判例全文 | ||
【事件名】海外向けテレビ番組録画サービス事件(2) 【年月日】平成17年11月15日 知財高裁 平成17年(ラ)第10007号 著作隣接権侵害差止仮処分決定認可決定に対する保全抗告事件 (原審・東京地裁平成16年(モ)第15793号) 決定 抗告人 有限会社エフエービジョン 同代理人弁護士 春日秀文 相手方 日本放送協会 同代理人弁護士 梅田康宏 主文 1 本件抗告を棄却する。 2 抗告費用は抗告人の負担とする。 事実及び理由 第1 抗告の趣旨 1 原決定を取り消す。 2 東京地方裁判所平成16年(ヨ)第22093号著作隣接権侵害差止仮処分命令申立事件について、同裁判所が平成16年10月7日にした仮処分決定を取り消す。 3 相手方の上記仮処分命令の申立てを却下する。 4 手続の総費用は相手方の負担とする。 第2 事案の概要 1 事案の要旨 放送事業者である相手方は、「録画ネット」という名称のサービスを営む抗告人に対し、同サービスは相手方の放送を複製し相手方の著作隣接権を侵害するものである旨主張して、同サービスによる放送の複製の差止めを求める仮処分を申し立てたところ、これを認容する仮処分決定(以下「本件仮処分決定」という。)がされた。 これに対し、抗告人が本件仮処分決定の取消しを求めて仮処分異議を申し立てたが、原審は、上記仮処分決定を認可する原決定をしたため、これを不服とする抗告人が本件抗告をした。 2 前提事実、争点及びこれに関する当事者の主張 次のとおり当審における当事者双方の主張の要点を付加するほか、原決定の「理由」欄の「第2 事案の概要」の1ないし7に記載のとおりであるから、これを引用する。 3 当審における抗告人の主張の要点 (1) 自然的観察によれば、本件放送の複製行為を行っているのは利用者であると認められるから、上記複製行為には、著作権法102条1項、30条1項が適用され、適法行為である。そうである以上、これに業者が関与したからといって、利用者の行為の法的性質が変化することはない。利用者と業者の行為が共同行為であるというためには、共同意思に基づく共同行為の分担が必要であり、言い換えれば、利用者の行為も業者の行為もそれ単独では複製行為と認められないことが必要であるから、利用者の行為がそれ単独で複製行為である以上、業者との共同行為にはなり得ない。 (2) 利用者と業者の「管理支配の程度」を比較衡量して複製主体の認定を行うという原決定の手法は不当である。このような曖昧な基準により複製主体を決定することは、利用者にとっても業者にとっても予見可能性がなく不意打ちである。また、仮に、「管理支配の程度の比較衡量」を行っても、本件の事実関係によれば、抗告人の関与は弱く、複製主体は利用者のみである。 (3) 本件サービスは、パソコンをアンテナに接続している点を除き、一般的なハウジングサービスと同一であるところ、アンテナ接続の点には何ら違法性がない。現在、市販パソコンはほとんどテレビパソコンであるから、ハウジング業者が預かったパソコンにテレビアンテナをつなぐことは、ハウジングサービスとして当然のことである。 4 抗告人の主張に対する相手方の反論 抗告人の主張は争う。 第3 当裁判所の判断 1 本件サービスの内容 当事者間に争いのない事実に疎明資料及び審尋の全趣旨を併せれば、抗告人が利用者に提供している本件サービスの内容として、次の事実が認められる。 (1) 概要 本件サービスは、抗告人が利用者ごとに1台ずつ割り当てたテレビチューナー付きのパソコン(テレビパソコン)を、抗告人事務所内にまとめて設置し、テレビアンテナを接続するなどしてテレビ放送を受信可能な状態にするとともに、各利用者がインターネットを通じてテレビパソコンを操作してテレビ放送を録画予約し、録画されたファイルを海外の自宅等のパソコンに転送できる環境を提供することにより、海外においても日本国内の放送番組を視聴することができるというものである。本件サービスの詳細な内容は、以下のとおりである。 (2) システム構成 本件サービスのシステム構成は、本件仮処分決定別紙「本件サービスのシステム構成」のとおりであり、以下の機器類によって構成されている。 ア テレビパソコン 複製機器であり、また、利用者に録画済みの動画ファイルを送信する際のサーバーである。 テレビパソコンには、基本ソフト(OS)としてリナックスがインストールされ、リナックスの配布CDに含まれているテレビ放送を録画するためのソフトウェアもインストールされている。 さらに、このテレビパソコンには、上記録画するためのソフトウェアを簡単に利用できるようにする抗告人の作成したインターフェースプログラムがインストールされている。 また、テレビパソコンには、抗告人によって、テレビパソコンをiEPG対応テレビ番組サイトと連携させて見たい番組を簡単に録画予約し、また、毎週一定の時間帯の特定の番組を反復して録画することができる機能が付加されている(甲1の2、1の14)。 各テレビパソコンは、利用者ごとに区別して管理される。 イ テレビアンテナ、ブースター、分配機 テレビアンテナにおいて受信された放送波は、画像が劣化しないようブースターで出力を高めた上、分配機を経由して、各利用者のテレビパソコンに供給される。 テレビパソコンに内蔵されたテレビチューナーのみでは、視聴に耐える影像を得ることは困難である(審尋の全趣旨)。 ウ ルーター 各テレビパソコンとインターネット回線の間に入り、相互の信号やデータの割り振りを行う機器である。 エ ホームページサーバー 本件サービスのウェブサイトである本件サイト(http://www.6ga.net/)を管理するサーバー(本件サーバー)であり、抗告人が管理している。 各利用者は、本件サイトにアクセスし、そこで認証を受けた後、各自のテレビパソコンにアクセスすることができる。 オ 監視サーバー 各テレビパソコンの起動状態を常時監視するサーバーであり、一定時間ごとに各テレビパソコンがネットワークに返答できる状態にあるか否かを監視している。 (3) 機器の設置、管理等 抗告人は、千葉県松戸市に所在する抗告人事務所において、多くのテレビパソコンをラックに入れるなどして設置し、各テレビパソコンに電源を入れ、テレビアンテナからの放送波を供給し、ハブ及びルーターを経由してインターネットに接続し、さらに、本件サーバーを管理して本件サイトを運営し、監視サーバーを管理している。 そして、抗告人は、テレビパソコンに問題が起こった場合、リセットするなどして常時作動するようにしている。 これらの機器類は、すべて抗告人の所有であり(なお、テレビパソコンについては、後記(10)参照)、抗告人が調達したものである。 (4) 録画可能な放送 抗告人が本件サービスにおいて供給しているのは、抗告人事務所の所在する千葉県松戸市において受信されたNHK2局(総合、教育)、日本テレビ、TBSテレビ、フジテレビ、テレビ朝日及びテレビ東京のアナログ地上波放送である。 抗告人事務所の所在する千葉県松戸市においては、他にBS放送、CS放送、放送大学、MXテレビ等も受信可能であるが、抗告人は、それらを本件サービスの対象とはしていない。 (5) 具体的な録画の手順 ア ログイン 利用者は、手元(海外)にあるパソコンから本件サイトにアクセスし、画面の上部に表示される「ご契約者様専用Login」ボタンをクリックし、ユーザーIDとパスワードを入力し、その下の「ログイン」ボタンをクリックする。そうすると、本件サーバーはIDについて二重にログインがされていないかなどを認証し、認証がされた場合、利用者は、利用者の手元のパソコンからテレビパソコンにログインした状態となる。 イ 録画予約 ログインすると、抗告人の作成した画面上部には、「予約」、「録画済み」、「レギュラー予約」「その他」及び「番組表リンク」のタブがあり、それぞれをクリックすると画面が切り替わる。ログイン時は、「予約」のタブをクリックした場合と同様の録画予約画面となっている。 利用者は、録画したい番組の開始日、開始時刻、終了時刻、チャンネル、メモ、画面サイズ、録画モードなどを入力し、「予約する」ボタンをクリックする。そうすると、各テレビパソコンにおいて、設定どおりの録画が自動的に行われ、番組を複製したデータファイルがハードディスクに保存される(甲1の4)。 ウ ダウンロード 利用者が「録画済み」タブをクリックすると、録画された番組の一覧が表示される。利用者がその中から自宅のパソコンにダウンロードしたいものを選択すると、「ファイルのダウンロード」のウィンドウが開き、テレビパソコンに録画したデータファイルをダウンロードすることができる(甲1の5)。 そして、保存したファイルを通常の映像ソフトで再生して視聴することができる。 利用者は、抗告人が作成した自動転送ソフトをインストールすることにより、ダウンロードを自動的に行うことも可能である(甲1の15)。 (6) 抗告人と利用者との契約内容 抗告人は、一定の台数のテレビパソコンを調達し、本件サイト上でその都度利用者を募集している。利用者は、これに応じることにより、本件サービスの利用者となることができ(その際、利用者は、テレビパソコンを「購入」した形式を採るが、実際には、後記(10)において説示のとおり、テレビパソコンの所有権が利用者に移転したとは認められない。)、利用者に割り当てられたテレビパソコンは、抗告人事務所に設置される(甲1の1、乙5)。利用者に割り当てられるテレビパソコンは、抗告人が選定、調達したテレビパソコンのみであり、市販のパソコンを購入し、それを利用して本件サービスに加入することはできない。なお、抗告人は、テレビパソコンのみの販売の申込みには応じておらず、テレビパソコンの設置場所は、抗告人が指定する事務所内に限られている(甲1の7〔Q5−9〕)。 利用者は、契約時、テレビパソコンの代金名目で一定額の金員(抗告人が調達したパソコンの仕様によって、金額が異なる。)を支払い、保守管理費用として1か月49.95米ドルを支払う(乙6、17、26)。 利用者に割り当てたテレビパソコンが故障した場合、抗告人は利用者に通知し、利用者の依頼により、無償で修理、部品交換、本体交換等を行う。ただし、抗告人は、落雷、地震、洪水、延焼、戦争等の事由でテレビパソコンが滅失、毀損した際は、その滅失等が不可抗力と認められる場合は、保管・返還義務を免除される(乙6)。 契約期間は1年間とするが、両当事者は、相手方に通知することにより、いつでも解約が可能であり、その場合、通知した翌月の末日に契約は終了する(乙6)。 利用者は、本件サービスが解約された場合、テレビパソコンの処理方法を選択することができるが、その費用は、@返却の場合、手数料50米ドルと実費送料、A権利放棄の場合、取り外し手数料、廃棄手数料合計50米ドル、B別の契約者への譲渡の場合、各種設定変更手数料として、新契約者が10米ドルを負担する、というものである(甲1の11、乙7)。 テレビパソコンのハードディスクには、抗告人が保守管理の目的で社外秘のファイル、ログなどを記録しているので、テレビパソコンを利用者に返却する際は、ハードディスクを初期化している(甲1の7〔Q7−4〕)。 (7) 抗告人の宣伝内容 本件サイトのトップページには、「録画ネット」とのサービスの名称が示され、「日本のテレビ番組がみれる!録画ネットの[テレビパソコン ハウジングサービス]なら、海外から自由にご覧いただけます。」等の記載がある(甲1の1)。 また、同サイト中にある「録画ネット ポイント整理」との項目には、「録画ネットとは・・・」として「海外からでも、自由に日本のテレビ番組を鑑賞するためのサービスです。DSLやケーブル等の高速インターネット回線・・・とお手元のパソコン、そして弊社のサービス(テレビパソコンの販売&その運用保守)を組み合わせることにより、これを実現しております。」等の記載があり、「関東近郊の全7チャンネルが見られる:」として「NHK2局(総合・教育)と民放キー局5局(日本テレビ・TBSテレビ・フジテレビ・テレビ朝日・テレビ東京)の受信・録画が可能です。」との記載があり、「簡単:」として「お手元にPCとインターネットがあれば、特別な知識は必要ありません。お客様が購入し、弊社がお預かりするテレビパソコンは弊社にてセットアップします。セットアップが完了すれば、お客様はお手元のPCのブラウザーからご自分のテレビパソコンにアクセスするだけ。お手元のPCは、OSが日本語以外でも問題ありません。加えて、マッキントッシュでもご利用可能です。」と記載がされている(甲1の2)。 (8) サポート態勢 本件サイトでは、サンプルの画面を用いるなどして、録画予約の方法や録画済みの番組ファイルの転送方法などを説明している(甲1の1〜7)。 さらに、抗告人は、利用者に対し、利用者から電子メールで問い合わせがあった場合に個別に回答するなどして、本件サービスの利用方法を教示している(甲1の24)。 (9) 本件サービスの利用者数 本件サービスの利用者数は、本件仮処分決定時で約250名である(乙27)。 (10) 事実認定の補足説明 なお、抗告人は、本件サービスにおいてテレビパソコンの所有権は利用者に移転している旨主張する。しかしながら、前記認定のとおり、本件サービスにおけるテレビパソコンは、@ 抗告人の調達したものに限られるとともに、抗告人の管理下に設置され、抗告人事務所内において本件サービスの用に供することのみしか認められていない、A 故障の場合、抗告人の費用で修理を行うこととされている、B 契約終了時において、他の利用者への無償での「譲渡」という通常の取引形態では考え難い選択肢が用意されている、C 契約終了後にテレビパソコンの「返却」を受ける場合には、ハードディスクを初期化することとされている、というのである。これらの事情によれば、本件サービスにおいて、テレビパソコンを自由に使用、収益及び処分することができる権利(所有権)(民法206条)が利用者に移転しているということはできず、所有権の移転が仮装されているにすぎないというべきである。 2 被保全権利について (1) 複製行為の主体について 前記認定事実によれば、@ 本件サービスは、抗告人自身が本件サイトにおいて宣伝しているとおり、海外に居住する利用者を対象に、日本の放送番組をその複製物によって視聴させることのみを目的としたサービスである、A 本件サービスにおいては、抗告人事務所内に抗告人が設置したテレビパソコン、テレビアンテナ、ブースター、分配機、本件サーバー、ルーター、監視サーバー等多くの機器類並びにソフトウェアが、有機的に結合して1つの本件録画システムを構成しており、これらの機器類及びソフトウエアはすべて抗告人が調達した抗告人の所有物であって、抗告人は、上記システムが常時作動するように監視し、これを一体として管理している、B 本件サービスで録画可能な放送は、抗告人が設定した範囲内の放送(抗告人事務所の所在する千葉県松戸市で受信されたアナログ地上波放送)に限定されている、C 利用者は、本件サービスを利用する場合、手元にあるパソコンから、抗告人が運営する本件サイトにアクセスし、そこで認証を受けなければ、割り当てられたテレビパソコンにアクセスすることができず、アクセスした後も、本件サイト上で指示説明された手順に従って、番組の録画や録画データのダウンロードを行うものであり、抗告人は、利用者からの問い合わせに対し個別に回答するなどのサポートを行っている、というのである。これらの事情によれば、抗告人が相手方の放送に係る本件放送についての複製行為を管理していることは明らかである。 また、抗告人は、本件サイトにおいて、本件サービスが、海外に居住する利用者を対象に日本の放送番組をその複製物によって視聴させることを目的としたサービスであることを宣伝し、利用者をして本件サービスを利用させて、毎月の保守費用の名目で利益を得ているものである。 上記各事情を総合すれば、抗告人が相手方の放送に係る本件放送についての複製行為を行っているものというべきであり、抗告人の上記複製行為は、相手方が本件放送に係る音又は影像について有する著作隣接権としての複製権(著作権法98条)を侵害するものである。 (2) 抗告人の主張について ア 上記の点に関し、抗告人は、利用者の行為がそれ単独で複製行為であることを前提として、利用者と業者の行為が共同行為とはなり得ない旨主張する。 しかしながら、前記のとおり、利用者ではなく、抗告人が相手方の放送に係る本件放送についての複製行為を行っているものというべきであるから、抗告人の上記主張は、その前提を欠くものであって採用することができない。 イ また、抗告人は、本件サービスが、パソコンをアンテナ接続している点を除き、テレビパソコンのハウジングサービスにすぎないし、アンテナ接続の点には違法性がない旨主張する。 しかしながら、前記のとおり、抗告人は、有機的に結合した本件録画システムを構成する機器類及びソフトウエアをすべて自ら調達・所有すると共に、同システムを一体として管理しており、しかも、本件サービスの利用者は、抗告人の定めるアクセス方法、録画方法、ダウンロード方法に従って本件サービスを利用するものであり、抗告人に問い合わせれば個別の回答を受けられるなどのサポートを抗告人から受けているというのであるから、これらの事情に照らせば、本件サービスは、単にテレビパソコンを預かり、空調など環境を管理し、各機器類に電気を供給する等の通常のハウジングサービスの範囲をはるかに超えているといわざるを得ない。抗告人の上記主張は、採用することができない。 ウ さらに、抗告人は、本件において差止めを認めることは、利用者である海外在留邦人の知る権利を侵害するとか、ハウジング業者を利用しないでテレビパソコンを利用する者の取扱いとの関係で平等原則違反である旨主張する。 しかしながら、前記のとおり、抗告人の本件サービスにおける複製行為は、相手方の複製権を侵害しているものであるところ、海外在留邦人は、違法な本件サービスを利用しなくても、適法な手段により相手方の放送を視聴することが可能であるから、抗告人に対する差止めの事実上の効果として、利用者が本件サービスを利用して相手方の放送を視聴することができなくなったとしても、何ら利用者の知る権利の侵害となるものではないし、合理的理由のない差別的取扱いに当たるものでもない。抗告人の上記主張は、採用することができない。 エ また、抗告人は、原決定後に本件サービスにつき、SSHポートを開放しSSH接続を可能とするなどの変更を施した旨主張する。 しかしながら、抗告人が指摘する疎明資料(乙38ないし47、49)によっても、実際にそのような変更が行われたことを疎明するに足りず、他に上記事実を疎明するに足りる資料はない。なお、仮に、抗告人主張のとおりの変更があったとしても、@ 今後も、本件サービスは、海外に居住する利用者を対象に、日本の放送番組をその複製物によって視聴させることを主要な目的としたサービスであり、抗告人もそのような宣伝を続けるものと認められ、一方、利用者も、本件サービスを利用することによって、容易に日本の放送番組をその複製物によって視聴することができるからこそ本件サービスを利用するという実態に何ら変化はないと認められること、A SSH接続は利用者にとって容易なことではないから、利用者が、前記認定のアクセス方法によらず、SSH接続をした上で抗告人作成のソフトウエアを経由せずに放送番組を録画するなどの利用方法を実際に行うことは通常考え難く、本件サービスの利用者のほとんどは、従前どおり、抗告人の定めるアクセス方法、録画方法、ダウンロード方法に従って本件サービスを利用するものと認められること(審尋の全趣旨)等の事情によれば、抗告人主張の変更は、本件サービスにおける複製の主体についての前記判断に変更をもたらすものではないというべきである。 3 保全の必要性について 抗告人が、本件サービスにおいて、相手方の放送に係る本件放送を複製していることにより、相手方が本件放送に係る音又は影像について有する著作隣接権としての複製権(著作権法98条)についての侵害が日々継続的に惹起され拡大しているものであるから、この状態を放置すれば、相手方の権利の保護に欠ける事態となり、相手方に著しい損害が発生することは明らかである。したがって、本件についての保全の必要性も認められる。 4 結論 以上によれば、相手方の本件仮処分命令申立ては理由があるから、これを認容した本件仮処分決定及びこれを認可した原決定は、結論において正当なものとして、是認することができる。 よって、本件抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 三村量一 裁判官 嶋末和秀 裁判官 沖中康人 |
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