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【事件名】KDDIへの発信者情報開示請求事件L
【年月日】平成31年4月17日
 東京地裁 平成30年(ワ)第38035号 発信者情報開示請求事件
 (口頭弁論終結日 平成31年3月6日)

判決
原告 株式会社WILL
同訴訟代理人弁護士 山口孝太
同 芝崎晴哉
同 原木航
被告 KDDI株式会社
同訴訟代理人弁護士 今井和男
同 小倉慎一
同 小川泰寛
同 湯川信吾
同訴訟復代理人弁護士 安斎業陽


主文
1 被告は、原告に対し、別紙1発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
1 本件は、別紙2著作物目録記載の動画(以下「本件著作物」という。)の著作権者であるとする原告が、氏名不詳者(以下「本件発信者」という。)において、被告の提供するインターネット接続サービスを利用して、インターネット上のウェブサイトに別紙3動画目録記載の動画(以下「本件動画」という。)をアップロードしたことについて、本件動画は本件著作物の一部と実質的に同一であり、このアップロードにより原告の本件著作物についての送信可能化権が侵害されたことが明らかであって、当該権利の侵害に係る発信者情報の開示を受ける正当な理由があると主張して、被告に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき、被告の保有する別紙1発信者情報目録記載の発信者情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いがない又は後掲の証拠(以下、書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)当事者
 原告は、映画、ビデオの映像製作、編集業務、販売等を目的とする株式会社である。原告は、平成28年12月1日、アダルトDVDの制作を業とする株式会社である株式会社CAを吸収合併した(甲1、13)。
 被告は、電気通信事業を営む株式会社であり、一般利用者に向けて広くインターネット接続サービスを提供するアクセスプロバイダである。
(2)本件発信者の行為
 本件発信者は、原告の許諾を受けることなく、別紙3動画目録の「投稿日時」欄記載の日に、同目録の「販売画面URL」欄記載のインターネット上の「FC2コンテンツマーケットアダルト」という名称のウェブサイトに、本件動画のデータをアップロードして(以下「本件アップロード」という。)、本件動画を購入した者が本件動画をダウンロードできる状態に置き、もって公衆の求めに応じて自動的に公衆送信が行われる状態に置いた(甲3、4、6)。
(3)被告の本件発信者情報の保有等
 本件発信者は、インターネット接続サービスを提供する被告から別紙3動画目録の「IPアドレス」欄記載のIPアドレスの割当てを受けてインターネットに接続し、本件アップロードを行ったものであるから、被告は、「開示関係役務提供者」(プロバイダ責任制限法4条1項)に該当し、本件アップロードに係る本件発信者情報を保有している(甲3〜6、弁論の全趣旨)。
3 争点
(1)原告の権利が侵害されたことが明らかであるといえるか(争点1)
ア 原告は本件著作物の著作権を有するか(争点1−1)
イ 本件アップロードにより本件著作物の一部が送信可能化されたといえるか
(争点1−2)
(2)本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由はあるか(争点2)
4 争点に対する当事者の主張
(1)争点1(原告の権利が侵害されたことが明らかであるといえるか)について
ア 争点1−1(原告は本件著作物の著作権を有するか)について
【原告の主張】
 株式会社CAは、本件著作物の製作に発意と責任を有する映画製作者であるところ、本件著作物の著作者である監督は、株式会社CAに対してその製作に参加することを約束して本件著作物を製作したから、株式会社CAは、本件著作物の著作権を取得し、株式会社CAを吸収合併した原告は、本件著作物の著作権を承継取得した。
【被告の主張】
 不知。そもそも株式会社CAが本件著作物の著作権を有していたことは明らかではない。
イ 争点1−2(本件アップロードにより本件著作物の一部が送信可能化されたといえるか)について
【原告の主張】
 本件動画は、本件著作物の一部と実質的に同一であるから、本件アップロードにより本件著作物の一部が送信可能化されたものといえる。
【被告の主張】
 否認ないし争う。
 本件動画と本件著作物は、タイトル及び動画の長さが異なり、その同一性は明らかではないから、本件アップロードにより本件著作物の一部が送信可能化されたか否かについては明らかではない。
(2)争点2(本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由はあるか)について
【原告の主張】
 原告は、本件発信者に対し、本件アップロードについて、著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償等の請求をするために、被告が保有する本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。
【被告の主張】
 否認ないし争う。
 本件発信者に対して損害賠償請求訴訟等を提起するためには、発信者の氏名及び住所の開示を受けることで十分であり、電子メールアドレスの開示を受ける必要はないから、電子メールアドレスの開示を受けるべき正当な理由はない。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(原告の権利が侵害されたことが明らかであるといえるか)について
(1)争点1−1(原告は本件著作物の著作権を有するか)について証拠(甲7、8、10、11、18〜23)及び弁論の全趣旨によれば、本件著作物は映画の著作物であること、本件著作物の監督であるXは、本件著作物の脚本の創作や映像の編集等の総指揮を行って、脚本や映像内容に関する最終決定権限を有していたから、本件著作物の全体的形成に創作的に寄与した者に該当し、本件著作物の著作者に当たること、株式会社CAは、「エスワン」というメーカー名を使用して、本件著作物を最初に発意して企画し、本件著作物の製作費用全てを負担するなどの責任を負う主体、すなわち映画製作者に当たること、本件著作物の著作者であるXは、株式会社CAに対し、その製作に参加することを約束して本件著作物を製作したから、株式会社CAは本件著作物の著作権を取得したことが認められ、そうであれば、同社を吸収合併して同著作権を承継取得した原告は、本件著作物の著作権を有すると認められる。
(2)争点1−2(本件アップロードにより本件著作物の一部が送信可能化されたといえるか)について
 証拠(甲12)によれば、本件動画の一部についてのスクリーンショットと、対応する本件著作物の部分のスクリーンショットとは、モザイクの有無という相違点があるほかには特段の相違点はないから、本件動画の少なくとも上記部分は、対応する本件著作物の部分と同一であるというべきであり、本件動画の上記部分を含む本件動画についての本件アップロードにより、本件著作物の一部が送信可能化されたと認められる。
 この点、被告は、本件動画と本件著作物は、タイトル及び動画の長さが異なり、その同一性は明らかではないから、本件アップロードにより本件著作物の一部が送信可能化されたか否かについては明らかではないと主張するが、タイトル及び動画の長さの相違は上記認定を左右するものではないから、被告の同主張は採用することができない。
(3)小括
 以上のほか、本件発信者において本件著作物についての送信可能化権を行使する正当な権限を有していたことはうかがわれないことからすれば、原告は、本件発信者による本件アップロードによって、本件著作物について送信可能化権を侵害されたことが明らかであるというべきである。
2 争点2(本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由はあるか)について
 上記1によれば、原告は、本件発信者に対し、送信可能化権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権等を有することが認められ、その行使のために被告が保有する、本件アップロードに係る本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるものと認められる。
 被告は、本件発信者に対して損害賠償請求訴訟等を提起するためには、発信者の氏名及び住所の開示を受けることで十分であり、電子メールアドレスの開示を受ける必要はないから、電子メールアドレスの開示を受けるべき正当な理由はない旨主張するが、発信者が転居している場合等には電子メールアドレスが発信者を特定する手がかりになり得ることを踏まえると、電子メールアドレスの開示が不要であるということはできないから、被告の上記主張を採用することはできない。
3 結論
 よって、原告の請求は理由があるからこれを認容することとして、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第29部
 裁判長裁判官 山田真紀
 裁判官 伊藤清隆は、転官のため、裁判官 棚橋知子は、転補のため、それぞれ署名押印することができない。
裁判長裁判官 山田真紀


(別紙1)発信者情報目録
 別紙3動画目録記載のIPアドレスを同目録記載の投稿日時に使用して情報を送信していた者に関する情報であって、次に掲げるもの。
 1 氏名又は名称
 2 住所
 3 電子メールアドレス
(別紙2)著作物目録
 作品名 轟沈アクメ 脳髄から狂わせて 蒼井そら
 発売日 2010年7月7日
 メーカー エスワン
(別紙3)動画目録
 IPアドレス 111.105.21.34
 投稿日時 平成30年5月27日
 販売画面URL 省略
 動画タイトル 巨乳美女のイキまくりS〇]!!
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日本ユニ著作権センター
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