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【事件名】商標“ドーナツ”侵害事件(2)
【年月日】平成23年3月28日
 知財高裁 平成22年(ネ)第10084号 販売差止等請求控訴事件
 (原審・東京地裁平成21年(ワ)第25783号)
 (口頭弁論終結日 平成23年2月2日)

判決
控訴人 西川産業株式会社
訴訟代理人弁護士 田中克郎
同 塚原朋一
同 宮川美津子
同 菊田行紘
同 村上諭志
訴訟代理人弁理士 佐藤俊司
被控訴人 テンピュール・ジャパン有限会社
訴訟代理人弁護士 山口孝司
同 松岡伸晃
同 堀井昭暢
同 岩崎浩平
同 鈴木麻友
同 日高麗衣
同 大瀬戸豪志
同 籔本恭明


主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人(1審被告。以下、「被告」という。)は、別紙「被告標章目録」記載1及び2の各標章を別紙「商品目録」記載の商品の包装に付してはならない。
3 被告は、別紙「被告標章目録」記載1及び2の各標章を包装に付した別紙「商品目録」記載の商品を販売し、又は販売のために展示してはならない。
4 被告は、別紙「被告標章目録」記載1及び2の各標章を別紙「商品目録」記載の商品に関するパンフレット、ウエブサイトその他の広告宣伝物に使用してはならない。
5 被告は、別紙「被告標章目録」記載1の標章を包装に付した別紙「商品目録」記載の商品の包装から別紙「被告標章目録」記載1の標章を抹消せよ。
6 被告は、別紙「被告標章目録」記載2の標章を付した別紙「商品目録」記載の商品の包装及び同商品に関するパンフレット、ウエブサイトその他の広告宣伝物から、別紙「被告標章目録」記載2の標章を抹消せよ。
7 被告は、控訴人(1審原告。以下、「原告」という。)に対し、金2310万円及びこれに対する平成21年9月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 原審の経緯等
 以下、略語については、当裁判所も原判決と同一のものを用いる。
 本件は、別紙「原告登録商標目録」記載の本件商標権を有する原告が、別紙「被告標章目録」記載1の被告標章1を包装に付した別紙「商品目録」記載の被告商品(クッション)を販売し、又は販売のために展示し、別紙「被告標章目録」記載2の被告標章2を被告商品に関する広告(被告カタログ、被告ウエブサイト)に使用している被告に対し、被告使用の上記被告各標章は、別紙「原告登録商標目録」記載の本件登録商標及び原告の商品等表示として周知又は著名な「ドーナツ枕」の表示とそれぞれ類似する標章(表示)であるから、被告の上記各行為は、原告の本件商標権の侵害行為に当たるとともに、不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号又は2号の不正競争行為に当たる旨主張して、商標法36条又は不競法3条に基づいて、被告各標章を包装に付した被告商品の販売等の差止め等を求めるとともに、商標法36条、民法709条又は不競法4条に基づいて、損害金2310万円及びその遅延損害金の支払を求めた事案である。
 原判決は、@被告商品の包装箱に付した被告標章1の使用、被告カタログ及び被告ウエブサイトにおける被告標章2の各使用は、いずれも、被告商品が中央部分を取り外すと、中央部分に穴のあいた輪形に似た形状のクッションであることを表すために用いられたものと認識させるものであって、商品の出所を想起させるものではないと認められ、商標としての使用(商標的使用)には当たらないから、「登録商標に類似する商標の使用」(商標法37条1号)に該当することを前提とする商標法36条に基づく差止請求及び民法709条に基づく不法行為損害賠償請求は理由がない、A被告商品の包装箱、被告ウエブサイト及び被告カタログに表示された被告各標章は、同様の理由により、被告の商品であることを示す商品等表示(不競法2条1項1号、2号)には当たらないから、不競法3条に基づく差止請求及び同法4条に基づく損害賠償請求も理由がない旨判断して、原告の請求をいずれも棄却した。
 これに対し、原告は、原判決を不服として本件控訴を提起した。
2 争いのない事実等、争点及び争点に関する当事者の主張
 次のとおり、当審における当事者の主張を付加するほか、原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の「1 争いのない事実等」及び「2 争点」並びに「第3 争点に関する当事者の主張」(原判決3頁5行〜30頁11行)に記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 当審における原告の主張
 以下の諸点に照らすならば、被告各標章の使用は、「登録商標に類似する商標の使用」(商標法37条1号)に該当し、被告の商品であることを示す「商品等表示」(不競法2条1項1号、2号)に該当すると解すべきである。
ア ドーナツクッションから生ずる観念
 ドーナツの語を冠した複合語から、一般的に「中央部分に穴のあいた円形、輪形の形状の物あるいはこのような円形、輪形に似た形状の物」が想起されることはなく、また「ドーナツクッション」から、「中央部分に穴のあいた円形、輪形の形状の物あるいはこのような円形、輪形に似た形状のクッション」の観念が生じることはない。すなわち、辞書には、「ドーナツ」がそのような形状を意味するとの記載はない。また、中央部分に穴があいているのはLPレコードもEPレコードも同じであるのに、EPレコードについてのみドーナツ盤と呼ばれているのであるから、「ドーナツ」の語から中央部分に穴のあいた円形、輪形の観念が生ずるとはいえない。さらに、中央部分に穴のあいた椅子は、「ドーナツ椅子」と呼ぶよりも、「丸椅子」などと表す方が通常の用法である。「ドーナツウォッチ」、「ドーナツスピン」との用語も、特殊であるから、これらの特殊な用例をもって、「ドーナツ」が「中央部分に穴のあいた円形、輪形の形状の物あるいはこのような円形、輪形に似た形状」との観念を生じさせるものということはできない。また、「ドーナツ」は、あくまでも小麦粉に一定の材料を混ぜてこねたものを油で揚げた洋菓子を想起させるものであり、その形状も、穴のあいた円形、輪形に特定されない(甲47、48、209〜211)。
イ 各テンピュール標章との関係
(ア) 各テンピュール商標が出所表示として機能しているとしても、被告各標章の出所表示機能を否定する根拠とはならない。すなわち、各テンピュール商標は、あくまでも被告のハウスマークとしての商標にすぎないから、それとは別にペットマークとして使用されている被告各標章は出所表示機能を有し得る。
(イ) 仮に、著名な商標がテンピュール商標2のみであるとするならば、少なくとも、著名な商標とはいえないテンピュール商標1及び3について、被告各標章の出所表示機能を否定することはできない。
(ウ) ウエブサイトにおいてホームページ左上欄に付された表示は、当該サイトの通信販売業者が誰であるのかを示すものであって、当該商品の製造業者の出所表示であると理解されることはないから、被告ウエブサイトのホームページ左上欄にあるテンピュール商標3が当該商品の出所識別表示であるとはいえない。
(エ) 被告ウエブサイトにおいて「テンピュールはテンピュール・ジャパンの登録商標です」と表記されているが、同表記が、被告商品が被告による販売商品であることを識別させるために使用されていることの根拠とはならない。なお、被告は、テンピュール商標2の使用を許諾されている者にすぎず、その商標権者ではないから(乙298)、そのような正確性を欠く表記によって、各テンピュール商標が、出所表示機能を有すると認めることはできない。
ウ 「ドーナツクッション」の観念と被告商品の形状との不一致
 被告商品は、四角形に近い形状であり、「ドーナツクッション」より生じる観念(中央部分に穴のあいた円形、輪形の形状の物あるいはこのような円形、輪形に似た形状の物)とは異なる形状であるから、被告各標章が被告商品の形状を表していると認識されることはない。
 また、被告商品は、その中央部分を取り外さないで使用することが推奨されている上、たとえ取り外したとしても、その中身は、肌色のデザイン性のない中綿であるため、一般消費者としては、被告商品に付属している四角形の穴のないカバーを取り付けて利用するはずであるといえるから(甲242の1〜8)、被告商品が「中央部分に穴のあいた円形、輪形の形状の物あるいはこのような円形、輪形に似た形状」であると理解されるとはいえない。
エ 形状表示機能を有すると同時に、出所表示機能をも果たすこと
 被告各標章が、形状を表示する機能を有するとしても、出所表示機能をも果たすことはあり得るから、被告各標章が形状表示機能を有することは、その出所表示機能を否定する根拠とはならない。
オ 被告がその登録商標を被告各標章と同様に使用していること
 被告は、「OMBRACIO」及び「The SonataPillow\by Tempur」との登録商標を有し(甲235、236)、「Tempur(R) Ombracio Pillow【オンブラシオピロー】」、「Tempur(R) Sonata Pillow【ソナタピロー】」との枕を販売している(甲232〜234)。そして、被告は、被告カタログにおいて、各商品の紹介枠の左上に大きな文字で配置することにより、被告標章2がカタログにおいて使用されているのと同じ態様で、上記登録商標を使用している(甲43、232)。また、被告ウエブサイトにおいても、商品の写真の左上に太文字で表示し、被告標章2がウエブサイトにおいて使用されているのと同じ態様で、使用されている(甲6、233及び234)。そうすると、被告は、「Ombracio Pillow」、「Sonata Pillow」等と同様に、被告標章2についても、商標(自他商品識別表示)としてこれを使用しているというべきである。
カ 本件登録商標「ドーナツ」の出所表示機能に対する不当な影響
 本件において、被告各標章の使用が商標的使用でないと判断することは、原告の有する本件登録商標の権利行使ができないという不当な結果を生じさせ、本件登録商標「ドーナツ」の出所表示機能に大きな影響を与える。すなわち、仮に、被告が目立つ場所に目立つ大きさで、商品名として「ドーナツクッション」と表示することが、本件登録商標を侵害しないと判断されるならば、“西川のドーナツ(R)枕”の周知性をも考慮すると、需要者にとって「ドーナツ」を付した商品が原告(西川産業株式会社)の出所に係る商品であると想起されなくなるとの不都合な結果を生じる。
キ 不競法違反(商品等表示該当性)
 前記のとおり、被告各標章の使用が商標的使用に当たる以上、商品等表示(不競法2条1項1号、2号)にも当たるのは当然である。
ク 当審における被告の権利行使制限の主張に対し
 当審における被告の権利行使制限に係る後記主張は、否認又は争う。
(2) 当審における被告の反論
ア ドーナツの語を冠した複合語(ドーナツクッション)から生ずる観念に対し原判決が認定した諸事例のほかに、「ドーナツクッション」が「ドーナツ型」の形状のクッションを示すものとして、一般消費者において広く使用され、取引業者においても古くから慣用されていることからみて、「ドーナツクッション」はドーナツ型クッションの慣用商標ないし普通名称であるといえる(乙43〜104、214〜239、244、295〜297、314〜319、328〜403)。
イ 故意過失について
 本件商標権侵害が成立したとしても、被告には故意過失は認められないから、不法行為損害賠償責任は生じない。
ウ 権利行使制限(商標法39条、特許法104条の3第1項)
 本件登録商標には、以下の無効とされるべき事由が存在する。
(ア) 品質誤認
 ドーナツ型ではないクッション、座布団、枕等について「ドーナツ」なる標章を付して販売等がされれば、需要者において「商品の品質」について誤認するおそれがあるから、本件登録商標は、商標法4条1項16号、46条1項1号又は5号に該当するものとして、無効にされるべきである。
(イ) 公序良俗違反
 本件登録商標は、原告の使用態様のみならず、既にその構成自体により、第三者の事業に不測の不利益及び萎縮効果を与えるおそれがある商標であって、公正な競争秩序を害するとともに、我が国に対する諸外国の国際的な信頼を損ない、社会公共の一般的利益を害する商標であるから、「公の秩序・・・を害するおそれがある商標」として商標法4条1項7号に該当し、同法46条1項1号又は同項5号に該当するものとして、無効にされるべきである。
(ウ) 識別性の欠如
 本件登録商標は、商標法3条1項各号に該当し、本件登録商標の商標登録は同法46条1項1号に該当するものとして無効にされるべきものである。
第3 当裁判所の判断
 当裁判所も、被告各標章は、被告商品の出所識別表示として使用されているものではないから、その使用が「登録商標に類似する商標の使用」(商標法37条1号)には該当せず、被告の商品であることを示す「商品等表示」(不競法2条1項1号、2号)にも当たらないとした原判決の判断は、正当であると判断する。
 その理由は、以下のとおり当審における原告の主張に対する判断を付加訂正するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第4 当裁判所の判断」(原判決30頁12行〜46頁21行)に記載のとおりであるから、これを引用する。
 原判決30頁13行目を「1 商標的使用か否か―――事実認定」に改める。
 原判決30頁23行目から31頁4行目「そこで、」までを削除する。
 原判決31頁18行目から20行目に掛けての「上段の文字部分と下段の文字部分とが一体的に認識され、被告標章1全体から自然に『ドーナツクッション』の称呼が生じるものと認められる」を「上段の文字部分及び下段の文字部分は、一体的なまとまりのある『ドーナツクッション』と認識される。」と改める。
 原判決31頁25行目の「被告標章2の各文字」から32頁1行目の「認められる。」までを「被告標章2の各文字は、一体的なまとまりのある『ドーナツクッション』と認識される。」と改める。
 原判決32頁4行目から5行目に掛けての「両者が外観上不可分であるとまでは認められないので、」を「判断の便宜上」と改める。
 原判決33頁5行目から6行目に掛けての「『ドーナツ椅子』、『ドーナツウォッチ』などの『ドーナツ』の語を商品名に冠した商品が販売されていた」を「『ドーナツ椅子』、『ドーナツチェアー』『ドーナツウォッチ』などの『ドーナツ』の語を先頭に付した商品が、第三者によって販売されていた」に改める。
 原判決33頁8行目の「『ドーナツチェア』」を「『ドーナツチェアー』」に改める。
 原判決34頁12行目冒頭から23行目末尾までを削除する。
 原判決35頁1行目冒頭から35頁17行目末尾までを、以下のとおり改める。
 「上記の点と前記アの認定を総合すれば、『ドーナツクッション』の語から、一般的には、中央部分に穴のあいた円形、輪形のクッション、あるいは、このような円形、輪形に似たクッションの観念が生じると認められる。
(イ) これに対し、 原告は、ドーナツの語を冠した複合語から、一般的に『中央部分に穴のあいた円形、輪形の形状の物あるいはこのような円形、輪形に似た形状の物』等が想起されることはない旨主張する。しかし、原告の主張は、失当である。
 すなわち、前記のとおり、『ドーナツ』には、穴のあいた円形、輪形の形から、そのような形状と結びついた物との観念を生じると解するのが自然である。そして、『ドーナツ盤』、『ドーナツ椅子』等の『ドーナツ』を冠した複合語の用例があることをも勘案すれば、『ドーナツ』を冠した複合語からは、『ドーナツ』とそれに続く語との間の『型』又は『形』の語が省略されていたとしても、『中央部分に穴のあいた円形、輪形の形状の物あるいはこのような円形、輪形に似た形状の物』の観念が想起されるものと認められる。なお、原告は、中央部分に穴があるのはLPレコードもEPレコードも同じであるとも主張する。しかし、LPレコードの中心部の穴はEPレコードの中心部の穴に比べて極めて小さく、美観上は、その小さな穴を捨象しても差し支えない程度のものであるのに対して、EPレコードは、中心部に大きな穴があるとの印象を強く与える。そのような点を考慮するならば、EPレコードのみが『ドーナツ盤』と呼ばれることも、上記の結論に反するものではなく、ごく自然な用例といえる。
 また、原告は、『ドーナツ椅子』、『ドーナツウォッチ』、『ドーナツスピン』などの用例は、特殊なものであり、このような用例があったとしても、『ドーナツ』から『中央部分に穴のあいた円形、輪形の形状の物あるいはこのような円形、輪形に似た形状』との観念が生じると解することはできないと主張する。しかし、原告の上記主張も採用の限りでない。すなわち、ウエブサイト上のインターネット通販『Yahoo!ショッピング』の『ウッディストア・アクア』においては、『ドーナツ椅子』及び『ドーナツイス』が、中心部分に穴のある円形椅子に関して、中央部分に穴のない『丸形椅子』とは区別されて、表示されている(乙15)。また、株式会社ニーズのホームページにおいても、中央部分に穴のある、医療機関用の丸形椅子が『ドーナツチェアー』と表記されている(乙16)。さらに、『ドーナツスピン』についても、フィギアスケートのスピン技の名称として広く知られている(乙40、41)。その他、『ドーナツウォッチ』(乙33)、『ドーナツ星雲M57』(乙37、38)、『ドーナツターン』(乙42。自動車の運転方法)のような用例は、いずれも、中空部分を有する形状の物を指す語として使用されている。これらの『ドーナツ』を冠した複合語の用例は、『中央部分に穴のあいた円形、輪形の形状の物あるいはこのような円形、輪形に似た形状』との観念を有する点において共通する。したがって、原告の上記主張は、理由がない。」
 原判決35頁18行目冒頭から37頁16行目の末尾までを、以下のとおり改める。
 「ウ 『ドーナツクッション』の語を含んだ宣伝広告、販売等の状況
(ア) 株式会社岸タンス店作成の平成21年9月29日付け証明書(乙43)、有限会社シーワン作成の同日付け証明書(乙44)、株式会社ユニークポイント作成の同年10月7日付け証明書(乙45)、N作成の同日付け証明書(乙46)、株式会社インフィストデザイン作成の同日付け証明書(乙47)、株式会社幕傳作成の同月9日付け証明書(乙48)及びダブリュー・エンド・ジー・パブリックリレーションズ株式会社作成の同日付け証明書(乙49)中には、上記各事業者が、それぞれ取り扱っているクッションに『ドーナツクッション』という表示を継続的に使用している旨、クッションの取引業界においても、『ドーナツクッション』という表示のうち『ドーナツ』の部分を西洋菓子のドーナツの形状のように中央に切欠き部や窪みを設けた形状を意味するものとして使用している旨の記載部分がある。また、スキャン・グローバル・ロジスティックス株式会社作成の平成21年12月15日付け報告書(乙214)中にも、同社は、『ドーナツクッション』という表示のうち『ドーナツ』の部分を西洋菓子のドーナツの形状のように中央に切欠き部や窪みを設けた形状を意味するものと認識している旨の記載部分がある。
(イ) 乙50ないし90、92ないし111によれば、『ドーナツクッション』の語を付した多数のクッション商品が、中央部分に穴のあいた円形、輪形及び矩形(乙64)の形状のクッションの写真などとともに、宣伝広告され、販売される例が、数多く存在する。これらの商品は特定の製造者、販売者による商品に限られるものではないから、一般需要者において、『ドーナツクッション』の語について、特定の出所を表す記載であると認識することはないと解するのが自然である。
 このうち、レハティームジャパン株式会社作成の『reha team 2005福祉用具カタログ』には、中央部に切欠きを設けた形状ではなく、窪みのある形状の『床ずれ予防』商品が、その写真とともに、『ナーシングラッグドーナツパッド』と表記されて、販売に付されている(乙20)。
(ウ) ウエブサイトにおける商品紹介では、例えば、中央部に切欠きを設けた矩形のクッションの写真とともに、姿勢矯正用のクッションの宣伝広告の説明がされているが、その説明文中には、『ドーナツクッションにもなっているので、産後・・お尻の痛いあなたにも』との説明がある(乙64)。同説明中の『ドーナツクッション』の部分は、尻部に負担を与えない中央部に切欠きないし窪みを設けた形状の商品であることを端的に示していると理解される。また、ウエブサイトにおける通信販売の商品紹介では、『セシールおすすめのドーナツクッションです。』との記載があるが、同記載も、特定の『ドーナツクッション』の語を、特有の形状を有することを示すために使用していると理解される(乙85)。さらに、ウエブサイトにおける需要者の意見として、『2日くらいでドーナツクッション無しでも座れる感じでした。』、『退院後もドーナツクッションが手放せなかったそうです。』、『ドーナツクッションなしでも楽勝でした』等の記載があり、同記載例も、前後の文脈から、『ドーナツクッション』の語を、尻部に負担を与えない中央部に切欠きないし窪みを設けた特有の形状を示す意味で使用していると理解される(乙82、83)。
(エ) また、前記のとおり、一般的に、『商品の形状を指す語』と『商品の用途を指す語』とを前後に組み合わせることによって、商品の性質等をわかりやすく表記する工夫は、例えば、『風船の形状をした椅子』を『バルーンチェア』と表記したり、『三日月の形状をした枕』を『クレセントボディピロー』と表記したりするようにしばしば行われることであり、特に、商品の宣伝広告、販売において、通常みられる(乙51)。
(オ) 上記認定した諸事実を総合すれば、『ドーナツクッション』の語は、これに接した需要者等において、中央部分に穴のあいた円形、輪形の形状の物あるいはこのような円形、輪形に似たドーナツ様の形状をしたクッションを指すものと認識し、特定の出所を表示するものとして認識することはないと解するのが相当である。この場合に、需要者等において、『ドーナツクッション』から、円形、輪形又はこれに似た形状のみを認識するのか、中央部に切欠きないし窪みを有する形状を認識するかについては、個別具体的な宣伝広告の態様や商品そのものの形態等を総合して、個別具体的に判断される筋合いであるといえる。」
 原判決37頁18行目から19行目の「『ドーナツクッション』の称呼が生じる被告標章1全体から」を「被告標章1から」に改める。
 原判決37頁23行目の冒頭から24行目の「生じることからすると」までを、「前記(1)イと同様の理由により、」に改める。
 原判決38頁18行目の後に、行を改め、以下のとおり加える。
 「ウ 原告は、各テンピュール商標は、被告のハウスマークとしての商標にすぎないから、被告各標章についてその出所表示機能を否定する根拠とはならないと主張する。しかし、原告の上記主張は採用の限りでない。すなわち、被告商品の包装箱に接した一般消費者は、被告標章1について、被告商品の本体の形状を示すイメージ図及び包装箱の説明文と相俟って、被告商品が中央部分を取り外すことによって、その中央部分に穴のあいた輪形に似た形状となるクッションであるとの特徴を説明する目的で用いられたものであると認識するものと解される。また、被告ウエブサイト及び被告カタログにおける被告標章2についても、一般消費者は、同様の目的で用いられたものであると認識すると解される。よって、原告の上記主張は採用の限りでない。
 また、原告は、テンピュール商標1及び3は、テンピュール商標2のように著名な商標であるとまではいえない以上、テンピュール商標1及び3の表示をもって、被告各標章の出所表示機能を否定する根拠とすることはできないとも主張する。しかし、原告の上記主張も、採用の限りでない。すなわち、たとえテンピュール商標1及び3がテンピュール商標2のように著名な商標であるとまではいえないとしても、その図形と文字の組合せには特徴があり、その使用態様からみて需要者の注意を惹くものであることなどからすれば、需要者は、テンピュール商標1及び3が、当該商品の出所表示機能を有する部分であると認識すると認められる。したがって、原告の上記主張は採用の限りでない。
 また、原告は、ウエブサイトのホームページ左上欄の表示は、当該サイトの通信販売業者が誰であるのかを示すものであるから、被告ウエブサイトのホームページ左上欄にあるテンピュール商標3が出所識別表示に当たるとはいえないと主張する。しかし、原告の上記主張も採用の限りでない。すなわち、被告ウエブサイトのホームページ(甲6)には、その下段に『テンピュールはテンピュール・ジャパンの登録商標です。』との説明文があること、当該ホームページの最上部には『テンピュール・ジャパン|製品』とのホームページを特定する記載があり、さらに最下部にも『http://www.tempur-japan.co.jp/goods/goods/other/cushion/doughnut.html』とのホームページを特定する記載があることに照らせば、需要者において当該サイトの通信販売業者が『テンピュール・ジャパン』であって、テンピュール商標3が商品の出所識別表示であると理解するものといえる。したがって、原告の上記主張は採用の限りでない。
 さらに、原告は、被告はテンピュール商標2の使用を許諾された者にすぎず、商標権者ではないから(乙298)、自らを商標権者であるとするかのような不正確なテンピュール商標2に係る説明文(「テンピュールはテンピュール・ジャパンの登録商標です」)をもって同商標に出所表示機能を認めることはできないと主張する。しかし、原告の上記主張も、採用の限りでない。すなわち、被告は、テンピュール商標2の専用使用権の設定登録を適法に受けた者であって(乙298)、『テンピュールはテンピュール・ジャパンの登録商標です』との説明文は、必ずしも被告の専用使用権と矛盾するとはいえないから、原告の上記主張は採用の限りでない。」
 原判決38頁21行目の「低反発素材を用いた本体とカバー等からなり、」を「テンピュール社製造に係る低反発素材を用いた、椅子の座部などに載置して使用するもので、腰を下ろしたときに、その弾力性によって衝撃や振動等を和らげるクッションであり、」に改める。
 原判決39頁4行目の「(ア)a」を「(ア」に、22行目の「b」を「(イ)」に、40頁20頁目の「c」を「(ウ)」に、41頁1行目の「d」を「(エ)」に、それぞれ改める。
 原判決41頁8行目冒頭から43頁14行目末尾までを削除する。
 原判決43頁21行目のAをBに、22行目のBをCに改める。
 原判決43頁24行目冒頭から44頁14行目末尾までを削除する。
 原判決44頁26行目冒頭から45頁18行目末尾までを削除する。
 原判決45頁18行目の次に、行を改め、次のとおりの記載を加える。
 「2 商標的使用か否か―――判断
 上記の認定事実に基づいて、被告各標章の各表記態様が商標的使用であるか否かについて、判断する。
(1) 被告商品の包装箱における被告標章1の表記について
ア 被告商品の包装箱の表記態様について
 前記のとおり、@被告商品の包装箱には、被告標章1が合計5個(表面、裏面、右側面、上面及び下面(底面)に各1個)表示されているところ、表面、裏面及び右側面の被告標章1は、被告商品の本体について、取り外された楕円筒形の中央部分とその取り外し後に楕円形の穴があいた本体のイメージ図と一緒に表示されていること、A被告商品の包装箱の表面には、テンピュール商標1及び『中央にスーパーソフトな素材を用いてデリケートな部分を優しくサポート お産の後の妊婦さんや痔でお悩みの方などにお薦めのシートクッション。中央部分にはスーパーソフトなテンピュールRを用いて安らげる座りごこちを提供します。』との説明文が、裏面には、テンピュール商標1及び『・・・スーパーソフト部分は着脱が可能となっています。』との説明文が表示されていること、B右側面、上面及び下面(底面)の被告標章1は、テンピュール商標1と一緒に表示されていること、C被告標章1から中央部分に穴のあいた円形、輪形の形状のクッションあるいはこのような円形、輪形に似た形状のクッションの観念が生じること、D各テンピュール商標(テンピュール商標1ないし3)は、被告が販売する商品とともに全国放送のテレビ番組、新聞、雑誌等でたびたび紹介され、『テンピュール』の標準文字からなるテンピュール商標2は、平成20年7月当時までに、被告が販売する商品の商標として著名となっていたことを総合すると、被告商品の包装箱に接した取引者、需要者は、被告商品の包装箱に付されたテンピュール商標1、及び説明文中の『テンピュールR』の表示をもって、被告の出所表示であると認識すると解するのが相当である。
イ 『ドーナツクッション』の語を付したクッション商品に対する認識
 前記のとおり、@『ドーナツクッション』の語を付した多数のクッション商品が、中央部分に穴のあいた円形、輪形及び矩形の形状のクッションの写真や図などとともに、宣伝広告され、販売される例が、存在し、これらの商品は特定の製造者、販売者による商品に限られるものではないことから、一般需要者において、『ドーナツクッション』の語について、特定の出所を表す表記であるとは認識されていないこと、A一般消費者においても、ウエブサイト等の書き込みにおいて、『ドーナツクッション』の語を、特有の形状を有するクッションとの意味で使用しており、特定の出所を示すものとして使用していない例が少なくないこと、B『商品の形状等を指す語』と『商品の種類を指す語』とを前後に組み合わせることによって商品をわかりやすく表記することは、一般に行われていることからすれば、被告標章1の出所識別力は極めて弱いといえる。
ウ 以上の経緯を総合するならば、被告商品の包装箱に接した一般消費者は、被告標章1について、被告商品の本体の形状を示すイメージ図及び上記Aの説明文と相俟って、被告商品が中央部分を取り外すと、中央に穴のあいた輪形に似た形状のクッションであることを表すために用いられたものと認識し、商品の出所を想起するものではないものと認められる。
 そうすると、被告標章1が被告商品の包装箱において商品の出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているものと認めることはできないから、被告商品の包装箱における被告標章1の使用は、商標としての使用(商標的使用)に当たらないというべきである。
エ これに対し、原告は、以下のとおり主張するが、いずれも理由がない。
(ア) 被告商品の包装箱には、被告標章1以外には、被告商品の商品名に該当する表示は一切ないこと、表面及び裏面の商品の説明文に商品の種類を示す表示として『シートクッション』という語が用いられていることから、被告標章1は、被告商品の出所を表示するものとして使用されていると主張する。
 しかし、原告の主張は、以下のとおり採用できない。すなわち、被告商品の包装箱の表面には、『お産の後の妊婦さんや痔でお悩みの方などにお薦めのシートクッション。中央部分にはスーパーソフトなテンピュールRを用いて安らげる座りごこちを提供します。』との説明文、同裏面には、『抜群のコンビネーションが自然な座りごこちを実現 テンピュールRのドーナツクッションは、一見すると通常のシートクッションと変わりませんが、デリケートな部分が触れるところをスーパーソフトのテンピュールRで構成することにより、自然な座りごこちを実現しています。・・・』との説明がされ、『シートクッション』の語は、被告商品が着座して使用するクッションであることを意味するものとして用いられていることが認められる。『シートクッション』の語が、このような文脈で説明的に用いられたからといって、『ドーナツクッション』からなる被告標章1が商品の出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられていることの根拠となるものではない。
(イ) 原告は、被告商品は、四角形に近い形状であるから、『ドーナツクッション』より生じる観念とは一致しないと主張する。
 しかし、原告の上記主張も採用の限りでない。すなわち、被告商品は、その外縁がやや四角形に近いとはいえ、その中央部分を取り外した場合には楕円形の穴が中央部分にできるものであって、取り外した状態では全体として、『中央部分に穴のあいた円形、輪形の形状の物あるいはこのような円形、輪形に似た形状』であるといえるから(甲5の1、甲5の3)、原告の上記主張は採用の限りでない。
(ウ) 原告は、被告商品は、その中央部分を取り外さないで使用することが推奨されている上、たとえ取り外したとしても、その中身は、肌色のデザイン性のない中綿であるので(甲242の3〜6)、一般消費者としては、被告商品に付属している四角形の穴のないカバーを取り付けて利用するはずであるといえるから(甲242の1〜8)、被告商品が『中央部分に穴のあいた円形、輪形の形状の物あるいはこのような円形、輪形に似た形状』であると理解されるとはいえないと主張する。
 しかし、原告の上記主張は採用の限りでない。すなわち、被告商品の包装箱には被告商品の中央部分を取り除いてカバーを取り付ける前の、楕円形の穴が内側にあいている状態が明確に図示されており、その状態はクッションとしては特徴的なものであって、『スーパーソフトの素材を使用した中央部分は取り外し可能。着座にデリケートになっている方におすすめです。』(甲6)、『お産の後の妊婦さんや痔でお悩みの方などにお薦めのシートクッション』(甲44の1、2、甲45の1)との説明文等があることからみても、需要者がそれらの商品特性を理解して、被告商品に付された『ドーナツ』の語句が『中央部分に穴のあいた円形、輪形の形状の物あるいはこのような円形、輪形に似た形状』を表現したものであると理解するといえる。したがって、中央部分を取り外す前の状態又はカバー取付後の状態を強調して上記の理解が生じ得ないとする原告の前記主張は採用の限りでない。
(エ) 原告は、商標が商品の形状を説明する機能を有すると同時に出所表示機能をも果たすことはあり得るから、被告各標章が形状表示機能を有するとしても、そのことが、出所表示機能を否定する根拠とはならないと主張する。
 しかし、原告の上記主張は採用の限りでない。すなわち、被告各標章の表記態様、各テンピュール商標の存在や、説明文等をも総合考慮すれば、被告各標章は、出所の表示として使用されているものとはいえない。
 したがって、原告の上記主張は、採用することができない。
(2) 被告ウエブサイトにおける被告標章2の表記について
 前記のとおり、被告ウエブサイトの表記態様については、別紙6の写真に示すとおりであり、@中央部に、被告標章2が表示され、その下にカバーが取り付けられた被告商品の写真が掲載されていること、A写真右側に、『スーパーソフトの素材を使用した中央部分は取り外し可能。着座にデリケートになっている方におすすめです。』との説明文が記載されていること、B左側上部に、テンピュール商標3と構成が同一で色彩が異なる標章が掲載されていること、C下部に、『テンピュールはテンピュール・ジャパンの登録商標です』との文章が掲載されていること、D被告標章2から中央部分に穴のあいた円形、輪形の形状のクッションあるいはこのような円形、輪形に似た形状のクッションの観念が生じること、E『テンピュール』の標準文字からなるテンピュール商標2は、平成20年7月当時までに、被告が販売する商品の商標として著名となっていたことが認められる。
 上記の事実のほかに、前記(1)のイ記載のとおり、『ドーナツクッション』の語を付したクッション商品に対する一般取引者及び需要者の認識に照らすならば、被告標章2の出所識別力は極めて弱いといえることを総合すると、被告ウエブサイトの上記部分に接した一般消費者においては、被告標章2について、上記説明文と相俟って、被告商品が中央部分を取り外すと、中央に穴のあいた輪形に似た形状のクッションであることを表すために用いられたものと認識し、商品の出所を想起するものではないものと認められる。
 そうすると、被告標章2が被告商品のウエブサイトにおいて商品の出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているものと認めることはできないから、被告商品のウエブサイトにおける被告標章2の使用は、本来の商標としての使用に当たらないというべきである。
(3) 被告カタログにおける被告標章2の表記について
 前記認定のとおり、被告カタログにおける被告標章2の表記は、@表表紙の中央上部に、『テンピュールR総合カタログ』、『2009Autumn-2009Winter』との文字、『TEMPUR』の文字、テンピュール商標3と構成が同一で色彩が異なる標章が記載されていること、A被告商品を紹介している部分において、上から順に、被告標章2と構成が同一で、文字色が黒色の文字標章、被告商品の写真、『スーパーソフトの素材を使用した中央部分は取り外し可能。着座にデリケートになっている方におすすめです。』との説明文が記載されていること、B裏表紙の中央部に、テンピュール商標3と構成が同一で色彩が異なる標章が記載されていること、Cまた、被告ウエブサイトには、被告販売に係る他の商品も表記されているが、例えば、『座布団』、『トランジットピロー』、『New トラベルピロー』など、他の商品についても、およそ出所識別を有しない一般名詞が用いられていること、D被告標章2から中央部分に穴のあいた円形、輪形の形状のクッションあるいはこのような円形、輪形に似た形状のクッションの観念が生じること、E『テンピュール』の標準文字からなるテンピュール商標2は、平成20年7月当時までに、被告が販売する商品の商標として著名となっていたことが認められる。
 上記の事実に前記(1)のイ記載のとおり、『ドーナツクッション』の語を付したクッション商品に対する一般取引者及び需要者の認識に照らすならば、被告標章2の出所識別力は極めて弱いといえることを総合すると、被告カタログの上記部分に接した一般消費者においては、上記説明文と相俟って、被告商品が中央部分を取り外すと、中央に穴のあいた輪形に似た形状のクッションであることを表すために用いられたものと認識し、商品の出所を想起するものではないものと認められる。
 そうすると、被告標章2と構成が同一で、文字色が黒色の文字標章が被告カタログにおいて商品の出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているものと認めることはできないから、被告カタログにおける被告標章2と構成が同一で、文字色が黒色の文字標章の使用は、本来の商標としての使用に当たらないというべきである。」
 原判決45頁19行目の「(6)」を「(4)」に改める。
 原判決45頁1行目の「2 争点2−1」を「3 争点2−1」に改める。
 原判決46頁22行目の冒頭から、24行目末尾までを、以下のとおり改める。
 「4 小括
 以上のとおり、@『ドーナツ』の語には、穴のあいた円形、輪形の形をした物の観念が含まれており、『ドーナツ盤』、『ドーナツ椅子』、『ドーナツスピン』、『ドーナツ星雲』等の『ドーナツ』を冠した複合語の用例が存在していることを総合すると、『ドーナツ』を冠した複合語からは、『ドーナツ』とそれに続く語との間の『型』又は『形』の文字が付加されていない場合であったとしても、『中央部分に穴のあいた円形、輪形の形状の物あるいはこのような円形、輪形に似た形状の物』の観念が想起されること、A被告商品の包装箱、被告ウエブサイト又は被告カタログには、その出所識別表示としては、各テンピュール商標が別に存在しており、被告標章1(ドーナツ/クッション)又は2(ドーナツクッション)については、被告商品の本体の形状を示すイメージ図及び包装箱の説明文等と相俟って、被告商品がその中央部分を取り外すと、中央部分に穴のあいた輪形に似た形状となるクッションであることを説明するために用いられたものであると需要者において認識し、商品の出所を想起するものではないといえることなどに鑑みれば、被告各標章は、被告商品の出所識別表示として使用されているものではないと認められるから、その使用が『登録商標に類似する商標の使用』(商標法37条1号)には該当せず、被告の商品であることを示す『商品等表示』(不競法2条1項1号、2号)にも当たらないというべきである。
 その他、原告は、縷々主張するが、いずれも採用の限りでない。
5 結論
 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原判決は相当であって、
本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。」

知的財産高等裁判所第3部
 裁判長裁判官 飯村敏明
 裁判官 齊木教朗
 裁判官 武宮英子


「被告標章目録」
1 (標章イメージ省略)
2 (標章イメージ省略)

「商品目録」
商品名:ドーナツクッション
販売元:被告

「原告登録商標目録」(甲3、4)
登録商標 (商標イメージ省略)
登録番号 第822951号
出願年月日 昭和42年11月10日
登録年月日 昭和44年6月24日
更新登録日 平成21年1月13日
商品の区分及び指定商品
 第20類「クッション、座布団、まくら、マットレス」
 第22類「衣服綿、ハンモック、布団袋、布団綿」
 第24類「布製身の回り品、かや、敷布、布団、布団カバー、布団側、まくらカバー、毛布」

「被告商標目録」
1 登録番号 第4355267号(乙298、302、303)
 出願日 平成11年5月14日
 設定登録日 平成12年1月28日
 更新登録日 平成21年12月22日
 商標権者 ダン−フォーム・アンパルトセルスカプ
 専用使用権の設定登録日 平成20年10月31日
 専用使用権の範囲 地域 日本
 期間 本商標権の存続期間中(平成22年1月28日まで)
 内容 「指定商品 第10類 医療用まくら、 医療用クッション、医療用マットレス、医療用の補助器具及び矯正器具、その他の医療用機械器具 第20類 クッション、座布団、まくら、マットレス」
 登録商標 (商標イメージ省略)

2 登録番号 第4566278号(乙299、304)
 出願日 平成12年5月1日
 設定登録日 平成14年5月10日
 商標権者 ダン−フォーム・アンパルトセルスカプ
 専用使用権の設定登録日 平成20年10月31日
 専用使用権の範囲 地域 日本
 期間 本商標権の存続期間中(平成24年5月10日まで)
 内容 「指定商品 第10類・・・、第20類 ・・・クッション、座布団、まくら、マットレス・・・」
 登録商標 テンピュール(標準文字)

3 国際登録番号 第961000号(乙301)
 国際登録日 平成20年3月12日(2008年3月12日)
 登録日 平成21年12月25日(2009年12月25日)
 商標権者 Dan−Foam ApS
 登録商標 (商標イメージ省略)
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日本ユニ著作権センター
http://jucc.sakura.ne.jp/