裁判の記録 line
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2013年
(平成25年)
[1月〜6月]
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1月21日 名簿管理ソフトの著作権侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 
判例全文
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1月29日 商標“Wii”“Nintendo”侵害事件(刑)(2)
   名古屋高裁/判決・控訴棄却
 任天堂が商標登録を受けている「Wii」および「Nintendo」の各商標を付した家庭用ゲーム機Wiiについて、Wii専用アプリケーション以外の各種アプリケーションのインストールおよび実行も可能になるように内蔵プログラム等を改変したものを、上記商標を付したまま販売および販売のために所持していた被告が、商標権侵害に問われた事件の控訴審。
 被告=控訴人は、ハードウエアには一切手を加えていないこと、改変前の状態への復元は出来るから同一性を損なうような改変をしたという認識はなかったことなどから、無罪を主張したが、名古屋高裁は、被告の商標権侵害を認めて有罪とした一審名古屋地裁の判断を支持して、控訴を棄却した。
判例全文
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1月31日 コンビニコミックの増刷事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 主にコンビニエンスストアで通常2週間程度店頭に並んで販売される廉価版漫画本(コミック)に関して、6冊及び再編集1冊に作品を制作提供し掲載された漫画家(原告)が、コミックを発行した出版社(被告)に対して、増刷して発行した行為は著作権(複製権)の侵害であるとして、500万円余の損害賠償を求めた事件。コンビニコミックにおいて、漫画家に、作画原稿料以外に、いわば増刷された際の印税を認めるかどうかが争われた。
 裁判所はコンビニコミックを、雑誌扱いの不定期の刊行物とするのが通常である等として、原告の主張を認めず、請求を棄却した。
判例全文
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1月31日 著作権移転登録に伴う国家賠償事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 「受話器の象徴」と題する6点の図柄につき、著作権法77条1項の著作権の移転登録申請を行った原告が、このことについて文化庁長官の行為に違法があり損害を被ったとして、国に対し損害賠償金1626万円を請求した事件。原告は、原告が本件登録の申請を行った際に、文化庁長官官房著作権課の担当職員が原告に対して「『著作物であるから登録出来る』とか『登録されたものは著作物である』などと言わず、本件登録をしたからといって著作権の権利者という地位は保証されない旨の説明をしなかったが、これは文化庁長官が本件担当職員をして、原告に対し、本件図柄が著作権法上の著作物でないにもかかわらず、あたかも著作権があるかのように装い、原告にその旨誤信させたものである。」「文化庁長官や文化庁職員は、『著作物でないもの』や『著作物かどうか不明なもの』を著作権登録しているという事実を認識しているから、文化庁長官は本件職員をして原告に対し、そのような説明をさせるべきだったのにこれをしなかったのであって、長官には職務上通常尽くすべき注意義務を怠った違法がある。」と主張した。
 裁判所は、文化庁長官がかかる義務を負うことを定めた法令はないし、仮に文化庁長官が「著作物でないもの」や「著作物かどうか不明なもの」を著作権登録しているという事実を認識しているとしても、これにより文化庁長官が上記のような義務を負うことになるわけでないなどとして、原告の主張を認めず、請求を棄却した。
判例全文
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2月7日 郵便不正記事の名誉毀損事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却(上告)
 郵便制度悪用事件の報道で名誉を傷つけられたとして、牧義夫前衆議院議員が朝日新聞社に1650万円の損害賠償等を求めた事件の控訴審。記事は2009年4月の、郵便局で発送を断られた自称障害者団体のダイレクトメールが、牧前議員の秘書が日本郵便を訪問した後、発送が認められたなどと報じたもの。
 裁判所は名誉毀損を認めて同社に110万円の支払いを命じた第一審判決を支持して、双方の控訴を棄却した。

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2月7日 古賀市長の宗教団体元幹部報道事件
   福岡地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴・取消、上告)
 「週刊朝日」の記事で名誉を傷つけられたとして、福岡県古賀市の市長が発行元の朝日新聞出版等に1000万円の損害賠償と謝罪広告を請求した事件。問題となったのは2011年1月28日号に掲載された、市長がかつて宗教団体の幹部で、悪質な勧誘を行ったなどと報じたもの。
 裁判所は悪質な勧誘等については真実と信じる相当の理由があるとは認められないとして退けたが、脱会した元信者への嫌がらせ等一部の記事に名誉毀損を認め、被告側に200万円の支払いを命じた。謝罪広告の掲載は認めなかった。

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2月13日 商標“白い恋人”侵害事件
   札幌地裁/和解
 北海道を代表する土産菓子「白い恋人」を製造販売する製菓会社が、「面白い恋人」と題した菓子を製造販売した大阪の吉本興業等に対して、商標権侵害等による販売の差し止めを求める訴えを起こしていたが、和解が成立した。「面白い恋人」は商品名はそのままでデザインを変更し、関西6府県に地域を限定して販売されることになった。賠償金は支払われない。

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2月13日 テレビ番組送信サービス事件(まねきTV)(3)
   最高裁(二小)/決定・上告棄却(確定)
 日本のテレビ番組をインターネットを通じて海外に転送するサービスをめぐる事件(まねきTV事件)の差し戻し上告審。
 最高裁第二小法廷は、サービスをしている運営会社の上告を棄却する決定をし、サービス停止と損害賠償の支払いを命じた差し戻し後の知財高裁判決が確定した。差し戻し前の高裁判決は著作権侵害を認めなかったが、2011年の最高裁判決はこのサービス機器は自動公衆送信装置に当たり、送信の主体も運営会社であるとして同高裁に差し戻していた。

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2月13日 テレビ番組送信サービス事件(ロクラクU)(3)
   最高裁(二小)/決定・上告棄却(確定)
 日本のテレビ番組をインターネットを通じて海外に転送するサービスをめぐる事件(ロクラクU事件)の差し戻し上告審。
 最高裁第二小法廷は、サービスをしている運営会社の上告を棄却する決定をし、サービス停止と損害賠償の支払いを命じた差し戻し後の知財高裁判決が確定した。差し戻し前の高裁判決は著作権侵害を認めなかったが、2011年の最高裁判決はこのサービス機器は自動公衆送信装置に当たり、送信の主体も運営会社であるとして同高裁に差し戻していた。

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2月22日 “ねぶた”著作権侵害事件
   青森地裁/判決・請求認容
 ねぶた師とその運行団体(原告)が、原告が制作したねぶたの写真に、衣料販売店の代表者(被告)が自らの店名やHPアドレスを書き込むなどの手を加えて、広告として雑誌に掲載したのは著作権侵害であるとして、被告に対して700万円の損害賠償を求めた事件。
 裁判所は、ねぶたが思想または感情を創作的に表現した美術の著作物に当たると判断、被告の行為を著作権や著作者人格権の侵害に当たるとして、原告の主張を全面的に認め、全額を支払うよう命じた。

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2月26日 「僕はやってない!」の名誉棄損事件(3)
   最高裁(三小)/決定・上告棄却(確定)
 訴外Aを被告人とする医療施設における殺人・殺人未遂事件に関して、同事件の弁護団団長を務める弁護士である被告が、Aとの共著『僕はやってない!』を出版したところ、同著中に、東北大学大学院教授であった原告およびその妻が虚構の事実を作り上げてその殺人・殺人未遂事件を作り上げたとの印象を与える記述があり、原告の名誉が毀損されたとして、原告が被告に対して1000万円の損害賠償金の支払いと、全国紙・地方紙6紙への謝罪広告を求めた事件。
 一審は被告による名誉毀損を認めて100万円の支払いを命じ、二審もその判断を支持したが、被告が上告していた。

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3月1日 物理学入門書の氏名表示権侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 以前に出版された2名の学者の執筆による物理学の参考書『基幹物理学―こつこつと学ぶ人のためのテキスト―』の内容を、のちに2分冊化して刊行した際の分冊Tに、発行元の出版社が新たに内容を追加執筆した者の名のみを著作者名として表示したことに関して、元の執筆者たちが、発行元の出版社および追加執筆者に対して、本件各書籍の出版の差止めと印刷用原版の廃棄、謝罪広告の掲載、慰謝料の支払いなどを求めた事件。元の執筆者の一人・京大工学部名誉教授は故人であり、その遺族が原告となっている。
 裁判所は、分冊Tの著作者名表示は不適法で著作者の氏名表示権を侵害すると認め、出版社に本件各書籍の出版差し止めと出版用原版の廃棄および合計70万円の賠償金支払いを命じたが、謝罪広告の掲載は必要性を認めなかった。
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3月6日 商標“長浜家”侵害事件
   福岡地裁/判決・請求棄却(控訴)
 福岡市中央区長浜地区のラーメン店「元祖ラーメン長浜家」が、近隣の同名の店に対して、商標権を侵害された等として店名の使用差し止めと約1300万円の賠償を求めた事件。
 裁判所は原告が被告との間で「元祖長浜家」という店名の使用を認める内容の覚書を交わしていたことを指摘、更に覚書があるにもかかわらず店名を商標登録したことは信義に反すると指摘して、原告の請求を棄却した。
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3月7日 商標“MONCHOUCHOU”侵害事件(2)
   大阪高裁/判決・変更
 神戸市の洋菓子メーカー「ゴンチャロフ製菓」が、自社のチョコレート菓子「モンシュシュ」と同じ名称を使われて商標権を侵害されたとして、大阪市の洋菓子製造販売会社「モンシュシュ」に対して、「モンシュシュ」等と印した標章の使用差し止めと、約2億4300万円の損害賠償を求めた事件。一審大阪地裁はゴンチャロフ社の訴えを認めて、モンシュシュ社に対して標章の使用の差し止めと、約3560万円の支払いを命じたが、モンシュシュ社が控訴していた。
 大阪高裁は一審同様侵害を認めたが、モンシュシュ社がその後、店名や包装紙を変更したことから標章の使用差し止め請求は棄却し、一方、損害賠償額については、店名変更までの期間を加えて算定期間を変更、一審より増額の約5140万円とした。
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3月14日 “日航機墜落事故”ノンフィクションの表現類似事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 1985年の日航機墜落事故で夫を亡くし、手記『雪解けの尾根』を刊行した遺族が、同事故を題材にしたノンフィクション作家・門田隆将氏の著書『風にそよぐ墓標』に表現を盗用されたとして、氏と版元の集英社に対し、出版差し止めと賠償金518万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は原告が指摘した被告書籍第3章の26か所の記述について、著作物性、表現上の本質的特徴の同一性・感得性などを検討し、うち17か所に著作権侵害を認め、出版差止めと書籍の廃棄、58万円余の損害賠償金支払いを命じた。
判例全文
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3月21日 宗教団体会員宛メールのHP無断公開事件
   東京地裁/判決・請求認容
 インターネット上のサイトに掲載された記事により著作権や著作者人格権が侵害されたとする宗教団体会員が、その記事を掲載した者に対する損害賠償請求権の行使のために、被告通信事業者に対し、プロバイダ責任制限法に基づき、発信者情報の開示を求めた事件。原告作成の電子メールが第三者のサイトに掲載されたため、原告はサイトを提供する訴外会社に発信者情報の開示を求める仮処分命令を裁判所に申し立てて認められた。訴外会社により開示されたIPアドレスは被告通信事業者が管理するものであった。
 裁判所は本件メールの著作物性を検討してこれを肯定し、原告の複製権および送信可能化権が侵害されたことを認めて、被告に対して本件IPアドレスを使用して接続していた者の氏名・住所を開示するよう命じた。
判例全文
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3月22日 辻元清美議員への名誉毀損事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 東日本大震災の直後に災害ボランティア担当の首相補佐官だった辻元清美衆議院議員が、産経新聞の記事で名誉を傷つけられたとして、同社と記事を執筆した記者に3300万円の損害賠償金を求めた事件。問題の記事は2011年3月16日と21日掲載のコラムで、辻元議員は阪神大震災の際に被災地で反政府のビラをまいた等と指摘したもの。
 裁判所は、被告は原告らに一切取材をせずに、真実と認められない内容の記事を掲載したとして名誉毀損を認め、被告側に80万円の賠償金支払いを命じた。

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3月25日 自衛隊ムック本の編集委託事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 編集プロダクション(一審原告)が、編集委託契約を結んで制作したムック本『自衛隊百識図』が発売されたにもかかわらず、委託元の出版社(一審被告)が委託手数料を支払わない旨主張して、手数料残金178万円余を請求した(本訴)のに対し、被告が原告に対し、著作権侵害の疑念がある本件ムック本を編集制作した旨を主張して委託契約の債務不履行による損害賠償金570万円余の支払いを求めた(反訴)事件の控訴審。一審東京地裁は、原告の請求には理由があると認めたが、ムック本は合理的に見て著作権侵害の疑いのある書籍であったから、原告は委託契約の債務の本旨に従った履行をしていないというべきであると判断、被告の損害額を222万円余と算出した。その上で原告の請求を棄却、原告に相殺額44万円余の支払いを命じたが原告が控訴した。
 知財高裁は控訴人の委託手数料請求の可否についても、被控訴人の損害の有無及び損害額についても、原審の判断を維持し、控訴を棄却した。
判例全文
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3月25日 インタビュー談話の転載事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 ドキュメンタリー映画製作者である原告男性が、被告もその著者の一人である書籍「いのちを語る」の被告執筆部分が、「A Man of Light(光の人)」と題する映画作品のある部分に係る原告の著作権を侵害しているとして、被告に対して出版の差し止めと賠償金110万円の支払い等を求めた事件。
 裁判所は原告がこの映画の著作者であり著作権者であることを認定した上で、この映画の当該部分においては、インタビューされている人物の発言を和訳して字幕で示した訳文にのみ原告の創作的表現が認められるが、それと被告の記述部分とを対比すると、両者は本質的特徴を異にするものと判断され、被告記述部分の作成は原告の著作権を侵害するものではないとして、請求を棄却した。
判例全文
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3月27日 NHKニュース番組の写真無断使用事件(3)
   最高裁(二小)/決定・上告棄却(確定)
 2008年にNHKが企業の風力発電事業に関するニュースを放映した際に、自分の撮影した風車の写真を無断で使用されたとして、写真家がNHKと取材担当記者などに損害賠償を求めた事件の上告審。一審札幌地裁はNHKなどの著作権・著作者人格権侵害を認めて40万円の支払いを命じ、二審札幌高裁は侵害による損害額を増額してNHKと記者に104万円の支払いを命じたが、双方が上告していた。
 最高裁第二小法廷は双方の上告を棄却する決定をし、二審の判決が確定した。

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3月28日 「チャングムの誓い」小道具事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 韓国の放送局に小道具等を供給している会社から小道具等の著作権の譲渡を受けたと主張する韓国企業(原告)が、NHKら(被告)が韓国テレビドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」の展覧会を開催して小道具や衣装等を展示し、関連グッズを販売したのは、原告の著作権を侵害したものであるとして、被告らに対して1億円の損害賠償金を求めた事件。
 裁判所は、小道具等に著作物性があったとして、著作権の移転では第三者との関係で登録による対抗要件具備が必要であるところ、原告は登録を経ていないことから、登録を経ることなく対抗できる「背信的悪意者」に被告らが当たるかどうかを検討した。そして被告らは「背信的悪意者」に当たらないから、登録のない原告の請求は容れられないとして、請求を棄却した。
判例全文
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4月15日 Google“サジェスト機能”名誉毀損事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴・控訴棄却)
 インターネット検索最大手Googleの、単語を検索欄に入力すると自動的に関連の言葉が表示される「サジェスト機能」で名誉を傷つけられたとする男性が、Googleに対して表示の差し止めと1300万円の損害賠償を求めた事件。男性が自分の名前を入力すると犯罪を連想させる言葉が表示されたという。男性は表示差し止めを求める仮処分を申し立て、東京地裁が2012年3月の決定で差し止めを命じたが、同社が応じなかったため提訴した。判決は、同社には仮処分決定を受けた時点で表示停止の義務があったと指摘し、表示によって男性の名誉毀損やプライバシー侵害に当たる違法な投稿記事を容易に閲覧しやすい状況を作り出しているとして、表示の停止と慰謝料30万円の支払いをGoogleに命じた。

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4月16日 DeNA vs グリー 類似「ソーシャルゲーム」事件(3)
   最高裁(三小)/決定・上告棄却(確定)
 インターネットを使ったゲームソフト開発会社グリーが、同業競合相手のDeNA社とゲーム開発会社に携帯電話用のオンライン釣りゲームを模倣され、著作権を侵害されたとして、ゲーム配信の差し止めと約9億4000万円の賠償金支払い等を求めた事件の上告審。一審東京地裁はグリー社の主張を認め、DeNA社の画面はグリー社の画面に依拠して作成されたと言えると判断し、被告側に配信の差し止めと合計約2億3500万円の賠償金支払いを命じたが、被告側、続いて原告側も控訴、二審知財高裁は一審の判断を覆し、両者が似ているとしてもアイデアの範疇に属するものである等と指摘し、著作権侵害には当たらないと結論づけて、一審被告DeNA社らの敗訴部分を取消し、一審原告グリー社の控訴を棄却した。
 最高裁第三小法廷はグリー社側の上告を棄却する決定をし、グリー社敗訴とした二審の判決が確定した。

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4月18日 星座板の著作物性事件
   大阪地裁/判決・請求棄却
 星座板と時刻等を記載した別の板とを組み合わせて使う「星・月の動きA型」という商品を販売する理科教材製造販売会社(原告)が、教育用教材販売会社(被告)が販売する商品「星や月の早見板」は、原告商品に対する原告の複製権、譲渡権、氏名表示権および同一性保持権を侵害しているとして、著作権および著作者人格権に基づき、被告に対して被告商品販売頒布の差し止め・廃棄と、損害賠償金330万円の支払いを求めた事件。
 裁判所はまず星座板の著作物性を検討し、表現の幅は限られたものとならざるを得ないとした上で、両製品を比較し、星座板を構成するいずれの要素も選択の幅が狭くありふれた又は平凡な表現であって、創作性がないと判断した。次に被告商品は創作性のない部分において原告商品と同一性を有するだけだからと、著作者人格権侵害も否定し、原告の請求を棄却した。
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4月18日 “薬剤便覧”の編集著作物性事件(2)
   知財高裁/判決・変更
 書籍『今日の治療薬解説と便覧2007』を発行した原告出版社が、『治療薬ハンドブック2008薬剤選択と処方のポイント』を発行した被告出版社に対し、被告書籍の薬剤便覧部分は、編集著作物である原告書籍の薬剤便覧部分を複製または翻案したものであり、著作権侵害に当たるとして、損害賠償金5500万円余を求めた事件の控訴審。一審東京地裁は原告の請求を棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁は、原告書籍漢方薬便覧部分の薬剤の選択及び配列の部分についてだけ著作権侵害を認め、原判決のその部分を変更して、被告に101万円余の損害賠償を命じた。
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4月26日 女性タレントの写真無断掲載事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 深田恭子さんや前田敦子さんら女優、タレント21人が、雑誌「ENJOY MAX」などに無断で写真を掲載されパブリシティ権を侵害されたとして、また21人中の3人は小学校から高校時代の、芸能活動と関係のない写真をも掲載されプライバシー権を侵害されたとして、発行元の笠倉出版社らに対して雑誌の販売停止、廃棄、損害賠償金合計約2300万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は21人に対するパブリシティ権、うち3人に対するプライバシー権の侵害を認め、出版社側に合計約700万円の支払いを命じたが、その余の請求は棄却した。
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4月26日 ジャニーズタレントの写真無断掲載事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 ジャニーズ事務所所属のアイドルグループの写真を雑誌に無断で掲載されたとして、グループメンバーが版元のアールズ出版をパブリシティ権侵害で訴え、書籍の販売停止、廃棄と、賠償金合計約1億7000万円の支払いを求めた事件。
 裁判所はパブリシティ権の侵害を認め、出版社に書籍の販売停止、廃棄と、合計約5400万円の支払いを命じた。
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5月17日 総合格闘技“UFC”動画アップロード事件
   東京地裁/判決・請求認容
 有料でインターネット配信されているアメリカの人気格闘技UFCの映像を、無断で動画共有サイト「ニコニコ動画」に投稿して著作権を侵害したとして、UFCの運営会社が投稿した男性に1000万円の損害賠償金支払いを求めた事件。
 被告は本件各作品の著作物性、著作権者、公衆送信権侵害については争わず、裁判所は争点となった損害額について、3作品の配信料相当額と再生回数に60%を乗じた額1000万円が損害額に相当すると判断、請求の全額が認定された。
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5月28日 システム開発ソフトの著作権料未払い事件
   大阪地裁/判決・請求棄却(控訴)
 大学教授と設計製図用コンピュータソフトウエア製造販売会社(被告会社)が、DSPと称するプログラムについてソフトウエア使用許諾契約を締結して、その使用・複製・販売に関して大学教授に許諾料を支払う旨を約していたところ、大学教授は、被告会社がDSPを株式会社アトリスに使用許諾したとして、被告会社に許諾料の支払いを求める訴訟を提起したが、大学教授が死亡した。そこで相続人である遺族(原告ら)が大学教授の地位を継承して被告会社に使用許諾料2500万円余の支払いを求めた事件。開発に使用するための一時的な貸し出しに使用許諾料を支払うことはできないと考える被告会社と、DSPを第三者に複製・使用させることで被告会社が対価を得ている以上許諾料を支払うべきだと考える大学教授の争い。
 裁判所は、アトリスへの使用許諾の成否や額について揉めた際の、大学教授を含む関係者6名による平成19年の合意書の成立を認め、この合意以前に大学教授がアトリスへのDSP使用許諾料の請求権を有していたか否かに関わりなく、合意成立後は被告会社にその支払いを求めることはできなくなり、大学教授の遺族である原告らについても同様であるとして、原告らの請求を棄却した。
判例全文
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5月30日 小説「狂人失格」モデル事件
   大阪地裁堺支部/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 作家の中村うさぎさんが書いた小説の登場人物のモデルとなった大阪在住の女性が、小説で名誉を傷つけられたとして、中村さんと発行元の太田出版に1000万円の損害賠償金支払いを求めた事件。中村さんはインターネット上で著作活動をしているこの女性をモデルにした小説を季刊誌に連載し、「狂人失格」のタイトルで出版した。
 裁判所は、女性のネット上の活動を知る人が読めば容易に登場人物をこの女性と同一視できるとし、非常識な対応をする自己中心的な人物との印象を与えて名誉を毀損すると判断し、中村さんに100万円の支払いを命じた。

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5月30日 「光市母子殺害事件」被告少年の実名本事件(2)
   広島高裁/判決・変更(上告、上告棄却・確定)
 山口県光市で起きた母子殺害事件で死刑が確定した死刑囚が、自分の実名を出して事件を報じた書籍の著者と版元に対して、出版の差し止めと慰謝料など1300万円の損害賠償を求めた事件の控訴審。一審は顔写真の掲載などを違法として著者らに計66万円の損害賠償金支払いを命じ、差し止め請求は退けた。
 広島高裁は顔写真の掲載は報道の自由として許されると判断するなどして、著者らに賠償を命じた一審判決を取り消し、死刑囚側の賠償請求を棄却した。差し止めについては請求を退けた一審を支持した。
判例全文
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5月30日 Google“サジェスト機能”名誉毀損事件B
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 大手検索サイトGoogleで、自分の名前を入力すると犯罪を連想させる語句が自動的に表示され、名誉を傷つけられたとして、東京在住の男性がGoogleに対して表示の差し止めと慰謝料200万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は、検索結果自体はサイトの内容が名誉やプライバシーを侵害するものかどうか一見して明らかとは言えないとして、請求を棄却した。Googleのこの「サジェスト機能」については、同様の訴えに対して4月の東京地裁判決は差し止めを命じている。

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6月5日 ワイナリー案内看板の著作物性事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 被告であるワイン製造販売会社と契約して被告の経営するワイナリーの案内看板を制作設置していた広告看板制作会社(原告)が、被告がのちに別会社に依頼して制作させた同様の案内看板に使われた図柄は、自らが持つ当初の看板の図柄の著作権を侵害するものだとして、損害賠償金200万円を請求した事件。
 裁判所は図柄の著作物性を検討し、描かれたワイングラスの描き方も文字の配置もありふれたものであって、作成者の個性の表出は感じられないとして著作物性を否定し、請求を棄却した。
判例全文
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6月6日 ヤフーへの発信者情報開示請求事件
   札幌地裁/和解
 札幌市在住の写真家が、ヤフーのブログに自分の撮影した道内の風景写真6枚が無断で掲載され著作権が侵害されたとして、プロバイダー大手のヤフーに対して発信者情報の開示を求めたところ回答を得られず、札幌地裁に提訴していたが、ヤフー側が札幌地裁の和解案に応じて、発信者2名の住所・氏名を開示した。写真家は開示された情報に基づきブログの筆者に連絡を取り、謝罪を受け、写真使用料を請求できたという。

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6月13日 「ハッピーバースデートゥーユー」著作権事件
   米マンハッタン連邦裁判所/提訴
 誕生日に歌われる「ハッピーバースデイ・トゥーユー」をテーマにした映画を作るに当たり、歌の著作権を主張する企業から使用料を請求されたとして、アメリカの映画製作会社がニューヨークの裁判所に、著作権の無効確認や使用料の返金を求める訴訟を起こしたという。製作会社によると、映画でこの歌を無断使用すると15万ドルの制裁金を要求されるため、「ワーナー・チャペル・ミュージック」社に1500ドル支払った。この社の前身の会社が1893年に原曲「グッドモーニング・トゥーオール」の著作権を購入したとされているが、映画製作会社はこの社の主張を「誤りで違法だ」と言っている。

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6月19日 庭園デザインの著作権侵害事件
   大阪地裁/仮処分申請
 JR大阪駅北側にある複合施設「新梅田シティ」の庭園で設置工事が進められている緑化壁をめぐって、庭園を設計した造園家が、自分の思想を表現した創作物である庭園の著作権を侵害するとして、施工主の積水ハウスに対して、工事の中止を求める仮処分を大阪地裁に申し立てた。庭園は1万5800本の樹木や水路を擁し都会のオアシスとして高く評価されたもの、緑化壁は都市緑化への取り組みで知られる建築家・安藤忠雄さんの発案によるものでプランター植えの低木や多年草で構築される。

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6月20日 著作権移転登録に伴う国家賠償事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 「受話器の象徴」と題する6点の図柄につき、著作権法77条1項の著作権の移転登録申請を行った原告が、このことについて文化庁長官の行為に違法があり損害を被ったとして、国に対し損害賠償金1626万円を請求した事件の控訴審。原告は、原告が本件登録の申請を行った際に、文化庁長官官房著作権課の担当職員が原告に対して「著作物であるから登録出来る」とか「登録されたものは著作物である」などと言わず、本件登録をしたからといって著作権の権利者という地位は保証されない旨の説明をしなかったことなどを、文化庁長官が職員に対して職務上通常尽くすべき注意義務を怠ったためと主張したが、一審東京地裁は、文化庁長官がかかる義務を負うことを定めた法令はなく、仮に文化庁長官が「著作物でないもの」や「著作物かどうか不明なもの」を著作権登録しているという事実を認識しているとしても、これにより長官が上記のような義務を負うことになるわけでないとして、請求を却下した。
 知財高裁も原審の判断を維持し、控訴を棄却した。
判例全文
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6月20日 「ニコニコ動画」リンク事件
   大阪地裁/判決・請求棄却
 上半身に着衣せずに大阪市内のマクドナルド店に入店する自らの模様や、店員や警察官と対応する様子を、カメラを持参し自撮りしてネット上でライブ配信した動画が、第三者によって録画複製されニコニコ動画に無断でアップロードされ、更にウェブニュースサイトで記事として取り上げられるとともにそこにニコニコ動画へのリンクを貼られ、記事には書き込み自由のコメント欄がついていた。撮影者(原告)はウェブニュースサイト運営者(被告)を、名誉毀損、映画の著作物に対する著作権侵害、著作者人格権侵害だとして、記事の削除、謝罪文掲載、損害賠償金合計60万円の支払いなどを求めて提訴した。
 裁判所は、本件動画を原告を著作権者とする映画の著作物であると認めたが、自動公衆送信の主体は被告ではなくニコニコ動画の管理者であること、リンクを貼ることが直ちに違法となるとは言い難いことなどから著作権侵害を否定、また原告が先にライブ配信していることから公表権侵害を否定して著作者人格権侵害を認めず、更に名誉毀損や肖像権侵害なども否定して、原告の請求を棄却した。
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6月25日 サムスン vs アップル特許侵害事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 スマートフォン(多機能携帯電話)やタブレット端末の特許権を侵害されたとして、米アップルが韓国サムスン電子の日本法人に1億円の損害賠償を求めた事件の控訴審。両社の間では世界中で特許をめぐる訴訟が起こされており、日本でも6件の訴訟がある。うち3件は一審判決が出ており、二審判決はこれが初めてとなる。この裁判はスマートフォンなどをPCと接続して音楽などを取り込む際の技術をめぐるもので、昨年8月、一審東京地裁は特許侵害を認めず、アップル側の請求を棄却したが、アップル側が控訴した。
 知財高裁は一審同様、両社の技術は異なっており、アップルの主張には理由がないとして、控訴を棄却した。尚、今年2月と6月の東京地裁の一審裁判では、どちらもアップル側が勝訴している。
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6月27日 コンビニコミックの増刷事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 主にコンビニエンスストアで通常2週間程度店頭に並んで販売される廉価版漫画本(コミック)に関して、6冊及び再編集1冊に作品を制作提供し掲載された漫画家(原告)が、コミックを発行した出版社(被告)に対して、増刷して発行した行為は著作権(複製権)の侵害であるとして、500万円余の損害賠償を求めた事件の控訴審。一審東京地裁はコンビニコミックを、雑誌扱いの不定期の刊行物とするのが通常である等として、原告の主張を認めず、請求を棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁も、原稿料は作画1枚当たりいくらという条件で決められたもので、発行部数はその額を決めるための直接的要素とされていないとして、原告の控訴を棄却した。
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6月28日 弁護士 vs 行政書士 ブログ事件B
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 弁護士(原告)が、自らが代理人として行政書士(被告1)に出した通知書、東京行政書士会会長宛に出した苦情申告書、および東京弁護士会綱紀委員会宛に出した答弁書を、被告1および被告2が自らのブログ上の記事に掲載したのは、各文書の著作権と自らの著作者人格権を侵害するものであるとして、掲載の差し止めと各150万円の損害賠償金支払いを求めて提訴した事件。
 裁判所は通知書の著作物性を否定、苦情申告書と答弁書の著作物性を肯定して、被告二人の著作権(公衆送信権)侵害と、人格権侵害を認めた。しかし慰謝料については、原告は被告らによるネット上での公表を予期しており、またこれを誘致した面もあるとして認めず、被告二人に対するURL掲載や文書掲載の差し止めだけを認めた。
判例全文
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