裁判の記録 line
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2005年
(平成17年)
[7月〜12月]
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7月1日 『植民地朝鮮の日本人』の記念文集引用事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 岩波新書『植民地朝鮮の日本人』に、小学校の記念文集が誤った趣旨で引用されたのは著作者人格権(同一性保持権)の侵害にあたるとして、文集の編集責任者ら3人が岩波書店と著者に損害賠償などを求めた訴訟で、東京地裁は請求を棄却する判決を言い渡した。
 高部真規子裁判長は「新書では文集中にある卒業生の文章の一部を引用しただけで、創作性のない部分を利用しており、同一性保持権を侵害したとはいえない」と述べた。
判例全文
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7月7日 平沢勝栄衆議院議員への名誉毀損事件(週刊新潮)(2)
   東京高裁/判決・取消
 平沢勝栄議員が「週刊新潮」の記事で名誉を傷つけられたとして、新潮社などに1億円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めた訴訟の控訴審判決が東京高裁であった。
 浜野惺裁判長は「情報の入手先が一切明らかにされておらず、記事に根拠があったかどうか分からない」と述べ、平沢議員の請求を棄却した一審・東京地裁の判決を取消し、新潮社などに計3000万円の支払いを命じる判決を言い渡した。謝罪広告の請求は退けた。

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7月11日 「ルドルフ・バレンチノ」商標権事件C(3)
   最高裁(二小)/判決・上告棄却
 ハリウッド無声映画の大スター、ルドルフ・バレンチノの名前を商標登録した鎌倉市の会社「松下スペースプロデュース」と、イタリアの高級ブランド「バレンチノ」の商標権を持っていたオランダの商標管理会社との間で、商標登録の有効性が争われた訴訟の上告審判決があった。最高裁第二小法廷は松下側の上告を棄却、バレンチノ側の勝訴が確定した。
判例全文
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7月12日 商号“セコム”不正競争事件
   東京地裁/判決・請求認容
 防犯、防火、防災など警備保障を行う会社「セコム」が、「セコム防災設備」という名前で類似の商品を売られ損害を受けたとして、商品を売った男性AとBそれぞれに対して、商号セコムの使用禁止と300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は原告側の請求を認め、被告側に商号の使用禁止と各自300万円の支払いを命じた。
判例全文
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7月12日 筋トレ理論名「初動負荷」の無断使用事件
   大阪地裁/判決・請求棄却(控訴)
 鳥取市のスポーツトレーナーが、自ら考案したトレーニング理論「初動負荷」の名称を雑誌に無断で使われたとして、ゴルフダイジェスト社などに慰謝料1670万円の支払いを求めた訴訟で、大阪地裁はトレーナーの請求を棄却する判決を言い渡した。
判例全文
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7月12日 鹿砦社社長の名誉棄損事件(刑)
   神戸地検特別刑事部/逮捕
 パチスロ機製造会社の役員やプロ野球の元球団職員を、出版物やインターネットで中傷したとして、神戸地検は西宮市の出版社「鹿砦社」社長を名誉棄損容疑で逮捕した。役員の私生活に触れたり、虚偽の記事を載せて名誉を棄損した疑い。

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7月13日 石原知事「フランス語は国際語として失格」発言事件
   東京地裁/提訴
 石原知事が「フランス語は数を勘定できず、国際語として失格」などと発言したのは名誉棄損に当るとして、都内のフランス語学校長やフランス語研究者ら21人が、石原知事を相手に、新聞への謝罪広告と計1000万円の慰謝料を求めて東京地裁に提訴した。
 原告側は「フランス語は数を数えられ、国際機関や多数の国で公用語として使われている。虚偽の発言で使用者や研究者の名誉を傷つけ、学習者の意欲をそぐことで語学校の業務を妨害した」と批判した。

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7月14日 「新しい歴史教科書をつくる会」書籍の廃棄処分事件(3)
   最高裁(一小)/判決・破棄差戻し
 船橋市立西図書館の司書が「新しい歴史教科書をつくる会」や関係者の著作などを処分したことが違法かどうかが争われた訴訟で、最高裁第一小法廷は「公立図書館は住民のほか著者にとっても公的な場で、著者には思想や意見を伝えるという法的に保護される利益がある」との判断を示し、二審・東京高裁判決を破棄、審理を同高裁に差戻した。
 一審・東京地裁は「司書が個人的な好き嫌いの判断で大量の蔵書を破棄したのは、市に対する違法行為だが、著者との関係で違法となることはない」「蔵書をどう扱うかは原則として市の自由裁量」などとして原告側の請求を棄却。二審・東京高裁も「購入された書籍の閲覧方法などに不適切な点があっても、著者の法的な権利や利益に侵害があったとは言えない」として控訴を棄却していた。
判例全文
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7月14日 慰安婦法廷番組の改変事件(2)
   東京高裁/準備書面提出
 NHKの番組が意図に反する内容に変更されたとして、主催団体の「『戦争と女性への暴力』日本ネットワーク」がNHKと制作会社などに慰謝料を求めた訴訟の控訴審で、NHKは東京高裁に準備書面を提出した。
 その中で、番組制作の過程を説明したうえで「自主的に行ったもので、政治家などの圧力によって改変されたという事実はない」と主張した。

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7月19日 中学教諭の不正ソフト販売事件(刑)
   京都府警宇治署/逮捕
 インターネットのオークションで不正にコピーしたソフトを販売したとして、宇治署は著作権法違反の疑いで高松市の中学校教諭を逮捕した。
 教諭はジャストシステムが著作権を持つワープロソフト「一太郎2005スペシャルパック」などを複製したCD-R約400枚、約40万円相当を販売した。

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7月20日 マトリョーシカ人形イラストの無断使用事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 自分の創作した人形のデザインを無断で手提げ鞄に使用され、著作権を侵害されたとして、グラフィックデザイナーの男性が製造販売会社に約147万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めた訴訟で、東京地裁は原告の請求を認め、被告側に約21万円の支払いを命じた。
判例全文
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7月20日 「日本のシンドラー」の妻への名誉棄損事件(2)
   東京高裁/和解
 第二次大戦中、ナチスの迫害から逃れようとしたユダヤ人にビザを発給して約6000人の命を救い、「日本のシンドラー」と呼ばれた元外交官、杉原千畝氏の評伝をめぐる名誉棄損訴訟の和解が成立した。清水書院側が杉原氏の遺族に50万円を支払う。

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7月22日 商標“自由学園”侵害事件(3)
   最高裁(二小)/判決・破棄差戻し
 キリスト教の精神を取り入れた教育理念で知られる「自由学園」(東京都)が、「国際自由学園」という専修学校を運営する学校法人「神戸創志学園」(神戸市)を相手に、神戸側の商標登録を認めた特許庁の審決の取消しを求めた訴訟の上告審判決があった。最高裁第二小法廷は一審・東京地裁が「全国の学生に周知された名前ではない」として自由学園の主張を退けた判決を破棄し、審理を知財高裁に差戻した。
判例全文
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7月27日 福岡一家殺害報道事件(講談社)
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 写真週刊誌「フライデー」の記事をめぐり、殺害された松本千加さんの実兄が「犯人であるかのような記事を掲載され、名誉を傷つけられた」として、講談社側に3300万円の損害賠償などを求めた訴訟で、東京地裁は880万円の賠償と、判決の結論部分をフライデー誌上に掲載することを講談社側に命じた。

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7月28日 食玩フィギュアの著作物性事件(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却(確定)
 フルタ製菓が製造・販売する菓子類のおまけとなる各種フィギュア(チョコエッグ、妖怪シリーズ他)の模型原型を製造した海洋堂は、「菓子の製造数量を過少報告し、未払いのロイヤルティがある」とフルタ製菓を訴えていたが、その訴訟の控訴審。高裁は、「妖怪フィギュアの模型原型は応用美術に該当する」との判断を示し、ロイヤルティ及び約定違約金合計約1億6000万円の支払いを命じた原審を支持し、控訴請求を棄却した。
判例全文
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8月4日 商標“白い恋人”侵害事件
   札幌地裁/和解
 北海道の土産として知られる「白い恋人」を販売する石屋製菓が、雑貨卸業「小六」に「白い恋人」の商標登録の抹消を求めた訴訟は、石屋製菓が小六から商標を譲り受け、商品開発に協力することで和解が成立した。

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8月5日 「沖縄ノート」の“集団自決”名誉棄損事件
   大阪地裁/提訴
 太平洋戦争の沖縄戦で住民に「集団自決」を命令した、などと虚偽の事実を書かれて名誉を傷つけられたとして、大阪府在住の元軍人と遺族が、『沖縄ノート』の著者と岩波書店を相手に、総額2000万円の慰謝料と出版差止めを求める訴訟を起こした。
 訴えたのは集団自決当時、座間味島の守備隊長だったAさん(88)と、渡嘉敷島の守備隊長・故Bさんの弟。Aさんらは集団自決は住民の意思によるもので、生存者らが戦後、遺族年金を得るために「軍の命令だった」と証言したのが真相と主張している。

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8月5日 『いない いない ばあ』酷似出版事件
   東京地裁/和解
 絵本『いない いない ばあ』の作者と絵本画家が「酷似した絵本を出版され、著作権を侵害された」として、学習研究社に販売差止めや約2100万円の損害賠償を求めた訴訟は和解が成立した。和解内容は明らかにされていない。争いになった本は『はじめてのあかちゃんあそびえほん・いないいないばあ』。作者側は題名や内容が酷似していると主張していた。

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8月10日 「5年間ワックス不要」表示事件(2)
   知財高裁/判決・取消(上告)
 
判例全文
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8月10日 銘菓「ひよ子」立体商標登録取消事件
   特許庁/審決・請求棄却
 福岡市の老舗製菓会社が販売する銘菓「ひよ子」の立体商標登録を認めたのは不当として、同じ福岡市の製菓会社「二鶴堂」が登録の取消しを求めていたが、特許庁は請求を退けた。立体商標とは、ファストフード店の店先の人形や飲食店のカニの看板など、立体的形状のもの。

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8月12日 日刊ゲンダイvs日本テレビ名誉棄損事件
   東京地裁/提訴
 夕刊紙「日刊ゲンダイ」の虚偽の記事で名誉を傷つけられたとして、日本テレビは日刊現代に1100万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求める訴訟を起こした。6月17日付の貴乃花親方の記事は「貴 TV出演料1000万円」の見出しで、「金で買った視聴率という言い方がピッタリだ」などと報じた。

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8月25日 死刑囚手記事件
   東京地裁/判決・請求一部却下、一部棄却(控訴)
 強盗殺人事件で死刑判決を言い渡された原告が、自分の書いた著書『タイム・リミット魔の時間帯―その1−』や肖像写真を無断で引用し、テレビ番組を制作・報道したのは、著作権、肖像権、プライバシー権を侵害するとして、被告BとCに対し約1000万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は、原告は被告らに明示ないし黙示の承諾を与えていたとして、原告の請求を棄却した。
判例全文
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8月29日 福岡一家殺害報道事件(新潮社)
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 一家殺害事件をめぐる「週刊新潮」の記事で犯人扱いされたとして、殺害された主婦の実兄夫妻が、新潮社などに5500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は新潮社側に330万円の支払いを命じた。

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8月30日 ケーブルテレビの再送信使用料事件
 (銚子テレビ放送/成田ケーブルテレビ/行田ケーブルテレビ)(2)
   知財高裁/判決・変更
 成田ケーブルテレビ、銚子テレビ、行田ケーブルテレビが、テレビ番組等を再送信するに当たり著作物使用許諾契約に基づいた支払いをしていないと、著作権管理団体である日本脚本家連盟、日本シナリオ作家協会、日本音楽著作権協会、日本芸能実演家団体協議会(以下、芸団協という)、日本文芸家協会の5団体が訴えた事件である。一審では、テレビ各社毎の別個の事件であったが、高裁では併合されて審議された。
 一審で芸団協だけが敗訴していたが、「補償金」支払いの契約条項について、高裁は実演家、放送事業者、有線放送事業者の三者間で結ぶ契約に合理性を認め、原審を改め有効とした。また被告らの「同時再送信は放送事業者に許諾した放送の許諾に含まれ、著作物の新たな利用には当たらないとし、訴えた5団体から改めて許諾を得る必要はない」という主張は認めず控訴請求を棄却し、原判決を変更して、使用料計算表に基づき、テレビ3社にそれぞれ使用料・補償金の支払いを命じた。
判例全文
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8月30日 楽曲の使用料事件(ケーブルテレビ3社)(2)
   知財高裁/判決・変更(上告)
 ケーブルテレビが他のテレビ局などから受信、同時再送信する放送をめぐり、JASRACが利用契約を結ばずに音楽著作物を利用されたとして、成田ケーブルテレビなど3社に使用差止めと損害金の支払いを求めた訴訟の控訴審判決があった。
 中野哲弘裁判長は、JASRACの請求を棄却した一審・東京地裁判決を変更、地上波アナログ、BSアナログ、BSデジタル放送を除くCS放送などの同時再送信の全番組で、使用されている楽曲約9200曲の使用差止めと約835万円の支払いを成田ケーブルなど2社に命じた。別の1社には約292万円の支払いのみを命じた。
判例全文
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8月30日 俳優養成教材への小説無断使用事件
   東京地裁/提訴
 自分の小説が俳優養成学校の教材として無断で使用され、著作権を侵害されたとして、脚本家の伴一彦さんが養成学校の講師を務める演出家らに550万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。男女の恋愛心理を電話の会話だけで描写した伴さんの小説集『ラヴ・コール』の主要なセリフを使用した台本を教材として用いたというもの。

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8月31日 前青森県知事のセクハラ報道事件(週刊新潮)
   東京地裁/判決・請求棄却
 前青森県知事が、辞任のきっかけとなった「週刊新潮」の記事をめぐり「虚偽の事実を掲載され、名誉を傷つけられた」として、新潮社に5000万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めた訴訟で、東京地裁は前知事の請求をすべて棄却した。

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8月31日 伊東美咲さんらへの名誉棄損事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 タレントの伊東美咲さんらがコアマガジンの雑誌で名誉を傷つけられたとして、同社などに約3800万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は伊東さん、名倉潤さん、安倍麻美さんについて一人当たり11万円を支払うよう命じた。

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9月8日 ヌーブラの不正競争事件
   大阪地裁/判決・請求棄却(控訴)
 
判例全文
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9月9日 「キューピー」著作権侵害事件D(ローズオニール)
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 「キューピー」人形の著作権には、ローズ・オニール(1944年4月6日没)の著作に係るもののほか、ジョセフ・カラスの著作に係るものがある。1947年及び1962年にローズ・オニール遺産財団の遺産管理人が、ジョセフ・カラスにローズ・オニールの著作権を15年の期間限定で譲渡契約を交わしていた。このジョセフ・カラスの相続人より著作権譲渡を受けたアメリカの会社から日本における著作権を譲渡されたという会社が、キャラクター・ビジネスを行うローズオニール キューピー・インターナショナル社のキューピー関連の許諾行為が著作権侵害だと、1000万円の損害賠償請求で訴えた。裁判所は、日本での権利行使は契約日(平成17年3月)以降にしか及ばないので、訴えた会社が主張する侵害行為はそれ以前であって、会社の著作権被害は認められず、権利濫用として許されない請求であるとして、棄却した。
判例全文
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9月12日 偽ヤフー「フィッシング」事件(刑)
   東京地裁/判決・有罪
 インターネット情報検索の最大手「ヤフー・ジャパン」に似せた偽ホームページを開設し、個人情報を盗む「フィッシング」行為をしたとして、著作権法違反と不正アクセス禁止法違反の罪に問われた元会社員に、東京地裁は懲役1年10月、執行猶予4年の判決を言い渡した。

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9月15日 自衛隊オリジナル商品「撃」事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 
判例全文
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9月15日 共産党vsフジテレビ“北朝鮮拉致番組”事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却
 
判例全文
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9月16日 岡山大の違法コピー事件
   岡山地裁/証拠保全申請
 岡山大がコンピューターソフトの違法コピーをした疑いがあるとして、コンピューターソフトの著作権保護団体(本部ワシントン)の会員企業2社が、岡山地裁に証拠保全を申請、同大学で使用している一部のパソコンに措置が取られた。

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9月16日 水戸黄門のイラスト事件
   水戸地裁/提訴
 2001年に発行された冊子に提供した水戸黄門のイラストが、その後も無断で水戸市の観光パンフレットなどで使われているとして、同市のイラストレーターが市や冊子を編集した会社などに、イラストの使用差止めや1450万円の損害賠償などを求める訴訟を起こした。

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9月21日 『脳内革命』の著者への名誉棄損事件
   東京高裁/和解
 ベストセラー『脳内革命』シリーズの著者らが、「週刊文春」の12回にわたるキャンペーン記事で名誉を傷つけられたとして、文藝春秋などに計9億1960万円の損害賠償を求めた訴訟は和解が成立した。著者が企画して開業した健康増進施設の広告記事を、今年末までに同誌に無料で掲載するという条件。
 一審・東京地裁判決は大半の記述について名誉棄損が成立すると判断。違法性を認め、文芸春秋側に計660万円の支払いを命じたが、これに対し文藝春秋側が控訴していた。

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9月27日 「街の人」肖像権侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(確定)
 無断で撮影された写真をインターネット上のサイトに掲載されたとして、東京都内の30歳代の女性が、サイトを開設している財団法人「日本ファッション協会」に330万円の賠償を求めた訴訟の判決があり、石井浩裁判長は「無断掲載は肖像権の侵害」と述べ、慰謝料など35万円の支払いを被告側に命じた。
判例全文
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9月28日 易学書の著作権侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 年度毎の「神聖館開運歴」や「運勢暦」を発行する(株)フォーチューンの代表取締役であり、著者でもあるAが、以前、同社の従業員であったBが記し、高島易断総本家(株)から出版した『平成十六年高島本暦』によって著作権、編集著作権を侵害されたとして、Bと高島易断総本家に書籍の販売停止と約1518万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は原告の請求を棄却した。
 AとBはともに易者であり、両書における内容の構成、配列、記述の同一性と類似性が問われたが、清水節裁判長はAの請求を認めなかった。
判例全文
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9月28日 石原知事「ババァ」発言事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却
 首都圏に住む女性113人が石原慎太郎・東京都知事を相手に「女性への差別的な発言で名誉を傷つけられた」として、全国紙への謝罪広告掲載などを求めた訴訟の控訴審判決が東京高裁であった。石川善則裁判長は請求を棄却した一審・東京地裁判決を支持。「原告個人の権利が侵害されたとは認められない」と述べ、原告側の控訴を棄却した。一方、知事発言を批判した一審の判決理由も維持した。

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9月30日 「一太郎」特許事件(2)
   知財高裁/判決・取消
 ジャストシステムの「一太郎」「花子」に特許を侵害されたとして、松下電器産業が両ソフトの製造販売差止めなどを求めた訴訟の控訴審判決が知財高裁であり、篠原勝美裁判長はジャストシステム側の逆転勝訴の判決を言い渡した。
 両ソフトに搭載された「バルーンヘルプ」機能が、松下のワープロ用技術の特許を侵害しているかどうかが争われた訴訟。一審・東京地裁判決は松下側の主張を認め、両ソフトの製造・販売の中止と製品の廃棄を命じた。これに対しジャスト側は「到底承服できない」として控訴していた。
判例全文
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10月5日 「アルカイダ」報道事件
   東京地裁/提訴
 埼玉県に住むバングラデシュ人の男性と、男性の経営する会社が「アルカイダ関係者を支援した疑いがあると事実に反する報道をされ、精神的苦痛を受けた」などとして、日本テレビと共同通信社を相手に、それぞれ1100万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求める訴えを東京地裁に起こした。
 男性は95年に来日。98年から国際電話用プリペイドカードなどの販売会社を経営してきた。昨年、電磁的公正証書原本不実記録などの疑いで逮捕され、不起訴処分となったが、在留資格のない外国人2人を雇っていたとして出入国管理法違反の疑いで再び逮捕され、罰金30万円の略式命令を受けた。
 一連の事件で、日本テレビは「男性が偽造プリペイドカードの密売であげた利益がテロリストに流れた疑いがある」、共同通信は「実態の分からない10億円の入金がある」などと報じた。

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10月6日 ネット記事の見出し複製事件(2)
   知財高裁/判決・変更
 インターネット上の記事の見出しを別のサイトに無断で使われたとして、読売新聞社がサイト運営会社「デジタルアライアンス」に計2480万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決があった。塚原朋一裁判長は読売側の請求を全面的に棄却した一審・東京地裁判決を変更、「無断かつ営利目的で見出しを使い、社会的に許される限度を超えている」としてデ社の不法行為を認め、約24万円の損害賠償を命じた。
 著作権侵害については一審同様、「訴訟で問題となった見出しには創作性がない」としたが、「ニュースの見出しは創作性を発揮する余地は少ないが、表現次第では創作性を認める余地がある」とも指摘した。
判例全文
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10月7日 ネット掲示板の中傷事件(動物病院)(3)
   最高裁(二小)/決定・上告棄却
 「2ちゃんねる」の書き込みで名誉を傷つけられたとして、東京都内の動物病院と経営者の獣医師が2ちゃんねるの管理人に500万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第二小法廷は管理人の上告を棄却する決定をした。管理人に400万円の支払いと書き込みの削除を命じた一・二審判決が確定した。

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10月12日 パチスロ機の特許侵害事件(2)
   知財高裁/判決・取消
 
判例全文
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10月13日 NHK記者の証言拒否事件
   新潟地裁/決定・認容(抗告)
 NHKの記者が民事裁判の尋問で取材源に関する証言を拒否したことについて、新潟地裁(大工強裁判官)は証言拒絶を正当と認める決定をした。取材源秘匿の正当性について正面から司法判断が出たのは、記者の証言拒絶を認めた79年の札幌高裁決定以来、26年ぶり。

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10月13日 ネットオークションの著作権侵害事件
   東京地裁/提訴
 横浜市が税金滞納者から差し押さえた絵画をインターネットオークションで売買する際に、画家の許可を得ずに作品の画像を掲載したのは著作権侵害に当たるとして、著作権管理会社「美術著作権センター」が横浜市に掲載差止めと約17万円の支払いを求める訴訟を起こした。

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10月13日 薬品の「原価セール」事件(3)
   最高裁(一小)/決定・上告棄却
 仕入れ価格をチラシに表示した「原価セール」は不正競争防止法違反として、大正製薬がドラッグストア「ダイコク」に表示の差止めや損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第一小法廷は大正製薬の上告を退ける決定をした。大正製薬敗訴の一、二審判決が確定した。

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10月14日 住基ネット・プライバシー侵害事件(福岡)
   福岡地裁/判決・請求棄却(控訴)
 住基ネットは憲法13条で保障されたプライバシー権を侵害するとして、福岡県に住む24人が国と同県、ネットを管理する財団法人に個人情報の削除と一人当たり22万円の慰謝料を求めた訴訟で、福岡地裁は「住基ネットに権利侵害の危険性はなく合憲」として原告の請求を棄却した。
判例全文
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10月18日 「裸婦画撤去」報道事件
   京都地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 弁護士会館に飾られた裸婦画をめぐり「週刊新潮」の記事で「取り外しを要求した」などと事実と違うことを書かれ名誉を傷つけられたとして、京都の女性弁護士が新潮社に約1100万円の慰謝料と謝罪文の掲載を求めた訴訟で、京都地裁の中村哲裁判長は「取材結果と違う事実を、あたかも真実であるかのように記載した名誉棄損行為」とし、同社に330万円の支払いを命じた。
判例全文
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10月18日 大河ドラマ「武蔵」類似事件(3)
   最高裁(三小)/決定・上告棄却
 平成15年のNHK大河ドラマ「武蔵」と故黒澤明監督の映画「七人の侍」がそっくりだとして、監督の長男らがNHK側に損害賠償などを求めた訴訟で、最高裁第三小法廷は長男側の上告を棄却する決定をした。長男側敗訴の一、二審判決が確定した。

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10月19日 「武富士」の言論抑圧事件(同時代社)(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却
 消費者金融「武富士」を批判した『武富士の闇を暴く』を出版した同時代社と執筆した弁護士3人を相手に、武富士が損害賠償請求訴訟を起こしたのに対し、弁護士側が「不当な提訴」として武富士と元会長に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決があった。
 石川善則裁判長は「本の大部分は真実で、武富士は批判的な言論を抑圧する意図で訴訟を起こした」と述べ、武富士側に計480万円の支払いを命じた一審・東京地裁判決を支持し、武富士側の控訴を棄却した。

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10月20日 「死を招く女」名誉棄損事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 「週刊文春」の「死を招く女」の記事で名誉を傷つけられたとして、旅館経営者だった女性が文藝春秋に1億1000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。
 宇田川基裁判長は「取材内容は断片的で裏付けがなく、真実の証明がない。記事は興味本位で、取材も安易だった」と述べ、文藝春秋に770万円の賠償を命じた。

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10月24日 マンションの大容量テレビ番組録画装置事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 民放5局の1週間分のテレビ番組を録画し、マンション内の世帯が好きな時間に番組の配信を受けられる装置は著作権法違反だとして、大阪の民放5社が装置の販売差止めを求めた訴訟の判決が大阪地裁であった。
 山田知司裁判長は「装置が販売されれば、放送事業者の著作隣接権の侵害を引き起こす」として、近畿2府4県での同装置の販売差止めを命じた。
判例全文
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10月25日 取締役会議事録等HP公開事件(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却
 (株)ダスキンが、本来非公開であるべきトラブル対策のために作成を求めた弁護士名義の意見書と取締役会議事録を、株主で元従業員がHPに公開した行為は、名誉、情報プライバシー、信用の毀損であり、著作権侵害とする事件の控訴審。高裁は、名誉、プライバシー、著作権等の侵害という根拠に依らず、みだりに公表されることがない文書が公表された無形的損害についての損害賠償命令として、計110万円の支払いを命じた一審判決を支持し、控訴請求を棄却した。
判例全文
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10月26日 「ドン・キホーテ」採用差別事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 「従業員を出身高校の偏差値を基準に採用している」などとする雑誌「フライデー」の記事で社会的評価を低下させられたとして、量販店「ドン・キホーテ」が講談社に1億1000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があり、野山宏裁判長は「記事は真実と認められる」として請求を棄却した。

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10月27日 「超時空要塞マクロス」の標章事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 テレビアニメ「超時空要塞マクロス」の著作権を持つ「竜の子プロダクション」が、アニメ映画「マクロスセブン」などを製作した「ビッグウエスト」と「バンダイビジュアル」の2社に対し、「マクロス」の表示は商品を混同させるもので不正競争防止法違反に当たるとして、6億8000万円の賠償を求めた訴訟の控訴審で、知財高裁は一審・東京地裁判決を支持、竜の子側の控訴を棄却した。
 竜の子側は「『マクロス』の表示は、不正競争防止法が予定している『商品等表示』における公益的な機能及び私益的な機能を担保しうるほど周知となった表示であるから、『商品等表示』に該当する」などと主張したが、中野哲弘裁判長は「『マクロス』が、アニメ映画の題名の一部として社会一般に知られたとしても、竜の子の商品又は営業を表示するものとして、著名、周知となったとは認められない」と判示して、主張を退けた。
判例全文
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10月27日 渡辺恒雄会長へのプライバシー侵害事件(週刊文春)
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(確定)
 読売新聞の渡辺恒雄会長が、ガウン姿でマンション5階の自室にいるところを公道から撮影され、「週刊文春」に掲載されたことがプライバシー侵害に当たるかどうかが争われた訴訟の判決で、東京地裁の貝阿弥誠裁判長は「ガウン姿の撮影はプライバシーを侵害し、違法」として、文藝春秋に200万円の賠償を命じた。出版差止めと謝罪広告掲載の請求は退けた。

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11月5日 「オールイン」差止め請求事件
   東京地裁/仮処分申請
 韓国の人気俳優イ・ビョンホンさんの主演でNHKが放送した「オールイン 運命の愛」をめぐり、原作者の盧承日さんが日本で小説とマンガを無断で出版され、著作権を侵害されたとして、NHK出版と講談社に販売差止めを求め東京地裁に仮処分を申し立てた。

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11月9日 「韓流スター」肖像権侵害事件
   ソウル中央地裁/提訴
 ペ・ヨンジュンさんら「韓流スター」5人が、出演した音楽ビデオの映像を無断で販売促進用DVDに使われ肖像権を侵害されたとして、日本の菓子メーカーのカバヤ食品(岡山市)や韓国の芸能プロダクションなど3社に対し、9億5000ウォン(約1億円)の損害賠償を求める訴えをソウル中央地裁に起こした。原告にはチェ・ジウさんやイ・ビョンホンさんも含まれている。

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11月10日 「フォーカス」の法廷内の隠し撮り事件(3)
   最高裁(一小)/判決・上告一部棄却、一部破棄差戻し
 写真やイラストを本人の承諾なしに撮影・描写して公表することが、どんな場合に違法となるかという肖像権の問題が争われた訴訟で、最高裁第一小法廷は「場所や目的、必要性などを総合的に判断して決める」との基準を初めて示した。具体的には、法廷で手錠や腰縄によって身柄を拘束されている場面については、「社会生活上、我慢をできる限度を超える」とし、写真もイラスト画も公表をともに違法とした。
 この判断は、和歌山市のカレー毒物混入事件で殺人罪などに問われた被告(一、二審で死刑、上告中)が、写真週刊誌「フォーカス」に法廷内の写真やイラスト画を掲載されたことをめぐり、「肖像権を侵害された」として新潮社側に計2200万円の賠償などを求めた訴訟の上告審判決で示された。
 新潮社に440万円の支払いを命じた二審・大阪高裁判決は、掲載された写真とイラスト画すべてを違法としていたが、第一小法廷は今回示した判断に基づき、イラスト画の一部について「違法とは言えない」として審理を同高裁に差戻した。
 二審判決のうち、写真についての違法性を認めて、新潮社に220万円の支払いを命じた部分は確定。差戻し審では、イラスト画についての賠償額を減額する方向で審理し直されることになる。
判例全文
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11月10日 ゲームソフト複製競売事件(刑)
   千葉県警旭署/書類送検
 無断でコピーしたパソコン用ゲームソフトをインターネットのオークションで販売したとして、千葉県警旭署は旭市の男子高校生を著作権法違反の疑いで書類送検した。
 高校生は成人向けゲームソフトをハードディスクにコピーし、ネット競売で川口市の男性ら3人に計6万6300円で販売した疑い。高校生のディスクには約60本のゲームが入っていた。

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11月10日 読売新聞社への信用毀損事件(週刊現代)
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 巨人戦のチケット販売に不公正があったという「週刊現代」の記事で社会的評価を傷つけられたとして、読売新聞社が講談社や元旅行代理店社員に5500万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めた訴訟の判決で、東京地裁は講談社に110万円の支払いを命じた。
 判決によると、同誌2004年9月18日号は「実名告発 もうひとつの裏金疑惑『巨人戦チケットは独禁法違反』で訴えられた」との見出しで、読売新聞のスポーツ事業部が旅行代理店に巨人戦のチケットを販売する際、協賛金の支払いを要求したり、売れない座席との抱合せ販売をしたりし、独禁法に触れるとする記事を掲載した。
 佐藤陽一裁判長は「抱合せ販売は事業部と旅行代理店との交渉の結果で、協賛金支払いの強要も真実とは認められない」と指摘。「記事は読売新聞の社会的評価を低下させた」との判断を示した。

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11月11日 飯島勲首相秘書官への名誉棄損事件(週刊新潮)
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 「週刊新潮」の虚偽の記事で名誉を傷つけられたとして、首相秘書官の飯島勲氏が新潮社に計1100万円の損害賠償と謝罪文の掲載を求めた訴訟で、東京地裁は同社に330万円の支払いを命じた。滝沢泉裁判長は「論評の前提となっている事実が、重要な部分で真実とは認められず、真実と信じた相当の理由もない」と述べた。
 問題となったのは、2004年5月23日号の「首相秘書官の『謀略リーク』に破れた『福田』」と題する記事。福田康夫元官房長官の年金未納問題をめぐり、「未納情報を週刊誌にリークしたのは飯島氏だった」などと報じた。

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11月15日 海外向けテレビ番組録画サービス事件(2)
   知財高裁/決定・抗告棄却
 「エフエービジュン社」が、テレビパソコンに映像を録画し、録画されたファイルを海外の友人、知人等のパソコンに転送できる「録画ネットサービス」を行うのは複製権の違反であるとして、日本放送協会が停止を求め、その請求を認めた東京地裁の仮処分決定を不服として、エフ社が抗告した訴えで、知財高裁は棄却する決定をした。
 抗告人は「海外在留邦人の知る権利を侵害する」などと主張したが、知財高裁は認めなかった。
判例全文
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11月17日 図表と説明文の著作物性事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(確定)
 蒸気システム制御機器メーカーの英国法人「スパイラックス・サーコリミテッド」が、自社が創案した圧力制御機器などの図表、説明文に類似したものを使用され、著作権を侵害されたとして、同種メーカーの「テイエルブイ社」に対し、図表、説明文の複写、印刷、頒布の禁止と200万円の損害賠償、謝罪広告の掲載を求めた訴訟で、東京地裁は説明文の一部に著作物性を認めたものの、「技術的知見やアイデアは著作権の保護範囲とはならない」として、請求を退けた。
判例全文
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11月17日 中村元法相への名誉棄損事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 写真週刊誌「フラッシュ」の記事で名誉を傷つけられたとして、中村正三郎元法相らが光文社に約1100万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めた訴訟で、東京地裁は同社に対し、110万円を元法相に支払うよう命じた。
 問題となったのは、2003年9月16日号掲載の「違法と糾弾された中村元法相『石垣島リゾート開発』」と題する記事で、違法な土地の売買契約を進めたとするもの。
判例全文
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11月21日 『植民地朝鮮の日本人』の記念文集引用事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 岩波新書『植民地朝鮮の日本人』に、小学校の記念文集『鉄石と千草 京城三坂小学校記念文集』(昭和58年刊)掲載の文章が誤った趣旨で引用されたのは著作者人格権(同一性保持権)の侵害に当たるとして、文集の編集責任者らが岩波書店と編著者に損害賠償と謝罪広告の掲載を求めた訴訟で、知財高裁は控訴をいずれも棄却した。
 原告側は控訴審において、編集著作物における著作者の権利の有無について争ったが、判決は「利用の態様は、文集を構成する個々の著作物の一部を個別に取り出して引用するものであるから、編集著作者の権利を侵害するものとはいえない」と指摘した。
判例全文
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11月24日 「新しい歴史教科書をつくる会」書籍の廃棄処分事件(2)
   東京高裁/判決・変更(上告)
 船橋市立西図書館の司書が「新しい歴史教科書をつくる会」や関係者の著作などを処分したことをめぐり、著者らが「人格的利益を侵害された」として、市に損害賠償を求めた訴訟の差戻し審判決があった。
 最高裁が7月、違法性を認めて東京高裁に差戻し、賠償額が焦点となっていたが、浜野惺裁判長は「廃棄されたのと同じ本が再び図書館に備えられている」などとして、一人当たり3000円の賠償を同市に命じた。
 一人当たり300万円の賠償を求めていた著者側は「3000円では図書を棄てたことへの懲罰にならず、安すぎる」と、再上告を検討することを明らかにした。
判例全文
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11月24日 類似「正露丸」販売事件
   大阪地裁/提訴
 「ラッパのマーク」のCMで知られる大幸薬品(吹田市)の胃腸薬「正露丸」に極めて似た包装で同様の薬を販売するのは不正競争防止法に違反するとして、同社が和泉薬品工業(和泉市)を相手に、販売差止めや約6400万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。
 訴状によると、和泉薬品は瓶詰めタイプの胃腸薬製品の包装箱正面に、大幸薬品製と同様のオレンジ色の背景に赤字で「正露丸」と表示。含有成分などが若干異なり、大幸側のラッパの代わりにひょうたんマークがついている。大幸薬品側は「類似性は明らかで、製品の混同を生じる恐れがあり、販売は違法だ」と主張している。

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11月28日 ニセ「ヤフー」の虚偽ニュース事件(刑)
   警視庁生活経済課/逮捕
 国内最大手のインターネット検索サイト「ヤフー」のニュースサイトを真似たホームページに、共同通信の配信を装った虚偽のニュースが掲載された事件で、警視庁生活経済課と愛宕署は長崎市の元プログラマーを著作権法違反(公衆送信権の侵害)の疑いで逮捕した。
 元プログラマーは、ヤフーのニュースサイトの画面やプログラムを自宅のパソコンにコピーして取り込んだ上で、共同通信が配信したと装った「中国軍が沖縄に侵攻」という虚偽のニュース記事を掲載して、ネットで公開。ヤフーの著作権を侵害した疑い。記事には約6万7000件のアクセスがあった。

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11月28日 アイコラのネット掲載事件(刑)
   警視庁目黒署/逮捕
 タレントの顔写真にヌード画像を組み合わせた合成写真「アイコラ」(アイドルコラージュ)をインターネットのサイトに掲載したとして、警視庁目黒署はサイト管理者の会社員と、投稿者3人を名誉棄損容疑で逮捕した。ネットに掲載されたアイコラの摘発は警視庁として初めて。
 4人は2004年8月から2005年2月、会社員が管理するアイコラ専門サイトに、人気タレント新山千春さんを使った猥褻な合成写真を掲載した疑い。新山さん側が告訴していた。

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12月5日 ノースリーブ型カットソー事件(2)
   知財高裁/判決・変更
 
判例全文
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12月5日 入試問題集の著作権侵害事件(英俊社)
   東京地裁/仮処分申請
 作家のねじめ正一さん、脚本家の倉本聡さん、児童文学者の灰谷健次郎さんら26人の著作者が、近畿地方の有名中学、高校の受験生向け入試過去問題集(通称・赤本シリーズ)を出版している「英俊社」に「作品を無断で使用され、著作権を侵害された」として、過去問題集の印刷や出版、販売の差止めとインターネット上での問題集の送信停止を求める仮処分を申立て、併せて約260万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。
 同社は近畿地方の有名中学校120校の学校別入試対策用「赤本シリーズ」を出版。バックナンバーのネット販売も行っている。
 文学作品の入試過去問題集への無断使用をめぐっては2005年4月、大学受験生用の「赤本」で12人の作家らが著作権を侵害されたとして、京都府の「世界思想社教学社」に賠償請求訴訟を起こしている。

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12月5日 慰安婦法廷番組の改変事件(2)
   東京高裁/口頭弁論
 旧日本軍による性暴力を法律の専門家を含む民間人が裁く「女性国際戦犯法廷」を取上げたNHKの番組が、放送直前に改変された問題をめぐる訴訟の口頭弁論があった。
 当時のNHK放送総局長が証人として出廷し、政治家の圧力はなかったと述べるとともに、放送前の中川昭一衆議院議員との面会を否定し、従来のNHK側の見解に沿った証言をした。

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12月6日 「新しい歴史教科書をつくる会」書籍の廃棄処分事件(3)
   最高裁/上告
 船橋市立西図書館の司書が「新しい歴史教科書をつくる会」や関係者の著作を処分したことをめぐる訴訟で、著者側は、原告一人につき3000円の支払いを同市に命じた東京高裁の差戻し審判決を不服として、最高裁に再び上告した。

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12月7日 カーナビ用ソフトの無断複製事件(刑)
   鳥取署/逮捕
 カーナビ用ソフトウエアを複製し、インターネット・オークションを通じて販売したとして、鳥取署は著作権法違反の疑いで横浜市の会社役員とホテル従業員を逮捕した。
 二人は共謀して住宅地図会社「ゼンリン」のカーナビ用ソフトを無断で複製したCD−Rをネットオークションに出品、販売した疑い。容疑者らが代金の振込先に指定した銀行口座には、5月から8月にかけて約1000回、計約300万円の入金があった。

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12月8日 “NOVAうさぎ”商品化事件
   大阪地裁/判決・請求棄却
 テレビCMで人気のキャラクター“NOVAうさぎ”の商品化権をめぐり、衣料用繊維製品を販売するサクラインターナショナル(株)ら2社が、契約の債務不履行によって損害を被ったとして、“NOVAうさぎ”の商標権、著作権を持つ(株)ノヴァに対し、約9億1000万円の損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は原告側の請求を退ける判決を言い渡した。
 原告側はTシャツ等にキャラクターを使用して販売することを目的に契約交渉を行い、主要部分については口頭による合意が成立していたと主張し、3年分の逸失利益を算定して請求したが、判決は契約が不成立と認定、原告側の請求を認めなかった。
判例全文
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12月8日 写真利用委託契約終了後の著作権侵害事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 広告・宣伝業を目的とする(株)JALブランドコミュニケーションとの間で、自分の撮った写真を第三者に使用させるための受委託契約を締結していた写真家が、契約期間終了後も許可なく第三者が発行するパンフレットに写真を利用させ、被害を被ったとして、約600万円の損害賠償とパンフレットの頒布差止めや廃棄を求めた訴訟で、大阪地裁は写真家の請求を一部認め、被告側に約6万円の支払いとパンフレットの廃棄を命じる判決を言い渡した。
判例全文
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12月12日 谷垣財務相への名誉棄損事件(週刊文春)
   東京地裁/提訴
 谷垣禎一財務相は「週刊文春」12月8日号の記事「中国人女性『買春』疑惑」で名誉を著しく傷つけられたとして、文藝春秋社に対し謝罪広告の掲載と2200万円の損害賠償の支払いを求める訴えを起こした。
 財務相は「記事の内容はまったく事実無根であり、虚偽と臆測によって作られたもので名誉を著しく棄損するだけでなく、国政に対する不信をいたずらに煽った」と批判している。一方、「週刊文春」の鈴木洋嗣編集長は「記事は事実で、百パーセントの自信がある。大臣が説明責任も果たせぬまま訴訟を起こすのは、訴権の濫用にあたるのではないか」とのコメントを出した。

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12月12日 筋弛緩剤事件被告への名誉棄損事件
   仙台地裁/判決・請求棄却
 仙台市の北陵クリニックの筋弛緩剤混入事件で殺人罪などに問われた被告が、「週刊朝日」の記事で名誉を傷つけられたとして、朝日新聞社と同誌のインタビューに応じた東北大大学院教授に約1000万円の損害賠償を求めた訴訟で、仙台地裁は請求を棄却する判決を言い渡した。小野洋一裁判長は「記事の扱いは公正中立性を欠いておらず、内容も教授の見解を公表したもので、違法性はない」と指摘した。
 問題となったのは、「週刊朝日」2004年4月2日号の「被告はウソをついている」の記事。同クリニックの実質的経営者だった教授がインタビューに答える形で、無罪を主張する被告の法廷供述は事実と違うなどと指摘していた。

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12月12日 人工衛星設計プログラムの職務著作事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 宇宙開発事業団(現宇宙航空研究開発機構)の職員が、ロケットや人工衛星の制御データ解析プログラムについて著作権、著作者人格権が自分にあることの確認を求めて、同事業団と関連業務を行うコンピュータソフト開発会社を訴えた。裁判所は、「各プログラムは職務著作として、事業団がそれらの著作者となる」と認め、職員が求めた「二次的著作物と位置づけたプログラムの原著作者の権利が自分にある」という主張も理由がないと退け、請求を棄却した。
判例全文
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12月15日 類似アイディア家電の不正競争・取扱説明書事件(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却
 
判例全文
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12月15日 ワープロソフト「一太郎」等の無断複製事件(刑)
   警視庁岐阜県警/逮捕
 コンピュータソフトを違法に複製し、インターネット上のサイトで売りさばいていたとして、警視庁と岐阜県警の合同捜査本部は、男女7人を著作権法違反の疑いで逮捕した。
 容疑者らは「激安ソフト直売」などと謳ったサイトを開設。「一太郎2005」など、約500種類のソフトを違法にコピーし、約2億円を売り上げていたと警視庁はみている。

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12月15日 株式情報誌の著作権侵害事件
   東京地裁/仮処分申請
 ダイヤモンド社が創刊した情報誌「『株』データブック全銘柄版」に、東洋経済新報社が9月に発行した「会社四季報秋号」と酷似した表現があり、著作権侵害に当たるとして、東洋経済は「データブック」の販売差止めを求める仮処分を東京地裁に申請した。

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12月16日 毎日新聞の輸血ミス報道事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 病院の輸血ミスをめぐる記事で名誉を傷つけられたとして、医療法人「気象会」が毎日新聞と執筆した記者に計2000万円の損害賠償などを求めた訴訟で、大阪地裁の横山光雄裁判長は「輸血ミスと患者の死亡に因果関係があるかのような印象を与えた」として、被告側に100万円の支払いを命じた。

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12月16日 「5年間ワックス不要」表示事件(3)
   最高裁(二小)/決定・上告棄却
 ワックス製造会社「ウイルソン」が、「5年間ノーワックス」を宣伝文句にした他社製品は虚偽表示に当たるとして、不正競争防止法に基づき、販売元の「中央自動車工業」を相手に表示差止めなどを求めた訴訟で、最高裁第二小法廷は原告側の上告を退ける決定をした。原告側逆転敗訴の二審・知財高裁判決が確定した。

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12月16日 出会い系サイトの顔写真使用事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 出会い系サイトの広告に顔写真を無断で使われ精神的苦痛を受けたとして、神奈川県の20代の女性が戸田市の情報サービス会社などに550万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は120万円の支払いを命じる判決を言い渡した。井上哲男裁判官は肖像権の侵害を認め、「女性は今後控えている就職において不利益を被るのではないかと不安にかられた」と指摘した。
判例全文
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12月20日 商標“CARTIER”侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(確定)
 有名ブランド「カルティエ」の腕時計にダイヤを埋め込むなどの加工品の販売は、商標権の侵害だとして「カルティエ・インターナショナル・ビー・ブイ」が装飾品販売店「とらや」(東京都中央区)に2億円の損害賠償などを求めた訴訟の判決で、東京地裁は「とらや」に製造、販売の中止と製品の廃棄、約3500万円の賠償を命じた。
 高部真規子裁判長は「とらやの製品は、原告製品の品質にも影響を及ぼす改造を加えており、原告の商標の品質保証機能などを害した」とした。
判例全文
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12月21日 商標“本当にあったHな話”侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(確定)
 成人男子向けの漫画雑誌「本当にあったHな話」を発行する「ぶんか社」が、同様のコンセプトで「本当に出会ったHな話」を発行したのは商標権の侵害であるとして、「竹書房」に対し、雑誌の販売差止めと約2875万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は竹書房に約338万円の支払いを命じた。
 裁判は「あった」と「出会った」の類似混同が争われたが、「外観、呼称、観念のいずれも類似しており、誤認混同を生じる」として、原告側の請求を認めた。
判例全文
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12月21日 「ダスキン」への名誉棄損事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 清掃関連サービス大手「ダスキン」の特別背任事件をめぐって、朝日新聞と「週刊朝日」が掲載した記事について、同社の元会長が名誉を傷つけられたとして、朝日新聞社に1650万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めた訴訟で、東京地裁は元会長の請求を棄却する判決を言い渡した。
 判決は、記事のほとんどについて真実と認定し、新聞、雑誌記事のいずれも不法行為は成立しないと結論づけた。

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12月22日 商標“産業と経済”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 
判例全文
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12月22日 TV番組挿入曲の二次使用事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(一部確定、一部控訴・控訴後取下)
 テレビ番組に使用される楽曲を作曲、編曲し、静岡放送に20年余にわたって提供してきた音楽家が、許諾契約に反して楽曲を使用し、他局へ譲渡したとして、静岡放送に対し、著作権侵害に基づく5億円の損害賠償と著作権の確認を求めた訴訟で、東京地裁は著作権の存在は認めたものの、賠償請求を退ける判決を言い渡した。
 音楽家は「自分の提供する楽曲の使用許諾は、静岡県内における『ローカル番組放送一回分の使用』であるのに、静岡放送は数次にわたって再放送し、全国放送、他局への放送権の許諾、譲渡も行った。約22年にわたり対価を受け取っていない」と主張したが、判決は「明確な契約書がないことは事実であるが、楽曲の使用について包括的な使用許諾がなされていた」と認定した。
判例全文
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12月26日 「天台宗法則文」の出版権侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 『天台宗開眼法要集』と題する書籍を出版する日本ソアー(株)が、『天台宗祈願作法手文』と題する書籍の出版によって自社の出版権を侵害されたとして、監修者の調布市、深大寺住職や出版元の四季社に対し、約5315万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は原告の請求を棄却した。
 法則文とは仏教の法要に際し、その趣旨を述べる文言。判決は「原告の主張する法則文は既に公表されている法則文を単に転記したもので、創作的な表現であるとはいえない」と判断した。
判例全文
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12月26日 講演録の複製権侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 宗教法人「ジー・エル・エー総合本部」がその創始者で、故Bの著作権の信託を遺族から受けているとして、Bの講演の録画、録音をCD−ROMに複製し、論文を電子ブック等に複製して販売するのは著作権の侵害であるとして、被告Aに対し複製物の廃棄と約1312万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は被告Aに複製物の廃棄と約11万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
判例全文
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12月27日 商標“自由学園”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求認容
 卓越した女性教育者として知られた羽仁もと子が、キリスト教の精神を取り入れて大正10年に創立した「自由学園」(東京都)が、「国際自由学園」という専修学校を運営する学校法人「神戸創志学園」(神戸市)を相手に、神戸側の登録商標を認めた特許庁の審決の取消しを求めた訴訟の差戻し審で、知財高裁は原告側の請求を認め、審決を取り消した。逆転判決となった。
 この裁判は、東京高裁で2004年8月31日に原告側の請求棄却の判決があり、これを不服として上告、最高裁第二小法廷が2005年7月22日の前判決を破棄して知財高裁に審理を差戻していた。
判例全文
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12月27日 “阪神優勝”商標事件(2)
   大阪地裁/判決・変更
 「阪神優勝」のロゴを商標登録した千葉県の男性に使用料を支払い商品を販売したが、登録が無効となり損害を受けたとする「西本靴下販売」(加古川市)が、「ロゴが使えなくなる可能性を説明しなかった」として、男性に約1200万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、大阪高裁は男性に100万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
 2005年3月の一審・神戸地裁姫路支部判決は「商標登録は無効となる危険性が常にある」として、西本靴下販売の請求を棄却していた。

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12月27日 貴乃花親方夫妻への名誉棄損事件
   東京地裁/提訴
 大相撲の貴乃花親方と妻の代理人弁護士は、2005年5月の二子山親方死去前後の報道をめぐり、講談社と新潮社に損害賠償と謝罪広告の掲載を求める訴訟を東京地裁に起こした、と発表した。請求額は「興味本位で取上げられたくない」と明かしていない。

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