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【事件名】著作権移転登録に伴う国家賠償事件
【年月日】平成25年1月31日
 東京地裁 平成23年(ワ)第40129号 損害賠償請求事件
 (口頭弁論の終結の日 平成24年12月6日)

判決
原告 A
被告 国
同指定代理人 小林勝
同 住永剛
同 内田高城
同 田口重憲
同 所昌弘
同 檀上容子


主文
 原告の請求を棄却する。
 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
 被告は、原告に対し、1626万円及びこれに対する平成24年4月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は、原告が、原告が著作権法(以下、単に「法」という。)77条1号の著作権の移転登録申請を行ったことにつき、文化庁長官の行為に違法があり、これにより損害を被ったと主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償として4105億5626万円の一部である1626万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成24年4月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1 前提事実(争いがないか、証拠(甲1ないし6、16)及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)
(1) 原告は、「受話器の象徴」と題する6点の図柄(以下、これらを一括して「本件図柄」という。本件図柄を著作物とする著作権登録原簿の表示番号第19532号)につき、登録権利者及び登録義務者代理人として、平成22年3月26日、譲渡人Bから譲受人原告に対して同年3月17日に著作権(法27条及び28条に規定する権利を含む。)の持分2分の1の全部の譲渡があった旨の著作権の移転登録を申請し、平成23年10月28日、譲渡人Cから譲受人原告に対して平成22年6月12日に上記と同様の著作権の持分2分の1の全部の譲渡があった旨の著作権の移転登録を申請した。
 文化庁長官は、前者につき平成22年4月8日付け、後者につき平成23年11月17日付けで登録を完了した(以下、これらを一括して「本件各登録」という。)。また、文化庁長官は、原告ないしはその代理人からの上記著作権登録原簿の謄本の交付申請に応じてきた。
(2) 原告は、平成22年9月22日及び同年10月18日に、訴外三菱電機ビルテクノサービス株式会社ほか133の株式会社等を被告として、本件図柄の著作権(複製権及び翻案権)侵害を理由に、それぞれ1000万円の損害賠償を求める訴えを福岡地方裁判所に提起した(以下、これらを一括して「別訴」という。)。原告は、別訴のうち51社分については訴えを取り下げたが、福岡地方裁判所は、その余につき、本件図柄は著作物には当たらない、著作権登録原簿に登録されていることを根拠として本件図柄が著作物であるという原告の主張は採用することができない、などと判示して、原告の請求を棄却する旨の判決を言い渡した。
2 争点
(1) 文化庁長官の行為が国家賠償法上違法であるか否か(争点1)
(2) 原告の損害額(争点2)
3 争点に関する当事者の主張
(1) 争点1(文化庁長官の行為が国家賠償法上違法であるか否か)について
(原告)
 文化庁長官官房著作権課の担当職員(以下「本件担当職員」という。)は、原告が本件各登録の申請を行った際に、原告に対し、「著作物であるからこそ登録できる」とか「登録されたものは著作物である」などというわけではなく、本件各登録をしたからといって著作権の権利者という地位は保証されない旨の説明をしなかったが、これは、文化庁長官が、本件担当職員をして、原告に対し、本件図柄が著作権法上の著作物ではないにもかかわらず、あたかも本件図柄につき著作権が存在するかのように消極的に装い、原告にその旨誤信させたものである。
 文化庁長官や文化庁職員は、「著作物でないもの」や「著作物かどうか不明なもの」を著作権登録しているという事実を認識しているから、文化庁長官は、本件担当職員をして、原告に対し、上記のような説明をさせるべきであったのに、これをしなかったのであって、文化庁長官には職務上通常尽くすべき注意義務を怠った違法がある。
(被告)
 本件担当職員が、原告主張の説明をしなかったことは認めるが、その余は争う。文化庁職員が、著作権の移転登録に先立ち、登録申請者に対して、登録申請に係る著作物の著作物性の有無につき、文化庁職員が判断することではなく不明である等の説明をしなければならないとする職務上の法的義務はなく、文化庁長官が文化庁職員にその旨の説明をさせなければならないとする職務上の法的義務もない。
(2) 争点2(原告の損害額)について
(原告)
ア 原告は、文化庁長官の違法行為により、次のとおりの損害を被った。
(ア) 本件登録に当たり原告が支払った登録免許税合計額 3万6000円
(イ) 原告が、別訴を提起する際各訴状に貼付した印紙合計額 542万円
(ウ) 原告が別訴を提起する際予納した郵券合計額 80万4000円
(エ) 原告が別訴において請求した損害賠償金の合計額(ただし、取り下げた分を除く。) 4105億5000万円
イ 原告は、被告に対し、上記アの損害中(ア)ないし(ウ)と(エ)のうち1000万円との合計1626万円の支払を求めるものである。
(被告)
 争う。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(文化庁長官の行為が国家賠償法上違法であるか否か)について
(1) 原告は、原告が本件各登録申請を行った際、文化庁長官は、本件担当職員をして、原告に対し、本件各登録をしたからといって著作権の権利者という地位は保証されない等の説明をさせるべき職務上の法的義務を負っていたのに、これを怠った違法があると主張する。
 しかしながら、文化庁長官がかかる義務を負うことにつき定めた法令はないし、仮に文化庁長官が「著作物でないもの」や「著作物かどうか不明なもの」を著作権登録しているという事実を認識しているとしても、これにより文化庁長官が上記のような義務を負うこととなるわけではなく、その他文化庁長官がかかる義務を負うことを認め得る根拠もない。したがって、原告の主張は、前提を欠くものであって、採用することができない。
(2) 原告は、文化庁長官の行為が違法であるとして、文化庁長官が著作物ではない本件図柄について著作権登録原簿に登録をした、文化庁長官が原告に告知、弁解、防御の機会を与えることなく原告の著作権を没収した、などと主張するが、原告の主張は、独自の見解に立つものであって、失当というほかない。
2 よって、原告の請求は、その余の点について検討するまでもなく、理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第47部
 裁判長裁判官 高野輝久
 裁判官 三井大有
 裁判官 志賀勝
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