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7月1日 『ライ麦畑でつかまえて』続編の出版差止め事件 |
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ニュ−ヨーク連邦地裁/判決・請求認容
『ライ麦畑でつかまえて』(1951年刊)の著者J・D・サリンジャー氏は、『ライ麦畑でつかまえて』の続編『60 Years Later: Coming Through the Rye』と題する小説の作者「J・D・カルフォルニア」と出版社に対して、出版差止めを求めて提訴していたが、この日、ニューヨーク連邦地裁は、サリンジャー側の主張を認め、米国内での出版差止めを命じた。
なお、英国では既に出版されているという。 |
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7月8日 商標“レンタルお姉さん”不正競争事件 |
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東京地裁/仮処分申請
引きこもりの若者たちの社会復帰を支援するNPO法人「ニュースタート事務局」(千葉県浦安市)は、スタッフの名称として登録している商標「レンタルお姉さん」を、ポルノ映画「レンタルお姉さん 欲望家政婦」の題名に使用されたとして、映画配給元「新日本映像」(東京都文京区)に、不正競争防止法等に基づいて名称の使用や映画配給の差止めなどを求める仮処分を東京地裁に申し立てた。 |
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7月8日 「押し紙報道」名誉毀損事件(週刊新潮) |
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東京地裁/提訴
販売部数を水増しする、いわゆる押し紙で不正に収入を得ていると指摘した「週刊新潮」(2009年6月11日号)の記事で名誉を傷つけられたとして、読売新聞社は、発行元の新潮社に慰謝料など5500万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めて東京地裁に提訴した。 |
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7月9日 CAD図面の著作物性事件 |
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大阪地裁/判決・請求棄却
原告会社の取締役であるP1が被告から委託を受けて作成した光電スイッチ等の製品のCAD図面(本件CAD図面)について、著作権を主張する原告は、被告が本件図面を複製又は翻案して被告CAD図面を作成し、被告ウェブページに掲載し、被告CD−ROMに収録して顧客に頒布している行為は、原告の著作権(複製権、翻案権、公衆送信権)を侵害する等として、被告CD−ROMの製作・頒布の差止めと廃棄、損害賠償金の支払いを求めた事案。
裁判所は、まず、本件CAD図面の著作物性について判断した。
原告は、本件CAD図面は、P1の思想や技術を形に表した結果であり、学術的な範囲に属する著作物である等と主張した。
しかし、裁判所は、『「図形を構成する線が数値を有する」という原告の主張の趣旨が必ずしも明らかではないが、図形を構成する線が、それぞれ長さ、方向、位置といった数値データと関連付けられるという意味であるとすれば、このことはCAD図面の属性そのもの』であり、CAD図面の創作性を基礎づけるものではなく、3次元の物体を2次元の平面に表現すること自体は、通常のありふれた図法に過ぎない等として著作物性を否定し、請求を棄却した。 |
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7月13日 貴乃花親方夫妻への名誉棄損事件(週刊現代) |
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東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
大相撲の故二子山親方の遺産相続を巡り、貴乃花夫妻が『週刊現代』と『月刊現代』の“無断で相撲部屋の土地・建物の権利書を持ち帰る等して、遺産を独占しようとした”とする記事で名誉を傷つけられたとして、発行元の講談社に損害賠償を求めていた訴訟の判決で、裁判所は名誉毀損を認め、講談社側に約850万円の損害賠償と謝罪広告を命じた。また、同社野間佐和子社長に対し、「業務全般の執行責任者として、名誉毀損等の権利侵害を防止するための実効性のある体制を整備すべき義務を負う」として、重大な任務懈怠があり、損害賠償責任を免れないとした。 |
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7月15日 「週刊現代」のキヤノン創業者名誉棄損事件(2) |
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東京高裁/判決・変更(上告)
キヤノンと同社の御手洗冨士夫会長が、『週刊現代』の記事「キヤノン御手洗会長と七三一部隊」で名誉を傷つけられたとして、発行元の講談社等に2億円の損害賠償を求めた裁判で、一審判決は、表紙や新聞広告が誤解を与えるとして、講談社側に200万円の損害賠償を命じたが、東京高裁は、これを破棄し、原告キヤノンの請求を棄却した。
判決は、見出しが印象づけたキヤノン側と七三一部隊との関係はあいまいで抽象的なものにとどまり、社会的評価が低下したとまでいうことは困難だとした。 |
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7月23日 「バンキシャ」嘘の証言事件(刑) |
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岐阜地裁/判決・有罪
日本テレビの報道番組「真相報道バンキシャ!」に対し、岐阜県の裏金に関する虚偽の証言をして、県の業務を妨害した等として、業務妨害罪と詐欺罪に問われた同県中津川市の元土木建設会社役員に対する判決公判で、溝口里佳裁判官は、懲役3年、執行猶予5年を言い渡した。
被告人は、2008年11月、日本テレビの取材に対し、岐阜県の土木事務所は「発注工事の請求代金を水増しして業者に支払い、還元させて裏金を作っている」等と嘘の証言をした。 |
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7月28日 医療事故報道の名誉棄損事件(共同通信)(2) |
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東京高裁/判決・控訴一部棄却、一部取消(上告・上告受理申立)
心臓手術中の死亡事故を巡る報道記事で名誉を傷つけられたとして、東京女子医大の担当医が、記事を配信した共同通信社と、記事を掲載した上毛新聞社、静岡新聞社、秋田魁新報社に損害賠償を求めた控訴審判決。
共同通信社に関しては、記事は担当医の社会的評価を低下させたとはしたが、病院の報告書を根拠にするなど「真実と信じるには相当の理由があった」として、一審判決を支持し、賠償責任を否定した。
一方、一審で賠償を命じられた新聞3社に関しては、通信社を一方の核とする報道・配信システムでは、求められる注意義務を共同通信社が履行することが前提とされており、新聞社には賠償責任は生じないとして、一審判決を取消した。 |
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7月29日 映画のDVD化契約事件(2) |
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知財高裁/判決・控訴棄却
控訴人(一審原告)は、(1)被控訴人イーエスとの間で、控訴人が著作権を有する映画2作品のDVD化権を譲渡する旨の売買契約を締結したが、被控訴人イーエスが売買代金の一部350万円しか支払わなかったとして、債務不履行による損害賠償の支払いを求め、(2)さらに2映画作品のDVDの発売元の被控訴人イーエス及び販売元の被控訴人イーネットが、DVDの発売・予約受付の広告を掲載するとともに、DVDとしては未公表である作品を公表したことが、著作権(複製権、頒布権)及び著作者人格権(公表権)を侵害するとして損害賠償を求めたが、一審判決で請求を棄却されたので、これを不服として控訴した。
知財高裁は、まず本件売買契約の成立について判断し、被控訴人イーエスは、控訴人の代理人であったアジアシネマギルドに、350万円を交付する代わりに、本件映画の複製・頒布につき控訴人の許諾を受ける合意をしたにすぎず、売買代金2800万円での売買契約が締結されたものとは認められない。
また契約書には作成日付もなく、社印も、代表者の署名や押印もなく、契約書面としての体裁が全くなく、同書面が被控訴人に交付された証拠がない等として、本件売買契約が締結されたと認めることは出来ないとして、複製権や頒布権の侵害も認めず、控訴請求を棄却した。 |
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7月31日 黒澤作品のDVD化事件B |
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東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
黒澤明(1998年死亡)監督映画「姿三四郎」(1943年公開)等の8映画作品(本件各映画)の著作権を取得し、保有していると主張する原告・東宝が、本件各映画のDVDを輸入・販売した被告に対し、著作権(複製権)を侵害したとして損害賠償を求めた訴訟である。
東京地裁は、知財高裁の判決を援用して、事実行為としての創作行為を行うことができるのは自然人のみであることからすれば、旧法においても著作者となり得るのは原則として自然人のみであるとして、黒澤明監督を著作者の一人と認定し、原告は、映画を興行するころまでに、黒澤明監督からその著作権を譲渡されていたとした。
また、これら映画の著作権存続期間は、黒澤明監督の死亡した1998年の翌年から起算して38年が経過する2036年12月31日までとし、使用料相当額734万4000円をみなし侵害行為による損害賠償額とした。 |
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8月3日 「オリコン」中傷記事事件(2) |
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東京高裁/和解
音楽市場調査会社最大手のオリコンが、月刊誌『サイゾー』(2006年4月号)に掲載されたフリージャーナリストの烏賀陽弘道氏のコメントで名誉を傷つけられたとして、烏賀陽弘道氏に5000万円の損害賠償を求めた控訴審で和解が成立した。『サイゾー』も利害関係者として控訴審から訴訟に参加し、和解条項は、(1)『サイゾー』は烏賀陽氏に対し、了解を得ないまま不正確なコメントを掲載したことを謝罪し、500万円を支払う。(2)『サイゾー』はオリコンに対し、読者に誤解を与えたことを謝罪する。(3)オリコンは烏賀陽氏に対する損害賠償請求を放棄し、烏賀陽氏も反訴請求を放棄する、というもの。 |
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8月25日 「新しい歴史教科書」の出版契約打ち切り事件 |
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東京地裁/判決・請求棄却
中学校教科書『新しい歴史教科書(改訂版)』(本件教科書)と『市販本新しい歴史教科書』(併せて本件書籍)を分担執筆した、「新しい歴史教科書をつくる会」の会長ら4名(原告ら)は、本件書籍の出版社・被告扶桑社に対し、原告らの執筆した記述部分を削除しない限り、出版・販売・頒布をしてはならないとし、出版許諾契約の期限である2010年3月1日以降の出版・販売・頒布の差止を求めた裁判である。
2008年3月に告示された新学習指導要領が2012年度実施と確定したために、2010年度から使用される検定教科書は、通常の4年間の使用ではなく、2010年度、2011年度の2年間(4年に満たない採択期間を端境期という)となり、この端境期の教科書発行をめぐって起った争いである。
東京地裁は、原告は契約期間の定めのない契約であることを前提にして、契約解除の意思表示により本契約が終了すると主張しているが、「本件許諾契約の締結当時、当事者間において、本件書籍の発行期間について、特に話し合われたり……したことはないこと(したがって、当事者間において、発行期間を採択期間である4年間に限定する旨の話合いがなされたこともないこと)……改定を行う必要が生じて、改訂された新教科書が発行されるにいたるまでの間は現行の教科書(本件教科書)の発行を継続することが予定されていた」のであり、「本件許諾契約は、本件書籍の発行期間を2011年度(2012年3月末日)までと定めた契約期間の定めのある契約」であって、「契約期間の定めのある契約において、契約当事者の解除権が認められるためには、契約の成立当時に基礎となっていた事情に変更が生じ、当該事情の変更が、信義衡平上当事者を当該契約に拘束することが著しく不当と認められる場合であり、本件においては解除権を認めるべき事情の変更があったと認めることはできない」等として、請求を棄却した。 |
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8月27日 ピンク・レディのパブリシティ権事件(2) |
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知財高裁/判決・控訴棄却(上告)
控訴人元ピンク・レディの2人は、被控訴人光文社が、「ピンク・レディdeダイエット」と題する週刊誌の記事中に舞台写真14枚を無断掲載し、「パブリシティ権」を侵害したとして損害賠償を求めた訴訟の控訴審。
知財高裁は、パブリシティ権侵害の判断基準として控訴人が主張する「その肖像等が出版物の販売促進のために用いられたか否か、その肖像等の利用が無断の商業的利用に該当するかどうか」によるべきであるとすると、正当な報道における肖像の利用も許されない結果になる恐れも生じるとして、これを退ける一方、被控訴人の「当該芸能人等の顧客吸引力に着目し、専らその利用を目的とするもの」とする基準では、“顧客吸引力以外の目的がわずかでもあれば、専らに当たらずパブリシティ権侵害にならない”という意味だとするならば、これも採用できないとした。
その上で、本件写真の使用は、読者に社会的に著名であった控訴人らの振付を記憶喚起させる手段として利用したにすぎず、「読者の記憶喚起のために控訴人らの写真を利用することが控訴人らの顧客吸引力を利用するものとなるというものではない」等とし、控訴人らの請求を棄却した原審の判断は正当であったとして、控訴請求を棄却した。 |
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8月28日 “手あそび歌”DVD事件 |
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東京地裁/判決・主意的請求棄却、予備的請求棄却
(株)永岡書店が、自社発行の書籍『DVDとイラストでよくわかる!手あそびうたブック』の編集著作権及び著作権(複製権)を侵害されたとして、『たのしい手あそびうたDVDブック』を発行した(株)宝島社に対して出版差止めと、損害賠償を求めた事案である。
争点は、永岡書店書籍は編集著作物であるか、永岡書店はその著者権者であるか、宝島社書籍は編集著作権を侵害しているか等々であった。
東京地裁判決は、永岡書店編集部員が幼稚園の教諭に対するアンケートの集計結果を踏まえて、定番の曲、幼稚園で人気が高く、よく遊ばれるものを基本として、他社書籍との差別化を図る方針の下で行われたとして、その編集著作物性を認めるとともに、職務著作物であるとして、その著作権は原告に帰属するとした。
その上で、編集著作物の創作性は収録された全曲の曲名、振付の選択に顕れており、その収録曲の一部が同一曲名の曲として宝島社の書籍及びDVDに収録されているからといって「選択の創作的表現」が再生されたとは直ちに認めることはできない等として、請求を棄却した。 |
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8月28日 テレ朝通販番組の“サクラ出演者”報道事件 |
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東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
通信販売番組の内容を捏造と報じた『週刊現代』(2007年7月14日号から3号)の記事で名誉を傷つけられたとして、テレビ朝日が発行元の講談社と執筆者に1億円の損害賠償等を求めた裁判で、東京地裁は講談社側に330万円の支払いを命じた。
乗馬型健康器具「ロデオボーイU」を紹介する番組で、出演者はサクラ等と報じた。判決は、「記事の重要な部分は真実とは認められない」と判示した。 |
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8月28日 安倍前首相実兄への名誉毀損事件(週刊現代)(3) |
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最高裁(三小)/決定・上告棄却(確定)
安部晋三元首相の実兄が、2006年9月に『週刊現代』に連載された「空虚なプリンス」と題する記事で名誉を傷つけられたとして、発行元の講談社と、執筆した松田賢弥氏に5000万円の慰謝料等を求めた訴訟の上告審。
最高裁第三小法廷は、松田氏の上告を棄却する決定をした。200万円の賠償を命じた一、二審(広島地裁、広島高裁)が確定した。
松田氏が、安部元首相について実兄を取材して執筆した、弟の岸信夫参議院議員が政界に進出する際、元首相や実兄が反対したとする記事は、実兄の発言の趣旨を逸脱し、真意と乖離しているとしている。 |
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