裁判の記録 line
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2015年
(平成27年)
[7月〜12月]
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7月16日 建築士講座テキストの著作物性事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 原告被告ともに資格試験予備校の運営会社だが、被告会社が発行する一級建築士資格取得講座で使用される各テキストは、原告会社が発行し講座で使用している同種のそれらのテキストの著作権および著作者人格権を侵害しているとして、被告会社に対して、被告各書籍の発行等の差し止めと、損害賠償金7600万円余の支払を求めた事件。
 裁判所は、問題とされた23点におよぶ原告各表現は、いずれもありふれているか、アイデア部分、事実部分であり、創作性のある部分での同一性は認められないとして、著作権侵害の成立を否定し、人格権侵害の主張も認めず、請求を棄却した。
判例全文
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7月16日 美川憲一氏の事務所独立事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 歌手・芸能人の美川憲一氏(被告)と専属契約を結んでいた芸能プロダクション(原告)が、被告が被告会社(被告が代表)と共に一方的に契約を破棄して独立したことによって被害を被ったとして、債務不履行による損害賠償金1億3500万円余、衣装と譜面の持ち出しによる所有権侵害の賠償金5100万円余、原告が著作権を有する衣装の著作権侵害予防請求として衣装の複製・展示等の差し止め、原告が著作権を有する譜面の著作権侵害予防請求として譜面の複製・演奏等の差し止め、被告への貸金返還請求300万円および立替金返還請求324万円余、被告会社への貸金返還請求1000万円および立替金返還請求776万円余を、それぞれ求めた事件。
 裁判所は、原告プロダクションの状況、被告が新たに所属したプロダクションと原告との覚書などから、原告は被告の独立に同意していたと判断、債務不履行を否定した。また所有権侵害を否定、著作権侵害予防のための差し止め請求も理由がないとして退け、貸金、立替金返還の主張も認めず、原告の請求を棄却した。
判例全文
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7月30日 商標“加護亜依”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 タレント・加護亜依さんが元所属した事務所(原告)は、「加護亜依」の4文字からなる商標を第41類を指定役務として平成21年12月登録していたが、新所属事務所(被告)により26年5月取り消し審判請求がなされ、特許庁は27年2月41類指定役務の一部分を、不使用により取り消す審決をした。この審決に対して原告が取り消しを求めた事件。
 一審となる知財高裁は、原告は本件審決における商標使用の認定・判断、あるいは不使用に関する正当な理由の認定・判断が誤っていることを主張立証する必要があるのに、審決の認否を明らかにせず、取り消し理由を主張していないなどとして、本件請求に理由がないとし、原告の請求を棄却した。
判例全文
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7月30日 “隠れ家的バー”口コミサイト掲載事件(2)
   大阪高裁/和解
 大阪市で数店の飲食店を経営する原告が、ネット上に口コミグルメサイトAを開設して運営している被告に対して、被告が会員ユーザーの登録・投稿により原告の経営する“隠れ家的バー”Bの情報や口コミおよび写真をAに掲載し、原告からの削除要求に応えなかったことにより、営業権および情報コントロール権を侵害されたとして、情報の削除と330万円の賠償金支払いを求めた訴訟は、一審大阪地裁で請求棄却となり原告側が控訴していたが、大阪高裁で和解が成立した。

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8月5日 「週刊実話」の女性タレント合成写真事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却(上告受理申立、上告不受理・確定)
 映画、TV、写真集などで芸能活動する女優等8人(一審原告)が、日本ジャーナル出版(一審被告)が原告らの肖像写真に裸の胸部のイラストを合成した画像を用いた記事を掲載した雑誌を出版販売したことについて、原告らのパブリシティ権並びに人格権及び人格的利益が侵害されたとして、被告とその代表者、発行人、編集人に対し、雑誌の印刷・販売の停止と廃棄、賠償金1100万円の支払いを求めた事件の控訴審。一審東京地裁はパブリシティ権の侵害は認めず、原告らの人格権としての氏名権及び肖像権並びに人格的利益としての名誉感情を侵害するものとして、被告会社代表者を除く3者に連帯して合計80万円の支払いを命じたが、原被告双方が控訴した。
 知財高裁は、原判決は相当であり、控訴はいずれも理由がないとしてこれを棄却した。
判例全文
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8月5日 実測図の著作物性事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 土地建物の賃貸借契約等民事訴訟の訴状に添付するため、一審被告が一審原告に無断で原告の作成した現況実測図を複製したのは著作権侵害に当たるとして、50万円の損害賠償金を求めた事件の控訴審。原審は、本件実測図は著作物に該当するものとは認められないとして請求を棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁も、測量の対象となった情報の取捨選択や、その図上への表示方法・表現内容のいずれにおいても、控訴人の個性発揮や具体的主張立証がないとして、著作物性を認めず、控訴を棄却した。
判例全文
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8月24日 漫画「ハイスコアガール」ゲームキャラクター無断使用事件
   大阪地裁/和解
 スクウェア・エニックス社発行のマンガ雑誌に連載の「ハイスコアガール」に、自社のゲームキャラクターを無断で使われたとして、遊技機メーカー・SNKプレイモア社が著作権侵害を訴えていた事件で、両社は訴訟外の和解が24日付で成立したと発表した。両社は大阪地裁で互いに起こしていた民事訴訟を取り下げ、SNK社は刑事告訴も取り下げた。

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8月27日 カラオケリース業者の“注意義務”事件
   大阪地裁/判決・請求棄却
 日本音楽著作権協会(原告)が、カラオケ機器を無許諾116店舗にリースしていたカラオケ装置リース業社の代表者(被告)に対して、著作権侵害による損害賠償金4012万円余の支払いを求めた事件。なお本件訴訟では、当初は当該会社も被告とされていたが、その後破産手続きが開始されたことから、原告は会社に対する訴えを取り下げるとともに、免責が確定した被告に対する損害賠償請求を、悪意で加えた不法行為(破産法253条1項二号)に基づく損害賠償請求であると主張するようになった。
 裁判所は、「悪意」は単なる「故意」を超えた、権利侵害に向けた積極的な害意を意味するとした上で、被告の行為は自らの利益増大の目的を超えて原告に対する害意があったとまでは認められず、「悪意で加えた不法行為」というには足りないとして、請求を棄却した。
判例全文
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8月28日 ディズニーアニメの日本語版DVD事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 映像ソフトの企画・製作・販売及び輸出入を業とする有限会社アートステーション(原告1)とマルチメディアソフトの企画製作等を業とする株式会社コスモ・コーディネート(原告2)が、ビデオテープなどの企画・製造・販売・輸出入を業とする株式会社メディアジャパン(被告会社)とその社の代表取締役(被告A)に対して、被告らが製造・輸入・販売しているDVD商品は、著作権保護期間の経過したディズニーアニメ映画等10作品に原告らが日本語音声及び字幕を収録し直した原告らが著作権を有する作品の複製であり、原告らの著作権を侵害しているとして、被告に輸入、複製、販売の差し止めと損害金405万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は、部分的許諾はあったことは認めたが、被告会社はそれを超えて著作権を侵害しているとし、一方被告Aについての請求は理由がないとして退け、被告会社に対し、輸入、複製、販売の差し止めと、8万円余の支払いを命じた。
判例全文
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8月28日 ディズニーアニメの日本語版DVD事件B
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 前項原告の有限会社アートステーション(原告1)と株式会社コスモ・コーディネート(原告2)が、ビデオ等の製作・販売・賃貸・輸出入を業とする株式会社コスミック出版(被告)に対して、被告が製造・輸入・販売しているDVD商品は、前項と同じ原告らが著作権を有する作品の複製であり、原告らの著作権を侵害しているとして、被告に輸入、複製、販売の差し止めと損害金675万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は、被告の販売したDVDのうち相当部分は著作権者である原告らの許諾を得ない商品であるとして、原告らの主張を認め、被告に販売の差し止めと、原告それぞれに対する224万円余の支払いを命じた。
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8月28日 「トムとジェリー」の日本語版DVD事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 前項および前々項原告1の有限会社アートステーション(原告)が、前々項被告の株式会社メディアジャパン(被告会社)とその社の代表取締役(被告A)に対して、被告らが製造・輸入・販売している「トムとジェリー」30作品のDVD商品は、著作権保護期間の経過した外国映画に原告が日本語音声及び字幕を収録し直した原告が著作権を有する作品の複製であり、原告の著作権を侵害しているとして、被告らに輸入、複製、販売の差し止めと損害金405万円の支払いを求めた事件。被告らは原告と被告会社との間に共同事業の合意があり、当該DVDの著作権も共有していると主張した。
 裁判所は、共同事業合意の成立を認めず、被告会社は著作権を侵害しているとしたが、被告Aについての請求は理由がないとして退け、被告会社に対し、輸入、複製、販売の差し止めと、15万円余の支払いを命じた。
判例全文
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9月10日 教科書「新しい日本の歴史」盗用事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 「新しい歴史教科書をつくる会」の理事(元会長)(一審原告)が、一審被告らが制作して出版する書籍1及び2は原告が著作権を有する書籍の記述を流用したものであり、原告の翻案権及び著作者人格権を侵害するとして、書籍1の出版・販売・頒布の差し止め・廃棄と、損害賠償金6031万円余の支払いを求めた事件の控訴審。原告は被告書籍と共通する原告書籍の47項目において、原告の記述に創作性があり、被告の記述は翻案に当たると主張したが、一審東京地裁は、中学校用歴史教科書においては表現や項目選択の幅がきわめて狭いと述べた上で、被告の記述は、表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分で同一性を有するにすぎないから、翻案に当たるとは言えないとして、原告の請求を棄却した。原告が複製権侵害性と一般不法行為論を争点に追加して控訴した。
 知財高裁は原審の判断を基本的に維持して控訴を棄却した。
判例全文
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9月10日 マスコットキャラクター“フラねこ”事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 温泉郷の地域活性化のためのブログやガイドブックに掲載された黒猫のイラストは、自分の描いたイラストを無断で改変したものだとして、原告イラストレーターが、活性化のためのイラストを描いたイラスト制作者と、地域活性化イベント実行委員会委員長に対して、著作権および著作者人格権侵害による損害賠償金合計380万円を請求し、イラストの廃棄・削除、謝罪広告の掲載等を求めた事件。
 裁判所は、フラオンパクと名付けられたこのイベントに使われた被告イラストが、原告の描いた黒猫の頭部にフラダンス等の衣装をつけた胴体を組み合わせたものであるとして著作権および著作者人格権侵害を認定し、両被告にそれぞれ90万円の賠償金支払いを命じ、それ以外の請求は棄却した。
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9月17日 ソースコードの著作物性事件
   東京地裁/判決・甲事件請求一部認容、一部棄却、乙事件請求棄却
 甲事件:原告会社が、被告会社が「原告会社による当該原告製品の開発・販売行為は被告会社の製品の著作権を侵害する」という虚偽の情報を関係者に告知流布したとして、被告会社に告知流布行為の差し止めと謝罪広告の掲載、並びに被告らに損害賠償金2000万円の支払いを求めた。
 乙事件:被告会社が、(1)原告製品は被告製品を複製または翻案したものであるから、原告製品の製造・販売は被告製品の著作権を侵害する、(2)原告会社と原告会社の従業員であった乙事件被告らの行為は不正競争行為に当たり、また秘密保持義務違反である、(3)原告会社の代表取締役である乙事件被告Aの行為は競業避止義務違反であり、会社法にも違反する、と主張して、原告会社に原告製品の製造販売の差し止め、および原告らに損害賠償金2000万円の支払いを求めた。
 原告会社は電子機器製造販売会社、被告会社はプログラム開発販売会社、問題の製品はハイパーバイザと呼ばれる機能を携帯電話等で利用してリアルタイムマルチOS環境を実現することを可能にするもの。
 裁判所は著作権侵害行為を認定せず、被告会社の主張・請求には理由がないとして、被告会社に当該告知流布の禁止を、また被告会社およびその代表取締役である乙事件被告Dに、連帯して原告会社に対する100万円の賠償金支払いを命じた。原告会社のその他の請求および被告会社の請求は棄却した。
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9月24日 錦絵の写真転載事件
   大阪地裁/判決・請求棄却
 著作権保護期間を経過した多量の錦絵等を所蔵し、その写真画像を自らあるいは第三者を通じて有料で貸し出している原告が、図書や教育機器等を製作販売している被告出版社に対して、被告出版社が、原告所有4点の錦絵の写真を原告への許諾を得て発行された他出版社等の版面から複写して、その発行する教材に掲載した行為は、商慣習ないし慣習法違反を理由とする不法行為、また所有権侵害を理由とする不法行為に当たる等として、損害賠償請求等の計625万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は、写真有料貸出の商慣習を検討して、そのような例があったとしても、商慣習ないし慣習法の存在を認めることはできないとし、また多くの利用者が利用契約に応じているからと言って、これに応じずに無体物である保護期間を経過した著作物の写真を利用することが法律上許されないわけではないとして、原告の請求を棄却した。
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9月24日 大阪市ピクトグラム事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 大阪城、通天閣などの問題となったピクトグラム(案内板や案内図に用いられる著名建造物等を絵柄図柄で表したもの)の著作権を得ていると主張するデザイン会社が、大阪市等に対して、使用許諾契約期間終了後も観光案内冊子等に無許諾使用したとして、その抹消・廃棄と、総計1000万円以上の損害賠償金等の支払いを求めた事件。
 裁判所は、原告の多岐にわたる請求の多くを退け、被告大阪市に対して、大阪市の要請に応じて原告が行った3点の修正に対する支払い22万円のみを命じ、大阪市に対するその余の請求および被告財団法人大阪都市工学情報センターに対する請求を棄却した。ただ本件ピクトグラムの著作物性については、いわゆる応用美術の範囲に属するものだが、それが実用的機能を離れて美的観賞の対象となりうる美的特性を備えている場合は美術の著作物として保護の対象となり、本件はそれにあたるとして、19点の本件ピクトグラムを著作物であると認めた。
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9月29日 「大阪府知事は『病気』である」名誉毀損事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 
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9月30日 「性犯罪被害にあうということ」映画化事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 ノンフィクション作品『性犯罪被害にあうということ』及び『性犯罪被害とたたかうということ』の著者である原告が、テレビディレクター兼プロデューサーである被告に対して、被告の作った映画は原告のこれらの書籍の複製物又は二次的著作物であるとして、著作権侵害及び著作者人格権の侵害を主張、本件映画の上映等の差し止めと本件映画のマスターテープ等の廃棄、並びに損害賠償金合計500万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は、エピソード別対比表の各エピソードを検討して侵害部分を認定し、また被告は性犯罪被害をテーマにした映画を製作するに際しての原被告間の本件各著作物不使用合意に違反して本件映画を製作したと認定して、被告に対し、侵害部分を含む映画の上映等の差し止め、マスターテープ等の廃棄、並びに損害賠償金55万円の支払いを命じた。
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10月1日 ソフトウェアのライセンス契約事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 コンピュータソフトウェアの開発・販売会社である一審原告が、通信機器や周辺機器の販売やリースを手掛ける一審被告会社との間で著作権ライセンス契約(使用許諾契約)を締結したと主張して、被告に対し、契約締結確認と、本件契約に基づく著作権使用料39万円余の支払いを求めた事件。原被告間では、かつて、被告が原告に対して継続的にソフトウェアの発注をし、原告はこれを製作し被告又は被告の指定する納品先に納品していた。一審東京地裁は原告の請求を棄却したが、これを不服として原告が控訴した。
 知財高裁も控訴人(一審原告)の主張を認めず、ライセンス契約の成立を否定して、控訴を棄却した。
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10月2日 ディズニーアニメの日本語版DVD事件C
   東京地裁/判決・請求認容
 映像ソフトの企画・製作・販売及び輸出入を業とする有限会社アートステーションとマルチメディアソフトの企画製作等を業とする株式会社コスモ・コーディネートが、ビデオ等の製作・販売・賃貸・輸出入を業とする株式会社コスミック出版(被告)に対して、被告の販売し又は輸入している著作権保護期間の切れた「シンデレラ」などの格安DVDは、原告らが日本語台詞原稿及び日本語字幕の著作権を有する著作物の著作権を侵害するものであるとして、各DVDの輸入・複製・頒布の差し止めと、原告それぞれに対する損害賠償金1289万円余の支払いを求めた事件。
 本件では被告は代理人を立てず対応を放置したため、請求認容の判決となった。
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10月5日 「週刊新潮」の橋下大阪市長“出自”記事事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 
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10月6日 著作権法論文の同一表現事件(2)
   知財高裁/判決・変更、附帯控訴棄却
 論文「通信と放送の融合に伴う著作権問題の研究」を執筆した研究者(一審原告)が、一審被告AおよびBが共同で執筆した論文の中に原告論文とほぼ同一の記述があることを前提に、被告A、B、及びAが勤める学校法人(被告学園)に慰謝料等550万円の支払い、謝罪広告の掲載を求め、被告論文をウェブ上に掲載した学術学会(被告学会)に被告論文の削除と原告が原告論文の著作権を有することの確認を求めた事件。一審東京地裁は氏名表示権侵害だけを認め、被告A・Bに対する連帯しての22万円の損害賠償金支払いと、被告学会に対するウェブ上からの被告論文の削除を命じ、その他の請求は棄却したが原告が控訴、被告A・Bも附帯控訴した。
 知財高裁は原審の判断を基本的に維持し、弁護士費用だけを変更して、被告A・Bに40万円の支払いを命じ、その他の請求と附帯控訴を棄却した。
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10月14日 販促物「美術額絵シリーズ」事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 故人である版画家の作品24点に係る著作権の共有者である一審原告(亡長男の妻)が、一審被告ら(次男および次男が取締役を務める広告制作会社)が原告に無断で本件作品を新聞社の販促物「美術額絵シリーズ」に使用することを許諾したことにより、原告は本件著作権の2分の1の共有持分権を侵害され損害を被ったとして、被告らに対して1260万円の支払いを求めた事件。原審東京地裁は共有持分権行使に必要な合意を認めるに足りる証拠がないとして、複製行為により原告の著作権共有持分権が侵害されたこと、また許諾に被告らの過失があったことを認め、損害額を許諾の対価の80%と算定して、被告らに1008万円の支払いを命じたが被告らが控訴した。
 知財高裁は原審の結論を維持し、控訴を棄却した。
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10月16日 Google書籍電子化事件(米)(2)
   米ニューヨーク連邦高裁/判決・控訴棄却(上告、上告棄却)
 2004年から始まった米グーグルによる図書館書籍の電子化をめぐる訴訟で、米ニューヨークの連邦高裁はグーグルの行為をフェアユースに当たると認定し、一審同様作家側の主張を退けた。作家側は上告する見通し。

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10月26日 「著作権判例百選」の編集著作権事件
   東京地裁/決定・仮処分認容(異議申立)
 判例解説で知られる「判例百選」シリーズの「著作権判例百選」の改訂出版に当たり、編者である自分の名前を外すのは編集著作権侵害であるとして、大渕哲也東大大学院教授が発行元の有斐閣に対して、第5版の出版の差し止めを求めた事件。大渕教授は2009年12月に発行された第4版の編者として明記されていたが、11月発行予定の第5版では編者名から外されていた。
 裁判所は改訂版の出版差し止めを命じる仮処分の決定を出した。

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10月28日 経営支援ソフトテンプレートの著作物性事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 経営可視化ソフトQPR本体の販売促進用テンプレート制作に関するコンサルティング業務委託契約、および販売インセンティブ契約を、公認会計士である一審原告と結んでいたソフト制作販売会社である一審被告が、製品を販売していながら契約に基づく報告および通知をしていなかったとして、原告が被告に対し、著作権に基づき被告製品の販売等の差し止めと、損害金と未払い金同額の利得の一部請求として1000万円の支払いを求めた事件の控訴審。一審東京地裁は、本件テンプレートが創作性を有するとは認めがたいと判断して著作権侵害性を否定、ロイヤリティ未払い分等の存在を否定して、請求を棄却したが原告が控訴した。
 知財高裁は原審の判断とは異なり、本件テンプレート中のソールボックスの著作権者を判断して被告による著作権侵害性を否定、また原審同様ロイヤリティ支払い義務もインセンティブ支払い義務も否定して、控訴を棄却した。
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11月10日 英会話教材キャッチフレーズの著作物性事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 外国語教材企画開発販売会社(一審原告)が、教育関連事業やウェブ関連事業を営む一審被告会社がその社の販売する英会話教材につけた広告キャッチフレーズは、原告会社が販売する英会話教材につけた広告キャッチフレーズの著作権を侵害するとして、被告に対して、被告キャッチフレーズの複製、公衆送信、複製物の頒布の差し止めと、損害賠償金60万円の支払いを求めた事件。一審東京地裁は、原告キャッチフレーズはありふれた言葉の組み合わせ、ありふれた表現で、思想感情を創作的に表現したものとは認められないとして、その著作物性を否定、被告による著作権侵害を否定したが原告が控訴した。
 二審も原審の判断を維持、控訴審追加主張も認めず、控訴を棄却した。
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11月20日 ファッションフォトの利用許諾事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 イタリア人写真家(原告)が、自らが撮影したファッション写真について、(1) レディスファッション販売会社(被告A)が写真をトリミング加工してウエブサイトに掲載したのは著作権侵害並びに著作者人格権侵害だとして、公衆送信の差し止めおよび損害賠償金600万円の支払いを求め、(2) ファッションブランド関連会社(被告B)が写真をトリミング加工して雑誌に掲載し発行したのは著作権侵害並びに著作者人格権侵害だとして、損害賠償金1060万円の支払いを求め、(3) 被告双方に対して不法行為に基づく損害賠償として弁護士費用30万円の支払いを求めた事件。
 東京地裁は被告らの主張する著作権の譲渡は認めなかったが、広告宣伝用写真撮影依頼並びに代金取決めの際の「写真は御社のものなので、どのように使用されてもよろしい」などという原告の言葉から、原告は広告宣伝目的においては改変することや掲載媒体を選択することを被告Aに対して認めていたと判断、また被告Bの掲載も利用範囲内だと判断して、原告の請求を棄却した。
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11月26日 業務管理プログラムの無断インストール事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 ソフトウェア開発会社である一審原告が、原告が著作権を有する業務管理のプログラムを、同じくソフトウェア開発会社である一審被告が無断でインストールして使用するなどしたことは、原告の著作権を侵害するものだとして、被告に対し、プログラム等の使用等の差し止めと廃棄、および損害賠償金1億941万円余の支払を求めた事件。一審大阪地裁は、両社の密接な関係から、本件インストールは原告代表取締役の決済を経るべき事項であったとは認められず、原告システム開発部長による本件インストール命令は原告からの授権によるものであり、原告の許諾があったものと判断され、被告による本件プログラムの利用は原告の著作権を侵害したものとは言えないとして、原告の請求をいずれも棄却したが、原告が損害賠償請求棄却の部分についてのみ控訴した。
 知財高裁は一審判断を維持して、控訴を棄却した。
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11月26日 楽曲の“歌詞”譲渡契約事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 音楽マネジメント会社とその代表者(原告ら)が、音楽制作会社ら4者(被告ら)に対して、原告会社がエイベックス・エンタテインメント株式会社(被告の1社の旧商号、以下AEI)との間で締結した、楽曲名My Bass(作詞者May J.、作曲者Bentley Jones)に関する著作物譲渡契約書は、被告らの従業員等によって偽造されたものであるなどと主張して、本件契約書の成立の不真正の確認を求めるとともに、被告らの従業員による不法行為に関する使用者責任を主張して、損害賠償金80万円余の支払いと謝罪広告を求めた事件。原告らは、本件楽曲の作曲部分を10万円で売る内容だった契約書を、被告らが作詞部分の権利も取得したことにする必要から、原告会社が楽曲に関わる全ての権利を譲渡する内容であるかのように偽造されたと主張した。
 裁判所は、そのような動機で偽造するのであるならば、本件契約書に「作詞者May J.」と記載するのは不合理であるとした上で本件契約書の真正な成立を認め、原告らの請求を棄却した。
判例全文
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11月30日 ソフトバンクへの発信者情報開示請求事件
   東京地裁/判決・請求認容
 宗教法人・創価学会(原告)が、氏名不詳の投稿者が、原告が著作権を有する池田名誉会長の写真を、ソフトバンク(被告)の提供するインターネット接続サービスを経由して電子掲示板「Yahoo!知恵袋」への投稿記事中に掲載した行為は著作権侵害であることは明らかであるから、原告による本件投稿発信者に対する損害賠償請求権の行使のため、被告に対し、プロバイダー責任制限法に基づき、本件投稿者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は、本件写真の著作物性および掲載写真がその翻案であることを認め、原告は発信者情報の開示を受ける必要があると判断して請求を認容した。
判例全文
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11月30日 英単語の語呂合わせ事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 書籍『全脳記憶英単語2201 実践編』の著者である原告が、出版社・語学春秋社(被告)の発行する書籍『イメタン』に掲載されている複数の英単語の語呂合わせ(特定の英単語の発音に類似した日本語と同英単語の日本語訳とを組み合わせて意味のある語句又は文章としたもの)は、原告が執筆した原告書籍に掲載されている複数の英単語の語呂合わせを複製または翻案したものであり、著作権侵害および著作者人格権侵害であるとして、被告に対して、被告書籍の複製と譲渡の差し止め、廃棄、また損害賠償金129万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は、原告語呂合わせと被告語呂合わせとの共通部分を認定し、それが創作的な表現と言えるかどうかを100件の語呂合わせについて個別に検討し、すべて表現上の創作性のない部分において同一性を有するに過ぎない、あるいはありふれた表現に過ぎないとして、複製又は翻案該当性を否定し、人格権侵害も否定して、原告の請求を棄却した。
判例全文
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12月7日 “展覧会の写真”無断掲載事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 写真家である原告が、被告株式会社東京フォト委員会ないしその代表取締役(被告個人)が原告の撮影した写真(「TOKYO PHOTO 2013」展を写したもの)を被告会社のウェブサイト等に無断で掲載して、原告の著作権並びに著作者人格権を侵害したとして、損害賠償金231万円の支払いを求めた事件。写真展の主催者が原告に展覧会場撮影を依頼しようとし、金額面で折り合いがつかずに契約不成立になっていたが、提供されたサンプル画像を被告らが加工して使用した。
 裁判所は著作権侵害および著作者人格権侵害を認め、被告らに対し、使用料相当額損害金・慰謝料・弁護士費用相当額の合計25万円の支払いを命じた。
判例全文
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12月9日 ヘアスタイルの写真無断転載事件
   東京地裁/判決・請求認容
 女性モデルのヘアスタイル写真について、これらを撮影したカメラマンから著作権譲渡を受けた美容専門雑誌出版社(原告会社)が、同業出版社である被告会社がその発行する雑誌「SNIP STYLE No.348」にこれらを複製して掲載した行為は著作権侵害に当たるとして、掲載許諾料相当額18万円と弁護士費用との合計額21万6000円の支払いを求めた事件。
 裁判所は当該写真の著作物性、原告会社が著作権者であることを認め、著作権侵害と判断、また被告会社による、ヘアドレッサーがこれら写真の著作者であるか、少なくとも共同著作者の一人であるという主張を退けて,原告の請求を認容した。
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12月24日 「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」ドラマ化事件
   東京高裁/和解
 NHKが、直木賞作家・辻村深月の小説「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」のドラマ化許諾契約を、撮影直前になって白紙撤回されたとして、出版元の講談社に対して約6000万円の損害賠償を求めた訴訟で和解が成立した。
 和解は東京高裁の勧告によるもので、和解条件は明らかにされていない。
 この訴訟は、NHKが辻村の著作権管理を委託されている講談社からドラマ化の了承を得て撮影準備を進めていたが、原作にないシーンが書き加えられことに納得できない辻村の意向を受け、製作が中止になったもの。
 一審東京地裁は、辻村側が脚本を承認していない以上、ドラマ化許諾契約は成立していないとしてNHKの請求を棄却。NHKが控訴していた。

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12月25日 近未来宇宙船のイメージイラスト事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 有人宇宙輸送システムのコンセプト「スペースプレーン」のシステム構成を描いたイラストの著作権者であると主張する原告が、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(被告JAXA)が本件イラストをパネル化して展示したこと、ウェブページに掲載したこと、また被告JAXAから渡されたネガフィルムを使って被告小学館が本件イラストを掲載した書籍を制作発行したことは、原告の著作権を侵害するとして、被告らに複製等の差し止めとパネル、フィルム等の廃棄、損害賠償金301万円余の支払い、並びに謝罪広告の掲載を求めた事件。
 裁判所は本件イラストの著作物性を検討して、本件イラストはNALシステム構成図に依拠した複製物であって、同図と共通する部分に著作物性はなく、また新たに創作性のある表現も付与されていないとして、本件イラストが著作物であることを前提とした原告の請求は理由がないと、請求を棄却した。
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