の“折り図”HP掲載事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 創作折り紙作家が、TBSテレビがテレビドラマの番組ホームページに掲載した「吹きゴマ」の折り図は、自分が書籍に掲載した折り図を複製または翻案したものであり、著作権および著作者人格権の侵害に当たるとして、テレビ局に対して損害賠償と謝罪文の掲載を求めた事件。
 裁判所は、まず折り図の著作物性について論じた上で原告の折り図を検討し、その著作物性を認めた。次に、被告の折り図から原告折り図の表現上の本質的特長を直接感得できるかどうかを検討した結果、折り図としての見やすさの印象が大きく異なり、分かりやすさの程度においても差異があるとして、直接感得性がないと判断し、複製あるいは翻案を否定した。著作者人格権侵害についても否定し、請求を棄却した。
判例全文
line
5月23日 「ニコニコ動画」映画違法投稿事件(刑)
   警視庁/逮捕
 インターネットの動画投稿サイト「ニコニコ動画」に映画を無断投稿したとして、警視庁は高知市在住の男性を逮捕した。動画投稿サイトへの映画投稿による逮捕は全国で初めて。男は2010年夏に無断投稿を発見した日本国際映画著作権協会が、サイト運営会社を通じて再三警告していたにもかかわらず、昨年12月、自宅パソコンから映画「ソルト」と「ナイト・アンド・デイ」を投稿したもので、内外の映画40作品以上を違法にアップロードしたことを認めているという。

line
5月26日 「押し紙報道」名誉毀損事件(週刊新潮)
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 読売新聞の東京、大阪、西部の3本社が、発行部数を水増ししているとの「週刊新潮」の虚偽の報道で名誉を傷つけられたとして、発行元の新潮社と記事執筆のフリージャーナリストに5500万円の損害賠償金支払いと謝罪広告の掲載を求めた事件。記事は2009年6月11日号の「『新聞業界』最大のタブー『押し紙』を斬る!」と題されたもので、実際には販売されない押し紙が部数の30〜40%あり、販売や広告の収入を不正に得ている、としたもの。
 裁判所は、記事の根拠となった調査は正確性に疑問があり、取り上げた販売店も一部であって裏付けに客観性がなく、真実と信じるだけの理由もないとして名誉毀損を認め、新潮社側に385万円の支払いを命じた。謝罪広告の請求は棄却した。

line
5月26日 広告文言の著作物性事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 PCデータ復旧請負会社(一審原告・控訴人、以下「原告」)がコンピュータ機器開発販売会社(一審被告・被控訴人、以下「被告」)に対して、被告がネット上の自社サイトに掲載したデータ復旧サービスに関する文章は、原告が創作し自社サイトに掲載したものを無断で複製または翻案したものであり著作権侵害および著作者人格権侵害だとして、損害賠償等を求めた事件の第二審。一審は侵害を認めず、請求を棄却したが、原告が控訴した。
 裁判所は、まず原告のサイト全体をコンテンツと見た場合について創作性を否定し、次に原告の文章全体の構成、記載順序、配列、小見出し等が被告の文章によって複製または翻案されているかを検討して否定、更に原告の個別の文章に対する複製・翻案の成否を検討して、平凡かつありふれた表現であったり、表現それ自体でない部分で共通するに過ぎないとして、これも否定した。著作者人格権侵害、一般不法行為も否定し、第一審同様に棄却の判断となった。
判例全文
line
5月26日 測量ソフト「おまかせ君プロ」事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 「おまかせ君プロVer.2.5」という名称の測量業務用ソフト(原告ソフト)を製造し、これを使用して測量業務等を行なっている原告会社が、同様のソフト(被告ソフト)を製造し、これを使用して測量業務等を行なっている測量サービス会社(被告A)とその関連会社(被告B)、および被告会社Aの取締役(被告C)と原告元従業員(被告D)に対して、被告ソフトはプログラムの著作物である原告ソフトを複製又は翻案したものであり著作権侵害であると主張し、ABに対して被告プログラムの製造等の差止めと廃棄を求めると同時に、被告らに6000万円の損害賠償金支払いを求めた事件。
 被告らは、原告ソフトは創作性を有せず、また著作権法上保護されない「解法」(法10条3項三号)に当たると主張したが、裁判所は著作物性を肯定し「解法」に当たるものではないと判断した。その上で被告プログラムが原告プログラムを複製又は翻案したものであるかを検討して複製又は翻案であると判断、更に被告らの共同不法行為責任を認め、ABに被告プログラムの差止めと廃棄を、被告ら全員に約3227万円の支払いを命じた。
判例全文
line
6月7日 ミッフィー模倣事件
   蘭アムステルダム地裁/和解
 サンリオは、サンリオのウサギのキャラクター「キャシー」が、世界的に有名なウサギのキャラクター「ミッフィー」を模倣し著作権を侵害したとして、ミッフィーの生みの親であるオランダ人作家、ディック・ブルーナ氏の著作権を管理する会社から訴えられていた件について、両者の間で和解が成立したと発表した。
 サンリオによると、両者は訴訟継続に費用をかけるよりは、東日本大震災の被災者支援に尽くすべきだという考えで一致し、共同で義捐金15万ユーロを寄付するという。
 和解ではキャラクターの著作権をお互いに尊重することで合意、サンリオは著作権侵害を認めてはいないが、キャシーを使った新製品を今後販売しないという。

line
6月10日 ビジネスプラン説明図面の著作物性事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 2つの図および説明文からなる「バイナリーオートシステム」と題された図面について、同図面の第一発行年月日の登録を得た原告個人が、被告である健康器具販売会社が連鎖販売取引において相手方に交付している契約書面は、原告図面と同一または類似の表現を用いており、著作権を侵害しているとして900万円の支払いを求めた事件。バイナリーオートシステムとは、ある物品やサービス等を購入または販売する人の集団内における報酬の算出方法を定めたもの。
 裁判所はアイデアや着想自体は著作権法の保護の対象にならないことに言及したうえで、ビジネスモデルを説明する図表と説明文に関して、どちらもありふれた表現であるとして、図形または言語の著作物としての創作性を否定し、被告の行為は著作権侵害とは言えないと判断した。
判例全文
line
6月16日 「北海道警裏金疑惑」名誉棄損事件(3)
   最高裁(一小)/決定・上告棄却(確定)
 北海道警の裏金問題を追及した書籍2冊に事実と異なる記述があり、名誉を傷つけられたとして、元道警総務部長が、著者である北海道新聞社と記者2名および発行元の出版社2社に、計600万円の損害賠償を求めた事件。一審は原告が捏造を指摘した箇所について真実と認めるには足りないとして、被告側に計72万円の支払いを命じ、二審も一審判決を支持したが双方が上告していた。
 最高裁第一小法廷は、いずれも上告の理由がないとして、双方の上告を棄却する決定を出し、北海道新聞側の敗訴が確定した。

line
6月29日 立体商標“Yチェア”事件(2)
   知財高裁/判決・請求認容
 世界的に知られるデンマークの家具デザイナー、ハンス・ウェグナー氏の代表作の肘掛け椅子「Yチェア」の形状を立体商標として認めないのは不当だとして、同国家具メーカーの日本法人が特許庁の審決取り消しを求めた訴訟。Yチェアは背もたれの支柱部分がYの字になっているのが特徴で、1950年の発売以来ほぼ同一の形状を維持している。同社は08年2月に立体商標の登録出願したが認められず、不服審判の請求をしたが、昨年「請求は成り立たない」という審決が下された。
 裁判所は、Yチェアが長期間にわたって販売された実績を指摘し、消費者はYチェアを他の製品と区別できるとして、特許庁の審決を取り消した。
判例全文
line
6月29日 CADプログラムの著作権譲渡事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 第一事件は原告コンセプト社(アシュラ社の旧日本販売代理店の後身)が、米国アシュラ社製CAD(コンピュータ支援設計)ソフトであるAshlar―Vellum3.0のプログラムに係る著作権およびマニュアルの著作権等に基づき、被告コムネット社(アシュラ社の現日本販売代理店)が販売する製品・マニュアルの販売差止め、廃棄と、損害賠償を求めた事例。
 第二事件は原告アシュラ社が、CADソフトであるAshlar―Vellum2.7およびこれを32ビット化する際に作成されたVellum Extensionsのプログラムに係る著作権等に基づき、被告コンセプト社が販売する製品・マニュアルの販売差止め、廃棄と、損害賠償を求めた事例。
 一審ではAshlar―Vellum2.7およびVellum Extensionsの著作権はアシュラ社にあり、コンセプト社はAshlar―Vellum3.0全体の著作権は取得していないとし、但しコンセプト社は3.0のうちのAdditions部分の著作権を有しているとし、その上で両事件の被告にそれぞれの商品の複製頒布禁止および廃棄を命じ、コムネット社にはコンセプト社の受けた損害額約450万円を、コンセプト社にはアシュラ社の受けた損害額等約5800万円を支払うよう命じたが、双方が各敗訴部分の取消しを求めて控訴していた。
 控訴審は各争点についての原審の判断および結論を維持し、双方の控訴を棄却した。
判例全文
line
6月29日 「キミへ続く空」改変事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 シンガーソングライターである原告が、芸能プロダクションである被告会社およびその取締役であり所属歌手でもある被告Bが、エイズチャリティーコンサートで演奏、歌唱し、ブログに掲載した「僕たちにできる事〜キミへ続く空」は、原告が作詞作曲し著作権を有する楽曲「キミへ続く空」(本件著作物)を無断使用し無断改変したものである等として、被告らに対して、著作権侵害および著作者人格権侵害による合計110万円の損害賠償等を求めた事件。
 裁判所は本件著作物が原告の著作物であることを認め、被告らの楽曲が本件著作物を複製し翻案したものであることを認めた。両者の間には事前に極めて限定的な使用態様での許諾がなされていたが、被告らの使用はその範囲を超えているものと判断され、合計60万円が損害額として認定された。ウェブサイトへの謝罪文掲載は認められなかった。
判例全文
line
6月30日 商標“MONCHOUCHOU”侵害事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 神戸市の洋菓子メーカー「ゴンチャロフ製菓」が、自社のチョコレート菓子「モンシュシュ」と同じ名称を使われて商標権を侵害されたとして、ケーキ「堂島ロール」が人気を集める大阪市の洋菓子製造販売会社「モンシュシュ」に対して、「モンシュシュ」等と印した標章の使用差止めと、約2億4300万円の損害賠償を求めた事件。
 裁判所はモンシュシュ社の店舗の看板や包装紙に使われている「モンシュシュ」という標章が、ゴンチャロフ社の商標と似ており、両社の商品が混同される恐れがあると認めて、モンシュシュ社に対して標章の使用の差止めと、約3560万円の支払いを命じた。判決によると、ゴンチャロフ社は1977年に「私のお気に入り」という意味のフランス語「MONCHOUCHOU」を商標出願し、86年から子会社の販売するチョコレート菓子に採用していたが、一方モンシュシュ社は2003年から「Mon chouchou」等と印した標章を包装紙などに使用していた。
 7月5日、モンシュシュ社は判決を不服として控訴した。
判例全文
line
6月30日 商標“山梨勝沼”侵害事件(中国)
   中国商標局/裁定・申立認容
 山梨県は、上海市在住の中国人個人が中国商標局に、酒類に用いるとして商標登録申請していた「山梨勝沼」について、同局が山梨県などが申し立てていた異議を認めて不許可としたと発表した。申請に気づいた山梨県と山梨市、甲州市、県ワイン酒造組合が同局に資料を送るなどして異議申し立てを行っていたもの。

line


 

日本ユニ著作権センター TOPページへ