判例全文 line
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【事件名】動画共有サイトの著作権侵害事件(TVブレイク)
【年月日】平成21年11月13日
 東京地裁 平成20年(ワ)第21902号 著作権侵害差止等請求事件
 (口頭弁論終結日 平成21年9月11日)

判決
原告 社団法人日本音楽著作権協会
同訴訟代理人弁護士 田中豊
同 藤原浩
同 市村直也
被告 ジャストオンライン株式会社
被告 A
上記両名訴訟代理人弁護士 内藤篤
同 根本かほり


主文
1 被告ジャストオンライン株式会社は、その運営する別紙サービス目録記載のサービスにおいて、別紙楽曲リスト記載の音楽著作物を、同サービスの用に供するサーバの記憶媒体に複製し又は公衆送信(送信可能化を含む。)してはならない。
2 被告らは、原告に対し、各自8993万円及びうち5748万円に対する平成20年4月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 請求の趣旨第3項(2)に係る訴え中、被告らに平成21年9月12日以後に生ずべき損害賠償金の支払を求める部分を却下する。
4 原告のその余の請求(訴え却下部分を除く。)をいずれも棄却する。
5 訴訟費用は、これを10分し、その7を被告らの、その余を原告の各負担とする。
6 本判決の第2項は、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求
1 主文第1項同旨。
2 被告らは、原告に対し、各自1億2817万4888円及びこれに対する平成20年4月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3(1) 被告らは、原告に対し、各自、平成20年4月25日から同年11月4日まで1か月当たり944万円の割合による金員を支払え。
(2) 被告らは、原告に対し、各自、平成20年11月5日から被告ジャストオンライン株式会社が別紙サービス目録記載のサービスにおいて別紙楽曲リスト記載の音楽著作物の複製及び公衆送信(送信可能化を含む。)を停止するに至るまで1か月当たり504万円の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 本件は、音楽著作物の著作権等管理事業者である原告が、動画投稿・共有サイトを運営する旧商号を株式会社パンドラTVとする被告ジャストオンライン株式会社(以下「被告会社」という。)が主体となって、そのサーバに原告の管理著作物の複製物を含む動画ファイルを蔵置し、これを各ユーザのパソコンに送信しているとして、@被告会社に対しては著作権(複製権及び公衆送信権)に基づいてそれら行為の差止めを求めるとともに、A被告会社及び被告会社代表者A(以下「被告A」という。)に対しては不法行為(著作権侵害)に基づいて過去の侵害に対する損害賠償金及びこれに対する遅延損害金並びに将来の侵害に対する損害賠償金の連帯支払を求める事案である。
2 前提となる事実
(1) 当事者
ア 原告は、著作権等管理事業法(平成12年法律第131号)に基づき著作権等管理事業者登録簿に登録された音楽著作権等管理事業者である。(争いのない事実)
イ 被告会社は、平成17年11月10日、インターネット等の通信ネットワークを利用した映像コンテンツ配信事業等を目的として設立された株式会社である。(争いのない事実)
ウ 被告Aは、被告会社の設立以来現在まで、同社の代表取締役を務めている者である。(争いのない事実)
(2) 本件管理著作物
 別紙楽曲リストに記載の音楽著作物(以下「本件管理著作物」という。)は、いずれも原告が著作権を管理する音楽著作物である。(弁論の全趣旨)
(3) 本件サイト
ア 被告会社は、平成18年2月1日、インターネット上にURLを「(省略)」とする「TVブレイク」との名称(平成19年4月16日まではURLを「(省略)」とする「パンドラTV」との名称)のサイト(以下「本件サイト」という。)を開設し、別紙サービス目録記載のサービス(以下「本件サービス」という。)を提供している。(争いのない事実)
イ 本件サービスと同様のサービスを提供している動画投稿・共有サイトとしては、「YouTube」(運営者:グーグル株式会社)、「ニコニコ動画」(運営者:株式会社ニワンゴ)、「アメーバビジョン」(運営者:株式会社サイバーエージェント)、「eyeVio」(運営者:ソニー株式会社)、「Yahooビデオキャスト」(運営者:ヤフー株式会社)などがある。(争いのない事実)
(4) 本件サービス
ア 基本的構成
 本件サービスの基本的な構成は、次のとおりである(別紙「本件サービスの概要」参照。)。(争いのない事実)
(ア) 本件サイトに動画ファイルをアップロードしようとするユーザは、自己のパソコンをインターネットを経由して本件サイトに接続させ、本件サイト上に指示された情報を入力して会員登録をする。動画の視聴のみを求めるユーザは会員登録をする必要はない。登録した会員にそれぞれ「チャンネル番号」が付されて「MYチャンネル」が与えられる。
(イ) 会員登録を完了したユーザが本件サイトの指示に従って動画ファイルをアップロードする操作を行うと、本件サービスの専用ソフトウエア(以下「本件ユーザソフト」という。)が自動的にユーザのパソコンにダウンロードされた上で起動し、ユーザのファイルを自動的に本件サイトに適したwmv形式のファイルに変換して本件サイトのサーバ(以下「本件サーバ」という。)に送信する。本件ユーザソフトのダウンロード及びインストールは最初のアップロード時にのみ行われ、2度目以降のアップロードにおいては生じない。本件サービスにおいて、アップロードされる動画ファイルの容量及び時間の制限はない。
(ウ) ユーザのパソコンから送信された動画ファイルは、本件サーバの記憶装置内に蔵置され、他のユーザからのリクエストに応じていつでも送信できる状態に置かれる。
(エ) ユーザからのリクエストがあると、本件サーバは、記憶装置内から動画ファイルを取り出して当該ユーザにストリーム送信をし、ユーザは、本件サーバから送信された動画ファイルを自己のパソコンで受信し、そのファイルをアップロードした者の「MYチャンネル」画面上に再生される動画を視聴する。
イ 具体的構成
 本件サイトの具体的構成は、次のとおりである。(争いのない事実)
(ア) ユーザから本件サイトへの動画ファイルの送信
a 会員登録
(a) 本件サイトへのアクセス
 本件サービスの会員登録をしようとするユーザが、自己のパソコンのウェブ・ブラウザを起動させて、インターネットを経由して本件サーバに自己のパソコンを接続すると、 ブラウザ上に「β 版サービスTVbreak と表示された」本件サイトのメインページが表示される(別紙「利用手順目録」1)。
(b) 利用規約の同意及び会員情報の入力
 ユーザがメインページ左列の「メンバーログイン」表示下部の「新規登録」文字をクリックすると、本件サービスの利用約款(規約)が表示される。そして、ユーザが利用約款(規約)に「同意する」にチェックを入れて「次へ」ボタンをクリックすると、ユーザ情報の入力画面が表示される(別紙「利用手順目録」2)。
 ユーザが画面の表示に従って、自己のeメール・アドレス、パスワード、ニックネーム、生年月日、性別等を入力した上で「次へ」ボタンをクリックすると、登録会員が受けられるサービスの内容等を説明した画面が表示され、そこには、「会員登録をしてMYチャンネルを取得!」、「これであなたの個人放送局が開局します!」、「TVブレイク会員になると」、「1.MYチャンネルで個人放送局を開局」、「2.動画アップロードは無料・無制限」、「3.書き込みや友達に動画を公開」、「4.動画メールを送信出来る」と表示される(別紙「利用手順目録」3)。
 その下部の「Myチャンネルとは(説明)」という文字をクリックすると、MYチャンネルの内容を説明した画面が表示される(別紙「利用手順目録」4)。
 ユーザが「次へ」ボタンをクリックすると、「新規登録が完了しました」との画面が表示され、会員登録手続は完了する。
b 送信する動画ファイルの選択及び送信
(a) 本件ユーザソフトのダウンロード及びインストール
 会員登録を行ったユーザが、本件サイトに自己のパソコンを接続した状態で登録会員用のメインページ(別紙「利用手順目録」5)に表示された「動画アップロード」タブ又はMYチャンネル画面(別紙「利用手順目録」6)に表示された「動画アップロード」ボタンをクリックすると、画面上部に「動画アップロード(さぁ!動画をMYチャンネルにアップロードしよう!!)」と表示された画面(動画アップロード画面)になる。ユーザが動画アップロード画面中央の「アップロード」ボタンをクリックすると、本件サーバは、ユーザのパソコンに本件ユーザソフトがインストールされているか否かをチェックし、インストールされていない場合には、本件ユーザソフトがユーザのパソコンに自動的にダウンロードされて、インストールされる。そして、インストールが終了すると、ユーザのパソコンに蔵置されたファイルの中からアップロードの対象とする動画ファイルを選択する画面(ファイル選択画面)が表示される(別紙「利用手順目録」7)。
 なお、2回目以降のアップロードにおいては、ユーザのパソコンには既に本件ユーザソフトがインストールされているため、本件ユーザソフトのダウンロード及びインストールの過程は行われない。
(b) 対象ファイル及びサムネイル画像の選択
 ユーザがファイル選択画面を用いて自己のパソコンに蔵置されている動画ファイルの中から本件サイトに送信する動画ファイルを選択してクリックすると、「ファイル UP LOAD」という画面が表示され、ユーザが選択した動画ファイルがその画面上に再生される。そして、ユーザは、再生されている動画を見ながら、アップロードする動画内容を紹介するサムネイル画像として適当な画像が表示された瞬間に「T h u m b Nail指定」タブをクリックし、その静止画像を当該動画のサムネイル画像として指定する。
(c) 動画ファイルの変換及び本件サイトへの送信
 サムネイル画像を指定した後、ユーザは、動画アップロード画面の「動画 UP LOAD」タブをクリックする。本件サービスにおいて、ユーザがアップロードの対象として指定できる動画ファイルは、mpg形式、mpeg形式、wmv形式、avi形式、asf形式、mov形式及びmp4形式の7種類のファイル形式であるが、これらのファイル形式は、本件ユーザソフトにより、いずれも自動的にwmv形式に変換(エンコード)され、変換後のwmvファイルが自動的に本件サーバに送信される。
 本件サーバへの送信が完了すると、画面上に「登録完了」ボタンが表示される(別紙「利用手順目録」8)。そこには、「アップロードした動画は著作権を侵害していませんか。著作権を侵害する映像の掲載は法律で固く禁じられています。以上の事をご理解いただきました上で、登録完了ボタンをクリックして下さい。クリックすれば登録は完了です。」と表示されている。
(d) 動画内容のカテゴリーの指定
 本件サイトに送信された動画ファイルは「プログラム管理」画面(別紙「利用手順目録」9)において管理される。ユーザは、自己のチャンネル内に設けられた「プログラム管理」画面上で、アップロードした動画ファイルを収納するためのフォルダを設けて、任意の名称を付した上、そのフォルダに収納する動画ファイルの「カテゴリー」を、被告会社があらかじめ設定している「ムービー」、「アニメ」、「お笑い」、「スポーツ」、「ゲーム」、「旅行」、「思い出」、「携帯ムービー」、「ニュース」、「音楽」、「趣味」、「ネットアイドル」、「暮らし」、「ダンス」、「その他」、「タレント」、「韓流スター」、「動物」、「鉄道」、「車・バイク」、「スカイスポーツ」、「マリンスポーツ」、「ウィンタースポーツ」、「社会問題」及び「エクストリーム」との25のカテゴリーの中から選択して指定する。ユーザは、動画ファイルをアップロードする都度、その動画を収納するフォルダを選択する方法で、その動画の「カテゴリー」を指定する。
 ユーザがアップロードした動画ファイルは、当該ユーザの「MYチャンネル」に表示された「動画一覧」タブをクリックすると、そのサムネイルが一覧表示される(別紙「利用手順目録」10)。
(イ) ユーザに対する動画ファイルの送信
a 本件サイトへのアクセス
 ユーザが、自己のパソコンのウェブ・ブラウザを起動させ、インターネットを経由して本件サイトに接続すると、メインページが表示される(別紙「利用手順目録」1)。
 メインページには、その上部に「人気動画」、「新着動画」、「掲示板」へのリンクボタン及びキーワード検索欄が設けられており、その下部には、ユーザが自己の好みの動画ファイル又はチャンネルを検索するためのツールが配置されている。ユーザは、被告会社が用意したツールを用いて、自己の好みに合致する動画ファイルを選択し、それをクリックすることにより、動画を視聴することができる。
b 視聴する動画の検索
 動画ファイルの検索ツールには、@動画単位の検索、Aチャンネル単位の検索、Bその他の方法による検索の3種類がある。そのうち、@動画単位の検索の方法としては、(@)キーワード検索、(A)カテゴリー検索、(B)人気動画、(C) 新着動画、(D)「ISSUE in channel」、(E)テーマインサイド、(F)ベスト動画などが用意されている。Aチャンネル単位による検索の方法としては、(@)キーワード検索、(A)チャンネルランキング、(B)ピックアップチャンネルなどが用意されている。また、Bその他の方法としては、(@)電子掲示板、ショートメッセージ、コミュニティ、(A)ブログに貼る、友達に送るなどが用意されている。
c 動画の視聴
 ユーザが視聴する動画ファイルを選択した上で、そのサムネイルをクリックすると、当該動画ファイルを本件サイトに送信したユーザの「MYチャンネル」画面が表示される。
 MYチャンネル画面の中央部には、マイクロソフト社が無償で配布しているマルチメディアコンテンツ再生ソフトウェアである「Windows Media Player」がプラグインされており、ユーザが選択した動画は同ソフトウェアにより再生される(別紙「利用手順目録」11)。(5) 侵害行為
ア 著作物の利用
(ア) 複製
 音楽著作物を録画した動画をwmvファイルに変換して本件サーバのハードディスクに蔵置する行為は、当該著作物を録音、録画その他の方法により有形的に再製すること(著作権法2条1項15号)に当たり、著作物の複製(同法21条)に該当する。(争いのない事実)
(イ) 公衆送信(送信可能化及び自動公衆送信)
 本件サーバの記憶媒体に音楽著作物を録画した動画ファイルを蔵置して、ユーザからの要求があり次第そのファイルを送信してユーザの視聴に供することができる状態に置くことは、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置の公衆送信用記録媒体に著作物の情報を記録する行為に当たり、著作物の送信可能化(著作権法2条1項9号の5イ)に該当し、また、ユーザの要求に応じて上記動画ファイルをユーザのパソコンに送信することは著作物の自動公衆送信(同法2条1項9号の4)に該当する。(争いのない事実)
イ 利用内容
(ア) 平成20年4月24日現在、本件サイトにアップロードされている動画ファイルのうち、「音楽」のカテゴリーにおいては89.87%に当たる7569件の、「アニメ」のカテゴリーにおいては86.91%に当たる4224件の、「ムービー」のカテゴリーにおいては60.08%に当たる1684件の動画ファイルが、本件管理著作物を録画した動画ファイルであった。(甲8、弁論の全趣旨)
(イ) 平成20年11月から平成21年1月までの3か月間にアップロードされた動画ファイルのうち、「音楽」のカテゴリーにおいては84.3%に当たる225件の、「アニメ」のカテゴリーにおいては97.7%に当たる920件の動画ファイルが、本件管理著作物を録画した動画ファイルであった。(甲18、弁論の全趣旨)
ウ 許諾の有無
 上記イの動画ファイルにつき、原告が被告会社又はユーザに対して本件サイトにアップロードすることにつき許諾を与えたものはない。(これを認めるに足りる証拠はない。)
3 争点
(差止請求について)
(1) 侵害行為の主体(主位的主張)
(2) 侵害行為の主体(予備的主張)
(損害賠償請求について)
(3) 被告会社の損害賠償責任の有無
(4) 被告Aについての不法行為の成否
(5) 被告Aについての対第三者責任(会社法429条1項)の成否(上記(4)と選択的主張)
(6) 損害の額
4 争点に関する当事者の主張
(1) 侵害行為の主体(主位的主張)
ア 原告
 本件サービスにより生じる著作権侵害の主体は、被告会社である。
(ア) 本件サービスの内容・性質
a 動画配信サイトとの対比
(a) 本件サービスは、大量の動画ファイルを簡単にアップロードできるシステム及びソフトウェアを不特定多数のユーザに無償提供し、その保有する動画ファイルをアップロードさせ、他方において、大量の動画ファイルの中から好みの動画ファイルを迅速簡易に探索できるツールを整備した上、本件サイトにアクセスしてきた不特定多数のユーザに対して動画ファイルを送信するというサービスである。これは要するに、インターネットに設置したサイトにアクセスしてきた不特定多数の者に対し動画ファイルを配信して視聴させるという一般の動画配信サイトと何も変わるところがなく、唯一異なっているのは、配信する動画コンテンツを製作者等から有償で入手する代りに、ユーザが保有する動画コンテンツを無料で調達しているという点である。
(b) 本件サービスにおいては被告会社によって視聴数の少ない動画が他の動画に差し替えられることがないが、これもまた被告らの意思に基づく選択の結果にすぎない。本件サービスにおいても、視聴数の少ない動画を被告会社が削除するという利用約款を定めることは可能であるし、逆に、動画配信サイトにおいても、コストの問題さえ度外視すれば、視聴数の少ない動画を配信し続けるということができる。
b 著作権侵害発生の蓋然性
 不特定多数のユーザに対してその匿名性を保証したまま自由に電子ファイルを送受信させた場合、そこで送受信される電子ファイルの多くが、他人の著作物等を権利者に無断で複製したファイルで占められることは、過去におけるP2Pファイル共有サービスによる著作権侵害の事例から明らかである。その上、被告会社が動画内容の分類として設定した25のカテゴリーの中には、「音楽」、「アニメ」、「ムービー」など、本件管理著作物が利用されることを当然の前提とするものがある。
 したがって、本件サービスにおいて著作権侵害が生じることは、当初から想定されていたことである。
c 構成の特徴
(a) 本件サービスにおいて採用されているwmvファイルは、パソコンで動画を視聴するために広く用いられているファイル形式であり、本件サービスにアップロードされた動画は、市販のDVDと全く同一ではないとしても、ユーザがパソコンで動画を鑑賞するのに必要十分な画質を備えている。
(b) 本件サービスでは、他の多くの動画投稿・共有サービスとは異なり、アップロードするファイルの容量・時間等に全く制限がなく、ユーザは、長時間の動画を本件サービスにアップロードすることができる。このため、本件サービスには、既存の劇場用映画、テレビ番組、アニメ等の動画の全編を複製した極めて悪質な著作権侵害ファイルが大量にアップロードされている。
d 黙示の許諾
 動画配信事業者がコンテンツホルダーと利用許諾契約を締結すれば、そのコンテンツの利用が適法化されるのは当然である。そして、コンテンツホルダーから一切の利用許諾を受けていないないならば、その著作物の利用が違法であることも明らかである。本件サービスに大量のテレビ番組等がアップロードされてしまえば、その番組等を利用してテレビ局等が行う有料配信ビジネス等に深刻な影響を与えることになるのであり、テレビ局等が本件サービスにおける著作権侵害を容認ないし黙認しているなどという事実は全くない。まして、テレビ局等が本件サービスに動画を投稿することなどはあり得ないことである。
(イ) 複製及び公衆送信における管理支配
a 物理的ないし電気的な観点
(a) 動画ファイルを蔵置し、ユーザに対して送信するという本件サービスにおける本質的かつ最重要な役割を果たす本件サーバは、名実ともに被告会社が独占的に管理支配しているものである。したがって、複製行為及び公衆送信行為を管理支配しているのも被告会社である。
(b) 著作物の利用主体の判断要素とされる管理支配とは、著作物の利用についての管理支配をいうのであり、著作物の利用に供する設備の所有占有自体に意味があるわけではない。インターネット上で提供されるレンタルサーバの場合には、契約によりその使用権原さえ確保していれば、その設備の物理的な所在場所や所有関係とは無関係に、その使用権原に属する特定の機能をコントロールすることができるから、その設備の物的所有占有関係は著作物の利用主体の判断と直接の関係はない。
b システムの設計及びツールの提供
 本件サービスを利用して動画ファイルをアップロードする過程は、すべて被告会社の設計した手順に従い、被告会社が提供したツールを利用してのみ可能となる。また、本件サイトを利用して動画ファイルを視聴する過程も、すべて被告会社が設計した手順に従い、被告会社の提供したツールを利用してのみ可能となる。
c 動画内容に関する積極的関与
(a) 動画ファイルの視聴の推奨措置
 本件サービスのメインページ中央列にある「I S S U E i n channel」と題するコーナーにおいては、本件サイトにアップロードされている動画ファイルの中から、被告会社が選んだ複数の動画ファイルにつき、そのサムネイル画像及びその動画内容を説明する文章が掲げられている。ここに掲示された動画内容の説明文章は被告会社が作成したものであり、被告会社は、本件サイトにアップロードされている動画ファイルの内容を自ら確認し、その内容を基準にユーザに視聴を推奨する動画ファイルを自己の好みで選択してメインページに掲示している。
 また、「ヒットワード」検索において用意されているヒットワード、「テーマインサイド」において選択されているテーマ、「ピックアップチャンネル」として表示されているチャンネルは、いずれも被告会社が独自の好みで選定しており、これは自己の好みを反映した一定の内容の動画ファイルの視聴をユーザに対して推奨しているものである。
 そして、「ISSUE in channel」に掲げられた動画ファイルの中には、本件管理著作物を録画した動画ファイルが多数含まれ、被告会社は、これらの動画ファイルの内容を確認する過程において、これら本件管理著作物が録画されていることを認識しており、被告会社は、あえてユーザに対し本件管理著作物が録画された動画ファイルの視聴を推奨している。
(b) 動画ファイルのアップロード禁止措置
 本件サービスにおいては、いわゆるアダルト動画のアップロードが禁止されているところ、これに違反してアダルト動画のアップロードが行われた場合、被告会社は、他者からの要請の有無にかかわらずユーザへの予告なくこれを削除し、場合によっては当該ユーザを強制退会させるという強力な措置を現に採っている。すなわち、被告会社は、本件サイトにアップロードされた動画ファイルの内容が違法なものであるか否かをチェックし、違法と判断したファイルについてはこれを強制的に排除する能力及び権限を有している。
 ところが、アダルト動画以外の動画ファイルについては、著作権者等が時々刻々とアップロードされる大量の動画ファイルの中から個別の侵害ファイルを一つ一つ特定して通知しない限りは、一切削除には応じないという方針を採り、これを放置している。
(c) 被告Aの積極的な発信
 被告Aの「社長のch(o°c_,°o)ニヤニヤ」と題するチャンネルにおいて送信の対象とされている動画ファイルの中には、本件管理著作物を複製した動画ファイルが多数含まれている。このように、被告A自らアップロードしたファイルについてはもちろんのこと、被告Aがシェア動画(一つの投稿動画を各ユーザー間のチャンネルでリンクを張って視聴できるようにしたもの。)として加えたものであっても、いずれも被告Aが動画内容を具体的に認識した上でこれを選定したものであるから、被告会社は、自ら侵害ファイルを送信している。
 被告Aは、被告会社の代表者として、上記チャンネル内に「社長ニュース」、「会社関係」などのカテゴリーを設け、同チャンネルを、ユーザに対して被告会社の運営方針等をアナウンスする目的にも用いている。したがって、上記チャンネルにおける著作権侵害行為が被告会社による著作権侵害行為と別物であるとの被告らの主張は、法的に誤りである。
(ウ) 被告会社の受ける利益の状況
被告会社が受ける次の利益は、その増加が本件サービスにアクセスしてくるユーザ数の増加に直結しているものであり、本件サーバに複製又は送信可能化される動画ファイル数が増加すれば、それだけ本件サービスにより得られる利益が増加することになる。
a 本件サービスには、「企業チャンネル」というサービスが用意されている。「企業チャンネル」は、企業を対象とし、本件サービスによる動画の配信を企業の宣伝に利用させるための有料サービスであり、被告会社は「企業チャンネル」の契約を締結した企業から、本件サイトに動画ファイルを複製又は公衆送信させることに関する対価を受けている。
b 本件サイトには、いわゆるバナー広告が複数個置かれており、被告会社は、これを本件サイトに表示することにより広告収入を得ている。
c 被告会社は、平成20年6月23日、バナー広告の外に検索連動型広告(広告主に任意のキーワードを購入させておき、当該キーワードを用いた検索が行われると、その検索結果と共にそのキーワードを購入した広告主の広告やウェブサイトのURLを表示するという広告サービス)を開始している。
(エ) 侵害態様
a 侵害割合
(a) 動画が「シェア動画」であろうがなかろうが、視聴者は両者を区別することなく、取り込まれるチャンネル側の動画として視聴しているのであるから、動画ファイルが多数のチャンネルにシェアされていけば、それに比例して動画が視聴(公衆送信)される機会は増加するのであり、シェア動画の数を控除すべき合理的理由はない。
 仮にシェア動画を除いて本件サイトにおける侵害割合を計算しても、「音楽」のカテゴリーについて89.45%、「アニメ」のカテゴリーについて87.13%、「ムービー」のカテゴリーについて59.80%という高率であり、すべてのカテゴリーを平均しても55.8%(その余のカテゴリーについてシェア動画を含まない。)に及ぶ。
(b) 原告が主張した2万0613件という侵害動画数とは、本件管理著作物が少なくとも1作品複製されていることが原告の調査で確認できた動画の数にすぎず、それ以外の動画に本件管理著作物の複製のないことが確認されているのではない。したがって、あたかも上記2万0613件以外には侵害動画がないかのような計算をすることはできない。
 また、仮に上記2万0613件の数字を使用するにしても、これは平成20年4月24日時点においても存在した動画を対象とした調査に基づくものであり、侵害割合を導くならば上記調査実施当時の動画総数を分母にすべきであり、分子とする侵害動画数と何ら関連性のない同年9月9日時点の動画数である7万9103件を分母にするのは全く正当性がない。平成20年4月24日時点を基準として本件サービス全体における侵害割合を正しく計算すれば、サービス全体を対象とした場合でも58.4%(シェア動画を含む。) という高率に上る。
b 削除措置
(a) 権利者の削除要求に対する被告会社の対応は、極めておざなりなものであり、本件サービスについて著作権侵害を防止しようとする真しな気持ちは全くない。
 被告会社は、本件提訴後の平成20年8月25日、原告に対し、本件サイトにアップロードされている侵害動画ファイルの情報に係る電子データの提供を要求してきた。原告は、平成20年9月17日、被告らによる自主的な違法動画の削除作業の迅速化に協力するという観点から、上記侵害動画ファイルの情報に係る電子データを被告らに提供した。ところが、上記電子データを受領して被告らが採った行動は、これらの侵害ファイルを自ら削除するのではなく、ユーザに対して、原告から侵害ファイルであるとの指摘があったことを「ご案内」するメールを送付するというものにすぎなかった。このため、電子データを提供してから1か月以上を経過しても、削除された侵害ファイルは全体の25%にとどまっており、75%の侵害ファイルが視聴可能な状態のままで放置されていた。
(b) 被告会社は、国内において正に劇場公開中の映画が本件サイトに丸ごとアップロードされるという著作権侵害であることが明白な極めて悪質なケースであっても、当該ファイルをアップロードしたユーザに対し、権利者から侵害ファイルの削除要請があったこと、及びユーザに対する自主的な対応を促す電子メールを送るだけである。また、権利者からのユーザの登録情報の開示要求に際して、被告会社は、ユーザに対し、開示の対象となるメールアドレスを個人を特定することが困難なフリーメールアドレスに変更することを勧奨している。
c 回避措置の適用
 被告会社が真に本件サービスにおける著作権侵害を防止したいと考えるのであれば、本件サービスのシステムを、現在のようにユーザから送信されたファイルが自動的に送信可能化されるというものではなく、送信されたファイルにつきその内容を被告会社においてあらかじめチェックして送信可能化するというシステムに変更すればよい。
 具体的には、@技術的手段を用いる方法として、(@)違法ファイルのハッシュ値を用意しアップロードの際にファイル識別を行う方法と、(A)著作物の音や動画の波形の特徴を抽出して数値化したフィンガープリントとデータとを照合するフィンガープリント技術により音声、動画の識別を行うという方法があり、A有人監視による方法として、(@)自らサイト内にアップロードされたファイルをチェックして侵害ファイルを発見する方法と、(A)侵害ファイルの識別を請け負っている専門会社にアウトソーシングするという方法がある。
 しかしながら、被告会社は何らの合理的な努力と工夫を行うこともなく、実効的な侵害防止対策を採っていない。
イ 被告ら
 本件サービスにより生じる著作権侵害の主体は、ユーザである。
(ア) 本件サービスの内容・性質
a 動画配信サイトとの対比
 動画配信サイトでは、サイト管理者においてどのような動画コンテンツを配信するかを決めることができるし、視聴数が少なければ別なコンテンツに差し替えることもできる。しかし、本件サービスでは、ユーザが何をアップロードし、何を削除するかについて被告会社に決定権がなく、動画の内容についても被告会社は原則的に管理支配を及ぼしていない。
 したがって、本件サービスを動画配信サイトと同視するのは誤りである。
b 著作権侵害発生の蓋然性
(a) インターネット上において名称、住所等の個人を特定する情報の入力をユーザに要求したとしても、名称や住所を偽ることは容易にできる上、それが虚偽であるか否かを確認する手立てもない。むしろ、このような匿名性こそがインターネットの一つの特徴である。他社サービスにおいても、ユーザ個人を真実特定するに足りる情報の入力を要求したりはしていない。
(b) 簡単な操作で大量の電子ファイルを送受信の対象とすることができるシステムを不特定多数のユーザに対してその匿名性を保証したまま自由に利用させたからといって、そこで送受信される電子ファイルの多くが当然に権利を侵害するファイルとなるものではない。本件サービスは、動画をサイト上に表示させて視聴させるにとどまるものであって、既知のファイル名だけで特定できるようなファイルの交換自体を目的とするP2Pファイル共有サービスとは、その性質を異にする。
(c) 本件サイトには、自主制作された音楽系動画、アニメ動画、ムービー動画が存在するのであり、「音楽」、「アニメ」及び「ムービー」のカテゴリーが本件管理著作物の利用を当然の前提とするとはいえない。他社サービスにおいても同様のカテゴリーが存する。
(d) 市販のDVDなどに収録された映像やデジタル放送を録画した映像は、ユーザが勝手にコピーガードを外して独自にエンコードなどの加工を加えるからこそ権利侵害動画として投稿が可能となったものであり、本件サービスの提供による当然の結果ではない。
c 構成の特徴
(a) 本件サイトに投稿される動画は、数分間の長さしかないものも多く、5分以内のものが全体の約57%であり、10分以内のものが全体の約70%を占める。市販のDVDやデジタル放送、ハイビジョンなどのテレビ放送に比べて動画の画質は格段に劣り、サイズも小さいものであって、試写、試聴の域を出るものではない。したがって、DVD販売・レンタル、テレビ放送といった既存のビジネスとは競合しないのであって、権利者の経済的損失をほとんど見いだしにくい。
(b) 本件サービスにおいてアップロードするファイルの容量に制限がないとしても、容量の大きいファイルをアップロードするにはそれだけ長い時間がかかるのであり、手軽に行える範囲でアップロードを行おうとすれば、当然それなりに画質や容量を落とすことになる。被告会社は、既存の映画やテレビドラマを丸ごとアップロードすることに対する対策の一つとして、以前から時間制限の導入を検討していた。ところが、本件サービスに使用されるソフトウェアが韓国パンドラTVにおいて独自開発したものであるため、そのプログラムの変更又は改修を被告会社自身が行うことができず、実施できなかった。そこで、近時行う本件サービスにおける投稿動画システムの抜本的なリニューアルに移行してから時間制限を実施することとしているため、時間制限の導入が遅れているだけである。
d 黙示の許諾
 投稿動画サイトが、既存ビジネスについてのプロモーショナル効果、シナジー効果を生じさせることから、その有用性を認めて投稿動画について利用許諾契約を締結した権利者も存在し、公認しないまでも削除要請をしないことで暗黙のうちに容認してきた権利者も多いことは、周知の事実である。また、テレビ局、ビデオ販売会社などが企業名を出さずに自主的にプロモーションの場として活用するため、動画を投稿しているという実態もある。
(イ) 複製及び公衆送信における管理支配
a 物理的ないし電気的な観点
(a) 被告会社は、平成20年8月1日から、動画ファイルサーバとして米国法人ライムライト・ネットワークス・インク(以下「ライムライト社」という。)の管理するサーバを使用しており、ウェブサーバとして大阪所在の被告会社とは別法人のサーバを使用しており、本件サーバを物理的に管理していない。
(b) サーバを操作した主体はユーザであるから、複製行為又は公衆送信行為は、ユーザが行っているとみるのが物理的には自然である。利用行為の主体と利用される機器の所有、設置ないし管理主体とは区別されるべきものである。
b システムの設計及びツールの提供
(a) 本件サービスに投稿できる動画のファイル形式の中に、市販DVDのデータの保存形式として用いられているvobファイルは含まれていない。市販のDVD動画をアップロードしようとする際には、コピーガードを外すプログラムとエンコードのためのツールを必要とするが、被告会社は、そのようなプログラムもツールも供給していない。また、デジタル放送を録画したものには映像自体にコピーガードが施され、データが暗号化されているが、本件サービスでは暗号化したファイルは取り扱えないため、ユーザはそうしたファイルをアップロードすることができない。
(b) 被告会社は、本件サービスが本来的に予定しているユーザのオリジナルコンテンツを投稿するために必要なサービスを提供しているのみであって、運営するシステムも提供するツールも、その範囲内の機能を有するものにすぎない。
c 動画内容に関する積極的関与
(a) 動画ファイルの視聴の推奨措置
 「ISSUE in Channel」のコメントは基本的にはユーザが書くものであり、被告会社は、コメントの長さが足りない場合に補足的に追記しているだけである。
 「ヒットワード」は、時事性を取り込むためのものであり、被告会社の単なる好みで決しているものではない。「テーマインサイド」は、gooやmixi等のヒットワードランキングから一つのキーワードを選出してそれに関連する動画を掲げるもので、世間的に注目を集めているものを紹介するだけのものである。「ピックアップチャンネル」は、新規登録ユーザを順番に紹介しているだけある。
 いずれにしても、各コーナーにおける動画の選定は、ユーザが発信したものに被告会社が検索の手掛かりを与えているにすぎない。
(b) 動画ファイルのアップロード禁止措置
 いわゆるアダルト動画は、経験則上、権利者からの削除要請が期待できないという側面がある。また、本件サービスにおいては、投稿動画を視聴させるに当たって、ユーザに年齢認証を付与する機能がなく、未成年者でもアダルト動画が視聴可能になってしまうので、アダルト動画には特に配慮が必要となる。さらに、アダルト動画のまん延はサイト全体の荒廃を招来しかねない。これら複数の理由から、被告会社はアダルト動画を積極的に除去したというにすぎない。
 また、その他にも被告会社が積極的に削除した投稿動画も存在するが、それらは、死体や殺人、いじめの映像等、残虐性の強い映像であって、アダルト動画と同様の理由から、あえて積極的な介入を行ったものである。
 いずれにしても、削除していないもの以外を推奨していることになるものではない。
(c) 被告Aの積極的な発信
 被告会社と被告Aは別人格なのであって、被告会社の行為と被告Aの行為は区別されるべきである。被告Aが行っているのは社長個人としての情報発信にすぎない。
(ウ) 被告会社の受ける利益の状況
 提携企業から収入を得ることや、バナー広告等による広告収入を得ることは被告会社に限らず、他社サービスにおいてもその運営資金を獲得する必要上ごく一般的に行われているものである。
(エ) 侵害態様
a 侵害割合
(a) 侵害割合は、シェア動画の数を控除して算定すべきである。
(b) 平成20年9月9日現在のシェア動画は4479件であり、シェア動画を含まない本件サービスの全投稿動画の数は7万9103件である。したがって、原告が権利侵害を主張する動画2万0613件の割合は、全体の約20%にすぎない。
(c) 本件管理著作物を使用した動画の割合が高いということの一つの理由には、原告が日本において商業的に意味のあるほぼすべての音楽著作物を管理する団体であるという特殊性からである。これが一作詞・作曲家や一音楽出版社であれば、その割合は比較にならないほど低くなるはずである。
 他社のサービスにおいても被告会社と同様の侵害割合を有している。
b 削除措置
(a) 被告会社は、権利者から権利を侵害するとする動画を特定した上での適切な権利侵害の申出があれば、当該動画をアップロードしたユーザに権利者から削除要請があった旨の通知をする。通知後5日ほど経って、合理的な理由も示されずにユーザの自主的な削除がされない場合、被告会社は当該動画ファイルを削除している。さらに、削除要求が度重なるユーザについては退会措置を採っている。
(b) 被告会社がユーザ登録情報の開示要求に対して当該ユーザのメールアドレスの変更を促したのは、本件サービスにおいては、平成20年6月9日、メールアドレスの変更が可能になったという事情があったため、その旨を開示通知の確認に伴い伝えたにすぎない。他社サービスにおいても、フリーメールのアドレスでのアカウント取得は可能である。
c 回避措置の適用
 ユーザがアップロードした段階で複製は終了しているのであって、侵害行為は既に存在していない。また、全件の目視調査は実施不可能であるし、そのような監視義務を被告会社は負っていない。原告は殊更に過度な要求を被告会社に求めている。
(2) 侵害行為の主体(予備的主張)
ア 原告
(ア) 著作物の複製又は公衆送信はプロバイダ等の管理するサーバにおいて行われること、プロバイダ等は、通常、サーバに蓄積された情報を認識し、その削除等の送信防止措置を講じることが容易であること、インターネットにおいては情報の匿名性が高く、だれがその情報をアップロードしたのかが分からない場合が多いこと、そのため著作権侵害を排除するためには著作権者がプロバイダ等に対して差止めを請求できるようにする必要があることなどの理由から、少なくともプロバイダ等が著作権侵害に気付いてしかるべき時点(すなわち、侵害ファイルがサーバに複製されていることを知り得る状況に至った時点)以降は、プロバイダ等は著作権侵害について主体としての責任を負う。
(イ) 被告らは、本件サービスにおける著作権侵害ファイルを削除する最終権限を有しているにもかかわらず、平成19年6月以降、原告から再三著作権侵害の警告を受け、かつ、サイト内のファイルの内容を日常的にチェックすることにより膨大な数の侵害ファイルが本件サービスにアップロードされている事実を具体的に認識していながら、ユーザに対し侵害ファイルの視聴を積極的に推奨したり、自ら著作権侵害ファイルをアップロードするなどして、甚大な著作権侵害の被害を放置し続けてきた。
(ウ) そうである以上、被告らについては、本件著作権侵害に対する管理・支配及び利益の享受という観点のみではなく、本件サービスにおける甚大な著作権侵害を放置してきたという観点からみても、本件著作権侵害の主体としての責任を負うことは明らかである。
イ 被告ら
 原告は、本件管理著作物を示すことはしても、権利侵害コンテンツとする具体的な権利侵害情報の特定はしないまま、漠然と権利侵害通知をしたのみであるため、被告会社は、具体的な権利侵害の認識はなかった。
 したがって、放置したことをもって被告会社が著作権侵害の主体であるという結論を導くことはできない。
(3) 被告会社の損害賠償責任の有無
ア 原告
(ア) プロバイダ責任制限法3条1項の適用
 被告会社は、本件サービスにおける本件管理著作物の公衆送信の主体であるから、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(平成13年法律第137号、以下「プロバイダ責任制限法」という。)3条1項ただし書にいう「情報の発信者」(以下「発信者」という。)に当たるから、プロバイダ責任制限法3条1項の適用はない。
a プロバイダ責任制限法3条1項は、他人の権利を侵害する情報を自ら送信しているとは認められないプロバイダについて損害賠償責任を免責する規定であり、著作物の利用主体(著作権侵害の主体)と認められるような者について同項の免責規定を適用することは予定されていない。同項ただし書が、発信者につき同項を適用しない旨を規定したのもこの趣旨である。
b ユーザが発信者に該当するとしても、そのことによって当然に被告らが発信者に該当しなくなるわけではない。プロバイダが他の発信者と共同で情報発信を行っていれば、その複数の発信者がいずれも責任を負うにすぎない。
c 著作権法は、著作物を特定電気通信設備の記録媒体のような有形の媒体に「記録」又は「入力」する行為を複製行為としており、かつ、その媒体がインターネット等に接続しているコンピュータの記録媒体であるときには、同行為を同時に送信可能化行為に当たるものとしている。そして、これらの行為の主体に当たるかどうかは、上記事実に対する管理支配の程度、利益の享受の有無等の要素を総合考慮して規範的に決せられるのである。プロバイダ責任制限法の「記録」又は「入力」という行為のみが非規範的ないし即物的な行為であるとする議論は成り立たない。
d 被告会社が動画ファイルを流通に置く意思を有していたことは明らかであり、個別具体的な送信動画の選定を行っていないことが、直ちに発信者であることを否定するものではない。
(イ) 故意過失
 次のとおり、被告会社は、本件サービスを提供するに当たり、著作権侵害の結果発生を防止するための適切有効な措置を講じる義務があったというべきであるのに、これを怠ったから、故意又は過失がある。
a 不特定多数のユーザに対してその匿名性を保証したまま自由に電子ファイルを送受信の対象とさせるシステムをインターネット上に設けた場合、そこで送受信される電子ファイルの多くが他人の著作物等を権利者に無断で複製したファイルで占められることは、過去におけるP2Pファイル共有サービスによる著作権侵害の事例等をみれば明らかであり、被告会社もこのことを十分に認識していた。
b ユーザからアップロードされた動画ファイルはすべて本件サーバに蔵置されており、本件サイト上にはそのサムネイル画像や動画内容を説明する文章が表示されている。
 したがって、本件サーバを管理している被告会社がアップロードされた動画の内容を確認することは極めて容易である。
c 被告会社は、ユーザに対して自己の好みの動画ファイルの視聴を推奨するため、現に本件サイトにアップロードされている動画ファイルの内容の確認作業を行っており、その過程において、本件サイトにアップロードされている動画ファイルの多くが本件管理著作物を無断複製した侵害物件であることを具体的に認識していた。
d 被告会社は、原告の再三にわたる注意警告を無視して、著作権侵害を防止するための措置を採ることを拒絶した。
(ウ) プロバイダ責任制限法3条1項の事由
 仮に被告会社が発信者に当たらないとしても、次のとおり、被告会社にはプロバイダ責任制限法3条1項の事由がある。
a ノーティス・アンド・テイクダウンの必要性
 プロバイダ責任制限法には、権利者から侵害ファイルのURL、ファイル名、データサイズ等を具体的に記載した削除要求があり、これに対して発信者への確認を経た後に削除手続をすること(以下「ノーティス・アンド・テイクダウン」という。)を行えば免責されるなどの規定はない。また、そのガイドラインである「プロバイダ責任制限法著作権関係ガイドライン」(以下「著作権ガイドライン」という。)は、送信防止措置を採ったことについてプロバイダが送信者に対して免責を受けるための指針を規定したものであって、権利者がプロバイダに対して著作権侵害の責任追及をするための要件を規定しているものではない。
 したがって、仮にノーティス・アンド・テイクダウンがないとしても直ちにプロバイダが責任を免れるというものではない。
b 技術的可能性
 被告会社は、自ら権利者からの通知に応じて現に侵害ファイルの削除をしてきたと主張しているから、「権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能」であることは明らかである。
c 情報の流通の認識
 被告会社は、本件サイトにアップロードされている動画を日常的にチェックした上で、自己の好みに合致した動画の視聴を他のユーザに推奨するなどのサービスを提供しているのであるから、本件サービスに本件管理著作物を複製した動画ファイルが大量に流通していることを現実に認識していたのであり、情報の流通の認識があった。
d 権利侵害の認識又は認識可能性
 被告らは、本件管理著作物の著作権が侵害されていることを知っているか、又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由があった。
(a) 原告は、平成19年8月31日、動画共有・投稿サイト等で利用される可能性のある主要な管理著作物(原告のホームページにおいてその権利情報等を公開している作品)につき、その権利内容等をすべて収録したCD−Rを被告会社に送付し、侵害の発生防止を要請する著作物の範囲を具体的に明示している。
(b) 被告会社は、アダルトコンテンツを排除したり、ユーザに視聴を推奨するファイルを選定するため、日常的に本件サービスにアップロードされているファイルにつき、その内容のチェックを行っており、その過程で、本件サイトにアップロードされている膨大な数の侵害ファイルの内容を具体的に認識している。
イ 被告
(ア) プロバイダ責任制限法3条1項の適用
 被告会社は、プロバイダ責任制限法上の「特定電気通信役務提供者」であるから、プロバイダ責任制限法法3条1項の適用がある。
a 侵害主体と発信者とは異なるものである。発信者とは、直接的に表現行為を行っていることを前提とした概念であると解すべきであって、いわゆるカラオケ法理等によって導かれる規範的な侵害主体まで含むことを予定していない。プロバイダ制限責任法において問題とされるのは、著作権侵害等の権利侵害における損害賠償請求についてであり、損害賠償責任の追及に関して幇助としての責任追及が可能な場合なのであるから、差止請求責任に関しては著作権侵害の主体として帰責されるべきであったとしても、直ちに当該主体を損害賠償責任についての主体として追及する必要はなく、著作権侵害の主体と認められれば直ちに発信者となるのではない。
b 本件サービスに市販のDVDやテレビ放送から取り込んだ映像を動画ファイルとしてアップロードするには、リッピングやエンコードといった技術を介在させねばならず、ユーザはそのハードルを乗り越えねばならないのであり、本件サービスの提供が市販のDVDの映像やデジタルテレビで放送された映像の動画ファイルを送受信させる具体的かつ現実的な蓋然性を惹起するものではない。本件サービスにおける発信者は、ユーザであって被告会社ではなく、被告会社はプロバイダ責任制限法の発信者ではない。
c プロバイダ責任制限法の発信者の定義においては、「記録」又は「入力」という、より非規範的ないし即物的な行為によって特定されている。本件サービスにおいて、アップロード等の行為に必要な電気信号の送信を決定して実行しているのはユーザであり、即物的意味でもユーザが「記録」又は「入力」しているといえる。
d だれが発信者に当たるかは、当該情報を流通過程に置く意思をだれが有していたかということによって判断されるから、「記録」又は「入力」への該当性も、当該情報を流通過程に置く意思の有無によって判断されるべきものである。しかるところ、本件サービスにおいては、実際にどのような情報を流通させるかはユーザの判断に委ねられており、被告会社には、動画情報を記録する場を提供する意思はあっても、個々の動画情報を選択して流通過程に置く意思までは有していない。
(イ) プロバイダ責任制限法3条1項の事由
a ノーティス・アンド・テイクダウンの必要性
 著作権ガイドラインの申出の規定が直接的にはプロバイダ責任制限法3条2項に関連した申出の手続に係るものであるとしても、その趣旨は同法3条1項において、情報の流通の認識があるとはどういう事態かを判断するための一つの解釈基準となる。
b 技術的可能性
 明らかに争わない。
c 情報の流通の認識
(a) プロバイダには、特定電気通信により流通する情報の内容を網羅的に監視する義務がないから、プロバイダが自ら権利侵害情報の流通を認識する場合を除いて、権利者がプロバイダに対して権利侵害情報の流通に対する責任を問うためには、当該権利侵害情報を特定して権利侵害情報の流通に関する現実の認識を与える必要がある。本件管理著作物の一覧の送付によって被告会社に対して特定の投稿動画の調査義務を課するのは、被告会社に法の要求するところを超えた負担を負わせるものである。
(b) 原告は、ノーティス・アンド・テイクダウンを行っていない。原告による平成18年7月6日付けの権利侵害投稿動画の削除要求とそれに続くメールでの同月11日ころの削除要求においては、投稿動画が特定していたので、被告会社は当該削除要求に直ちに応じることができたが、そのほかの原告の削除要求は、原告が管理する著作物に一般的抽象的に言及して漫然と配信停止だけを求めるものであり、権利侵害投稿動画が特定されたものではない。被告会社が認識すべき対象は本件管理著作物だけでは足りず、それらが使用されたとする本件サイト内の特定の投稿動画であり、その認識がなければ情報の流通の現実の認識があったとはいえない。
d 権利侵害の認識又は認識可能性
 仮に被告会社が投稿されたことそれ自体を認識していた動画があるとしても、以下の事情によれば、被告会社には権利侵害の認識もその認識可能性もなかった。
(a) 各動画ファイルのアップロードは、被告会社がその具体的内容を把握する間もなく行われる。
(b) 被告会社はアダルトコンテンツの削除や各カテゴリーに割り振るファイルを選択するために本件サービスに投稿された動画をチェックする行為は行っているが、それらの割振りは、動画の中身まで視聴して行ってはおらず、タイトルやコメントを参照して行っているのであり、それぞれの動画ファイルにどのような音楽が使用されているかの具体的認識はない。
(c) 原告が平成19年8月31日付けで被告会社に送付したCD−Rに含まれる楽曲データは、音楽データではなく本件管理著作物のタイトル、作詞者、作曲家等に関するデータにすぎず、投稿動画ファイルに使用されている音楽と本件管理著作物が同一かどうかは、実際に視聴しなければ分からない。
(d) 音楽制作ソフト等を用いて素人でも簡単に楽曲制作ができるようになった今日、仮に投稿動画ファイルに使用された音楽を被告会社が視聴したとしても、どの音楽が権利侵害に当たるのか具体的に特定されていなければ、その楽曲ないし音源の出所を把握することは困難である。したがって、よほど著名な曲であればその存在を推認することが可能であるとしても、おびただしい数に上る本件管理著作物のうち、そうした著名な楽曲というのは限られるのであって、被告会社の知見においてそのような推認を行うことができるものはわずかである。
(e) 著作権侵害については、その要件である類似性の判断が裁判所においても第1審と控訴審での判決が逆転するように、一義的に判断することは難しい。また、依拠の有無、量的な使用の多寡、ありふれた表現か否かなどの点から侵害が否定される場合もあり、プロバイダにおいて侵害が明白と判断できる場合は、実際には非常に限られた場合だけである。
(ウ) 故意過失
 仮に被告会社にプロバイダ責任制限法3条1項の適用がないとしても、次のとおり、すべての投稿動画について事前審査をせずにひとまず複製又は公衆送信をすることは、動画投稿サービスを運営していく上で不合理な行動とはいえず、被告会社には故意過失がない。
a ユーザによって自動的にアップロードされる動画ファイルにおいて、そこに具体的に著作権侵害があるかないかなどは、被告会社において覚知できるものではない。被告会社はアダルトコンテンツの削除や各カテゴリーに割り振るファイルの選択という目的の限度において投稿動画ファイルをチェックしているだけであり、それぞれの動画ファイルにどのような音楽が使用されているかを具体的に認識しているわけではない。
b 権利者の許諾の有無は、投稿動画ファイルの内容から直ちに明らかになるものではない。被告会社は、利用規約で他人の著作物に当たるものを許諾なく投稿することを禁止していた。
c 本件サービスを利用して動画を見るユーザと、DVDを購入して作品を鑑賞し複製物を保有しようとする者又はレンタルやテレビ放映で作品全体を楽しもうとする者とは競合しないから、本件サービスは権利者の経済的権利を実質的に害することが少ない。むしろ、動画投稿サービスの有用性を認めて、これを容認している権利者は数多い。
(4) 被告Aについての不法行為の成否
ア 原告
(ア) 被告Aは、被告会社の設立以来今日まで継続して同社の代表取締役であるところ、被告会社は被告Aのいわゆる個人会社であって、被告Aは被告会社の活動のすべてを管理支配しているから、本件サービスの提供は、被告Aの行為ということができる。そうすると、被告Aには、本件サービスの提供により本件管理著作物の複製権又は公衆送信権(送信可能化権を含む。)を侵害したことにつき故意又は過失が認められる。
 したがって、被告Aは、民法709条に基づき、原告が本件サービスにより被った損害を賠償すべき責任を負う。
(イ) 本件サイト内の被告Aのチャンネルにおいては、被告会社としてのユーザに対する情報発信と被告Aの私的な投稿動画とが一緒に詰め込まれており、このことは、被告会社が被告Aの個人会社であって、被告Aによって被告会社の活動のすべてが管理支配されていることを端的に裏付けている。
イ 被告ら
(ア) 被告会社が不法行為責任を負わないことは上記(3)に主張したとおりであるから、被告Aが責任を負うことはない。
(イ) 被告会社には取締役が3人いて複数の経営者が存在するのであるから、小規模会社であっても個人会社とはいえない。被告会社と被告Aとは、財産及び会計において独立しており、法人格否認の法理の要件も満たしていない。本件サイト内の被告Aのチャンネルは、あくまでも被告A個人のチャンネルである。会社代表者がブログや個人のホームページにおいて、自らが経営する会社の事業の告知や紹介を行うことは一般的に行われていることであり、そうしたからといって、会社代表者個人の行為が当該会社の行為とされるものではない。
(5) 被告Aについての対第三者責任(会社法429条1項)の成否
ア 原告
 被告Aは、被告会社の代表取締役として、被告会社による本件サービスの提供業務を管理支配し、業務を執行している者であり、法令を遵守して同社の業務執行をすべき義務があるところ、被告Aは、悪意又は重過失によりこれを怠り、著作権法に違反して本件管理著作物の著作権を侵害する結果を招来した。
 したがって、被告Aは、会社法429条1項に基づき、上記侵害によって原告が被った損害を賠償すべき責任を負う。
イ 被告ら
 プロバイダの責任については、法律家の間においても議論があるところ、被告Aは、本件サービスにつきプロバイダ責任制限法3条1項の適用があると信じて行動してきた。そのような状況下で、被告Aがプロバイダ責任制限法3条1項の適用の有無について結果的に判断を違えていたとしても、合理的な経営判断の範囲内にとどまるものであって、悪意又は重過失はない。
(6) 損害の額
ア 原告
(ア) 使用料相当損害金
a 本件管理著作物の使用料相当損害金は、原告の使用料規程(甲3)の第11節「インタラクティブ配信」の「2 包括的利用許諾契約によらない場合」のうち、情報料の取得がない場合についての「1リクエスト当たり」、「歌詞、楽曲それぞれ20円」に消費税相当額を加算した額が相当である。
b 原告と被告会社との間には包括的利用許諾契約が締結されていないのであるから、「1 包括的利用許諾契約を結ぶ場合」の使用料が適用される余地はない。既に原告と包括的利用許諾契約を締結している動画投稿・共有サイトにおいても、それぞれ、契約の締結に至るまでの無許諾利用期間について「2 包括的利用許諾契約によらない場合」の使用料に基づき算出した使用料相当損害金を支払って清算をしているのであり、包括的利用許諾契約を締結していない場合には「2 包括的利用許諾契約によらない場合」の使用料に基づいて使用料相当損害金が算定されている。被告らの主張する「月間の情報料収入及び広告料収入の1.875%」という使用料率は、原告が、動画投稿・共有サイトに対する利用許諾業務を開始するに当たり、サイト運営者が自主的かつ実効的な権利侵害の防止策を実施するにおいて負担する相応のコストを見込んで暫定的に適用する使用料率として定めたものにすぎず、一般性があるものではない。
(イ) 算定
a 平成20年4月24日までの損害
 被告会社が本件サービスの提供を開始した平成18年2月1日から平成20年4月24日までの本件管理著作物の使用料相当損害金の額は、次のとおり、1億0622万4888円を下らない。
(a) @すべての25カテゴリーに属する動画ファイルに対する音声認識処理システムによる判定と、A「音楽」、「アニメ」及び「ムービー」の3カテゴリーに属する動画ファイルに対する全件視聴調査によると、平成20年3月31日以前に本件サイトにアップロードされ、かつ、同年4月24日の時点で本件サイト上において送信可能化されていた4万1629件の動画ファイルのうち、2万0613件の動画ファイルには本件管理著作物が少なくとも1作品複製されていた。
(b) 上記2万0613件の動画ファイルのリクエスト回数を、本件サイト上に表示されている動画の「視聴数」により特定し、これを集計すると、381万2198回であった。
(c) 「音楽」、「アニメ」及び「ムービー」以外の22カテゴリーに属し、かつ、音声認識処理システムによる判定から漏れた動画ファイル(視聴回数合計623万0650回)の中にも、音声認識処理システムによる判定の限界から、一定の割合で本件管理著作物を複製した動画ファイルが存すると考えられる。その割合は少なくとも2割を下回らない。
(d) そこで、次のとおりに算定される。
 {381万2198(回)+(623万0650(回)×0.2)}×20円×1.05(税加算)=1億0622万4888円
b 平成20年4月25日から同年11月4日までの損害
 上記aの基準日の翌日である平成20年4月25日から、被告会社が原告において本件著作物を録画した動画ファイルであると主張した動画ファイルの削除に取り掛かった日の前日である同年11月4日までの期間につき、次のとおり、1か月当たり少なくとも944万円の割合による損害が発生した。
@ 本件管理著作物が録画されていたことが確認できた動画
 2万0613件
A @の動画のうち30日間以上送信可能化されていた動画
 1万7870件
B Aの動画の1日当たりの平均視聴回数(総視聴回数÷総存在日数)
 1万1440回
C Aの動画の1か月当たりの平均視聴回数(B×30)
 34万3200回
D 本件管理著作物を録画したか否か不明の動画(全動画数4万1629件−@)
 2万1016件
E Dの動画のうち30日間以上送信可能化されていた動画
 1万9733件
F Eの動画のうち視聴調査を行わなかった22カテゴリーの動画
 1万7373件
G Fの動画の1日当たりの平均視聴回数(総視聴回数÷総存在日数)
 1万7741回
H Gの動画の1月当たりの平均視聴回数(G×30)
 53万2230回
I Hの動画のうち本件管理著作物を録画したと推認される動画の1月当たりの視聴回数(H×0.2)
 10万6446回
J 本件管理著作物を録画した動画の1か月当たりの視聴回数(C+I)
 44万9646回
K 月額使用料相当損害金(J×20円×1.05)
 944万2566円
c 平成20年11月5日以降の損害
 平成20年11月5日以降においても、次のとおり、1か月当たり少なくとも504万円の割合による損害が発生している。
(a) 平成20年11月から平成21年1月までの「音楽」及び「アニメ」の2カテゴリー
@ 調査対象期間(平成20年11月〜同21年1月)にアップロードされ本件管理著作物が録画されていたことが確認できた動画
 1145件
A @の動画のうち30日間以上送信可能化されていた動画
 743件
B Aの動画の1日当たりの平均視聴回数(総視聴回数÷総存在日数)
 1722回
C Aの動画の1か月当たりの平均視聴回数(B×30)
 5万1660回
(b) 平成20年4月から同21年1月までにアップロードされた全カテゴリー(平成20年11月から同21年1月までにアップロードされた「音楽」及び「アニメ」の2カテゴリーを除く。)
D 平成20年4月から平成21年1月までにアップロードされた動画数
 1万3394件
E Dの動画の1日当たりの平均視聴回数(上記bGを同Fで除した1.02をDに乗じる。)
 1万3661回
F Dの動画の1か月当たりの平均視聴回数(E×30)
 40万9830回
G Fの動画のうち本件管理著作物を録画したと推認される動画の視聴回数(F×0.2)
 8万1966回
(c) 25カテゴリー
H 平成20年3月までにアップロードされた動画のうち本件管理著作物を録画したと推認される動画の1か月当たりの視聴回数(上記bI)
 10万6446回
(d) まとめ
I 本件管理著作物を録画した動画の1か月当たりの視聴回数(C+G+H)
 24万0072回
J 月額使用料相当損害金(I×20円×1.05)
 504万1512円
d 弁護士費用
 本件訴訟のための相当な弁護士費用は、2195万円を下らない。
イ 被告ら
(ア) 使用料相当損害金
a インターネット上の動画投稿・共有サービスの提供者が、包括的利用許諾契約によらず個別許諾の場合の使用料基準に基づく使用料を支払っているという実態の立証はなく、同業者は包括的利用許諾契約を締結する選択をするはずである。したがって、原告と被告会社との取引関係も、包括的利用許諾契約が締結されるべき取引であって、使用料相当損害金は、包括的利用許諾契約の場合の使用料規程に基づいて算定されるべきである。
b 原告と、被告会社と同種サービスを提供している他社との間では、「月間の情報料収入及び広告料収入の1.875%」を使用料率とする契約がされているから、使用料相当損害金も、これによるのが相当である。
(イ) 算定
 被告会社は、情報料を取得しておらず、また、広告料収入は月額40万円程度であるから、使用料相当損害金は、月額7500円(広告収入40万円×1.875%)が相当である。
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(侵害行為の主体−主位的主張−)について
(1) 前記第2、2前提となる事実(5)アのとおり、本件サーバの記録媒体に本件管理著作物を録画した動画ファイルを記録することは、上記著作物の複製及び送信可能化に該当し、上記動画ファイルをユーザからの求めに応じて本件サーバからユーザの使用するパソコンに送信することは、自動公衆送信に該当する。そして、本件サーバは、被告会社が直接管理しているところの動画IDを管理するデータベースサーバと、米国のライムライト社が管理するところの動画ファイルを格納するファイルサーバとに分かれているが(乙31)、被告会社は、同ファイルサーバに対する使用権原に基づき、本件サービスにおいて送受信の対象とされているファイルの所在及び内容を把握でき、必要に応じてファイルの送受信を制限したり、特定の利用者の利用自体を禁止したり、ファイルを削除する等の措置を講じることができるから(甲7、乙1、31、弁論の全趣旨)、ライムライト社の管理するファイルサーバも含めて本件サーバを管理支配しているものと認められる。また、被告会社は、前記第2、2前提となる事実(3)アに認定したとおり、その定める独自のユーザインターフェイス環境においてユーザにコンテンツを提供するというコンセプトを有する本件サイトを開設しており(甲7、乙1、弁論の全趣旨)、ただ、そのコンテンツがユーザの提供によるというにすぎないところであり、外形的には、被告会社は、少なくとも公衆送信(送信可能化を除く。)はしている。
 もっとも、複製又は送信可能化については、後記(2)イ(ア)c(c)のとおり被告会社の代表者である被告A自らが行ったものも一部あるが、それ以外のものについては外形的にはユーザが行っている。また、複製又は送信可能化される動画ファイルの選択はユーザの任意によるものであり、その結果として、公衆送信される動画ファイルも上記のようにユーザが任意に選択した範囲の中のものに限られるから、公衆送信されるべき動画ファイルの設定それ自体には被告会社は直接には関与していないことになる。したがって、複製及び送信可能化のみならず、公衆送信についても、侵害主体を論じる必要がある。
 この点、著作権法上の侵害主体を決するについては、当該侵害行為を物理的、外形的な観点のみから見るべきではなく、これらの観点を踏まえた上で、実態に即して、著作権を侵害する主体として責任を負わせるべき者と評価することができるか否かを法律的な観点から検討すべきである。そして、この検討に当たっては、問題とされる行為の内容・性質、侵害の過程における支配管理の程度、当該行為により生じた利益の帰属等の諸点を総合考慮し、侵害主体と目されるべき者が自らコントロール可能な行為により当該侵害結果を招来させてそこから利得を得た者として、侵害行為を直接に行う者と同視できるか否かとの点から判断すべきである。
 以上の観点に従い、これを検討する。
(2)ア 本件サービスの内容・性質
(ア)a 「動画配信サイトとの対比」について
 本件サービスの構成は、前記第2、2前提となる事実(4)のとおりであり、本件サービスは、被告会社において独自に定めたユーザインターフェイス環境の下、個人単位の放送局とのコンセプトに基づき「放送局」を擬した「MYチャンネル」を割り当てられた登録会員が、動画ファイルをこのチャンネル上にアップロードし、このチャンネル上でストリーミング形式で再生される動画を広く一般の第三者の視聴に供するというものであり、かつ、それを専らの目的とするものである。したがって、コンテンツの選択についての被告会社の自由が限定されているとはいうものの、動画配信サイトと同様の機能を有するということができる。
b 「著作権侵害発生の蓋然性」について
(a) 上記前提となる事実(4)のとおり、本件サービスにおいては自動的にファイル変換を行う専用の本件ユーザソフトが準備されており、ユーザがアップロードしようとする動画ファイルは自動的にwmv形式のファイルに変換されて本件サーバに送信され、本件サイトに動画ファイルをアップロードするに当たっても、また、動画ファイルを視聴するに当たっても、ユーザはそのファイル形式を意識する必要がない。また、アップロード、視聴等の本件サービスの利用はすべて無料であり、動画ファイルの容量・時間に制限がない。さらに、本件サービスには、動画ファイル単位での検索ツールが提供されている。
 したがって、ユーザは、既知のキーワード(すなわち世間一般に知られているもの)で検索することによってこれに該当する容量・時間とも制限のない動画ファイルを無料で簡単に視聴することができる。
(b) 上記前提となる事実(4)のとおり、会員登録に当たって入力が要求される特定事項は、eメール・アドレス、パスワード、ニックネーム、生年月日及び性別である。また、会員規約第3条4項には、「ユーザー掲示物に関連して、当社は、ユーザが当該掲示物の公表の際に使用したペンネーム、ハンドルネーム、その他の識別表示を公表できるものとします。ユーザは、こうした識別表示と、ユーザ掲示物の内容とが組み合わさることにより、あるいはユーザ掲示物の内容そのものにより、ユーザの身元等が一般に知られる可能性のあることを認識し、そうした個人情報の開示に関して、あらかじめここに同意します。」とある(甲7、乙1)。
 したがって、本件サービスにおいては、会員登録に当たって本名を特定する必要がない上、入力された生年月日や性別の真偽を確認していないのであるから、本件サイトへの動画ファイルの投稿は、本来的に匿名でされ得ることを当然の前提としているということができる。
(c) 上記前提事実(4)のとおり、本件サーバへ動画ファイルが送信されると、「アップロードした動画は著作権を侵害していませんか。著作権を侵害する映像の掲載は法律で固く禁じられています。以上の事をご理解いただきました上で、登録完了ボタンをクリックして下さい。クリックすれば登録は完了です。」との登録完了ボタンが表示されるほか、その際、画面下に赤字で、「《動画・映像に関する注意点》※アップロードした動画に対して、著作権及び法的責任は登録される方の責任となります。※著作権侵害の可能性がある動画・映像を発見しましたら、警告なしに削除いたします。〈例:テレビ、放送局やプロダクション製作物に関する動画・映像〉」との表示がされる(弁論の全趣旨)。また、会員規約第4条には、「ユーザーは、ユーザー掲示物に関して、自己の責任と費用により、本(約款)規約において当社に付与された権利を行使する上で必要かつ十分な権利クリアランスを行うものとします。こうした権利クリアランスとしては、被写体の同意取得、撮影された他人の著作物についての使用許諾、映像中に露出された個人情報に関する同意取得、収録された音楽に関する使用許諾などが主なものですが、これらは例示にすぎません。当社は、これらの権利クリアランスに関して問題があると思われるユーザー掲示物を発見した場合には、事後的に、これを削除するようユーザーに求め、あるいは自ら削除をすることがありますが、そうした活動は当社の義務として行われるものではなく、あくまでこれら権利クリアランスを行う責任は、ユーザー自身にあります。」とある(甲7、乙1)。
 したがって、本件サイトの上記記載及び会員規約の内容からすると、本件サービスにおいて著作権を侵害する動画ファイルが送信される可能性が高いことは、被告会社自身認識していたことが推認される。
c 「構成の特徴」について
(a) 上記前提となる事実(4)のとおり、本件サイトに送信された動画ファイルが分類されるカテゴリーは、「ムービー」、「アニメ」、「お笑い」、「スポーツ」、「ゲーム」、「旅行」、「思い出」、「携帯ムービー」、「ニュース」、「音楽」、「趣味」、「ネットアイドル」、「暮らし」、「ダンス」、「その他」、「タレント」、「韓流スター」、「動物」、「鉄道」、「車・バイク」、「スカイスポーツ」、「マリンスポーツ」、「ウィンタースポーツ」、「社会問題」及び「エクストリーム」である。
 上記カテゴリーの中には、「旅行」、「思い出」、「携帯ムービー」、「暮らし」、「動物」、「鉄道」など、一般に自主制作された動画がアップロードされることが多いと想定される分野が含まれる一方、「ムービー」、「アニメ」、「音楽」、「ゲーム」など、自主制作が発達してきている現況を考慮しても、一般のユーザの自主制作動画のみで構成されていくとは想定し難い分類や、「タレント」、「韓流スター」のように放送物を複製することを当然の前提としたか、放送物を複製したものでなければおよそ一般の興味を引くものではない分類がある。
(b) 上記前提となる事実(4)のとおり、本件サービスでは、アップロードするファイルの容量・時間には制限がないところ、本件サイトにアップロードされた動画ファイルのうち少なくとも約30%は10分を超える動画であること、下記エ(ア)aのとおり本件管理著作物が複製されたことが確認できた2万0613件の動画ファイルについてみても、90分を超えるものが100件以上存在し、最長はタイトルを「【映画】『グリーンマイル』」とする動画で、その長さは約188分に及んでいることが認められる(甲10、15、乙3、6、弁論の全趣旨)。また、既存の劇場用映画、テレビ番組、アニメの全編、中には国内で劇場公開中の映画の全編を複製した動画までもがかなりの数アップロードされていたことが認められる(甲10、12の7、弁論の全趣旨)。さらに、上記2万0613件の動画ファイルのタイトル名を見ると、そのほとんどが放送番組、DVD、映画などのタイトル名と同一である(甲8)。上記事実に加えて、被告らから格別具体的な主張、立証がないことにかんがみると、本件サイトにおいて自主制作した動画が占める割合は、正確な数字は不明であるとしても、少ないものと推認される。
 したがって、本件サイトには、既存の劇場用映画、テレビ番組、アニメ等、著作権を侵害する動画が、現に多数存在していることが明らかである。
(c) 上記b(b)のとおり、ユーザは被告会社に対する関係でも匿名とすることが可能である上、被告会社とユーザとはメール以外での連絡手段はなく、また、上記前提事実(4)のとおり、本件サービスではだれでも会員となることができ、被告会社において法令違反等を理由に退会処理(利用規約16条)をしたとしても、メールアドレスを別なものとすれば、同一人が再び入会することは容易であるから(弁論の全趣旨)、被告会社は、著作権侵害を繰り返すユーザに対する再発防止のための実効的手段は何ら有していないものと認められる。
(イ)a 上記に認定したところによれば、本件サービスは、本件サイトへの動画ファイルの投稿が匿名でされ得ることを前提とし、既存の劇場用映画、テレビ番組、アニメ等の著作権を侵害する動画を投稿しても、投稿者がその責任を問われにくいシステムとなっていることから、視聴者の誘因力の高いコンテンツがそのことを理由に集積され、多くの者がこれを互いに見せ合えば、相乗効果としてコンテンツが更に集積され、それら本来は有償のコンテンツを無償で時間制限なく取得できることを可能にするものであり、そのことに対する格別の抑止力もないものである。
 したがって、本件サービスは、上記のような本件サービスの内容・性質及び構成の特徴等から、利用者に著作権侵害又は著作隣接権侵害に対する強い誘因力を働かせるものであり、著作権又は著作隣接権を侵害する事態を生じさせる蓋然性の極めて高いサービスであるといえ、そのことは被告会社も認識していたものと認められる。
b 被告らの主張について
(a) 「動画配信サイトとの対比」につき
 被告らは、被告会社には動画ファイルを選択する決定権がなく、本件サービスを動画配信サイトと同視することはできない旨を主張するが、「ムービー」、「アニメ」、「音楽」、「ゲーム」など一般のユーザの自主制作動画のみで構成されていくとは想定し難い分類や、「タレント」、「韓流スター」のように放送物を複製することを当然の前提とした分類を決めた点で、既に内容についての一定範囲の選択をしているといえる上に、被告会社が個別の動画ファイルについての選択をしなくても会員が上記分類に対応した動画の選択をするのであり、被告会社は、その選択権をただ単に会員に委ねたというにすぎない。
 被告らの上記主張は、採用することができない。
(b) 「著作権侵害の蓋然性」につき
 被告らは、本件サービスの匿名性と権利侵害とに関連性はない旨を主張するが、人は無責任の状態になれば無責任な行動に流れやすく、本件サービスにおいては本名を明らかにする必要がなく匿名性を有していることが、不特定多数のユーザによる違法なアップロードを誘発している面は否定できない。
 また、被告らは、特定のカテゴリーが当然に他者の著作物の利用を前提とすることはない旨を主張するが、前述したとおり「ムービー」、「アニメ」、「音楽」、「ゲーム」などのカテゴリーは、一般のユーザの自主制作動画のみで構成されていくとは想定し難く、また、「タレント」、「韓流スター」のカテゴリーは、放送物を複製することを当然の前提としたものと想定し得るのであって、このようなカテゴリーを採用したことがユーザによる他者の著作物の利用を誘発しているということができる。
 さらに、被告らは、ユーザによるコピーガードの解除、エンコード等の加工行為がなければ権利侵害は発生しない旨を主張するが、権利侵害動画のアップロードについてユーザの権利侵害行為が前提とされる場合があるとしても、そのことを理由に著作権又は著作隣接権を侵害する事態を生じさせる蓋然性の極めて高い本件サービスを不特定多数のユーザに提供し、後に詳細に認定するように本件サイト上に多数の著作権侵害動画が存在する事態を生じさせた被告らの責任は否定し得ない。
 被告らの上記主張は、採用することができない。
 なお、被告らは、おしなべて、本件サービスが他社のサービスと異ならない旨の主張を各箇所でするが、他社のサービスが適法であることは所与の前提ではないから、その主張は前提において失当というほかない。この点については、以下の被告の主張に対する判断についても同様であるから、再言しない。
(c) 「構成の特徴」につき
 被告は、本件サイトの動画の再生時間は短く、また、画質等が劣るなどしているから既存のビジネスとは競合せず、権利者の経済的損失をほとんど見いだしにくい旨を主張する。
 しかしながら、少なくとも約30%の動画が10分を超え、90分を超えるものが100件以上存在することは上記(アc(b)認定のとおりであるから、再生時間が短いとはいい難い。また、本件サイトの視聴は無償なのであるから、多少画質等が劣るとしても、既存ビジネスと競合することは明らかで、権利者の経済的損失は十分に認められる。
 被告らの上記主張は、採用することができない。
(d) 「黙示の許諾」につき
 被告らは、投稿動画についての多くの権利者が黙示に許諾し、あるいは積極的にこれを利用している旨を主張する。
 しかしながら、一部の権利者が投稿サイトと提携をしようとしていることは認められるが(乙22〜25)、投稿サイトに権利者が明示の許諾を与えて当該著作物について適法に利用ができるようにしたという当然のことが帰結されるにすぎない。2006年(平成18年)8月3日付けITmediaウェブニュース記事(乙26)には、「スター・ウォーズ」ファンが作成したパロディ動画などがYouTubeから削除されたことに対し、Lucasfilmが再掲載を要請した旨のニュースが記載されているが、同記事のみで、権利者の多くが黙示に許諾しあるいは積極的にこれを利用しているとの事実を認めることはできず、ほかに被告ら主張の上記事実を認めるに足りる証拠はない。
 被告らの上記主張は、採用することができない。
イ 複製及び公衆送信における管理支配
(ア)a 「物理的ないし電気的な観点」について
 上記(1)のとおり、被告会社は、本件サーバを管理支配し、公衆送信行為をしている。
b 「システムの設計及びツールの提供」について
 前記第2、2前提となる事実(4)のとおり、本件サイトにアップロードするためには本件サービスの会員となって登録を受ける必要があり、ユーザは被告会社の定めた会員規約の下にある。本件サーバにアップロードするに当たっては、被告会社が準備した専用の本件ユーザソフトを使用しなければならず、動画ファイルは、同ソフトウェアによってユーザのパソコン内にwmv形式のファイルにエンコードされて複製され、その後、本件サーバに送信される。アップロードのための投稿フォームは被告会社において定められた所定の形式であって、それ以外の選択肢はない。さらに、本件サイトにおけるユーザインターフェイスは被告会社の定めた独自の形式であり、本件サイトの動画ファイルを視聴する方法も被告会社において定めた所定の方法であり、それ以外の選択肢はない。また、被告会社は、本件サービスにおいて検索ツールを準備しており、ユーザが検索する場合には、通常、これら検察ツールを使用するほかない。
 したがって、インターネット環境に接続でき、wmv形式のファイルが再生できるパソコンがあれば、だれでも本件サイトを利用することができるが、汎用的なのはこの限度であり、本件サービスを利用するに当たっての手順は、被告会社の提供する上記システムの設計に従うほかなく、ユーザが個別に利用条件や設定を変えることはできない。
c 「動画内容に関する積極的関与」について
(a) 「動画ファイルの視聴の推奨措置」につき
 被告会社は、投稿された動画の中から、時事性を考慮して、一定の動画ファイルを選択し、本件サイトのメインページ中央列にある「ISSUE in channel」と題するコーナーにおいて、そのサムネイル画像及びその動画内容の説明文章を表示し、これらを紹介している(乙3、弁論の全趣旨)。これら動画ファイルにユーザが付した説明文章の内容が分量的に不足する場合には、被告会社が自ら説明文章を追記している(乙3、弁論の全趣旨)。
 また、被告会社は、「テーマインサイド」においては時事性のあるテーマに沿った動画ファイルを、「ピックアップチャンネル」においては新規登録ユーザのチャンネルから特定のものを選択し、メインページにリンクを張っている(弁論の全趣旨)。
 したがって、被告会社は、ある程度動画の内容を認識した上で、一定の基準で選定した動画ファイル又はその動画を含むチャンネルにより多くのアクセスがあるようにユーザを誘導しており、一定の内容の動画ファイルの視聴をユーザに対して推奨している。
(b) 「動画ファイルのアップロード禁止措置」につき
 本件サービスにおいては、いわゆるアダルト動画のアップロードは禁止されており、被告会社は、アダルト動画のアップロードが行われた場合には当該動画を削除している(弁論の全趣旨)。
 そうすると、あらかじめどの動画がアダルト動画であるかが分からない以上(タイトルがアダルト動画らしいものであっても中身は違うかも知れないから、タイトルだけでは判断できない。)、アダルト動画であるか否かについて動画の内容をチェックしているということは、すなわち、被告会社が本件サイトの動画全般を日常的に監視しており、かつ、その能力も有していることにほかならない。
(c) 「被告Aの積極的な発信」につき
 被告Aは、「社長のch(o°_,°o)ニヤニヤ」と題する自らのチャンネルにおいて、平成20年4月24日時点で、少なくとも24件につき、本件管理著作物を複製した動画ファイルを自ら作成してアップロードし、又はシェア動画としており、その中には旅行映像にBGMとして市販の音源を加えたものがあった(甲8、11、15)。さらに、本件訴訟係属中の平成20年10月23日時点でも、少なくとも72件の動画ファイルを自ら作成してアップロードし、又はシェア動画としており、そのうち16件のシェア動画については、本件管理著作物を複製した動画ファイルであった(甲11)。
 したがって、被告会社の代表者である被告Aは、自ら本件サービスに関与し、その具体的内容を認識していながら本件管理著作物を複製した動画ファイルの公衆送信に関与していたことになる。
(イ)a 上記認定によれば、被告会社は、動画ファイルが記録されかつ公衆送信を行う機器である本件サーバを管理支配し、専用のソフトウェア(本件ユーザソフト)をユーザに配布し、自らの設定した方式にユーザを従わせ、一定の動画ファイルの視聴を推奨し、また、一定の動画ファイルを削除するなどしてその内容にも関与し、かつ、被告会社の代表者である被告Aは、自らも動画ファイルをアップロードし、これを公衆送信しているのであるから、被告らは、本件サービスを管理支配しているものということができる。
b 被告らの主張について
(a) 「物理的ないし電気的な観点」につき
 被告らは、被告会社は本件サーバを物理的には管理しておらず、サーバに指示を与えたユーザこそ主体とみるべき旨を主張する。
 しかしながら、本件サーバの物理的な所在や所有関係は、電気通信回線を通じて利用するというその性質からみて公衆送信の主体を考える上ではほとんど関連性のないことである。また、ユーザによる動画ファイルの複製及び送信可能化行為も、専ら被告会社の配布した専用の本件ユーザソフトによって行われるのであり、ユーザが主体性を有することは否定できないとしても、サーバを管理支配する者の主体性もこれと併存し得るのであり、ユーザの主体性が直ちにサーバの管理支配者である被告らの主体性を否定するものではない。
 被告らの上記主張は、採用することができない。
(b) 「システムの設計及びツールの提供」につき
 被告らは、本件サービスに投稿できる動画のファイル形式の中に、市販のDVDのデータ保存形式として用いられているvobファイルは含まれていないこと、市販のDVD動画をアップロードしようとする際には、コピーガードを外すプログラムとエンコードのためのツールを必要とするが、そのようなプログラムもツールも供給していないことなどを理由に挙げ、本件サービスは、ユーザの意図的な行為の介在なしに市販のDVDやデジタルテレビ録画物などの動画をそのまま投稿できるようにはなっておらず、あくまでユーザのオリジナルコンテンツが投稿されるに必要なサービスの提供がされているにすぎない旨を主張する。
 しかしながら、本件サービスにおいて、既存の劇場用映画、テレビ番組、アニメの全編、中には国内で劇場公開中の映画の全編を複製した動画までもがかなりの数アップロードされていたこと、「ムービー」、「アニメ」、「音楽」、「ゲーム」など一般のユーザーの自主制作動画のみで構成されていくとは想定し難いカテゴリーや、「タレント」、「韓流スター」のように放送物を複製することを当然の前提としたものと想定し得るカテゴリーを採用し、他者の著作物の利用を誘発しやすくしていることは上記のとおりであり、著作権侵害の発生のためにユーザの意図的な行為が介在しなければならない場合があるとしても、本件サービスがユーザを被告会社の意図するところに従って誘導している面は否定できない。
 被告らの上記主張は、採用することができない。
(c) 「動画内容に関する積極的関与」につき
 被告らは、「テーマインサイド」は、ヒットワードランキングから一つのキーワードを選出してそれに関連する動画を掲げるもので、世間に注目を集めているものを紹介するだけのものである旨を主張するが、同主張自体、被告らが本件サービスにアップロードされている動画の内容を具体的に認識した上でその内容を基準として一定の動画を選定し、その動画の視聴をユーザに推奨している事実を認めるものであり、被告らが本件サービスから公衆送信する動画について被告会社の関与を否定するものではない。また、被告らは、「ピックアップチャンネル」は、新規登録ユーザを「順番に」紹介しているだけである旨を主張し、同コーナーでは自動的に表示されるかのような主張をしているが、そのようなコーナーに「ピックアップ」と名付けることは不自然というほかなく、被告らによる一定の選択行為が介在しているものと推認するのが合理的である。
 被告らは、アダルト動画は例外的な扱いを受けているだけであり、それ以外のものを推奨しているものではない旨を主張するが、いずれにしても被告会社が動画の内容に踏み込んだ監視を行っていることを否定するものではない。
 また、被告らは、被告Aが行っているのは社長個人としての行為であって、被告会社の行為ではない旨を主張する。しかしながら、被告Aのチャンネルの名称はそもそも「社長の・・・」と題するものであり、同チャンネル内には、「社長ニュース」、「会社関係」などのカテゴリーがあり、実際に、被告会社の警察への対応のポリシーに関する発言、被告会社の原告からの削除要求に対する対応に関する発言、被告会社と原告とのやり取りなどが記載されている。したがって、このチャンネルは、利用者に、被告会社代表者による被告代表者としての立場から設定されているチャンネルと受け止められるものであり、このチャンネルの記載は、被告会社代表者の職務としてされたものとみるのが相当である。
 被告らの上記主張は、いずれも採用することができない。
ウ 被告会社の受ける利益の状況
 本件サービスには、バナー広告や検索連動型広告が置かれており、被告会社はこれにより広告収入を得ているところ(乙1、弁論の全趣旨)、これらの広告収入は、本件サービスにアクセスするユーザ数の増加に伴い増加する関係にあることは公知の事実である。そして、ユーザ数の増加は本件サービスにおける動画ファイルの数量、質に従うものであるから、少なくとも、投稿された動画ファイル数が増加すれば、それだけ被告会社は多くの利益を受けることになる。
 したがって本件サービスにお、 いて複製及び公衆送信(送信可能化を含む。)される動画ファイル数と被告会社の利益額とに相関関係を認めることができる。
エ 侵害態様
(ア)a 侵害割合について
(a) 平成20年4月24日時点で本件サイトにアップロードされた動画ファイルは、フレンド動画・スペシャル動画(アップロードしたユーザの許可を受けた者だけが視聴可能な動画)を除き、フリー動画(だれでも視聴可能な動画)3万8890件、メンバー動画(会員のみが視聴可能な動画)2739件の合計4万1629件であった。この4万1629件の動画には、シェア動画(同一動画ファイルをユーザ間で共有するものであるが、IDは別個に付され、視聴回数も個別にカウントされる。)が含まれている。
 上記4万1629件につき、当該動画ファイルにおける所定のマッチングポイント(動画ファイルの5箇所各4秒間)にフィンガープリント法による音声認識処理による照合を加えて各楽曲のメタデータを取得し(1万7534件)、これと原告の楽曲データベースのデータとの突合をすると、1万6058件の動画ファイルに少なくとも1曲の本件管理著作物に係る楽曲が複製されていた。さらに、この突合により原告の楽曲データベースとの照合ができなかった動画ファイルのうち、本件管理著作物を複製した動画ファイルとURLが共通するシェア動画が479件存在していた。
 一方、音声認識処理により不照合となった2万4095件(4万1629件−1万7534件)のうち、「音楽」、「アニメ」及び「ムービー」の3カテゴリーの不照合ファイルについて視聴調査を加えたところ、「音楽」については1547件、「アニメ」については1948件、「ムービー」については581件の合計4076件について本件管理著作物に係る楽曲が複製されていた。
 したがって、音声認識処理に基づく1万6058件、動画URLに基づく479件及び視聴調査に基づく4076件の合計2万0613件の動画ファイルについて本件管理著作物に係る楽曲が複製されていたことになる。
(争いのない事実、甲8)
(b) 平成20年4月24日現在、本件サイトにアップロードされている動画ファイル(シェア動画を含む。)のうち、「音楽」のカテゴリーに属する8422件のうち7569件の動画ファイル(89.87%)、「アニメ」のカテゴリーに属する4860件のうち4224件の動画ファイル(86.91%)、「ムービー」のカテゴリーに属する2803件のうち1684件の動画ファイル(60.08%)が、本件管理著作物を録画した動画ファイルであった。
 また、平成20年11月から平成21年1月までの3か月間にアップロードされた動画ファイル(シェア動画を除く。)のうち、「音楽」のカテゴリーに属する267件のうち225件の動画ファイル(84.3%)、「アニメ」のカテゴリーに属する942件のうち920件(97.7%)の動画ファイルが、本件管理著作物を録画した動画ファイルであった。(前記第2、2前提となる事実(5)イ、甲8、18)
(c) 平成20年4月24日現在、シェア動画数は、「音楽」で総動画件数中に1362件、侵害動画件数中に1254件、「アニメ」で総動画件数中に292件、侵害動画件数中に244件、「ムービー」で総動画件数中に649件、侵害動画件数中に396件であったから、シェア動画を除いて本件サイトにおける侵害割合を計算すると、「音楽」については89.45%((7569−1254)件/(8422−1362)件)、「アニメ」については87.13%((4224−244)件/(4860−292)件)、「ムービー」については59.80%((1684−396)件/(2803−649)件)である(甲17)。
(d) 「音楽」、「アニメ」及び「ムービー」のカテゴリーを除く22カテゴリーについては、平成20年4月24日現在、本件管理著作物を録画した動画ファイルの合計が少なくとも7136件あり、総動画ファイル数が2万5544件であるから、侵害割合は27.93%である(甲8)。ただし、この22カテゴリーについては、視聴調査を加えていないため、音声認識処理システムにより機械的照合の際、たまたまマッチングポイントに楽曲が使用されていない場合には不照合となることから、控え目な数字となる(甲8)。
(e) 平成20年4月24日現在、視聴調査を加えた「音楽」、「アニメ」及び「ムービー」と音声認識処理システムによる機械的処理を加えただけのその他の22カテゴリーを併せた全カテゴリにおける侵害割合を計算すると、本件管理著作物を録画した動画ファイルの合計が少なくとも2万0613件、総動画ファイル数が4万1629件であるから、49.51%となる(甲8)。
b 削除措置について
(a) 平成20年6月3日、カドカワ・ピクチャーズは、被告会社に対し、「ガメラ」、「時をかける少女」、「妖怪大戦争」の著作権を害するとして動画ファイルを特定して削除要求をした。これに対し、被告会社は、同月6日、当該ユーザに対し、削除措置又は非公開設定をするよう求めた。(弁論の全趣旨)
(b) 平成20年6月5日、株式会社ギャガ・コミュニケーションズ(以下「ギャガ」という。)は、被告会社に対し、劇場公開中であった「ランボー 最後の戦場」、その他「ライラの冒険黄金の羅針盤」、「バベル」などの映画がアップロードされており同社に係る権利を害するとして、動画ファイルを特定して削除要求をした。これに対し、被告会社は、これら動画ファイルをアップロードしていたユーザ(1人)に対して削除措置又は非公開設定をするよう求めた。
 同月9日、ギャガは、被告会社に対し、同ユーザの登録情報を開示すること求めたが、被告会社は、同月10日、同ユーザに対し、「TVブレイクでは、メールアドレスが変更できますので、アドレス変更をご希望の場合、変更するメールアドレスからチャンネル名とニックネーム・旧アドレスを明記の上info@pandoratv.jpへお知らせ下さい。(変更アドレスは例えば、yahooやmsn・Googleなどです)メールが届き次第、アドレスは変更いたします。変更完了のメールを新アドレスにお送りいたしますので以降のログインは新しいアドレスでお願いします。(パスワードは変更しません) 6月12日(木)までに返信がない場合、現在の情報を開示することになります。」との内容のメールを送信し、当該ユーザに対し、開示の対象となるメールアドレスを、個人を特定することが困難なフリーメールアドレスに変更すること、及び新たなメールアドレスで本件サービスを利用することを勧めた。同月12日、被告会社は、ギャガに対して、当該ユーザの変更後のyahooのフリーメールアドレスを開示した。(弁論の全趣旨)
(c) 平成20年7月16日、株式会社スペースシャワーネットワークは、被告会社に対し、同社の著作権を害するとして、動画ファイルを特定して削除要求をした。これに対し、被告会社は、同月24日、当該ユーザに対し、削除措置又は非公開設定をするよう求めた。しかし、上記動画は、同月29日になってフレンド設定(当該ユーザの許可を受けた者は視聴可能な設定)がされたのみであった。(弁論の全趣旨)
(d) 平成19年12月18日、東宝株式会社(以下「東宝」という。)は、被告会社に対し、劇場公開中であった映画「恋空」の本編全編が本件サイトにアップロードされており同社の著作権を害するとして、動画ファイルを特定して削除措置及びユーザの登録情報の開示要求をしたが、直ちに削除がされないため、同月20日及び21日にも引き続いて削除要求をしたところ、ようやく同月25日になって削除がされた。
 平成20年4月4日、東宝は、被告会社に対し、「クローズド・ノート」の本編全編が本件サイトにアップロードされており同社の著作権を害するとして、動画ファイルを特定して削除要求及びユーザの登録情報の開示要求をした(なお、アップロードしたユーザは「恋空」をアップロードしたユーザと同一である。)。しかしながら、被告会社がこれに応じてユーザに対応措置(東宝から削除要請があった旨を告知し、当該ユーザに自主的な対応を求めるもの)を採ったのは同年5月1日になってからであった。また、被告会社は、同年6月10日、同ユーザに対し、やはり開示の対象となるメールアドレスを、個人を特定することが困難なフリーメールアドレスに変更することを勧め、同月13日に登録情報(フリーメールアドレス、生年月日、性別、ニックネーム)を開示した。
 平成20年6月4日、東宝は、被告会社に対し、「愛の流刑地」の本編全編が本件サイトにアップロードされており同社の著作権を害するとして、動画ファイルを特定して削除要求をした。ところが、同削除要求が上記「クローズド・ノート」の件について削除要求をした同一担当者からされていたにもかかわらず、被告会社は、同月6日、削除要求が権利者からされているか分からないなどの回答をした。そのため、同日、東宝の担当者は、今更なぜそのような回答をするのかとの抗議をし、その後、削除がされた。
 同年8月5日、東宝は、被告会社に対し、劇場公開中であった「崖の上のポニョ」の本編全編が本件サイトにアップロードされており同社の著作権を侵害するとして、動画ファイルを特定して削除要求をしたが、その削除がされたのは翌日であった。
(甲12の7、弁論の全趣旨)
(e) 平成20年6月16日、ワーナーエンターテイメントジャパン株式会社(以下「ワーナー」という。)は、被告会社に対し、特定のユーザがアップロードした動画ファイル29件が同社の著作権を侵害するとして削除要求をした。これに対し、被告会社は、同月18日に同ユーザに対して、削除措置又は非公開設定を求め、同月23日になって削除をした。この同一ユーザに対しては、同年7月16日及び同月23日にワーナーから再度別な動画ファイルにつき削除要求があり、被告会社は、同月24日に同ユーザに対して、削除措置又は非公開設定を求め、同月29日になって削除をした。その後、同ユーザは再び同一映画に係る動画ファイルをアップロードしたため、ワーナーは、同年8月21日、被告会社に対し、削除要求をし、被告会社は、同日、同ユーザに削除を求め、同月24日になって削除をした。(弁論の全趣旨)
(f) 本件サービスの会員規約第6条(改訂後第7条)には、「ユーザーは、本サービスの利用にあたって、以下各号の行為を行ってはならないものとします。当社はユーザーが本サービス上にコンテンツを掲示し(、)あるいは登録する行為が、以下各号に当たると判断される場合、事前通知なく当該コンテンツを削除し、(移動し、または)登録拒否をすることができます。(1)当社、コンテンツの提供者、第三者リソースの提供者もしくは他のユーザーその他の第三者の権利、財産を侵害する行為、および侵害するおそれのある行為・・・」とあり、著作権を侵害する動画ファイルは被告会社の判断によりユーザに対する事前通知なく削除することができることとされている。なお、平成18年7月又は平成20年8月の改訂により追加された第18条には、「明白に第三者の権利を侵害したコンテンツが掲載され、そのことを著作権者等の権利者からの通達等によって当サイトにおいて知るに至った場合においては、当該ユーザーに対して、登録されているメールアドレスへ通知し、削除を要請することができるものとします。当該ユーザーによる同等の行為が繰り返される場合、または、削除対応が行われない場合は、事前に通告することなく当サイト管理者が当該コンテンツの削除及び当該ユーザーの退会処置を行うことができるものとします。」と規定し、著作権侵害について削除できる場合を従前よりも限定したように読み取れる。(甲7、乙1)
c 回避措置の適用について
 被告会社が、本件サービスにおいて、著作権侵害の防止を回避するための措置として導入しているのは、動画ファイルのアップロード時に警告を出すことのみである。
 一方、著作権侵害を回避する措置としては、少なくとも、@権利侵害ファイルと確認された動画ファイルのハッシュ値(ファイルのデータを一方向性関数により加工して得た数値)を採取しておき、アップロードの際にこれと照合し、同一ハッシュ値をもつ場合にはファイルのアップロードを排除する方法、A楽曲の音の波形の特徴を選択的に抽出して数値化したオーディオ・フィンガープリントを準備しておき、アップロードの際にこれと照合し、権利侵害楽曲である場合にはファイルのアップロードを排除する方法、Bあらかじめ指定された所定の要件を満たす権利者が動画の削除申請をすると自動的に動画が削除されるプログラムを配布する方法などが実用化されていることが認められ、同種サービスを提供する他社においては既に採用されている(甲10、乙5、弁論の全趣旨)。また、端的に、事前又は事後に権利侵害の有無を有人で監視する方法もあり、これを行っている他社サービスも存在する(甲10)。
 ところが、被告会社は、原告から包括許諾契約の締結と権利侵害防止措置を求められたことに対し、権利侵害防止措置は資金的、人的に被告会社では不可能であると回答するのみであり、何らの具体的な対策を提示しなかった(甲6の1〜3)。
(イ)a 以上に認定したところからすると、本件サイトは、本件管理著作物の複製の有無に限定したとしても、「音楽」、「アニメ」及び「ムービー」のカテゴリーについては4分の3以上、全カテゴリーについても約半分が、本件管理著作物の著作権を侵害する動画ファイルで占められていたことになる。
 また、削除措置については、被告会社にはユーザの意思にかかわらず自らの判断で動画ファイルを削除する権限があり、著作権を侵害する疑いのある動画ファイルをユーザの意思に反して削除したとしても、本件サービスの利用は無償であって削除によるユーザの経済的損失が生じることはほとんど想定し得ないにもかかわらず、被告会社は、権利者から権利侵害であることの明白な動画ファイルの削除要求があっても、これら動画ファイルを直ちに削除することはせず、会員同士の視聴は可能な状態にどとめたり、また、原告から包括許諾契約の締結と権利侵害防止措置を求められた際にも、権利侵害防止措置は資金的、人的に被告会社では不可能であると回答し、何らの具体的な対策を提示しないなど、権利侵害の防止・解消について消極的な姿勢に終始していたということができる。さらに、権利者から著作権を侵害する動画ファイルをアップロードしたユーザの登録情報の開示要求があっても、ユーザにメールアドレスの変更を勧めるなどして、権利侵害をしたユーザに対する責任追及を困難にさせる対応すら行っている。したがって、被告会社の削除措置は、著作権侵害の拡大防止のために十分な機能を果たしていたとは認め難い。
 映画、音楽などの著作物を複製又は送信可能化する者は、著作権侵害を確信的に行っているものであるから、警告だけというような回避措置のみではほとんど有効性を期待できないところ、被告会社は、他に有効な措置を採ろうとした形跡が認められない。
b 被告らの主張について
(a) 侵害割合につき
 被告らは、侵害割合を算定するに当たっては、シェア動画数を控除すべきである旨を主張する。しかしながら、ある動画ファイルが多数のチャンネルにおいてシェア動画とされれば、それに応じて当該動画が視聴される機会は増加するのであるから、本件サイトの性質を論じる上でシェア動画数を控除する必要はなく、また、本件損害賠償請求は、送信可能化されたファイルの数ではなく公衆送信された視聴数により損害を算定しているから、シェア動画数を控除しなければならない理由はない。
 また、被告らは、本件管理著作物に係る侵害割合が高いのは原告が管理する音楽著作物が多数であることの帰結にすぎない旨を主張する。しかしながら、被告らの侵害主体性を検討する上で問題とすべき侵害割合は本件サイトに存する侵害ファイル全体の割合というべきであるから、その検討に当たっては本件管理著作物に係る著作権を侵害したものに限定する必要はないのであるが、本件管理著作物が多数であることから本件サイトで利用された本件管理著作物について論じるだけで十分であったため、本件管理著作物に係る侵害割合が示されているにすぎない。映画等の著作物も加味するならば、本件サイトにおける侵害割合が更に高率となることは明らかである。
 したがって、被告らの上記主張は、いずれも採用することができない。
(b) 削除措置につき
 被告らは、本件サービスにおいては適切な削除措置がとられている旨を主張するが、そうとは認められないことは前記説示のとおりであり、採用することができない。
(c) 回避措置の適用につき
 被告らは、アップロード時点での複製防止措置や全件の視聴調査は不可能である旨を主張する。
 しかし、著作権侵害を回避する措置としては、少なくとも上記(ア)c@〜Bの方法があり、同種サービスを提供する他社においては既に採用されているにもかかわらず、被告会社は何らの具体的な対策を提示しなかったことは上記のとおりであり、たとえ全件の視聴調査が不可能であるとしても、有効な対応をほとんど何もしてこなかった被告らの対応が許容されるものではない。
 被告らの上記主張は、採用することができない。
オ 結論
 以上からすると、本件サービスは、本来的に著作権を侵害する蓋然性の極めて高いサービスであるところ、被告会社は、このような本件サービスを管理支配している主体であって、実際にも、本件サイトは、本件管理著作物の著作権の侵害の有無に限って、かつ、控え目に侵害率を計算しても、侵害率は49.51%と約5割に達しているものであるところ、このような著作権侵害の蓋然性は被告会社において予想することができ、現実に認識しているにもかかわらず、被告会社は著作権を侵害する動画ファイルの回避措置及び削除措置についても何ら有効な手段を採らず、このような行為により利益を得ているものということができる。
 そうすると、被告会社は、著作権侵害行為を支配管理できる地位にありながら著作権侵害行為を誘引、招来、拡大させてこれにより利得を得る者であって、侵害行為を直接に行う者と同視できるから、本件サイトにおける複製及び公衆送信(送信可能化を含む。)に係る著作権侵害の主体というべきである。
 したがって、被告会社に対する差止請求は理由がある。
 なお、被告らは、原告らが著作権を侵害したと主張した動画ファイルを被告会社においてすべて削除したから差止めの対象が存在しない旨を主張するが、本件差止請求は、将来生ずべき原告の管理著作物の利用の差止めを求めるものであって、現存する侵害ファイルの削除を求めているものではない。日々刻々と侵害が生じその対象の特定できない事情のある本件においては、著作物による差止めによる対象の特定も許されると解されるし、その対象となるファイルの範囲を本件サイト全体にわたるものとすることも相当というべきであり、被告らの上記主張は失当というほかない。
2 争点(3)(被告会社の損害賠償責任の有無)について
(1) プロバイダ責任制限法3条1項の適用につき
ア プロバイダ責任制限法3条1項は、「特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときは、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下この項において「関係役務提供者」という。)は、これによって生じた損害については、権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、次の各号のいずれかに該当するときでなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該関係役務提供者が当該権利を侵害した情報の発信者である場合は、この限りでない。」と定め、プロバイダが不法行為に基づく損害賠償責任を負うに当たっては、技術的可能性(同項本文)、並びに権利侵害の認識(同項1号)、又は流通の認識及び権利侵害の認識可能性(同項2号)を要求する一方、発信者についてはこれらの要件を要求せず、不法行為の要件を満たせば足りるとしている。そして、同法は、発信者を「特定電気通信役務提供者の用いる特定電気通信設備の記録媒体(当該記録媒体に記録された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を記録し、又は当該特定電気通信設備の送信装置(当該送信装置に入力された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を入力した者をいう。」(同法2条4号)と定める。
 したがって、少なくともプロバイダが複製又は送信可能化の主体といえなければ発信者に該当し得ないことはいうまでもないが、プロバイダが差止請求の相手方たり得るための要件である「侵害主体」と、プロバイダが損害賠償責任を負うための要件である「発信者」とは、それぞれの法の目的に従って解釈されるべきことであるから、「侵害主体」であっても「発信者」ではないということはあり得ないではない。
 しかしながら、被告会社の本件サービスへのかかわり方は、上記1に説示したとおりであり、被告会社は、著作権を侵害する動画ファイルの複製又は公衆送信(送信可能化を含む。)を誘引、招来、拡大させ、かつ、これにより利得を得る者であり、著作権侵害を生じさせた主体、すなわち当の本人というべき者であるから、発信者に該当するというべきである。
イ 被告らは、発信者は非規範的ないし即物的な行為によって特定されているものであるから、ユーザしか発信者になり得ない旨を主張する。しかしながら、被告会社が著作権侵害を生じさせた主体であることは上記のとおりであって、発信者にはこのような者を含むと解すべきであり、これを記録媒体に「記録」又は「入力」する行為を直接行った者に限定しなければならない理由はない。
 また、被告らは、発信者には個々の具体的な情報を記録又は入力する意思が必要である旨を主張する。しかしながら、例えば特定のファイルを意識することなく一括してアップロードしたユーザを発信者から排除する理由がないことから明らかなとおり、発信者の解釈に当たって上記のような意思が必要であると解することはできない。
 被告らの上記主張は、いずれも採用することができない。
(2) 故意過失
ア 前記1に認定判断したとおり、被告会社は、本件管理著作物に係る著作権侵害の主体であるところ、本件サービスを提供するに当たり、本件管理著作物について著作権侵害の結果が発生することが当然予想され、かつ、これを認識していたにもかかわらず、これを防止するための有効な措置を講じなかったのであるから、少なくとも本件サイトにおける複製及び公衆送信(送信可能化を含む。)に係る著作権侵害について過失があるというべきである。
イ 被告らは、それぞれの動画ファイルの具体的認識がなかった旨あるいはたとえ動画ファイルの内容を認識しても許諾の有無は確認できない旨を主張する。しかしながら、被告らがすべての動画ファイルの具体的認識を有していなかったとは認め難いが、それをさておいても、何ら有効な措置を採らないことが正当化されるものではない。また、被告らが自認するとおり、我が国の流通する音楽著作物のほとんどが原告の管理著作物であり、動画ファイルを視聴すれば直ちに原告の許諾を要する可能性が極めて高いことが判明するのであるから、被告会社が原告に対して許諾の有無を確認することは容易であり、かつ、原告は、被告会社に対し、原告の許諾が必要である旨を申し出ているのであるから、被告らの上記主張は理由がないことが明らかである。
 また、被告らは、本件サービスが権利者の利益を喪失せず、また、動画投稿サービスでの利用を容認している権利者は数多い旨を主張するが、その前提が成り立たないことは既に説示したとおりであり、採用することができない。
3 争点(4)(被告Aについての不法行為の成否)について
 被告Aが、被告会社の設立以来今日まで継続して同社の代表取締役であることは前記第2、2前提となる事実(1)ウのとおりであるところ、被告会社の事業は基本的には設備機器としてはサーバを利用することができる状態にあればよく、被告A以外の役員の実質的な活動をうかがうこともできず、格別な主張、立証がない限りは被告Aの個人会社とみるべきところ、被告らからは抽象的な法律論の指摘があるのみで、格別の立証はない。そして、前記1にて説示したとおり、被告Aは、自らのチャンネルの中で自らも著作権侵害行為をしていたのであり、そのチャンネルの中では本件管理著作物に係る著作権侵害及び原告との交渉に触れ、あるいは権利者との交渉を直接担当するなど、現実にも本件サービスの実務を自ら中心となって担当していたと認められるから、被告Aも、被告会社とともに上記著作権侵害行為の主体と評価することができる。
 したがって、本件サービスにおける著作権侵害行為は、被告会社と被告Aとの共同不法行為というべきであり、原告に発生した損害について、被告Aは、被告会社とともに連帯して(不真正)責任を負うものというべきである。
4 争点(6)(損害の額)について
(1) 使用料相当損害金につき
ア 著作権等管理事業者である原告の使用料規程(甲3)の第11節「インタラクティブ配信」においては、リクエスト数を基準とし、かつ、包括的利用許諾契約によらない場合については、情報料の取得がない場合につき、20円(消費税を含まない。)が使用料として上限であること、インタラクティブ配信において包括的利用許諾契約による場合については、情報料の取得がない場合につき、商用インタラクティブ配信の再生期間に制限のないダウンロード形式、又は歌詞、楽譜等により可視的に利用できるストリーム形式の使用料が最高値であって、これが1リクエスト当たり5〜6円前後(消費税を含まない。)であることが認められる(甲3)。また、本件サイトにおける侵害ファイルのタイトル名をみると、本件サイトにおいて本件管理著作物が利用される形態は、放送からの複製がほとんどであり(甲8)、主題歌、BGM的な使用が大勢であると推認されること、もっとも、そのほか本件管理著作物の利用形態は証拠上必ずしも定かではないことなど諸般の事情を考慮すると、本件サービスにおける本件管理著作物の利用に関する使用料相当損害金は、平均すれば1視聴回数当たり12円と認めるのが相当である。
イ 被告らは、使用料相当損害金については、包括的利用許諾契約の場合の使用料規程に基づいて算定されるところ、それは、原告が他社と締結したことのある包括的利用許諾契約の使用料率である「月間の情報料収入及び広告料収入の1.875%」とするのが相当である旨を主張する。
 しかしながら、被告が指摘するような包括的利用許諾契約は、原告とそれら他社との個別折衝に基づき、過去の損害賠償金として所定の額を支払い、将来の侵害について一定の侵害防止措置をとることを前提として定められた将来の許諾料についての使用料率である(甲16の1〜3、18、乙18、弁論の全趣旨)。したがって、この使用料率を、そもそも過去の損害賠償金としていくら支払うべきかを算定するに当たっての使用料率とするのは相当ではない。被告は、原告において同種の動画投稿サービスに対する個別許諾の場合の使用料率の実態の立証をしていない旨を主張するが、原告は、所定の手続に従い文化庁長官に届け出て公表もされた使用料規程(甲3)(著作権等管理事業法13条)を提出しているのであり、これと異なる実情にあることの主張、立証はない。
 したがって、被告らの上記主張は採用することができない。
(2) 算定につき
ア 平成18年2月1日から平成20年4月24日まで
(ア) 平成20年4月24日の時点で同年3月31日までに本件サイト上において送信可能化されていた動画ファイルのうち、本件管理著作物が複製されていたのは2万0613件であり、この動画ファイルのリクエスト回数に相当する視聴数は、381万2198回である(甲8)。
(イ) 原告は、「音楽 」、「アニメ」及び「ムービー」以外の22カテゴリーに属し、かつ、音声認識処理システムによる判定から漏れた動画ファイル(少なくとも視聴回数合計623万0650回)の中の2割については、本件管理著作物を複製した動画ファイルが存すると推認されると主張する。
 「音楽」、「アニメ」及び「ムービー」の3カテゴリーについては、音声認識処理システムによる判定から漏れた動画ファイルにつき、視聴調査によって侵害ファイルと確認できた割合は約75%に及んでいる。しかしながら、そもそも音声認識処理システムによる判定だけで侵害ファイルと確認できた割合が、「音楽」については71.50%、「アニメ」については46.83%、「ムービー」について39.35%と比較的高率である(甲8)。一方、上記3カテゴリーを除く22カテゴリーは、「ダンス」、「韓流スター」、「スカイスポーツ」、「その他」、「趣味」、「エクストリーム」など音声認識処理システムによる判定だけで侵害ファイルと確認できた動画ファイルの割合が比較的高いものがあるとはいえるものの、「お笑い」については15.69%、「ゲーム」については9.71%、「スポーツ」については16.80%、「ニュース」については11.53%、「携帯ムービー」については0%、「鉄道」については1.96%、「動物」については14.35%、「暮らし」については1.36%しか音声認識処理システムの判定によっては侵害ファイルと確認できなかったのであり(甲8)、また、その割合もまちまちであるから、音声認識処理システムによる判定ファイルから漏れたファイルの中に侵害ファイルが存する確率を一定割合で見込むことは相当ではなく、これを一定の率として推認することはできない。
(ウ) しかしながら、一方では、実際にも音声認識処理システムによる判定から漏れたファイルの中に侵害ファイルがあったことは事実であり(甲8)、また、少なくとも「音楽」、「アニメ」及び「ムービー」の3カテゴリーでは、かなりの割合で侵害ファイルが存したことにかんがみると、音声認識処理システムによる判定から漏れたファイルの中にも侵害ファイルが存すること自体は明らかであるが、総動画ファイル数からみて、それら侵害ファイル数を立証することは訴訟経済的に見て極めて困難であると認める。
 そこで、著作権法114条の5を適用することとし、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、当該侵害ファイルによる視聴回数を総視聴回数の約5%として相当な損害額を認定することとする。
(エ) 以上から、上記期間における損害は、下記数式に基づき4948万円と認める。
 {381万2198(回)+(623万0650(回)×0.05)}×12円
イ 平成20年4月25日から同年11月4日までの損害
(ア) 本件管理著作物が録画されていたことが確認できた動画
a 動画数
 前記ア(ア)のとおり平成20年4月24日時点で2万0613件(@)である。
b @の動画のうち30日間以上送信可能化されていた動画
 1万7870件(A)と認める(甲8)。
c Aの動画の1日当たりの平均視聴回数
 1万1440回(B)と認める(甲8)。
d Aの動画の1か月当たりの平均視聴回数
 Bに30を乗じると34万3200回である。
 ところで、平成20年9月17日、被告会社は、原告から侵害ファイルの削除のためにこれらファイルのURLと動画IDが記載された電子データの提供を受け、株式会社CooTVに侵害ファイルの削除の依頼をしている。そして、原告が、同年10月23日及び24日に688件の動画ファイルについて無作為(被害調査報告書の各ページ先頭に記載された動画)に抜き出して調査をしたところ、視聴ができる状態であった動画ファイルが75.1%あったが、さらに、同年11月13日に同一ファイルにつき調査をしたところ、視聴ができる状態にあったものは1.9%に減じていた(なお、株式会社CooTVが調査をしたところ、同日時点では全体で1126件であり、この割合は5.4%である。)。そして、株式会社CooTVは、追加削除措置を行い、同年12月11日に上記2万0613件の動画ファイルの削除を完了させている。(甲14、15、乙14、31、弁論の全趣旨)
 以上からすると、総体的にみて、おおよそ対象期間約6か月のうち、約4か月はほぼ変動がなく、残り約2か月は4分の3であったと推認するのが相当であり、侵害ファイル数は、上記期間を平均して、約90%とみることができる。そうすると、上記期間における1か月当たりの平均視聴回数は、上記34万3200回の90%である30万8880回(C)と認めるのが相当である。
(イ) 本件管理著作物を録画したか否か不明の動画
a 動画数
 平成20年4月24日時点の全動画数4万1629件から上記@の動画数を控除した2万1016件(D)である(なお、この2万1016件は、「音楽」、「アニメ」及び「ムービー」のカテゴリーに属し侵害でないことが確認されたファイル数も含むが、下記c以下ではこの部分の数値は含んでいない。)。
b Dの動画のうち30日間以上送信可能化されていた動画
 1万9733件(E)と認める(甲8、18)。
c Eの動画のうち全量調査を行わなかった22カテゴリーの動画
 1万7373件(F)と認める(甲8、18)。
d Fの動画の1日当たりの平均視聴回数
 1万7741回(G)と認める(甲8、18)。
e Gの動画の1月当たりの平均視聴回数
 Gに30を乗じた53万2230回(H)と認める。
f Hの動画のうち本件管理著作物を録画したと推認される動画の1か月当たりの視聴回数
 53万2230回(H)に前記説示の5%を乗じた2万6611回(I)と認める。
(ウ) まとめ
a 本件管理著作物を録画した動画の1か月当たりの視聴回数
 上記30万8880回(C)と上記2万6611回(I)の合計である33万5491回(J)と認める。
b 月額使用料相当損害金
 上記33万5491回(J)に12円を乗じた額にほぼ相当する402万円と認める。
c 合計使用料相当損害金
 平成20年4月25日から同年11月4日までは約6か月であるから、同期間の損害を2412万円と認める。
ウ 平成20年11月5日以降の損害
(ア) 平成21年9月12日以降の損害
 原告は、被告らに対し、平成20年11月5日から被告会社が本件サービスにおいて本件管理著作物の複製及び公衆送信を停止するまで1か月当たり504万円の割合による損害賠償金の支払を求め、これは将来における反復的給付の請求と解される。
 しかしながら、継続的不法行為に基づき将来発生すべき損害賠償請求権については、たとえ同一態様の行為が将来も継続されることが予測される場合であっても、損害賠償請求権の成否及びその額をあらかじめ一義的に明確に認定することができず、具体的に請求権が成立したとされる時点において初めてこれを認定することができ、かつ、その場合における権利の成立要件の具備については原告においてこれを立証すべく、事情の変動を専ら被告の立証すべき新たな権利成立阻却事由の発生としてとらえてその負担を被告に課するのは不当であると考えられるようなものは、将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有しないものと解するのが相当である(最高裁平成18年(受)第882号同19年5月29日第三小法廷判決・裁判集民事224号391頁、最高裁昭和51年(オ)第395号同56年12月16日大法廷判決・民集35巻10号1369頁、最高裁昭和62年(オ)第58号平成5年2月25日第一小法廷判決・民集47巻2号643頁、最高裁昭和63年(オ)第611号平成5年2月25日第一小法廷判決・裁判集民事167号下359頁参照)。
 しかるに、本件損害賠償請求は、第三者であるユーザが投稿する本件サイトにおける日々増減する多数の動画ファイルにおける多数の本件管理著作物の利用により著作権が侵害されたことを理由とする損害賠償請求権であって、当審口頭弁論終結の日の翌日以降の分については、将来それが具体的に成立したとされる時点の事実関係に基づきその成立の有無及び内容を判断すべく、かつ、その成立要件の具備については原告においてその立証の責任を負うべき性質のものであって、このような請求権は将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有しないものというべきである。
 よって、請求の趣旨第3項(2)に係る訴え中、当審口頭弁論終結日の翌日である平成21年9月12日以降に生ずべき損害賠償金の支払を求める部分については、不適法であるとして、これを却下するのが相当である。
(イ) 平成20年11月5日から平成21年9月11日までの損害
a 平成20年11月〜同21年1月までにアップロードされた「音楽」及び「アニメ」の2カテゴリー
(a) 本件管理著作物が録画されていた動画数
 1145件(@)と認める(甲18)。
(b) @の動画のうち30日間以上送信可能化されていた動画
 743件(A)と認める(甲18)
(c) Aの動画の1日当たりの平均視聴回数
 1772回(B)と認める(甲18)。
(d) Aの動画の1か月当たりの平均視聴回数
 1772回(B)に30を乗じた5万3160回(C)と認める。
b 平成20年4月から同21年1月までにアップロードされた全カテゴリー(平成20年11月から同21年1月までににアップロードされた「音楽」及び「アニメ」の2カテゴリーを除く。)
(a) 本件管理著作物を録画した動画数
 1万3394件(D)と認める。なお、上記イでは平成20年4月24日を基準としているが、動画ファイルとしては同年3月31日までにアップロードされたものだけを対象としており、平成20年4月以降の新着動画ファイルは含まれていない。
(b) Dの動画の1日当たりの平均視聴回数
 前記イ(イ)c、dにかんがみて、1回を下回ることはないものと推認することができ、Dと同数と認める。
 1万3394件(E)
(c) Eの動画の1月当たりの平均視聴回数
 1万3394件(E)に30を乗じた40万1820回(F)と認める。
(d) Fの動画のうち本件管理著作物を録画したと推認される動画の視聴回数
 40万1820回(F)に前記説示の5%を乗じた2万0091回(G)と認める。
c 平成20年3月までにアップロードされた動画で権利侵害が確認できなかった動画
 ここで算定の対象とする動画ファイルは、前記原告から被告らに対して平成20年9月17日に提供された2万0613件の侵害ファイルの電子データの中に含まれていなかったものであり、被告会社が自ら又は第三者からの削除要求によりこれらファイルの一部を削除したことについて、被告らにおいて何ら主張、立証しない。したがって、これらのファイルは、平成20年4月25日以降、そして平成20年11月5日以降もそのまま視聴可能であったと認められる。
 したがって、前記イ(イ)fのとおり2万6611回(H)と認める。
d まとめ
(a) 本件管理著作物を録画した動画の1か月当たりの視聴回数
 上記5万3160回(C)と上記2万0091回(G)と上記2万6611回(H)の合計の9万9862回(I)と認める。
(b) 月額使用料相当損害金
 上記9万9862回(I)に12円を乗じたものに相当する119万円と認める。
(c) 合計使用料相当損害金
 ここで算定の対象となった動画ファイルは、平成20年4月〜平成21年1月までにアップロードされたものを含み、その視聴回数はどの月からのものか確定できない。したがって、乗じるべき月数としては平成21年2月以降とすべきところ、平成21年9月11日までは約7か月である。したがって、同期間の損害は、833万円と認める。
エ 弁護士費用
 本件事案の内容、訴訟の経緯、認容額等の諸般の事情を考慮すると、本件著作権侵害と相当因果関係のある損害として被告らに負担させるべき弁護士費用の額は、800万円が相当であると認める。
(3) 結論
 以上から、原告の被告らに対する損害賠償請求は、@平成18年2月1日から平成20年4月24日までの損害及び弁護士費用として、損害賠償金4948万円及び弁護士費用800万円の合計5748万円並びにこれに対する最終不法行為の後の日である平成20年4月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を、A平成20年4月25日から同年11月4日までの損害として、損害賠償金2412万円の連帯支払を、B平成20年11月5日から平成21年9月11日までの損害として、833万円の連帯支払を求める限度で理由があり、一方、平成21年9月12日以後の損害賠償を求める訴え部分は不適法であり、また、平成18年2月1日から平成21年9月11日までの損害賠償元金並びに平成18年2月1日から平成20年4月24日までの損害賠償金に対する遅延損害金請求及び弁護士費用を求める部分のうち、上記@〜Bを越える部分は理由がない。
5 まとめ
 よって、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法61条、64条を適用し、仮執行執行宣言につき、同法259条1項を適用して(主文第2項の外は相当でない。)、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第40部
 裁判長裁判官 岡本岳
 裁判官 中村恭
 裁判官 鈴木和典
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