判例全文 | ||
【事件名】エキサイトへの発信者情報開示請求事件B 【年月日】平成31年4月17日 東京地裁 平成31年(ワ)第2413号 発信者情報開示請求事件 (口頭弁論終結日 平成31年3月6日) 判決 原告 X 被告 エキサイト株式会社 同訴訟代理人弁護士 藤井康弘 主文 1 被告は、原告に対し、別紙1発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 主文同旨 第2 事案の概要 1 本件は、原告が、被告に対し、氏名不詳者が、被告が運営するブログサービスにおけるウェブサイト上に原告が著作権を有する写真をアップロードし、原告の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害したことが明らかであるとして、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき、上記著作権侵害行為に係る別紙1発信者情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。 2 請求原因 (1)被告は、「エキサイトブログ」というウェブサイト(以下「被告ウェブサイト」という。)を運営し、ニュースサイトやインターネット接続サービス等を営む株式会社である。 (2)氏名不詳者(以下「本件発信者」という。)は、平成29年8月27日、被告ウェブサイトのブログサービスを利用し、「呉松ふくかずの雑記帳U」のブログページ(以下「本件ブログページ」という。)に、別紙2侵害情報目録記載のとおり、別紙3原告写真著作物目録記載の写真2点の画像ファイル(以下、別紙の符号に従い、「本件画像1」及び「本件画像2」といい、併せて「本件各画像」という。)を掲載した。 (3)被告は、本件ブログページの投稿のために被告が管理するウェブサーバ等を提供する者であるから、プロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に該当する。 (4)本件各画像は写真の著作物であり、原告は、本件各画像の著作者として著作権を有する。 (5)本件発信者による前記(2)の行為により、原告の本件各画像に係る複製権及び公衆送信権が侵害され、違法性阻却事由の存在をうかがわせるような事情も存在しないから、原告の権利が侵害されたことが明らかである。 原告は、本件発信者に対し、損害賠償請求をするため、被告に対し、本件発信者情報の開示を求めるものであるから、開示を受けるべき正当な理由がある。 (6)よって、原告は、被告に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、本件発信者情報の開示を求める。 3 被告の認否 (1)請求原因(1)及び(3)は認める。同(2)のうち、本件ブログページの存在及び内容は認め、本件各画像と本件ブログページ内の画像が類似していることは争わないが、厳密に同一のものであるかは不知。 (2)請求原因(4)及び(5)は不知。 第3 当裁判所の判断 1 証拠(甲3。なお、本判決を通じ、証拠を摘示する場合には、特に断らない限り、枝番を含むものとする。)及び弁論の全趣旨によれば、本件各画像は、いずれも(省略)から眺望した夜景を撮影したものであるが、本件画像1は、長時間露光によって街明かりを写し込み、絞り込むことで手前の街明かりから遠くの街明かりまでピントが合うようにするなどして撮影されたものであること、本件画像2は、シャッターを8秒間開け、被写体のカップルが止まった状態できれいに写るようにタイミングを見計らってシャッターを切るなどして撮影されたものであることが認められる。このように、本件各画像は、絞りやシャッターチャンスの捕捉、構図やアングルなどを工夫して撮影されたものであるから、写真の著作物であると認められる。 また、原告が運営する「夜景INFO」という名称のウェブサイト(以下「原告ウェブサイト」という。)に掲載された本件各画像の右下には「Copyright(c)Night View Photographer X」と記載された著作権表示がされ(甲3)、原告の姓と名のイニシャルにおいて一致していることや、原告が本件各写真のデータを所持していること(甲4)からすれば、原告が本件各画像を撮影した著作者であり、その著作権を有する者と認められる。 したがって、請求原因(4)は認められる。 2 証拠(甲1、3)によれば、本件発信者が本件ブログページに掲載した画像と本件各画像は、被写体や撮影方向等が同じであり、右下に「Copyright(c)Night View Photographer X」の表示があることも共通しているから、同一のものと認められ、請求原因(2)が認められる。 そして、本件発信者による本件各写真の画像データの入手先は原告ウェブサイト以外に考え難いことからすれば、本件発信者は、原告ウェブサイトから本件各写真の画像ファイルを複製した上、本件ブログページに掲載(アップロード)して、上記画像ファイルを送信可能化したものと認められる。そうすると、原告は、本件発信者に対し、著作権(複製権、送信可能化権)侵害を理由とする損害賠償請求権を有するところ、原告が本件発信者に対してその権利を行使するためには、本件発信者情報の開示が必要である。 したがって、請求原因(5)が認められる。 3 結論 よって、本訴請求は理由があるから、これを認容することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 佐藤達文 裁判官 三井大有 裁判官 今野智紀 (別紙1)発信者情報目録 別紙3原告写真著作物目録記載の本件画像1及び2をブラウザに表示する、別紙2侵害情報目録記載の侵害情報を、被告が管理する特定電気通信設備(ウェブサーバ等)にアップロードした本件発信者に関する情報であって、次に掲げるもの。 1.氏名又は名称 2.住所 3.電子メールアドレス 4.侵害情報に係るアイ・ピー・アドレス及び当該アイ・ピー・アドレスと組み合わされたポート番号 5.前第4号のアイ・ピー・アドレスを割り当てられた電気通信設備から被告の用いる特定電気通信設備に侵害情報が送信された年月日及び時刻 (別紙2)侵害情報目録
(別紙3)原告写真著作物目録
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