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【事件名】「GLAY」印税未払い事件 【年月日】平成21年10月22日 東京地裁 平成19年(ワ)第28131号 著作権確認等請求事件 (口頭弁論終結日 平成21年6月30日) 判決 原告 有限会社ラバーソウル 原告 有限会社ラバーソウルエクストリーム 原告 有限会社パイロッツ 原告 有限会社スパイク 原告 有限会社ストロー 原告ら訴訟代理人弁護士 森田健二 同 山田明文 同 田子陽子 同 今枝陽子 同 小池信人 同 寺本昌晋 同 加藤絢子 同 柳岡茂 同 矢田次男 同 小川恵司 同 野村裕 被告 株式会社アンリミテッドグループ 同訴訟代理人弁護士 北村行夫 同 大井法子 同 杉浦尚子 同 雪丸真吾 同 芹澤繁 同 亀井弘泰 同 大藏隆子 同 村上弓恵 同 政岡史郎 同 吉田朋 同 杉田禎浩 同 近藤美智子 主文 1 原告らと被告との間において、原告有限会社ラバーソウルが別紙楽曲目録記載の各楽曲についての著作権を有することを確認する。 2 被告は、原告有限会社ラバーソウルエクストリームに対し、2億3366万4789円及びこれに対する平成19年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 3 被告は、原告有限会社パイロッツに対し、1億6221万5749円及びこれに対する平成19年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 4 被告は、原告有限会社スパイクに対し、1億3730万0710円及びこれに対する平成19年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 5 被告は、原告有限会社ストローに対し、1億3778万9284円及びこれに対する平成19年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 6 原告有限会社ラバーソウルエクストリーム、原告有限会社パイロッツ、原告有限会社スパイク及び原告有限会社ストローのその余の請求をいずれも棄却する。 7 訴訟費用は、原告有限会社ラバーソウルに生じた費用は被告の負担とし、原告有限会社ラバーソウルエクストリーム、原告有限会社パイロッツ、原告有限会社スパイク、原告有限会社ストロー及び被告に生じた費用は、これを50分し、その1を原告有限会社ラバーソウルエクストリーム、原告有限会社パイロッツ、原告有限会社スパイク、原告有限会社ストローの負担とし、その余を被告の負担とする。 8 この判決は、第2ないし第5項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 原告らと被告との間において、原告有限会社ラバーソウルが別紙楽曲目録記載の各楽曲についての著作権を有することを確認する。 2 被告は、原告有限会社ラバーソウルエクストリームに対し、2億4344万9845円及びこれに対する平成19年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 3 被告は、原告有限会社パイロッツに対し、1億6261万4749円及びこれに対する平成19年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 4 被告は、原告有限会社スパイクに対し、1億3769万9710円及びこれに対する平成19年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 5 被告は、原告有限会社ストローに対し、1億3818万8284円及びこれに対する平成19年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は、原告らが、被告に対し、原告有限会社ラバーソウルが別紙楽曲目録記載の各楽曲の著作権を有することの確認を求めるとともに、被告との間の契約ないし不当利得返還請求権に基づき、被告に対し、原告有限会社ラバーソウルエクストリームが2億4344万9845円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員(不当利得返還請求につき、民法704条前段の利息金、その余の請求につき商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の請求であると解される。以下同じ。)、原告有限会社パイロッツが1億6261万4749円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員、原告有限会社スパイクが1億3769万9710円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員、原告有限会社ストローが1億3818万8284円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成19年11月2日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払をそれぞれ求める事案である。 1 請求の原因 (1)当事者 ア 原告有限会社ラバーソウルエクストリーム(原告エクストリームは、平成17年10月1日、その商号を「有限会社ラバーソウル」から現在の商号に変更した。以下、商号変更の前後を問わず、「原告エクストリーム」という。)、原告有限会社パイロッツ(以下「原告パイロッツ」という。)、原告有限会社スパイク(以下「原告スパイク」という。)、原告有限会社ストロー(以下「原告ストロー」という。)及び原告有限会社ラバーソウル(平成17年10月20日設立。以下「原告ラバーソウル」という。)は、いずれも、タレントの斡旋及び養成、音楽著作権の管理、コンパクトディスク等の録音・録画物の原盤の企画及び制作等を目的とする会社である。 イ 被告は、音楽著作権の管理、コンパクトディスク等の原盤の企画及び制作、タレントの斡旋及び養成等を目的とする会社である。 被告の代表者は、A(以下「A」という。)である。 (2)各原告の地位 ア 原告エクストリーム (ア)原告エクストリームの代表者は、「GLAY」の名称で活動する音楽グループ(以下「GLAY」という。)のメンバー(B、C、D及びEの4名。以下4名を合わせて「GLAYメンバーら」という。)のうちB(以下「B」という。)である(なお、原告エクストリームの取締役はBのみである。)。 Bは、原告エクストリームに対し、同社が設立された平成8年10月4日以降における契約管理業務、財務管理業務(アーティスト活動に伴う報酬等の受領を含む。)、著作権等の管理業務及びアーティスト活動に対する一切のサポート業務を独占的に委託し、原告エクストリームはこれを受託した。 原告エクストリームは、平成8年10月4日以降、Bに関する上記業務の遂行権限を有する。 (イ)原告エクストリームが設立された後、被告は、同社あての支払明細書を発行し、Bのアーティスト活動に伴う対価を支払っていた。 イ 原告パイロッツ (ア)原告パイロッツの代表者は、GLAYのメンバーのうちC(以下「C」という。)である(なお、原告パイロッツの取締役はCのみである。)。 Cは、原告パイロッツに対し、同社が設立された平成9年12月11日以降における契約管理業務、財務管理業務(アーティスト活動に伴う報酬等の受領を含む。)、著作権等の管理業務及びアーティスト活動に対する一切のサポート業務を独占的に委託し、原告パイロッツはこれを受託した。 原告パイロッツは、平成9年12月11日以降、Cに関する上記業務の遂行権限を有する。 (イ)原告パイロッツが設立された後、被告は、同社あての支払明細書を発行し、Cのアーティスト活動に伴う対価を支払っていた。 ウ 原告スパイク (ア)原告スパイクの代表者は、GLAYのメンバーのうちD(以下「D」という。)である(なお、原告スパイクの取締役はDのみである。)。 Dは、原告スパイクに対し、同社が設立された平成10年2月16日以降における契約管理業務、財務管理業務(アーティスト活動に伴う報酬等の受領を含む。)、著作権等の管理業務及びアーティスト活動に対する一切のサポート業務を独占的に委託し、原告スパイクはこれを受託した。 原告スパイクは、平成10年2月16日以降、Dに関する上記業務の遂行権限を有する。 (イ)原告スパイクが設立された後、被告は、同社あての支払明細書を発行し、Dのアーティスト活動に伴う対価を支払っていた。 エ 原告ストロー (ア)原告ストローの代表者は、GLAYのメンバーのうちE(以下「E」という。)である(なお、原告ストローの取締役はEのみである。)。 Eは、原告ストローに対し、同社が設立された平成9年11月25日以降における契約管理業務、財務管理業務(アーティスト活動に伴う報酬等の受領を含む。)、著作権等の管理業務及びアーティスト活動に対する一切のサポート業務を独占的に委託し、原告ストローはこれを受託した。 原告ストローは、平成9年11月25日以降、Eに関する上記業務の遂行権限を有する。 (イ)原告ストローが設立された後、被告は、同社あての支払明細書を発行し、Eのアーティスト活動に伴う対価を支払っていた。 オ 原告ラバーソウル 原告エクストリーム、原告パイロッツ、原告スパイク及び原告ストローは、平成17年10月20日を始期とし、平成20年10月19日を終期として、原告ラバーソウルに対し、GLAYのマネジメント業務を独占的に委託し、原告ラバーソウルはこれを受託した。 (3)著作権を有することの確認について ア 被告は、平成17年1月1日当時、別紙楽曲目録記載の各楽曲(以下「本件楽曲」という。)の著作権を有していた。 イ GLAYメンバーらは、被告との間で、平成10年6月1日付け専属契約(甲6。以下「本件専属契約」という。)を締結した。 GLAYメンバーらは、本件専属契約期間中に作詞・作曲を行った本件楽曲について、被告との間で、楽曲ごとに著作権譲渡契約(以下、併せて「本件著作権譲渡契約」という。)を締結した。本件著作権譲渡契約は、@GLAYメンバーらが、被告に対し、本件楽曲に係る著作権を譲渡すること、A被告が、原告エクストリーム、原告パイロッツ、原告スパイク及び原告ストローに対し、社団法人日本音楽著作権協会から被告に支払われる著作権印税のうち、出版社取分3分の1を控除した3分の2(66.6%)を支払うことを内容とする(甲7参照)。 また、被告とGLAYメンバーらとの間において、著作権印税に関し、実際に作曲した者に16分の5、他のメンバーに16分の1ずつ、実際に作詞した者に16分の5、他のメンバーに16分の1ずつを分配することが合意されていた。 ウ 被告は、平成17年5月から、原告エクストリーム、原告パイロッツ、原告スパイク及び原告ストローに対する著作権印税の支払を怠るようになり、同年8月31日の時点における未払著作権印税の合計額は以下のとおりであった。 原告エクストリーム分 8458万7572円 原告パイロッツ分 3397万4050円 原告スパイク分 3423万6186円 原告ストロー分 3409万4752円 エ 原告エクストリーム、原告パイロッツ、原告スパイク及び原告ストローは、平成17年10月18日、被告に対し、未払著作権印税の支払を催告した(甲9の1・2)。 オ 催告にもかかわらず、被告が未払著作権印税を支払わなかったので、GLAYメンバーらは、平成17年11月9日、被告に対し、履行遅滞により本件著作権譲渡契約を解除する旨の意思表示をした(甲10の1・2)。 GLAYメンバーらは、同月15日、被告に対し、上記解除の通知(甲10の1)の記載から漏れていた別紙楽曲目録記載147の楽曲について、本件著作権譲渡契約を解除する旨の意思表示をした(甲11の1・2。以下、平成17年11月9日の上記解除の意思表示と併せ「本件解除」という。)。 カ 本件解除により、本件楽曲に係る著作権は、各著作権譲渡契約における著作権譲渡人に帰属した。 本件楽曲の各作詞・作曲者は、原告エクストリーム、原告パイロッツ、原告スパイク及び原告ストローに対し、本件楽曲に係る著作権を譲渡した。 原告エクストリーム、原告パイロッツ、原告スパイク及び原告ストローは、平成17年11月7日、原告ラバーソウルに対し、本件楽曲に係る著作権を譲渡した。 キ 原告らと被告との間において、本件楽曲に係る著作権の帰属につき争いがある。 本件楽曲に係る著作権については、今後も著作権印税等が発生することが見込まれるから、原告らには、著作権の帰属を確認する利益がある。 (4)未払金の支払請求について ア 本件専属契約に基づく合意 被告は、GLAYメンバーらとの間で、被告がGLAYメンバーらに対し、月額50万円のマネジメント専属料のほか、以下の報酬を支払うことを内容とする本件専属契約(甲6、15、16)を締結した。 なお、本件専属契約は、平成17年5月31日をもって終了した(甲17)。 @ テレビ、ラジオ、映画等への出演 被告が第三者から受け取る収入より被告が支出した経費を差し引いた残額の20%(甲15の第1条@) A コマーシャルフィルム、コマーシャルミュージックへの出演 被告が第三者から受け取る収入より被告が支出した経費を差し引いた残額の20%(甲15の第1条A) B レコード、CD、MD、ビデオ、VHD、DVD、LDへの出演 被告がGLAYメンバーが実演する原盤等を製作し、これを複製販売した場合、販売数量1枚当たり、原則として「税込み定価−消費税−ケース代」の5%相当額のアーティスト印税等を支払う(甲16) C 興行、コンサート、イベントへの出演 興行収入又は被告が第三者より受け取る収入から被告が支出した経費を引いた額の20%(甲15の第1条C) D 出版物、書籍の出版を含む出演 第三者より受け取る収入から被告が支出した経費を引いた残額の20%(甲15の第1条D) E 肖像、商標等を使用したキャラクターグッズへの出演 被告が企画、制作、販売等をした場合は、売上の8%、これによらない場合は被告が第三者から受け取る収入から被告が支出した経費を差し引いた残額の20%(甲15の第1条E) イ 本件著作権譲渡契約に基づく合意 被告は、GLAYメンバーらとの間で、本件著作権譲渡契約を締結し、著作権印税の支払を約した。 ウ 第三者に楽曲の著作権を譲渡した場合の印税の取扱いに関する合意 原告エクストリーム、原告パイロッツ、原告スパイク及び原告ストローと被告とは、本件専属契約期間中にGLAYメンバーらが作詞・作曲を行い、被告以外の第三者に当該楽曲の著作権を譲渡した場合、当該第三者からGLAYメンバーらに支払われる著作権印税について、被告がいったん受領した上、作曲したメンバーに16分の5、他のメンバーに16分の1ずつ、作詞したメンバーに16分の5、他のメンバーに16分の1ずつ分配することを合意した。 エ 原告エクストリームと被告との間の原盤使用許諾契約 (ア)原告エクストリームは、平成16年1月9日、被告に対し、9億円を貸し付けた(甲18)。 被告は、同年9月1日、原告エクストリームに対し、上記借入金債務を担保するため、被告が権利を有する下記楽曲の原盤権について、譲渡担保権を設定する旨の合意をした(甲19)。 記 GLAY rare collectives vol.1 GLAY rare collectives vol.2 SPEED POP BEAT out! BELOVED BEAUTIFUL DREAMER/STREET LIFE THE FRUSTRATED THE FRUSTRATED(初回限定版) (イ)原告エクストリームは、平成16年9月1日、被告との間で、上記原盤について、被告が原告エクストリームに対し、原盤を使用して複製・頒布されたレコードに関し、売上数量(倉庫出荷量の80%)1枚につき、消費税抜き小売価格からジャケット代(消費税込み定価の15%)を控除した金額の15%相当額の原盤印税を支払うことを内容とする使用許諾契約を締結した(甲20。以下「本件原盤使用許諾契約」という。)。 オ 原告エクストリームと被告との原盤等権利の譲渡契約 被告は、原告エクストリームに対し、平成17年6月1日をもって、被告が所有する同年3月末日までに制作し、完成されたGLAYの原盤、原版及びこれらに係るすべての権利並びにGLAYに関する商標権、知的財産権及び商品化権を含む一切の権利(以下「本件権利」という。)を譲渡した(甲21)。 カ 被告は、平成17年2月28日以降、原告エクストリーム、原告パイロッツ、原告スパイク及び原告ストローに対し、本件専属契約、本件著作権譲渡契約に基づく支払をしない。 平成17年8月31日の時点における被告の上記未払金額は、次のとおりである。 (ア)原告エクストリーム分(甲8の1) 別紙1の番号61ないし85 合計1億7799万5284円 (イ)原告パイロッツ分(甲8の2) 別紙2の番号24ないし48 合計1億2197万2070円 (ウ)原告スパイク分(甲8の3) 別紙3の番号20ないし44 合計1億2223万4206円 (エ)原告ストロー分(甲8の4) 別紙4の番号23ないし47 合計1億2209万2772円 キ 被告は、平成17年9月1日以降についても、原告エクストリーム、原告パイロッツ、原告スパイク及び原告ストローに対し、本件専属契約、本件著作権譲渡契約及び第三者に楽曲の著作権を譲渡した場合の印税の取扱いに関する合意に基づく支払をしない。 また、被告は、平成17年6月1日以降も、第三者から本件権利の使用許諾の対価を不当に得たにもかかわらず、原告エクストリーム、原告パイロッツ、原告スパイク及び原告ストローに対し、不当利得を返還しない。 被告の上記未払金額は、次のとおりである。 (ア)原告エクストリーム分 別紙1の番号1ないし60 合計6545万4561円 (イ)原告パイロッツ分 別紙2の番号1ないし23 合計4064万2679円 (ウ)原告スパイク分 別紙3の番号1ないし19 合計1546万5504円 (エ)原告ストロー分 別紙4の番号1ないし22 合計1609万5512円 ク 弁済期の経過 別紙1ないし4記載の各債権につき、遅くとも、本件訴状送達の日の経過をもって、各支払期限は経過した。 2 請求の原因に対する認否及び被告の反論(抗弁) (1)請求の原因に対する認否 ア 請求の原因(1)及び(2)は認める。 イ 請求の原因(3)について (ア)アないしオ及びキは認める。 (イ)カのうち、解除の効果の発生は争い、その余は知らない。 ウ 請求の原因(4)について (ア)アないしオは認める。 (イ)カについて a 別紙1の番号82(1371万3433円)は、1331万4433円の限度で認め、超過分39万9000円については否認する。 被告から原告らに対して当初報告した金額は1371万3433円であった。しかし、後日、39万9000円の過大報告が判明し、修正の報告がされている(乙1、10)。 b 別紙2の番号45(1371万3433円)は、1331万4433円の限度で認め、超過分39万9000円については否認する。 被告から原告らに対して当初報告した金額は1371万3433円であった。しかし、後日、39万9000円の過大報告が判明し、修正の報告がされている(乙1、10)。 c 別紙3の番号41(1371万3433円)は、1331万4433円の限度で認め、超過分39万9000円については否認する。 被告から原告らに対して当初報告した金額は1371万3433円であった。しかし、後日、39万9000円の過大報告が判明し、修正の報告がされている(乙1、10)。 d 別紙4の番号44(1371万3433円)は、1331万4433円の限度で認め、超過分39万9000円については否認する。 被告から原告らに対して当初報告した金額は1371万3433円であった。しかし、後日、39万9000円の過大報告が判明し、修正の報告がされている(乙1、10)。 e その余の事実は認める。 (エ)キについて a 別紙1の番号6ないし8、17ないし19において、平成17年4月分、5月分についても、「摘要」が不当利得とされている点は争う。各原盤印税請求権が被告から原告に移転したのは、平成17年6月1日であるから、平成17年4月分、5月分の「摘要」は不当利得ではなく、本件専属契約となる。 b その余の事実は認める。 (オ)クは認める。 (2)抗弁 ア 弁済の提供(民法492条) 被告は、平成17年11月7日、5億4429万4332円(1(4)カの(ア)ないし(エ)の合計額)を用意したことを告げた上で、原告らに対し、その受領を催告した。これにより、被告は、原告らに対し、弁済を口頭で提供した(民法493条ただし書)ものと認められる。 上記弁済の提供により、被告が履行遅滞の責めを負うことはないから、本件著作権譲渡契約の解除(本件解除)は無効である。 イ 解除権の濫用(民法1条3項) (ア)本件の経緯 a 平成17年5月30日、GLAYメンバーら4名と被告代表者であるAとの間で、GLAYメンバーらの代理人である弁護士F(以下「F弁護士」という。)の立会いの下、本件専属契約(甲6)の終了に伴い、GLAYが被告から独立することに関し、打合せが行われた。 上記打合せの結果、平成17年5月30日付けの「GLAYに関する原盤等権利の譲渡契約書」(甲21)が締結された。上記打合せにおいて、Aは、出版権(著作権を意味する。)は譲渡対象に入らないものと理解し、その旨を確認していたにもかかわらず、上記契約書の第1条の文言は、譲渡対象に著作権が含まれるかのような記載となっていた。 b 平成17年7月13日、本件専属契約の終了に伴う精算に関する打合せが行われた。その際、原告側と被告側との間で、出版権の帰属について認識の相違があることが明らかとなった。 被告としては、著作隣接権に加えて出版権を10億円という低額で譲渡するなどという合意をするはずはなく、出版権の帰属を明らかにしないまま精算業務を続けることはできないことを原告側に通告した。 しかしながら、原告側は、出版権が譲渡対象になっているとの主張を撤回しないまま、被告に対し、精算を催告した(甲9の1)。 c そこで、上記催告期限内である平成17年11月7日、被告の代理人である弁護士G(以下「G弁護士」という。)と原告側の代理人であるF弁護士との間で交渉が行われた。 G弁護士は、出版権の被告への帰属を原告が認めるのと引換えに、速やかに精算を行うことを内容とする和解案を提案した(乙3)。この際、被告は、原告が請求する5億4429万4332円を現実に用意していた(乙4)。 F弁護士は、上記和解案を検討したものの、結局、原告側はこれに応じず、同月9日には出版権が原告に帰属するものであるとの主張及び解除の意思表示をし、未精算金については法的手段により回収する旨の通知がされた(甲10の1)。 d その後、AとBとの間で、解決方法が模索されたものの、直接の面談も実現しなかった。 そこで、被告は、別の弁護士を代理人として、原告側との交渉に臨んだものの、平成18年4月には、被告側と原告側との間の交渉は決裂した。 e しかしながら、その後においても、原告側、被告側ともに円満な解決を望んでいたため、平成18年10月18日には、AとBとが直接面談をして話し合った。 この際、Aは、Bに対し、@「GLAYに関する原盤等権利の譲渡契約書」(甲21)の締結により、出版権が譲渡されたという事実はないことを確認することができれば問題は解決すること、A出版権が欲しいというのであれば、被告側から改めて譲渡してもよいが、その場合、譲渡の対価額を決めた上、未精算金と相殺した残額を被告が支払うという方法を取りたいと考えていることを伝えた。Bは、出版権の問題を解決するために前向きに検討して、被告に連絡する旨を約束した。 原告側からはなかなか提案を得られなかったものの、被告は連絡を待っていた。 f ところが、平成18年12月18日付けの文書でされた原告側からの回答は、被告の予想に反して、従前と変わらないものであった(乙7)。 (イ)上記経緯に照らせば、原告側は、「GLAYに関する原盤等権利の譲渡契約書」(甲21)の第1条の文言が、たまたま、出版権(著作権)をも譲渡の対象とするものであるかのようにも解釈し得るものであることを奇貨として、これが契約当事者間の意思に反することを知りながら、ことさらに、出版権が譲渡対象とされている旨強弁したものであり、このような主張は、原告側において、被告が出版権の譲渡の問題が解決するまで精算金の支払を留保し、結果として債務不履行の状況に陥るであろうことを期待して、あえて行ったものであるといえる。 上記事情が認められる本件においては、本件解除は信義にもとるものであり、解除権の濫用に当たるものとして許されないというべきである。 ウ 消滅時効(労働基準法115条) (ア)「賃金」とは、「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」をいう(労働基準法11条)。 (イ)GLAYメンバーらの「労働者」該当性について a 指揮監督下の労働 (a)GLAYメンバーらは、被告の指示する実演活動を拒否することはできず、仮に、これを拒否した場合には、損害賠償や契約解除の不利益を課せられることになっていた(甲6の第9条)。 また、GLAYメンバーらは、被告が完全であると認めるまで、最善を尽くし、実演を行う義務を負っていた(甲16の第5条2項)。 以上のとおり、GLAYメンバーらには、仕事の依頼、業務に従事すべき旨の指示等に対する諾否の自由は無かった。 (b)被告が、GLAYメンバーらの実演に関し、逐一細かな指示を行っていたという事実はない。しかし、芸術的、創造的な業務に従事する者については、業務の性質上、その遂行方法についてある程度本人の裁量に委ねざるを得ないのであって、実演の細部にわたる指示をしない場合であっても、このことから直ちに指揮監督関係が否定されるものではない。 GLAYメンバーらはミュージシャンであり、その通常予定されている業務は、音楽の実演活動である。しかし、甲第6号証の第2条には、「@テレビ、ラジオ、映画等への出演」、「D出版物、書籍の出版を含む出演」、「Gその他上記各号に付帯する一切の芸能活動」等の、ミュージシャンとして通常予定されているとはいえない業務が列挙されており、GLAYメンバーらが、被告の一般的な指揮監督を受けていたことを窺わせる内容となっている。 (c)GLAYメンバーらの中心的な業務は音楽実演の収録である。この収録の日時、場所は被告が決定し、メンバーらは被告の指示に従うことになっていた(甲16の第5条)。 (d)GLAYメンバーらに代替性はなく、他の者に労務を提供させることは認められない。 b 報酬の労務対償性 甲第15号証によれば、GLAYメンバーらが労務を提供して得た収入の一部が報酬として支払われる関係が認められ、労務対償性が認められる。 c 被告の事業者性の有無 機械、器具、衣装等は被告が負担していた。また、被告には比較すべき正規従業員が存在せず、報酬の額を労働者性判断の要素とすることができない。 d 専属性の程度 GLAYメンバーらは、被告以外の者との間で、実演はもちろんのこと、実演のために交渉することすら禁止されていた(甲6の第1条、甲16の第2条(1))から、専属性は極めて高い。 e 以上を総合考慮すれば、GLAYメンバーらは労働者に該当するというべきである。 (ウ)本件専属契約に基づく下記債権は、2年の短期消滅時効により消滅する(労働基準法115条)。 記 @ 別紙1 番号2ないし5、番号6のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号7のうち4月分・5月分(番号7のうち4月分及び5月分に相当する金額は241万8728円)、番号8のうち4月分・5月分(番号8のうち4月分及び5月分に相当する金額は12万7955円)、番号17ないし19のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号31、番号32のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号35、番号36のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号39、番号40のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号43のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号45のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号61ないし67、番号69ないし74、番号76ないし79、番号81、番号82、番号84、番号85 A 別紙2 番号2ないし5、番号9、番号10のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号13、番号14のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号17、番号18のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号21のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号23ないし30、番号32ないし37、番号39ないし42、番号44、番号45、番号47、番号48 B 別紙3 番号2ないし6、番号7のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号10、番号11のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号14、番号15のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号18のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号20ないし26、番号28ないし33、番号35ないし38、番号40、番号41、番号43、番号44 C 別紙4 番号2ないし5、番号9、番号10のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号13、番号14のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号17、番号18のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号21のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号23ないし29、番号31ないし36、番号38ないし41、番号43、番号44、番号46、番号47 (エ)本件専属契約は、平成17年5月31日に終了したから(甲17)、本件専属契約に基づく債権は、遅くとも平成17年10月1日から行使することができた(甲16の第8条1項)。 本訴の提起は、平成19年10月26日であり、平成17年10月1日から2年以上が経過している。 (オ)被告は、上記消滅時効を援用する。 エ 消滅時効(民法174条2号) (ア)GLAYメンバーらは、民法174条2号の規定する「演芸を業とする者」に該当する。 (イ)本件専属契約に基づく下記債権は、民法174条2号の「報酬」に該当する。 本件専属契約は、平成17年5月31日に終了したから(甲17)、本件専属契約に基づく債権は、遅くとも平成17年10月1日から行使することができた(甲16の第8条1項)。 本訴の提起は、平成19年10月26日であり、平成17年10月1日から1年以上が経過している。 記 @ 別紙1 番号2ないし5、番号6のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号7のうち4月分・5月分(番号7のうち4月分及び5月分に相当する金額は241万8728円)、番号8のうち4月分・5月分(番号8のうち4月分及び5月分に相当する金額は12万7955円)、番号17ないし19のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号31、番号32のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号35、番号36のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号39、番号40のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号43のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号45のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号61ないし67、番号69ないし74、番号76ないし79、番号81、番号82、番号84、番号85 A 別紙2 番号2ないし5、番号9、番号10のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号13、番号14のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号17、番号18のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号21のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号23ないし30、番号32ないし37、番号39ないし42、番号44、番号45、番号47、番号48 B 別紙3 番号2ないし6、番号7のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号10、番号11のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号14、番号15のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号18のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号20ないし26、番号28ないし33、番号35ないし38、番号40、番号41、番号43、番号44 C 別紙4 番号2ないし5、番号9、番号10のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号13、番号14のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号17、番号18のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号21のうち4月分・5月分(各月の内訳は不明)、番号23ないし29、番号31ないし36、番号38ないし41、番号43、番号44、番号46、番号47 (ウ)本件著作権譲渡契約に基づく下記債権は「報酬」又は「その供給した物の代価に係る債権」に該当する。 本件著作権譲渡契約に基づく上記未払金は、原告が本件著作権譲渡契約の解除を主張する平成17年11月9日以前に発生したものと考えられるから、遅くとも、平成18年2月末日には行使することができた(甲7の第11条)。 本訴の提起は、平成19年10月26日であり、平成18年2月末日から1年以上が経過している。 記 @ 別紙1 番号75、番号83 A 別紙2 番号38、番号46 B 別紙3 番号34、番号42 C 別紙4 番号37、番号45 (エ)本件原盤使用許諾契約(甲20)に基づく下記債権は、「その供給した物の代価に係る債権」に該当する(上記契約において、「原盤」とは、「実演家の実演を磁気テープ等に録音した固定物」をいう(甲20の第2条A)。)。 下記債権のうち、最終の請求分は、平成17年3月分である。3月分については6月末日限りの支払期限とされている(甲20の第6条(3))から、遅くとも、平成17年7月1日には全債権を行使することができた。 本訴の提起は、平成19年10月26日であり、平成17年7月1日から1年以上が経過している。 記 @ 別紙1 番号68、番号80 A 別紙2 番号31、番号43 B 別紙3 番号27、番号39 C 別紙4 番号30、番号42 (オ)被告は上記消滅時効を援用する。 オ 相殺 (ア)被告は、原告エクストリームに対し、「THE PREDATORS」の実費につき立替払をしている(甲23の6「THE PREDATORS実費立替分」)。 その求償債権の額は、938万6056円(1201万1056円−262万5000円)である。 (イ)被告は、原告エクストリームに対し、平成21年3月24日の本件弁論準備手続期日において、上記求償債権938万6056円をもって、原告エクストリームの本訴請求債権と対当額において相殺する旨の意思表示をした。 3 抗弁に対する認否及び原告の反論(再抗弁) (1)抗弁に対する認否 ア 弁済の提供(2(2)のア)について (ア)被告の主張は、否認ないし争う。 (イ)被告の原告らに対する著作権印税支払債務の履行は、3月、6月、9月、12月の各月末に締め切り、翌々月末日に原告らの口座に振り込む方法で支払うことになっていたから(甲7の第11条)、債務の履行について債権者である原告らの行為は必要とされない。また、原告らは、被告に対し、債務の本旨に従った弁済の受領をあらかじめ拒絶するような態度を示したこともない。 したがって、被告の行為は、口頭の提供の要件(493条ただし書)を充たさない。 イ 解除権の濫用(2(2)のイ)について (ア)被告の主張は、否認ないし争う。 (イ)未払の著作権印税請求と出版権の帰属とは、何ら関連性のない別個の問題であり、出版権の帰属に争いがあったとしても、このことが、著作権印税の不払を正当化する根拠となるものではない。 被告は、催告された未払著作権印税額を現実に提供しさえすれば、履行遅滞の責任を負わずに済んだのであり、それをせずに契約解除という事態を招いたのは被告自身である。 (ウ)Aは、GLAYのメンバー全員の前で、「GLAYに関する権利はすべて譲渡する。」と確認し、被告から提案のあった原案に、あえて「本アーティストに関する商標権、知的財産権、及び商品化権を含む一切の権利」を譲渡するものとして追加し、合意したものである(甲21)。 上記経過に照らせば、「GLAYに関する原盤等権利の譲渡契約書」(甲21)を作成した際、譲渡の対象に、被告が有するGLAYに関する楽曲の出版権も含めるというのが当事者の意思であったといえる。 被告は、自ら修正した契約書の文言に反する態度を取っているのである。 (エ)原告らは、本件著作権譲渡契約の約定に基づき、相当の期間をもって催告の上解除したのであるから、被告には、弁済の機会が充分与えられていた。 ウ 消滅時効(労働基準法115条)について (ア)GLAYメンバーらが「労働者」に該当しないこと a GLAYメンバーらは、被告の専属のアーティストであり(甲6の第1条)、被告は、原告らのマネージメントを行う会社であった(甲6の第3条)。 GLAYメンバーらと被告との間に、被告の指揮命令下において労務を提供するという関係はなく、そのような事実もない。 (a)GLAYメンバーらの創作家としての活動 被告は、GLAYメンバーらの作詞・作曲による楽曲を尊重しており、楽曲についてアドバイスをすることはあっても、その指示に従わせるようなことはなかった。 また、アルバムに入れる楽曲の選定や曲順の決定、シングルとして売り出す楽曲の選定についても、被告が独断で決定することはなく、必ずGLAYメンバーらと協議して、決定していた。しかも、被告は、同協議において、意見を述べることはあっても、最終的にはアーティストであるGLAYメンバーらの判断を尊重していた。 さらに、被告は、GLAYメンバーらの判断による活動を尊重し、容認していたから、被告の指示に従わなかったとしても、メンバーらに対し不利益を課すことはなかった。 以上のとおり、GLAYメンバーらの創作家としての活動においては、メンバーらの意見が尊重されており、被告がメンバーらとの協議をしないままに、独断で決定し、指示をすることはなかった。 メンバーらには、被告からの仕事の依頼や業務に従事すべきとの指示に対し、諾否の自由があった。 (b)GLAYメンバーらの実演家としての活動 GLAYメンバーらの実演家としての活動についても、メンバーらの意見が尊重されており、協議を経ずに、被告が独断で活動を決定することはなかった。メンバーらには、被告からの仕事の依頼や業務に従事すべきとの指示に対し、諾否の自由があった。 b 時間的・場所的拘束性の有無 GLAYメンバーらは、自身の創作活動に必要なスケジュール管理及び収録場所の調整を被告に依頼していたにすぎず、被告がメンバーらの音楽実演の収録の日時・場所について指示を出していたという関係にはない。 したがって、時間的・場所的拘束性もない。 c 代替性の有無 GLAYメンバーらに代替性がないのは、同人らがアーティストとして、創作、実演という芸術表現をする者であるという特性から、当然のことである。 本件において、代替性が存在しないことをもって、労働者性を示す指標とすることはできない。 d 専属性 GLAYメンバーらは、被告に所属しない他のアーティストと競演する際など、メンバーらから、他のアーティストに共演を打診し、当該アーティストとの間で直接話合いを行い、それがある程度進んだ段階で、被告にマネジメントを依頼するということが多々あった。 上記のとおり、実演のための交渉について、GLAYメンバーらが主導的に行い、被告がこれを事後的に同意するという場面もあったのであり、メンバーらの被告に対する専属性が高いとはいえない状況であった。 e 労務対償性について GLAYメンバーらが被告から受領する報酬は、拘束時間や日数によりその金額が決定されるというものではなく、GLAYメンバーらの活動により得られた経済的利益を、メンバーらと被告との間で分配するというものであった(専属契約書(甲6)の第4条の「報酬」につき詳細を定める「覚書」(甲15)によれば、「甲(判決注・GLAYメンバーら)は、乙(判決注・被告)に対して、下記の規定に基づき報酬を分配し支払うものとする。」と規定されている。甲15の第1条参照)。 興行、コンサート、イベント等で被告が主催するものについて、収支が赤字の場合、被告はメンバーらに対し、支払義務を負わない(甲15の第1条Caただし書参照)。また、メンバーらに支払われる印税も、複製、販売数量に対し支払われるものであった(甲16の第7条1項)。 そのため、メンバーらが被告から受領する報酬については、当然ながら給与所得としての源泉徴収は一切行われていなかった。 f GLAYメンバーらの事業者性の有無 GLAYメンバーらが被告から受領する報酬については、GLAYメンバーらの活動により得られた経済的利益を被告と分配する方式が採られていた。興行、コンサート、イベント等で被告が主催するものについて、収支が赤字の場合、被告からGLAYメンバーらに対し、報酬は一切支払われず、むしろ、被告とGLAYメンバーらとは、興行の失敗の責任を共に負う、GLAYの音楽事業についてのいわばパートナーの関係にあったのであり、GLAYメンバーらには事業者性が認められる。 g なお、実演に使用した楽器については、GLAYメンバーら自身が負担していた。 h 以上の点を総合考慮すれば、GLAYメンバーらは「労働者」には該当しない。 (イ)以上のとおり、本件専属契約の内容は、GLAYメンバーらが被告に対して労務を提供し、これに対し、被告が報酬を支払うという関係を定めたものではなかったことは明らかである。 GLAYメンバーらと被告との間に雇用関係はなく、労働基準法の適用の基礎を欠く。 (ウ)時効の起算点について 本件専属契約に基づく債権のうち、下記のもの以外の弁済期が平成17年10月1日には到来していたことは認める。 下記債権の弁済期は、それぞれ「弁済期欄」に記載のとおりである。 記 @ 別紙1
(ア)民法174条が短期消滅時効を定めたのは、同条各号に列挙された債権は、通常即時決済されるものであり、また、少額かつ頻繁に発生する債権であるため、証拠書類も作成しないのが通常であることによる。 このような立法の趣旨に鑑みれば、同条2号の「演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の対価に係る債権」とは、演芸を業とする者に対するすべての報酬債権をいうのではなく、演芸を業とする者に対する報酬又はその供給した物の対価のうち、債権の性質上、演芸又はその供給を行った日から1月又はこれより短い時期に報酬を支払うことが予定されている債権であり、かつ、少額かつ頻繁に発生するものをいうと解すべきである。 (イ)本件著作権譲渡契約に基づく印税請求権は、著作権の対価であり、演芸という役務、あるいは、供給した物の対価ではないことが明らかである。 (ウ)歌唱印税、商品化権の対価についても、それぞれ著作隣接権及びパブリシティ権という権利の対価であるから、演芸という役務、あるいは、供給した物の対価には該当しない。 (エ)本件専属契約に基づく興行、コンサート、イベントへの出演料等の報酬債権についても、興行収入から、実費等すべての経費を差し引いて精算した上で(甲15の第1条C)、3月、6月、9月、12月の各月末にて締め切り、翌々月末日に支払うと約定されている(甲6、甲15の第3条)。 したがって、実演から報酬の支払まで、相当長期間を予定している債権であって、即時決済が予定されているものではない。また、その金額も多額であり、契約書(甲6、15)も作成されている。 以上のとおり、演芸を業とする者の報酬には該当しないというべきである。 (オ)時効の起算点について a 本件専属契約に基づく債権の弁済期については、上記ウの(ウ)記載のとおりである。 b 本件著作権譲渡契約に基づく債権の弁済期が、平成18年2月末日には到来していたことは認める。 c 本件原盤使用許諾契約(甲20)に基づく債権の弁済期が、平成17年7月1日には到来していたことは認める。 オ 相殺(2(2)のオ)について 認める。 (2)再抗弁(債務承認) ア 被告は、別紙1の番号6ないし8及び番号17ないし19の4月分・5月分について、本件専属契約に基づく債権であるとして、短期消滅時効を主張する。 しかしながら、被告は、別紙1番号6ないし8について、平成18年3月31日付けの精算報告書(甲23の6)を、別紙1番号17ないし19については、平成18年6月30日付けで精算報告書(甲23の8)を、それぞれ原告エクストリームに対して提出した。 したがって、被告は、上記時点において、上記債務を承認した。 なお、本件専属契約の期間中において、原告らは対外的な金銭の受領はすべて被告を経由して行っていたから、被告が上記債権を「本件専属契約」に基づくものであるとするのであれば、原告らは、これを特に争わない。 イ また、被告は、別紙1番号82、別紙2番号45、別紙3番号41、別紙4番号44の各債権(「DOME+大阪公演」)について、平成18年3月20日、原告エクストリーム、原告パイロッツ、原告スパイク及び原告ストローに対し、支払金額を1331万4433円に修正する旨の書面を送付した(乙1の1・2)。 したがって、被告は、上記時点において、上記債務を承認した。 4 原告の再抗弁に対する被告の主張 (1)原告らの債務承認の主張は、被告が消滅時効の主張を行ってから1年2か月余りが経過した後にされたものであり、時機に後れたものである。 また、原告らには、時機に後れたことにつき故意又は重大な過失があった。 さらに、仮に、原告らに債務承認の主張を許せば、債務承認の効力が生じた時期(被告からの書面が到達した時期)を明らかにするため、さらに期日を重ねる必要があり、訴訟の完結を遅延させることになる。 (2)以上によれば、原告らの債務承認の主張は、時機に後れたものとして却下されるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 請求の原因について (1)請求の原因(1)、(2)、(3)のうちアないしオ及びキ、並びに(4)のうちアないしオ及びク記載の事実は、当事者間に争いがない。 (2)請求の原因(3)のカ(本件解除後の本件楽曲に係る著作権の帰属)について 証拠(甲7、甲22の各枝番)及び弁論の全趣旨によれば、本件著作権譲渡契約においては、「乙(判決注・被告)がこの契約の条項に違反した場合には、甲(判決注・著作権譲渡人。例えば、甲7では、B)は、20日間の期間を定めた文書により、契約上の義務履行を催告し、その期間内に履行されないときは、この契約を解除すること、・・・ができるものとします。」(甲7の第19条(1)参照)、「契約期間の満了または契約の解除によりこの契約が終了した場合には、本件著作権は、当然甲(判決注・著作権譲渡人)に帰属するものとします。」(甲7の第21条参照)との旨が約定されていたこと、本件楽曲の各作詞・作曲者(GLAYメンバーら)は、原告エクストリーム、原告パイロッツ、原告スパイク又は原告ストローに対し、本件楽曲に係る著作権を譲渡する旨の合意をしたこと、原告エクストリーム、原告パイロッツ、原告スパイク及び原告ストローは、平成17年11月7日、原告ラバーソウルに対し、本件楽曲に係る著作権を譲渡する旨の合意をしたことが認められる。 (3)請求の原因(4)のカ(被告の未払金額−その1)について ア カ記載の事実は、別紙1の番号82、別紙2の番号45、別紙3の番号41、別紙4の番号44を除き、当事者間に争いがない。 イ 証拠(甲8の1ないし4、乙1の1・2、乙10の1・2)及び弁論の全趣旨によれば、別紙1の番号82、別紙2の番号45、別紙3の番号41、別紙4の番号44の「DOME+大阪公演」に係る本件専属契約に基づく債権の額は、各1331万4433円であると認められる(本件専属契約において、「興行、コンサート、イベントへの出演」については、「興行収入又は被告が第三者より受け取る収入から被告が支出した経費を引いた額の20%」がGLAYメンバーらに支払われるものとされており、上記公演に係る収支は、合計2億6628万8666円であるから、「2億6628万8666円×20%÷4人」との計算式により求められる上記金額(円未満切捨て)となる。)。 よって、別紙1の番号82、別紙2の番号45、別紙3の番号41、別紙4の番号44の各債権額は、いずれも1331万4433円である。 (4)請求の原因(4)のキ(被告の未払金額−その2)について ア キ記載の事実は、別紙1の番号6ないし8、17ないし19の「摘要」欄を除き、当事者間に争いがない。 イ 別紙1の番号6ないし8、17ないし19の「摘要」欄につき、原告らは「不当利得返還請求」と主張するのに対し、被告は各4月分、5月分は「本件専属契約」であると主張する。 この点、証拠(甲8の1ないし4)及び弁論の全趣旨によれば、本件専属契約の期間中(平成17年5月31日をもって終了)においては、原告らは対外的な金銭の受領はすべて被告を経由して行っていたことが認められ、また、原告らは、「被告が本件専属契約に基づく支払であると主張するのであれば、これを争わない」として、実質的には、被告の「各4月分、5月分の摘要は本件専属契約である」との主張を争っていないことに照らし、別紙1の番号6ないし8、17ないし19の各金員について、いずれも4月分、5月分は本件専属契約に基づく請求であり、6月分は不当利得返還請求であると解するのが相当である(原告らは、甲21の第3条(4)を指摘するものの、同条項においては、「第三者との契約から生じる金銭等の権利は、基準日に遡及して乙(判決注・原告エクストリーム)に帰属するものとする」とされており、上記基準日は平成17年6月1日(第1条)と規定されている。)。 2 被告の抗弁主張について (1)弁済の提供(民法492条)について 被告は、平成17年11月7日、5億4429万4332円(1(4)カの(ア)ないし(エ)の合計額)を用意したことを告げた上で、原告らに対し、その受領を催告したとして、これが口頭の提供(民法493条ただし書)に該当する旨主張する。 弁済の提供として、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告(口頭の提供)をすれば足りるとされるのは、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときである(民法493条ただし書)。 証拠(甲7)及び弁論の全趣旨によれば、本件著作権譲渡契約においては、著作権使用料の支払方法につき、「乙(判決注・被告)は、毎年3・6・9・12月の年4回、各月末日をこの契約に関する会計計算締切日と定め、当日までに前条に定められたところに従って発生した本件著作権の著作権使用料についてこの契約の諸条項に基づいて分配の計算を行い、各締切日後60日以内に計算明細書を甲(判決注・著作権譲渡人)の指定する住所に送付し、著作権使用料を甲(判決注・著作権譲渡人)の指定する銀行口座への振込みをもって支払うものとします。」(甲7の第11条参照)旨約定されていたことが認められるから、本件著作権譲渡契約に基づく未払著作権印税の支払債務の履行につき、債権者の行為を要するものであるということはできない。 また、証拠(乙2ないし4)及び弁論の全趣旨によれば、平成17年当時、原告らと被告との間で、「GLAYに関する原盤等権利の譲渡契約書」(甲21)における譲渡対象の権利に本件楽曲の著作権が含まれるか否かをめぐって、見解の相違があり、原告らと被告との間で交渉が行われていたこと、この交渉の際、被告側から原告ら側に対し、平成17年11月7日ころ、上記契約の譲渡対象には本件楽曲の著作権は含まれない(すなわち、本件楽曲の著作権が被告に帰属するものである)ことの確認がされることを条件とした上で、本件著作権譲渡契約に基づく未払著作権印税等合計5億4429万4332円を速やかに支払う旨の提案がされたことがあったものと認められる。しかしながら、上記提案は、本件著作権譲渡契約とは別個の契約である「GLAYに関する原盤等権利の譲渡契約書」(甲21)の解釈をめぐる紛争が解決されることを、一方的に、本件著作権譲渡契約に基づく未払著作権印税の支払の前提であるとするものであり、この前提が失当であることは明らかであるから、上記提案をもって、「弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をした」ものと認めることはできない。本件全証拠によっても、原告らにおいて、本件譲渡契約に基づく未払著作権印税の受領をあらかじめ拒絶したとの事実を認めることもできない。 よって、被告の上記主張は理由がない。 (2)解除権の濫用(民法1条3項)について 被告は、原告側は、「GLAYに関する原盤等権利の譲渡契約書」(甲21)の第1条の文言が、たまたま、出版権(著作権)をも譲渡の対象とするものであるかのようにも解釈し得るものであることを奇貨として、これが契約当事者間の意思に反することを知りながら、ことさらに、出版権が譲渡対象とされている旨強弁したものであり、このような主張は、原告側において、被告が出版権の譲渡の問題が解決するまで精算金の支払を留保し、結果として債務不履行の状況に陥るであろうことを期待して、あえて行われたものであるから、本件解除は解除権の濫用に当たるものとして許されない旨主張する。 証拠(甲21、乙2ないし4)及び弁論の全趣旨によれば、「GLAYに関する原盤等権利の譲渡契約書」(甲21)の第1条には、「甲(判決注・被告)は、乙(判決注・原告エクストリーム)に対し、平成17年6月1日(以下「基準日」という)付をもって、甲が所有する同年3月末日までに制作し完成された「GLAY」(以下「本アーティスト」という)の日本を含む全世界における、原盤および原版(以下、併せて「原盤等」という。)、本件原盤等に係るすべての権利(複製権、譲渡権、頒布権、上演権、上映権、送信可能化権、著作隣接権、二次使用料請求権、貸与報酬請求権、私的録音録画補償金請求権を含む著作権法上の一切権利、所有権を含む)ならびに、本アーティストに関する商標権、知的財産権、及び商品化権を含む一切の権利(以上について、以下「本件権利」という。)を完全に譲渡し、甲は、本件原盤等の所有権及び本件権利を喪失するものとする。」と記載されていること、平成17年当時、原告らと被告との間で、「GLAYに関する原盤等権利の譲渡契約書」(甲21)における譲渡対象の権利に本件楽曲の著作権が含まれるか否かをめぐって、見解の相違があり、原告らと被告との間で交渉が行われていたこと、この交渉の際、被告は、原告らに対し、上記契約の譲渡対象に本件楽曲の著作権は含まれないことの確認がされることを条件として、本件著作権譲渡契約に基づく未払著作権印税等を支払う意向であり、原告らに対しても、同旨の提案をしたことがあることが認められる。 しかしながら、本件著作権譲渡契約とは別個の契約である「GLAYに関する原盤等権利の譲渡契約書」(甲21)の解釈をめぐる紛争が解決されることを、本件著作権譲渡契約に基づく未払著作権印税の支払の前提であるかのように主張したのは被告であって、原告らではない(原告らが上記紛争が解決されるまで未払著作権印税の受領を拒絶したものではない。)。原告らは、本件著作権譲渡契約において定められた催告及び催告期間(20日間の期間を定めた文書による催告)を経て、本件解除に至ったのであり、被告において、未払著作権印税を支払おうと思えば支払うことができたにもかかわらず、これを支払わなかったために本件解除に至ったにすぎないのであるから、原告らによる本件解除が解除権の濫用として許されないものであるということはできない。 よって、被告の上記主張は理由がない。 (3)消滅時効(労働基準法115条)について ア 被告は、本件専属契約に基づく債権が「賃金」に該当し、原告らは、債権を行使し得るときから2年間これを行わなかったから、上記債権は時効により消滅した(同法115条)旨主張する。 「賃金」とは、名称のいかんを問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう(労働基準法11条)。 イ ところで、本件専属契約における報酬及び就業条件は、下記のとおり定められていた(甲6、15、16)。 記 覚書(甲15) 第1条 甲(判決注・GLAY)は乙(判決注・被告)に対して、下記の規定に基づき報酬を分配し支払うものとする。 @ テレビ、ラジオ、映画等への出演 a)プロモーション又は、宣伝活動とみなされるテレビ、ラジオ、映画等への出演については、乙は甲に対して支払い義務を持たないものとする。 b)レギュラー出演および映画への出演に関しては、第三者より受け取る収入より乙が支出した経費を差し引いた残額の20%を甲に支払う。 A コマーシャルフィルム、コマーシャルミュージックへの出演 a)第三者より受け取る収入より乙が支出した経費を差し引いた残額の20%を甲に支払う。 b)コマーシャルミュージックへの出演の場合、音楽使用料として印税にて受け取るときはBの規定に従う。 B レコード、CD、MD、ビデオ、VHD、LD、への出演 甲と専属契約を締結するレコード会社より直接甲に支払われる。 C 興行、コンサート、イベントへの出演 a)乙が主催および企画、制作した場合には、すべての興行収入より、制作費、宣伝費、手数料等すべての経費を差し引いた利益の20%を甲に支払う。 ただし、収支が赤字の場合、乙は支払い義務を持たない。 また、興行、コンサートがツアー形式の場合は、総合収支計算でこれを算出する。 b)第三者より受け取る収入より乙が支出した経費を差し引いた残額の20%を甲に支払う。 D 出版物、書籍の出版を含む出演 a)プロモーション又は、宣伝活動とみなされる出演については、乙は甲に対して支払い義務を持たないものとする。 b)原稿料に関しては、第三者より受け取る収入より乙が支出した経費を差し引いた残額の20%を甲に支払う。 E 肖像、商標等を使用したキャラクターグッズへの出演 a)興行、コンサートツアー等での販売に限り、下記の分配を適用する。 b)乙が企画、制作、販売等をした場合は、売上の8%を甲に支払う。 c)乙の企画、制作、販売によらないものは、第三者より受け取る収入より乙が支出した経費を差し引いた残額の20%を甲に支払う。 F 作家としての活動(日本音楽著作権協会の規定に基づく) 作家としての著作権使用料の分配に関しては、日本音楽著作権協会の規定に基づき、直接甲に支払うものとする。 G その他上記各号に付帯する一切の芸能活動 上記に規定のない甲の実演家活動における収入については、乙は甲に対して、分配並びに支払い義務はないものとする。 上記のとおり、本件専属契約においては、GLAYメンバーらの活動により得られた利益、収入から経費を控除した残額の一定割合を支払うものとされていること、プロモーションや宣伝活動とみなされる出演については、被告はGLAYメンバーらに対して一切の金銭を支払わないものとされていること、興行、コンサート、イベントへの出演については、その収支が赤字の場合、被告はGLAYメンバーらに対し、金銭の支払義務を負わないものとされていることなどに照らせば、本件専属契約に基づき被告からGLAYメンバーらに対して支払われる金銭は、GLAYメンバーらの活動により得られた経済的利益の分配金の性質を有するものと考えられる。また、本件においては、他に、GLAYメンバーらの活動における、同人らと被告との関係の実情を適確に認定するに足る証拠はない。 以上のとおりであるから、本件専属契約に基づく債権が、GLAYメンバーらの被告に対する労働の対償としての性質を有するもの(賃金)であると認めることはできない。 よって、被告の上記主張は理由がない。 (4)消滅時効(民法174条2号)について ア 被告は、本件専属契約に基づく債権、本件著作権譲渡契約に基づく債権、本件原盤使用許諾契約(甲20)に基づく債権は、いずれも、民法174条2号の定める「演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権」に該当し、債権を行使し得るときから1年間行使しなかったことにより時効消滅した旨主張する。 イ 民法174条は、同条各号に列挙された債権については、極めて短期に決済されるのを通常とし、その弁済につき領収書等の証拠書類も作成しないことが多いことを理由として、1年という短期の消滅時効を定めたものである。 (ア)本件専属契約に基づく債権 本件専属契約に基づく債権は、別紙1ないし4によれば、「アーティスト印税」、「原盤印税」、「著作権印税」のほか、「マネージメント」、「カレンダー05」、「通販−EXPO」、「物販−ARENA」、「物販−COUNTDOWN」、「M−UP PHONE」、「レコード印税」、「ARENA TOUR」、「通販−ARENA」、「COUNTDOWN」、「物販−DOME」、「DOME+大阪公演」、「通販−COUNTDOWN」、「使用許諾料」、「通信販売ロイヤリティー」等に係るものである(甲15、16参照)。 そして、本件専属契約に基づく債権のうち、「契約書」(甲16)に基づくものについては、「甲(判決注・被告)が支払う前条印税は、毎年3月、6月、9月、12月の甲の各計算締切日にて締め切り、当該締切日の月末より90日以内に明細書を添付の上支払うものとする。」と弁済期が定められており(第8条(1))、「覚書」(甲15)に基づくものについては、「乙(判決注・被告)は甲(判決注・GLAYメンバーら)に対して、・・・甲の実演家活動による乙または第三者よりの収入に対する報酬を、3月、6月、9月、12月の各月末日にて締め切り、明細書を添付の上、翌々月末日に甲に支払う。」と定められている(第3条)。 以上によれば、本件専属契約に基づく債権は、その内容や支払期日の約定に照らし、短期に決済されることが予定されている債権とはいえず、債権額の確定に当たっては明細書等を作成することが予定されているものであるといえる。 そうすると、本件専属契約に基づく債権は、民法174条2号が予定する債権とは性質を異にするものであるから、同号所定の債権には該当しないというべきである。 (イ)本件著作権譲渡契約に基づく債権 本件著作権譲渡契約に基づく債権は、別紙1ないし4によれば、「著作権印税」であり、これは著作権譲渡の対価として、作品が使用された場合に支払われる著作権使用料である(甲7の第10条参照)。 また、本件著作権譲渡契約に基づく債権については、「乙(判決注・被告)は、毎年3・6・9・12月の年4回、各月末日をこの契約に関する会計計算締切日と定め、当日までに・・・発生した本件著作権の著作権使用料についてこの契約の諸条項に基づいて分配の計算を行い、各締切日後60日以内に計算明細書を甲(判決注・著作権譲渡人)の指定する住所に送付し、著作権使用料を甲の指定する銀行口座への振込みをもって支払うものとします。」と定められている(甲7の第11条参照)。 以上によれば、そもそも、本件著作権譲渡契約に基づく債権は、その内容に照らし「演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権」には該当しないというべきであるし、その支払期日の約定に照らしても、短期に決済されることが予定されている債権とはいえず、債権額の確定に当たっては明細書等を作成することが予定されているものであるから、民法174条2号が予定する債権とは性質を異にするものであり、同号所定の債権には該当しないというべきである。 (ウ)本件原盤使用許諾契約(甲20)に基づく債権 本件原盤使用許諾契約(甲20)に基づく債権は、別紙1によれば、「原盤印税」であり(別紙2の番号31、番号43、別紙3の番号27、番号39、別紙4の番号30、番号42は、いずれも債権額が0円である。)、特定の原盤を使用して複製・頒布されたレコードについて、商品の売上数量1枚当たり一定の割合の金銭が支払われるものである。 また、本件原盤使用許諾契約(甲20)に基づく債権については、「乙(判決注・被告)は、四半期(3月、6月、9月、および12月各末日締切)毎に印税の発生額を計算し、締切後翌々翌月末に計算書を甲(判決注・原告エクストリーム)が指定する住所に送付の上、当該発生印税額を甲の指定する口座に振込む。」と定められている(第6条(3))。 以上によれば、本件原盤使用許諾契約(甲20)に基づく債権は、その内容や支払期日の約定に照らし、短期に決済されることが予定されている債権とはいえず、債権額の確定に当たっては明細書等を作成することが予定されているものであるといえる。 そうすると、本件原盤使用許諾契約(甲20)に基づく債権は、民法174条2号が予定する債権とは性質を異にするものであるから、同号所定の債権には該当しないというべきである。 (エ)よって、被告の上記主張も理由がない。 (オ)被告が、(3)及び(4)で消滅時効を主張する債権は、いずれも、商事債権として5年の消滅時効に服するものと解される。 そして、上記各債権は、いずれも、本訴が提起された平成19年10月26日において、弁済期から5年を経過していないから、時効により消滅したとはいえない。 (5)相殺について ア 被告は、原告エクストリームに対し、938万6056円の求償債権を有するとし、これをもって、原告エクストリームの本訴請求債権と対当額において相殺する旨主張する。 これに対し、原告エクストリームは上記求償債権の存在を認め、上記相殺を争わない。 イ 充当について 証拠(甲23の6)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、別紙1の番号49ないし54の元本債権に、その債権額に応じて按分して充当すると指定するものと解される。 3 まとめ (1)確認請求について 上記1の(1)、(2)及び2の(1)、(2)によれば、本件著作権譲渡契約は、被告の著作権印税の支払債務の履行遅滞により有効に解除され、これにより、本件楽曲の著作権は、本件著作権譲渡契約における譲渡人(GLAYメンバーら)に帰属した上で、GLAYメンバーらから原告エクストリーム、原告パイロッツ、原告スパイク又は原告ストローに対し、次いで、同原告らから原告ラバーソウルに対し、順次譲渡されたのであるから、原告らの本訴請求のうち、原告らと被告との間で、原告ラバーソウルが本件楽曲の著作権を有することの確認を求める部分は理由がある。 (2)金銭請求について 原告エクストリームの本訴請求は2億3366万4789円(請求額2億4344万9845円から前記1(3)の差額39万9000円及び2(5)の相殺額938万6056円を引いた金額)、原告パイロッツの本訴請求は1億6221万5749円(請求額1億6261万4749円から前記1(3)の差額39万9000円を引いた金額)、原告スパイクの本訴請求は1億3730万0710円(請求額1億3769万9710円から前記1(3)の差額39万9000円を引いた金額)、原告ストローの本訴請求は1億3778万9284円(請求額1億3818万8284円から前記1(3)の差額39万9000円を引いた金額)の限度で理由がある。 なお、別紙1ないし4の各債権のうち、「摘要」欄が「不当利得返還請求」となっている債権については、証拠(甲9の1・2、甲10の1・2、甲11の1・2、甲17、甲20、21)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、本件専属契約が平成17年5月31日をもって終了したこと、本件著作権譲渡契約が、同年11月9日(ただし、楽曲目録記載147の楽曲については、同月15日)をもって解除されたことを認識し、法律上の原因がないことを知りながら、受益したものと認められるから、上記各債権について、訴状送達の日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による民法704条前段所定の利息金の支払義務を負うというべきである。 また、別紙1ないし4の各債権のうち、「摘要」欄が「不当利得返還請求」以外の債権は商事債権であるから、被告は、上記各債権について、訴状送達の日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払義務を負うというべきである。 4 よって、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官 阿部正幸 裁判官 柵木澄子 裁判官 舟橋伸行 (別紙楽曲目録及び別紙1乃至別紙4は省略) |
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