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【事件名】NTTコムへの発信者情報開示請求事件G
【年月日】平成31年4月10日
 東京地裁 平成30年(ワ)第38052号 発信者情報開示請求事件
 (口頭弁論終結日 平成31年2月27日)

判決
原告 創価学会
同訴訟代理人弁護士 西口伸良
同 堀田正明
同 甲斐伸明
同 大原良明
被告 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社(以下「被告エヌ・ティ・ティ」という。)
同訴訟代理人弁護士 五島丈裕
被告 ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社(以下「被告ソニーネットワーク」という。)
同訴訟代理人弁護士 横山経通
同 渡邉峻


主文
1 被告エヌ・ティ・ティは、原告に対し、別紙発信者情報目録1記載の各情報を開示せよ。
2 被告ソニーネットワークは、原告に対し、別紙発信者情報目録2記載の各情報を開示せよ。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。

事実及び理由
第1 請求
 主文同旨
第2 事案の概要
1 本件は、原告が、経由プロバイダである被告らに対し、氏名不詳者が、インターネット上のウェブサイトに原告が著作権を有する写真を掲載し、原告の公衆送信権を侵害したことが明らかであるとして、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき、上記著作権侵害行為に係る別紙発信者情報目録1及び2記載の発信者情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実。なお、本判決を通じ、証拠を摘示する場合には、特に断らない限り、枝番を含むものとする。)
(1)当事者
ア 原告は、宗教法人法に基づいて設立された宗教法人である。
イ 被告らは、電気通信事業を営む株式会社である。
(2)本件各写真
 別紙写真目録1及び2の写真(以下、別紙の符号に従い、「本件写真1」及び「本件写真2」といい、併せて「本件各写真」という。)は、写真の著作物である。(甲5、7)
(3)氏名不詳者の行為
ア 氏名不詳者1(以下「本件発信者1」という。)は、別紙投稿記事目録1の投稿日時欄記載の日時に、インターネット上のレンタル掲示板サービス「teacup.」(以下「本件掲示板」という。)に、同目録記載の記事(以下「本件記事1」という。)を投稿した。(甲1の4)本件記事1の投稿は、被告エヌ・ティ・ティの提供するインターネット接続サービスを介して行われた。(甲3、4の4)
イ 氏名不詳者2(以下「本件発信者2」という。)は、別紙投稿記事目録2の投稿日時欄記載の日時に、本件掲示板に、同目録記載の記事(以下「本件記事2」という。)を投稿した。(甲1の5)
 本件記事2の写真は、本件写真2の複製である。
 本件記事2の投稿は、被告ソニーネットワークの提供するインターネット接続サービスを介して行われた。(甲3、4の5)
3 争点
(1)被告ら共通
 原告は本件各写真の著作権者かどうか(争点1)
(2)被告エヌ・ティ・ティ関係
ア 依拠性の有無(争点2−1)
イ 引用の成否(争点2−2)
(3)被告ソニーネットワーク関係
 発信者情報開示を受けるべき正当な理由の有無(争点3)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(原告は本件各写真の著作権者かどうか)について
〔原告の主張〕
 本件写真1は、原告に雇用され、撮影当時、原告の聖教新聞社報道局の職員であったA(以下「A」という。)が、平成30年8月6日、その勤務時間中に、原告の業務として、Bに所在する原告施設である創価学会B研修道場に赴き、原告のC名誉会長と同夫人が原告会員を激励している様子を撮影した写真である。本件写真1は、聖教新聞社が同月22日付けで発行した聖教新聞3面に原告名義で公表された(甲6の1)。
 本件写真2は、原告に雇用され、撮影当時、原告の聖教新聞社写真局の職員であったD(以下「D」という)が、平成16年10月28日、その勤務時間中に、原告の業務として、当時、Eに所在した原告施設である創価文化会館に赴き、各部代表者会議でスピーチ中のC名誉会長を撮影した写真である。本件写真2は、聖教新聞社が平成30年9月1日付けで発行したグラフSGI9月号38頁に原告名義で公表された(甲6の2)。
 そうすると、本件各写真は、原告の発意に基づき原告の業務に従事する者が職務上作成する著作物であり、原告が自己の著作の名義の下に公表するものであるから、原告が著作者としてその著作権を有する。
 なお、原告の就業規則には、職員が職務上作成した著作物の著作権は原告に帰属すると規定されており、同規定によっても、原告が本件各写真の著作権者である。
〔被告エヌ・ティ・ティの主張〕
 原告が本件写真1の著作権者であるかについては、不知。
〔被告ソニーネットワークの主張〕
 原告は、本件写真2がDによって撮影されたことを示す証拠として、原告の代表者代表役員作成の報告書(甲7)を提出するが、当該証拠は客観的証拠ではないから、Dが本件写真2を撮影したことが明らかであるとはいえず、原告が著作権を有することが明らかとはいえない。
 また、原告は、本件写真2が職務著作に該当するとも主張するが、Dが本件写真2を撮影したとされる平成16年10月28日当時の就業規則や、Dが当時原告の従業員であったことを示す証拠を提出していないから、本件写真2について原告が著作権を有することが明らかであるとはいえない。
2 争点2−1(依拠性の有無)について
〔原告の主張〕
 本件記事1に掲載された写真は、本件写真1に依拠したものである。
〔被告エヌ・ティ・ティの主張〕
 本件記事1には、「say say sayさま画像お借りします。」という記載があるところ、本件記事1の投稿前に投稿者「say say say」により本件記事1の写真と被写体や構図が似た写真を掲載した記事が投稿されていること(甲1の1。以下「甲1の1記事」という。)から、本件発信者1は、甲1の1記事の写真を利用する意思で本件記事1を投稿したものであり、本件写真1の存在及び内容を認識して、これを利用する意思を有していたものではない。
 したがって、本件記事1は、本件写真1に依拠したものではない。
3 争点2−2(引用の成否)について
〔原告の主張〕
 本件記事1は、投稿者の実名も示さず、「say say sayさま画像お借りします。」と記載されているとおり、甲1の1記事に掲載した本件写真1を転載したものである。そもそも本件記事1に本件写真1を掲載する必要性はなく、また、本件記事1は、本件写真1が変造写真であるかのように述べる内容であり、本件写真1の著作者である原告の制作意図にも強く反し、原告が正当な引用として許容することはありえない。
 また、本件写真1の出所も示されておらず、他人の著作物であることが明瞭に区別されていない。
 以上によれば、本件記事1に本件写真1を掲載することは、「公正な慣行」に合致するものということはできず、また、「報道、批評、研究その他の引用の目的上正当の範囲内」で行われたものということもできないから、著作権法32条1項にいう引用に当たるとはいえず、権利侵害の明白性は認められる。
〔被告エヌ・ティ・ティの主張〕
 仮に本件記事1の写真が、本件写真1を複製したものであるとしても、本件写真1は既に公表されたものであり(甲6の1)、本件記事1は、甲1の1記事に同調して、掲載した写真について、自身の認識と異なることや、写真自体に不自然さがあることを意見又は論評として述べるものと解釈できる。そして、本件記事1において、写真と本件発信者1の意見又は論評を明瞭に区別でき、主従関係性も明らかである。大規模な宗教法人の支持に影響する写真について、本件記事1のように疑問を呈する表現で意見や論評を穏当に述べることは、正当な範囲内における引用と認められる。
 以上によれば、本件記事1の投稿について、著作権法32条1項が規定する引用に当たる可能性があるから、権利侵害の明白性は認められない。
4 争点3(発信者情報開示を受けるべき正当な理由の有無)について
〔原告の主張〕
 原告は、本件記事2を投稿した本件発信者2に対する損害賠償請求及び削除要求等を行うため、被告ソニーネットワークに対し、本件発信者情報の開示を求めるものであるから、原告には、発信者情報の開示を受ける正当な理由がある。
〔被告ソニーネットワークの主張〕
 損害賠償請求等を行うためには、氏名又は名称及び住所が判明すれば十分であり、電子メールアドレスの開示を受ける必要はないから、電子メールアドレスについては、発信者情報開示を受けるべき正当な理由は認められない。
第4 当裁判所の判断
1 争点1(原告が本件各写真の著作権者かどうか)について
 証拠(甲6、7)によれば、原告の聖教新聞社(原告の機関紙等の出版等の収益事業を行う部門)の職員であったA及びDが、原告の業務として本件各写真を撮影したこと、本件写真1は、聖教新聞社が平成30年8月22日付けで発行した聖教新聞に、本件写真2は、同社が同年9月1日付で発行したグラフSGI9月号38頁に、それぞれ原告名義で公表されたこと、原告の就業規則には「職員が職務上の行為として著作した著作物の著作権は、法人に帰属する。」と規定されていることが認められる。
 そうすると、本件各写真は、原告の発意に基づき原告の業務に従事する者が職務上作成する著作物であり、原告が自己の著作の名義の下に公表するものであって、原告の就業規則に別段の定めもないから、原告が著作者としてその著作権を有すると認めるのが相当である(著作権法15条1項)。
2 争点2−1(依拠性の有無)について
 被告エヌ・ティ・ティは、本件記事1の写真は、甲1の1記事に掲載された写真に依拠したものであり、本件写真1に依拠していないと主張する。
 しかし、証拠(甲1の1、5の1、6の1)によれば、本件写真1は、平成30年8月22日付け聖教新聞に掲載されたこと、同月23日に投稿された甲1の1記事には、「昨日の写真がどうも臭いと思っていたら…」との記載があること、甲1の1記事に掲載された写真と本件写真1は実質的に同一のものであることが認められ、これらの各事実からは、甲1の1記事の投稿者は、本件写真1に依拠して甲1の1記事に本件写真1と実質的に同一な写真を掲載したものと認めるのが相当である。
 そうすると、本件発信者1が甲1の1記事の写真に依拠して本件記事1を投稿したという被告エヌ・ティ・ティの主張を前提としても、それは、甲1の1記事を通して本件写真1に依拠したものということができる。
 したがって、被告エヌ・ティ・ティの主張は理由がない。
3 争点2−2(引用の成否)について
 被告エヌ・ティ・ティは、本件記事1において本件写真1を掲載したことが適法な引用(著作権法32条1項)に当たる可能性があるから、権利侵害の明白性が認められないと主張するところ、他人の著作物を引用した利用が許されるためには、その方法や態様が、報道、批評、研究等の引用目的との関係で、社会通念に照らして合理的な範囲内のものであり、かつ、引用して利用することが公正な慣行に合致することが必要と解される。
 本件記事1は、匿名による投稿が可能なインターネット上の掲示板サイトに、別紙投稿記事目録1記載のとおり、十数行にわたり、車に乗っている人物を迎える人々の視線の高さが不自然であることや、写真の一部が切り貼りされたもののようにも見えるなどということを指摘する内容の文章が記載され、その最下部に、本件写真1を掲載したものである。このような記載内容からすると、本件記事1が本件写真1を掲載した目的は、本件写真1を上記のような観点で批評することにあるものと認められる。
 しかし、本件記事1における本件写真1の大きさは、独立して鑑賞の対象となり得る程度の大きさであり、本件写真1を批評するとしても、本件写真1そのものを引用する必要性が高いとは必ずしもいうことができない上、批評の対象である本件写真1の出所も表示されていないこと考慮すると、本件記事1における引用の方法及び態様が、引用目的との関係で社会通念に照らして合理的な範囲内のものであると認めることはできない。また、本件写真1を引用して利用することが公正な慣行に合致すると認めるに足りる事情も存在しない。
 したがって、被告エヌ・ティ・ティの主張は理由がない。
 そして、上記のとおり本件写真1の引用が適法ということができず、本件において他に権利制限事由が存在することもうかがわれないから、本件発信者1が本件記事1に本件写真1を掲載したことにより、原告の著作権(送信可能化権)が侵害されたことが明らかである。
 以上のとおり、原告は、本件発信者1に対して著作権(送信可能化権)侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権等を有し、その権利を行使するためには、本件発信者情報の開示が必要である。そして、前記前提事実のとおり、本件記事1の投稿に際し本件発信者1に対してインターネット接続サービスを提供した被告エヌ・ティ・ティは、プロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に当たり、弁論の全趣旨により、被告エヌ・ティ・ティは本件発信者情報を保有しているものと認められる。
 したがって、原告には被告エヌ・ティ・ティから本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。
4 争点3(発信者情報開示を受けるべき正当な理由の有無)について
 前記前提事実及び前記1で判示したところによれば、本件発信者2が本件記事2に本件写真2を掲載したことにより、原告の著作権(送信可能化権)が侵害されたことが明らかであるから、原告は、本件発信者2に対して著作権(送信可能化権)侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権等を有し、その権利を行使するためには、本件発信者情報の開示が必要である。
 そして、前記前提事実のとおり、本件記事2の投稿に際し本件発信者2に対してインターネット接続サービスを提供した被告ソニーネットワークは、プロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に当たり、弁論の全趣旨により、被告ソニーネットワークは本件発信者情報を保有しているものと認められる。
 被告ソニーネットワークは、開示すべき発信者情報に関し、電子メールアドレスの開示を受ける必要はないと主張するが、プロバイダ責任制限法4条1項に係る総務省令においては、電子メールアドレスも侵害情報の発信者の特定に資する情報として規定されている上、転居などの事情によって本件発信者2の実際の住所が、被告ソニーネットワークが本件発信者2の住所として保有しているものと異なる可能性もあることに照らすと、電子メールアドレスの開示が不要ということはできない。
 したがって、原告には被告ソニーネットワークから本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。
5 結論
 以上のとおり、本訴請求はいずれも理由があるから、これらを認容することとし、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第40部
 裁判長裁判官 佐藤達文
 裁判官 今野智紀
 裁判官 遠山敦士は転補のため署名押印することができない。
裁判長裁判官 佐藤達文


発信者情報目録1
 別紙投稿記事目録1記載の記事(以下「侵害情報」という)に関する以下の情報
 1 発信者その他侵害情報の送信に係る者の氏名又は名称
 2 発信者その他侵害情報の送信に係る者の住所
 3 発信者の電子メールアドレス(電子メールの利用者を識別するための文字、番号、記号その他の符号)
発信者情報目録2
 別紙投稿記事目録2記載の記事(以下「侵害情報」という)に関する以下の情報
 1 発信者その他侵害情報の送信に係る者の氏名又は名称
 2 発信者その他侵害情報の送信に係る者の住所
 3 発信者の電子メールアドレス(電子メールの利用者を識別するための文字、番号、記号その他の符号)
投稿記事目録1
 閲覧用URL http://以下省略
 投稿日時 2018年8月23日13時52分52秒
 投稿時IPアドレス 153.202.137.131
 タイトル Say Say Sayさま同感です。
 投稿者 末席の弟子
 投稿内容
 say say sayさま画像お借りします。
 拡大して見させていただいたのですが、最後に見た先生の写真より(お痩せになっていた頃)、ふっくらされているイメージというのが第一印象。
 言ってしまえばお元気な頃の先生のように見える。
 そして、迎えられている人たちの視線が不自然な印象です。
 視線が人によって角度が高いようにも見えます。
 それと車のフロント部分下の影・・・
 何であんなに青っぽいのでしょうか。
 周りは黒っぽいのに。(※右前輪と影の境界線が切り張りのようにも見える)
 ホントに画像解析したいくらいですね。
投稿記事目録2
 閲覧用URL http://以下省略
 投稿日時 2018年8月27日6時24分54秒
 投稿時IPアドレス 121.3.82.238
 タイトル 恐るべし恐るべし
 投稿者 正義の子
 投稿内容
 ドンキホーテさま投稿者:あかり投稿日:2018年8月26日(日)10時59分59秒
 この投稿を見て一瞬浮かんだ御書
 『皆人のこの経を信じ始むる時は信心有る様に見え候が・中程は信心もよはく僧をも恭敬せず供養をもなさず・自慢して悪見をなす、これ恐るべし恐るべし』
 あかり氏は本部の敵と言った。
 本部とはF会長執行部現本部と存じますが、間違い無いですね。
 仏子、婦人部Gさんを査問の上除名処分した。
 しかも、査問委員長Hは富士宮時代に金銭問題を起こし、追い出された人物。
 現創価学会本部に正義や如何。
 師匠C先生を貶め辞任に追いやった空家、原っぱ
 C先生の心中如何ばかりか、随筆 桜の城 とくとご覧ぜよ。
写真目録(添付略)
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