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3月1日 物理学入門書の氏名表示権侵害事件 |
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東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
以前に出版された2名の学者の執筆による物理学の参考書『基幹物理学―こつこつと学ぶ人のためのテキスト―』の内容を、のちに2分冊化して刊行した際の分冊Tに、発行元の出版社が新たに内容を追加執筆した者の名のみを著作者名として表示したことに関して、元の執筆者たちが、発行元の出版社および追加執筆者に対して、本件各書籍の出版の差止めと印刷用原版の廃棄、謝罪広告の掲載、慰謝料の支払いなどを求めた事件。元の執筆者の一人・京大工学部名誉教授は故人であり、その遺族が原告となっている。
裁判所は、分冊Tの著作者名表示は不適法で著作者の氏名表示権を侵害すると認め、出版社に本件各書籍の出版差し止めと出版用原版の廃棄および合計70万円の賠償金支払いを命じたが、謝罪広告の掲載は必要性を認めなかった。 |
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3月6日 商標“長浜家”侵害事件 |
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福岡地裁/判決・請求棄却(控訴)
福岡市中央区長浜地区のラーメン店「元祖ラーメン長浜家」が、近隣の同名の店に対して、商標権を侵害された等として店名の使用差し止めと約1300万円の賠償を求めた事件。
裁判所は原告が被告との間で「元祖長浜家」という店名の使用を認める内容の覚書を交わしていたことを指摘、更に覚書があるにもかかわらず店名を商標登録したことは信義に反すると指摘して、原告の請求を棄却した。 |
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3月7日 商標“MONCHOUCHOU”侵害事件(2) |
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大阪高裁/判決・変更
神戸市の洋菓子メーカー「ゴンチャロフ製菓」が、自社のチョコレート菓子「モンシュシュ」と同じ名称を使われて商標権を侵害されたとして、大阪市の洋菓子製造販売会社「モンシュシュ」に対して、「モンシュシュ」等と印した標章の使用差し止めと、約2億4300万円の損害賠償を求めた事件。一審大阪地裁はゴンチャロフ社の訴えを認めて、モンシュシュ社に対して標章の使用の差し止めと、約3560万円の支払いを命じたが、モンシュシュ社が控訴していた。
大阪高裁は一審同様侵害を認めたが、モンシュシュ社がその後、店名や包装紙を変更したことから標章の使用差し止め請求は棄却し、一方、損害賠償額については、店名変更までの期間を加えて算定期間を変更、一審より増額の約5140万円とした。 |
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3月14日 “日航機墜落事故”ノンフィクションの表現類似事件 |
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東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
1985年の日航機墜落事故で夫を亡くし、手記『雪解けの尾根』を刊行した遺族が、同事故を題材にしたノンフィクション作家・門田隆将氏の著書『風にそよぐ墓標』に表現を盗用されたとして、氏と版元の集英社に対し、出版差し止めと賠償金518万円の支払いを求めた事件。
裁判所は原告が指摘した被告書籍第3章の26か所の記述について、著作物性、表現上の本質的特徴の同一性・感得性などを検討し、うち17か所に著作権侵害を認め、出版差止めと書籍の廃棄、58万円余の損害賠償金支払いを命じた。 |
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3月21日 宗教団体会員宛メールのHP無断公開事件 |
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東京地裁/判決・請求認容
インターネット上のサイトに掲載された記事により著作権や著作者人格権が侵害されたとする宗教団体会員が、その記事を掲載した者に対する損害賠償請求権の行使のために、被告通信事業者に対し、プロバイダ責任制限法に基づき、発信者情報の開示を求めた事件。原告作成の電子メールが第三者のサイトに掲載されたため、原告はサイトを提供する訴外会社に発信者情報の開示を求める仮処分命令を裁判所に申し立てて認められた。訴外会社により開示されたIPアドレスは被告通信事業者が管理するものであった。
裁判所は本件メールの著作物性を検討してこれを肯定し、原告の複製権および送信可能化権が侵害されたことを認めて、被告に対して本件IPアドレスを使用して接続していた者の氏名・住所を開示するよう命じた。 |
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3月22日 辻元清美議員への名誉毀損事件 |
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東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
東日本大震災の直後に災害ボランティア担当の首相補佐官だった辻元清美衆議院議員が、産経新聞の記事で名誉を傷つけられたとして、同社と記事を執筆した記者に3300万円の損害賠償金を求めた事件。問題の記事は2011年3月16日と21日掲載のコラムで、辻元議員は阪神大震災の際に被災地で反政府のビラをまいた等と指摘したもの。
裁判所は、被告は原告らに一切取材をせずに、真実と認められない内容の記事を掲載したとして名誉毀損を認め、被告側に80万円の賠償金支払いを命じた。 |
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3月25日 自衛隊ムック本の編集委託事件(2) |
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知財高裁/判決・控訴棄却
編集プロダクション(一審原告)が、編集委託契約を結んで制作したムック本『自衛隊百識図』が発売されたにもかかわらず、委託元の出版社(一審被告)が委託手数料を支払わない旨主張して、手数料残金178万円余を請求した(本訴)のに対し、被告が原告に対し、著作権侵害の疑念がある本件ムック本を編集制作した旨を主張して委託契約の債務不履行による損害賠償金570万円余の支払いを求めた(反訴)事件の控訴審。一審東京地裁は、原告の請求には理由があると認めたが、ムック本は合理的に見て著作権侵害の疑いのある書籍であったから、原告は委託契約の債務の本旨に従った履行をしていないというべきであると判断、被告の損害額を222万円余と算出した。その上で原告の請求を棄却、原告に相殺額44万円余の支払いを命じたが原告が控訴した。
知財高裁は控訴人の委託手数料請求の可否についても、被控訴人の損害の有無及び損害額についても、原審の判断を維持し、控訴を棄却した。 |
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3月25日 インタビュー談話の転載事件 |
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東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
ドキュメンタリー映画製作者である原告男性が、被告もその著者の一人である書籍「いのちを語る」の被告執筆部分が、「A Man of Light(光の人)」と題する映画作品のある部分に係る原告の著作権を侵害しているとして、被告に対して出版の差し止めと賠償金110万円の支払い等を求めた事件。
裁判所は原告がこの映画の著作者であり著作権者であることを認定した上で、この映画の当該部分においては、インタビューされている人物の発言を和訳して字幕で示した訳文にのみ原告の創作的表現が認められるが、それと被告の記述部分とを対比すると、両者は本質的特徴を異にするものと判断され、被告記述部分の作成は原告の著作権を侵害するものではないとして、請求を棄却した。 |
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3月27日 NHKニュース番組の写真無断使用事件(3) |
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最高裁(二小)/決定・上告棄却(確定)
2008年にNHKが企業の風力発電事業に関するニュースを放映した際に、自分の撮影した風車の写真を無断で使用されたとして、写真家がNHKと取材担当記者などに損害賠償を求めた事件の上告審。一審札幌地裁はNHKなどの著作権・著作者人格権侵害を認めて40万円の支払いを命じ、二審札幌高裁は侵害による損害額を増額してNHKと記者に104万円の支払いを命じたが、双方が上告していた。
最高裁第二小法廷は双方の上告を棄却する決定をし、二審の判決が確定した。 |
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3月28日 「チャングムの誓い」小道具事件 |
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東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
韓国の放送局に小道具等を供給している会社から小道具等の著作権の譲渡を受けたと主張する韓国企業(原告)が、NHKら(被告)が韓国テレビドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」の展覧会を開催して小道具や衣装等を展示し、関連グッズを販売したのは、原告の著作権を侵害したものであるとして、被告らに対して1億円の損害賠償金を求めた事件。
裁判所は、小道具等に著作物性があったとして、著作権の移転では第三者との関係で登録による対抗要件具備が必要であるところ、原告は登録を経ていないことから、登録を経ることなく対抗できる「背信的悪意者」に被告らが当たるかどうかを検討した。そして被告らは「背信的悪意者」に当たらないから、登録のない原告の請求は容れられないとして、請求を棄却した。 |
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4月15日 Google“サジェスト機能”名誉毀損事件 |
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東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴・控訴棄却)
インターネット検索最大手Googleの、単語を検索欄に入力すると自動的に関連の言葉が表示される「サジェスト機能」で名誉を傷つけられたとする男性が、Googleに対して表示の差し止めと1300万円の損害賠償を求めた事件。男性が自分の名前を入力すると犯罪を連想させる言葉が表示されたという。男性は表示差し止めを求める仮処分を申し立て、東京地裁が2012年3月の決定で差し止めを命じたが、同社が応じなかったため提訴した。判決は、同社には仮処分決定を受けた時点で表示停止の義務があったと指摘し、表示によって男性の名誉毀損やプライバシー侵害に当たる違法な投稿記事を容易に閲覧しやすい状況を作り出しているとして、表示の停止と慰謝料30万円の支払いをGoogleに命じた。 |
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4月16日 DeNA vs グリー 類似「ソーシャルゲーム」事件(3) |
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最高裁(三小)/決定・上告棄却(確定)
インターネットを使ったゲームソフト開発会社グリーが、同業競合相手のDeNA社とゲーム開発会社に携帯電話用のオンライン釣りゲームを模倣され、著作権を侵害されたとして、ゲーム配信の差し止めと約9億4000万円の賠償金支払い等を求めた事件の上告審。一審東京地裁はグリー社の主張を認め、DeNA社の画面はグリー社の画面に依拠して作成されたと言えると判断し、被告側に配信の差し止めと合計約2億3500万円の賠償金支払いを命じたが、被告側、続いて原告側も控訴、二審知財高裁は一審の判断を覆し、両者が似ているとしてもアイデアの範疇に属するものである等と指摘し、著作権侵害には当たらないと結論づけて、一審被告DeNA社らの敗訴部分を取消し、一審原告グリー社の控訴を棄却した。
最高裁第三小法廷はグリー社側の上告を棄却する決定をし、グリー社敗訴とした二審の判決が確定した。 |
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4月18日 星座板の著作物性事件 |
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大阪地裁/判決・請求棄却
星座板と時刻等を記載した別の板とを組み合わせて使う「星・月の動きA型」という商品を販売する理科教材製造販売会社(原告)が、教育用教材販売会社(被告)が販売する商品「星や月の早見板」は、原告商品に対する原告の複製権、譲渡権、氏名表示権および同一性保持権を侵害しているとして、著作権および著作者人格権に基づき、被告に対して被告商品販売頒布の差し止め・廃棄と、損害賠償金330万円の支払いを求めた事件。
裁判所はまず星座板の著作物性を検討し、表現の幅は限られたものとならざるを得ないとした上で、両製品を比較し、星座板を構成するいずれの要素も選択の幅が狭くありふれた又は平凡な表現であって、創作性がないと判断した。次に被告商品は創作性のない部分において原告商品と同一性を有するだけだからと、著作者人格権侵害も否定し、原告の請求を棄却した。 |
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4月18日 “薬剤便覧”の編集著作物性事件(2) |
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知財高裁/判決・変更
書籍『今日の治療薬解説と便覧2007』を発行した原告出版社が、『治療薬ハンドブック2008薬剤選択と処方のポイント』を発行した被告出版社に対し、被告書籍の薬剤便覧部分は、編集著作物である原告書籍の薬剤便覧部分を複製または翻案したものであり、著作権侵害に当たるとして、損害賠償金5500万円余を求めた事件の控訴審。一審東京地裁は原告の請求を棄却したが、原告が控訴した。
知財高裁は、原告書籍漢方薬便覧部分の薬剤の選択及び配列の部分についてだけ著作権侵害を認め、原判決のその部分を変更して、被告に101万円余の損害賠償を命じた。 |
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4月26日 女性タレントの写真無断掲載事件 |
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東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
深田恭子さんや前田敦子さんら女優、タレント21人が、雑誌「ENJOY MAX」などに無断で写真を掲載されパブリシティ権を侵害されたとして、また21人中の3人は小学校から高校時代の、芸能活動と関係のない写真をも掲載されプライバシー権を侵害されたとして、発行元の笠倉出版社らに対して雑誌の販売停止、廃棄、損害賠償金合計約2300万円の支払いを求めた事件。
裁判所は21人に対するパブリシティ権、うち3人に対するプライバシー権の侵害を認め、出版社側に合計約700万円の支払いを命じたが、その余の請求は棄却した。 |
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4月26日 ジャニーズタレントの写真無断掲載事件 |
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東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
ジャニーズ事務所所属のアイドルグループの写真を雑誌に無断で掲載されたとして、グループメンバーが版元のアールズ出版をパブリシティ権侵害で訴え、書籍の販売停止、廃棄と、賠償金合計約1億7000万円の支払いを求めた事件。
裁判所はパブリシティ権の侵害を認め、出版社に書籍の販売停止、廃棄と、合計約5400万円の支払いを命じた。 |
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