裁判の記録 line
line
2014年
(平成26年)
[1月〜6月]
line

 
line
1月15日 Google“サジェスト機能”名誉毀損事件B(2)
   東京高裁/判決・取消
 インターネット検索最大手Googleの、単語を検索欄に入力すると自動的に関連の言葉が表示される「サジェスト機能」で名誉を傷つけられたとする男性が、Googleに対して表示の差し止めと1300万円の損害賠償を求めた事件の控訴審。一審東京地裁は表示の停止と慰謝料30万円の支払いをGoogleに命じたがGoogle側が控訴した。
 東京高裁は、一審の判決を取消し、サジェスト表示による男性の不利益が表示の停止による他の利用者の不利益を上回るとは言えないとして、一審原告の請求を棄却した。

line
1月17日 KDDIへの発信者情報開示請求事件D
   東京地裁/判決・請求認容
 漫画の作者であり、作画家からその著作権も移転されている漫画著作権者(原告)が、その作品をインターネット上のあるブログに無断掲載され著作権侵害されているとして、当該ブログ発信者に損害賠償請求するため、発信者のIPアドレスを管理するKDDI(被告)に対して、その住所・氏名・メールアドレスの情報を開示するよう求めた事件。
 裁判は、原告が著作権者であるか否か等で争われたが、裁判所は原告を著作権者であると認め、発信者の侵害行為も明らかであるとして、被告に対して発信者の情報を開示するよう命じた。
判例全文
line
1月17日 雑誌標章“HEART nursing”事件(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却、附帯控訴認容
 被告出版社は平成23年より「Heart」という題号の雑誌を刊行しているが、この標章は、原告出版社が昭和62年より刊行している雑誌「Heart nursing」の題号の「Heart」部分と同一または類似の表示をしているとして、原告出版社が被告標章の使用差し止めと廃棄、および100万円の損害賠償を求めた事件の控訴審。一審大阪地裁は原告の主張を認め、被告雑誌の販売の差し止めと廃棄、および賠償金50万円の支払いを命じたが、被告が控訴し、原告が2016万円の支払いを求める附帯控訴をした。
 大阪高裁は一審被告の控訴を棄却し、一審原告の附帯控訴に基づき原判決を変更、請求を認容し2016万円の支払いを命じた。
判例全文
line
1月22日 ワイナリー案内看板の著作物性事件B(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 被告であるワイン製造販売会社と契約して被告の経営するワイナリーの案内看板を制作設置していた広告看板制作会社(原告)が、被告がのちに別会社に依頼して制作させた同様の案内看板に使われた図柄は、自らが持つ当初の看板の図柄の著作権を侵害するものだとして、損害賠償金605万円余を請求した事件の控訴審。別訴の13年12月17日控訴審判決とは看板の場所の異なる、13年7月2日一審判決の事件。
 裁判所は別訴事件同様、図柄の著作物性も一審被告の不法行為責任も認められないとして、一審判決を維持し、控訴を棄却した。
判例全文
line
1月23日 商標“長浜家”侵害事件(2)
   福岡高裁/判決・控訴棄却
 福岡市中央区長浜地区のラーメン店「元祖ラーメン長浜家」が、近隣の同名の店に対して、商標権を侵害された等として店名の使用差し止めと約1300万円の賠償を求めた事件の控訴審。一審福岡地裁は原告の請求を棄却したが原告が控訴した。
 福岡高裁は一審同様、両者が交わした覚書によって類似した商標の使用、近隣での使用を認めたと言えるとして、控訴を棄却した。

line
1月27日 NTTコムへの発信者情報開示請求事件
   東京地裁/判決・請求認容
 芸能活動を行い、インターネット上にブログを開設して記事を掲載していた原告が、ネット上のあるブログに自分の記事を転載されて著作権を侵害された上、自分の名誉感情を甚だしく害されたとして、当該ブログ発信者に損害賠償請求するため、発信者のIPアドレスを管理するNTTコミュニケーションズ(被告)に対して、その住所・氏名・メールアドレスの情報を開示するよう求めた事件。
 裁判は、適法引用か否か、名誉感情を害するか否か等で争われたが、裁判所は適法引用には当たらず原告の著作権は侵害されており、名誉感情侵害の明白性について検討するまでもないとして、被告に対して発信者の情報を開示するよう命じた。
判例全文
line
2月7日 「生命の實相」復刻出版事件B
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 日本教文社(原告)が、財団法人である生長の家社会事業団(被告)に対し、出版使用許諾契約に基づく著作物利用権の確認を求めた事件。別訴で原告が被告に出版権設定契約を受けたとして確認を求めた事件は、一審請求棄却(平成23年3月4日)、二審控訴棄却(24年1月31日)となっている。
 裁判所は、別訴との二重訴訟だという被告側の主張は退けたが、本件における被告の契約更新拒絶は有効と判断して、原告の請求を棄却した。
判例全文
line
2月19日 “自動車部品の表”著作物性事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 プラスチック自動車部品についての書籍の著者である原告が、同じく自動車用のプラスチック部品についての書籍を刊行した著者と発行元会社、発売元出版社(被告ら)に対して、被告書籍は原告書籍に掲載された14個の表の著作権および著作者人格権を侵害している等と主張して、合計334万円の賠償金支払いと、被告書籍の複製等差し止め、指定告知文の掲載を求めた事件の控訴審。一審東京地裁は図表の著作物性を否定し、請求を棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁も一審の判断を支持し、控訴を棄却した。
判例全文
line
2月27日 ワイナリー案内看板の広告契約事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 広告看板製作会社(原告)が、ワイン製造販売会社(被告)に対して、原告の設置した工作物に被告の看板広告を5年間掲載して料金を支払い、双方に異議がなければ6年目以降も自動更新するという広告掲載契約を交わしたにもかかわらず、契約通りに料金が支払われなかったとして、1005万円余の支払いを求めた事件。
 裁判所は、更新の際における取付時料金支払い合意の有無や、外税方式の支払い合意の有無について検討し、被告による債務不履行を認めて、315万円の支払いを命じた。
判例全文
line
3月4日 古賀市長の宗教団体元幹部報道事件(3)
   最高裁(三小)/決定・上告棄却(確定)
 週刊朝日の記事で名誉を傷つけられたとして、福岡県古賀市の市長が発行元の朝日新聞出版などに1000万円の損害賠償金支払いなどを求めた事件。一審福岡地裁は名誉毀損を認め朝日新聞出版に200万円の支払いを命じたが、二審福岡高裁は一審判決を取り消し請求を棄却した。
 最高裁第3小法廷は市長の上告を退け、二審の判決が確定した。

line
3月4日 「ストリートビュー」プライバシー権侵害事件(3)
   最高裁(三小)/決定・上告棄却(確定)
 グーグルの「ストリートビュー」で下着などの洗濯物を撮影公開され、プライバシーを侵害されたとして、福岡市の女性が損害賠償を求めた事件で、最高裁第3小法廷は女性の上告を退ける決定をした。一審福岡地裁はベランダに掛けてある洗濯物らしきものが何であるかは分からず、個人を特定するにいたらないとしてプライバシー権侵害を認めず、二審福岡高裁も一審判決を維持していた。

line
3月6日 商標“南京町”侵害事件
   大阪地裁/判決・請求棄却(控訴)
 神戸市の中華街「南京町」の商標権を保有する南京町商店街振興組合が、「南京町」を含む商品名の中華麺を製造する業者に商標権を侵害されたとして、1650万円の損害賠償を求めた事件。
 裁判所は、商品名の表記は標準的な字体であって、「町」の字に曲がりを加えた特徴的字体の組合の商標とは似ていないと判断、「南京町」は長年使用されてきた一般的な名称であるから、組合の商標が持つ特徴的な字体で表した場合のみ商標権があるとして、組合の請求を棄却した。
判例全文
line
3月12日 バックアップソフトの著作権侵害事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 CD、DVD、BDなどへのデータ書き込みからレーベル印刷までを自動で行う装置「ディスクパブリッシャー」を制御するソフトウエアを、一審被告ソフトウエア開発業者から開発委託され、製作納入した一審原告ソフトウエア開発会社が、そののち自社で開発販売したソフトウエアを被告会社により著作権侵害等と主張され、被告会社の差し止め請求権の不存在の確認を求めた事件の控訴審。一審東京地裁は原告会社の主張を認めたが、被告会社が控訴した。
 知財高裁も一審同様、著作権侵害性、不正競争行為性を否定して、控訴を棄却した。
判例全文
line
3月14日 トラベル管理ソフト「旅行業システムSP」事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 原告会社に吸収合併される前の訴外会社(旧原告会社)が著作権を有するデータベース部分(原告DB)を含む旅行業者向けシステム「旅行業システムSP」に関し、その開発を担当した旧原告会社の社員であった被告Y2、Y3、Y4、Y5、Y6らが、旧原告会社を退社後、被告Y1とともに被告会社を設立または同社に入社して、検索及び行程作成業務用データベース(被告DB)を含む旅行業者向けシステムを製作販売したのは、原告DBの著作権を侵害するものであるとして、被告DBの複製、翻案、頒布、公衆送信の差し止めと収録媒体の廃棄、および損害賠償金9億1037万円余の支払いを求めた事件。
 裁判所は、原告DBの著作物性を認め、被告DBが原告DBに依拠して作成された複製物ないし翻案物と認めて、被告に対し、被告DBの複製、頒布、公衆送信の差し止めと収録媒体の廃棄、および損害賠償金1億1215万円余の支払いを求めた。
判例全文
line
3月14日 ソフトバンクBBへの発信者情報開示請求事件
   東京地裁/判決・請求認容
 2013年10月22日、25日の事件と同じく、シナノ企画が著作権・著作者人格権を有する映像が「ニコニコ動画」に改変され無断でアップロードされているとして、プロバイダ制限責任法に基づき、シナノ企画が、発信者が利用した電気通信事業会社ソフトバンクBBに発信者の情報開示を求めた事件。
 裁判所は映像の著作物性、投稿映像の権利侵害を認め、ソフトバンクBBに発信者情報の開示を命じた。
判例全文
line
3月25日 業務管理ソフトの著作者人格権侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 「BSS−PACK」という統合業務管理パッケージのソフトウエア商品に含まれるプログラムの著作権を有する原告会社が、被告会社が同プログラムのソースコードの記述を変更し、「ISS−PACK」という名称を付し原告名を表示せずに同ソフトウエア商品を販売し、原告の著作者人格権を侵害したとして、被告に対し、著作者名の表示、日経新聞紙面への謝罪文掲載、160万円の損害賠償金支払い等を請求した事件。
 裁判所は、原告プログラムの著作物性を認めず、著作者人格権侵害を否定して、原告の請求を棄却した。
判例全文
line
3月26日 商標“遠山の金さん”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 被告映画会社は「遠山の金さん」の文字を標準文字として表した商標を登録出願し、平成15年8月15日に登録された。原告パチンコゲーム機器製造販売会社らは、本件商標は周知著名な歴史上の人物遠山景元を容易に認識させ商標法4条1項七号に該当すると主張して、特許庁に無効審判請求した。特許庁がそれに対して請求不成立の審決をしたため、原告が審決取り消しを求めた事件。
 知財高裁は、江戸時代後期の江戸町奉行・遠山左衛門尉景元(金四郎)をモデルとした人物が登場する歌舞伎、映画、舞台、テレビ、漫画等を分析し、歴史上の人物と一般人の認識する主人公である架空の人物とを区別、審決の認定判断に誤りはないとして、原告の請求を棄却した。原被告間では、原告の商標「名奉行金さん」に対する被告による登録無効審決請求事件や、著作権侵害訴訟事件等、別訴の争いがある。
判例全文
line
3月27日 劇画「子連れ狼」実写映画化事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 映画製作会社(原告)が、ライセンスビジネス会社(被告)に対し、原告が劇画「子連れ狼」原作の実写映画化権を取得したとして、その確認を求め、被告が本件原作の独占利用権を持っているとして実写映画等を製作する原告の行為を被告のその独占利用権を侵害するものであると告知したことは、不正競争行為に当たるとして、告知・流布の差し止めを求めた事件の控訴審。一審東京地裁は、原告、原作者、原作者から原作の著作権譲渡を受けた会社、および最初に原作者から実写映画化権を取得した会社の4者が、原作を実写映画化するための契約を締結したと認め、原告が実写映画化権を有することを確認し、告知・流布の差し止めを命じた。
 控訴審も一審原告が平成24年1月16日から26年4月19日までの間、本件実写映画化権を獲得したことを認め、一審の判断を維持して、控訴を棄却した。
判例全文
line
4月17日 子供椅子のデザイン類似事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 ノルウェーの家具製造販売会社および工芸デザイン権利保有会社が、被告家具会社に対し、被告の製造販売する家具の形態が原告らの製造等に係るTRIPP TRAPPという椅子の形態に酷似するとして、著作権侵害・不正競争行為により、製造販売の差止め、損害賠償金の支払い、謝罪広告の掲載を求めた事件。
 裁判所は、この椅子のデザインは著作権法の保護を受ける著作物に当たらないとし、形態において取引者需要者が全体的に類似のものとして受け取る恐れがあるとは認められないとして、原告らの請求を棄却した。
判例全文
line
4月18日 ジャズCD原盤製作契約事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 ジャズ歌手(一審原告)の歌唱をレコード製作販売会社(一審被告)がレコーディングするに際して、レコーディング費用には一審原告が一審被告に支払った370万円を充てるという合意のもとに製作されたCDをめぐって、原告が被告に対し、(1)原告がこのCDについてのレコード製作者の権利を有することの確認、(2)本件マスターCDの引き渡し、(3)原告が立て替えた伴奏代金20万円の支払い、を求めた事件の控訴審。一審東京地裁は原告の主張を(1)(2)(3)とも認容したが、被告が控訴した。
 知財高裁は、レコード製作者の判断を含めて原審の判断を維持し、控訴を棄却した。
判例全文
line
4月22日 教育事業者雑誌模倣事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 教育出版物の発行などを手がける一審原告会社が、同業の一審被告会社と、原告会社から被告会社へ転職した一審被告人に対して、(1)被告らに背信的引き抜き行為があったとして7137万円余の損害賠償金支払いと原告等に対する接触等の禁止を、(2)被告会社の発行する簿記検定試験受験誌は原告発行の簿記検定試験受験誌が切り離し式暗記カードをつけていることを模倣しているから編集著作物の侵害であるとして、458万円余の損害賠償金支払いと出版販売の差し止めを求めた事件の控訴審。一審東京地裁は、違法な引き抜き行為があったとは認められないとして(1)の請求を、また原告雑誌の編集著作物性ないし編集著作物侵害を否定して(2)の請求を、ともに棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁は、原告誌の暗記カードに編集著作物性は認めたが、侵害性は否定、他はすべて原審の判断を維持して請求を棄却した。
判例全文
line
4月23日 DVD「四季の山野草と高山植物」事件(2)
   知財高裁/判決・控訴一部認容、一部棄却、附帯控訴認容、新請求棄却
 本訴において、フリーカメラマン(一審原告)が、デジタルコンテンツ製作販売会社(一審被告)に対して、被告がその販売するDVD商品「virtual trip 花 Flowers四季の山野草と高山植物」に原告に無断で原告の撮影した風景動画を複製頒布したとして、映像の削除と損害賠償金225万円の支払いを求め、反訴において、被告が、原告が製作委嘱契約に違反して同一機会に撮影した映像を第三者に販売したことを理由に当契約を解除したとして、契約に基づき被告がこれらの映像の著作権を有することの確認と、これらを収録した素材の引渡し、既払金153万円余の返還を求めた事件の控訴審。
 一審東京地裁は、本訴に関して、映像削除請求は不適法として退け、風景動画映像の収録は著作権侵害と認めて被告に23万円余の支払いを命じ、反訴に関しては、原告が第三者に販売した動画映像の著作権を被告が有することを認め、これら素材の被告への引き渡しと既払金153万円余の返還を原告に命じた。原被告双方が控訴した。
 知財高裁は、本訴に関しては、原告は風景動画映像の複製頒布を許諾していたと判断して原審の被告への支払判決を取消し、反訴に関しては、被告が動画映像の著作権を有することを認めて素材の引き渡しは命じたが、解約の結果、既払金の返却を求めることはできないとして、返還判決を取り消した。
判例全文
line
4月24日 自動接触角計プログラム侵害事件
   東京地裁/判決・本訴請求一部認容、一部棄却、反訴請求棄却(控訴)
 水滴の接触角度を自動計測する装置をめぐって、理化学機器の開発設計製造会社(原告会社)と、その原告会社を退職した二人の従業員(被告a、b)、彼らが設立あるいは入社した測定機器企画設計製造会社(被告会社A)、および各種機械装置開発製造会社(被告会社B)とが、著作権侵害性や営業秘密管理性を争った事件。原告プログラムを翻案したものとされる被告製品の旧バージョンは、被告会社Aが製造販売し、新バージョンは被告会社Aが製造販売、被告会社Bも販売した。
 旧バージョンに対する訴訟、新バージョンに対する追訴訟、被告らによる反訴請求(不当訴訟による損害賠償請求等)があり、複数の争点で争われたが、裁判所は結論として、旧バージョンの被告製品についてだけ複製権(又は翻案権)侵害を認め、営業秘密管理性は否定、不正競争行為性は認めなかった。
判例全文
line
4月30日 パチンコ「CR松方弘樹の名奉行金さん」事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 テレビ番組「遠山の金さん」のうち3話の著作権と、「遠山の金さん」の商標権を持つ映画会社東映(原告)が、パチンコ機「CR松方弘樹の名奉行金さん」を製造販売していた遊技機器製造販売会社に対して、著作権侵害、商標権侵害による部品提供差し止めを求め、また、東映から著作権・商標権の独占的使用許諾・再許諾を受けた会社らと連帯して、賠償金合計19億8千万円の支払いを求めた事件。被告会社は俳優の事務所との権利処理はしていたが、映像に関する著作権処理はしていなかった。
 裁判所は著作権侵害・商標権侵害は認めたが、差し止めの必要性はないとし、損害額合計およそ7億5千万円の支払いを被告らに命じた。
判例全文
line
5月21日 “意見書”の概要事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 福島県会津若松市背あぶり山周辺での風力発電施設「会津若松ウインドファーム(仮称)」建設に関して、風力発電専門会社(被告)が県に提出した環境影響評価書の中に、環境保護NPO法人(原告)が提出した意見書の内容を表現を改変して掲載したのは著作権および著作者人格権侵害であるとして、原告が福島県と被告会社に評価書の回収と200万円余の損賠賠償金支払いを求めた事件の控訴審。1審東京地裁は原告の主張する氏名表示権、同一性保持権、翻案権および出版権の侵害を認めず請求棄却したが、原告が控訴した。
 裁判所は、一審同様、意見書の著作物性は認めたが、原告(控訴人)の著作者性、著作権者性を否定して控訴を棄却した。
判例全文
line
5月27日 猫の写真の看板事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 写真家(原告)が、百貨店の店舗内に服飾品製造販売会社が設置した、猫の写真を多数並べて貼りつけた看板に、自分の撮影した猫の写真等が使用されていたことについて、販売会社には著作権および著作者人格権侵害があり、百貨店には販売会社の行為を幇助し看板の設置場所を漫然と提供した過失があるとして、被告らに対して損害金1億2千万円余の支払いを求めた事件。被告会社は複製権侵害と著作者人格権侵害については争わなかった。
 裁判所は販売会社の翻案権侵害および百貨店の侵害行為幇助や管理義務違反を認めず、販売会社に対し、著作権(複製権)侵害と著作者人格権侵害による損害額等292万円の支払いを命じた。
判例全文
line
5月30日 絵画の鑑定証書事件B
   東京地裁/判決・請求棄却
 2010年に原審で遺族側一部勝訴、知財高裁で引用が認められて遺族側逆転敗訴となった絵画の鑑定証書事件に引き続き、故人である別の画家の絵画作品につき、その相続人である著作権継承者らが、裏面にその絵画の複製を添付した鑑定証書は著作権侵害であるとして、作成した美術品展覧販売会社に、鑑定書作成頒布の差し止めと、賠償金508万円余の支払いを求めた事件。
 裁判所は、本件行為が複製であると認めた上で、鑑定証書への添付は法32条1項の引用が適用できると判断して原告の請求を棄却し、上記別件訴訟における知財高裁の判断を踏襲する形になった。
判例全文
line
6月4日 さくらインターネットへの発信者情報開示請求事件
   東京地裁/判決・請求認容
 外国語教材の開発・販売を行とする会社(原告)が、当該ウェブサイトに掲載されたタイトルと説明は、原告と競争関係にある当該サイト管理者が原告の営業上の信用を害するため虚偽の事実を記載したものであって、この掲載は不正競争に該当し人格権を侵害することは明らかであるとして、当該サイト管理者に侵害予防請求又は損害賠償請求をするために、プロバイダ責任制限法に基づき、レンタルサーバサービスを提供する法人である被告に発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は権利侵害の明白性の有無を検討して、人格権侵害は明らかであると判断し、原告の請求は正当であるとして、被告に発信者情報の開示を命じた。
判例全文
line
6月12日 ソースコードの著作権譲渡事件
   大阪地裁/判決・請求棄却
 書籍や印刷物を企画・編集・製作・販売する会社(原告)が、プログラム制作者(被告)に、原告が出版する参考書をベースにしたテストを自動的に作成するソフトウエアの開発を委託、制作されたソフトウエアを受け取った。その後も改訂、新版ごとに契約して成果を受け取っていたが、被告の制作業務停止に伴い、ソースコードの引渡しを求めたところ被告が応じなかったため、債務不履行があるとして、損害賠償金の支払いを求めた事件。
 裁判所は被告が本件ソースコードの譲渡・引渡しに合意していたとは認められないとして、原告の主張を退けた。
判例全文
line
6月12日 ニンテンドーDSソフトのコピー機(マジコン)事件B(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却(上告・上告受理申立)
 
判例全文
line
6月25日 KDDIへの発信者情報開示請求事件E
   東京地裁/判決・請求認容
 レコード製作会社である原告らが、氏名不詳者によって原告らが著作権を有するレコードが無断で複製され、ファイル交換ソフト・グヌーテラを利用して送信可能化されたことにより著作権を侵害されたとして、インターネット接続プロバイダ事業を行なっているKDDIに対して、プロバイダ責任制限法に基づき、当該氏名不詳者の発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は、契約者の意思によらず送信可能化された可能性もあるから契約者が法所定の「発信者」に該当するとは限らないという被告の主張を退け、発信者該当性を肯定し、著作権侵害を認めて、被告に対し、インターネットに接続していた当該氏名不詳者の情報を開示するよう命じた。
判例全文
line
6月25日 地上波番組ネット配信事件(米)
   米連邦最高裁判所/判決・取消
 アメリカのネット企業Aereoが地上波のテレビ電波を受信し、番組をインターネット経由で利用者に有料で配信しているのは著作権侵害に当たるとして、主要テレビ各社がネット企業を訴えていた事件で、連邦最高裁判所は著作権侵害を認め、ネット企業に敗訴の判決を下した。
 アメリカ版まねきTV事件とも言われるこの裁判で、一審二審ではAereoの事業は個人の番組視聴や録画を手助けするサービスに過ぎないとして、テレビ局側が敗訴していたが、最高裁判断は9人の判事の6対3の裁決でテレビ局側の勝訴となった。

line
6月26日 キャバクラのピアノ演奏事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 日本音楽著作権協会(JASRAC)が、協会の管理する楽曲をキャバクラ店がピアノで生演奏し、一部ではカラオケ装置を使って歌唱するなどしているのは著作権侵害だとして、キャバクラ3店を経営する3社と、その親会社に対して、演奏等の差し止めと損害金合計約1900万円または利得金合計約1600万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は3店舗における生演奏および1店舗におけるカラオケ演奏等に著作権侵害を認め、演奏等の差し止めと損害額等合計約1570万円の支払いを命じたが、親会社については著作権侵害主体性を否定した。
判例全文
line
6月26日 フランス「反アマゾン法」事件
   フランス上院/法案可決
 フランス上院は、国内の小売書店を保護するための措置として、米アマゾンなどの大手インターネット小売り業者が書籍を無料配送することを禁ずる法律を可決した。この法律は「反アマゾン法」とも呼ばれ「文化の保護」を理由に米ネット販売大手を実質的に狙い撃ちするもの。値引きは商品を書店で受け取る場合に限られる。同法律はすでに下院で全会一致で可決されており、まもなく成立する見通しという。

line


 

日本ユニ著作権センター TOPページへ