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【事件名】「ジル・スチュアート」ライセンス契約事件 【年月日】平成31年2月8日 東京地裁 平成28年(ワ)第26612号 パブリシティ権侵害等差止等請求事件(第1事件)、 同第26613号 著作権侵害差止等請求事件(第2事件) (口頭弁論終結日 平成30年11月30日) 判決 第1事件原告 ジル・スチュアート(以下「原告ジル」という。) 第1・第2事件原告 ジル・スチュアート(アジア)エル・エル・シー(以下「原告会社」といい、原告ジルと併せて「原告ら」という。) 上記両名訴訟代理人弁護士 飯田圭 同 外村玲子 同補佐人弁理士 北原絵梨子 第1・第2事件 被告株式会社 サンエー・インターナショナル(以下「被告」という。) 同訴訟代理人弁護士 取芳宏 同 矢倉信介 同 太田祐美子 同 藤野将生 同訴訟復代理人弁護士 一色和郎 主文 1 被告は、原告ら各自に対し、111万3230円及びうち100万円に対する平成28年8月24日から、うち10万円に対する同月25日から、うち1万3230円に対する平成29年12月21日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告会社に対し、415万円及びうち378万円に対する平成28年2月5日から、うち37万円に対する同年8月25日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 第1事件における原告ら及び第2事件における原告会社のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、原告ジルに生じた費用と被告に生じた費用の8分の1との合計の500分の499を原告ジルの、500分の1を被告の各負担とし、原告会社に生じた費用と被告に生じた費用の8分の7との合計の500分の499を原告会社の、500分の1を被告の各負担とする。 5 この判決は、第1項及び第2項に限り、仮に執行することができる。 6 原告らのために、この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求 1 第1事件(被告が請求を認諾した後のもの) (1)被告は、被告が管理運営するURL「http://(省略)」又は「http://(省略)」をトップページとするウェブサイトに別紙被告表示目録記載1の表示(以下、同目録の表示の符号に従い「被告表示1」などという。)をしてはならない。 (2)被告は、被告表示5の表示を付した商品タグ(千葉地方裁判所平成28年(執ハ)第16号事件に基づき執行官により保管された商品タグ合計167点を除く。)及び同商品タグを付した別紙被告商品目録記載の商品(以下「被告商品」という。)を廃棄せよ。 (3)被告は、原告ら各自に対し、6億3008万4000円及びうち5億9345万5980円に対する平成25年2月27日から、うち3008万4000円に対する平成28年8月25日から、うち654万4020円に対する平成29年12月21日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4)ア 主位的請求 被告は、別紙広告目録記載第1の広告を同目録記載第2の要領で掲載せよ。 イ 予備的請求 被告は、別紙広告目録記載第3の広告を同目録記載第4の要領で掲載せよ。 (5)被告は、被告が管理運営するURL「http://(省略)」のウェブページ及び被告商品に付する商品タグに別紙誤認防止表示目録記載第1の説明文を同目録記載第2の要領で表示せよ。 (6)第1事件に係る訴訟費用は被告の負担とする。 (7)仮執行宣言 2 第2事件(被告が請求を認諾した後のもの) (1)被告は、原告会社に対し、別紙被告写真目録記載1ないし126の各写真(以下、同目録の写真の符号に従い「被告写真1」などといい、総称して「被告写真」という。)を複製し、又は自動公衆送信してはならない。 (2)被告は、原告会社に対し、被告が管理運営するURL「http://(省略)」又は「http://(省略)」をトップページとするウェブサイトから、被告写真を削除せよ。 (3)被告は、原告会社に対し、被告写真及びその電子データを廃棄せよ。 (4)被告は、原告会社に対し、19億6352万2007円及びうち19億1350万6207円に対する平成25年2月27日から、うち5000万円に対する平成28年8月25日から、うち1万5800円に対する平成29年12月21日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (5)第2事件に係る訴訟費用は被告の負担とする。 (6)仮執行宣言 第2 事案の概要 1 第1事件は、ファッションデザイナーである原告ジル及びそのマネジメント会社である原告会社が、被告に対し、@被告のウェブサイトに被告表示1(原告ジルの氏名)及び2(同原告の肖像写真)を掲載した行為は原告ジルのパブリシティ権を侵害する、A被告のウェブサイトに被告表示1〜4を表示し又は被告商品に被告表示5を付す行為は、不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項14号の不正競争行為(品質等誤認惹起行為)に該当し、これにより原告らの営業上の利益等が侵害されたなどと主張して、被告に対し、次の(1)〜(5)(なお、第1事件の請求の趣旨の項番号に対応する。)を求める事案である。 (1)パブリシティ権又は不競法3条1項に基づく上記ウェブサイトにおける被告表示1の表示の差止め (2)パブリシティ権又は不競法3条2項に基づく被告表示5を付した商品タグ(千葉地方裁判所平成28年(執ハ)第16号事件に基づき執行官により保管された商品タグ合計167点を除く。)及び同商品タグを付した被告商品の廃棄 (3)パブリシティ権侵害の不法行為又は不競法4条に基づく損害賠償(予備的に不当利得返還請求)として合計6億3008万4000円及びうち5億9345万5980円(民法709条及び著作権法114条3項類推適用に基づく原告のパブリシティ権侵害に係る使用料相当損害額9億6000万円の一部)に対する後記修正サービス契約の終了日の翌日である平成25年2月27日から、うち3008万4000円(使用料相当損害金の一部である8万4000円と弁護士費用相当損害金3000万円の合計額)に対する第1事件の訴状送達の日の翌日である平成28年8月25日から、うち654万4020円(パブリシティ権侵害又は不競法4条に基づく調査費用、執行費用等の損害賠償)に対する不法行為の後である平成29年12月21日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払(原告らの不真正連帯債権) (4)ア 主位的に、パブリシティ権侵害(著作権法115条類推適用)又は不競法14条に基づく謝罪広告の掲載 イ 予備的に、パブリシティ権侵害(著作権法115条類推適用)又は不競法14条に基づく訂正広告の掲載 (5)不競法14条に基づく誤認防止表示の表示 2 第2事件は、後記ファッションイメージ写真の著作権を有すると主張する原告会社が、被告に対し、被告は被告ウェブサイトに原告のファッションイメージ写真(被告写真)を掲載して原告会社の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害したなどと主張して、次の(1)〜(4)(なお、第2事件の請求の趣旨の項番号に対応する。)を求める事案である。 (1)著作権法112条1項に基づく被告写真の複製及び公衆送信の差止め (2)著作権法112条2項に基づく被告のウェブサイトからの被告写真の削除 (3)著作権法112条2項に基づく被告写真の電子データの廃棄 (4)民法709条に基づく損害賠償(予備的に不当利得返還請求)として合計19億6352万2007円及びうち19億1350万6207円(著作権法114条3項による使用料相当損害金21億6678万円の一部、なお、予備的には18億5724円)に対する後記修正サービス契約の終了日の翌日である平成25年2月27日から、うち5000万円(弁護士費用相当損害金)に対する訴状送達の日の翌日である平成28年8月25日から、うち1万5800円(証拠収集費用に係る損害賠償)に対する不法行為の後である平成29年12月21日から、各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払 3 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により認定することができる事実(なお、証拠番号は原則として第1事件のものを用い、第2事件の証拠を挙示する場合は「第2甲1」などと表記する。なお、本判決を通じ、証拠を摘示する場合には、特に断らない限り、枝番を含むものとする。) (1)当事者 ア 原告ジルは、アメリカ合衆国ニューヨーク州出身のファッションデザイナーである。(甲1) イ 原告会社は、米国ニューヨーク州法に基づき、設立、所有及び経営されている法人である。原告会社は、日本を含むアジアにおいて、原告ジルのマネジメントを業とし、その肖像等に係るパブリシティ権の管理委託を受けており、原告ジルの肖像等の商業的利用につき、独占的利用権及び許諾権を有している。 原告会社の代表者である甲(以下「甲」という。)は、原告ジルの配偶者である。 ウ 被告は、衣料品、服飾雑貨の企画、製造加工、販売及び輸出入、特許権、実用新案権、意匠権、商標権等の工業所有権、その他の無体財産権の取得、売買、賃貸借及び仲介等を業とする株式会社である。 (2)被告と原告らとの間の契約又は合意 ア ライセンス契約の締結 被告は、平成8年2月頃、伊藤忠ファッションシステム株式会社(以下「伊藤忠ファッションシステム」という。)からジル・スチュアート・ブランド(以下「本件ブランド」という。)の紹介を受けた。その後、被告は、原告ら又は原告会社の関連企業(以下、併せて「原告側」という場合がある。)との間でライセンス契約を締結してマスターライセンシーの立場にあった伊藤忠ファッションシステムとの間でサブライセンス契約を締結し、サブライセンシーとなった。被告は、平成9年3月、日本における本件ブランドの1号店(以下「被告1号店」という。)を開店し、同ブランドは、1990年代後半になって、その知名度が急速に高まった。 イ 期限付き商標権譲渡契約の締結及び終了合意書の作成 (ア)平成14年頃には、伊藤忠ファッションシステムと原告側とは係争状態にあったところ、被告、伊藤忠ファッションシステム及び原告らから「ジル・スチュアート」関連商標の管理委託を受けているスチュアート甲ファミリートラスト(以下「トラスト」という。)を含む原告会社の関係会社は、同年(2002年)10月18日付けで、「放棄及び終了合意書」(乙19。以下「乙19の終了合意書」という。)を締結し、伊藤忠ファッションシステムは、これ以降、本件ブランドのアパレルビジネスから離脱した。 (イ)トラストと被告は、同日付けで、「終了合意書」(乙7。以下「乙7の終了合意書」という。)を締結し、@トラストが、デザイン、店舗、広告又はJS商標(同合意書の別表に記載された商標の総称)に基づく被告及びそのサブライセンシー等による製品の販売、販売の促進等に関連する一切の事項について承認する権利を有しないことを含め、日本におけるJS商標の使用又はそれに付随する権利の行使に関して承認する権利を有しないこと、Aデザイン料、広告若しくは販売促進費、ファッションショー参加費又は日本において原告ジルのデザインを使用する権利についての費用に関し、期限付き商標権譲渡契約(下記(ウ))に基づく支払等を除き、支払を要しないことなどを確認した。 (ウ)トラストと被告は、同日付けで、我が国における別紙商標権目録記載の商標権を10年間の期限付きで譲渡し、被告はその対価としてトラストに年間300万ドルを支払うことなどを内容とする商標譲渡条件契約(甲14。以下「期限付き商標権譲渡契約」という。)を締結した。 ウ 平成17年9月2日付けサービス契約の締結 原告会社と被告は、平成17年(2005年)9月2日付けで、契約期間を同年10月18日から平成24年(2012年)10月17日までとするサービス契約(乙30。以下「サービス契約」という。)を締結した。同契約においては、原告会社が、被告に対し、日本における使用のために、加工又は修正されている広告用材料を、次の春夏シーズンに使用されるものは12月1日頃、次の秋冬シーズンに使用されるものは6月1日頃に提供する義務を負い、被告は、広告制作費として、原告会社に対し、各契約年度の10月16日に年15万ドル(最後の2契約年度は17万ドル)を支払うことや、原告会社のコレクション製品のラインのサンプルの提供を受けた場合の金員の支払などについて定められた。 エ 基本合意書の作成 トラスト及びジルスチュアートインターナショナルエルエルシー(以下「JSインターナショナル」という。)と被告は、平成19年(2007年)2月頃、本件ブランドに関連する商標「JillStuart」を含む全世界での全ての商標権や、本件ブランド事業に関連する事業体の全ての株式等を、被告が買い取る方向で交渉を行い、基本合意書(甲74)を締結したが、最終的な合意には至らなかった。 オ 商標権譲渡契約及び修正サービス契約の締結 (ア)原告会社及びトラストと被告は、平成19年(2007年)4月13日付けで、韓国等を除くアジア地域における国際商標分類第25類、第18類及び第14類の婦人用衣服及びアクセサリーに使用される、原告ジルに関連する全ての商標権(別紙商標権目録記載の各商標を含む。)や、各商標に関連するグッドウィル等を、4500万USドルの対価で無期限に譲渡する旨の「商標権譲渡条件契約(日本)第三修正契約商標譲渡契約(中国、香港及び台湾)第二修正契約」(甲16。以下「商標権譲渡契約」という。)を締結した。 (イ)また、原告会社と被告は、同日、契約期間を同日から平成29年(2017年)4月12日までとし、原告会社がブランド相談業務、広告制作業務等の業務を提供し、被告がその対価を支払う旨などを定める「業務委託契約修正・改訂契約」(甲15。以下「修正サービス契約」という。)を締結した。その内容は、概ね、以下のとおりである。 a 業務手数料 被告は、本契約に基づき提供される業務の対価として、次のとおり、各契約年度の初めに、年間手数料を支払う。 @平成19年4月16日及び平成20年4月13日80万ドル (内訳:ブランド相談業務10万ドル、ファッションショー経費15万ドル、広告制作業務15万ドル、サンプル及び諸経費40万ドル) A平成21年4月13日及び平成22年4月13日84万ドル (内訳:ブランド相談業務10万5000ドル、ファッションショー経費15万7500ドル、広告制作業務15万7500ドル、サンプル及び諸経費42万ドル) B平成23年4月13日及び平成24年4月13日90万ドル (内訳:ブランド相談業務11万2500ドル、ファッションショー経費16万8750ドル、広告制作業務16万8750ドル、サンプル及び諸経費45万ドル) C平成25年4月13日及び平成26年4月13日95万ドル (内訳:ブランド相談業務11万8750ドル、ファッションショー経費17万8125ドル、広告制作業務17万8125ドル、サンプル及び諸経費47万5000ドル) D平成27年4月13日及び平成28年4月13日100万ドル (内訳:ブランド相談業務12万5000ドル、ファッションショー経費18万7500ドル、広告制作業務18万7500ドル、サンプル及び諸経費50万ドル) b 業務 原告会社が各契約年度において提供する広告制作業務等の内容は、以下のとおりである。 (a)広告制作業務 原告会社(デザイナーである原告ジルを含む。)は、被告に対し、見開き広告(雑誌)用1枚、1ページ広告(雑誌)用1枚及びポスター用1枚の3種類の画像であって、加工又は修正されている広告用材料と、米国におけるJSコレクションラインのために用意され、これまでのシーズンにおける手続どおりに被告から合理的に要求された他の広告用材料がある場合にはそれを記録した1枚以上のCD−ROMのコピーを提供する。かかる広告用材料は、次の春夏シーズンに使用されるものは12月1日頃、次の秋冬シーズンに使用されるものは6月1日頃に、被告に送付する。 (b)サンプル 原告会社は、コレクション製品、セカンドライン製品及び/又は子供用製品のサンプルを、これまで被告に提供された数量に相当する数量で、秋シーズン、春シーズン及びリゾートシーズンごとに提供する。原告会社がこれまで被告に提供された数量に相当する数量のサンプルを提供しない場合、「サンプル又は諸経費」に割り当てられる業務手数料は、按分計算により、原告会社から被告に払い戻される。 (3)被告による修正サービス契約の解除 被告は、平成25年(2013年)2月8日頃、原告会社に対し、同日付け通知書により、原告会社が修正サービス契約で定められたデザインサンプルの提供をせず、これにつき前払を受けた45万ドルの返還もしないなどとして、同月26日をもって同契約を解除する旨の本件解除の意思表示をした(以下、これによる修正サービス契約の解除を「本件解除」という。)。(甲17) (4)原告写真の利用許諾 原告会社は、本件解除までに、平成9年(1997年)春夏シーズンから平成25年(2013年)春夏シーズンまでの間、被告に対し、シーズンごとの宣伝広告物、ファッション雑誌等に広く掲載されて利用されるファッションイメージ写真である別紙原告写真目録記載1〜126の各写真(以下、それぞれを番号に従い「原告写真1」などといい、併せて「原告写真」という。)のデータを順次交付し、これらを被告商品の宣伝広告及び販売促進のために利用することについて許諾していた(利用許諾の範囲及び期間には争いがある。)。 (5)被告表示1〜5の表示等 ア 被告は、URL「http://(省略)」をトップページとする「ジル・スチュアートオフィシャルホームページ」と題するウェブサイト(以下「被告ウェブサイト」という。)を運営している。 イ 平成27年頃の被告ウェブサイトは、トップページのほか、「COLLECTION」、「LOOKBOOK」、「CONCEPT」、「GALLERY」、「ONLINESHOP」、「SHOPLIST」、「NEWS」等のコンテンツのページを含み、また、トップページから被告のブランドである「JILLSTUARTWhite」や「JILLSTUARTNEWYORK」のウェブサイトへのリンクが張られている。(甲69) ウ CONCEPTページ(「http://(省略)」)には、「DesignConcept」のタイトルの下に「自分のスタイルを持つ女性たちへ」として被告表示4が表示され、「AboutJillStuart」のタイトルの下に被告表示1、その右に被告表示2、被告表示1の下に被告表示3がそれぞれ表示されている。(甲69) エ 被告は、被告ウェブサイトのGALLERYページに、平成9年(1997年)春夏シーズンから平成25年(2013年)春夏シーズンまでのファッションイメージ写真である原告写真を複製した被告写真を掲載していた。(甲69) オ 被告ウェブサイトは、遅くとも平成28年2月5日(後記(6)ウの仮処分の審尋期日)頃までには改定されて、CONCEPTページやGALLERYページが削除された。ただし、被告ウェブサイトの英語版(以下「被告英語版ウェブサイト」といい、被告ウェブサイトと併せて「被告ウェブサイト等」という。被告ウェブサイト英語版のトップページのURLは「http://(省略)」)のCONCEPTページ(「http://(省略)」)には、同年7月26日時点において、被告表示1の英字部分、被告表示2、被告表示3及び4の英訳が表示されていた。被告は、同年8月24日、第1事件の訴状を受領し、その頃、同ウェブページを外部から閲覧できないようにするなどの措置を講じた。(甲94、弁論の全趣旨) カ 被告は、平成9年頃から被告商品に被告表示5を付し、また、同表示を付した被告商品を販売し、引き渡し、販売・引渡しのために展示し、輸入していた。 (6)原告らと被告との間の訴訟等 ア 原告会社及びトラストの受託者としての甲は、平成24年(2012年)5月9日、被告及びサンエーインターナショナルUSAエルエルシー(以下「サンエーUSA」という。)等を相手方として、米国ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所に訴えを提起し、被告らは契約上合意された範囲外である製品を制作、販売しているなどと主張して金銭の支払を求めたが、同裁判所は、同年11月5日、被告らは契約の非当事者であり、適切な裁判所で侵害請求などに基づき損害賠償を求めるべきであるなどとして、請求棄却の申立てを認め、その控訴審も、平成26年(2014年)5月14日、控訴を棄却した(以下、この訴訟を「米国訴訟1」という。)。(甲36、37、乙5) イ 原告会社は、平成25年(2013年)2月21日、本件解除の効力を争い、被告及びサンエーUSAを相手方として、米国ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所に訴えを提起したが、同裁判所は、同年4月25日、被告の請求棄却の申立てを認め、その控訴審も、同年12月18日、原告会社の控訴を棄却した(以下、この訴訟を「米国訴訟2」という。)。(甲67、68) ウ 原告らは、上記アの判決を踏まえ、平成27年9月4日、被告を相手方として、東京地方裁判所に対し、仮処分(以下「本件仮処分」という。)の申立てをした(同裁判所平成27年(ヨ)第22080号)。同申立てにおいて、原告らは、被告表示1及び2を被告ウェブサイトに表示する行為について、原告ジルが保有し原告会社が独占的管理権を有するパブリシティ権を侵害する、また、被告表示1〜4を被告ウェブサイトに、被告表示5を被告の商品に表示することが不正競争行為(品質誤認惹起行為)に該当すると主張して、被告ウェブサイトへの被告表示1〜4の表示の差止め、被告商品に被告表示5を付すこと又は同表示を付した商品の譲渡等の差止め及び被告表示5を付した商品タグ及び同商品タグを付した被告商品の執行官による保管等を求めた。同裁判所は、平成28年3月8日、原告らの申立てを認容する決定(以下「本件仮処分決定」という。)をした。(甲87、乙33) エ 千葉地方裁判所の執行官は、平成28年3月14日、原告らの申立てにより、本件仮処分決定に基づき、千葉そごう本館2階の被告店舗において、被告表示5を付した商品タグ及び同商品タグを付した被告商品を執行官に引き渡し保管する執行(以下「本件執行」という。)として、同商品タグ167点を引き上げ執行官保管とした(以下「本件執行官保管」という。)。なお、その際、被告従業員が同タグの被告商品からの除去を申し出たため、同所にあった被告商品は同店舗に返還された。(甲89) (7)被告による請求の一部認諾 原告らは、第1事件訴状において、被告に対し、前記第1の1記載の各請求に加え、@被告ウェブサイト等における被告表示2〜4の表示の差止め、A被告商品に被告表示5の表示を付し、又は同表示を付した被告商品の譲渡、引渡し、譲渡又は引き渡しのための展示若しくは輸入の差止めも求めていたが、被告は、第1事件の第1回口頭弁論期日において、上記@、A及び本件執行官保管に係る被告表示5の表示を付した商品タグの廃棄を求める部分(前記第1の1(2)参照)に係る請求の認諾をした。 (8)消滅時効の援用 被告は、平成30年2月5日到達の被告第10準備書面により、原告らに対し、第1事件に係るパブリシティ権侵害に基づく使用料相当損害賠償債務のうち平成25年8月9日以前のものにつき、また、原告会社に対し、第2事件に係る著作権侵害に基づく損害賠償債務のうち同日以前のものにつき、消滅時効を援用する旨の意思表示をした。 4 争点 【第1事件について】 (1)パブリシティ権侵害の成否(争点1) ア 原告ジルのパブリシティ権の侵害の有無(争点1−1) イ 原告らによる同意、承諾の有無(争点1−2) (2)品質等誤認惹起行為該当の有無(争点2) (3)信義則違反ないし権利濫用の成否(争点3) (4)差止めの可否及び必要性(争点4) (5)被告の故意、過失の有無(争点5) (6)原告らの損害及び損害額(争点6) (7)謝罪広告又は訂正広告の要否(争点7) (8)誤認防止表示の要否(争点8) 【第2事件について】 (9)原告写真の著作権の所在(争点9) (10)原告写真の利用許諾の目的及び期間等(争点10) (11)信義則違反ないし権利濫用の成否(争点11) (12)差止めの必要性等(争点12) (13)被告の故意、過失の有無(争点13) (14)原告会社の損害額(争点14) 第3 争点に関する当事者の主張 【第1事件について】 1 争点1(パブリシティ権侵害の成否)について (1)争点1−1(原告ジルのパブリシティ権の侵害の有無)について (原告らの主張) ア 原告ジルの肖像及び氏名は強い顧客吸引力を有するので、原告ジルはパブリシティ権を有する。 原告ジルは、世界的に著名なファッションデザイナーとして活躍しており、ファッション業界内ではもとより、社会的にも耳目を集める存在である。原告ジルは、「VOGUE」や「ELLE」などのファッション雑誌や新聞、テレビ等でも頻繁に取り上げられ、日本でも新聞、雑誌、テレビ等で多数回にわたり掲載・紹介されている(甲1〜8、27〜34、72、84等)。 また、原告ジルは、企業と協力してブランド事業を展開してきており、その一社である株式会社コーセーは、ウェブサイトで原告ジルのメッセージとともに氏名及び肖像写真を継続的に掲載・紹介し(甲35)、被告も、従前、原告ジルのインタビュー映像から日本上陸15周年のコメントを抜粋し、自社のウェブサイトのトップページに継続的に掲載していた(甲73)。このように、原告ジルは、ファッション業界的にはもちろん、社会的にも耳目を集める存在であり、特に、20代〜50代の女性から強い支持を得ている日本でも著名な存在であるから、その肖像等は、強い顧客吸引力を有し、パブリシティ権を有する。 原告ジルや、その肖像等の商業的利用につき独占的利用権及び許諾権を有する原告会社は、原告ジルの肖像等の利用につき、大きな営業上の利益を有している。 イ 被告による原告ジルの氏名、肖像の無断使用は、その客観的な使用態様からして、肖像等を商品等の広告として使用するものであり、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするものである。 すなわち、被告ウェブサイトにおいて、そのトップページに新着商品や人気商品の写真と販売価格が表示され、NEWSページに期間限定商品、コラボレーション商品、セール情報が表示され、ONLINESHOPページにワンピース、スカート、ニット等の被告商品が多数掲載されていることなど(甲11、69)からすれば、被告ウェブサイトは、全体として、被告商品の購入の誘引を目的及び内容とするものである。 そして、被告表示1及び2は、NEWSページ等と同様にトップページ上にタグが設けられたCONCEPTページに表示されているところ、原告ジルの氏名である被告表示1は同ページの左側中央部に、原告ジルの肖像写真である被告表示2はその右側中央部に、それぞれ大きく目立つように表示されている。また、同各表示は、原告ジルの女性服についてのデザイン、コンセプトに関する被告表示3や、女性たちへのスタイルの提案を内容とする被告表示4に近接している。消費者等は、被告表示1及び2により、原告ジルが被告商品のスタイル、コンセプト、デザイン等(以下、併せて「デザイン等」という。)に関与しているか、少なくともこれらを推奨しているとの認識、理解に至る。 以上によれば、被告は、被告表示1及び2を、専らそれが有する顧客吸引力を利用する目的で、被告商品の広告として使用しているということができる。 (被告の主張) ア 原告ジルの肖像等は、被告の有する商標と離れた独自の顧客吸引力は有しないので、原告ジルがパブリシティ権を有するとの原告らの主張は争う。 原告ジルは、日本において被告ら日本企業が有するマスメディアとのコネクションにより、ブランド紹介の一環として雑誌、新聞、テレビ等のマスメディアに紹介記事が掲載されたにすぎず、特に本人が耳目を集める存在というわけではない。このことは、東京、大阪及び名古屋における原告ジルの認知度が1%を切る(特に大阪では0%)というアンケート結果(乙78、81)によっても明らかである。 原告ジルの手がけたインポート商品と被告がデザイン・製造する商品との売上比率は、前者の比率が最も高かった平成9年ですら1対9であり、平成23年にはインポート商品の売上高に対する比率が2.2%、平成25年には0.6%にまで低下し、修正サービス契約が解除された平成25年2月の直前におけるインポート商品の日本における売上げは0円であった。インポート商品は、縫製等の状態が非常に悪く、在庫処分に悩まされるなど、本件ブランドの日本における成功に対し全く貢献していない。 原告ジルは、被告との提携を開始した平成9年時点で、本国である米国においてすら独立した店舗を有しておらず、現在も何とか形式上1店舗を維持しているにすぎない。本件ブランドの日本における成功は、被告の努力によるものであって、原告ジルの氏名の顧客吸引力によるものではなく、原告ジルの肖像等は、被告の有する商標と離れた独自の顧客吸引力は有しない。 イ 被告表示1及び2は、商品等の広告として使用するものではなく、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするものということはできない。被告表示1及び2は、被告ウェブサイトのCONCEPTページに掲載されていたものであるが、同ページは本件ブランドの来歴を示すものであり、原告ジルの顧客吸引力の利用を目的とするものではない。実際に、被告表示1〜4を被告ウェブサイトから削除した前後で被告の売上げに変化はないことからしても、被告表示1〜4に特段の価値がないことが明らかである。 なお、被告英語版ウェブサイトは、被告ウェブサイトの管理のために利用するためのものであって、広告を目的とするものではない。 (2)争点1−2(原告らによる同意、承諾の有無等)について (被告の主張) 原告らは、平成27年9月に本件仮処分を申し立てるまで、被告が被告表示1〜4を使用することを許諾していた。 被告は、平成9年3月の日本1号店の開店に先立ち、伊藤忠ファッションシステムを介して、原告側から、被告表示3の経歴部分のベースとなった原告ジルの英文の経歴と、被告表示3の括弧で引用された2つのコメントを含む英文のコメントを、原告ジルの写真とともに受領し、これらを積極的に使用するよう伝えられた(乙80)。被告は、それ以降、被告表示1、3及び4を用いて本件ブランドの経緯の説明を行ってきた。 平成14年10月18日付けの期限付き商標権譲渡契約書(甲14)及び乙7及び19の終了合意書においては、被告の広告及び販売促進活動についてトラストが承認する権利はなく、被告がトラスト等に対して将来的に支払わなければならないのは期限付き商標権譲渡契約の対価のみであることが確認されている。期限付き商標権譲渡契約の対価には、被告ウェブサイトにおいて被告表示1、3及び4を用いて本件ブランドの経緯を説明するなど、被告の広告及び販売促進活動において原告ジルの肖像等を使用する対価や、個々の被告商品のデザインについて原告ジルが現在でも関与又は推奨していると消費者が理解するような表示をすることの対価が含まれている。 また、被告表示2に関し、被告は、平成15年に、原告会社代表者である甲から同表示2に係る写真をポジフィルムとともに手交され、本件ブランドの経緯を説明する際に使用する原告ジルの肖像写真の差替えを求められたことから、同表示を用いるようになった(甲83、乙23〜25、80)。乙7及び19の終了合意後に被告表示2の写真が被告に提供されたことは、原告らが被告製造商品について原告ジルの紹介を行うことを自ら求めていたことを示している。 被告前代表者乙(以下「乙」という。)は、平成17年頃に甲に会った際、本件ブランドの日本語のウェブサイトを開設する意向であることを伝え、了承を得て、平成18年に同サイトを開設した。甲によるウェブサイト開設の了承には、被告ウェブサイトに原告ジルの経歴とコメントを掲載することについての承諾が含まれている。 その後、平成19年4月13日に商標権譲渡契約が締結され、被告は、トラストから、本件ブランドの関連商標をこれに関連するグッドウィルとともに譲り受けた。被告はそれ以前から被告ウェブサイトにおいて被告表示1〜4を使用していたにもかかわらず、同契約の際に同各表示の使用に関する規定は何ら置かれなかったことによれば、原告らが被告表示1〜4を使用することについて同意又は承諾をしていたことは明らかである。 トラストは、米国訴訟1において、被告ウェブサイト上のバナーに記載されていたヤシの木の柄の利用を問題としていたから、被告ウェブサイトを継続的に確認していたことが明らかである。にもかかわらず、原告らは、本件仮処分命令申立てに至るまで、一度も被告表示1〜4を問題視したことはなかった。 以上によれば、少なくとも本件仮処分命令の申立てに至るまでは、原告らは被告による被告表示1〜4の使用を許諾していたということができる。 (原告らの主張) 原告ジルは被告に対して被告表示1〜4の使用を承諾したことはない。 原告らは、被告に直接被告表示3〜5を交付していないし、被告が指摘する乙7及び乙19の終了合意書は、伊藤忠ファッションシステムが契約関係から離脱して従前の金銭支払を清算する目的で締結されたものであり、被告が指摘する条項は、原告ジルの肖像等の利用許諾とは関係がない。 被告表示2に関し、甲は、原告ジル自身を紹介する目的で同表示に係る肖像写真を付与したものであり(そのため、他のマスメディアにも交付され、利用されていた(甲83)。)、被告商品の広告及び販売促進のために交付したものではない(甲77)。そもそも、原告らが被告表示2の写真を提供した平成15年に被告ウェブサイトは存在していなかったから、被告表示1及び2を被告ウェブサイトで使用することは当事者双方とも想定していなかった。 被告は、平成19年2月頃、基本合意書に基づき原告会社等と本件ブランド全体の買取りを交渉したにもかかわらず、あえて商標権譲渡契約により特定の商標権等に限定して譲り受けることにしたのであるから、原告ジルの肖像等の利用許諾権など、それ以外のものは譲渡対象から意識的に除外されているものである。原告ジルのようなセレブリティを宣伝広告に起用する場合、多額のライセンス料を規定する契約を締結するのが一般であるから、こうした契約が締結されていないことは、原告らが被告に原告ジルの肖像等の利用を許諾していないことを示している。 そして、甲は、被告と良好な関係にあることを前提として、被告表示2の写真を被告に提供し、個人デザイナーとしての原告ジルに言及することや、個人デザイナーとしての原告ジルの経歴を公表することに使用する権原を被告に与えたにすぎない(甲77)。甲は、被告と原告らの関係が解消した後に使用する権原を付与したものではないので、被告による被告表示1及び2の使用はその交付目的及び許諾範囲を逸脱する。 被告が指摘する米国訴訟2における主張に関しては、修正サービス契約が有効であることを前提としていたため、被告による被告表示1〜4の使用行為に異議を唱えることを控えていただけであって、それを黙認した事実はない。原告らは、被告各表示の使用を黙認したことはなく、継続的に被告の行為を問題としてきた。 被告は、修正サービス契約の終了によって、原告ジルが自己の肖像等を何らの関与もしていない被告商品の広告に使用することを許容する意思を有しないことを当然に知り、又は知り得べきであった。このため、仮に原告ジルによる許諾があったとしても、同契約の終了により、その許諾は終了した(甲38)。 なお、原告らは、被告に対し、商標権譲渡契約に基づく譲渡対象商標を単に商標として使用する行為につき、異議を唱えるものではない。 2 争点2(品質等誤認惹起行為該当の有無)について (原告らの主張) 原告ジルの氏名及び肖像写真は、日本の新聞、雑誌等に頻繁に取り上げられるなどして(甲8、10、27〜34)、日本でも著名であるから、被告表示1〜4が被告ウェブサイトで表示されれば、消費者等は、原告ジルが被告商品のデザイン等に関与又は推奨していると認識する。また、被告表示5の内容からして、これに接した消費者等は、被告表示1〜4もあいまって、原告ジルや原告会社が被告と提携関係を有しており、被告商品のデザイン等に関与又は推奨していると認識する。 被告は、平成25年2月26日をもって修正サービス契約を解除し、同日以降、原告らと被告との間には提携関係を含む何らの契約関係もないのであるから、被告表示1〜5は事実に反するものである。そして、被告商品のようなブランド商品は、誰のいかなるデザイン等によるものであるか、あるいは誰に推奨されているかなどの点が、商品価値に関し極めて重要性を有するから、被告表示1〜5の意味内容が事実に反することは、被告商品の品質、内容について高い商品価値を有するものであるかのように消費者等に誤認させる表示であるといえる。 したがって、被告表示1〜5は、いずれも、消費者等に対し、被告商品の品質、内容について誤認させるような表示であるから、被告が被告ウェブサイトで被告商品の広告に被告表示1〜4を使用し、被告商品に被告表示5を付し又は被告表示5を付した被告商品を販売等する行為は、不競法2条1項14号の不正競争行為に該当する。 (被告の主張) 原告が主張する被告の行為は、不競法2条1項14号の不正競争行為に該当しない。 被告表示1の使用方法には様々な態様があり得るのであり、消費者等が同表示により原告ジルが被告商品のデザイン等に関与又は推奨していると認識するとは考えられず、CONCEPTページが本件ブランドの来歴を示すためのものにすぎないことは前記のとおりである。また、消費者等は、被告表示5により、被告商品が原告らの企画・製造でなく、被告の企画・製造に係る製品であることを正しく認識するにすぎない。 原告ジルは、我が国において著名なわけではなく、消費者等は原告らの関与・推奨があるから被告商品を購入するということはないから、被告表示1〜5は、公的機関による品質・内容の保証のような場合とは異なり、消費者等に商品の品質につき誤認を生じさせるものとはいえない。 3 争点3(信義則違反ないし権利濫用の成否)について (被告の主張) 修正サービス契約の解除と被告表示1〜5の使用には関連性がないが、仮に何らかの関連があるとしても、被告が同契約を解除したのは、同契約に基づいて提供されるべきサンプルが原告らから提供されなかったことに起因するのであり、また、第1事件の訴訟は、インポート商品の品質が悪く、原告らが手掛けるビジネスが成功していないため、原告らが被告に金銭の無心をするために提起したものであるから、原告らが同契約の終了を理由として被告表示1〜5の使用の差止めや損害賠償等を求めることは、信義則に反し、権利濫用に当たる。 (原告らの主張) 被告は、自ら修正サービス契約を解除しておきながら、原告会社が同契約の終了に基づく効果を主張することが信義則に反し、権利濫用に当たるなどと主張するが、失当である。原告会社は、世界20か国以上で事業を展開し、多額の売上げを上げているから、被告に金銭の無心などするはずもない。原告会社は、原告ジルが発信する各シーズンのデザイン作品を軸として、統一的なブランドイメージ戦略の下で世界各国において事業を展開しており、ブランドイメージを維持し保護する責任を負っていることから、被告の権利侵害行為を看過することができず、やむなく本訴の提起に及んだのである。 4 争点4(差止めの可否及び必要性)について (原告らの主張) (1)営業上の利益の侵害の存否 被告の不正競争行為により、原告らの営業上の利益が侵害された。 品質等誤認惹起行為により営業上の利益を侵害される者とは、当該行為者の直接の具体的な競業者に限定されず、消費者保護の観点から請求権の適切な行使を期待し得るような、同業者も含め実質的な営業上の利害関係を有する者をも広く含むと解すべきである。 商品のデザインは、ファッションデザイナーにとって核となる極めて重要な要素であり、自己がデザイン等に関与していない商品について関与したと誤解されること自体が深刻な損害であり、これにより原告らの営業上の信用は毀損(希釈化)された。 とりわけ、被告が平成27年5月15日、同年8月末頃に子供服に関する被告ブランド3を含む9つのブランド事業を廃止する旨の発表をしたこと(甲23〜25、39)により、本件ブランド関連事業の縮小・廃止に原告ジル本人が関係しているかのような誤解を生ぜしめたことによる営業上の信用毀損の程度は大きかった。原告らの営業上の利益が侵害されたことは、消費者アンケート(甲130の47頁図表D11)の結果に照らしても、明らかである。 (2)差止めの必要性 被告は、本件仮処分決定後も被告表示5を商品タグに付した被告商品を店舗に陳列、販売し、また、被告を主要事業子会社とする株式会社TSI(以下「TSI」という。)は、被告表示1を表示する英語版被告ウェブサイトを継続するなど、本件仮処分決定に実質的に違背する行為を公然と行っている。また、被告は、被告表示1及び2により原告ジルのパブリシティ権を侵害したこと及び被告表示1〜5により原告らの営業上の利益を侵害する品質等誤認惹起行為を行ったことをいまだに争っているのであるから、現在においても、被告が上記各行為を行うおそれがある。 (被告の主張) (1)営業上の利益の侵害の存否 品質等誤認惹起行為により営業上の利益を侵害される者であるというためには、当該行為をする者の同業者(競争事業者)であることが必要とされるが、原告らは、トラストを介して本件ブランドに関する商標権等を被告に譲渡しており、日本において被告商品と競合する製品についての営業をしていないから、被告表示1〜5により原告らの営業上の利益が侵害されることはなく、原告らの営業活動に関する経済上の社会的評価が低下したことを示す証拠もない。 被告は、原告ジルの氏名に係る商標を譲り受け、これを使用することができるのであるから、仮に被告がそれらを使用することによって被告と原告らとの結びつきに関して消費者等に誤解が生じたとしても、原告らはそのことを許容しているというべきであるから、被告表示1〜5の使用によって原告らの営業上の信用が毀損されることはない。上記アンケートは、調査方法が不適切であるから、証拠とはなり得ない。 (2)差止めの必要性 ア 被告表示5の使用等の差止請求に関し、被告は、本件執行により執行官保管されている商品タグ及び同商品タグを付した被告商品の廃棄については認諾しており、本件執行官保管に係る商品タグ以外に、被告表示5を付した商品タグや、同商品タグを付した被告商品は存在しない。 被告表示5は、平成9年頃に伊藤忠ファッションシステムを介して原告側から記載するよう求められたもので、本件仮処分申立てまでの間、原告側から修正を求められたことがなかったために継続使用していたにすぎない。被告表示5は、本来被告には不要な表示であって、既にこれを削除する対応を取っており、被告が、コストをかけて再度被告表示5を使用することはあり得ない。 このため、被告が被告表示5を継続して使用するおそれはない。 イ 被告表示1の使用の差止請求に関し、被告は、被告ウェブサイトにおいて、本件ブランドの由来を説明するのに必要な範囲で同表示を使用する可能性があるものの、それ以外の態様で使用する意向はない。 原告らの前記第1の1(1)の差止請求が認容されるためには、被告ウェブサイト及び被告英語版ウェブサイトのいずれの場所に被告表示1を掲示した場合でもパブリシティ権侵害に該当することを主張立証しなければならないが、被告表示1のみでパブリシティ権侵害が生じるとはいえないことは明らかである。被告表示1のみを切り離し、そのウェブサイトにおける使用を一律に禁止するとすれば、被告が正当に保有する商標の使用との実質的区別が困難となってしまい相当でない。 (3)請求適格 原告会社は、パブリシティ権の利用許諾を受けた者にすぎないから、パブリシティ権に基づく固有の差止請求権を有しない。 5 争点5(被告の故意、過失の有無)について (原告らの主張) 被告は、原告ジルがデザインした高級織布を使用し、また、原告らから正式なデザインの供給や承認を受ける場合には、修正サービス契約に従い正規の適正な費用を支払う手続が必要であることを十分に認識していたにもかかわらず、原告会社との修正サービス契約を解約することによって原告らと何ら事業上の関係がなくなった後も、被告表示1〜4を被告ウェブサイトに表示して被告商品の宣伝広告を行い、また、被告表示5を被告商品に付して全国的に販売活動を展開していたのであるから、被告は、故意に又は意図的に、原告ジルのパブリシティ権を侵害し、不正競争行為を行ったことは明らかであるし、少なくとも被告に過失が認められる。 (被告の主張) 否認する。修正サービス契約の解除と被告表示1〜5の使用の可否とは無関係である。被告に対し被告ウェブサイト等において原告ジルの紹介をするように求め、被告表示5を商品タグに付すことを求めたのは原告らであり、被告は、本件仮処分の申立てに至るまで被告表示1〜5の使用の停止を求められたことはなかったのであるから、被告にはパブリシティ権侵害や不正競争行為についての故意はもとより過失もない。 6 争点6(原告らの損害及び損害額)について (原告らの主張) (1)パブリシティ権侵害に基づく使用料相当損害 ア 損害の内容 原告らは、パブリシティ権としての肖像等の利用につき許諾を与える排他的権限を有するから、被告による被告表示1及び2の無断使用により、原告ジルの肖像等のパブリシティ価値(顧客吸引力)に係る営業上の利益が害され、その使用料相当の損害を被った。 イ 使用料相当損害額の算定方法 パブリシティ権侵害による損害額の算定には著作権法114条3項が類推適用され、原告らは、原告ジルのパブリシティ権を侵害したことに基づく損害賠償として、被告に対し、使用料相当損害額を請求することができる。 使用料相当額の算定は、原則として侵害品の売上高に実施料率を乗じて算定するのが相当であるので、本件における使用料相当損害額は、被告の売上高に相当使用料率を乗じて算定されるべきである。 ウ 被告の売上高の対象及び期間 被告の「JILLSTUART」ブランド、「JILLSTUARTWhite」及び「JILLSTUART/NEWYORK」ブランドに関する被告の売上高は、年間約40億円であるから、修正サービス契約終了日である平成25年2月26日から平成28年2月5日の本件仮処分申立事件の審尋期日までの約3年間の売上高は120億円を下らず、また、被告のパブリシティ権侵害行為が一応中断された上記審尋期日から平成29年12月31日までの約2年間の売上高は、80億円を下らない。 被告ウェブサイトにおける原告ジルのパブリシティによる被告商品への広告効果は、被告ブランド1に係る商品はもちろん、被告ブランド2に係る商品や被告ブランド3に係る子供用ファッション分野の各種商品にも及び、これら全ての売上高が考慮されるべきである。 また、原告ジルのパブリシティの無断使用の結果、消費者等に原告らが被告と提携しているなどの誤認が生じたことによる広告又は需要喚起の効果は、その性質上当然に、かかる行為が一応中断された後であっても、打消し表示の効果が生じるまで、相当期間安定的に存続する。このため、売上高の対象期間には、パブリシティ権侵害行為が一応中断された後の期間も含めるべきである。 エ 相当使用料率 本件においては米国におけるパブリシティ・ライセンス契約所定のロイヤリティ料率の例に徴して相当使用料率を算定するのが合理的であるところ、米国におけるセレブリティ・エンドースメント・ライセンシングにおけるロイヤリティ料率の中間値は、安定的に5%であるとされている(甲131)。そして、いわゆる侵害プレミアムを十分に考慮すべきであることや、被告のパブリシティ権侵害行為が一応中断された後は、広告効果が時間の経過とともに漸減するとも考え得るため、パブリシティ権侵害行為が継続されていた期間における相当使用料率の半分程度をもって相当使用料率とするのが合理的であることを併せ考慮すれば、本件の相当使用料率を、平成25年2月26日から平成28年2月5日頃までの間は6%、同日頃から平成29年12月31日までの間は3%とするのが相当である。 オ 使用料相当損害額 以上によれば、平成25年2月26日から平成28年2月5日頃までの期間の損害額は7億2000万円(=120億円×0.06)、同日頃から平成29年12月31日までの損害額は2億4000万円(=80億円×0.03)となり、損害額合計は9億6000万円であるが、本訴では、このうち5億9353万9980円を請求する。この損害賠償債権は、原告らの不真正連帯債権となる。 (2)積極損害 原告らは、被告のパブリシティ権侵害行為及び不正競争行為(前記のとおり、原告らには被告の不正競争行為により営業上の利益が侵害された。)により、以下のとおり、合計3654万4020円の積極損害を被ったので、そのうち654万4020円を請求する。この損害賠償債権も、原告らの不真正連帯債権となる。 ア 侵害調査費用12万9060円 (ア)本件仮処分申立てに当たり購入した被告商品代1万8900円(甲18、19) (イ)本件仮処分申立てが認容される見込みが強くなった平成27年末に、証拠の保全のために購入した被告商品代10万7460円(甲70) (ウ)本件仮処分決定直後に被告の遵守状況を調査した際、被告の違反行為に係る証拠の保全のために購入した被告商品代2700円(甲88) イ 本件執行費用8万4000円(甲92、93) ウ 消費者アンケート調査報告費用・評価報告費用633万0960円(甲186) (ア)消費者アンケート調査報告費用492万4800円(甲186) 原告らは、本件訴訟において、被告の不正競争行為による原告らの営業上の利益の侵害の発生、被告のパブリシティ権侵害行為及び不正競争行為の故意性や意図性、被告のパブリシティ権侵害における相当使用料率、原告らのパブリシティ価値の毀損や営業上の信用の毀損等について、被告が争ったため、これらを客観的かつ具体的に立証するため、消費者アンケート調査(以下「原告アンケート調査」という。甲130)を実施せざるを得なかったから、これは、被告のパブリシティ権侵害行為や不正競争行為と相当因果関係のある積極的損害に当たる。 (イ)被告のアンケートの評価報告費用140万6160円(甲187) 原告は、原告アンケート調査に対する反対証拠として被告が提出した衣類・服飾雑貨に関するアンケート調査(以下「被告アンケート調査」という。乙78、81)に対し、更に反証するため、しかるべき調査機関の検討を委託して評価報告書(甲158)を提出せざるを得なかったから、これも、被告のパブリシティ権侵害行為や不正競争行為と相当因果関係のある積極的損害に当たる。 (3)弁護士報酬相当額3000万円 (4)消滅時効について 被告の消滅時効の成立の主張は争う。修正サービス契約締結終了前後において、原告らが被告表示1及び2が使用されていることを認識していたことの立証はない。 なお、原告らは、予備的に、上記損害賠償債権額と同額の不当利得返還請求を主張する。(被告の主張) (1)パブリシティ権侵害に基づく損害について 全て争う。 ア 損害の内容について 使用料相当損害に加えてパブリシティ価値毀損による損害が認められるためには、使用料相当損害額では損害が填補できないといった事情が必要である。被告による被告表示1及び2の使用は、もともとは原告側が同意していたものであって、原告ジルの肖像等の顧客吸引力を毀損するような使用態様ではないから、パブリシティ価値毀損による損害は認められない。 イ 使用料相当損害について 被告は、本件ブランドに係る商標の商標権者であり、被告における本件ブランドの売上げは、被告の商標及び被告が企業努力により築き上げたブランドを源泉としているものであって(第2乙82)、原告ジルのパブリシティ権を源泉とするものではないから、無権原者による権利侵害と同視し得るものではなく、パブリシティ権侵害に基づく損害賠償額は、被告の売上高をベースとして算定すべきものではない。また、原告らが各自損害賠償請求をすることができる根拠も不明である。 原告ジルの認知度は、東京及び名古屋で1%弱、大阪に至っては0%であること(第2乙78、81)等からして、原告ジルのパブリシティ権侵害が仮に認められたとしても、その損害額は極めて少額となる。 (2)積極的損害について 全て争う。原告らの不真正連帯債権となる根拠も不明である。 ア 侵害調査費用について 原告らが10点もの商品を購入する必然性はないし、原告らはこれらの商品を保有しているから、購入代金全額を損害と解すべきではない。 イ 執行費用について 執行費用のうち、予納金(甲92)は、そこから実際に出費があって初めて損害となり得るものである。また、原告らは、本件仮処分命令が発令されたことから、被告が各店舗の従業員に被告表示5の除去を指示する対応を取ったことを知りながら、千葉そごうの店舗の従業員が商品の一部につき被告表示5の除去を失念したことを知り、わざわざ店舗の営業時間中に男性7名、女性1名という構成で執行に及んだもので、必要な保全執行ではなかった。 ウ 消費者アンケート調査報告費用・評価報告費用について 原告ら主張のような高額なアンケート費用の請求は不相当である。 (3)弁護士報酬相当額について 原告主張額は高額に過ぎ、不相当である。 (4)消滅時効 第1事件の訴え提起は平成28年8月9日であるところ、原告らは、修正サービス契約終了前後の時点において、被告が被告表示1〜5を使用していることを認識していたから、損害及び加害者を知っていたということができる。そこで、平成25年8月9日以前の損害賠償債務につき、消滅時効を援用する。 7 争点7(謝罪広告又は訂正広告の要否)について (原告らの主張) 被告のパブリシティ権侵害行為や不正競争行為によって毀損された原告らのパブリシティ価値や営業上の毀損の程度は深刻である上、その性質上、その損害額の正確な算定は困難であり、損害賠償のみでそれらを完全に回復させることもできない。したがって、著作権法115条の類推適用又は不競法14条に基づき、被告に対し、損害賠償に代えて、別紙広告目録記載第1の謝罪広告を同記載第2の要領で掲載させる必要がある。 仮に、謝罪広告の掲載が認められないとしても、同目録記載第3の訂正広告を同記載第4の要領で掲載させることは最低限必要である。 (被告の主張) 著作権法115条は、人格的利益が侵害された場合の規定であるのに対し、原告ら主張のパブリシティ価値の毀損とは顧客吸引力を低下させることであるか、本件における原告ら主張のパブリシティ権侵害に関し、同条を類推適用すべき根拠となる事情はなく、同条類推適用により謝罪広告又は訂正広告を求める原告らの請求は失当である。 また、著作権法115条は、権利侵害に加えて社会的声望名誉が毀損された事実があって初めて適用されるものであるが、このような事実はなく、不競法14条に基づく請求については、原告らの営業上の信用が毀損されたことの立証がない。加えて、使用料相当損害に加えてパブリシティ価値毀損による損害が認められるためには、使用料相当損害額では損害が填補できないといった事情が必要であるが、本件においてそのような事情が存在するとは認められない。 さらに、被告表示1〜5の使用により原告ジルのパブリシティ価値や原告らの営業上の信用が毀損されることはないこと、被告は、平成28年2月頃以降、被告表示1〜4を被告ウェブサイトに表示しておらず、被告表示5を商品タグに表示してもいないこと、英語で統一された被告ウェブサイトのトップページ(乙61)に別紙広告目録記載の長文の日本語を掲示することは本件ブランドイメージに甚大な損害をもたらすものであることなどに照らすと、謝罪広告や訂正広告は不必要かつ不相当である。 8 争点8(誤認防止表示の要否)について (原告らの主張) 謝罪広告又は訂正広告がなされたとしても、こうした広告の掲載は一定期間に限定されるから、原告らが被告と提携している等の誤認を解消し、将来的に同様の誤認を生じさせないためには、著作権法115条類推適用又は不競法14条に基づく信用回復措置として、別紙誤認防止表示目録記載第1の説明文を同記載第2の要領で表示させる必要がある。原告らのパブリシティ価値の毀損及び営業上の信用毀損の各損害を実効的に回復するためには、上記誤認を直接的に解消するための措置として、消費者等がアクセスする被告ウェブサイト及び被告商品の商品タグに、被告をして、誤認防止表示を行わせるのが相当である。 (被告の主張) 争う。前記7(被告の主張)と同様の理由により、誤認防止表示は不必要かつ不相当である。 【第2事件について】 9 争点9(原告写真の著作権の所在)について (原告会社の主張) 原告写真の著作権は、元々JSインターナショナルが保有し、原告会社がJSインターナショナルから譲渡を受けたものである。 (1)米国著作権法において、被用者がその職務の範囲内で職務著作物を作成した場合、使用者(雇用主)その他当該著作物を作成させる者が著作者とみなされ、当事者間に署名した書面による反対の明示的な合意がない限り、その使用者(雇用主)等が当該著作権に含まれる全ての権利を有する(同法101条(1)、201条(b))。また、特別に注文又は委託を受けた者(インディペンデント・コントラクター)が個別の契約に基づいて作成する場合、同条(2)に規定されたカテゴリーのいずれかに使用するためのものであって、かつ、当事者が署名した書面において当該著作物を職務著作物とする旨の明示的な合意がなされている場合に職務著作物とみなされる(同法101(2))。 原告写真は、ファッションイメージ写真であり、ディレクターがフォトグラファー、モデルその他の人材を用いて創作するものである。原告写真1〜48は、JSインターナショナル(甲)の依頼により、丙&Co.(以下「丙社」という。)の丙(以下「丙」という。)が創作したものであり、原告写真49〜126は、同様に、デザイン事務所BueroNewYork(以下「Buero事務所」という。)に所属する丁(以下「丁」という。)が創作したものである(甲100、第2甲48、97、98)。 同法101条(1)の「被用者」は厳密な意味での雇用関係に限定されないことからすると、原告と丁及び丙との関係は同項に該当し、書面による反対の明示的な合意はないので、原告写真の著作権は原告会社に帰属し、仮に同項の要件を充足しない場合であっても、同条(2)の規定するカテゴリーの一つである補足的著作物(supplementarywork)に当たるので、職務著作物として原告会社に帰属する(第2甲69)。以上は、カメラマンとディレクターとの間の著作権の帰属についても同様であり、原告写真は職務著作物に当たるので、カメラマンに著作権が帰属することはない。 本件において、丁、丙社の代表者は、いずれも、原告写真が職務著作として創作され、原告に著作権が帰属することをその陳述書等(第2甲48、50、97、98)において認めている。また、ファッション雑誌に掲載されたファッションイメージ写真を用いた被告自身が行った宣伝広告(第2甲72〜94)においても、JSインターナショナルの著作権表示として「?JSI○○○(発行年)」が明記されている。 以上のとおり、原告写真の著作権はJSインターナショナルが元々保有していたものである。 (2)原告会社は、JSインターナショナル、ジル・スチュアート(ジャパン)エル・エル・シー(以下「JSジャパン」という。)、原告会社及び原告ジルとの間で締結された平成17年(2005年)5月16日付け契約書(第2甲47)により、本件ブランド及び個人としての原告ジルの全ての広告及び宣伝用資料についてアジア領内における全ての所有権(保有権)及び使用権を取得した。 したがって、原告会社が原告写真の著作権を有する。 (被告の主張) 原告写真の著作権が原告会社に帰属することは争う。 原告会社やその関係会社とディレクターの間や、ディレクターとカメラマンの間に実質的に雇用関係があったことの証拠はなく、当事者が署名した文書によって職務著作物として扱うことに明示的に同意したことや、原告ジルのデザインに係る洋服が著作物性を有することも含め、原告写真が補足的著作物に当たることについての立証もないから、原告写真が職務著作物とは認められない。 また、著作権の譲渡があったことについても具体的な主張立証はない。米国著作権法204条(a)が定める著作権者が署名する書面(第2乙83)が提出されないことは、著作権譲渡の不存在を強く推認させる事実であるし、仮に著作権譲渡が存在したとしても、その効力は生じない。なお、被告が雑誌に掲載した写真に「?JSI」と記載があること(第2甲72〜94)については、原告会社の要請に従ってそのような記載をしていたにすぎず、原告側の権利関係の確認を行っていたものではないし、原告会社が裁判上行使し得る著作権を有していることを認めたものではない。 10 争点10(原告写真の利用許諾の目的及び期間等)について (被告の主張) 被告は、以下のとおり、原告会社から写真の提供を受ける際に、過去の広告の紹介等として事後的に利用することも含め、その利用について許諾を得ており、同写真の使用許諾は、修正サービス契約の解除により終了していない。 被告が平成9年の被告1号店の開店当初から、原告会社からファッションイメージ写真を年2回受領し、使用していたが、こうした写真は、各シーズンに雑誌やポスターに使用すると、その価値はほとんどなくなる。そのため、かかる写真については、過去の広告の紹介等として事後的に利用されることも含めて使用許諾がされているということができる。 平成17年9月2日締結のサービス契約3条では、同日以降の広告制作の業務の対価として、被告が原告側に年間広告制作費を支払うと明記されるにとどまり、その使用態様、期間についても同日より前に提供済みのファッションイメージ写真の取扱いについての記載はない(乙30)。 その後、被告は、甲によるコンテンツの確認を経た上で、遅くとも平成18年7月1日には過去の広告の紹介ページを含む被告ウェブサイトの一般公開をした(第2乙84)。 そして、平成19年4月13日には修正サービス契約が締結されたが、同契約においても、同日以降の広告制作業務の対価として被告が原告側に金銭を支払うと明記されているのみであり、同日より前に提供済みのファッションイメージ写真の取扱いについての記載はない(甲15)。被告は、修正サービス契約締結時においては、当事者双方が、上記金額を一時払いすることにより永久的な利用権が付与されると認識しており、実際のところ、原告会社は、被告ウェブサイトにおける被告写真の使用継続を認識しながら、我が国における裁判手続に入るまで異議を唱えていない。 こうした経緯からすれば、遅くとも、当時の被告代表者であった乙がウェブサイトの内容を事前に甲に説明し、確認を受けた時点で使用許諾が成立している。ファッションイメージ写真である原告写真の被告への利用許諾は、修正サービス契約の終了と無関係であって、それによる影響を受けるものではなく、同契約の終了によっても利用許諾を終了し得ない。 なお、万一、同契約の終了により利用許諾を終了することができるとしても、かかる許諾の撤回の通知がない限り利用許諾は終了しないから、被告が被告ウェブサイトへの被告写真の掲載を取りやめた後にされた第2事件訴状の送達によって、被告の損害賠償責任が生じることはない。 (原告会社の主張) 被告は、原告写真を利用できる根拠が利用許諾であることを自認しているが、利用許諾は、期間及び目的が特定・限定されるのが通常であり、ファッションイメージ写真の本来的な用途や利用目的に照らすと、被告に対する利用許諾は、カタログや雑誌に掲載する目的で、該当するシーズンに限定するものであった。実際、修正サービス契約3条においては、ファッションイメージ写真の利用目的を「見開き広告(雑誌)用、1ページ広告用及びポスター用に使用される」と特定し、利用期間についても該当するシーズンに限定するものと定められているし、原告らが同様に宣伝広告用写真を提供している他の企業のウェブサイト(第2甲51、52)においても、過去の写真は掲載されていない。 したがって、少なくとも修正サービス契約終了後の被告ウェブサイトにおける原告写真の利用行為は、許諾期間外及び目的外の利用である。 11 争点11(信義則違反ないし権利濫用の成否)について (被告の主張) 仮に原告写真の利用許諾と修正サービス契約の終了との間に何らかの関連性があるとしても、原告会社が、自ら修正サービス契約を違反して本件解除を招来したこと、本件訴訟は、原告会社が被告に金銭を無心しようとして提起したものであること(乙58、66〜72)からして、同契約の終了を理由として原告写真の利用が許されないなどと主張することは、信義則に反し、また、権利の濫用に当たる。 (原告会社の主張) ファッションイメージ写真は、非常に高い価値を有し、シーズンごとの宣伝広告物、ファッション雑誌等に広くされて利用される著作物である。被告の行為は、このような貴重な写真を許諾の時期及び目的を超えて無断で利用するものであるから、原告会社は、著作権者として、やむなく訴訟を提起したものであり、原告会社の権利行使が信義則に反し、権利濫用に当たるなどということはない。 12 争点12(差止めの必要性等)について (原告会社の主張) たとえ被告が被告ウェブサイトから被告写真を削除したのだとしても、それは一時的な訴訟対応であり、被告が原告写真の著作権の帰属や権利侵害について強く争い続けている以上、再度利用するおそれがある。なお、被告英語版ウェブサイトについても、同サイトが被告ウェブサイトを内部から管理する目的で制作されたウェブサイトである以上、同ページに被告写真が掲載されていたことが推認されるから、被告写真の使用の差止め及び削除を求める必要がある。 (被告の主張) 被告は、平成27年秋に、被告ウェブサイトからGALLERYページを削除したから(第2乙1)、被告写真は削除されているし、被告英語版ウェブサイトに被告写真が掲載されたと認めるに足りる証拠はないから、これらのウェブサイトから被告写真の削除を求める原告会社の請求は失当である。 13 争点13(被告の故意、過失の有無)について (原告会社の主張) 被告は、修正サービス契約を自ら解約し、本件ブランドのファッションイメージ写真を利用する権限がなくなったにもかかわらず、被告ウェブサイトで継続して表示し、被告商品の宣伝広告を行っているから、被告は、故意に原告会社の著作権を侵害しているというべきであり、少なくとも過失がある。このことは、原告側から被告にファッションイメージ写真を提供する際に必ず付されていたJSインターナショナルのコピーライト表示(第2甲48添付資料10〜12、同50添付資料2、同72〜94)が無断で全て除去されている(第2甲19)ことからも明らかである。 (被告の主張) ファッション業界において過去の広告の紹介はしばしば行われるものであり、各シーズンに制作するファッションイメージ写真をシーズン終了後に過去の広告のアーカイブとしてウェブサイトに掲載することについて別途ライセンス料の追加支払を行う実務は存在しない(乙72)。また、サービス契約や修正サービス契約には提供された広告用材料の使用期間及び使用目的を限定する規定はなく、その対価も多額である上、原告会社は、被告が被告ウェブサイトに被告写真を過去の広告の紹介として掲載していることを認識しながら、原告会社は異議を唱えてこなかった。さらに、修正サービス契約の終了とファッションイメージ写真の利用の可否は連動せず、被告は、本件仮処分命令申立書を受領した後に被告写真の掲載を中止している。 以上の事情に照らすと、被告には著作権侵害に関する故意も過失も認められない。 14 争点14(原告会社の損害額)について (原告会社の主張) (1)利用料相当損害 ア 損害の内容 被告の著作権侵害により、原告写真の利用及びその許諾について排他的・独占的権利を有する原告会社には、利用料相当額の損害が発生した。被告は、各シーズンの広告用の写真はシーズン終了後には無価値となると主張するが、被告がGALLERYページにおいて被告写真を掲載していたこと自体が、シーズン終了後の写真に価値があることを示している。 イ 利用料相当損害額の算定方法 原告会社と被告の間における修正サービス契約においては、利用料の算定方法として、長年にわたり、1シーズン(春夏シーズン又は秋冬シーズン)、1セット当たり所定の金額の利用料(広告製作サービス業務料)が規定されていたので、使用料相当損害金は、被告写真の単位(1シーズン・1セット)当たりの相当利用料額に利用数量(シーズン数・セット数)を乗じて算出するのが相当である。 修正サービス契約に定められた1シーズン・1セット当たりの利用料は、本件解除による終了日の翌年度である平成25年度(2013年度)からは約8万9062ドル(17万8125ドル/年の半額)であり、平成27年度(2015年度)からは9万3750ドル(18万7500ドル/年の半額)である。これに侵害プレミアムを考慮すると、被告写真の単位(1シーズン・1セット)当たりの相当利用料額は、8万9062ドル(938万円)を下らない。 上記利用料は、被告商品の雑誌広告及び広告ポスターに使用する権利を付与することの対価であって、被告ウェブサイトのGALLERYページに掲載することの対価ではない。しかし、被告の侵害態様は、コピーライト表示の無断削除を伴い、パブリシティ権侵害行為や不正競争行為ともあいまった広告戦略的なもので、故意又は意図的に消費者等への誤信を生じさせて需要を喚起しようとするものである。また、被告ウェブサイトは、誰でもアクセス可能であり、デジタルデータでの高画質による掲載により、無限に複製することが可能であった。そうすると、無断で被告商品を雑誌広告等に利用した場合と比較して、原告写真の広告的・商業的な利用の程度や利用価値の毀損(希釈化)の程度は実質的に異ならないから、原告会社の損害を算出するに際しては、上記基準を採用すべきである。 ウ 被告の利用数量(シーズン数・セット数) 被告は、平成25年2月26日の修正サービス契約終了日から7シーズン、又は、少なくとも本件仮処分申立事件に係る平成28年2月5日の審尋期日までの約3年間(少なくとも6シーズン)、平成9年(1997年)の春夏シーズン用から平成24年(2012年)の春夏シーズン用までの合計33セットを被告ウェブサイトに継続的に掲載して利用していた。 エ 利用料相当損害金額 以上によれば、著作権侵害に係る利用料相当損害金額は、主位的には21億6678万円(=8万9062ドル(938万円)×33セット×7シーズン)、予備的には18億5724万円(=8万9062ドル(938万円)×33セット×6シーズン)となるが、主位的請求に係る上記金額の一部である19億1350万6207円を請求する。 (2)証拠収集費用 1万5800円(甲193) 原告会社は、被告が原告会社の著作権の帰属等につき争った結果、客観的かつ具体的に立証するため、JSインターナショナルのコピーライト表示が付された原告写真を掲載した過去の被告の雑誌広告(第2甲72〜94)を証拠として収集、提出せざるを得ず、その費用として1万5800円を要したが、これは、被告の著作権侵害行為と相当因果関係のある積極的損害に当たる。 (3)弁護士報酬相当額5000万円 (4)消滅時効について 被告は消滅時効が成立すると主張するが、原告会社が、修正サービス契約締結終了前後において、被告が被告写真を使用していることを認識していなかった。 なお、原告らは、予備的に、上記損害賠償債権額と同額の不当利得返還請求を主張する。(被告の主張) 全て争う。 (1)利用料相当損害について ファッションイメージ写真は撮影されたシーズンにおいて広告用材料としての価値があるのであり、シーズン終了後に過去の広告のアーカイブとしてウェブサイトに掲載することにつき、別途ライセンス料の追加の支払をするような実務は存在しない(乙72)。そして、原告写真は、被告のために、年間15万ドル程度の制作費を被告が全額負担して原告側に委託して制作させたものであること、無権利者による権利侵害の事案とは異なることなどからして、シーズン終了後の利用料は、無償か、少なくとも低額(せいぜい1枚当たり数千円〜4万円程度)となるべきである。 原告会社の主張によると、修正サービス契約期間中においても、被告は、新たに制作するファッションイメージ写真への対価のみならず、その当時に被告が被告ウェブサイトにおいてアーカイブ的に使用していた過去のファッションイメージ写真にも、1セットそれぞれに8万9062ドルを支払わなければならなかったこととなり、不合理である。 なお、修正サービス契約3条(b)は、広告用材料を被告に提供しなければならない時期を定めたものにすぎず、その使用期間を限定するものではないし、平成27年11月には被告は被告ウェブサイトからギャラリーページを取り下げている(乙87)。 (2)証拠収集費用について 原告会社から提供された原告写真にコピーライト表示は付されていなかったから、被告の雑誌広告を証拠として収集する必要はなかった。 (3)弁護士費用について 原告主張の弁護士報酬相当額は高額に過ぎる。 (4)消滅時効 第2事件の訴え提起は平成28年8月9日であるところ、原告会社は、修正サービス契約終了前後の時点において、被告が被告ウェブサイトに被告写真を掲載していることを認識していたから、損害および加害者を知っていたといえる。そこで、平成25年8月9日以前の損害賠償債務につき、消滅時効を援用する。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実 前記前提事実に加え、後掲の証拠及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実を認めることができる。 (1)原告ジルは、平成5年(1993年)のニューヨーク・コレクションにおいて正式にデビューし、同年以降、毎年ニューヨーク・コレクションに出展している。被告1号店が平成9年に開店して以降、原告ジルの氏名、肖像写真又はインタビュー写真は、日本国内のファッション誌、新聞等において、単独であるいは被告及びその他の原告らのライセンシー(株式会社コーセー、鳴海製陶株式会社等)の商品の紹介とともに、多数回にわたり、掲載されている。(甲1、27〜35、83、84、113〜115、162、216〜470) (2)被告は、平成9年頃、原告側から、伊藤忠ファッションシステムを介して、本件ブランドに関する事業を行うに当たって原告ジルを紹介するための資料として、原告ジルの肖像写真(被告表示2の写真とは異なるもの)、被告表示3の経歴部分のベースとなった原告ジルの英文の経歴及び被告表示3で引用されているコメント(英文)を受領したが、これらの資料を使用することについて、原告側に対価を支払うことはなかった。また、被告は、その頃から、伊藤忠ファッションシステムを介して原告側から広告宣伝用の写真素材も受領して、ライセンス料とは別に広告費用として1000万円以上の費用を原告側に支払うようになった。(乙66、80、被告代表者) (3)被告は、被告1号店の開店後、原告側から、伊藤忠ファッションシステムを介して、被告製造商品に被告表示5を付すように求められたため、開店当初から、被告製造商品の商品タグに被告表示5を付し、インポート商品の商品タグに「輸入品につき、サイズをご確認の上、お買い上げください。」との表示を付してこれらを販売していた。(乙80、被告代表者) (4)甲は、平成15年頃、被告前代表者の乙に対し、原告ジルの紹介やその経歴を公表する際に使用するためのものとして、被告表示2に係る写真及びそのポジフィルムを交付し、今後はこの写真を使用してほしいと要請した。(甲77、乙23〜25、80) (5)乙は、平成17年頃には甲にウェブサイト設立の意向を口頭で伝え、被告は、平成18年頃、甲に公開前のウェブサイトを示し、その了解を得て、被告ウェブサイトを立ち上げた。被告は、被告ウェブサイトにおいて、原告ジルの紹介をするページを設けて被告表示1〜4を表示するなどした。(乙80、被告代表者) (6)本件仮処分申立てまでの間、原告側が、被告に対し、被告表示1〜4の被告ウェブサイトにおける使用や、被告商品タグへの被告表示5の表示について、パブリシティ権侵害等に当たる等、何らかの警告や指摘をしたことはなかった。(甲87、乙33、弁論の全趣旨) 2 争点1(原告ジルのパブリシティ権侵害による不法行為の成否)について (1)争点1−1(原告ジルのパブリシティ権の侵害の有無)について ア 原告ジルの肖像等の顧客吸引力の有無 (ア)前記認定事実(上記1(1))によれば、原告ジルは、平成5年以降毎年ニューヨーク・コレクションに出展している世界的に有名なファッションデザイナーであって、原告ジルの氏名、肖像写真等が、単独又は被告や他のライセンシーの商品との関連で、我が国の新聞や雑誌等で多数回にわたり取り上げられ、服飾のみならず、化粧品、陶器、時計など多くの種類の商品が本件ブランドの商品として販売されていることに照らすと、原告ジルの肖像等は、被告商品を含むファッション関係の商品について、その販売等を促進する顧客吸引力を有するものと認められる。 したがって、原告ジルは、これらの商品に関し、その顧客吸引力を排他的に利用する権利であるパブリシティ権を有する。 (イ)これに対し、被告は、被告アンケート調査の結果(乙78、81)に基づいて原告ジルの認知度が低いと主張するが、同アンケート調査は、原告ジルの肖像写真(被告表示2の写真)のみを示して当該写真の人物の認知度を調べるものであり、同調査においてその名前まで知っている回答者が少なかったとしても、そのことをもって、原告ジルの肖像等の顧客吸引力を否定することはできない。また、同調査においても、原告ジルの名前の付いた本件ブランドの認知度は8割を超えており、このことは原告ジルの知名度が高いことを示すものということができる。 イ 被告表示1及び2の使用目的等 (ア)平成27年頃の被告ウェブサイトの構成は、前記前提事実(第2の3(5))記載のとおりであるところ、被告ウェブサイト上においては被告商品の紹介及び販売等がされていたのであるから、被告ウェブサイトの目的が、被告商品を宣伝広告し、その販売を促進することにあるのは明らかである。そして、被告表示1及び2は、被告ウェブサイトの一部であるCONCEPTページに、被告表示3及び4とともに表示されていたものであって、同ページ自体は原告ジル個人の肖像等や言動、経歴等を紹介する内容を主とするものではあるものの、他のウェブページと一体となって、本件ブランドのイメージを向上させ、ひいては、被告商品の宣伝広告や販売促進を企図するものであるということができる。 そうすると、被告は、被告ウェブサイトにおいて、専ら原告ジルの肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的として、被告表示1及び2を被告商品の広告に使用していたと認めるのが相当である。被告英語版ウェブサイトのCONCEPTページについても、これと同様に解することができる。 (イ)これに対し、被告は、CONCEPTページは本件ブランドの来歴を示すもので、原告ジルの顧客吸引力を利用する目的のものではなく、実際のところ被告表示1〜4の有無で被告の売上げに変化はないと主張する。しかし、肖像等の使用が専ら顧客吸引力の利用を目的としているかどうかは、肖像等の使用態様、使用目的等を総合的に考慮して判断されるべきであり、前記判示の事情によれば、被告表示1〜4の有無により売上げの変動が認められなかったとしても、上記結論に影響を及ぼすものではないというべきである。 (2)争点1−2(原告らによる同意、承諾の有無)について 被告は、修正サービス契約の解除(本件解除)の前後を問わず、被告が被告ウェブサイトに被告表示1〜4を使用することについて原告らが同意、承諾をしていたと主張する。 ア 本件解除までの間について (ア)そこで検討するに、本件においては、前記認定(上記1(2)〜(4))のとおり、@被告は、被告1号店の開店に先立ち、伊藤忠ファッションシステムを介して原告側から、被告表示3の経歴部分のベースとなった原告ジルの英文の経歴、コメント及び原告ジルの写真の交付を受けたこと、A被告の前代表者の乙は、平成15年、原告会社の代表者である甲から被告表示2の写真等を手交されたこと、B乙は平成18年に被告ウェブサイトを開設するに先立ち、事前に甲にその内容を見せるなどして、その了承を得ていることなどの事実が認められる。 これによれば、原告ジルの肖像写真、経歴、コメントなどを選定し被告に使用するように積極的に慫慂したのは原告側であり、原告らは、被告が提供した原告ジルの肖像写真等が被告商品の宣伝広告に利用されることを十分に認識し、これを承諾していたというべきである。そして、甲は被告ウェブサイトの開設及びその内容について事前に被告側から説明を受けていたのであるから、被告表示1及び2を被告ウェブサイトに掲載することについても承諾していたものと認めるのが相当である。 (イ)これに対し、原告らは、被告表示2の写真は被告商品の宣伝広告及び販売促進のために交付したものではなく、また、同写真を交付した当時被告ウェブサイトは存在しなかったのであるから、被告ウェブサイトに被告表示1及び2を掲載することも承諾していないと主張する。 しかし、前記判示のとおり、修正サービス契約の終了以前においては、被告が原告らと協力しつつ本件ブランド事業を展開していたことに照らすと、原告らが被告に原告ジルの経歴、写真等を交付したのは、被告商品の広告や販売促進を支援し、本件ブランド事業を推進するためであったと考えるのが自然である。また、甲が被告表示2の写真を交付した平成15年には、既にウェブサイトを利用した企業等の宣伝広告が一般的になされていたのは公知の事実であるから、甲が有用な宣伝広告ツールであるウェブサイトをあえて除外又は禁止していたとは考え難く、甲が被告ウェブサイトの開設時に特に異議を述べていないことは前記のとおりである。 したがって、原告らの主張は理由がない。 イ 本件解除後について 被告は、本件解除後も、原告らは被告表示1及び2の使用を許諾していたと主張する。しかし、被告表示2が原告ジル個人の肖像写真であり、事業に利用されるものとはいえ、協力関係や取引関係にない相手に対してもその使用を無限定に許諾するとは考えにくい性質のものであることも考え併せると、原告らは、原告らと被告が本件ブランド事業を協力して推進していることを前提にして、その期間において原告ジルの肖像写真等の使用を許諾したもの、すなわち、当事者の合理的意思解釈としては、その許諾期間を原告らと被告との協力関係又は取引関係が解消されるまでとする旨の黙示の合意があったと認めるのが相当である。 前記認定のとおり、原告らと被告との間の修正サービス契約は、本件解除により平成25年2月26日をもって終了し、原告側と被告との取引関係は解消され、両者間の信頼関係も損なわれるに至っていたのであるから、被告表示1及び2の使用許諾も本件解除により終了したものというべきである。 これに対し、被告は、本件仮処分命令申立てに至るまで、原告らが被告表示1〜4の使用について問題視したことはなかったことなどを指摘する。しかし、被告が本件仮処分命令の申立てに至るまで被告表示1〜4の使用について異議を唱えなかったとしても、同各表示の内容及び性質に照らすと、そのことから直ちに本件解除後に同各表示の使用を承諾していたと推認することはできず、他に原告側が本件解除後も同各表示の使用を許諾していたことを示す証拠はない。 ウ 以上によれば、被告が本件解除による修正サービス契約の終了後に被告ウェブサイトのCONCEPTページに被告表示1及び2を表示していた行為は、原告ジルのパブリシティ権を侵害するものであるということができる。 3 争点2(品質誤認惹起行為該当の有無)について (1)被告表示1〜4について 前記のとおり、被告表示1〜4が掲載された被告ウェブサイトのCONCEPTページは他のウェブページと一体となって、被告商品を宣伝広告等するものであると認められるところ、被告表示1〜4の内容に照らすと、被告ウェブサイトのCONCEPTページを見た一般の消費者等は、原告ジルが被告商品のデザイン等に関与しているか、少なくとも被告商品を推奨していると認識し、理解するということができる。 しかるに、本件解除以降、原告らが被告商品のデザイン等に一切関与していないことは明らかであるから、本件解除後における被告ウェブサイトにおける被告表示1〜4は、全体として、広告における商品の品質、内容を誤認させるような表示に当たるということができる。 (2)被告表示5について 被告表示5の記載内容は、「この商品は、米国ジル・スチュアート社との提携により、株式会社サンエー・インターナショナルが企画・製造したものです」というものであるから、被告商品の商品タグに付された被告表示5を見た消費者等は、当該商品が、米国ジル・スチュアート社との提携関係の下で製造等されたものと認識、理解するものということができる。 しかるに、本件解除以降、被告が原告側と提携しているという事実はないから、被告商品の商品タグに付された被告表示5は、同商品の品質、内容を誤認させるような表示に当たると認められる。 (3)これに対して、被告は、CONCEPTページは本件ブランドの来歴を示すためのものにすぎず、また、被告表示1〜4は、公的機関による品質・内容の保証のような場合と異なり、消費者等に商品の品質に誤認を生じさせるものではないなどと主張する。 しかし、CONCEPTページが被告商品の宣伝広告の一環をなすものであり、単に本件ブランドの来歴を示すものにすぎないということができないことは前記判示のとおりであり、被告商品のようなブランド商品において、そのデザインを誰が行っているか、また誰に推奨されているかは、消費者等が当該商品を購入する上での重要な要素であるから、この点について事実に反する表示を行うことは商品の品質に誤認を生じさせるものであるということができる。 4 争点3(信義則違反ないし権利濫用の成否)について 被告は、本件解除の原因は原告らの債務不履行にあることや、原告らが被告に金銭を無心しようとして第1事件訴訟を提起したものであることなどを理由として、原告らが被告に対し差止めや損害賠償等を求めることは、信義則に反し、権利濫用に当たると主張する。 しかし、原告らがその請求に根拠がないことを認識しながら被告に金銭の支払を要求したと認めるに足りる証拠はなく、また、本件解除の原因のいかんにかかわらず、原告らが修正サービス契約の終了を前提として被告に被告表示1〜5の差止めや損害賠償を求めることが信義則違反又は権利濫用に該当すると解すべき理由はない。 したがって、被告の上記主張は理由がない。 5 争点4(差止めの可否及び必要性)について (1)パブリシティ権に基づく請求について ア 原告会社について パブリシティ権は人格権に由来する権利であるから(最高裁平成21年(受)第2056号同24年2月2日第一小法廷判決・民集66巻2号89頁参照)、原告ジルの肖像等の商業的利用につき独占的利用権及び許諾権を有しているにすぎない原告会社は固有の差止請求権を有しない。 したがって、原告会社が原告ジルのパブリシティ権に基づき被告ウェブサイト等への被告表示1の表示の差止請求は理由がない。 イ 原告ジルについて 原告ジルは、前述のとおり、人格権に由来する権利であるパブリシティ権を有するから、これを侵害する者又は侵害するおそれがある者に対して差止請求をし得ると解すべきである。そして、原告ジルは、被告に対し、被告表示1及び2の被告ウェブサイト等における表示の差止めを求めていたところ、被告は、同表示2に関する請求は認諾したので、以下では、原告ジルの氏名を表す被告表示1の被告ウェブサイト等における表示の差止請求について検討する。 この点について、原告ジルは、被告は、被告英語版ウェブサイトにおいて被告表示1の表示を継続するなどしているのであるから、差止めの必要性があると主張する。しかし、前記認定のとおり、被告は、平成28年2月頃には被告ウェブサイトからCONCEPTページを削除し、第1事件の訴状受領後には、被告英語版ウェブサイトについても外部から閲覧できないようにするなどの措置を講じている上、被告が被告ウェブサイト等における被告表示2〜4の表示の差止請求を認諾していることや、被告が原告側から別紙商標権目録記載の商標権等を譲り受けており、原告との紛争リスクを抱えながらあえて同様のウェブページを再度開設する必要性に乏しいことなどを考慮すると、今後、被告が再度CONCEPTページを復活させるなどして被告表示1を表示するとは考え難い。 また、被告が商標権譲渡契約に基づき原告会社等から譲り受けた「JS商標」に係る全ての権利には、「ジルスチュアート」、「JILLSTUART」の文字などを含む登録商標権が含まれており、被告がこれらの権利を行使することが妨げられるものではないことを考慮すると、被告が被告ウェブサイト等において被告表示1を表示したからといって、それが当然に原告ジルのパブリシティ権を侵害することになるものではない。そうすると、被告ウェブサイト等における被告表示1の表示位置や態様等を特定せずにその表示の差止めを認めることは、過剰な差止めというべきである。 以上のとおり、原告ジルの被告に対する被告表示1に関する差止請求は理由がない。 (2)不競法に基づく請求について ア 被告表示1について 不競法に基づく被告表示1の表示の差止請求については、上記(1)イで判示したとおり、今後、被告が再度CONCEPTページを復活させるなどして被告表示1を表示するとは考え難いことから、被告表示1を今後も継続して使用するおそれがあると認めることはできない。 イ 被告表示5について 不競法に基づく被告表示5の表示の差止請求については、被告が、本件執行官保管に係る被告表示5の表示を付した商品タグの廃棄を求める部分に係る請求の認諾をしているので、その余の部分についての差止請求の可否が問題となる。 この点、原告らは、本件仮処分決定後も被告が被告表示5を商品タグに付した被告商品を店舗に陳列、販売していたことを考慮すると差止めの必要があると主張するが、被告は、本件執行により執行官保管されている商品タグ及び同商品タグを付した被告商品の廃棄については認諾しており、本件執行官保管に係る商品タグ以外に、被告表示5を付した商品タグや、同商品タグを付した被告商品が存在するとはうかがわれない。 そうすると、被告が被告表示5を今後も継続して使用するおそれはあるということはできず、不競法に基づく差止請求についても理由がない。 6 争点5(被告の故意、過失の有無)について 被告は、故意又は過失はないと主張するが、被告は、修正サービス契約の解除後も原告らに確認するなどの必要な対応をすることなく、被告表示1〜4を被告ウェブサイト等に表示して被告商品の宣伝広告を行い、また、被告表示5を被告商品に付して販売していたのであるから、被告には、原告ジルのパブリシティ権の侵害及び不正競争行為について過失があるというべきである。 7 争点6(原告らの損害額)について (1)パブリシティ権侵害に基づく使用料相当損害について ア 原告らは、被告による被告表示1及び2の使用により、使用料相当の損害を被ったと主張し、使用料相当損害額の算定方法としては、著作権法114条3項の類推適用により、売上高に相当な実施料率を乗じる方法によることが相当であると主張する。 しかし、前記判示のとおり、本件は、被告らが原告に無断で個々の商品に原告ジルの肖像等を表示するなどして被告商品を販売したという事案ではなく、原告らが、修正サービス契約の終了までの間は、被告表示1及び2を被告ウェブサイトに掲載して使用することを許諾していたものの、同許諾は修正サービス契約の終了(平成25年2月26日)とともに終了したため、同日以降も同各表示の掲載を継続したことについてパブリシティ権侵害が成立するという事案である。 本件事案のかかる事実関係の下においては、被告表示1及び2の使用許諾終了後の使用による損害を算定するに当たっては、同使用許諾の終了以前の状況、すなわち、原告らと被告との間の取引状況、原告ジルの肖像等の使用の対価の有無及びその額、被告表示1及び2の使用態様、それによる被告の得た経済的な利益の有無及びその額等を総合的に考慮して、損害額を検討するべきであり、売上高に相当な実施料率を乗じる方法により使用料相当損害額を算定することは相当ではない。 イ そこで、以下、修正サービス契約の終了以前の事情について検討する。 (ア)前記前提事実(第2の3(2))によれば、修正サービス契約の終了前において、原告側と被告との間には、乙7及び乙19の各終了合意書、期限付き商標権譲渡契約、商標権譲渡契約、サービス契約、サービス修正契約など複数の合意がされ、その中で、原告側と被告との間の様々な権利や義務について対価の支払や履行義務が詳細に定められていたが、原告ジルのパブリシティ権の使用や被告表示1及び2の使用についての定めが設けられたことはなく、原告側が被告表示1及び2の使用について対価の支払を要求したことはない。そうすると、原告らは、修正サービス契約の終了前において、被告に対し、被告表示1及び2を無償で使用することを許諾していたということができる。 (イ)前記のとおり、原告側は、商標権譲渡契約に基づき、被告に対し、別紙商標権目録記載の各商標権を含む商標及びこれに関連するグッドウィル等の権利を4500万ドルという高額の価格で譲渡しており、また、被告から、平成17年以降はサービス契約に基づき毎年15万ドル以上の対価の支払、平成19年以降は修正サービス契約に基づき広告制作業務などの対価として毎年80万ドル以上の支払を受けていたことが認められる。これによれば、原告らは、修正サービス契約の終了以前には、本件ブランドに関連する商標権の譲渡や広告制作などの業務の提供により相応の対価の支払を得ていたものと認められる。 (ウ)他方、被告表示1及び2は、前記判示のとおり、原告ジルの氏名及び1枚の肖像写真であり、被告表示2に係る写真は平成15年に乙が甲から受領して以来、一度もアップデートされていない上、被告表示1及び2は、被告ウェブサイトのトップページではなく、その下位階層を構成するウェブページに表示されているにすぎない。そして、上記のとおり、被告表示1及び2は個々の被告商品に表示されているものではなく、被告ウェブサイト以外のテレビ、雑誌、新聞等において積極的に使用されたとの事実は認められない。 (エ)本件ブランドに係る被告商品の売上げについても、被告表示1及び2の使用が被告の売上げに影響を及ぼしたことを客観的に示す証拠はなく、むしろ、被告の売上げにおいては、原告側から譲り受けた「ジルスチュアート」、「JILLSTUART」などの文字を含む商標権その他の権利の使用が寄与するところが大きいと考えられる。 ウ 以上の諸事情を含め、本件に現れたその他全ての事情を考慮すると、被告表示1及び2を修正サービス契約の終了後も使用し続けたことが被告商品25の販売に全く寄与していないとまではいえないものの、その貢献度はごくわずかにとどまるというべきである。 そして、本件においては、前記判示のとおり、修正サービス契約の終了前には被告表示1及び2の使用が無償で許諾されており、使用料相当額の算定において参照し得る合意等も存在しないこと、原告らが同様の表示について他の第三者に使用許諾した事例なども存在しないことなどの事情が認められ、損害額の立証が事案の性質上極めて困難であるので、上記の諸事情、本件解除後の被告表示1及び2の使用期間、弁論の全趣旨及び証拠調べの結果を斟酌しつつ相当な損害額を認定することとすると、原告ジルのパブリシティ権侵害による損害額としては、被告表示1及び2が違法に使用されていた期間(平成25年2月26日から被告英語版サイトの外部閲覧を遮断する措置が採られた平成28年8月24日頃まで)を通じ、100万円と認定することが相当である。 エ なお、原告ジルはパブリシティ権者であり、原告会社は原告ジルからパブリシティ権の管理委託を受けて独占的利用権及び許諾権を有する者であることからすれば、原告らは、いずれも、被告に対し、原告ジルのパブリシティ権侵害に基づく損害賠償請求をなし得るというべきであり、その損害賠償債権は、原告らの不真正連帯債権となるものと解される。 (2)不正競争行為による損害について 被告は、原告らが我が国において被告商品と競合する製品についての営業をしていないことなどを指摘し、被告表示1〜5の使用により原告らの営業上の利益の侵害(不競法4条)は認められないと主張する。 しかし、原告らは、我が国において、被告以外の他のライセンシーとともに本件ブランドに関する事業を展開していると認められるところ、原告ジルがいかなる商品のデザインに関与し、またいかなる商品を推奨しているかは、ジル・スチュアート・ブランドの商品全体の品質やイメージに影響を及ぼすものであるから、この点について事実に反する表示をすることは、原告らの営業上の利益を害するものということができる。 (3)積極損害について ア 侵害調査費用について 原告らは、被告商品10点(甲18、19、70、88)の購入代12万9000円が損害に当たると主張するところ、甲18(1万0800円)及び甲19(8100円)の商品は、被告の行為が不正競争行為に該当することを立証するために必要であったと認められるが、その他の商品については、仮処分命令の遵守状況の調査等を目的とするものであり、被告の不法行為と相当因果関係のあるものということはできない。そして、甲18及び19の商品については、原告らが当該各商品を保有していることも考慮すると、その合計額の7割に相当する1万3230円を損害と認めることが相当である。 イ 執行費用について 原告らは、被告表示5に関する執行費用は被告の不正競争防止行為と相当因果関係のある損害であると主張するが、仮処分命令申立て及びその強制執行のための費用については、いずれも仮処分の執行のために必要な費用であると認められ、執行費用の一部として被告が負担すべきものであって(民事執行法42条)、その取立てについては、民事執行法所定の手続により行われるべきものであるから、当該費用は不法行為と相当因果関係のある損害ということはできない。 ウ 消費者アンケート調査報告費用・評価報告費用について 原告らは、消費者アンケート調査報告費用等も被告の行為と相当因果関係のある損害であると主張するが、消費者アンケート調査やその評価の資料を証拠として提出することが不可欠であるとはいえず、これらの証拠により原告らの営業上の毀損等の事実が認定し得るものでもないから、これらの費用が被告の不法行為と相当因果関係ある損害であるとは認められない。 したがって、これらを損害と認めることはできない。 (4)弁護士報酬相当額について 本件事案の内容、請求額及び認容額等の諸般の事情を考慮すると、被告の侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用相当損害金は10万円であると認めるのが相当である。 (5)消滅時効について 被告は、原告らが修正サービス契約終了前後の時点において被告が被告ウェブサイトに被告表示1〜4を掲載していることを認識していたと主張する。 しかし、被告の不法行為に基づく損害賠償債権の消滅時効が開始するためには、同契約終了後に原告会社が上記認識を有していたことを要するところ、本件解除による修正サービス契約の終了日(平成25年2月26日)から被告主張の同年8月9日までの間に、原告会社が上記認識を有していたことを認めるに足りる的確な証拠はない。 したがって、被告の消滅時効の主張は理由がない。 (6)遅延損害金について パブリシティ権侵害に係る使用料相当損害金に対する遅延損害金については、継続的不法行為であって日々発生するものとして計算すべきとの考え方もあり得るところであるが、ウェブサイト上の記載がその内容に変化なく継続しており、これに対する総額として損害賠償金を認定したという本件の事情に鑑みると、これを一連一体のものとして、前記損害総額100万円に対し、継続的不法行為の終了日である平成28年8月24日から支払済みまでの遅延損害金を認めるのが相当である(なお、原告らは、被告に対し、積極損害1万3230円については平成29年12月21日から、弁護士費用相当損害金10万円については第1事件の訴状送達の日の翌日である平成28年8月25日から、各支払済みまでの遅延損害金の支払を求めている。)。 8 争点7(謝罪広告又は訂正広告の要否)について 原告らは、被告の行為により、被告のパブリシティ権侵害行為や不正競争行為によって毀損された原告らのパブリシティ価値や営業上の毀損の程度が大きい上、損害賠償のみでは十分ではないとして、主位的に謝罪広告を、予備的に訂正広告の掲載を求めるが、その損害を填補するには損害賠償で十分に足りるというべきであり、原告らの謝罪広告請求及び訂正広告請求はいずれも理由がない。 9 争点8(誤認防止表示の要否)について 原告らは、原告らのパブリシティ価値の毀損及び営業上の信用毀損による損害を実効的に回復するためには、被告をして誤認防止表示を行わせるのが相当であると主張するが、その損害を填補するには損害賠償で十分に足りるというべきであり、更に誤認防止表示を認めることは相当ではない。 10 争点9(原告写真の著作権の所在)について 原告会社は、原告写真について、職務著作物としてJSインターナショナルに帰属し、その後、原告会社がJSインターナショナルから譲り受けたものであると主張するのに対し、被告は、その著作権が原告会社に帰属することを争う。 この点、職務著作に関する規律は、その性質上、法人その他使用者と被用者の雇用契約の準拠法国である米国著作権法の職務著作に関する規定によると解すべきところ、職務著作に関する米国著作権法101条(1)の「被用者」は雇用契約に限定されず、コモンロー上の代理契約を含み得るものであり、当該制作に対する指示関係の有無等も考慮しつつ認定されるべきものと解されていること(第2甲69)、原告写真1〜48を制作した丙の所属する丙社の代表者及び原告写真49〜126を制作した丁は、上記各写真が職務著作物として作成され、その著作権がJSインターナショナルに帰属することを認めていること(甲48、97、98)などを考慮すると、原告写真の著作権はJSインターナショナルが有していたものと認めるのが相当である。 そして、証拠(第2甲47)によれば、JSインターナショナル、JSジャパン及び原告らは、平成17年(2005年)5月16日、原告会社が、本件ブランド及び原告ジルの全ての広告及び宣伝用資料に関するアジア域内におけるあらゆる所有権(保有権)を原告会社に帰属させる旨の合意を書面で行ったとの事実が認められる。これによれば、原告写真の著作権は、JSインターナショナルから原告会社に譲渡されたものというべきである。 したがって、原告会社は原告写真の著作権を有するものと認められる。 11 争点10(原告写真の利用許諾の目的及び期間等)について (1)前記認定のとおり、被告は、平成9年頃から、伊藤忠ファッションシステムを介して原告側から宣伝広告用の写真素材も受領するようになり(1(2))、その後、平成17年9月2日付けサービス契約、平成19年4月13日付け修正サービス契約を締結し、広告用材料の提供及び広告制作費の支払について合意したものと認められる。証拠(甲22)によれば、@原告写真1〜76は、サービス契約が適用される以前の分として、A原告写真77〜87(平成18年(2006年)春夏シーズンから平成19年春夏シーズンまでの分)はサービス契約(平成17年10月18日発効)に基づき、B原告写真88〜126(平成19年(2007年)秋冬シーズンから平成25年(2013年)春夏シーズンまでの分)は修正サービス契約(同年4月13日発効)に基づき、それぞれ原告会社から被告に交付されたものと認められる。 (2)原告写真の使用許諾の終期については、サービス契約及び修正サービス契約に明示的な規定は置かれていないが、同各契約に基づいて交付された写真については、その使用目的等に照らすと、その使用許諾は同契約に定められた業務委託関係の継続する契約期間の終了までとされ、当該契約の終了後は当該契約が改定又は修正されない限り原告会社に返還等されることが前提とされていたと解するのが、当事者の合理的意思解釈として相当である。 そうすると、修正サービス契約に基づいて交付された原告写真88〜126の使用許諾は本件解除により終了することとなるが、同契約によって修正されたサービス契約に基づいて交付された原告写真77〜87及びサービス契約の締結以前に提供された原告写真1〜76についても、修正サービス契約に基づいて交付された写真とその目的や用途が同一であるであることに照らすと、その使用許諾期間は、修正サービス契約の終了日までであり、同契約が終了した平成25年2月26日をもって終了したというべきである。 (3)これに対し、被告は、原告写真の利用許諾と修正サービス契約の終了とは無関係であり、同契約の終了によって利用許諾を終了することはできず、仮に同契約の終了により利用許諾を終了させ得るとしても、使用許諾の撤回の通知がない限り利用許諾は終了しないと主張する。 しかし、前記判示のとおり、原告写真の使用許諾期間は修正サービス契約等に定められた契約期間の終了までであると解するのが当事者の合理的意思に合致するというべきであり、原告写真の利用許諾と修正サービス契約の終了とは無関係であるということはできない。また、上記のとおり、原告会社と被告との間には、原告写真の使用許諾期間を修正サービス契約等の終了までとする合意があったと解されるのであるから、使用許諾の撤回の通知がない限り利用許諾が終了しないということもできない。 (4)他方、原告会社は、被告に対する原告写真の利用許諾は、カタログや雑誌に掲載する目的で、かつ、該当するシーズンに限定するものであったと主張する。 しかし、修正サービス契約には、原告側から被告に提供される画像が「見開き広告(雑誌)用、1ページ広告用及びポスターに使用される」との記載はあるものの、これは各画像の用途を説明しているにすぎず、上記記載をもって、これらの画像を使用した後に被告ウェブサイトに掲載することが禁じられていたと解することはできない。むしろ、サービス契約及び修正サービス契約等に基づき交付された原告写真が「広告用材料」として提供されたものであることを考慮すると、その目的をカタログと雑誌等のみに限定し、あるいは、使用可能な時期を該当するシーズンに限定する旨の合意があったとは考え難い。 (5)以上によれば、被告は、被告写真を平成25年2月27日から平成28年2月5日頃まで被告ウェブサイト等に掲載することにより、原告会社の有する著作権(公衆送信権)を侵害したものということができる。 12 争点11(信義則違反ないし権利濫用の成否)について 被告は、原告会社が、自ら修正サービス契約に違反して本件解除を招来したこと、第2訴訟は、原告会社が被告に金銭を無心しようとして提起したものであることなどを理由として、同訴訟において差止めや損害賠償を求めることは信義則に反し、また、権利の濫用に当たると主張する。 しかし、原告会社がその請求に根拠がないことを認識しながら被告に金銭の支払を要求したと認めるに足りる証拠はなく、また、本件解除の原因のいかんにかかわらず、原告会社が修正サービス契約の終了を前提として被告に著作権侵害に基づき差止めや損害賠償を求めることが信義則違反又は権利濫用に該当すると解すべき理由はない。 したがって、被告の上記主張には理由がない。 13 争点12(差止めの必要性)について 原告会社は、被告が原告写真の著作権の帰属や権利侵害について争い続けていることや、被告英語版ウェブサイトにおいて被告写真が掲載されていたことなどを理由に、被告写真の複製等の差止めの必要があると主張する。 しかし、被告は平成28年2月頃には被告ウェブサイトからGALLERYページを削除し、第1事件の訴状受領後には、被告英語版ウェブサイトについても外部から閲覧できないようにする措置を講じており、また、原告写真をアーカイブとして被告ウェブサイトに掲載することが被告の事業にとって不可欠とは考え難いことなどを考慮すると、原告らとの紛争リスクを抱えながら、被告が被告ウェブサイト等において被告写真を再掲載するとは考え難い。 したがって、原告会社の著作権に基づく差止請求は理由がない。 14 争点13(被告の故意、過失の有無)について 被告は、故意又は過失があったことを否認又は争うが、被告は、修正サービス契約の解除後も原告会社に確認するなどの必要な対応をすることなく、被告写真を被告ウェブサイト等に表示していたのであるから、被告には、原告会社の著作権侵害について、過失があるというべきである。 15 争点14(原告会社の損害額)について (1)利用料相当損害について ア 原告会社は、1シーズン・1セット当たりの単価8万9062ドル(938万円)に利用数量(シーズン数・セット数)を乗じて利用料相当損害額を算定すべきと主張する。 しかし、修正サービス契約においては、同契約に基づき提供される業務の対価として年間手数料を支払うこととされ(2条)、「広告制作業務」もその一つであることからすると、広告制作業務の対価には広告用材料の制作費も含まれると解するのが自然である。そして、同契約上の「広告制作業務」の対価が年額15万ドルから18万7500ドルという相当高額なものであったのに対して、同契約後に原告会社が交付した原告写真の枚数が年間5枚〜9枚であったこと、被告が製作したファッションイメージ写真(被告写真127〜131等)の制作費が660万円程度であったこと(第2乙31、32)などに照らせば、修正サービス契約における「広告制作業務」の対価は制作費の負担分を含み、むしろ対価に占める制作費の割合が相当程度大きいと解するのが合理的というべきである。そうすると、原告会社の主張するような算定方法に基づき、被告写真の使用に係る利用料相当損害額を算定することは相当ではない。 むしろ、本件において原告会社の著作権侵害行為として認められるのは、被告が修正サービス契約後も被告写真を被告ウェブサイトに掲載したという行為であるから、かかる行為に対する利用料相当損害金については、修正サービス契約終了後における被告写真1枚当たりの価値を勘案した上で、これに利用期間を乗じて算定するのが相当である。 イ そこで、被告写真1枚当たりの単価について検討するに、証拠(乙90)によれば、ファッション関係の写真素材を数千円から4万円程度で特に期間の定めもなく利用し得る例があることは認められるところ、原告写真は特定のシーズン向けのものであるから、そのシーズンにおける価値が最も高く、その後は商業的価値が大幅に低下すると考えられる。本件においても、被告が他のシーズンにおいて被告写真を積極的に宣伝広告に利用したことはうかがわれず、被告ウェブサイトの下位階層を構成するウェブページに参照用のアーカイブとして展示されていたにすぎないというべきである。 以上のような本件写真の用途、性質、使用態様等に照らすと、修正サービス契約の終了時点における被告写真について高い商業的価値は認め難く、本件に現れた他の全ての事情も考慮すると、被告写真1枚当たりの単価は1年当たり1万円と認めることが相当である。 そして、修正サービス契約が本件解除により終了した日の翌日である平成25年2月27日以降に被告ウェブサイトのGALLERYページに掲載されていた被告写真は126枚であること、同日からGALLERYページが削除された平成28年2月5日までの期間が約3年間であることからすれば、被告の不法行為による原告会社の利用料相当損害額は、378万円(=1万円×126枚×3年間)と認めるのが相当である。 (2)証拠収集費用について 原告は、JSインターナショナルの著作権表示が付された被告の雑誌広告の購入費用が損害に当たると主張するが、著作権表示は著作権の所在を示すものではないことなどを考慮すると、かかる雑誌広告等の購入が必ずしも著作権の帰属の立証に不可欠と認めることはできないので、上記費用は被告の不法行為と相当因果関係ある損害とは認められない。 したがって、この点の原告会社の主張は理由がない。 (3)弁護士費用相当損害金について 本件事案の難易、請求額及び認容額等の諸般の事情を考慮すると、被告の侵害行為と相当因果関係に立つ弁護士費用相当損害金として37万円を認めるのが相当である。 (4)消滅時効について 被告は、原告会社が修正サービス契約終了前後の時点において被告が被告ウェブサイトに被告写真を掲載していることを認識していたと主張する。 しかし、被告の不法行為に基づく損害賠償債権の消滅時効が開始するためには、同契約終了後に原告会社が上記認識を有していたことを要するところ、本件解除による修正サービス契約の終了日(平成25年2月26日)から被告主張の同年8月9日までの間に、原告会社が上記認識を有していたことを認めるに足りる的確な証拠はない。 したがって、被告の消滅時効の主張は理由がない。 (5)遅延損害金について 著作権侵害に係る利用料相当損害金に対する遅延損害金については、前記と同様、本件の事実関係の下においては一連一体のものと解すべきであり、前記損害総額378万円に対し、原告会社主張の損害額算定期間の末日である平成28年2月5日から支払済みまでの遅延損害金を認めるのが相当である(なお、弁護士費用相当損害金37万円については、原告会社は、被告に対し、第2事件訴状送達の日の翌日である平成28年8月25日から支払済みまでの遅延損害金を請求している。)。 16 結論 (1)以上によれば、第1事件に係る原告らの請求は、パブリシティ権侵害の不法行為又は不競法4条に基づく損害賠償として111万3230円(バブリシティ権侵害に基づく使用料相当損害金100万円、積極損害1万3230円及び弁護士費用相当損害金10万円の合計額)及びうち100万円に対する平成28年8月24日から、うち10万円に対する同月25日から、うち1万3230円に対する平成29年12月21日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余の請求はいずれも理由がない。 (2)また、第2事件に係る原告会社の請求は、民法709条に基づく損害賠償として415万円及びうち利用料相当損害金378万円に対する平成28年2月5日から、うち弁護士費用相当損害金37万円に対する同年8月25日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余は理由がない。 (3)よって、第1事件に係る原告らの請求及び第2事件に係る原告会社の請求を上記の限度で認容し、その余はいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 佐藤達文 裁判官 三井大有 裁判官 今野智紀 別紙 被告表示目録 1 Jill Stuart/ジル・スチュアート 2 (画像省略) 3「デザイナージル・スチュアートはこう語ります・・・ 『私は自分で着たい服を作っています。トレンディだけどクレイジーでなく、女性が女性らしくフェミニンにセクシーに、そしてスウィートで着易く、リーズナブル・プライスであること。それが私の服のメインコンセプトです。』 『女性の立場から言うと、トレンドが何であれ、自分が素敵に見えるものを着るとゆうことが大切。いろんなタイプの人がいて、私たちデザイナーのコレクションの中から、それぞれ自分に似合うものを選んで、その人らしさが出せれば、とても素敵なことだと思います。』 ニューヨーク出身。両親もファッションを展開するファッション業界一家にうまれ、NYの7番街でファッションとデザインの世界に育つ。15歳で初めてアクセサリーのコレクションをニューヨーク老舗百貨店、Bloomingdale'sにて販売。レザーを使ったチョーカー、フリンジ付きのボヘミアン調Bohoバッグなどを販売し話題となる。その後、順調にキャリアを重ね1993年にJILLSTUARTのニューヨークコレクションをスタート。1997年、日本進出。」 4「JILLSTUARTは『CUTE.SWEET.SEXY』をキーワードに、ニューヨーク・コレクションにおいて女性らしいスタイルを発信し続けている自分のスタイルを持つ女性たちへ、品のある大人のフェミニンスウィートを提案」 5「この商品は、米国ジル・スチュアート社との提携により、株式会社サンエー・インターナショナルが企画・製造したものです」 別紙 被告商品目録 婦人用衣服 帽子 靴下 マフラー、ストール 靴(ルームシューズを含む) バッグ ポーチ パスケース 財布 アクセサリー ヘアアクセサリー 別紙 広告目録 第1 広告の内容 謝罪広告 1 株式会社サンエー・インターナショナル(以下「当社」といいます。)は、自ら管理・運営する「ジル・スチュアートオフィシャルホームページ」と称するウェブサイト(http://(省略))において、米国ファッションデザイナーであるジル・スチュアート氏の氏名及び肖像写真を当社が販売する婦人用衣服、帽子、靴下、マフラー、ストール、靴、バッグ、ポーチ、パスケース、財布、アクセサリー、ヘアアクセサリー等(以下、「当社商品」といいます。)の広告として無断で表示し、同氏のパブリシティ権を侵害しました。 また、実際には、ジル・スチュアート氏及びジル・スチュアート(アジア)エル・エル・シーは当社商品の企画・製造に何ら関与していないにも関わらず、同ウェブサイトにおいてジル・スチュアート氏のデザインコンセプトの紹介を行い、また、当社商品のタグに、「この商品は、米国ジル・スチュアート社との提携により、株式会社サンエー・インターナショナルが企画・製造したものです」と記載した行為によって営業上の信用を著しく棄損致しました。 2 当社の行ったかかる行為について心より深くお詫び申し上げるとともに、今後二度とこのような行為を行わないことを誓約いたします。 平成 年 月 日 株式会社サンエー・インターナショナル 代表取締役社長 乙 ジル・スチュアート様 ジル・スチュアート(アジア)エル・エル・シー 御中 第2 広告の要領 1 謝罪広告を掲載する媒体株式会社サンエー・インターナショナルが管理運営する「ジル・スチュアートオフィシャルホームページ」のインターネットホームページ上のトップページ 2 謝罪広告を掲載する期間 3か月 第3 広告の内容 訂正広告 1 株式会社サンエー・インターナショナル(以下「当社」といいます。)は、自ら管理・運営する「ジル・スチュアートオフィシャルホームページ」と称するウェブサイト(http://(省略))において、米国ファッションデザイナーであるジル・スチュアート氏の氏名及び肖像写真を当社が販売する婦人用衣服、帽子、靴下、マフラー、ストール、靴、バッグ、ポーチ、パスケース、財布、アクセサリー、ヘアアクセサリー等(以下、「当社商品」といいます。)の広告として表示しておりましたが、ジル・スチュアート氏の承諾なく表示しておりましたので、平成28年3月をもって削除致しました。 また、同ウェブサイトにおいてジル・スチュアート氏のデザインコンセプトの紹介を行い、また、当社商品のタグに、「この商品は、米国ジル・スチュアート社との提携により、株式会社サンエー・インターナショナルが企画・製造したものです」と記載しておりましたが、ジル・スチュアート氏及びジル・スチュアート(アジア)エル・エル・シーは当社商品の企画・製造に何ら関与していませんので、その旨訂正させて頂きます。 平成 年 月 日 株式会社サンエー・インターナショナル 代表取締役社長 乙 ジル・スチュアート様 ジル・スチュアート(アジア)エル・エル・シー御中 第4 広告の要領 1 訂正広告を掲載する媒体株式会社サンエー・インターナショナルが管理運営する「ジル・スチュアートオフィシャルホームページ」のインターネットホームページ上のトップページ 2 訂正広告を掲載する期間 3か月 別紙 誤認防止表示目録 第1 表示の内容 「この商品は、株式会社サンエー・インターナショナルが独自にデザイン、企画・製造したものであり、ジル・スチュアート、ジル・スチュアート(アジア)エル・エル・シーが、商品のデザイン、スタイル、コンセプトに関与、推奨するものではありません。」 第2 表示の要領 1 表示を掲載する媒体 (1)株式会社サンエー・インターナショナルが管理運営するウェブサイト「ジル・スチュアートオフィシャルホームページ」のトップページ (2)別紙被告商品目録記載の商品に付する商品タグ 2 表示の態様 (1)前項(1)についてフォントサイズ12 (2)前項(2)について、被告表示5と同一の場所及びフォントサイズ 別紙 商標権目録 1 登録番号:商標登録第3323629号 登録商標:JILL STUART ジルスチュアート 指定商品:第25類 2 登録番号:商標登録第4007423号 登録商標:JILL STUART 指定商品:第25類 3 登録番号:商標登録第4060789号 登録商標:JILL STUART 指定商品:第14類 4 登録番号:商標登録第4060790号 登録商標:JILL STUART 指定商品:第18類 5 登録番号:商標登録第4451837号 登録商標:ジル スチュアート(標準文字) 指定商品:第25類 別紙 被告写真目録(省略) 別紙 原告写真目録(省略) |
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