裁判の記録 line
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2019年
(平成31年)
[1月〜4月]
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1月17日 リーチサイト「はるか夢の址」事件(刑)
   大阪地裁/判決・有罪
 人気漫画「NARUTO」など68点が読める海賊版サイトのリンク先を掲載したリーチサイト「はるか夢の址」をネット上で運営したとして、3名の被告が著作権法違反を問われた事件。裁判所は3名の違反を認め、懲役3年6ヶ月〜3年の実刑を言い渡した。
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1月24日 営業チラシの著作物性事件
   大阪地裁/判決・請求棄却(控訴)
 共にコンタクトレンズ販売会社である原被告の争い。原告が被告に対し、(1)原告販売チラシのほぼデッドコピーである被告販売チラシによる著作権及び著作者人格権侵害の不法行為と、違法な従業員の引き抜きに係る不法行為とに基づく損害賠償金370万円余の支払い、(2)競業避止義務違反の債務不履行等に基づく損害賠償金550万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は、本件原告販売チラシの著作物性を、原告の主張する3つの点それぞれ及びその3点の組み合わせ自体について、ありふれたものとして認めず、侵害を否定、また従業員の引き抜きによる不法行為も、競業避止義務を負っていたことも認めず、原告の請求を棄却した。
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1月25日 医師のパブリシティ権等事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 
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1月31日 ネット紹介書籍の著者名表記事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 一審原告が、フィットネスプログラム開発会社である一審被告に対して、被告がその管理するウェブサイトにおいてタイ式ヨガの指導書2冊を原告以外の者の著作物である旨表示したのは、本件各書籍の著作者である原告の著作者人格権(氏名表示権)侵害に当たるとして、慰謝料100万円の支払いを求めた事件の控訴審。一審東京地裁は、被告のホームページにおいて本件各書籍の公衆への提示・提供がされているとは言えないから、原告の請求には理由がないとして請求を棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁は、控訴人が非侵害利益を「インターネット上で自己の書籍著作物について第三者の著者であると偽られない利益」と控訴審において初めて主張したことを、時機に後れた攻撃防御方法性に該当すると認めたが、却下の申し立ては認めず、その利益の損害賠償主張を検討し、両書籍とも奥付に「監修者」として控訴人の名があるが、「監修者」は「編者」等と異なり、編集著作物の著作者であると推定する(著作権法14条)ことは出来ず、控訴人の主張する非侵害利益は根拠を欠くとして、控訴を棄却した。
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2月1日 CATVの地上波無許諾再放送事件
   東京地裁/判決・本訴請求一部認容、一部棄却、反訴請求却下(控訴)
 本訴は、著作権等管理事業法に基づき登録を受けた事業者であり、テレビ地上波放送事業者から著作権及び著作隣接権の有線放送権等の管理委託を受けた日本テレビジョン放送著作権協会(原告)が、徳島県の一部地域で有線テレビジョン放送を行っている会社(被告)に対して、被告が原告の許諾を得ることなく、原告がテレビ放送事業者から管理委託を受けた放送を受信してこれを徳島県内一部地域において有線放送し再放送しているのは原告の有する有線放送権侵害であるとして、損害賠償金3億5913万円余の支払いを求めた事件。反訴は、被告が、原告が文化庁長官に届け出た使用料規程のうち、再放送について定めた第3条(1)(2)は無効であることの確認を求めた事件。
 裁判所は、本件信託契約の適法性を認め、被告が原告から著作隣接権等の許諾を得ていないと判断、本訴請求は権利の濫用、信義則違反又は公序良俗違反であるとする被告の主張を退けて、被告に1億7956万円余の支払いを命じた。また反訴における確認の請求は、確認の利益を欠くとして、反訴を却下した。
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2月5日 業務用プログラム“BSS−PACK”事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 総合業務管理ソフトBSS−PACKを構成するプログラムの著作権を有するとするソフトウエア開発会社やその代表ら(原告ら)が、そのプログラムの著作権を有することの確認と、被告会社が被告製品を販売する行為は原告らの著作権を侵害するとして販売差止と廃棄を求めた事件。原告会社は第三者に著作権を譲渡、第三者は被告会社にその著作権を譲渡していた。
 裁判所は、本件譲渡契約において、当該プログラムについての全ての権利が譲渡の対象になっていたことを、原告らの、契約当時は一部プログラムについては譲渡する認識・意思を欠いていたから契約には要素の錯誤があったという主張を退けて認定、原告会社は上記著作権を喪失しているとして、原告らの請求を棄却した。
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2月8日 「ジル・スチュアート」ライセンス契約事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 
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2月12日 ソフトバンクへの発信者情報開示請求事件G
   東京地裁/判決・請求認容
 安室奈美恵やperfumeらの楽曲の送信可能化権を有するとする4レコード会社(原告ら)が、氏名不詳者が当該レコードを圧縮して複製したファイルをサーバに記録して設置し、被告ソフトバンクの提供するインターネット接続サービスを経由して送信可能化状態にしたことにより著作権を侵害されたとして、プロバイダ責任制限法に基づき、被告に対し、発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は氏名不詳者の送信可能化権侵害を認め、被告に対し発信者情報を開示するよう命じた。
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2月15日 “なびシリーズ”プログラム事件
   東京地裁/判決・本訴請求一部認容、一部棄却、反訴請求棄却
 本訴は、個人事業主である原告が、全国の様々な商店・飲食店等のサービスを網羅的に掲載してサイト利用者が必要とする近隣のサービスを探すことができるポータルサイト「なびシリーズ」の開発・運営を共同で営んでいた株式会社である被告に対し、(1)被告が経費を過大に計上するなどして契約に基づく収益分配をしなかったことから未払収益分配金1183万円余及び同契約の解除に伴う損害賠償金4000万円の支払い等を求め、(2)被告が、原告が著作権を有する同事業の運営に必要なプログラムを無断で複製したとして、著作権侵害に対する損害賠償金96万円余の支払いを求めた事件。
 反訴は被告が原告に対し、原告が上記プログラムを被告に無断で消去したとして、損害賠償金871万円余の支払いを求めた事件。
 裁判所は、原告は被告に対して未払い収益分配金1148万円余の支払いを求めることができると判断、契約解除は有効であるとして損害賠償金3039万円余を、また被告による著作権侵害を認めて損害賠償金2万円余を認定、被告に対して合計4190万円余の支払を命じ、反訴請求は棄却した。
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2月28日 英語教材の販促DVD事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 共に英会話教材の製造販売会社である原告と被告の争い。原告は「スピードラーニング」の名称の教材を製造販売し、その販促用DVD(以下原告DVD)を配布、被告は「スピードイングリッシュ」の名称の教材を製造販売し、その販促用DVD(以下被告DVD)を配布していた。原告が、被告による被告DVDの作成、配布は、主位的には映画の著作物または編集著作物である原告DVDに関して原告が有する複製権、翻案権並びに同一性保持権を侵害すると主張し、予備的には言語の著作物である原告DVDのスクリプト部分に関して原告が有する複製権、翻案権、譲渡権並びに同一性保持権を侵害すると主張して、被告に対し、損害賠償金293万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は、映画の著作物としての複製権、翻案権侵害を認定、編集著作物としての侵害性および言語の著作物としての侵害性は認めず、また同一性保持権侵害を認め、損害額を合計36万5千円と認定して被告に支払いを命じた。
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2月28日 ソフトバンクへの発信者情報開示請求事件E
   東京地裁/判決・請求認容
 原告女性が、自分の両脚を撮影した2枚の写真について著作権及び著作者人格権を有するところ、氏名不詳者によりネット上の掲示板に、その写真を複製した画像のアップロード先であるURLが無断で投稿されたことにより、著作権及び著作者人格権を侵害されたことが明らかであるとして、インターネット接続サービスを営む被告に対して、プロバイダ責任制限法に基づき、その保有する発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は写真の著作物性を認め、また画像そのものでなく画像ファイルのURLを投稿した氏名不詳者の公衆送信権侵害性を肯定して、原告の主張を認め、被告に発信者情報の開示を命じた。
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2月28日 映画パンフレットのタイプフェイス事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 広告制作やグラフィックデザインを業とする会社である原告が、自ら製作したタイプフェイスの著作権者であるとして、そのタイプフェイスを無断で使用して映画の予告編やパンフレット、ポスター等を制作した、映画の製作、配給、DVDの販売等を手掛ける被告会社に対し、著作権侵害による損害賠償金400万円を請求した事件。
 裁判所は、平成12年9月7日のタイプフェイス事件最高裁判決を引きつつ、本件タイプフェイスの著作物性を、被告の使用した個々の文字について判断するとして、検討し、その著作物性を否定して原告の請求を棄却した。
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3月13日 “上野あかちゃんパンダ”イラスト事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 イラストレーターである原告が、いずれも食品製造販売会社である被告らに対し、被告らが「上野あかちゃんパンダ」の名で販売している菓子のパッケージ及び菓子本体に描かれたパンダのイラストは、原告の描いたイラストを無断で複製したものであり原告の著作権及び著作者人格権を侵害するとして、被告イラストの複製頒布の差し止め、被告商品の廃棄、損害賠償金470万円の支払い、謝罪広告の掲載を求めた事件。
 東京地裁は被告らによる著作権及び著作者人格権侵害を認め、被告らに対し、被告イラストの複製と譲渡の差し止め、被告商品の廃棄、損害賠償金42万円余の支払いを命じた。
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3月14日 水尾PR動画事件(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却
 京都市の嵯峨水尾地域の振興活動で合意した中小企業経営者仲間の3者が有限責任事業組合を結成し、プロモーションDVD(「ゆずの里映像」等)を3者の一人が代表を務める一審原告会社が作り、その映像を閲覧するためのウエブページを3者の他の一人が代表を務める一審被告会社のウエブサイトにおいた。本件は、放送番組の企画制作会社である原告会社が、菓子や飲料の製造販売会社である被告会社及び被告会社の代表者(被告らという)に対して、「ゆずの里」の映像と写真及びほか2件の映像を被告会社のウエブサイトに掲載しているのは原告の有する著作権を侵害するとして、差し止めと損害賠償金1406万円余の支払いを求めた事件。一審京都地裁は請求を棄却したが、原告が控訴した。
 大阪高裁は、本件映画の著作物の著作権は組合に帰属するというべきであり、仮に原告に帰属するとしても、被告会社のウエブサイトに掲載することは原被告間で認識されていたから被告らが侵害したとは言えない等と判断し、控訴を棄却した。
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3月25日 ブライダルビデオの著作権侵害事件
   大阪地裁/判決・請求棄却(控訴)
 映像制作を業として営む原告が、映像企画制作並びにブライダルプロデュースを業とする被告会社の委託を受けて、被告4人2組の結婚式及び披露宴をビデオ撮影し、映像データを被告会社に納品した。被告会社はこれを編集する等して記録ビデオを完成させ、被告4人に納品した。原告は、原告が当該ビデオグラムの著作権及び著作者人格権を有するとして、被告らが当該ビデオグラムを複製、頒布するおそれがあると主張、被告らに対し、当該ビデオグラムの複製、頒布の差し止めと廃棄を求めた事件。
 裁判所は当該ビデオグラムのうち、原告が制作に関わらなかった「フォトムービー」「エンドロール」部分を理由がないとして除いたのち、記録ビデオの著作権を検討、これを映画の著作物と認め、原告をその著作者と認めた。そしてこの映画の著作物の製作の経緯を検討して、被告会社を映画の著作物の製作に発意と責任を有するものである著作権者と認め、原告は著作権を有しないと判断、著作者人格権侵害のおそれも認めず、原告の請求を棄却した。
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3月27日 ソフトバンクへの発信者情報開示請求事件F
   東京地裁/判決・請求認容
 平成30年の動画サイトへのAV無断投稿事件4件と同じ原告が、氏名不詳者によって原告が著作権を有する動画をウエブサイトにアップロードされ、公衆送信権を侵害されたとして、プロバイダ責任制限法に基づき、開示関係役務提供者であるソフトバンクに氏名不詳の発信者情報開示を求めた事件。
 裁判所は権利侵害を認め、被告に発信者情報の開示を命じた。
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4月10日 NTTコムへの発信者情報開示請求事件G
   東京地裁/判決・請求認容
 宗教法人である創価学会(原告)が、氏名不詳者がインターネットのウェブサイトに原告が著作権を有する写真を掲載し、原告の著作権を侵害したことは明らかであるとして、経由プロバイダであるエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社とソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社(被告ら)に対し、プロバイダ責任制限法に基づき、発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は著作権侵害性を認めて原告の主張を認め、被告らに対し、氏名不詳の発信者情報を開示するよう命じた。
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4月17日 KDDIへの発信者情報開示請求事件L
   東京地裁/判決・請求認容
 映像製作販売会社である原告が、氏名不詳者によってウェブサイトにアップロードされた3動画は、原告が著作権を有する動画の一部と実質的に同一であり、原告の著作権が侵害されたとして、アクセスプロバイダである被告KDDIに対し、プロバイダ責任制限法に基づき、発信者の情報を開示するよう求めた事件。
 裁判所は、著作権が侵害されたことは明らかであるとして、被告に対し、発信者情報の開示を命じた。
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4月17日 エキサイトへの発信者情報開示請求事件B
   東京地裁/判決・請求認容
 大阪の夜景の写真の著作権を有する原告が、氏名不詳者が当該写真を被告エキサイトの運営するウェブサイト上にアップロードして著作権を侵害しているとして、プロバイダ責任制限法に基づき、被告に対し、発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は氏名不詳者の複製権及び送信可能化権侵害を認め、被告に対し発信者情報を開示するよう命じた。
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4月18日 “眠り猫”イラストTシャツ事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 動物等の水彩画を描き動物をモチーフにしたデザインを行っている原告が、インターネットや量販店を通じて自社製造の繊維製品等の販売事業を行っている会社(被告)に対し、被告が製造販売しているTシャツ、トレーナー、ジャケット、帽子等に描かれた猫のイラストは、原告がデザインし、「眠り猫」という商品名で販売されているTシャツにも描かれた原告のイラストを複製又は翻案したものであり、(1) 被告イラストの作成及び被告製品の製造は原告の複製権または翻案権を侵害、(2) 被告のホームページに被告製品の写真をアップロードしたことは原告の公衆送信権を侵害、(3) 更に被告の製造販売行為は原告の著作者人格権を侵害しているとして、被告イラストの製造、販売、公衆送信の差し止め、被告製品の廃棄とホームページ上の表示の削除、損害賠償金1000万円の支払い、謝罪文の掲載を求めた事件。
 裁判所は原告イラストを著作物であると判断、被告イラストによる複製権又は翻案権侵害を一部を除いて認め、公衆送信権侵害、著作者人格権侵害も認め、被告に対し、一部を除いた被告イラストの複製、翻案、公衆送信の差止、同イラストを使用した製品の廃棄、同イラストのデータの削除、損害賠償金167万円余の支払いを命じた。謝罪文の掲載請求は必要ないとして認めなかった。
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4月26日 「ふみとやすおの歌」事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 原告が、NHKや日本テレビ、フジテレビなど放送会社11社(被告ら)が、原告が訴外Pと作詞作曲した「ふみとやすおの歌」を許諾なく変形して放送し、それを収録したDVDを販売して著作権を侵害し、放送に際して原告の名誉権を侵害し、プライバシーを侵害し、また脅迫、侮辱、平穏生活権侵害を行ったなどとして、被告各社に対して損害賠償金7万円余から671万円余の支払いを求めた事件。
 原告は、原告が指摘する発言が含まれているとして、放送映像、DVD映像、及びそれらの反訳書を提出した。裁判所はそれらを検討した結果、原告の著作権、名誉権、プライバシー又は平穏生活権を侵害し、または脅迫若しくは侮辱に該当する発言がその中に収録されているとは認められないとして、原告の請求を理由がないと退けた。
判例全文
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