裁判の記録 line
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2017年
(平成29年)
[7月〜12月]
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7月20日 ハイホーへの発信者情報開示請求事件
   東京地裁/判決・請求認容
 アダルトビデオを製作販売する会社(原告)が、インターネット接続サービスを行っている株式会社ハイホー(被告)に対し、氏名不詳者が被告の提供するサービスを経由して原告制作の動画データを動画共有サイトにアップロードしたことにより、原告の公衆送信権を侵害されたとして、プロバイダ責任制限法に基づき、発信者の情報を開示するよう求めた事件。
 被告は、本件発信者動画は原告動画が音楽著作権を侵害していることを示して批評する意図を持ち、適法な引用であると主張したが、裁判所はその主張を認めず、発信者による著作権侵害を認めて、被告に発信者の情報を開示するよう命じた。
判例全文
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7月27日 「メランコリーメリーゴーランドガール」事件
   東京地裁/判決・請求一部却下、一部棄却
 グループ「ドリィムアビリティ」に提供された歌曲「メランコリーメリーゴーランドガール」の作曲者(原告)が、被告作詞者において自らが作曲者でもあると偽って本件歌曲の著作権を被告音楽出版社に譲渡し、被告音楽出版社において被告JASRACに対して本件歌曲に関わる著作権管理を信託し、被告JASRACにおいて本件歌曲の著作権を管理して使用料を徴収し、著作権を侵害されたと主張して、(1)被告らに対し、原告が本件楽曲の著作権を有することの確認、(2)被告JASRACに対し、本件楽曲が使用された場合の使用料徴収の差止め、(3)被告作詞家に対し、謝罪広告の掲載を求めた事件。
 裁判所は、被告音楽出版社の担当者が誤ってJASRACに届け出たにすぎず、訴訟提起を受けて誤りに気付いた被告音楽出版社が届け出を撤回し、現在はデータベースから記載が削除されており、被告作詞家らも著作権が原告にあることを認めていることなどから、(1)の著作権確認請求は利益がないとして却下、(2)(3)の請求も理由がないとして棄却した。
判例全文
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9月5日 上林暁作品集の編集著作権事件B(2)
   知財高裁/判決・申出却下
 平成28年1月27日の控訴棄却判決が確定した「上林暁作品集の編集著作権事件」に対し、参加人が、再審の訴えを提起するとともに、再審開始の決定が確定した場合の訴訟に独立当事者参加を申し出た事件。
 裁判所は、参加人に期間内提出を命じた書面が提出されなかったため再審訴状の却下が確定したことにより、参加人の独立当事者参加の申出は不適法であるとした。
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9月28日 小池一夫氏作品の独占的利用許諾契約事件(2)
   知財高裁/判決・変更、附帯控訴棄却
 「子連れ狼」の原作者である一審被告漫画家から著作物独占的利用権の設定を受けたと主張する一審原告会社が、一審被告らに対して、独占的利用権の侵害に基づく損害賠償金総額約3億円の支払い等を求めた事件の控訴審。被告漫画家が原告会社に作品の利用許諾をしている状況下で、被告漫画家が作品の著作権を複数の一審被告会社らに譲渡するなどして、権利関係が錯綜した。一審東京地裁は、原告の請求を一部を除いて認め、被告漫画家およびその他の被告の一部に総計約2億4千万円の支払いを命じたが、原告及び被告漫画家らが、それぞれの敗訴部分について控訴及び附帯控訴した。
 知財高裁は、請求原因ごとの審議の結果、原告の控訴及び附帯控訴、並びに被告漫画家と被告会社一社の控訴及び附帯控訴に、一部理由ありと認めて原審判決を変更、一審被告らに、一審原告に対し総計約7千万円と35万米ドルの支払いを命じた。
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10月2日 KDDIへの発信者情報開示請求事件J
   東京地裁/判決・請求認容
 ある団体の代表選挙に立候補した原告が、立候補の際の公約文を氏名不詳者によってインターネット上の掲示板「2ちゃんねる」に投稿され著作権等を侵害されたとして、インターネット接続サービス事業者であるKDDI(被告)に対して、プロバイダ責任制限法に基づき、発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は公約文の著作物性を認め、氏名不詳者による公衆送信権侵害を認めて、被告に対して発信者情報を開示するよう命じた。
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10月5日 交通事故相談会のチラシ事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 Aが交通事故被害者の救済等を目的とするNPO法人「交通事故110番」を設立し、全国各地で無料相談会を開催するなどの活動をしていたところ、弁護士(一審原告)が甲府市で相談会向け広告を作成、Aは原告に当該広告の提供を依頼した。後日、同法人に協力する司法書士(一審被告)が、静岡と高崎での相談会向け広告を作成したところ、原告が、その広告頒布行為は原告が著作権を有する広告の著作権及び著作者人格権を侵害するとして、また被告によるアンケート作成・配布行為が、原告の著作権を侵害するとして、賠償金支払いと差し止めを求めて被告を提訴した事件(本訴)及び、一審被告が、原告によるチラシ作成・頒布行為が、被告の著作権・著作者人格権を侵害すると主張して、賠償金支払いと差し止めを求めて提訴した事件(反訴)の控訴審。
 知財高裁は、一審原告の本訴請求及び一審被告の反訴請求はいずれも理由がなく、これらを棄却した一審東京地裁の原判決は相当であるとして、本件各控訴をいずれも棄却した。
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10月11日 JASRAC「包括利用許諾契約」に関する行政訴訟事件
   東京地裁/判決・請求却下(控訴)
 原告が、放送事業者とJASRACとの間の包括的な許諾による利用許諾契約に基づく音楽著作物の使用料の徴収方法に多大な誤りがあり、その誤りの要因は著作権法の条文の誤りにあるなどと主張して、国(被告)に対して、法務大臣を処分行政庁として、法務省、文化庁、公正取引委員会、及びJASRACに対する包括許諾契約に基づく徴収方法の是正処置命令を発することの義務付けを求めるとともに、法務省を処分行政庁として、公正取引委員会及びJASRACに対する包括許諾契約に基づく徴収方法の排除、除去、及び著作権法改正の是正処置命令を発することの義務付けを求めた事件。
 裁判所は、義務付けの訴えは、義務付けを求める行政庁の行為に処分性が認められることを当然の前提とするものと解されるにもかかわらず、本件の訴えを見ると、法務大臣において徴収方法の是正処置命令を発する法令上の根拠規定は認められず、また法務省において徴収方法の排除、除去、著作権法改正の是正処置命令を発する法令上の根拠規定も認められないから、原告の主張するこれらの是正処置命令はいずれも行政処分ということができず、処分性を欠くものであり、本件訴えは不適法であるとして、却下した。
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10月13日 “建築の著作物”創作性事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 建築設計等を目的とする会社(一審原告)が、本件建物「ステラマッカートニー青山」店舗について、自らが共同著作者ないし当該建築を二次的著作物とする原著作物の著作者であるにもかかわらず、一審被告工務店が本件建築の著作物の著作者を被告工務店のみであると表示したことにより、被告工務店が建築の賞を受賞し、また一審被告出版社がそのように表示された書籍を発行したことが、原告の著作者人格権を侵害するとして、(1)被告らに対し、原告が著作者人格権を有することの確認と、慰謝料100万円の支払い、(2)被告工務店に対し、慰謝料200万円の支払いと謝罪広告の掲載、(3)被告出版社に対し、当該書籍の複製・販売の差し止め、廃棄と謝罪広告の掲載を求めた事件。一審東京地裁は原告の請求を棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁は原審の判断を維持し、本件建物外観と原告代表者の提案とで共通するのは、それ自体アイデアにすぎないものであるなどとして、原告代表者が本件建物外観について創作的に関与した点、また提案が本件建物の原著作物にあたる点のいずれをも否定して、控訴を棄却した。
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10月26日 「高円寺ラブサイン」CD事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、追加請求棄却
 作詞作曲家Aに「高円寺ラブサイン」と題する曲等を収録したCDの制作を持ち掛けられて同意し、レコード制作会社(一審被告)に金員を支払ってCD制作を依頼したカラオケクラブ「姉妹」の経営者(一審原告)が、原被告間には当楽曲の著作権を原告に帰属させるという合意があったと主張して、被告に対し、原告が著作権を有することの確認と、被告がAと著作権譲渡契約を締結したためにそれが履行不能になった損害の賠償金580万円余の支払い等を求めて提訴した事件の控訴審。一審東京地裁は、原被告のメモや見積書の記載から原告の主張を認めることは出来ないと判断し、また予備的請求2で主張した不法行為の成立も認めず、請求を棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁も原審の判断を維持し、原告の請求を理由がないとして退け、控訴を棄却した。
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11月14日 商標“MEN’S CLUB”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求認容
 「MEN’S CLUB」の商標を男性ファッション誌に使用している出版社(原告)は、化粧品会社(被告)が男性用化粧品を指定商品として商標権を取得した「MEN’S CLUB」の商標登録無効審判を特許庁に申し立てたが、特許庁が本件商標登録を有効と判断したため、原告は審決取り消しを求めて提訴した。
 知財高裁は、本件商標が、商標法4条1項十五号で商標登録を受けることができないと規定している「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずる恐れがある商標」に該当するかについて、双方商標の類似性・共通性、男性ファッション誌名商標の認知度、双方指定商品の関連性などから総合的に考慮すると、本件商標を指定商品に使用した場合、商品の出所について誤認する恐れがあり、十五号に該当するとして、審決を取り消した。
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11月16日 ビッグローブへの発信者情報開示請求事件E
   東京地裁/判決・請求認容
 「KIRAKIRA COLLECTIONキラ★コレ明日花キララ」と題する映像作品の著作権を有する原告会社が、氏名不詳者がビッグローブ株式会社(被告)の提供するインターネット接続サービスを利用して、ネット上の動画共有サイトに当該作品を複製して作成したデータをアップロードした行為により、原告の公衆送信権が侵害されたとして、プロバイダ責任制限法に基づき、被告が保有する発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は、権利侵害は明白であり、発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると判断して、被告に情報開示を命じた。
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11月16日 消防支援車の取扱説明書等侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 消防支援車T型の製造等を行っている自動車部品製造会社(原告)が、一般競争入札で同17台を落札して製造した被告トノックスおよびその製造に関与した被告マルチデバイスに対し、被告トノックスは不当に安い金額で同車を落札したほか、同車の製造にあたり原告が提供した資料を流用するなどし、また被告らは原告が著作権を有する同車の制御プログラム、タッチパネル画面、取扱説明書及び警告用シールの複製権または翻案権を侵害したと主張して、損害金4億6750万円の支払いを求めた事件。
 争点および原告の請求は多岐にわたったが、裁判所は警告シールについてだけ著作権侵害性を肯定し、他の全ての請求を棄却、被告トノックスに対し、原告への12万7000円の損害賠償金支払いを命じた。
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11月29日 「生命の實相」復刻出版事件D
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 亡Aの創始した宗教団体「生長の家」をめぐる事件。(1)生長の家の宗教的理念に基づき社会厚生事業を行う公益財団法人(原告事業団)は、亡Aの著作物『大調和の神示』(本件著作物)の著作権を有しているが、被告宗教法人「生長の家」による『万物調和六章経』(本件書籍)の出版は、本件著作物の著作権を侵害しているとして、被告宗教法人及びその代表者に、本件書籍の複製、頒布、販売の差し止め及び廃棄と、損害賠償金160万円の支払いを求め、(2)本件著作物の出版権を有する原告出版社が、本件書籍の出版は原告出版社の出版権を侵害するとして、被告らに対して、本件書籍の複製の差し止めと損害賠償金100万円の支払いを求めた事件。本件書籍は巻頭に本件著作物の全文を掲載している。
 裁判所は、本件著作物は、原告事業団が主張するように原告事業団が著作権を有する『生命の實相』の一部をなすものではなく、それに先立つ単独の著作物であるが、その著作権は事業団に譲渡されており、事業団に帰属すると認定した上で、その著作権は原告事業団に譲渡された後も被告宗教法人に無償で使用させることが当初から想定されていて、黙示の使用許諾が成立していたと判断、原告事業団の主張する解約の合理的理由もないとして、原告の請求を棄却した。
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11月29日 宣材写真の無断複製事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 被告タレントの肖像写真(本件宣材写真)の著作権者だと主張する被告タレントがかつて所属していたプロダクション(原告)が、ホテルセンチュリー静岡が頒布したイベント広告用チラシに掲載された被告タレントの写真は本件宣材写真の複製物であるから、本件チラシを作製、頒布したことは原告の著作権を侵害するとして、被告タレントと被告プロダクションに対し、損害賠償金330万円の支払いを求めた事件。
 原告は、本件宣材写真は被告タレントから被告プロダクションへ、被告プロダクションからチラシ制作会社へ渡ったと主張したが、裁判所は、本件チラシに掲載された写真は、制作会社に制作を依頼されたデザイナーがインターネット上のウェブサイトから取得したものであり、原告の主張する写真提供に関する事実関係は存在しないと認定し、原告の請求を棄却した。
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11月30日 ビッグローブへの発信者情報開示請求事件F
   東京地裁/判決・請求認容
 「エスカレートするドしろーと娘235」と題する映像作品の著作権を有する原告会社が、氏名不詳者がビッグローブ株式会社(被告)の提供するインターネット接続サービスを利用して、ネット上の動画共有サイト「FC2動画」に当該作品をアップロードした行為により、原告の公衆送信権が侵害されたとして、プロバイダ責任制限法に基づき、被告が保有する発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は、権利侵害は明白であり、発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると判断して、被告に情報開示を命じた。
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11月30日 包装デザインの改変事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 (1)商品包装デザインを製作したデザイナー(原告)が、原告デザインを改変して商品包装デザインを作成し食品メーカーに納品した軟包装資材製造販売会社(被告)の行為が原告の著作権及び著作者人格権の侵害にあたり、(2)原告絵画を制作した原告が、被告が本件訴訟において当該絵画を複製して作成した文書を証拠として提出した行為が原告の著作権を侵害すると主張して、被告に対して損害賠償金1111万円余の支払いを求めた事件。
 裁判所は、(1)原告は、被告からの依頼に基づいて作成された原告デザインについて、被告による使用および改変を当初から包括的に承諾していたと認め、(2)被告の行為は権利制限規定“裁判手続きにおける複製”の要件を充足するとして、原告の請求を棄却した。
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12月12日 エキサイトへの発信者情報開示請求事件
   東京地裁/判決・請求認容
 ソーシャルゲーム「白猫プロジェクト」の開発運営を行う原告が、原告が著作権を有する当該プロジェクトに関わるイラストを複製して作成したイラスト画像を含む記事を、氏名不詳者がエキサイト株式会社(被告)の提供するインターネット接続サービスを利用してネット上のブログに投稿した行為により、原告の著作権が侵害されたとして、プロバイダ責任制限法に基づき、被告が保有する発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は、権利侵害は明白であり、発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると判断して、被告に情報開示を命じた。
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12月22日 類似“糸はんだ供給機”の不正競争事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 半田フィーダ(糸はんだ供給機)の開発・製造・販売を業とする株式会社(原告)が、被告会社1が製造して被告会社2と共に展示・販売した被告商品について、(1)原告商品を模倣したものであるとして不競法に基づき3300万円の損害賠償金の支払い、(2)美術の著作物である原告商品の複製ないし翻案に当たるとして(1)と同額の賠償金支払いと被告商品の製造・販売・展示の差止め、廃棄、(3)被告らが原告の営業秘密情報を不正に使用したとして(1)と同額の賠償金支払い等を求めた事件。
 裁判所は、被告商品は原告商品の形態模倣に当たるか、原告商品の著作物性、本件情報の営業秘密性について検討し、いずれも認めることはできないとして、請求を棄却した。
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12月28日 “ゴーストライター騒動”公演中止事件(2)
   大阪高裁/判決・一部変更、一部控訴棄却、附帯控訴棄却
 全聾の作曲家として活躍していた音楽家が、実は18年にわたってゴーストライターに作曲させていたことが発覚し、実施中だった全国公演は、中止を余儀なくされた事件をめぐる、全国公演のイベントプロモーターが音楽家に対して、虚偽説明が公になり多額の損害を被ったとして、損害金6131万円余の支払いを求めた本訴と、音楽家がプロモーターに対して、不当利得730万円余の返還請求をした反訴に係る裁判の控訴審。一審大阪地裁は本訴請求に対し音楽家の不法行為を認めて5677万円余の支払いを命じ、反訴請求に対しプロモーターにJASRACに支払うべき使用料相当額410万円余の支払いを命じたが、音楽家が控訴、プロモーターが附帯控訴した。
 大阪高裁は、控訴に基づきプロモーターの損害額を計算し直して、音楽家の支払い額を4238万円余とする本訴判決変更をし、反訴判決は原審判断を維持し附帯控訴を棄却した。
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