裁判の記録 line
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2018年
(平成30年)
[7月〜12月]
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7月19日 KDDIへの発信者情報開示請求事件K
   東京地裁/判決・請求認容
 レコード製作会社である原告らが、氏名不詳者によって自らの製作に係るレコードに収録された楽曲を無断に複製、コンピュータ内記録媒体に記録蔵置、被告の提供するインターネット接続サービスを経由して自動公衆送信され、送信可能化権を侵害されたとして、被告に対し、プロバイダ責任制限法に基づき、発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は著作権侵害を求め、被告に氏名不詳の発信者の情報を開示するよう命じた。
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7月20日 アマゾンジャパンへの発信者情報開示請求事件
   東京地裁/判決・請求認容
 バッグ、靴、アパレル等の輸入、製造、販売を手掛ける会社である原告が、原告が著作権を有する商品写真が氏名不詳者によりインターネット上のショッピングサイト上に掲載され著作権を侵害されたとして、同サイトへの出品サービス業を営む被告に対して、プロバイダ責任制限法に基づき、発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は原告の主張を認め、被告に情報開示を命じた。
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8月2日 ネット紹介書籍の著者名表記事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 健康法に関する書籍の著者だとする原告が、健康トレーニング施設の運営等を業とする株式会社(被告)に対し、被告が開設するホームページ上で、原告の著作物である書籍2冊を原告以外の者の著作物であると表示したのは原告の氏名表示権侵害であると主張して、100万円の損害賠償金支払いを求めた事件。2冊の書籍自体には、表紙・奥付等にそれぞれ監修者として原告の氏名・写真等が載り、ポーズ指導者あるいは技術指導者として訴外Pの氏名が載っている。被告の当該ホームページにはPのプロフィールが紹介されてあり、Pの主な著書として当該書籍2冊も「全面指導解説」と付されて掲載されていた。
 裁判所は、被告ホームページの表示は、本件書籍の公衆への提供、提示に際してなされたものということは出来ないとして、氏名表示権の侵害を否定、請求を棄却した。
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8月23日 米軍ヘリ墜落事故のニュース映像無断使用事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 沖縄国際大学に米軍ヘリコプターが墜落した事故に関する映像(本件映像)の著作者及び著作権者である琉球朝日放送を原告とし、本件映像の一部を使用してドキュメンタリー映画を製作しDVDを販売した映像制作会社を被告とする本訴・反訴裁判の控訴審。一審東京地裁は、本訴の差止及び削除請求の全てと損害賠償請求の一部を認容して、その余の請求および反訴請求を棄却したが、被告が控訴した。
 知財高裁は、原審の判断を維持して、控訴を棄却した。
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9月13日 “壁ドン”イラスト無断転載事件B
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 イラストレーター(原告)が、「ニュースちゃんねる」と題するウェブサイトを運営する被告に対し、被告が当該サイトに原告が著作権を有するイラストを3点掲載した行為が、原告の著作権を侵害するとして、損害賠償金99万円の支払いを求めた事件。同一原告による別サイト「ガールズVIPまとめ」掲載に対する判例もある。
 裁判所は、原告の許諾を得ていたとする被告の主張を退け、別案件同様、被告に30万円の賠償金支払いを命じた。
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9月20日 フラダンス振り付けの著作物性事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 ハワイに在住しフラダンスの指導者である原告は、かつて、フラダンス教室事業を営む会社(被告)とコンサルティング契約を結び、被告や被告が運営する協会の会員に対するフラダンス指導・助言を行っていた。本件は、契約解消後、原告が被告に対して、(1)被告がフラダンスを指導・上演する各施設で目録記載の振付を上演し上演させる行為は原告著作権の侵害であるとして上演の差止、(2)被告が同各施設で目録記載の楽曲を演奏し演奏させる行為は原告著作権の侵害であるとして演奏の差止、(3)上記2つの侵害行為に対する損害賠償金250万円余の支払い、(4)被告が原告とのフラダンス指導の準委任契約を原告にとって不利な時期に解消して与えた損害賠償金385万円余の支払いを請求した事件。
 裁判所は振付目録中6つの振付について著作物性を認めて、その上演の差止と賠償金43万円余の支払いを命じ、演奏については契約解消後なされていない等として、他の請求は棄却した。
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9月20日 大阪府知事vs前新潟県知事 名誉毀損事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 日本維新の会代表である松井一郎大阪府知事(原告)が、当時新潟県知事であった米山隆一被告がツイッター上に行った投稿によって社会的評価を低下させられたとして、被告に対して慰謝料等550万円の支払いを求めた事件。被告は大阪府立高校生徒への頭髪指導をめぐる訴訟に関連して、府立高の責任者を「維新の松井さん」とし、「異論を出したものを叩きつぶし党への恭順を誓わせてその従順さに満足する」などとツイッター上で記した。
 裁判所は、本件投稿部分の主語は松井氏ではなく日本維新の会創設者の橋下徹氏だなどとする被告の主張を認めず、投稿は松井氏が独裁者であるかのごとく振舞っている印象を抱かせ、氏の社会的評価を低下させたと認定、被告に原告に対する33万円の賠償金支払いを命じた。
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9月27日 ツイッター掲載写真の無断転載事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 被告男性が、原告女性が被写体となっている写真1点を原告に無断で複製してツイッター上にアップロードした行為が、原告の著作権、肖像権及びプライバシー権を侵害すると主張して、原告が被告に対し、損害賠償金、慰謝料等合計232万円余を請求した事件。本件写真は原告を被写体とする緊縛写真であり、原告と訴外Pとによって撮影され、Pのツイッター上に公開されていたものを被告が複製して自らのツイッター上に載せた。
 裁判所は、当該写真が著作物であり、著作権がPからの譲渡により原告にあると判断した上で、被告の行為は原告の著作権を侵害すると認めた。また肖像権侵害、プライバシー権侵害も認め、被告に47万円余の支払いを命じた。
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9月27日 “マリカー”不正競争事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 自動車レンタル会社である被告が、任天堂(原告)の代表的レースゲーム「マリオカート」の略称「マリカー」を社名として用いた(その後社名変更)上、同社の人気キャラクターであるマリオなどの衣装を貸し出して「公道カート」で遊ばせていることに関して、原告が、(1)原告の周知又は著名な商品標示である「マリオカート」及び「マリカー」と類似する標章の使用行為が不正競争行為であること、(2)原告表現物と類似する写真や動画をネット上にアップする行為が著作権侵害であること、(3)原告の周知又は著名な商品等表示である立体像と類似する表示の標章(コスチューム等)を使用する行為が不正競争に当たること、(4)原告の文字表示と類似するドメイン名の使用が不正競争に当たること、(5)原告表現物の複製または翻案物である各コスチュームを貸与する行為が著作権侵害であること、などを主張して、標章使用・表現物複製と公衆送信・コスチューム貸与・ドメイン名使用等の差止め、写真と動画の削除、商号登記の抹消、データの廃棄等及び、損害賠償金1000万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は、不正競争行為に関して、「マリカー」という言葉やドメイン名が原告の表示として周知性があるだけでなく、「マリオ」等の有名キャラクターも有名表示と認めた一方、著作権に関しては判断を避け、被告に対し、(1)外国語のみで記載されたウエブサイトやチラシを除いて、営業施設・営業活動で「マリカー」を使用しないこと、(2)「マリカー」を営業施設と広告宣伝物、カート車両から削除すること、(3)マリオやヨッシーなどの衣装を使用しないこと、(4)動画のデータを削除すること、(5)外国語のみで記載されたウエブサイトのために使用する場合を除いて、ドメイン名を使用しないこと、(6)損害賠償金1000万円を支払うこと、を命じた。
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10月9日 「生命の實相」復刻出版事件D(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、追加請求棄却
 亡Aの創始した宗教団体「生長の家」をめぐるいくつかの裁判の一つである『万物調和六章経』書籍事件の控訴審。(1)生長の家の宗教的理念に基づき社会厚生事業を行う公益財団法人(一審原告事業団)は、亡Aの著作物『大調和の神示』(本件著作物)の著作権を有しているが、一審被告宗教法人「生長の家」による『万物調和六章経』(本件書籍)の出版は、本件著作物の著作権を侵害しているとして、被告宗教法人及びその代表者に、本件書籍の複製、頒布、販売の差止め及び廃棄と、損害賠償金160万円の支払いを求め、(2)本件著作物の出版権を有する一審原告出版社が、本件書籍の出版は原告出版社の出版権を侵害するとして、被告らに対して、本件書籍の複製の差止めと損害賠償金100万円の支払いを求めた事件。本件書籍は巻頭に本件著作物の全文を掲載している。
 一審東京地裁は、本件著作物は、原告事業団が主張するように原告事業団が著作権を有する『生命の実相』の一部をなすものではなく、それに先立つ単独の著作物であるが、その著作権は事業団に譲渡されており、事業団に帰属すると認定した上で、その著作権は原告事業団に譲渡された後も被告宗教法人に無償で使用させることが当初から想定されていて、黙示の使用許諾が成立していたと判断、原告事業団の主張する解約の合理的理由もないとして、原告の請求を棄却した。原告らは判決を不服として控訴し、控訴人一審原告出版社は新たに本件著作物の出版権を得て、その出版権侵害に基づく請求も追加した。
 知財高裁は一審の判断を維持し、追加請求に関しては、一審後の著作権者と出版社の出版権設定契約・登録手続きにより先行使用許諾関係を劣後させようとするのは、権利の濫用として認めず、控訴を棄却した。
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10月18日 類似“ごみ箱”の不正競争事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 家庭日用品の製造販売等を行う原告会社が、雑貨品の輸入販売等を行う被告会社がごみ箱や2つの傘立てを輸入販売したことに対して、そのそれぞれの、意匠権、著作権、不正競争行為、一般不法行為に関する、差し止めや謝罪広告の掲載、損害賠償金の支払いを求めた事件。
 裁判所は、ごみ箱に関する意匠権侵害だけを認め、ごみ箱の販売差し止めと廃棄、損害賠償金5万6千円余の支払いを被告に命じ、その他の請求は棄却した。円筒形また四角筒形の傘立てのデザインの著作物性は認められなかった。
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10月23日 商標“ルイ・ヴィトン”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 ルイ・ヴィトン(一審原告)のモノグラム(2つの文字や字素を組み合わせた記号、この場合はLとV)等の標章に酷似した模様がプリントされたスニーカーやキャップを製造販売していた業者(一審被告)に対して、原告が商標権侵害及び不正競争防止法行為として、237万円余の損害賠償金支払いを求めた事件の控訴審。被告は被告商品がパロディ商品であり価格の安さから消費者が原告商品と取り違えることはあり得ない等と主張したが、一審東京地裁は不正競争行為を認めて、被告に1703万円余の支払いを命じた。被告がそれを不服として控訴した。
 知財高裁は原審の判断を維持して、控訴を棄却した。
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10月26日 GMOペパボへの発信者情報開示請求事件
   東京地裁/判決・請求認容
 カメラマンである原告が、被告・GMOペパボ株式会社が運用するレンタルサーバ上のウエブサイトに掲載された女性コスプレイヤーを写した写真は、原告が撮影した著作物であるから、掲載は著作権侵害であると主張して、被告に対し、プロバイダ責任制限法に基づき、発信者の情報開示を求めた事件。
 裁判所は写真の著作物性を認め、原告がその著作権者であると認め得る証拠はないとする被告の主張を排して、原告の請求を認め、被告に発信者情報の開示を命じた。
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11月15日 「MMPI性格検査」出版権事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 質問紙法人格検査(ミネソタ多面的人格目録=MMPI)の日本語翻訳版につき出版権を有するとする原告出版社が、被告出版社によるMMPI性格検査に関わる書籍等(ハンドブック、質問事項記載冊子、マークカード及び診断用ソフトウエア)の出版・頒布が同出版権を侵害するとして、被告出版社に対し、同書籍等の複製・頒布の差し止め、廃棄を求めた事件。
 裁判所は被告出版社の書籍等は原告出版社版を複製したものとは認めず、原告の請求を棄却した。
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11月20日 キャッチコピー“やめられない、とまらない”事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、追加請求棄却
 広告代理店大広の従業員であった原告が、カルビー株式会社(被告)の商品であるスナック菓子「かっぱえびせん」のテレビコマーシャルは原告が制作したものであると主張して、被告に対しその確認、社内報等への記事掲載、名誉毀損等の賠償金1億5千万円の支払いを求めた事件の控訴審。一審東京地裁は原告の主張をいずれも却下、ないし棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁は原審の判決は相当であるとして控訴を棄却し、控訴人による追加請求も棄却した。
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11月29日 類似“映画字幕制作ソフト”事件B
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 「映画字幕制作ソフト」をめぐる字幕制作システム開発会社同士の争いで、原告会社が被告会社を著作権侵害で訴えたが、一審二審とも、被告プログラムは原告プログラムの創作性を有する部分をコピーしたとは言えないとして原告が敗訴した。本件は、同事件に関し、原告会社が、事件にかかわった原告元従業員2名を被告に加えて、原告会社の営業秘密であるソースコードプログラムやファイルを持ちだして開示した等を理由に、不正競争防止法に基づき、被告らに、被告ソフト等の使用禁止、廃棄等と、連帯して3千万円の支払いを求めた事件。
 東京地裁は、両ソフトの類似箇所の一部に営業秘密に関する不正競争行為を認め、被告らに被告ソフト等の使用禁止、廃棄と、198万円の支払いを命じた。
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12月11日 「ミヤネ屋」のASKA未公表曲事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 歌手であり作曲家であるASKA(原告)が、被告芸能レポーターが被告讀賣テレビの番組において原告の創作した未発表の楽曲の一部を放送したのは、公衆送信権および公表権侵害だとして、被告らに対し、3307万円余の賠償金支払いを請求した事件。
 裁判所は、被告らの、原告が被告レポーターに本件録音データを提供したことは公衆に提示したと同視しうるとする、また覚醒剤取締法違反で有罪判決を受けた原告の事件の時事の報道のための利用だとする主張を退け、公衆送信権侵害と公表権侵害を認め、被告らに対し、117万円余の支払いを命じた。
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12月26日 “マニュアル”翻訳事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 情報入力システムの機能や操作方法を説明するための、各ページに操作の際に表示される画像と数行のコメントを掲載したマニュアルを作成した原告が、本件マニュアルは著作物であるとして、本件マニュアルを英語およびシンハラ語に翻訳して追加・削除・変形したマニュアル(被告マニュアル)を作成したシステム開発会社(被告)に対して、著作権侵害であると主張して、複製の差止と損害賠償金2660万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は本件マニュアルの著作物性を検討し、本件システムの機能や操作といった客観的事実を説明するためのものとして分かりやすく一般的に使われるありふれた表現で示すことが求められる本件マニュアルは、表現の選択の幅が狭く、原告の個性が表現されているとは言えないとして著作物性を否定し、原告の請求を棄却した。
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