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【事件名】データベースソフトの著作権侵害事件(2)
【年月日】平成23年12月8日
 知財高裁 平成23年(ネ)第10049号 特許権侵害差止等請求控訴事件
 (原審・東京地裁平成20年(ワ)第33440号)
 (口頭弁論終結日 平成23年11月17日)

判決
控訴人 X
同訴訟代理人弁護士 朝倉正幸
同 田中芳美
被控訴人 株式会社日立製作所
同訴訟代理人弁護士 古城春実
同 堀籠佳典
同 玉城光博


主文
 本件控訴を棄却する。
 控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人に対し、5億円及びこれに対する平成20年12月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は、第1、2審とも、被控訴人の負担とする。
4 2項につき仮執行の宣言
第2 事案の概要(略称は、審級に応じた読替えをするほか、原判決に従う。)
1 本件は、被控訴人が原判決別紙被告ソフト目録記載の被控訴人各ソフトをインストールしたサーバ(被控訴人サーバ)を製造、販売した行為について、控訴人が、被控訴人の上記行為は、@控訴人の有する本件特許権(特許第3289645号。発明の名称「データ入力装置」)についての間接侵害(特許法101条2号)に当たる旨主張して、被控訴人に対し、(ア)特許法100条に基づく被控訴人各ソフトをインストールしたサーバの製造、譲渡等の差止め及び廃棄並びに(イ)不法行為による損害賠償として7億5700万円(平成14年6月4日から平成20年までの損害及び弁護士費用)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年12月6日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求め、A選択的に、控訴人が著作権を有する原判決別紙プログラム目録記載の本件プログラムの著作物の著作権(複製権)を侵害する旨主張して、上記~の損害賠償を求める事案である。
 原判決は、@被控訴人各ソフトをインストールしたサーバは、いずれも本件発明に係る「その物の生産に用いる物」に該当しないから、特許権の間接侵害は成立しないこと、A本件プログラムが著作物に当たるとも、被控訴人が本件プログラムを複製したともいえないから、著作権侵害も成立しないことを判示して、控訴人の請求をいずれも棄却した。
 このため、控訴人がこれを不服として、上記(イ)のうち損害賠償につき5億円(平成14年6月4日から平成23年9月末日までの損害の内金)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年12月6日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で控訴した。
2 前提となる事実
 本件請求に対する判断の前提となる事実は、原判決の事実及び理由の第2の(1)ないし(3)(原判決2頁15行目〜5頁10行目)のとおりであるから、これを引用する。
3 本件訴訟の争点
(1) 本件特許権の間接侵害の有無(争点1)
(2) プログラムの著作物の著作権(複製権)侵害の有無(争点2)
(3) 控訴人の損害額(争点3)
第3 当事者の主張
1 原審における主張
 原審における当事者の主張は、原判決の事実及び理由の第3(原判決5頁17行目〜27頁8行目)のとおりであるから、これを引用する。
2 争点1に係る当審における当事者の主張
〔控訴人の主張〕
(1) イ号サーバシステムは構成要件F及びJを備えていること
ア 構成要件F(入力処理手段)と構成要件J(情報登録手段)
 構成要件Fの入力処理手段は、ネットワーク上の所定のサーバに事前登録した入力対象のCADファイル・文書ファイルのURL(ネットワーク上のファイル所在情報)を統合データベースの入力ファイルに書き込む、ごく一般的な処理手段である。本件発明では「データベース入力準備ファイル」、イ号サーバシステムでは「属性情報テーブル」ファイルが、書き込み対象ファイルである。以上のとおり、イ号サーバシステムが本件発明の構成要件Fを備えていることは明らかである。
 そして、イ号サーバシステムが、これらの情報の登録手段、すなわち構成要件Jを備えていることは、当業者にとって当然のことである(甲3、4)。
イ 原判決の総括的な誤り
(ア) 被控訴人は、イ号サーバシステムが、本件発明の根幹を成す構成要件D(画面表示手段)及び同G(リンク設定手段)を備えていることを認めている。原判決は、さらに進めて、上記構成要件Dと同Gを含め、構成要件A、B、C、D、E、G、H、I、Kをイ号サーバシステムが備えていると認定している。
 しかるに、原判決は、このうち、構成要件Fと同Jだけがイ号サーバシステムに備わっていないと認定したが、全く理由を述べていない。
(イ) 構成要件Fは、ネットワークサーバ上のファイル特定情報を統合データベースの入力手段であるデータ入力準備ファイルに書き込むことであって、イ号サーバシステムにデータ入力準備ファイルが備わっていることを認定する以上、データ入力準備ファイルに書き込むことは、当業者にとって当たり前のことである。
 構成要件Fで入力された指示項目に対して登録する情報、構成要件Gで付されたリンクさせる情報及び構成要件Iで関連付けされた情報種類の情報を、データベースサーバに送って登録すること(構成要件J)も、当業者にとって当然のことである。
 原判決は、当然のことを備わっていないと誤って認定し、既存システムが独自に管理されるということを誤って理解し、本件発明全体の中の位置付けを看過しているものである。結局、原判決の認定は、全体として、理由らしい理由は判示していないに等しく、この点は、審理不尽である。
ウ 原判決の前提の誤り
(ア) 既存システムは、イ号サーバシステム全体を構成する一部となっているから、他の構成部分(イ号ソフト)と独立には存在することができず、相互に関連性をもって作動する。
 イ号サーバシステムは、既存ユーザー端末に、上位リンクを持つ階層表示・製品部品表画面と操作プログラムを配信する。本件発明及びイ号サーバシステムは、このように明確に、既存システム(各端末機を含む。)が位置付けられている。
 原判決が、「URLを利用して、既存システムに格納されたデータにアクセスして参照することができる」と認定しながら、「その参照情報に関する情報の入力は、既存システムの機能によって行われ」るから、「イ号サーバシステムが当該情報を入力する機能を有するものではない」と何の理由も付けずに認定しているのは、余りに短絡的で、誤りである。
 以上のように、既存システムとイ号ソフトとは、基本的に密接に関連するように、すなわち、一体となるように構成されているのである。よって、原判決の「ネットワーク接続したイ号サーバシステムは、部品に関する情報がイ号サーバシステムとは別の複数の既存システムに保持されたまま各既存システムで個別管理され、かつ、その情報の入力・登録も各既存システムが有する入力手段・登録手段によって行われること」を前提とするという認定は、誤りである。
(イ) 原判決は、「クライアントの要求に従って、これらの既存システムに保持された部品に関する情報が整理・記述された入力用データをコピー及び一部データ変換してイ号サーバシステム内に構築されたイ号データベースを検索し」と認定した。この内容は、本件発明の統合データベースへのデータ入力手段である「データ入力準備ファイル」そのものである。イ号サーバシステムと本件発明は、心臓部に同一の機能を有するデータベースを持っている。
 以上のように、イ号サーバシステムは、本件発明のデータ入力準備ファイルと同一の入力用データファイルによるイ号データベースを備えている以上、「既存システムの機能によって行われる」と認定し、既存システムだけで運用するような「前提」を認定することの誤りは明らかである。
 既存システムは、確かに独自の管理システムを持っているが、既存システム中のデータをイ号サーバシステムのデータ入力準備ファイル中のURLにつなぎ、運用するものである。
(ウ) 本件発明において、統合データベースで参照・運用する既存システムの情報は、「URL」(ネットワークサーバアドレス・ディレクトリィ・ファイル名)である。本件発明は、既存システムに存在する情報であるURLを、統合データベースで多次元検索するものである。この統合データベースのデータ入力の手段がデータ入力準備ファイルである。
 本件明細書(甲2)の「データベースサーバの統合データベース」は、このデータ入力準備ファイルであり、データ入力(登録)が完了することを示している。
 クライアントは、 既存システムが提供するAPI( Application Program Interface)を介してデータ入力準備ファイル中のURLにつなぎ、登録・参照・更新処理を実行する。APIは、顧客のCAD図番・文書ファイル番号を、既存システムが管理している目的ファイルの参照情報であるURLに翻訳する手段である。以上のように、原判決は、既存システムが個別に管理されていることにとらわれて、誤った認定をしているものである。
 イ号サーバシステムは、「入力用データファイル」を作成してコピーし、イ号サーバシステム内のBOMMARS DB(イ号データベース)に「DB構築」している。このDB構築(データ入力用データファイル)は本件発明における統合データベース(データ入力準備ファイル)そのものである。
 よって、イ号サーバシステムでは、「その情報の入力・登録も各既存システムが有する入力手段・登録手段によって行われる」との原判決の認定は誤りである。
エ 構成要件Fについて
(ア) 原判決は、「ネットワーク接続したイ号サーバシステムにおいては、上記検索機能及び階層展開機能によりクライアントの表示装置(画面)に表示又は階層的に表示させた部品の部品番号、部品名及び属性情報について、上記画面上の任意の項目を指示し、その上で、その指示項目に対して登録する部品に関する情報を所定の記憶領域に入力する『入力処理手段』(構成要件F)を備えるものではない」と認定した。
 しかし、統合データベースで参照・運用する既存システムの情報は、情報すなわちURLである。この処理手段は、一般常識処理のAPIによるコンピュータネットワーク上の所定のサーバに事前登録した入力対象のCADファイル、文書ファイルのURLをファイルに書き込むごく一般的、常識的な処理である。イ号サーバシステムが当該情報を所定の記憶領域に入力する入力処理手段を有するものではないとする原判決の認定は誤りである。
(イ) 本件発明の「データ入力装置」は、いずれの部位からでも最上位までのリンク設定手段を持つ階層表示・製品部品表画面(中央左の表示装置に示された階層表示“部品表表示画面”)と画面操作プログラムを配信し本件(データ入力装置)業務が稼働する。
 イ号サーバシステムが、WEB画面(html)を既存システムにダウンロードし、要求処理を受け付け相互通信している内容と全く同じ機能である。これは、ネットワークサーバシステムの通常技術である。既存システム(CAD図面・文書)のネットワーク環境にイ号サーバシステムが導入されたとき、イ号サーバシステムが上記の統合データベースの入力処理の動作環境を形作るのである。
 以上のとおり、イ号サーバシステムは当該情報を入力する機能を有するものである。
(ウ) イ号サーバシステムは、統合データベースを備えるサーバシステムであり、ネットワーク端末からの要求により、階層表示部品表画面とその操作プログラムを配信する機能を持っている。この機能は進化しているが、通常処理であり、構成要件Fは、このことを記述したものである。
 このように、既存システムとイ号ソフトとが一体として構成されており、イ号ソフトの中の属性情報テーブル(本件発明の統合データベース)にデータが入力されている以上、既存システムはイ号ソフトに組み込まれ、イ号ソフトの運用、すなわち既存システムの運用となるのである。したがって、イ号サーバシステムは構成要件Fを備えている。
オ 構成要件Jについて
(ア) 原判決の誤りは、本件発明のリンクの意味を根本的に誤解していることに起因する。
 原判決は、構成要件J(情報登録手段)を備えるものではないと認定しているが、これは、リンク設定手段の意味について誤解しているからである。
 イ号サーバシステムにおいて、いずれの部品表構成項目にも“逆”ボタンを備えた階層表示部品表画面(甲8)を備え、この“逆”ボタンを指示すれば、その部位から最上位の製品までの一連コードを取得し、統合データベースにデータ入力をしていることは、原判決も認定するところである。この機能を実現する本件発明の根幹機能が、構成要件G(リンク設定手段)である。
(イ) イ号サーバシステムが構成要件Jを備えている根拠は、以下のとおりである。
 甲3の「部品表情報をキーとして各種情報を組み合わせ」の記載から、BOMMARSが、逆展開無限階層コードをキーとして各種の属性値(これから派生する情報も含む)を収集する機能を備えていると理解できる。「業務ポータルを短期間で構築」との記載は、統合データベースに一歩入れば、各種のデータベースサービスが短期間に提供される環境となっているという意味である。甲3の「イントラネット上のPDM(設計・製造情報管理システム)・ERP(経理・財務・生産管理を含む統合基幹業務パッケージシステム)などの各種システムと連携することで、関連ドキュメント、図面など、バラバラに管理されている情報をブラウザ(インターネットエクスプローラ・サファリなど)の画面から簡単に参照でき、業務における情報検索の負担を大幅に削減」との記載は、「関連ドキュメント、図面など、バラバラに管理されている情報をブラウザの画面から簡単に参照でき、業務における情報検索の負担を大幅に削減」することができる機能を示しており、これは、構成要件Jを備えていることを示すものである。
 甲4に、BOMMARSの2001年7月バージョンは、これ以前の既存ネットワーク上のCAD図、文書情報を繋ぐ・見るだけの機能であったものから、逆展開無限階層コードを運用するバージョンに進化し、イ号サーバシステムの統合データベースが運用されていることが示されている。
 甲3には、BOMMARSによる「散在しているデータベースの統合例」と図面が記載されており、単一の部品表ツリー閲覧画面(逆展開無限階層コードの取得機能を持つ)の関連部位指示操作で、文字情報を持つ文書も、文字情報を持たないCAD図面等も、BOMMARSの単一DB統合で、均質・詳細に検索管理する内容説明である。BOMMARSは、単一統合データベースによる詳細多次元検索運用ができることから、構成要件Fや同Jを含む全ての構成要件を備えていることを示している。
(ウ) 原判決は、リンクの意味についての正しい理解がないため、「部品に関する情報が、これらの既存システムのデータベースに登録されるものではない」と的外れの認定をした。既存システムのデータベースではなく、イ号サーバシステムの属性情報テーブルに、部品に関する情報が登録されるのである。
(2) 間接侵害の事実について
ア 被控訴人は、現実に、被控訴人各ソフトを単体として販売することなく、ハードと一体として販売している(甲3〜7、9〜12、23、25、乙1、2)。
イ 被控訴人各ソフトを購入する顧客が、被控訴人の販売するサーバを別々に購入すること、まして、被控訴人製品と他社製品とを別々に購入することは、実際問題としてあり得ない。
 すなわち、被控訴人はサーバコンピュータ製造企業であり、サーバ(ハード)とアプリケーションソフトウェアは一体で販売するのが業界の慣行となっている。サーバコンピュータのハード及びソフトの保守サポートの面からいっても、別個に購入することには根拠がない。
 被控訴人の従業員である証人A の証言及び陳述書(乙6)は信用できず、また、A 証言によっても、売買契約締結の段階、また、遅くとも売買契約の履行の段階では、被控訴人各ソフトをハードに現実にインストールして検収するのであるから、被控訴人はこれをハードと一体として販売していると認められ、間接侵害が成立する。
ウ それにもかかわらず、原判決は、何らの理由も付けずに一体として販売した事実は認められないと認定し、A 証言をそのまま採用して被控訴人各ソフトを単体で販売していると認定した。そして、控訴人の主張を審理した形跡すらない原判決には審理不尽がある。
エ 仮に、被控訴人製品とサーバが別々に販売されることがあるとしても、イ号ソフトを稼働するときにサーバにインストールされることが確実である以上、間接侵害に当たる。
〔被控訴人の主張〕
(1) イ号サーバシステムは構成要件を備えていないこと
ア 構成要件Fは、ファイルへ書き込む手段一般を規定したものではなく、控訴人の主張は「その指示項目に対して」の限定を無視したものである。また、イ号サーバシステムにデータを入力するための入力用データのファイルの作成は、イ号サーバシステムが提供する機能により行われるものではない。
イ 構成要件Jは、階層関係に従った表示(構成要件D)の後に行われる動作であるから、イ号サーバシステムが、構築済みのデータベースに登録された情報を検索してこれを階層的に表示する(階層展開)機能を有するとしても、そのことにより構成要件Jを充足するということはできない。
ウ 控訴人は、既存システムへの情報の入力が既存システムの有する入力手段等で行われ、イ号サーバシステムとは無関係であることを認めているから、原判決の前提についての認定は正当である。
エ ネットワークに接続されたイ号サーバシステムは、構成要件F及びJ以外の構成要件も充足していないことは明らかであり、本件発明の技術的範囲に属さない。
(2) 間接侵害の事実について
ア 被控訴人は、被控訴人各ソフトとこれをインストールしたサーバを一体として販売していない。
イ 控訴人は、原審における裁判官の釈明に対して、被控訴人製品の全てについて、イ号ソフトを製造、譲渡又は譲渡等の申出をする行為が間接侵害行為に当たるという主張をしないと回答したのであり、この期に及んで、ソフトウェアを単体で販売しても間接侵害が成立するという主張をすること自体、許されない。
3 争点2に係る当審における当事者の主張
〔控訴人の主張〕
(1) 著作権侵害についての認定の誤り
ア 原判決は、控訴人が、本件プログラムの具体的な内容及びその表現上の具体的な創作性を主張立証していないと判断したが、誤りである。
 本件プログラムの内容は、本件発明の構成要件AないしJに対応するAないしJを具体的に主張しているし、本件プログラムの表現上の具体的な創作性については、本件発明の新規性が認められる以上、プログラムの創作性も当然認められてよい。特に、本件プログラムの中心的要素である構成要件G(逆展開無限階層で得る一連コードや多数の属性データをキーにする、各種情報の統合データベースの運用システム)は、画期的なものである。
イ 原判決は、控訴人が作成したとする本件プログラム又はその複製物が存在すること自体の立証をしていないと認定したが、本件プログラムの内容は、本件発明の特許公報(甲2)に明示されている。
(2) 審理不尽
 原審は、控訴人が著作権侵害に係る準備書面を提出した直後の弁論準備期日において、この主張については求釈明したいことがあるが、特許権侵害についての審理の様子をみて、改めて求釈明する旨述べたため、控訴人は、これに従って、以降、何らの主張も立証もしなかった。
 しかるに、原審は、求釈明をすることなく、突然口頭弁論を終結したため、控訴人は、著作権侵害の主張と立証について何らの手当てをすることもできなかった。上記弁論の経過からいって、原判決の判断は到底納得のいくものではない。
 原審は、自己の不手際をさておいて、控訴人のせいにして、控訴人の権利救済の申出を阻もうとするものであり、十分な審理を尽くしていない。
〔被控訴人の主張〕
 控訴人は、本件プログラムの具体的な内容及びその表現上の具体的な創作性を主張立証していない。また、本件発明の特許公報(甲2)には、「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(著作権法2条1項10号の2。いわゆるソースコード又はオブジェクトコードを指す。)は一切記載されていない。
4 争点3に係る当審における当事者の主張
〔控訴人の主張〕
 平成14年6月4日から平成23年9月末日までの被控訴人の売上げは、別紙損害額一覧表のとおりである。
〔被控訴人の主張〕
 争う。
第4 当裁判所の判断
1 争点1(本件特許権の間接侵害の有無)について
(1) 本件発明について(甲2)
ア 特許請求の範囲の記載
 本件発明の特許請求の範囲は、「コンピュータネットワークにおけるコンピュータ装置のデータ入力装置であって、部品表サーバの部品表データベースに登録された部品表を検索キーとして、製品に関する情報をデータベースサーバの統合データベースに登録するものであり、上記統合データベースは、企業、事業部等において、設計、製造、保守サービス等から発生する多種多様のデータを統合したデータベースであり、部品表に示された製品の階層的に区別される各部位を示す項目を表示装置の画面上に前記階層関係に従って表示する画面表示手段と、マウス等のポインティングディバイスからなる入力装置の操作に従い前記画面の任意の項目の表示部を指示する項目指示手段と、その指示項目に対して登録する情報を所定の記憶領域に入力する入力処理手段と、その入力された情報に対して、前記項目指示手段で指示された項目およびこの項目を含む上位の階層関係の項目をリンクさせる情報を付すリンク設定手段と、前記表示装置の画面に表示された項目表示部を前記項目指示手段で指示することにより、その指示項目に対して、入力する情報の種類として障害、競合カタログ、技術ノウハウ、設計基準等の用途別の種類が表示されたメニューを画面に表示するメニュー表示手段と、前記メニューに表示された情報種類を選択することで、その選択された情報種類を、前記入力処理手段から入力された本来の情報に対して関連付ける情報種類設定手段と、上記入力処理手段で入力された指示項目に対して登録する情報と、上記リンク設定手段で付されたリンクさせる情報と、前記情報種類設定手段で関連付けされた情報種類の情報とを上記データベースサーバに送って登録する情報登録手段とを備えたデータ入力装置」である。
イ 本件発明が解決しようとする課題及び目的
 本件発明は、企業、事業部等において、設計、製造、保守サービス等から発生する多種多様のデータを統合したデータベースを構築、運用するに際して、各現場で発生する各種情報を簡易に入力可能としたデータ入力装置に関するものである(【0001】)。
 製品の開発、設計、製造、保守サービス等から日々発生する多種多様の製品関連情報を統合したデータベースを構築・運用するに際し、従来からある一般のデータ入力方法では、情報の発生の都度、製品の機台の品番、各ユニット部品の品番及び部品の品番等の全てのコードをキーボード等から入力する作業が必要であり、そのような作業は、オペレータにとって負担が大きく、登録作業に多くの人件費と時間を費やすばかりか、登録漏れや入力ミスが生じやすく、適切な管理ができず、また、コード入力は初心者に困難であるという課題があった。本件発明は、上記課題を解決するため、製品の開発に伴って作成・蓄積される部品表を「検索キー」あるいは「情報キー」として利用することによって、入力情報の統合化のための関連付け操作を容易にかつ迅速に誤りなく行えるようにして、データ入力の負担を極力抑えて、自然に情報が収集される環境を目指すことのできるデータ入力装置を提供することを目的とするとともに、入力情報の適正化及びその種類分け入力操作の簡易化を図り、各部門の誰でもが共通に分かりやすく入力でき、また、製品の増加に伴って特別の保守を行う必要のないデータ入力装置を提供することを目的としたものである(【0002】〜【0005】)。
ウ 課題を解決するための手段
 本件発明のデータ入力装置は、部品表サーバの部品表データベースに登録された部品表を検索キーとして、製品に関する情報をデータベースサーバの統合データベースに登録する構成を採用し、その具体的構成として、@部品表に示された製品の階層的に区別される各部位を示す項目を表示装置の画面上に階層関係に従って表示する「画面表示手段」と、Aマウス等のポインティングディバイスからなる入力装置の操作に従い上記画面の任意の項目の表示部を指示する「項目指示手段」と、Bその指示項目に対して登録する情報を所定の記憶領域に入力する「入力処理手段」と、Cその入力された情報に対して、上記項目指示手段で指示された項目及びこの項目を含む上位の階層関係の項目をリンクさせる情報を付す「リンク設定手段」と、D上記表示装置の画面に表示された項目表示部を上記項目指示手段で指示することにより、その指示項目に対して、入力する情報の種類として障害、競合カタログ、技術ノウハウ、設計基準等の用途別の種類が表示されたメニューを画面に表示する「メニュー表示手段」と、E上記メニューに表示された情報種類を選択することで、その選択された情報種類を、上記入力処理手段から入力された本来の情報に対して関連付ける「情報種類設定手段」と、F上記入力処理手段で入力された指示項目に対して登録する情報と、上記リンク設定手段で付されたリンクさせる情報と、上記情報種類設定手段で関連付けされた情報種類の情報とを上記データベースサーバに送ってそのサーバ内の統合データベースに登録する「情報登録手段」とを備えるようにしたことによって上記の目的を実現する効果を奏するものである。
 そして、本件発明のデータ入力装置においては、部品表データベースに登録された部品表を検索キーとし、@「画面表示手段」(構成要件D)によって上記部品表に示された製品の各部位を示す項目を階層関係に従って画面に表示すること、A「項目指示手段」(構成要件E)によって上記画面上の任意の項目を指示すること、B「入力処理手段」(構成要件F)によって上記指示のあった指示項目に対して登録する情報を所定の記憶領域に入力すること、C「リンク設定手段」(構成要件G)によって上記入力された情報(登録する情報)に対して上記指示項目及びこれを含む上位の階層関係の項目をリンクさせる情報を付すこと、D「メニュー表示手段」(構成要件H)によって上記指示項目に対して入力する情報の用途別の種類が表示されたメニューを画面に表示すること、E「情報種類設定手段」(構成要件I)によって上記メニューに表示された情報種類を選択することで、その選択された情報種類を、上記入力された情報(登録する情報)(本来の情報)に対して関連付けること、F「情報登録手段」(構成要件J)によって上記入力された情報(登録する情報)と、上記リンクさせる情報と、上記情報種類の情報とをデータベースサーバに送ってそのサーバ内の統合データベースに登録することを「一連の動作」として行うことができるようにしたことで、データ入力の負担を極力抑えて、各現場で発生する各種情報を誰でもが簡易に入力することができるようにするとともに、入力した情報を簡易に検索して利用できるようにしたことに技術的意義があるものと認められる(【請求項1】【0006】〜【0008】)。
エ 発明の実施の形態
(ア) このデータ入力装置を応用するデータベースシステムは、コンピュータネットワークにおいて、部品表サーバに登録された、客先別、機台別の部品表における機台No、構成装置No、ユニット部品No、部品No 等を、製品に関連して発生する全ての情報を統合するための検索キーとして使用するものである。部品表は、クライアント機である端末機における表示装置の画面に表示される。受注仕様を含め、設計、製造、保守サービス等から発生する全ての入力情報は、画面表示された部品表の対象項目(機台、構成装置、ユニット部品、部品)をマウスで指示することにより、その対象項目に関連付けられる。したがって、製品関連の情報の入力に際して、機台No、構成装置No、ユニット部品No、部品No 等のコード入力は、不要となる。入力する情報は、テキスト情報の他、CAD図、画像変換した文書、ディジタルカメラによる写真等、どのような情報でも良い。関連付けられた入力情報は、その関連付け情報であるリンク情報と共に、データベースサーバに登録される。なお、端末機の表示装置に目的の部品表を表示させるには、端末機の操作で部品表サーバから曖昧検索し、該当する部品表を呼び出して表示させる(【0009】)。
(イ) 各端末機は、通信手段、検索手段、画面表示手段、項目指示手段、入力処理手段、リンク設定手段、メニュー表示手段、情報種類設定手段、情報登録手段、項目番号採番手段、統一品番採番依頼手段、客先図面表作成手段及び部品表作成手段を有している(【0014】)。
(ウ) 画面表示手段は、検索手段で検索された部品表を、表示装置の画面に所定の表示形式で表示する手段である。図示の例では、機台、構成装置、ユニット部品、及び部品の各項目を階層関係に従って表示している。
 項目指示手段は、マウス等のポインティングディバイス等からなる入力装置の操作に従い、画面上の部品表における任意の項目の表示部をカーソルで指示する手段である。
 入力処理手段は、製品に関連してデータベースに登録しようとする情報の入力を処理する手段であり、登録する情報の他に、その情報の部品表項目とのリンク情報、及びその情報の種類情報の記憶領域を持つデータ入力準備ファイルを作成して所定の記憶領域に保存する機能を備える。
 リンク設定手段は、項目指示手段で画面上の部品表における任意の項目の表示部を指示することにより、入力処理手段で入力された情報に対して、部品表の指示された項目及びこの項目を含む上位の階層関係の項目をリンクさせる情報を付す手段である。リンク設定手段は、具体的には、入力処理手段で作成されたデータ入力準備ファイルに、指定項目及びその上位階層の各項目のコードを記述する処理を行う。
 メニュー表示手段は、画面表示された部品表の項目表示部を指示することにより、メニューを画面に表示する。
 情報種類設定手段は、メニュー画面に表示された情報種類を選択することで、その選択された情報種類の情報、例えば障害の情報であるか、競合カタログであるか等の情報を、入力処理手段から入力された本来の登録しようとする情報に対して関連付ける手段である。この関連付けは、前記データ入力準備ファイル等において、情報に所定のコードや文字列情報を加えることで行われる。
 情報登録手段は、このように登録すべき情報にリンク情報及び情報種類情報が関連付けられもの(作成された情報入力準備ファイル)を、データベースサーバに送って統合データベースに登録する手段である(【0016】〜【0018】)。
(エ) データ入力装置によるデータ入力方法は、端末機において、製品に関連する情報を入力する場合は、該当する顧客別あるいは機台別の部品表を曖昧検索して表示装置の画面に表示する(図5のステップS1、S2)。この画面表示された部品表の対象項目を、マウスのクリック等により指示することで(S3)、登録しようとする情報が、その指示項目と関連付けられる(S4)。この場合、情報は、指示項目と、この指示項目を含む上位の階層の各項目とも関連付けられる。
 前記関連付けの後、あるいはその前に、画面表示された項目をマウス等による所定の操作で指定すると、障害、競合カタログ、技術ノウハウ、設計基準、その他等の情報種類を示すメニュー画面が表示される(S5)。このメニュー画面で希望の情報種類の表示を選択すると(S6)、登録対象の入力情報に対して、その選択した情報種類の情報が付加される。このように入力情報の部品表項目との関連付け及び情報種類の付加が完了した後、所定の登録確認の入力を行うこと等により、入力情報が、その関連付け情報であるリンク情報及び種類情報と共に、データベースサーバの統合データベースに登録される(S7)(【0021】【0022】)。
オ 作用効果
(ア) このように、画面表示された部品表の該当項目を指定するだけで、入力情報を部品表の項目と関連付けることができるため、機台No、構成装置No、ユニットNo、部品No 等のコード入力が不要となる。そのため、データ入力の作業が非常に簡単となる。しかも、部品表は各部門の誰でもが共通に分かり易く理解できるものであるため、これをデータ入力のガイドすることにより、データ入力が一層容易になる。また、特にデータベースの分類体系を構築したり、保守する必要もない。このように、従来の情報化の隘路であったデータ入力の負担が極力抑えられるため、自然に各部門の情報が収集され、データベースが自己増殖されることになる。そのため、例えば、設計者は、パソコンCADで作画中に同一端末機から種々の曖昧検索で同様部位の類似図面、関連クレーム情報にアクセスするなど、設計の効率化、標準化の他、各部門が目的に応じてデータを共有することが実現できる(【0023】)。
(イ) 本件発明のデータ入力装置は、表示装置の画面上に各項目を階層関係に従って表示し、任意の項目を指示することで、その指示項目から上位階層の項目までを、入力情報に対するリンク情報として設定するものとしたため、簡単な操作でデータ入力が行え、そのためデータベースの充実が期待できる。画面上の項目を指定することで、情報種類のメニュー表示を行うようにした場合は、入力情報の種類分けの適正化及びその種類分け入力操作の簡易化を図ることができる。また、画面表示する各項目の一覧として部品表を用いる場合は、製品の開発に伴って自然に集まり、しかも各部門の誰でもが共通に理解できる分かりやすい部品表が入力のガイドとして利用されることになるため、入力作業が一層簡単となる。そのため、日々発生する情報が、その情報発生現場で、漏れなくきめ細かに、かつ正確に入力されることが期待でき、充実したデータベースの増殖、運用の実現が期待できる。しかも、部品表は製品の開発に伴って必ず作成されるため、製品種類が増加しても、データベースの保守作業として項目等を増やす作業が不要となる(【0027】)。
(2) イ号ソフトをインストールしたサーバの構成
 証拠(甲3、6〜8、乙1、2の1)及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。
ア イ号ソフトについて
 イ号ソフトは、イ号ソフトをインストールしたコンピュータ(サーバ)を、サーバ内データベースの検索装置として機能させるサーバ用ソフトウェアである。イ号ソフトをインストールしたサーバのOSは、「Windows 2000 Server」、「Windows 2003 Server(Standard Edition)」等である。また、このサーバにネットワーク接続したコンピュータ(クライアント)のOSは、「Windows XP」などである。
 イ号ソフトは、@イ号ソフトをインストールしたサーバ内にコピーされた、既存の複数のコンピュータシステム(既存システム)において個別に保持される部品に関する情報を所定のフォーマットに整理・記述することにより作成した入力用データ(CSV形式のテキストファイル)の一部を、システム管理者等の指示により、イ号ソフト専用のファイル形式に一括してデータ変換し、上記データ変換されたファイルと上記コピーされた残りのファイルから構成されるデータベース(イ号データベース)を、イ号ソフトをインストールしたサーバ内に構築し、Aイ号ソフトをインストールしたサーバとネットワーク接続され、Web画面(html)による画面表示が可能な表示装置を有する他のコンピュータ(クライアント)からの要求に基づき、イ号データベースの検索・部品の階層展開・集計をし、その結果をクライアントに対して送信する機能を有する。
 ネットワーク接続したイ号ソフト及びこれにより構築されたイ号データベースをインストールしたサーバ(イ号サーバシステム)の構成及び動作のイメージ図は、原判決別紙説明図のとおりである。
イ イ号データベースの構築
(ア) イ号ソフトの機能を利用するためには、部品に関する情報が複数の既存システムにおいて保持されていることを前提とする。
 既存システムへの情報の入力は、各既存システムが有する入力手段等によって行われ、イ号サーバシステムとは無関係である。
(イ) システム管理者は、各既存システム内に存在する製品に関する情報を、イ号ソフトが利用できるようにするための準備として、@部品番号と部品名の表である「部品情報テーブル」、A階層関係において直接の親子関係にある部品の部品番号及び個数の表である「構成情報テーブル」、B部品番号と任意に選択される部品属性の表である「属性情報テーブル」で構成される所定の形式に整理・記述して、入力用データのテキストファイル(CSV形式)を作成する。ただし、各既存システム内に存在する製品に関する情報で、テキスト情報以外の情報(画像情報等)は、上記@ないしBのテーブルに記述することはできず、システム管理者の作業によって、これらのデータの参照情報(URL)が記述される。
 この入力用データの作成は、イ号ソフトの機能を用いずに、各既存システムのアプリケーションなどを用いて行われる。
(ウ) システム管理者は、入力用データのファイルを、イ号ソフトをインストールしたサーバ内に一旦コピーした後、イ号ソフトがその一部を専用のファイル形式にデータ変換し、イ号ソフトをインストールしたサーバ内にイ号データベースを構築する。
 上記入力用データのファイルのコピーとそのデータ変換は、システム管理者の指示により、一括して行われる。
ウ ネットワーク接続したイ号サーバシステムの動作
 ネットワーク接続したイ号サーバシステムは、クライアントからの要求を受け、以下のサービス・機能を提供する。
(ア) 検索
 検索は、検索条件(文字列)に合致する部品を表示させるサービスであり、以下の手順により提供される。
a クライアントがイ号サーバシステムにアクセスすると、イ号サーバシステムは、クライアントの表示装置に、検索条件の入力を可能とするWeb画面を表示させる。
b クライアントの入力装置により、上記画面に検索条件(文字列)が入力され、検索を指示するボタンが押下されると、その要求をイ号サーバシステムが受ける。
c イ号ソフトがイ号データベースを指定された文字列で検索する。
d 検索結果を階層のない一覧表形式で表示するWeb画面形式(html)やファイル形式のデータを作成しこれをクライアントに対して送信する。
e その結果、クライアントは、Web画面形式(html)でデータが作成された場合には、その表示装置に、検索条件に合致した部品の部品番号、部品名及び属性情報を、検索結果として表示することができ、ファイル形式のデータが作成された場合には、これをダウンロードすることができる。
(イ) 階層展開
 階層展開は、指定された部品に対し構成関係上の上流又は下流にある部品を表示させるサービスであり、以下の手順により提供される。
a クライアントの表示装置に表示されるWeb画面に、部品の階層展開を指示するボタン又は文字列が含まれる場合に、クライアントのマウス等の入力装置により当該ボタン又は文字列の一つが選択されると、その要求をイ号サーバシステムが受ける。
b イ号ソフトが、イ号データベースを検索し、上記階層展開を指示された部品の上流又は下流にある部品の部品番号、部品名や属性情報を抽出し、構成情報テーブルの構成情報に従って階層的に表示するWeb画面形式(html)やファイル形式のデータを作成し、これをクライアントに対して送信する。
c その結果、クライアントは、Web画面形式(html)でデータが作成された場合には、その表示装置に、部品番号、部品名及び属性情報等を、構成展開表として、階層的に表示することができ、ファイル形式のデータが作成された場合には、これをダウンロードすることができる。
(ウ) 集計
 集計は、指定された部品を構成する部品の製造コスト、材料、化学物質の含有量などを集計して表示させるサービスであり、以下の手順により提供される。
a クライアントの表示装置に表示されるWeb画面に、集計を指示するボタン又は文字列が含まれる場合に、クライアントのマウス等の入力装置により当該ボタン又は文字列の一つが選択されると、その要求をイ号サーバシステムが受ける。
b イ号ソフトが、イ号データベースを検索し、上記集計を指示された部品を構成する部品の製造コスト、材料、化学物質の含有量などの属性情報を属性情報テーブルから抽出して集計し、集計結果を表示するWeb画面形式(html)やファイル形式のデータを作成し、これをクライアントに対して送信する。
c その結果、クライアントは、Web画面形式(html)でデータが作成された場合には、その表示装置に、部品番号、部品名、属性情報に含まれる数値の総和等を、集計結果として表示することができ、ファイル形式のデータが作成された場合には、これをダウンロードすることができる。
(エ) 関連情報参照
 イ号サーバシステムの表示書式設定により、検索・階層展開・集計の結果を表示する際に、既存システムに格納されたデータへの参照情報(URL)の表示を設定することで、クライアントの表示装置に表示されるボタン又は文字列に上記参照情報(URL)を設定することができる。
 その結果、クライアントは、そのWeb機能により、設定された情報(URL)を利用して、既存システムに格納されたデータにアクセスして参照することができる。そして、その後は、クライアントのWeb画面の表示制御は、参照先の既存システムとクライアントのWebブラウザだけの関係となる。
エ ネットワーク接続したイ号サーバシステムの機能
 上記事実を総合すれば、ネットワーク接続したイ号サーバシステムは、部品に関する情報がイ号サーバシステムとは別の複数の既存システムに保持されたまま各既存システムで個別管理され、かつ、その情報の入力・登録も各既存システムが有する入力手段・登録手段によって行われることを前提とし、これらの既存システムに保持された部品に関する情報の検索・参照を容易にすることを目的としたサーバシステムであって、これらの既存システムに保持された部品に関する情報が整理・記述された入力用データをコピー及び一部データ変換してイ号サーバシステム内に構築されたイ号データベースについて、クライアントの要求に従って、これを検索し、検索条件(文字列)に合致した部品の部品番号、部品名及び属性情報をクライアントの表示装置に表示させ、更に指示された部品の上流又は下流にある部品の部品番号等を階層的に上記表示装置に表示させ、又は指定された部品を構成する部品の製造コスト、材料、化学物質の含有量などを集計して上記表示装置に表示させる機能を有することが認められる。
(3) 構成要件充足性
ア 本件発明の技術的範囲
(ア) 前記(1)によると、本件発明は、クライアント機である端末機の操作で部品表サーバから曖昧検索し、該当する部品表を呼び出すことにより、上記端末機の表示装置の画面に部品表が階層関係に従って表示され、この部品表の対象項目をマウス等のポインティングディバイスからなる入力装置の操作により指示するものである。
 本件発明の「画面表示手段」(構成要件D)は、部品表に示された製品の階層的に区別される各部位を示す項目を表示装置の画面上に前記階層関係に従って表示するものである。上記部品表は、項目指示がされる前に表示されるものであり、全ての部品を一括して表示するものである。
 また、本件発明の「項目指示手段」(構成要件E)は、マウス等のポインティングディバイスからなる入力装置の操作に従い前記画面の任意の項目の表示部を指示するものである。
(イ) そして、本件発明の「入力処理手段」(構成要件F)は、画面表示手段によって製品の各部位を示す項目が部品表に示された階層関係に従って画面に表示され、項目指示手段によって前記画面の任意の項目の表示部が指示された上で、その指示項目に対して登録する情報を所定の記憶領域に入力処理を行うものである。具体的には、上記入力装置の操作により指示された部品表項目に対して、登録する情報の入力を処理する手段で、登録する情報の他に、指示された部品表項目及びこの項目を含む上位の階層関係の項目をリンクさせる情報、並びに上記情報の種類情報の記憶領域を持つデータ入力準備ファイルを作成して所定の記憶領域に保存する機能を備えるものである。それによって、簡単な操作でデータ入力が行え、そのためデータベースの充実が期待でき、また、画面表示する各項目の一覧として部品表を用いる場合は、製品の開発に伴って自然に集まり、しかも各部門の誰でもが共通に理解できる分かりやすい部品表が入力のガイドとして利用されることになるため、入力作業が一層簡単となるという作用効果を奏するものである。
(ウ) 次に、本件発明の「リンク設定手段」(構成要件G)は、入力処理手段によって入力された情報に対して、項目指示手段で指示された項目及びこの項目を含む上位の階層関係の項目をリンクさせる情報を付すものである。
 また、本件発明の「メニュー表示手段」(構成要件H)は、画面表示手段によって表示装置の画面に表示された項目表示部を項目指示手段で指示することにより、その指示項目に対して、入力する情報の種類として障害、競合カタログ、技術ノウハウ、設計基準等の用途別の種類が表示されたメニューを画面に表示するものである。
 本件発明の「情報種類設定手段」(構成要件I)は、メニュー表示手段によってメニューに表示された情報種類を選択することで、その選択された情報種類を、入力処理手段から入力された本来の情報に対して関連付ける情報種類設定手段である。
(エ) さらに、本件発明の「情報登録手段」(構成要件J)は、入力処理手段で入力された指示項目に対して登録する情報と、リンク設定手段で付されたリンクさせる情報と、情報種類設定手段で関連付けされた情報種類の情報とを上記データベースサーバに送って登録するものである。具体的には、上記「入力処理手段」(構成要件F)で入力された上記登録する情報に、上記リンク情報及び上記種類情報が関連付けられ作成された上記データ入力準備ファイルを、クライアント機である端末機からデータベースサーバに送り、統合データベースに登録するものである。それによって、日々発生する情報が、その情報発生現場で、漏れなくきめ細かに、かつ正確に入力されることが期待でき、充実したデータベースの増殖、運用の実現が期待できるという作用効果を奏するものである。
イ ネットワーク接続したイ号サーバシステム
(ア) 他方、前記(2)のとおり、ネットワーク接続したイ号サーバシステムは、部品に関する情報がイ号サーバシステムとは別の複数の既存システムに保持されたまま各既存システムで個別管理され、かつ、その情報の入力・登録も各既存システムが有する入力手段・登録手段によって行われることを前提とし、これらの既存システムに保持された部品に関する情報の検索・参照を容易にすることを目的としたサーバシステムである。
(イ) そして、前記(2)によれば、システム管理者が入力用データのファイルを作成する段階で、ネットワーク接続したイ号サーバシステムにおいては、各既存システム内に存在する製品に関する情報を、イ号ソフトの機能を用いずに、各既存システムのアプリケーションなどを用いて部品情報テーブル、構成情報テーブル、属性情報テーブルで構成される所定の形式に整理・記述して、入力用データのテキストファイル(CSV形式)を作成し、イ号ソフトをインストールしたサーバ内にコピーした後、イ号ソフトがその一部を専用のファイル形式にデータ変換し、イ号ソフトをインストールしたサーバ内にイ号データベースを構築する方法を採用している。
 そうすると、ネットワーク接続したイ号サーバシステムは、画面表示手段によって製品の各部位を示す項目が部品表に示された階層関係に従って画面に表示され、項目指示手段によって前記画面の任意の項目の表示部が指示されたうえで、その指示項目に対して登録する情報を所定の記憶領域に入力処理を行うものではないから、本件発明の構成要件Fに係る「入力処理手段」を備えていない。
(ウ) また、ネットワーク接続したイ号サーバシステムにおいて、システム管理者が各既存システムのアプリケーションなどを用いて作成する入力用データのファイルのうち、「構成情報テーブル」には部品表に示された製品の階層的に区別される各部位の階層関係の情報が含まれる。
 しかしながら、上記(イ)のとおり、ネットワーク接続したイ号サーバシステムは、本件発明の構成要件Fに係る「入力処理手段」を備えておらず、入力処理手段によって入力された情報に対して、項目指示手段で指示された項目及びこの項目を含む上位の階層関係の項目をリンクさせる情報を付すものではない。
 そうすると、ネットワーク接続したイ号サーバシステムは、本件発明の構成要件Gに係る「リンク設定手段」を備えていない。
(エ) さらに、ネットワーク接続したイ号サーバシステムは、上記(2)のとおりの構成であって、本件全証拠によっても、「入力する情報の種類として障害、競合カタログ、技術ノウハウ、設計基準等の用途別の種類が表示されたメニューを画面に表示する」手段を備えているとは認められない。
 そうすると、ネットワーク接続したイ号サーバシステムは、本件発明の構成要件Hに係る「メニュー表示手段」を備えておらず、また、「メニュー表示手段」による情報種類の選択を前提とした、本件発明の構成要件Iに係る「情報種類設定手段」も備えていない。
(オ) 上記(2)によれば、ネットワーク接続したイ号サーバシステムでは、システム管理者がイ号ソフトの機能を用いずに、各既存システムのアプリケーションなどを用いて作成した入力用データのファイルを、イ号ソフトをインストールしたサーバ内にコピーした後、イ号ソフトがその一部を専用のファイル形式にデータ変換して、イ号ソフトをインストールしたサーバ内にイ号データベースが構築されるが、上記のとおり、ネットワーク接続したイ号サーバシステムは、本件発明の構成要件FないしIに係る「入力処理手段」、「リンク設定手段」、「メニュー表示手段」及び「情報種類設定手段」を備えていない。
 そして、本件発明の構成要件Jに係る「情報登録手段」は、本件発明の「入力処理手段」、「リンク設定手段」及び「情報種類設定手段」による処理を前提としたものであるから、ネットワーク接続したイ号サーバシステムは、本件発明の構成要件Jに係る「情報登録手段」を備えていない。
ウ 控訴人の主張について
(ア) 控訴人は、既存システムは、イ号サーバシステム全体を構成する一部となっているから、他の構成部分(イ号ソフト)と独立には存在することができず、相互に関連性をもって作動すると主張する。
 確かに、前記(2)エのとおり、ネットワーク接続したイ号サーバシステムは、部品に関する情報がイ号サーバシステムとは別の複数の既存システムに保持された部品に関する情報の検索・参照を容易にすることを目的としたサーバシステムであるから、イ号サーバシステム内に構築されたイ号データベースについて、クライアントの要求に従って、これを検索し、検索条件(文字列)に合致した部品の部品番号、部品名及び属性情報をクライアントの表示装置に表示させ、更に指示された部品の上流又は下流にある部品の部品番号等を階層的に上記表示装置に表示させ、又は指定された部品を構成する部品の製造コスト、材料、化学物質の含有量などを集計して上記表示装置に表示させる機能を有するものとなる。
 しかしながら、データベースにおける情報の検索・参照及び情報検索結果の表示と、データベースへのデータ入力及び登録とは、データベースの運用において独立した別個の処理であるから、ネットワーク接続したイ号サーバシステムでの情報検索において、イ号ソフトにより、イ号データベースから部品に関する情報や既存システムに格納されたデータの参照情報(URL)がクライアントに提供され、この参照情報を利用して、既存システムで個別に管理されている部品に関する情報が、クライアントのWeb機能により参照され、さらに、クライアントの表示装置において、イ号ソフトにより、指示された部品の部品番号、部品名及び属性情報の表示と、指示された部品の上流又は下流にある部品の部品番号等を階層的表示がされるとしても、このことから、ネットワーク接続されたイ号サーバシステムにおいて、イ号ソフトにより、クライアントの表示装置に表示された画面から参照情報に関する情報が入力され、部品に関する情報を個別管理する既存システム内のデータベース及びイ号データベースのいずれかに登録されるとはいえない。
 そして、前記(2)エのとおり、ネットワーク接続したイ号サーバシステムは、部品に関する情報がイ号サーバシステムとは別の複数の既存システムに保持されたまま各既存システムで個別管理され、かつ、その情報の入力・登録も各既存システムが有する入力手段・登録手段によって行われることを前提としたものである。
 また、上記イ(イ)及び(オ)のとおり、ネットワーク接続したイ号サーバシステムは、システム管理者が入力用データのファイルを作成する段階で、各既存システム内に存在する製品に関する情報を、イ号ソフトの機能を用いずに、各既存システムのアプリケーションなどを用いて部品情報テーブル、構成情報テーブル、属性情報テーブルで構成される所定の形式に整理・記述して、入力用データのテキストファイル(CSV形式)を作成し、イ号ソフトをインストールしたサーバ内にコピーした後、イ号ソフトがその一部を専用のファイル形式にデータ変換し、イ号ソフトをインストールしたサーバ内にイ号データベースを構築するものである。
 そうすると、各既存システム及びイ号データベースにおける部品に関する情報の入力及び登録は、イ号ソフトの機能を用いずに各既存システムが有する入力手段・登録手段によって行われるから、ネットワーク接続したイ号サーバシステムの部品に関する情報の入力及び登録において、各既存システムが「他の構成部分(イ号ソフト)と独立には存在することができず、相互に関連性をもって作動する」ということはできない。
 したがって、控訴人の上記の主張は採用できない。
(イ) 控訴人は、本件発明の「入力処理手段」(構成要件F)及び「情報登録手段」(構成要件J)は、ごく一般的な処理手段であると主張する。
 しかしながら、上記のとおり、本件発明の「入力処理手段」(構成要件F)は、クライアント機である端末機において、その表示装置の画面に表示される部品表のデータを用いて操作されるものであるから、ごく一般的な処理手段ということはできない。そして、この「入力処理手段」を操作して作成されたデータ入力準備ファイルを、クライアント機である端末機からデータベースサーバに送り、統合データベースに登録する、本件発明の「情報登録手段」(構成要件J)も、ごく一般的な処理手段ということはできない。
(ウ) 控訴人は、本件発明の入力処理手段はごく一般的な処理であるところ、既存システムとイ号ソフトとが一体として構成されており、イ号ソフトの中の属性情報テーブルにデータが入力されている以上、既存システムはイ号ソフトに組み込まれ、イ号ソフトの運用、すなわち既存システムの運用となるから、構成要件Fを充足すると主張する。
 しかしながら、上記(イ)のとおり、本件発明の「入力処理手段」(構成要件F)はごく一般的な処理であるとはいえず、また、上記のとおり、ネットワーク接続したイ号サーバシステムの部品に関する情報の入力及び登録において、既存システムはイ号ソフトと相互に関連性をもって作動するとはいえないから、既存システムとイ号ソフトとが一体として構成され、既存システムはイ号ソフトに組み込まれているとは認められない。
 そして、上記イ(イ)のとおり、ネットワーク接続したイ号サーバシステムでは、システム管理者が入力用データのファイルを作成する段階で、各既存システム内に存在する製品に関する情報を、イ号ソフトの機能を用いずに、各既存システムのアプリケーションなどを用いて部品情報テーブル、構成情報テーブル、属性情報テーブルで構成される所定の形式に整理・記述して、入力用データのテキストファイル(CSV形式)が作成され、本件発明の「入力処理手段」(構成要件F)のように、画面表示手段によって製品の各部位を示す項目が部品表に示された階層関係に従って画面に表示され、項目指示手段によって前記画面の任意の項目の表示部が指示された上で、その指示項目に対して登録する情報を所定の記憶領域に入力する処理は行われない。
 そうすると、ネットワーク接続したイ号サーバシステムにおいて、既存システムがイ号ソフトに組み込まれ、イ号ソフトの運用、すなわち既存システムの運用となることはなく、構成要件Fを充足するとは認められない。
 したがって、控訴人の上記主張は採用できない。
(エ) 控訴人は、甲3及び4等を根拠に、ネットワーク接続したイ号サーバシステムが構成要件Jの「情報登録手段」を備えており、既存システムのデータベースにではなく、イ号サーバシステムの属性情報テーブルに部品に関する情報が登録されると主張する。
 証拠(甲3、6〜8、乙1、2の1)によれば、ネットワーク接続されたイ号サーバシステムは、このシステム内に構築されたイ号データベースについて、クライアントの要求に従って、これを検索し、検索条件(文字列)に合致した部品の部品番号、部品名及び属性情報をクライアントの表示装置に表示させることにより、異なる既存システムで管理されている関連情報を、1つの画面で参照できるようにしたものである。
 そして、甲3における「…業務ポータルを短期間で構築」及び「イントラネット上のPDM、ERPなどの各種システムと連携することで、…業務における情報検索の負担を大幅に軽減」との記載は、ネットワーク接続されたイ号サーバシステムにおける上記の情報検索機能及び表示機能の有用性を表現したものと解される。
 さらに、甲3の「散在しているDBの統合例」を示す図は、イ号データベースを介して既存システムで管理されている情報を検索し、部品表ツリーの形式で参照できるようにしたことを示すだけであり、また、甲4は、ネットワーク接続したイ号サーバシステムについて「構成木検索を基本に、部品属性データを取り込む方法などについて紹介する。」としたセミナー内容を示すだけであるから、これらの記載をもって、ネットワーク接続したイ号サーバシステムの既存システム及びイ号データベースに対して、情報を登録することを示しているということはできない。
 そうすると、控訴人が主張する甲3及び4等の記載や図を根拠に、ネットワーク接続されたイ号サーバシステムが、本件発明の「情報登録手段」(構成要件J)を備えているとはいえない。
エ まとめ
 以上のとおり、ネットワーク接続したイ号サーバシステムは、本件発明の構成要件FないしJをいずれも充足しないから、その余の点について判断するまでもなく、本件発明の技術的範囲に属さない。
 また、ロ号ソフトないしニ号ソフトに関しても、控訴人がイ号ソフトの構成を基本構成に有することを前提としている以上、これらのソフトをインストールしたサーバシステムも、同様に、本件発明の技術的範囲に属さない。
(4) 間接侵害の成否
 上記のとおり、ネットワーク接続したイ号サーバシステムは、本件発明の技術的範囲に属さないから、被控訴人各ソフトをインストールしたサーバは、「その物の生産に用いる物」ということはできない。そして、被控訴人各ソフトの単体も、「その物の生産に用いる物」ということはできないことは、明らかである。よって、特許法101条2号所定の間接侵害は成立しない。
(5) 小括
 以上の次第で、控訴人の特許権侵害に基づく請求は、いずれも理由がない。
2 争点2(プログラムの著作物の著作権(複製権)侵害の有無)について
(1) 本件プログラムについて
ア 控訴人は、控訴人が作成したとする本件プログラム又はその複製物が存在すること、本件プログラムの具体的な表現及びその表現上の具体的な創作性について、何らの立証をしていない。
イ 控訴人は、本件プログラムの内容は、本件発明の特許公報(甲2)に明示されていると主張する。
 しかしながら、著作権法にいう「プログラム」とは、電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものであり(同法2条1項10号の2)、同じく「著作物」とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう(同項1号)。したがって、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう発明(特許法2条1項)について、発明を特定するために必要と認める事項の全てが記載された特許請求の範囲や、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載した発明の詳細な説明(同法36条4項、5項)に記載されたものがあるからといって、直ちに、思想又は感情を創作的に表現したプログラムの著作物が存在することにはならない。
ウ また、控訴人は、本件発明の新規性が認められる以上、本件プログラムの創作性も当然認められると主張する。
 しかしながら、原判決別紙プログラム目録記載の内容は、プログラムの具体的な「表現」を表すものではなく、また、特許法と著作権法の目的や保護対象が異なることに照らして、控訴人の上記主張を採用することはできない。仮に、控訴人の主張する構成要件G(逆展開無限階層で得る一連コードや多数の属性データをキーにする、各種情報の統合データベースの運用システム)が画期的なものであるとしても、直ちにプログラムの著作物の「表現上の創作性」が肯定されるわけではない。
(2) 原審の審理経過について
 控訴人は、原審の審理経過について、るる主張するが、仮に控訴人主張のような経過があったとしても、控訴人としては、原判決の判断内容に照らして、必要であれば、更なる主張立証を行うべきであったし、これを行うことが可能であった。しかるに、控訴人の当審における主張立証によっては、本件プログラムの存在や創作性を認めるに足りず、以上の認定判断が妨げられるものではない。
(3) 小括
 以上のとおり、控訴人の著作権侵害に基づく請求についても、理由がない。
3 結論
 以上の次第であるから、控訴人の本訴請求にいずれも理由がないとした原判決は相当であって、本件控訴は棄却されるべきものである。

知的財産高等裁判所第4部
 裁判長裁判官 滝澤孝臣
 裁判官 部眞規子
 裁判官 齋藤巌
line
 
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