裁判の記録 line
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2011年
(平成23年)
[7月〜12月]
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7月5日 「僕はやってない!仙台筋弛緩剤点滴混入事件」の名誉棄損事件
   仙台地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴、控訴棄却・上告)
 訴外Aを被告人とする医療施設における殺人・殺人未遂事件に関して、同事件の弁護団団長を務める弁護士である被告が、Aとの共著『僕はやってない!』を出版したところ、同著中に、東北大学大学院教授であった原告およびその妻が虚構の事実を作り上げてその殺人・殺人未遂事件を作り上げたとの印象を与える記述があり、原告の名誉が毀損されたとして、原告が被告に対して1000万円の損害賠償金の支払いと、全国紙・地方紙6紙への謝罪広告を求めた事件。
 裁判所は、被告による名誉毀損を認めて、本書の出版が法秩序全体の見地から許容されるべきものであり、かつ正当な弁護活動として違法性が阻却されるという被告の主張を退け、諸般の事情を考慮して本書の出版によって原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料としては100万円をもって相当と判断し、被告にその支払いを命じた。謝罪広告要求は、その必要を認めなかった。
判例全文
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7月8日 海堂尊氏ブログ事件(3)
   最高裁(二小)/決定・上告棄却(確定)
 医療小説等で知られる作家・海堂尊氏は、氏が出版社の運営するサイトで発表した文章によって名誉を毀損されたとして、日本病理学会副理事長の深山正久氏に損害賠償を求められていた。海堂氏はその文章で、深山氏が厚生労働省から交付金を受けて行った研究を批判するなどしたが、一審二審とも名誉毀損を認定し、それぞれ110万円、60万円の支払を命じていた。
 最高裁第二小法廷は海堂氏の上告を退ける決定をしたため、二審・東京高裁の判決が確定した。

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7月11日 DVD「中国の世界遺産」日本語版契約事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 中華人民共和国の国営放送である中国中央電視台(以下CCTV)のグループ会社で中国法人である映像制作会社が、CCTVの放送用として製作された記録映画の著作権を有するとして、日本の出版社(被告)が製作・販売した『中国の世界遺産』と題するDVDは当該記録映画を複製又は翻案したものであると主張して、被告に対し2500万円の損害賠償を求めた事件。
 裁判所はまず、当該記録映画の著作権が原告に帰属することを認め、被告の主張する利用許諾権限取得は再販売代理店契約が解消されているとして否定して、被告の過失を認めた。その上で平成16・17年にかけての販売分に対する被告の消減時効の抗弁を認めて、平成18年8月販売の100部についてのみ損害賠償請求を認め10万5000円の支払いを命じた。
判例全文
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7月12日 データベースソフトの著作権侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 発明の名称を「データ入力装置」とする特許の特許権者である原告・ソフトウエア制作販売会社が、被告・日立製作所が4種のソフトをインストールしたサーバを製造・販売する行為は、本件特許権の間接侵害に当たり、又は原告が著作権を有するプログラムの著作物の著作権侵害に当たるとして、被告に対して、各ソフトをインストールしたサーバの製造、譲渡等の差止め、および特許権侵害又は著作権侵害による賠償金7億5700万円等を請求した事件。
 裁判所は、本件特許権の間接侵害を理由とした原告の差止め請求、損害賠償請求は認めず、またプログラムの著作物の著作権侵害だとする原告の主張に対しては、本件プログラムが著作物に当たるものと認めず、侵害の主張を容れなかった。
判例全文
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7月15日 弁護士の“懲戒請求”呼びかけ事件(3)
   最高裁(二小)/判決・上告棄却(確定)
 橋下徹大阪府知事が知事就任前に弁護士として出演したテレビ番組で、山口県光市母子殺害事件の被告弁護団に対する懲戒請求を呼び掛けたことをめぐり、弁護団メンバーら4人が損害賠償を求めた事件の上告審。橋下氏は07年5月に民放番組で、被告少年が殺意などについて否認に転じたことを「弁護士が主張を組み立てたとしか考えられない」「許せないと思うなら懲戒請求を」と呼びかけていた。一審広島地裁は名誉毀損と不法行為の成立を認定して800万円の賠償を命令、二審の広島高裁は不法行為だけを認定して360万円の賠償を命令したが、双方が上告していた。
 小法廷は橋下氏の発言を「配慮を欠いた軽率な行為で不適切」と批判する一方、発言内容は視聴者の判断に基づく行為を促すものに過ぎず、弁護団の弁護士業務に重大な支障は生じていないとして、二審判決を破棄し、原告側の請求を棄却した。
判例全文
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7月20日 “イカタコウイルス”器物損壊事件(刑)
   東京地裁/判決・有罪(控訴)
 「イカタコウイルス」と呼ばれるコンピュータウイルスでパソコン内のデータを使用不能にしたとして、大阪府在住の無職男性が器物損壊罪に問われた事件。
 弁護側はウイルスの作成を認めた上で、HDは物理的に壊されておらず、損壊罪の適用はできないと主張したが、裁判所はHDの機能を分析認定の上、保存データをその通りに読みだすことが不可能になり、書き込み機能も侵害されたとして器物損壊罪の成立を認定し、懲役2年6ヶ月を言い渡した。

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7月20日 商標“さぬきうどん”侵害事件(中国)
   中国商標局/裁定・申立認容
 上海市に住む個人が中国商標局に商標「讃岐烏冬(さぬきうどん)」を出願し、香川県やさぬきうどん協同組合などが同局に異議申し立てを行っていたが、香川県は、中国同局から異議申し立てを認め、商標登録を拒絶する内容の決定書が届いたと発表した。

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7月21日 自主制作CD「あたたかい場所」事件
   東京地裁/判決・本訴請求一部認容、一部棄却、
 反訴請求一部認容、一部棄却
 ミュージシャンであり、作詞作曲家であり、音楽プロデューサーである本訴原告X1が、企画制作プロダクション取締役である本訴被告との間で、被告が作詞作曲し歌唱した楽曲11曲についてCDの原盤を制作する旨の契約を締結し、原盤を制作してこれを被告に引き渡した旨主張して、被告に対してその制作代金の支払いを求め(主位的請求)、仮に契約成立の主張が認められない場合には、原告X1がレコード製作者=著作隣接権者および原盤所有権者として、本件CDの販売差止めと原盤引き渡しを求めた(予備的請求)事件。またイラストレーターである原告X2は、被告から本件CDのジャケットデザイン作成の発注を受け作成した旨を主張してその制作代金の支払いを求めた事件。被告は、被告が原告X1と合意した本件CDのレコード製作者であり、原告X1が所有する本件CDの複製物282枚の所有権者である旨を主張して、原告X1に対し、本件CDの複製の差止めと上記複製物の引き渡しを求めて反訴した。
 契約の成否やその内容について争点となったが、裁判所は制作の経緯などから、原告X1が、被告が作詞作曲し歌唱した楽曲についてアレンジ、演奏、レコーディング、トラックダウン、マスタリングをして、CDの原盤を制作し、被告が原告X1に対して相当な額の報酬を支払う旨の契約が成立していると判断し、その額を123万円と認定、すでに支払い済みの30万円を差し引いた93万円の請求を認めた。また原告X2の主張を入れて本件ジャケットデザイン契約の成立を肯定し、制作代金10万円の請求を認めた。反訴に関しては、被告の主張する両者間の合意を認めず、本件複製CDの所有権を被告に認めた上で、原告X1所有のCD282枚の被告への引渡しを命じた。
判例全文
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7月27日 「ウルトラマン」商品化事件(2)
   知財高裁/判決・取消(上告)
 ウルトラマンの関連商品を海外で販売できる独占利用権を侵害されたとして、東京の企画デザイン会社が円谷プロダクションに1億円の損害賠償を求めた事件の控訴審。第一審では、原告会社の損害を認定して、被告が海外での利用権を別の会社に与えるなどして得た金額のうち約1600万円を、原告会社に支払うよう命じたが、原告会社が控訴していた。
 裁判所は、原審同様、被告による債務不履行は認めたが、損害が生じたことを認定できないとして損害の発生を否定、原告会社の主張をみとめず、一審判決の被告敗訴部分を取り消して原告会社の請求を棄却した。
判例全文
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7月28日 貴乃花親方夫妻への名誉棄損事件(2)
   東京高裁/判決・変更(上告、上告棄却・確定)
 大相撲の故二子山親方の相続問題に関し、貴乃花親方夫妻が、二子山の相続財産を独占しようとしたなどとする「週刊新潮」の記事で、名誉を傷つけられたとして、貴乃花親方が新潮社、新潮社社長、「週刊新潮」編集長らに損害賠償と謝罪広告の掲載を求めた訴訟の控訴審。一審で東京地裁は、社長ら被告の過失を認定し、計375万円の支払いを命じたが、新潮社側が控訴していた。
 一審東京地裁は社長個人の賠償責任も認めて異例の判決と話題になったが、二審は、社長は経験豊な取締役に記事をチェックさせ、編集部員に顧問弁護士の連絡先も教えるなど、違法行為が生じないよう社内体制を整えていたなどと述べて社長の責任を認めず、記事の一部についても真実と信じるだけの相当の理由があったとして、一審の判決を変更、社長を除いた2者に計325万円の支払いを命じた。

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7月28日 「ロス疑惑」三浦和義さんへの名誉棄損事件(朝日新聞)
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴・控訴棄却)
 ロス疑惑の容疑者として米自治領サイパンで拘束され、ロス市警の留置場で自殺した元会社社長をめぐる記事で元社長の名誉を傷つけられたとして、妻が記事を掲載した朝日新聞社に1100万円の損害賠償金などを求めた事件。朝日新聞は元社長の逮捕に際し、米連邦捜査局が警察庁に事件の新証拠の存在を明らかにしたと報じたが、ロス地検はその後新証拠の存在を否定していた。
 裁判所は記事の一部について名誉毀損を認めたうえで、新証拠の情報については「虚偽と疑うべき事情があったとはいえない」として、妻の請求を棄却した。

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7月29日 “入れ墨”の著作物性事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 書籍執筆者が自らの左大腿部に施した十一面観音立像の入れ墨の画像を、彫り師に無断で自著『合格! 行政書士 南無刺青観世音』の表紙や扉に使用し、またその表紙画像を自らや出版社のホームページに掲載したのは著作者人格権侵害であるとして、入れ墨の彫り師が書籍執筆者と出版社を訴えた事件。
 裁判所はまず被告に施された入れ墨の著作物性を検討し、彫り師による創作性を肯定して著作物と認定、次に著作者人格権侵害の成否を検討し、公表権侵害性は否定したが、氏名表示権侵害性と同一性保持権侵害性を認めた。その上で、本件書籍による侵害に対して著者に24万円、ホームページによる侵害に対して著者と出版社に各12万円の支払いを命じた。
判例全文
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7月30日 “アメコミヒーロー”著作権事件
   米ニューヨーク州連邦地裁/判決・請求認容
 マーベル・コミック社でスパイダーマンやハルク、アイアンマン、ファンタスティック・フォー、マイティー・ソー、Xメンなど、数々の人気キャラクターを描いてきたジャック・カーマー氏の遺族と、マーベル社との間で、これらキャラクターの著作権の帰属をめぐって争われていたが、ニューヨーク州の裁判所で判決が出た。
 裁判ではこれらのキャラクターがマーベルから賃金を支払われて描かれたものかどうかが争点となったが、判事はマーベル側による賃金の支払いの結果生まれたものであるとして、著作権はマーベル側にあるとの判断を下した。

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8月9日 TBS「愛の劇場」テーマ曲事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 作曲家らが、彼らの作曲した楽曲が東京放送の制作するテレビ番組「愛の劇場」のオープニングテーマとして長期間にわたって許諾を得ずに使用されたとして、TBSテレビに対して使用料相当額の不当利得の返還を求めて提訴した事件の控訴審。原審が原告らの請求を棄却したため、原判決の取消しを求めて原告らが控訴していた。
 裁判所は、原告らが20万円を対価として当該オープニング映像にこの楽曲を使用することを許諾していたとして、原告らの使用料請求を認めなかった原審の判断を維持して、控訴を棄却した。
判例全文
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8月19日 アトラクション“スペースチューブ”事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 スペースチューブという体験型巨大チューブ(反訴原告装置)を使い世界中でイベントを開催する団体を主宰する者(反訴原告)が、同様の装置をイベント会場などにレンタルする会社(反訴被告)に対する注意書きをウェブサイトに載せたところ、反訴被告はその注意書きが虚偽の事実を含み営業妨害であるとして差止め請求を行って仮処分が決定した。反訴被告は、反訴原告の反訴被告に対する損害賠償請求権が存在しないことの確認と、反訴原告装置について反訴原告が著作権を有しないことの確認を求めて本訴を行い、反訴原告はこれに対する反訴として、著作権が反訴原告に存することの確認と、反訴被告の著作権侵害による損害賠償金1710万円を要求した事件。尚、反訴原告の同意のもと、反訴被告は本訴を取り下げた。
 裁判所は反訴原告装置と反訴被告がレンタルした装置を比較検討し、反訴原告装置には著作物性を認め反訴原告が著作権を有することを認めたが、反訴被告の装置は反訴原告装置の創作性の認められる部分においては異なっているので、著作権侵害に当たらないとして、著作権の確認以外の請求は棄却した。
判例全文
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8月19日 “TUBEFIRE”無料ダウンロード事件
   東京地裁/提訴
 日本レコード協会に加盟するレコード会社など31社が、YouTubeに投稿された動画や音楽データの無料ダウンロードを可能にするサイト「TUBEFIRE」に著作権を侵害されたとして、このサイトを運営する会社に対してサービスの停止と損害賠償金約2億3000万円を求める訴訟を東京地裁に起こした。YouTubeの投稿動画については、運営する米Googleがダウンロードを規約で禁じているが、このサイトは動画をダウンロードできるファイルに複製した上で利用者に提供していたという。動画のダウンロードサービスをめぐる提訴は初めてという。

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8月25日 レンタルサーバー付随プログラムの無断使用事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 レンタルサーバ会社が、サーバレンタルサービスに付帯して許諾されたプログラムの利用に関して、契約解除後もホームページ制作会社に利用されたとして、本件プログラムの複製物の譲渡および公衆送信の差止めと、70万円の損害賠償を求めて、ホームページ制作会社を訴えた事件。
 裁判所は被告が原告の著作権を侵害するおそれは十分にあると認め、本件プログラムの複製物の譲渡および公衆送信の差止めを認めて、損害額については10万円の支払いを命じた。
判例全文
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8月29日 聖路加国際病院のパワハラ報道事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 病院内でパワーハラスメントがあったとする「週刊文春」の記事で名誉を傷つけられたとして、聖路加病院が発行元の文藝春秋らに1億1000万円の損害賠償と謝罪広告掲載を求めた事件。記事は総合診察部の女性部長からパワハラを受けた男性医師が、体調を崩したことを理由に異動させられ、異動に抗議した患者が自殺未遂をしたという内容だった。
 裁判所は、患者が抗議の自殺を図ったことは真実と認定し、深刻な対立で医療現場に弊害が生じていたことは認めたが、他の点は真実性を否定し、文藝春秋らに165万円の支払いを命じた。

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8月30日 「週刊新潮」の横峯良郎参院議員への名誉毀損事件(2)
   東京高裁/申立・請求放棄
 暴力団組長と賭けゴルフをしたなどと報じた「週刊新潮」の記事で名誉を傷つけられたとして、民主党の横峯良郎参議院議員が発行元の新潮社などに5500万円の賠償を求めた訴訟で、議員側が自らの訴訟に理由のないことを認める「請求放棄」を申し立てることが分かった。記事は賭けゴルフや花札賭博、愛人への暴力行為などを報じたもので、2010年11月、東京地裁で議員側が敗訴したが、東京高裁に控訴していた。
 請求放棄とは、民事訴訟で原告自らが請求に理由がなかったことを意思表示する手続きで、被告の同意なしに一方的に申し立てられる。

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9月2日 テレビ朝日の「地下室マンション」報道事件(3)
   最高裁(二小)/決定・上告棄却(確定)
 横浜市の傾斜地に建設されようとしていたマンションをめぐって、テレビ朝日が「スーパーモーニング」など二つの番組で、このマンションが危険なマンションであると視聴者に印象づける報道を行ったことにより名誉を傷つけられ損害を被ったとして、そのマンションの開発業者がテレビ朝日を相手に2000万円の賠償を求めた事件。一審の横浜地裁はテレビ朝日側に330万円の支払いを命じ、二審の知財高裁も一審を支持していた。
 最高裁第二小法廷はテレビ朝日の上告を退ける決定をし、テレビ朝日に賠償を命じた一審二審の判決が確定した。

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9月7日 切り餅の「切り込み」特許事件(2)
   知財高裁/中間判決
 側面に切込みを入れた切り餅を製造販売している食品製造販売会社が、側面と上下の面に切込みを入れた切り餅を販売している同業の食品会社を、特許権を侵害されたとして、製造販売の差し止めや14億8500万円の損害賠償を求めた事件の控訴審。一審東京地裁では原告会社の特許の範囲を側面部分の切り込みと判断し、被告会社の切り込みは上下面にもあるから特許権の侵害にならないとして、請求を棄却したが原告会社が控訴していた。
 知財高裁は論点を明確化するための中間判決で、被告会社の製造販売する切り餅は原告会社が有する特許の範囲に属するとして、被告会社による特許権の侵害を認めた。損害額や差し止め請求に関しては審理を続け、改めて判決を言い渡すことになる。
判例全文
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9月14日 「美女はつらいの」ミュージカル化事件
   東京地裁/仮処分申請
 松竹が10月から大阪で上演する韓国ミュージカル「美女はつらいの」に対し、漫画家の鈴木由美子氏が公演の差し止めを求める仮処分を東京地裁に申請した。同ミュージカルは2006年に韓国で公開された映画「美女はつらいの」がベースになっているが、同映画は講談社刊で鈴木由美子著の人気コミック「カンナさん大成功です!」を原作とし、講談社との間で許諾契約を交わして完成・公開されたもの。2008年に韓国で上演された同ミュージカルについては、制作当時から講談社側と韓国製作者側との意見が対立しており、韓国製作会社側は、コミックとは異なる設定になっており講談社管理の鈴木氏の著作権とは関係がない、と主張していた。

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9月15日 元逗子市長“セクハラ”報道事件(3)
   最高裁(一小)/決定・上告棄却(確定)
 女性二人にセクハラをしたと報じた「週刊新潮」の記事で名誉を傷つけられたとして、民主党の長島一由衆院議員が発行元の新潮社に1000万円の損害賠償を求めた事件。議員側が上告していたが、最高裁による上告を退けるこの決定で、一人へのセクハラを認定し、もう一人へのセクハラは真実とは認められないとして名誉毀損を認めて新潮社に50万円の支払いを命じた一、二審判決が確定した。

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9月15日 Google書籍電子化事件(米)
   米ニューヨーク州連邦地裁/決定・和解解消
 米ニューヨーク連邦地裁は、世界の出版界をここ数年騒がせてきたGoogle Book Search和解問題に関して、今年3月22日に下されたチン判事の判断について、当事者たちから3度目のヒアリングを行った。しかし期限までに修正案が提出されなかったため、和解案は解消され、元の著作権裁判が来春再開されることになった。

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9月15日 “過払金回収解説書”の類似事件
   名古屋地裁/判決・請求棄却(控訴・控訴棄却、上告・上告棄却、確定)
 過払金の回収に関する手引書を執筆した弁護士である原告らが、弁護士法人らが関与して発行された同種の書籍が原告らの著作権および著作者人格権を侵害するものであると主張して、同弁護士法人およびその代表社員である弁護士を被告として損害賠償等を請求した事件。
 裁判所は、原告書籍全体としての創作性を認めた上で、被告書籍に複製、翻案されたとする原告書籍各表現の著作物性を検討し、いずれもアイデアに過ぎなかったり、事実に属する部分であって、著作物としての創作性が認められないと判断した。結論として原告書籍各表現と被告書籍各表現は、表現それ自体でない部分又は表現上の創作性のない部分において同一性を有するにすぎないから、被告書籍各表現はいずれも原告書籍各表現を複製、翻案したものとは認められないとして、原告側の請求を棄却した。
判例全文
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9月16日 学校向けパソコン教育ソフトのインストール事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 小中学校でパソコン教育のために教師用や生徒用のパソコンにインストールされるソフトウエアを、被告販売代理店が無断複製して譲渡した。被告会社と原告ソフトウエア開発販売会社とは過去に取引関係があったが、被告会社の売買代金支払い遅延による信頼関係悪化から、取引が中止されていた。原告会社は被告会社に対し、過去の和解契約に基づく許諾料ならびに損害賠償金合計約3000万円を請求した。
 裁判所は被告会社の原告会社から許諾を受けていたという主張を認めず、過去の和解契約に基づき支払うべき許諾料並びに損害額を算定、被告会社に合計約1400万円の支払いを命じた。
判例全文
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9月20日 「日経新聞の黒い霧」名誉棄損事件(3)
   最高裁(三小)/決定・上告不受理(確定)
 日本経済新聞社が、同社元部長の著書『日経新聞の黒い霧』など2冊は虚偽の内容を含んでおり名誉毀損だとして、元部長に対して損害賠償などを求めた事件。一審は名誉毀損を認めて、元部長に200万円の損害賠償を命じ、二審も一審判決を支持したが、元部長側が上告していた。
 最高裁第三小法廷は上告を受理しない決定を行い、一審二審判決が確定した。

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10月3日 「美女はつらいの」ミュージカル化事件
   東京地裁/決定・申立却下
 松竹が8日から大阪松竹座で公演するミュージカル「美女はつらいの」をめぐって、漫画家の鈴木由美子氏が「著作権者の許諾がない」として公演の差し止めを求めて仮処分を申請した事件。鈴木氏は講談社から漫画「カンナさん大成功です!」を刊行、韓国では鈴木氏側の許諾でこの漫画を元にした映画「美女はつらいの」が公開されたが、この映画をミュージカル化した際には許諾はなかった。
 裁判所は、漫画とは場面設定や登場人物などが異なり、著作権侵害は認められないとして、申請を却下した。

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10月11日 「ロス疑惑」三浦和義さんへの名誉棄損事件(TBS)
   東京地裁/和解
 ロス疑惑の容疑者としてサイパンで拘束され、ロス市警の留置場で自殺した三浦和義元会社社長(日本で無罪確定)の妻が、氏が自殺した際のテレビ報道で精神的苦痛を受けたとして、TBSや番組出演者に約550万円の損害賠償を求めた事件。番組では氏の自殺を受け、「演技性人格障害」「狡猾でその半面気が小さい」などのコメントが放送されていた。
 原告側によると、被告側が連帯して40万円を支払うことなどを条件として、東京地裁で和解が成立したという。

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10月11日 “マイケル・ジャクソン”肖像事件
   東京地裁/判決・請求認容
 故マイケル・ジャクソン氏の氏名および肖像の利用に関して独占的権利を有する米国法人が、日本国内での使用許諾権を持つと主張する日本法人に対して、氏の肖像権等を独占的に保有するなどとする日本法人のホームページ上の表示を止めるよう求めた事件。
 日本法人は氏の家族や顧問弁護士から了承を得ていたと主張したが、裁判所は「了承を得ていたと認められる証拠はない」とその主張を退け、米国法人側の請求を全面的に認めて、表示を差し止めるよう言い渡した。
判例全文
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10月20日 商標“つつみのおひなっこや”侵害事件B(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 宮城県の伝統工芸品「堤人形」に関する商標「つつみのおひなっこや」登録をめぐって、2006年から二つの人形製作所の間で続いている無効審判請求事件の新しい裁判。原告の人形製作所は、原告が被告の「つつみのおひなっこや」商標登録(2009年5月)の無効を求めた審判請求が、特許庁によって2011年5月に成り立たないとされた審判には判断の誤りがあるとして、その取り消しを求めた。
 裁判所は原告の主張する取り消し事由2件をいずれも理由がないとして退け、請求を棄却した。
判例全文
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10月28日 「光市母子殺害事件」精神鑑定医名誉毀損事件
   京都地裁/判決・請求棄却(控訴)
 山口県光市の母子殺害事件の差し戻し控訴審で、被告の元少年を精神鑑定した野田正彰関西学院大学教授が、日本テレビの情報番組で法廷での証言をゆがめて報じられ、名誉を傷つけられたとして、日本テレビに1100万円の損害賠償金支払いと謝罪放送を求めた裁判。日テレの「The・サンデー」は2007年7月、差し戻し控訴審に出廷した野田教授が、鑑定資料について全部読むのは面倒くさいと証言した内容を放送した。
 裁判所は、報道された事実の主要部分は真実であり、名誉毀損の不法行為は成立しないとして、野田教授の請求を棄却した。
判例全文
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10月31日 都議選候補の写真無断転用事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 原告カメラマン(二審被控訴人)が、被告政治活動家(二審控訴人)に対して、被告が公明党所属都議会議員のHPから原告撮影による都議会議員の写真データをダウンロードし、自らの配布するビラやウェブページ、および街宣車の看板に加工して掲載したのは、原告の有する著作権・著作者人格権を侵害するものだとして、被告に掲載差止めと廃棄、および損害賠償金400万円等を請求した事件と、その反訴事件。被告は報道目的による引用を主張したが一審の東京地裁は引用の成立を否定して、被告の著作権侵害・著作者人格権侵害を認め、損害額78万5000円を認定して支払いを命じた。これを不服とした被告が控訴した。
 知財高裁は、差止めの要否や損害額の算定など、各争点について原審の判断を維持し、控訴を棄却した。
判例全文
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10月31日 ロックバンドのライブDVD事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 ロックバンドのライブ等を収録したビデオ及びDVD3点について、うち2点の著作権を有する原告バンドリーダー(X)と、うち1点の著作権及び著作者人格権を有すると主張する原告バンドリーダー(Y)が、上記3点を複製・頒布した被告個人に対して、著作権侵害で、またYにおいては著作者人格権侵害もともに主張して、Xは約95万円、Yは約197万円の損害賠償を求めた事件。
 裁判所は著作物性の成立及び被告による著作権の侵害を認定して、Xには約45万円、Yには約3万5000円を支払うよう被告に命じた。なお、Yの主張する著作者人格権侵害は認めなかった。
判例全文
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11月1日 “はとバス”不正競争事件
   東京地裁/和解
 東京の観光ツアーで知られる「はとバス」が「別府はとバス」に対して、似た名称は利用者を混乱させるとして、「はとバス」の名称を使わないよう不正競争防止法に基づいて東京地裁に提訴していた事件で、両者の間に和解が成立した。
 別府はとバスが社名を変え、車体や看板にも「はとバス」を使わないようにした上、和解金を支払うという内容。

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11月1日 銚子市長選候補者“市税滞納”報道事件(3)
   最高裁(三小)/決定・上告棄却(確定)
 読売新聞社が、2009年の銚子市長選で落選した会社員が同氏の税金滞納問題を報じた読売新聞記事を批判するビラを作成して配布したことは、同紙の報道機関としての名誉を傷つけたとして損害賠償等を求めた事件の上告審。
 一審東京地裁は会社員の名誉毀損行為を認めて330万円の支払いを命じ、二審の東京高裁も賠償額を減額したが名誉毀損行為は認めた。会社員が上告した。
 最高裁第三小法廷は上告を退ける決定をし、会社員に220万円の支払いを命じた二審が確定した。

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11月18日 NHKニュース番組の写真無断使用事件(2)
   札幌高裁/判決・変更(上告)
 2008年にNHKが企業の風力発電事業に関するニュースを放映した際に、自分の撮影した風車の写真を無断で使用されたとして、写真家がNHKと取材担当記者などに損害賠償を求めた事件の控訴審。
 一審札幌地裁はNHKなどの著作権・著作者人格権侵害を認めて40万円の支払いを命じたが、写真家側が判決を不服として控訴していた。
 高裁は一審同様NHK側の著作権侵害等を認定したが、侵害による損害額を増額し、NHKと記者に104万円の支払いを命じた。

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11月24日 性格心理テストの出版販売契約事件
   大阪地裁/判決・甲事件主位的請求一部認容、一部却下、予備的請求棄却
         乙事件請求棄却(控訴)
 P5とP6が共同著作権者として、性格心理テスト検査用紙を、実験心理学機器製作販売会社Aから出版販売しており、Aとの間に出版契約を結んでいた。P5、P6とも故人となり、P5の著作権はP1、P3等が継承、P6の著作権はP10が、P10没後はP2が継承した。当該出版契約更新期に当たり、P3が契約更新拒絶を通告し、Aが提訴した事件。
 甲事件は、主意的に原告Aが、A、原告P1、原告P2らと、被告P3との間で出版契約が存続していることの確認を求め、予備的にP1、P2がP3に対し、出版契約の更新に合意するよう求めたもの。乙事件は,P3らがAに対し、出版販売の停止と損害賠償金の支払いを求めたもの。
 裁判所は甲事件に関し、主意的には、P3の更新拒絶は有効なものでなくAの請求には理由があるとして一部認容したが、予備的請求は、出版契約が存続している以上理由がないとして棄却した。また乙事件に関しては、請求は出版契約が終了したことを前提とするものだから、いずれも理由がないとして棄却した。
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11月28日 楽曲「羅針盤」無断演奏事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 作詞作曲家が作詞作曲した「羅針盤」という曲をボーカリストがライブハウスで無断で演奏歌唱したことをめぐり、前者が後者に対して不法行為による損害賠償金130万円の支払いを求めた事件の第二審。
 一審は作詞作曲家の請求を賠償金3万円の限度で認容したが、これを不服とするボーカリストが控訴した。
 控訴人は、「精神的損害を含めて3万円前後」とした一審判決に対して、著作権侵害行為は特段の事情がある場合に限り慰謝料を認められるが、本件はそうではないと主張し、被控訴人の財産的損害は336円だとしたが、裁判所は、裁判所が著作権侵害を含むその前後の一切の不法行為について損害賠償金の支払いを命じることに問題はない、と判断し、損害額を原審同様3万円と認定した。
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11月28日 商標“白い恋人”侵害事件
   札幌地裁/提訴
 北海道を代表する土産菓子「白い恋人」を製造販売する製菓会社が、「面白い恋人」と題した菓子を製造販売した大阪の吉本興業とその子会社等に対し、商標法と不正競争防止法に基づき、販売の差し止めを求める訴えを札幌地裁に起こした。

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11月28日 小型USBメモリの類似事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 台湾法人である電子機器製造メーカーが、小型USBフラッシュメモリを台湾の会社に製造委託してこれを輸入・販売するソニー株式会社に対して、当該メモリは自分のところの製造する商品の形態を模倣したものであるから、製造や輸入・販売は不正競争防止法の不正競争行為であり、メモリは自分のところのメモリの設計図の著作権侵害であるとして、20億円の損害賠償を求めた事件。
 一審東京地裁は不正競争防止法の該当性と原告側メモリ設計図の著作物性をともに否定して、請求を棄却したが、原告側が控訴した。
 知財高裁は各争点につき原審の判断を維持して、その成立を認めず、控訴を棄却した。
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11月29日 “永久凍土マンモス”CGイラスト事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 医科大学教授である原告が、被告出版社が発行した書籍の本文中およびカバーに掲載された画像は、原告が「マンモス」の標本のX線CTデータ等を元に3次元CGで作成した著作物を、無断で一部改変して使用したものであり、著作権および著作者人格権侵害であるとして、発行差止めと損害賠償等を求めた事件。
 裁判は当該画像の著作物性と著作権の帰属が争点になったが、裁判所はいずれの画像も自動的に作成されるものではなく、また合成するなどして作成したもので、作者の個性が表現されていると判断して著作物性を認め、著作権が原告に帰属していることも認めた。その上で被告の著作権侵害および著作者人格権侵害を肯定して、50万円の支払いを命じ、各画像を削除しない限りでの本書籍の発行の差し止めと画像削除請求を認めた。
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11月29日 OCNへの発信者情報開示請求事件(レコード会社8社)
   東京地裁/判決・請求認容
 日本レコード協会に加盟するレコード会社8社が、インターネットサービスプロバイダー1社に対し、ファイル共有ソフトを利用してネット上で音楽ファイルを不正にアップロードしていた9名の氏名などを開示するよう求めた事件。レコード会社側はISPに情報開示を再三求めていたが、ISP側が裁判所の判断によらずには開示しないとしたため、提訴したもの。
 裁判所はレコード会社側の主張を認め、ISPに情報の開示を命じた。
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11月29日 「月光仮面」「快傑ハリマオ」DVD事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 テレビ映画著作権管理会社である原告が、CD・DVD製造販売会社である被告が原告から許諾を得ることなく、原告が著作権を有するテレビ映画作品「月光仮面」および「怪傑ハリマオ」をDVDに複製頒布することで原告の著作権を侵害したとして、被告に対し複製頒布の差止めと133万円余の損害賠償金の支払いを求めた事件。
 被告は、原告とライセンス契約を締結していた有限会社Aに対して、対価を支払って複製頒布の許諾を得ていたと主張したが、裁判所は当該ライセンス契約では本件両作品の複製頒布の再許諾が禁じられていたとして、被告とAとの契約では、被告は本件両作品の複製頒布権利を得ていないと判断、被告が確認注意義務を果たさなかった過失を認定し、損害賠償金80万円余の支払いと、複製頒布の差止めを命じた。
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11月29日 「着うたフル」違法配信事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 2009年に著作権法違反で有罪判決を受けた携帯電話向け違法配信サイト運営者に対する民事訴訟。日本音楽著作権協会が、携帯電話に音楽を配信する「着うたフル」を無断で不特定多数の人にダウンロードさせたとしてサイト管理者男性に約1億8千万円の損害賠償金支払いを求めたもの。
 男性が争わなかったこともあり、裁判所はほぼ訴状の内容通りに認定し、約1億7千万円の支払いを命じた。
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12月1日 テレビ番組のネット配信事件(刑)(全国一斉)
   47都道府県警/逮捕
 全国47都道府県警は1日までに、ファイル共有ソフトなどを使って映画やテレビ番組を違法に配信したとして、著作権法(公衆送信権)侵害容疑で一斉摘発を実施し、76個所を家宅捜索、30人の男女を逮捕した。逮捕者は24歳から60歳だった。

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12月7日 船田元前議員の不倫報道事件
   宇都宮地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 自民党前衆議院議員の船田元氏と妻で元参議院議員の恵氏が、「週刊新潮」の記事で名誉を傷つけられたとして、発行元の新潮社と編集長に対し、3300万円の損害賠償金支払いと謝罪広告の掲載を求めた事件。問題の記事は2009年12月に発売された号の「政界失楽園」と題された船田氏の不倫疑惑を報じたもの。
 裁判長は「事実と認めるに足りる明確な根拠に欠ける」として名誉毀損の成立を認め、新潮社側に176万円の支払いを命じた。謝罪広告掲載は認めなかった。

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12月8日 北朝鮮映画のニュース報道事件(フジテレビ)(3)
   最高裁(一小)/判決・破棄自判(確定)
 北朝鮮の映画を日本のテレビのニュース番組で無断使用され、著作権を侵害されたとして、映画を管理する北朝鮮の行政機関と日本の配給会社が、日本テレビとフジテレビに損害賠償などを求めた訴訟の、フジテレビを相手とする上告審。
 北朝鮮は日本とともにベルヌ条約に加盟しているが、裁判長は、日本の加盟する条約に未承認国が後から加わった場合、原則的に、日本は未承認国との間で権利義務が生じるか否かを選択できる、として、国家として承認していない北朝鮮の著作物は、著作権法での保護の対象にならないとした。そして二審判決中のテレビ局側の敗訴部分(配給会社に対する12万円の損害額支払い)を破棄し、原告側の請求を退け、原告側の敗訴が確定した。
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12月8日 商標“讃岐”取消事件(台湾)(2)
   台湾知的財産法院/判決・控訴棄却
 台湾企業による「讃岐」の商標登録を無効とした台湾の知的財産局の決定を不服として、企業側が取り消しを求めた行政訴訟で、台湾の知的財産法院は8日までに訴えを却下した。判決では、讃岐うどんが台湾でも知られていることを認めたうえ、台湾企業のうどんが讃岐産と誤解される恐れを指摘して、無効決定に誤りはないとの判断をした。

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12月8日 データベースソフトの著作権侵害事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 発明の名称を「データ入力装置」とする特許の特許権者である原告・ソフトウエア制作販売会社が、被告・日立製作所が4種のソフトをインストールしたサーバを製造・販売する行為は、本件特許権の間接侵害に当たり、又は原告が著作権を有するプログラムの著作物の著作権侵害に当たるとして、被告に対して、各ソフトをインストールしたサーバの製造、譲渡等の差止め、および特許権侵害又は著作権侵害による賠償金7億5700万円等を請求した事件の控訴審。
 一審は、本件特許権の間接侵害を理由とした原告の差止め請求、損害賠償請求は認めず、またプログラムの著作物の著作権侵害だとする原告の主張に対しては、本件プログラムが著作物に当たるものと認めず、侵害の主張を容れなかったが、原告側が控訴した。
 裁判所は特許権侵害に基づく請求も著作権侵害に基づく請求も理由がないと判断して原判決を支持、控訴を棄却した。
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12月9日 渋谷区長vs「ジャストタイムズ渋谷」名誉棄損事件 
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 東京渋谷区の広報誌に区長が執筆したコラムで名誉を傷つけられたとして、ミニコミ誌が区に550万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めた事件。ミニコミ誌「ジャストタイムズ渋谷」が区長選の前に掲載した区政に批判的な記事に対して、区長は広報誌のコラムで「私を誹謗し、他の区長候補者を有利にするもの」と執筆した。
 裁判所は、コラムは、現区長が区長選で不利にならないように広報誌を利用し、ミニコミ誌がアンフェアな選挙活動をしているかのように書かれており、名誉を毀損していると認め、区に謝罪広告を同区広報誌に掲載するよう命じた。

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12月14日 テレビCMの著作権帰属事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 原告である映像企画制作会社が、被告広告代理店に対し、原告が制作したa社およびb社のテレビCM原版を被告広告代理店が無断で使用したとして、著作権侵害を理由とする合計904万円余の損害賠償金支払いを求め(第1事件)、同時に元原告会社取締役であった被告Aに対して、Aが第1事件の著作権侵害を被告広告代理店と共同で行ったとして、不法行為又は債務不履行に基づく904万円余の損害賠償金支払いを求めた(第2事件)事件。
 裁判所はまずa社およびb社のテレビCM原版を映画の著作物とした上で、大手広告代理店を退職して被告広告代理店の監査役に就任していたBがCM制作を総合的に指揮していたとして、Bを本件テレビCM原版の著作者と判断した。次にその著作権の帰属については、疎外の大手広告代理店かa社またはb社が製作者であると判断して、原告の映画製作者性を否定し第1事件の請求を却下した。また第2事件についても、被告Aの不法行為又は債務不履行に基づく賠償金を認めず、請求を棄却した。
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12月15日 取扱説明書の編集著作物・著作物性事件
   大阪地裁/判決・請求棄却
 被告会社らの販売する逆浸透膜浄水器の取扱説明書が、原告会社の販売する同様機器の取扱説明書の、編集著作権および著作権を侵害するものだとして、被告らの取扱説明書の作成頒布の差止めと、損害賠償金合計約450万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は、まず素材の選択・配列に関わる創作性を必要とする編集著作物性を検討して、原告取扱説明書の創作性を否定し、次に個々の記載の著作物性を検討してこれも否定、原告の請求を棄却した。尚、この類似商品の商標権、また意匠権に関する提訴は別に行われている。
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12月17日 「フラッシュ」の松本人志さんへの名誉棄損事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 タレントの松本人志氏が、写真週刊誌「FLASH」の記事で名誉を傷つけられたとして発行元の光文社等に1100万円の損害賠償と謝罪記事の掲載を求めた事件。問題となったのは2010年9月7日号の記事で、股関節の治療で休養していた同氏が約2カ月ぶりに復帰した当日に、東京新宿で夜遊びしていたなどと報じた。
 裁判所は、記事は深夜まで飲食したことを伝えるにとどまり、不節制という印象を読者に与えるものではないとして、名誉毀損の成立を認めず、請求を棄却した。

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12月19日 ファイル交換ソフト事件(刑)(Winny)(3)
   最高裁(三小)/決定・上告棄却(確定)
 ファイル共有ソフトWinnyを開発し、ネットを通じて不特定多数に提供した元大学助手である被告が、このソフトを利用して著作物の公衆送信権を侵害する正犯者が出たことにより、被告のWinny提供行為が正犯者らの著作権法違反罪の幇助犯に当たるとして起訴された事件。
 一審京都地裁は幇助犯の成立を認め罰金150万円を命じたが、二審大阪高裁は一審を破棄し無罪を言い渡していた。
 最高裁第三小法廷は、裁判官5人中4人の多数意見で、被告は著作権侵害を容認していたとは認められないとして、検察側の上告を棄却する決定をした。逆転無罪の二審判決が確定した。
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12月20日 “自炊”代行事件
   東京地裁/提訴
 本や漫画を私的に電子化する「自炊」行為を、事業として代行する業者2社に対して、作家の東野圭吾さんや浅田次郎さん、漫画家の弘兼憲史さんら7人が、自炊行為の差し止めを求める訴訟を東京地裁に起こした。私的複製は合法だが、自炊代行業者は客の依頼を受け、1冊100円程度の料金で大量の本を電子化しており、これは私的複製とは言えず侵害であると作家らは主張している。

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12月21日 横浜市長“合コン”報道事件(週刊現代)(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却
 中田宏・前横浜市長が、合コンで女性に猥褻な行為をしたなどとする「週刊現代」の記事で名誉を傷つけられたとして、発行元の講談社に5500万円の損害賠償などを求めた事件。
 一審東京地裁は名誉毀損の成立を認め、講談社側に550万円の賠償金支払いと謝罪広告の掲載を命じていた。
 高裁は、記事には真実性がなく裏付け取材もほとんど行われていないと述べ、一審判決を支持して講談社側の控訴を棄却した。

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12月22日 “私的録画補償金”不払い事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却(上告)
 映画会社やテレビ局などの団体で作る「私的録画補償金管理協会」が、デジタル放送を録画する家庭用DVDレコーダーをめぐり、メーカーが著作権法の定める「補償金」を支払わないのは違法だとして、東芝に約1億4700万円の賠償を求めた事件。
 一審は、著作権法はメーカーに協力義務は要求しているが、法的義務はないとして、協会の要求を棄却したが、協会側が控訴していた。
 裁判所は、協力義務違反には損害賠償を負担すべき場合があるとした上で、東芝が支払いを拒否する機器が著作権法施行令が定める「対象機器」に該当するかどうかを検討、施行令の条文はアナログ放送を前提にデジタルに変換して録画することを規定するにとどまるとして、デジタル放送専用の東芝の機器は施行令の対象には該当せず、東芝が協力義務に反しているとは言えないとのべて、協会側の控訴を棄却した。
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12月22日 “火災保険改定のお知らせ”著作権事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 損害保険の代理店を営む原告が、損害保険会社である被告米国法人に対し、被告が原告・被告間の損害保険代理店契約が解除された後に、原告の著作物である「火災保険改訂のお知らせ」と題する説明書を複製し、それを含む資料を原告の顧客に送付して火災保険契約の締結を勧誘した行為が、著作権の侵害、および秘密保持契約違反であり、不正競争防止法不正競争行為・民法一般不法行為に該当するとして、約390万円の賠償金支払いを求めた事件。
 裁判所は原告説明書の著作物性を検討して、作成者の個性が表現されているとして、既定事実や客観的データの羅列であるから著作物性はないとする被告の主張を退けて著作物性を肯定し、被告による複製権侵害を認めた。ただし秘密保持契約違反および不正競争行為や一般不法行為の成立は認めず、被告に25万円の支払いを命じた。
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12月26日 折り紙の“折り図”HP掲載事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 創作折り紙作家が、TBSテレビがテレビドラマの番組ホームページに掲載した「吹きゴマ」の折り図は、自分が書籍に掲載した折り図を複製または翻案したものであり、著作権および著作者人格権の侵害に当たるとして、テレビ局に対して損害賠償と謝罪文の掲載を求めた事件の控訴審。
 一審東京地裁は、原告折り図の著作物性は認めたが、被告折り図から原告折り図の表現上の本質的特徴部分を感得できないとして原告の請求を棄却した。
 控訴審も原判決の判断を是認した上で、被告折り図と原告折り図は、折り図としての見やすさの印象が大きく異なり、分かりやすさの程度においても差異があるとして、被告折り図は原稿折り図の有形的な再製には当たらず、また被告折り図から原告折り図の表現上の本質的特徴が直接感得できるとは言えないとして、控訴を棄却した。
判例全文
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12月26日 “編み物と編み図”の著作物性事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 手編み物作家である原告が、編み物団体主催者である被告が、被告繊維製品製造加工販売業者に編み物・編み図を納入し、その写真を目録に掲載させたことに関して、その被告編み物・編み図は原告の編み物・編み図を複製、翻案したものであると主張して、被告らに対し、被告作品・被告作品写真の展示、販売の差止め、損害賠償金660万円の支払い、および謝罪広告の掲載を求めた事件。原告はかつて被告の主催する団体に所属して作品を提供、展示したことがあり、また被告は被告会社と、手編み講習会における講師業務や手編み物デザインおよび製作の業務の委託契約を交わしていた。
 裁判所はまず原告編み物の著作物性を検討して、著作物性を否定、次に原告編み図の著作物性を検討して、これも否定し、その余の原告の主張はいずれも理由がないとして請求を棄却した。
判例全文
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