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【事件名】レンタルサーバー付随プログラムの無断使用事件
【年月日】平成23年8月25日
 大阪地裁 平成23年(ワ)第6526号 プログラム著作権使用料等請求事件
 (口頭弁論終結日 平成23年7月26日)

判決
原告 株式会社RNI
被告 BAHATI株式会社


主文
1 被告は、原告に対し、10万円並びに内5万円に対する平成22年5月28日から及び内5万円に対する平成23年3月28日から、それぞれ支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2 被告は、別紙原告ソフト・プログラムコード一覧記載のプログラムの複製物を譲渡及び公衆送信してはならない。
3 原告のその余の請求を棄却する。
4 訴訟費用は、これを3分し、その1を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。
5 この判決は、1、2及び4項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
(1) 被告は、原告に対し、70万円及びこれに対する平成22年5月28日から支払済みまで年14.5%の割合による金員を支払え。
(2) 主文2項と同旨
(3) 訴訟費用は被告の負担とする。
(4) 仮執行宣言
2 被告
(1) 原告の請求をいずれも棄却する。
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
第2 事案の概要
1 前提事実(当事者間に争いがないか弁論の全趣旨により認定できる。)
(1) 当事者
 原告は、インターネットでのサーバの設置及びその管理等を目的とする会社である。
 被告は、インターネットサーバのレンタル、ホームページ制作・開発及び各種商品の販売などを目的とする会社である。
(2) 原告の著作権
 原告は、別紙原告ソフト・プログラムコード一覧記載のプログラム(以下「本件プログラム」という。)について著作権を有する。
(3) 原告と被告との間の本件プログラムの利用に関する「専用サーバレンタルサービス契約」(以下「本件契約」という。)
 原告は、被告との間で、平成18年5月28日、大要、次の内容で、本件契約を締結した。
ア 被告が専有的に使用することができるサーバマシン1台を、原告が運用するサーバルームに設置する。
イ 原告は、被告に対し、上記サーバマシンを維持管理する等の役務を提供する。
ウ 原告は、被告に対し、本件契約期間内において、本件プログラムの利用を許諾する。
(4) 本件契約の終了
 本件契約は、平成22年5月21日、解除により終了した。
(5) 本件契約終了後の被告による本件プログラムの無断利用
ア 原告は、被告が、本件契約が終了した後の平成22年5月28日ころ、その運営するインターネットホームページにおいて、無断で本件プログラムを利用していることを発見した。
 そこで、原告が、被告に対し、同日、本件プログラムの利用中止又は利用を継続する場合には利用料の支払を求める旨の通告をしたところ、被告は、同年6月ころ、同ホームページ上から本件プログラムを削除した。
イ 原告は、被告が、平成23年3月28日ころ、再度、同ホームページにおいて、本件プログラムを利用していることを発見した。
 そこで、原告が、被告に対し、同月29日、利用中止等を求める通告をしたところ、被告は、同年4月7日までに同ホームページ上から本件プログラムを削除した。
2 原告の請求
 原告は、被告に対し、本件プログラムの著作権を侵害されたとして、著作権法112条1項に基づき、本件プログラムの複製物の譲渡及び公衆送信の差止めを求めるとともに、不法行為に基づき、70万円の損害賠償及びこれに対する最初の不法行為の後である平成22年5月28日から支払済みまで本件契約所定の年14.5%の割合による遅延損害金の支払を求めている。
3 争点
(1) 本件プログラムに係る著作権侵害のおそれの有無(争点1)
(2) 損害額等(争点2)
第3 争点に係る当事者の主張
1 争点(1)(本件プログラムに係る著作権侵害のおそれの有無)について
【原告の主張】
 前提事実のとおり、被告は、本件契約が終了した後に、2回にわたり本件プログラムを無断で利用した。
 したがって、被告が無断で本件プログラムを取引先等に不正に提供するなどして利用するおそれがある。
【被告の主張】
 被告は、現在、本件プログラムを利用していないし、本件プログラムと同様の機能を有する他のプログラムを所持してもいる。したがって、今後、利用するおそれはない。
2 争点2(損害額等)について
【原告の主張】
(1) 原告がプログラム開発を請け負う際の1日当たりの単価は、4万円及び消費税2000円の合計4万2000円である。本件プログラムの作成には2か月間を要したから、本件プログラムの作成当時における価値は、日額4万2000円に2か月間の労働日数22日間を乗じた184万8000円であった。
 作成されたのが5年前であることなどからすれば、本件プログラムの現在の価値は70万円である。
(2) 前提事実のとおり、被告は、遅くとも平成22年5月28日までに本件プログラムの不正利用を開始したから、遅延損害金の起算日は同日である。
 また、原告は、被告に対し、同日、本件プログラムの利用中止又は利用継続をするのであれば利用料を支払うように求めたにもかかわらず、被告は、平成23年3月28日までに本件プログラムの利用を再開した。
 これにより、被告は、原告に対し、本件契約に基づく利用料を支払う意思を示したものであるから、遅延損害金の割合は本件契約所定の年14.5%である。
【被告の主張】
 本件プログラムは、知識があれば数時間で作成できる簡易なプログラムであり、同様の機能を有するプログラムが無料又は低価格で販売されている。
第4 当裁判所の判断
1 争点1(本件プログラムに係る著作権侵害のおそれの有無)について
 前提事実のとおり、被告は、本件契約終了後に本件プログラムを無断で利用し、原告から警告を受けて利用を中止したものの、再度、無断で利用したことが認められる。
 このような事実経過からすれば、被告が本件プログラムの無断利用を再開し、原告の著作権を侵害するおそれは十分にあると認めることができる。
 よって、著作権法112条1項に基づく本件差止請求には理由がある。
2 争点2(損害額等)について
 本件契約(甲1)などによれば、本件プログラムは平成18年以前に作成されたものであること及び本件契約に基づく本件プログラムの利用料等は1か月2万8380円であったことが認められる。
 また、弁論の全趣旨によれば、本件プログラムと同様の機能を有する他のプログラムについて、インターネットで無料配布されたり、相当低廉な価額で提供されたりしているものもあることが認められる。
 これらのことに加え、前提事実で認定した被告による本件プログラムの利用態様及び推定される利用期間など一切の事情を考慮すれば、平成22年5月28日ころと平成23年3月28日ころにおけるそれぞれの無断利用について各5万円の限度で損害が発生したものと認めるのが相当である。
 また、本件契約終了後に、原告と被告との間で、新たに本件契約が締結されたとみることのできる事情はないから、遅延損害金について本件契約所定の割合によるべきであるとする原告の主張は採用することができない。したがって、遅延損害金の割合は、民法所定の年5%の限度で認めるのが相当である。
3 結論
 以上によれば、本件各請求は主文の限度で理由があるから、その限度でこれらを認容し、その余の部分には理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条、64条本文を、仮執行宣言につき同法259条1項を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。

大阪地方裁判所第26民事部
 裁判長裁判官 山田陽三
 裁判官 達野ゆき
 裁判官 西田昌吾


(別紙)原告ソフト・プログラムコード一覧(以下省略)
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