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【事件名】食玩フィギュアの著作物性事件(2) 【年月日】平成17年7月28日 大阪高裁 平成16年(ネ)第3893号 違約金等本訴請求、不当利得返還反訴請求控訴事件 (原審・大阪地裁平成15年(ワ)第10346号、平成16年(ワ)第5016号) (当審口頭弁論終結日・平成17年6月14日) 判決 控訴人(原審本訴被告・反訴原告) フルタ製菓株式会社(以下「被告」という。) 同訴訟代理人弁護士 中嶋俊作 被控訴人(原審本訴原告・反訴被告) 株式会社海洋堂(以下「原告」という。) 同訴訟代理人弁護士 水戸重之 同 荻野敦史 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は、被告の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決中、被告敗訴部分を取り消す。 2 原告の本訴請求を棄却する。 3 原告は、被告に対し、572万5048円及びこれに対する平成14年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は、第1、2審を通じ、本訴反訴とも原告の負担とする。 第2 事案の概要 1(1) 本訴 原告が、被告に対し、被告が製造販売する菓子類のおまけとなる各種のフィギュア(もともとは輪郭や人の姿の意味であるが、転じて人形や模型を指す。)の模型原型を原告が製造し、これを被告に提供するに当たり、両者の間で複数の著作権使用許諾契約を順次締結し、許諾料(ロイヤルティ)や違約金について定めていたところ、被告が原告に対し商品の製造数量について過少報告をし、また、未払いのロイヤルティがあると主張して、上記各契約に基づくロイヤルティ及び約定違約金(合計1億8011万7389円)の支払を請求した事案である。 (2) 反訴 被告が、原告に対し、前記各著作権使用許諾契約の一部について、上記各契約は、フィギュア模型原型が著作物であり、原告が著作権を有していることを前提として締結されたものであるが、実際にはフィギュア模型原型は著作物ではないから、錯誤により無効であり、また、ロイヤルティ支払規定は、ロイヤルティ率が高額に過ぎるから、公序良俗違反により無効であるなどと主張して、被告が原告に対して支払ったロイヤルティの一部(572万5048円)につき、不当利得返還を請求した事案である。 (3) 原審は、フィギュア模型原型は著作物ではないと認定したが、前記各著作権使用許諾契約が錯誤又は公序良俗違反により無効であるとはいえないとして、原告の請求を、ロイヤルティ及び約定違約金合計1億6017万8278円並びにこれに対する商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容したため、被告が本件控訴を提起した。 2 前提事実 当事者間に争いがない事実並びに各項に掲げた証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決2頁24行目から10頁24行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 3頁5行目の「製造」を「制作」と改め、4頁16行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。 「 (なお、本件契約@ないしBについては、契約書は作成されず、口頭での契約であった。)」 (2) 6頁2行目の「Cのe」を「Cのf」と、7頁1行目の「製造」を「制作」と各改める。 (3) 9頁16行目の「到達した」の次に「(同号証の2)」を加え、同18行目の「制作した物語」を「創作した小説」と、同22行目の「製造」を「制作」と、同24行目から25行目にかけての「フィギュアコレクション」を「アリス・コレクション」と各改める。 (4) 10頁6行目の「別紙」を「原判決別紙」と改め、同15行目の「到達した」の次に「(同号証の2)」を加え、同16行目の「チョコエッグ・クラッシック」を「チョコエッグ・クラシック」と改める。 3 争点 (1) 本件各契約における対象物である各種フィギュアの模型原型は著作物か。 (2) 本件各契約の違約金支払規定は、被告がフィギュア模型原型が著作物であり原告がその著作権を有しあるいは管理していると誤信していた錯誤により、無効であるか。 (3) 本件各契約の違約金支払規定は、公序良俗に違反して無効であるか。 (4) 本件契約Jは有効に成立し、また、違約金に関する合意がされたといえるか。 (5) 本件契約Mは有効に成立したか。 (6) 未払いのロイヤルティ及び違約金の額 (7) 原告の不当利得の成否及び被告の損失 第3 争点に関する当事者の主張 次のとおり付加、訂正等するほかは、原判決11頁11行目から25頁19行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。 1 12頁8行目の「製造過程」を「制作過程」と、同23行目の「上記」から同25行目末尾までを次のとおり、各改める。 「 応用美術の著作物性の判断基準は、「@実用性から分離して(独立して)、A純粋美術と同視し得る美術性を有するもの(美的鑑賞の対象となり得るもの)」というのが、現在の判例・学説の一般的な判断基準である。 本件模型原型は、芸術家集団である原告が、造形アーティストである原型師(造形師)を中心に、動物、妖怪及び童話の登場人物といった実在又は架空の生物を、独自の視点、感性、構図に基づき、高度の造形技術及び彩色技術を駆使して立体物として制作し彩色して、ある思想、感情を表現したものであり、いずれの模型原型も、観る者をして、美しさ、かわいさ、不気味さ、実物感、躍動感を感得させるに十分な美術作品である。 したがって、本件模型原型は、鑑賞用の思想・感情の創作的表現物であり、かつ、純粋美術と同視し得るだけの美術性、芸術性を有しているので、実用性とは独立して、純粋美術と同視し得る応用美術として、著作権法により保護される「美術の著作物」に該当する。」 2 13頁8行目の「本件契約M」を「本件契約HないしK、M」と改め、同行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。 「 妖怪シリーズにおけるフィギュアの模型原型は、過去の絵、文献等を忠実に立体化したものにすぎないから、著作物性を認めることができない。」 3 14頁3行目の「模型原型」の前に「フィギュア」を加え、同4行目から5行目にかけての「管理しているとの錯誤に陥っていたことを理由として、無効となるか」を「管理していると誤信していた錯誤により、無効であるか」と、同7行目から同20行目までを次のとおり、各改める。 「(1) 従来、菓子製造業者とおまけ製造業者が、おまけとなる模型原型の制作契約を締結する場合は、模型原型の制作請負契約を締結し、請負代金は1体当たり数万円から十数万円であった。 おまけ製造業者である原告のC専務取締役(以下「C」という。)は、優れた模型原型を制作しても、わずかな対価しか得ることができず、こうした状況に不満と矛盾を感じており、原告の制作した模型はアニメやディズニーのキャラクターと同等か、それ以上の価値があり、著作物であると主張できると考えていた。 そのため、Cは、被告からチョコエッグの中に入れるおまけの模型原型の制作を依頼された際に、おまけの模型原型は著作物であるから、模型原型の制作契約を、制作請負契約ではなく著作権使用許諾契約とし、対価は請負代金ではなくロイヤルティとしたい旨の申し出をした。 被告の担当者であったD常務取締役(以下「D」という。)は、その方が原告も模型原型の制作に熱心になるだろうと思い、上記申し出を受け入れ、本件各契約はロイヤルティ方式で締結されることになった(なお、CとDは、本件契約@締結の時点で、本件模型原型が著作物であると認識していた。)。 CとDは、本件模型原型が著作物であることを前提に、本件模型原型に係る著作権使用許諾契約のロイヤルティ率を、被告が東映、小学館及びサンリオ等と締結していたキャラクターの著作権使用許諾契約と同水準の2.5%と決定した。 (2) チョコエッグは、予想以上に売れたため、Cは、被告と書面で契約を交わし、ロイヤルティの算定方法も販売数量ではなく製造数量に基づくものとしたいと考えた。また、CとDは、個人的にも仲が良く、Dが本件模型原型は著作物ではないと主張することはないとしても、被告の他の取締役や従業員の中には、ロイヤルティ方式に反対している者がおり、本件模型原型が著作物ではないと主張するおそれがあったことから、契約書に、本件模型原型が著作物であること、さらにチョコエッグの外箱に「<C>KAIYODO」の表示をする義務があることを明記しようと考えた。 そこで、Cは、Dから、被告と東映、小学館及びサンリオ等とが締結していた著作権使用許諾契約の契約書写しの提供を受け、これを参考にして本件契約CないしI、KないしMの契約書を作成した。その際、上記著作権使用許諾契約の契約書写しには違約金支払規定が入れられていたため、本件契約CないしI、KないしMの契約書にも、同様に違約金支払規定が入れられた。 (3) 本件各契約の対価の水準(希望小売価格の2.5〜3%)は、他の著作権使用許諾契約と同水準という理由で定められたものであり、本件模型原型が著作物であることを前提に定められたものである。すなわち、本件模型原型が著作物でなければ、制作請負契約ではなく対価の支払方式であるとしても、対価の水準は1%以下になっていたはずである。 (4) 本件模型原型が著作物でなければ、第三者が本件模型原型のコピーを販売することを阻止できないので、被告としては、原告から本件模型原型の利用許諾を受ける価値が大幅に低下する。」 4 14頁23行目の「違約金支払規定」の次に「(少なくともロイヤルティ率1%を超える部分)」を加え、同24行目冒頭の「(2)」を「(5)」と、15頁5行目の「本件模型原型は」を「本件模型原型が」と各改め、同8行目の「法人著作として」の前に「原告は、」を加える。 5 16頁16行目の「公序良俗違反か」を「、公序良俗に違反して無効であるか」と改め、17頁5行目から6行目にかけての「違約金支払規定」の次に「(少なくともロイヤルティ率1%を超える部分)」を加え、同15行目の「鉄道運輸規定」を「鉄道運輸規程」と、18頁1行目の「54000個」を「54、000個」と、同2行目の「9種類」を「9種」と、同22行目の「D(以下「D」という。)」を「D」と各改める。 6 19頁2行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。 「 Dは、被告を退社する際、本件覚書を社外に持ち出し、このため被告は本件覚書を確認することができなかったから、被告が本件契約Jを追認したとはいえない。」 7 19頁17行目の「根拠に、」の次に「本件契約Mは、」を加え、同行目の「契約されている」を「締結された」と、同19行目の「追認されている」を「追認された」と各改める。 8 20頁4行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。 「 Dは、被告を退社する際、本件契約Mの契約書を社外に持ち出し、このため被告は本件契約Mの契約書を確認することができなかったから、被告が本件契約Mを追認したとはいえない。」 9 20頁5行目の「未払のロイヤルティ・違約金等の額」を「未払いのロイヤルティ及び違約金の額」と、22頁11行目の「1551万9168円」を「1478万0160円」と各改め、同17行目から18行目にかけての「(ただし、」から同19行目の「いない。)」までを削り、同行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。 「 その合計額は、1億8011万7389円である。」 10 25頁8行目の「被告が、」の次に「別の模型原型の制作につき、」を加える。 第4 当裁判所の判断 1 当裁判所も、原告の請求は原判決主文第1項記載の限度で理由があるものと判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正等するほか、原判決25頁21行目から60頁3行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 25頁23行目から35頁16行目までを、次のとおり改める。 「(1) 証拠により認定できる事実 前記前提事実に加え、各項に掲げた証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ア 本件模型原型の制作過程 原告は、被告との間で商品企画を検討した後、当該企画に適する模型原型の造形師を選定し、原告の専務取締役であるCと当該造形師が中心となって、模型原型のサイズ、セールスポイントとなる特徴、数等を打ち合わせる。造形師は、打合せの内容に従って、基となる画を作成し、Cが検討修正した後に、造形に取りかかる。造形師が造形した原型(造形原型)は、原告のチェックを受けた後、原告従業員の塗装担当者によって彩色される。彩色された原型が本件模型原型である。 本件模型原型をもとに、被告は外国の工場において金型を製作し、上記金型を用いてフィギュアが製造され、非熟練工を含む多数の工員により彩色される。 (甲第29号証、乙第67号証、弁論の全趣旨) イ チョコエッグ及びチョコエッグ・クラシック (ア) チョコエッグ及びチョコエッグ・クラシックは、様々な種目・科に属する実在の動物(本件契約Bの対象となった「ツチノコ」を除く。また、本件契約Aの対象となった「ニホンオオカミ」など絶滅した動物も含む。)を精巧に模した動物のフィギュアを、おまけとして卵形のチョコレートの中のカプセルに入れる商品シリーズである。 (以下、チョコエッグ(本件契約@ないしG)及びチョコエッグ・クラシック(本件契約L)に係るフィギュアを、併せて「本件動物フィギュア」という。) (乙第22ないし第29号証) (イ) チョコエッグ及びチョコエッグ・クラシックの発売に際しては、「タマゴの形をしたミルクチョコの中に青いカプセルを封入しました。カプセルの中にはリアルな動物コレクションが入っています。日本の固有種から今はもういなくなってしまった絶滅種にいたるまで様々な種類の動物たちを次々ご紹介いたします。」(本件契約@の対象であった「日本の動物コレクション@」、乙第22号証)、「フィギュアマニア垂涎の動物コレクション!動物・昆虫博物館などでも利用され、研究員もうならせるリアルな造形の本格フィギュア」(本件契約Cの対象であった「日本の動物コレクションC」、乙第25号証)、「チョコエッグに新しいシリーズが誕生。好評の日本の動物シリーズに加え、リアルなペット動物コレクションが誕生しました。身近なペットから憧れのペットまで様々な種類のペット動物たちを次々ご紹介いたします。」(本件契約Eの対象であった「ペット動物コレクション@」、乙第27号証)、「99年より発売が開始され、現在第5弾まで製品化されている『チョコエッグ日本の動物』シリーズ。今回は第1弾から第3弾に登場したラインナップの中から24種類をピックアップ、またそれだけではなく塗装色や塗装方法の変更、型自体の変更などを施したバーションアップ版として製品化しました。」(本件契約Lの対象であった「日本の動物コレクション・バージョンアップ版」、乙第29号証)などの宣伝文句を記載したパンフレットも商品と合わせて配布された。 (乙第22ないし第29号証) (ウ) 本件動物フィギュアの模型原型は、原告の従業員(造形師)であるEが、市販の動物図鑑、鳥類図鑑等に収録された絵や写真を参照しながら、本件契約@ないしG及びLにおける原告の模型原型制作債務の履行として制作し、原告従業員がこれに彩色し、原告の製品として公表されたものである。 本件動物フィギュアの模型原型は、体の各部の形状、大きさの比率、その姿勢はもとより、動物の毛並み、虫の足の突起、魚のうろこ等に至るまで、可能な限り、実際の動物と同様に立体的に表現され、色彩も、複数の色彩を細かく用い、実際の動物と同様の色、模様が付されている。 (甲第29号証、第51号証、乙第36ないし第41号証、検甲第2ないし第9号証) ウ 妖怪シリーズ (ア) 妖怪シリーズは、いわゆる百鬼夜行に示唆を得て制作されたフィギュアをおまけとして、キャンデーと共に箱詰めされる商品シリーズである。 (以下、妖怪コレクション(本件契約H、I)、総集編(本件契約J)及び妖怪根付(本件契約K)に係るフィギュアを、併せて「本件妖怪フィギュア」という。) (イ) 妖怪シリーズのうち、「妖怪コレクション」は、「昨今の京極夏彦氏の妖怪小説などに代表される妖怪ブームの中、昔の文献『百鬼夜行』の妖怪をモチーフに立体化しました。大人のコレクターを対象としたリアルで本格的なフィギュアに仕上げ、コレクション性を高めています。」(本件契約Hの対象であった「百鬼夜行T」、乙第30号証)、「話題作『妖怪コレクション』の第2弾。今回もF氏総指揮のもとリアルなフィギュア9体をリリース。河童や天狗、輪入道などの妖怪に加え、そのうち1体をシークレットにすることでミステリー性を向上。今回は通常彩色版の他に象牙風彩色版、金色彩色版を加え、コレクション性の高い商品に仕上げました。」(本件契約Iの対象であった「百鬼夜行U」、乙第31号証)などの宣伝文句を記載したパンフレットと共に、「妖怪根付」(本件契約Kの対象であった。)は、「『妖怪』をテーマにしたフィギュアコレクション。今回は江戸時代から存在する『根付け』とよばれる、いわゆるキーホルダーをモチーフにフィギュア化」(乙第32号証)などとの宣伝文句を記載したパンフレットと共に販売された。 (乙第30ないし第32号証) (ウ) 本件妖怪フィギュアの造形原型は、いずれもFが制作した。Fは、造形原型を著作物と認識しており、原告に造形原型を納入し、代金を受領するに当たり、その著作権をすべて原告に譲渡した。原告では、原告従業員がFから納入された造形原型に彩色して、模型原型として完成させた。 本件妖怪フィギュアは、主に、日本古来の伝説の妖怪をモデルとしたものである。 このうち相当部分は、江戸時代に鳥山石燕(以下「石燕」という。)が著した「画図百鬼夜行」の妖怪の絵(甲第89号証の1ないし9)を立体化し、独自に彩色したものである。 ただし、本件妖怪フィギュアは、石燕の原画を忠実に立体化したものではなく、例えば「狂骨(きょうこつ)」については、石燕の原画(甲第89号証の4)では、胴部は凹凸がなく平坦状に描かれているのに対し、本件妖怪フィギュア(甲第93号証)では、胴部全体に白い骨状の構造が浮き出ていたり、「天狗(てんぐ。百鬼夜行Uに収録のもの)」については、石燕の原画(甲第89号証の5)では、頭部と羽しか描かれていないのに対し、本件妖怪フィギュア(甲第94号証)では、全身が表現されているなど、随所に制作者独自の解釈、アレンジが加えられている。 また、本件妖怪フィギュアは、妖怪本体のほかに、制作者において独自に設定した背景ないし場面も含めて構成されている。例えば、「鎌鼬(かまいたち。百鬼夜行Tに収録のもの)」が、石地蔵の首を鎌でかき切っている場面(甲第92号証)、「河童(かっぱ。百鬼夜行Uに収録のもの)」が、水死体から「尻子玉」を抜き取っている場面(甲第96号証)などは、石燕の原画における「窮奇(かまいたち)」(甲第89号証の3)及び「河童」(同号証の7)には存在しない。 また、色彩においても、例えば、上記河童の体色は緑色で、甲羅は茶色であるなど、通常河童に彩色する場合に選択されるであろう、ありふれた彩色であるが、逆に、「人魚」(百鬼夜行Tに収録のもの)は、紫色の体色を選択している(甲第91号証)など、独特な彩色をしたものもある。 (甲第31号証、第52号証、第89号証の1ないし9、第90ないし第98号証、検甲第10ないし第12号証) エ アリス・コレクション (ア) アリス・コレクションは、ルイス・キャロルが創作した小説「不思議の国のアリスの冒険」及び「鏡の国のアリスの冒険」に使用されていた、ジョン・テニエル(以下「テニエル」という。)の挿絵を立体化し彩色したフィギュアをおまけとして、キャンデーと共に箱詰めされる商品シリーズである。 (以下、アリス・コレクション(本件契約M)に係るフィギュアを、「本件アリスフィギュア」といい、本件動物フィギュア、本件妖怪フィギュアと併せて「本件フィギュア」という。) (イ) アリス・コレクションは、「女の子ならだれもが読んだことのあるルイス・キャロル原作の不朽のファンタジー物語『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』に登場するキャラクターをそのままフィギュアにしました。フィギュアのモデルとして、原作版に使用されていたジョン・テニエルの挿絵を起用、なじみのある姿にアリスの世界観をいっそう身近に感じられます。また、特定の2種類を組み合わせると、挿絵の風景をそのまま再現したジオラマに変身、運動性を持たせることでコレクション性を高めています。」(乙第34号証)との宣伝文句を記載したパンフレットと共に発売された。 (ウ) 本件アリスフィギュアの造形原型は、いずれもGことG(以下「G」という。)が制作した。Gは、造形原型を著作物と認識しており、原告に造形原型を納入し、代金を受領するに当たり、その著作権をすべて原告に譲渡した。 原告では、原告従業員がGから納入された造形原型に彩色して、模型原型として完成させた。 テニエルの挿絵は、線画であって彩色されていないが、ハリー・シーカーや英国マクミラン出版社がこれに彩色したことがある。本件アリスフィギュアの模型原型は、テニエルの挿絵に基づき、これを忠実に立体化し彩色したものである。 (甲第32号証、第53号証、乙第3ないし第5号証、検甲第13号証) オ 以上のチョコエッグ、チョコエッグクラシック、妖怪シリーズ及びアリス・コレクションは、いずれも菓子のおまけとして、各種のフィギュアがチョコレートの中のカプセルに入れられたり、キャンデーと共に箱詰めされた商品シリーズであるが、例えば、チョコエッグ(バラのもの)では65×43×43(o)のサイズのカプセルの中にフィギュアが収納されているし、妖怪シリーズでは140×98×53(o)の箱にキャンデー4個(妖怪根付の場合は2個)と共に収納されている。このように、本件フィギュアは、被告が販売する菓子のおまけとはいっても、手のひらに載るようなものではあるがそれなりの大きさがあり、被告も、商品の販売に際してフィギュアを需要者のコレクションの対象として強力に訴えており、商品としては、菓子よりもむしろ主たる地位を占めていると評価することもできる(特に、妖怪シリーズについては、パンフレットには大きくフィギュアに関する説明がされ、その下に小さく「キャンデー入り」と記載がされている。乙第30号証)。 そして、原告は、フィギュアの製造会社として、この種のフィギュアのコレクターの間では高く評価され、根強い人気がある。 のみならず、原告所属の造形師が制作した各種フィギュア(本件フィギュアを含む。)は、ニューヨーク自然史博物館に収蔵されたり、ヴェネチア・ビエンナーレ第9回国際建築展日本館において開催された「OTAKU:人格=空間=都市」と題する展示会で展示されるなどし、国内においても、東京都写真美術館、水戸芸術館現代美術ギャラリー等の美術館において展覧会が開催されるなど、現代美術として高い評価を受けている。(甲第56ないし第78号証、第99号証、乙第74号証) (2) 以上の認定をもとに検討する。 ア 著作権法の規定 著作権法2条1項1号は、著作物を、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義し、同法10条は、「絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物」(1項4号)を著作物の例示として挙げている。一方、同法2条2項は、「この法律にいう「美術の著作物」には、美術工芸品を含むものとする。」と定めている。 イ 純粋美術と応用美術の区別 (ア) 美的創作物は、思想又は感情を創作的に表現したものであって、制作者が当該作品を専ら鑑賞の対象とする目的で制作し、かつ、一般的平均人が上記目的で制作されたものと受け取るもの(純粋美術)と、思想又は感情を創作的に表現したものであるけれども、制作者が当該作品を上記目的以外の目的で制作し、又は、一般的平均人が上記目的以外の目的で制作されたものと受け取るものに分類することができる。 いわゆる応用美術とは、後者のうちで、制作者が当該作品を実用に供される物品に応用されることを目的(以下「実用目的」という。)として制作し、又は、一般的平均人が当該作品を実用目的で制作されたものと受け取るものをいう。 (イ) 前記アのように、著作権法は、著作物の例示中に「絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物」を挙げた上で、「美術の著作物」には「美術工芸品」を含む旨を規定しているから、「美術の著作物」は、純粋美術に限定されないことは明らかである。しかし、著作権法2条2項により「美術の著作物」に該当することが明らかである一品制作の美術工芸品を除く、その他の応用美術が「美術の著作物」に該当するかどうかは、同法の条文上、必ずしも明らかではない。 (ウ) ところで、応用美術は、@純粋美術作品が実用品に応用された場合(例えば、絵画を屏風に仕立て、彫刻を実用品の模様に利用するなど)、A純粋美術の技法を実用目的のある物品に適用しながら、実用性よりも美の追求に重点を置いた一品制作の場合、B純粋美術の感覚又は技法を機械生産又は大量生産に応用した場合に分類することができる。このことに、本来、応用美術を含む工業的に大量生産される実用品の意匠は、産業の発達に寄与することを目的とする意匠法の保護対象となるべきものであること(意匠法1条)、これに対し、著作権法は文化の発展に寄与することを目的とするものであり(著作権法1条)、現行著作権法の制定過程においても、意匠法によって保護される応用美術について、著作権法による保護対象にもするとの意見は採用されなかったこと、一品制作の美術工芸品を越えて、応用美術全般に著作権法による保護が及ぶとすると、両法の保護の程度の差異(意匠法による保護は、公的公示手段である設定登録が必要である(方式主義)上、保護期間(存続期間)が設定登録の日から15年であるのに対し、著作権による保護は、設定登録をする必要はなく(無方式主義)、保護期間(存続期間)が著作物の創作の時から著作者の死後50年を経過するまでの間、法人名義の著作物は公表後50年を経過するまでの間等とされている。)から、意匠法の存在意義が失われることにもなりかねないことなどを合わせ考慮すると、応用美術一般に著作権法による保護が及ぶものとまで解することはできないが、応用美術であっても、実用性や機能性とは別に、独立して美的鑑賞の対象となるだけの美術性を有するに至っているため、一定の美的感覚を備えた一般人を基準に、純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価される場合は、「美術の著作物」として、著作権法による保護の対象となる場合があるものと解するのが相当である。 (エ) 以上の観点から、本件模型原型が「美術の著作物」に該当するか否かについて検討を加える。 ウ 本件模型原型は純粋美術か否か。 (ア) まず、本件模型原型は、前記認定のとおり、いずれも、実在する動物や、絵画に描かれた妖怪ないし人物等を立体的に表現したものである。 本件模型原型は、実在する動物や、絵画に描かれた妖怪ないし人物等を立体的に表現するに当たって、誰が制作しても同じような表現にならざるを得ないような類型的な表現方法を用いたとはいえず、一定の限度で制作者の個性が表れているといえるから、思想又は感情を創作的に表現したものであるということができる(ただし、その創作性の程度には、後記のとおり高低がある。)。 (イ) ところで、菓子製造販売業者が、菓子の需要者(主に子供たち)に人気のある動物、乗り物等を模した小さな玩具や、漫画のキャラクターを描いたシール、カード等をおまけとして付けることで、菓子の需要者のおまけに対する収集欲を刺激し、菓子の販売促進を図ることは、これまでも広く行われてきた(乙第46号証、公知の事実)。このような菓子等のおまけとなる玩具は、一般に「食玩」と称されている。 本件フィギュアは、従来の食玩(検甲第14、第15号証、公知の事実)に比べて、極めて精巧なものであるとはいえ、その使用目的は、やはり菓子のおまけとして付けられ、菓子の販売促進を図ることにあることに変わりはないと認められる。そして、本件模型原型は、上記のような本件フィギュアを量産するための金型の原型及び彩色用の見本として用いられるものである。 (ウ) してみると、本件模型原型は、前記(ア)のとおり思想又は感情を創作的に表現したものではあるけれども、制作者が、当該作品を専ら鑑賞の対象とする目的ではなく、実用目的で制作したものであり、かつ、一般的平均人が、実用目的で制作されたものと受け取るものというべきであるから、純粋美術には該当しないものと解するのが相当である。そして、上記制作目的及び一般的平均人の認識からすれば、本件模型原型は、応用美術に該当するものというのが相当である。 (エ) なお、証拠(甲第22、第23号証)及び弁論の全趣旨によれば、本件フィギュアは、その精巧さから、販売後は子供たちのみならず一部の大人たちの間でも人気が出たことが認められ、証拠(甲第54ないし第88号証、第99号証)及び弁論の全趣旨によれば、菓子の購入者の中には、菓子よりもおまけである本件フィギュアを目当てに購入した者が多かったこと、これらの者の多くは、本件フィギュアを鑑賞の対象として扱っていたことが認められる。 しかし、純粋美術であれば、その巧拙を問わず著作物に該当し、著作権法による保護を受けることになるが、我が国の著作権制度のもとにおいては、著作権の成立には審査及び登録を要せず、著作権の対外的な表示も要求しない一方で、著作権侵害については刑事罰の規定も設けられていることを考慮すると、観る者によって当該作品を専ら鑑賞の対象とする目的で制作されたものと受け取るか否かの判断が異なるような作品についてまでも、純粋美術として著作権法による保護を与えることは、予測可能性を害するものであって、相当ではない。 そして、上記各証拠をもってしても、本件フィギュアないし本件模型原型について、一般的平均人が専ら鑑賞の対象とする目的で制作されたものと受け取るとまでは認めがたい。 また、制作者が、制作当時は、当該作品を専ら鑑賞の対象とする目的以外の目的で制作した作品が、制作後の事情により美術的な評価が高まり、当該作品が鑑賞の対象として取り扱われるようになったとしても、そのことにより、応用美術が純粋美術に転化し、著作物性を獲得するに至ると解することは、法的安定性を著しく害するものであって相当ではない。 したがって、上記の事情は、前記(ウ)の判断を左右するものではない。 エ 応用美術たる本件模型原型は著作物か否か。 (ア) そこで、本件模型原型が応用美術であることを前提にして、一定の美的感覚を備えた一般人を基準に、純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価されるか否かについて検討する。 (イ) 本件動物フィギュア 前記認定のとおり、本件動物フィギュアは、市販の動物図鑑、鳥類図鑑等をもとに、動物の形状等を、可能な限り、実際の動物と同様に立体的に表現し、色彩も、実際の動物と同様の色、模様が付されたものであり、極めて精巧なものであって、一定の美的感覚を備えた一般人を基準に、相当程度の美術性を備えていると評価されるものといえる。このことは、前記認定のとおり、原告の制作に係る各種フィギュアが各地の美術館等で展示され、高い評価を受けていることからも裏付けられる。 しかしながら、上記のとおり、本件動物フィギュアは、実際の動物の形状、色彩等を忠実に再現した模型であり、動物の姿勢、ポーズ等も、市販の図鑑等に収録された絵や写真に一般的に見られるものにすぎず、制作に当たった造形師が独自の解釈、アレンジを加えたというような事情は見当たらない(なお、甲第51号証によれば、本件動物フィギュアの中には、あえて実際の動物と異なる形状等を採用しているものも存在するが、これは、美術性を高めるためにデフォルメしたというよりも、主に、型抜きの都合や、カプセルに収まる寸法を確保するなどの製造工程上の理由によるものと認められる。)。したがって、本件動物フィギュアには、制作者の個性が強く表出されているということはできず、その創作性は、さほど高くないといわざるを得ない。 してみると、本件動物フィギュアに係る模型原型は、一定の美的感覚を備えた一般人を基準に、純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価されるとまではいえず、著作物には該当しないと解される。 なお、本件動物フィギュアのうち、ツチノコについては、モデルとなる動物の生息が確認されていないため、実際の動物の形状、色彩等を忠実に再現したものとはいえず、他の本件動物フィギュアに比べれば制作者の個性が強く表出されているということができるけれども、やはり、これまでに描かれた数多くの想像図をもとに制作されたものであって、それらから想像される一般的なイメージの域を超えるものではなく(甲第51号証、弁論の全趣旨)、いまだ純粋美術と同視し得る程度の美的創作性があるとまではいえない。 (ウ) 本件妖怪フィギュア 本件妖怪フィギュアは、本件動物フィギュアと異なり、空想上の妖怪を造形したものである。 確かに、前記認定のとおり、本件妖怪フィギュアのなかには、石燕の「画図百鬼夜行」を原画とするものもある。 しかし、平面的な絵画をもとに立体的な模型を制作する場合には、制作者は、絵画に描かれた妖怪の全体像を想像力を駆使して把握し、絵画に描かれていない部分についても、描かれた部分と食い違いや違和感が生じないように構成する必要があるから、その制作過程においては、制作者の想像力ないし感性が介在し、制作者の思想、感情が反映されるということができる。 そして、前記認定のとおり、本件妖怪フィギュアは、石燕の原画を忠実に立体化したものではなく、随所に制作者独自の解釈、アレンジが加えられていること、妖怪本体のほかに、制作者において独自に設定した背景ないし場面も含めて構成されていること(特に、前記認定の「鎌鼬」、「河童」や、「土蜘蛛(つちぐも)」が源頼光及び渡辺綱に退治され、斬り裂かれた腹から多数の髑髏(どくろ)がはみ出している場面(甲第52号証)などは、ある種の物語性を帯びた造型であると評することさえも可能であって、著しく独創的であると評価することができる。)、色彩についても独特な彩色をしたものがあることを考慮すれば、本件妖怪フィギュアには、石燕の原画を立体化する制作過程において、制作者の個性が強く表出されているということができ、高度の創作性が認められる。 また、本件妖怪フィギュアのうち、石燕の「画図百鬼夜行」を原画としないものについては、制作者において、空想上の妖怪を独自に造形したものであって、高度の創作性が認められることはいうまでもない。 そして、前記認定のとおり、本件妖怪フィギュアは、極めて精巧なものであり、一部のフィギュア収集家の収集、鑑賞の対象となるにとどまらず、一般的な美的鑑賞の対象ともなるような、相当程度の美術性を備えているということができる。 以上によれば、本件妖怪フィギュアに係る模型原型は、石燕の「画図百鬼夜行」を原画とするものと、そうでないもののいずれにおいても、一定の美的感覚を備えた一般人を基準に、純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価されるものと認められるから、応用美術の著作物に該当するというのが相当である。 (エ) 本件アリスフィギュア 前記認定のとおり、本件アリスフィギュアは、テニエルの挿絵を立体化したものである。 本件アリスフィギュアについても、本件動物フィギュア及び本件妖怪フィギュアと同様に、極めて精巧なものであって、一定の美的感覚を備えた一般人を基準に、相当程度の美術性を備えていると評価されるものといえる。 しかしながら、本件アリスフィギュアは、平面的に描かれたテニエルの挿絵をもとに立体的な模型を制作する過程において、制作者の思想、感情が反映されるものであるから、創作性がないわけではないが、前記認定のとおり、本件アリスフィギュアは、テニエルの挿絵を忠実に立体化したものであり、立体化に際して制作者独自の解釈、アレンジがされたとはいえない(この点において、本件妖怪フィギュアとは事情が異なる。)ことや、色彩についても、通常テニエルの挿絵に彩色する場合になされるであろう、ごく一般的な彩色の域を出ていないことを考慮すれば、本件アリスフィギュアには、テニエルの原画を立体化する制作過程において、制作者の個性が強く表出されているとまではいえず、その創作性は、さほど高くないといわざるを得ない(ただし、前記認定のとおり、他にもテニエルの挿絵に彩色したものがあるが、証拠上、これらがどのような色であったかは判然としない。また、一部には背景ないし場面を含めて造型されたものもあるが(例えば「チェシャ猫」の木)、これらの背景も、もともとテニエルの挿絵に描かれていたものである。)。 してみると、本件アリスフィギュアに係る模型原型は、極めて精巧なものであるけれども、一定の美的感覚を備えた一般人を基準に、いまだ純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を具備していると評価されるとまではいえず、応用美術の著作物には該当しないと解される。」 (2) 35頁17行目の「模型原型」の前に「フィギュア」を加え、同18行目の「管理している」から同19行目の「無効となるか」までを「管理していると誤信していた錯誤により、無効であるか」と改め、同20行目の「第9号証、」の次に「第10号証の1、2、」を、同23行目の「第29号証、」の次に「第83号証、」を各加え、同行目の「第6号証」を「第6、第9、第10、第13」と改め、同24行目の「第46号証」の次に「、第75号証の1、2、第76ないし第78号証」を加える。 (3) 36頁1行目の「被告は、」の次に「外国では」を加え、同3行目の「製造」を「制作」と、同14行目の「数十万円」を「十数万円」と各改め、同16行目の「熱心になるであろう」の次に「し、被告としてもイニシャル・コストを削減できる」を加え、同19行目の「制作し」を「製作し」と改める。 (4) 37頁23行目の「制作し」を「製造し」と、39頁2行目の「弁護士を雇う」を「弁護士に委任する」と、同6行目の「被告と」を「原告と」と、同12行目の「あるいは」を「又は」と各改め、同18行目の「意思表示をした。」の次に、次のとおり加える。 「さらに、原告は、被告に対し、同年12月3日付け「御通知書」(甲第10号証の1、乙第13号証)により、被告が製造数量を一部報告していなかったことなどを原因とする違約金請求を行い、かつ、同月6日付け「商品販売中止要求書」(甲第19号証の1)により、本件契約Lを解除したため被告はチョコエッグ・クラシックを製造、販売する権限がないとして、チョコエッグ・クラシックの製造、販売を中止するよう求めた。」 (5) 39頁23行目の「管理所有していない」を「管理し又は有していない」と改め、同25行目の「原告が」の前に、次のとおり加える。 「原告は、平成15年1月27日、大阪地方裁判所に、被告を相手取り、チョコエッグ・クラシックの製造、販売の差止めを求める仮処分を申し立て(乙第9号証。同裁判所平成15年(ヨ)第20002号)、被告は、同年2月10日、上記仮処分事件の答弁書(乙第10号証)において、初めて本件模型原型は著作物に当たらないという主張をした。さらに、」 (6) 39頁25行目の「製造数量を」の前に「被告が」を加え、40頁2行目の「管理所有していない」を「管理し又は有していない」と、同9行目の「動機付けを与える」を「動機付けを与え、かつ、被告においてイニシャル・コストを削減する」と各改め、41頁1行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。 「 このような違約金支払規定は、著作権等の知的財産権に係る使用許諾契約に特有のものではなく、例えばフランチャイズ契約など、製造又は販売数量及び額に基づいて支払うべき金額が決定する契約類型において、製造又は販売数量及び額の算定が支払義務者の自主的な報告に委ねられている場合には、自主的な報告の真実性を担保するために、しばしば定められるものである(公知の事実)。」 (7) 41頁4行目の「本件模型原型」の次に「(ただし、本件妖怪フィギュアに係る模型原型を除く。)」を加え、同6行目の「本件各契約」を「本件契約@ないしG、L及びM」と改め、同7行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。 「 また、前記1のとおり、本件妖怪フィギュアに係る模型原型は、著作物に該当するといえるから、本件契約HないしKの締結について、そもそも被告に錯誤はない。」 (8) 41頁8行目から9行目にかけて及び同11行目の「管理所有している」をいずれも「管理し又は有している」と、同13行目の「管理所有していない」を「管理し又は有していない」と、同21行目の「管理又は所有している」を「管理し又は有している」と、同25行目の「ロイヤリティ方式」を「ロイヤルティ方式」と各改める。 (9) 42頁1行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。 「 むしろ、前記(1)認定の経過によれば、被告は、製造数量について虚偽の報告をしていたことが発覚し、原告から多額の違約金を請求され、しかも、チョコエッグ・クラシックの製造、販売の差止めを求める仮処分申立てがされたことから、上記違約金の支払や製造、販売の差止めを免れるために、初めて、それまで全く問題にしていなかった本件模型原型の著作物性を否定するようになったことが強くうかがわれ、このことからも、本件模型原型の著作物性は、本件各契約の要素となっていなかったことが明らかである。 また、被告は、制作請負契約ではなく対価の支払方式であるとしても、本件模型原型が著作物でないのであれば、対価の水準は1%以下になっていたはずであると主張するが、このことを裏付けるに足りる客観的証拠は全くなく、かえって、前記認定のとおり、原告の制作したフィギュアは高い評価を受けていたことからすれば、本件模型原型が著作物に当たらないことを前提としても、対価の水準は相当程度高くなっていた蓋然性が高いと考えられる。被告の上記主張は、採用することができない。」 (10) 42頁12行目の「しかしながら、」の次に「原告が本件各契約によって多額の金員を得たのは、チョコエッグ等の商品が爆発的に売れたからであり、被告も、原告を上回る巨額の利益を得たであろうことがうかがわれるし、」を加え、同22行目の「行っており、」を「行っているし、被告が原告以外の模型製造販売業者と契約をすることができなかったというような事情はうかがわれず、」と、同23行目から24行目にかけての「ロイヤルティ支払規定及びその適用」を「ロイヤルティ支払規定、その率及び違約金支払規定」と各改める。 (11) 43頁4行目から5行目にかけての「合意がなされているといえるのか」を「合意がされたといえるか」と改め、同8行目の「第46号証」の次に「、第75号証の1、2、第76ないし第78号証」を、同23行目の「本件覚書」の次に「(甲第8号証)」を各加え、同25行目の「再販売」を「再発売」と、同末行から44頁1行目にかけての「5万4000個」を「54、000個」と、同2行目の「販売期間は、9種類の著作物」を「販売期間は(中略)9種の著作物」と、同17行目の「定めのない」を「定めの無い」と、同行目の「原告と被告は」を「原告被告」と、同20行目の「9種類の著作物」を「9種の著作物」と各改める。 (12) 46頁21行目末尾の次に、次のとおり加える。 「 なお、本件契約H及びIに基づくロイヤルティの支払額は、販売数量ではなく製造数量に応じて決定されるものであり、製造されたが販売されていない在庫が存在する場合に、上記在庫はロイヤルティの対象となっているから、指定商品の製造販売期間を延長することは、原告よりもむしろ被告の利益となるものであり、被告には本件覚書に係る契約を追認する動機がある。」 (13) 48頁3行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。 「 被告は、Dが被告を退社する際に本件覚書を社外に持ち出し、被告は本件覚書を確認することができなかったと主張し、被告取締役らの陳述書(乙第45、第46号証)には同旨の記載があるが、前記のとおり、被告は、Dが退社した後も、本件覚書に基づき、原告に対してロイヤルティを支払うなどしていることからすれば、上記陳述は信用することができず、被告の上記主張は採用することができない。なお、付言するに、被告において本件覚書を所持していなくても、その内容を把握さえしていれば、本件契約Jを追認することは不可能ではない。」 (14) 48頁4行目の「成立しているのか」を「成立したか」と改め、同7行目の「第46号証」の次に「、第75号証の1、2、第76ないし第78号証」を加え、49頁7行目から8行目にかけての「署名押印は、同じである。」を「署名は、同一人の筆跡であり、署名の横に押捺された印影も、同一の印鑑により顕出されたものである。」と改め、同9行目から10行目にかけての「平成14年11月21日まで」の次の「、」を削り、同17行目の「消費税分」の次に「合計836万3250円」を加え、同18行目の「836万3250円」を「上記金額」と改める。 (15) 50頁18行目末尾の次に改行して、次のとおり加える。 「 前記認定のとおり、本件アリス契約書が作成された時点では、Dは既に被告の取締役を辞任していたものであるから、被告は本件アリス契約書を所持していないことがうかがわれるが、そうであるとしても、被告において本件アリス契約書の内容を把握していれば追認することは不可能ではない。そして、前記のとおり、本件アリス契約書(本件契約M)の内容は、それまでに原告と被告との間で締結された本件契約@ないしLと比べて大きく変わったところはないこと、被告は、原告に対して、アリス・コレクションに係るロイヤルティの一部を支払うなどしていることからすれば、被告において、本件アリス契約書の内容を把握していたことは明らかである。 したがって、このことは、被告が本件契約Mを追認したという認定判断を左右するものではない。」 (16) 50頁19行目の「未払のロイヤルティ・違約金等の額」を「未払いのロイヤルティ及び違約金の額」と改め、51頁7行目の「18.87%」の次に「(642万1360個÷3403万3440個)」を、同11行目の「小数点以下四捨五入」の前に「1086万4016個×18.87%。」を各加え、52頁15行目の「上記」を「前記」と、同行目の「928万650円」を「928万0650円」と各改め、同末行の「6359万4712円」の次に「(小数点以下切捨て)」を加える。 (17) 55頁5行目の「裁判所」、同7行目及び同12行目から13行目にかけての各「弁論準備手続期日」の前に、いずれも「原審」を加え、同25行目の「国内における」を「国内において」と、56頁1行目の「貸し付け」を「貸付け」と、同2行目の「9号」を「8号」と、同4行目から5行目にかけての「「役務の提供」に対する対価」を「「役務の提供」の対価」と、同6行目から7行目にかけての「資産の譲渡等に対する対価的性質」を「資産の譲渡等の対価としての性質」と各改める。 (18) 57頁4行目の「(甲10の1)」を「(甲第10号証の1)」と改め、同23行目の「弁論準備手続期日」の前に「原審」を加え、同24行目の「訴訟上顕著」を「当裁判所に顕著な事実」と、同末行の「製造」を「制作」と、同行の「作成し」を「製造し」と各改める。 (19) 58頁23行目の「弁論準備手続期日」の前に「原審」を加え、同25行目の「陥る」を「陥ったというべきである」と、59頁9行目、同10行目及び同18行目の各「模型原型」をいずれも「本件模型原型」と、同11行目の「契約の錯誤」を「要素の錯誤」と、同21行目の「述べたとおりである。」を「認定判断したとおりである(なお、本件妖怪フィギュアに係る模型原型は、著作物に該当するといえるから、本件契約HないしKの締結について、そもそも被告に錯誤はない。)。」と、60頁1行目の「述べたとおりである。」を「認定判断したとおりである。」と各改める。 2 その他、原審及び当審における当事者提出の各準備書面記載の主張に照らし、原審及び当審で提出、援用された全証拠を改めて精査しても、当審及び当審の引用する原審の認定、判断を覆すほどのものはない。 3 以上によれば、原告の請求は、1億6017万8278円及びうち167万2650円に対する請求の後である平成14年11月28日から、うち1億5555万1593円に対する請求の後である同年12月12日から、うち295万4035円に対する請求の後である平成16年7月28日から各支払済みまで商法所定の年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、これを認容し、その余は理由がないから、これを棄却すべきところ、これと同旨の原判決は相当であって、本件控訴は理由がなく棄却を免れない。 よって、主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第8民事部 裁判長裁判官 竹原俊一 裁判官 小野洋一 裁判官 中村心 |
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