裁判の記録 line
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1998年
(平成10年)
[7月〜12月]
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7月2日 鉄道料金ソフトの無断複製事件(刑)
   仙台地裁/起訴
 仙台地検は鉄道料金などを調べるパソコンソフトを無断複製した元東大大学院生を著作権法違反(複製権の侵害)の罪で起訴した。被告は本年4月ごろ、ヴァル研究所が著作権を持つパソコンソフト「駅すぱあと」を複製し、CD―R1枚を15000円前後でインターネットを通じ購入客を募集。100万円以上を売り上げていた。

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7月10日 古賀政男財団名誉毀損事件
   東京地裁/判決・請求認容
 野坂昭如氏の随筆(週刊文春)で名誉を傷つけられたとして「古賀政男音楽文化振興財団」と同財団理事長が野坂昭如と出版社文芸春秋に損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は、野坂氏と文芸春秋社に計130万円を支払うよう命じる判決した。財団がビル建設費として日本音楽著作権協会から融資を受けた金額のうち、11億円が使途不明金や不正使用があったいう野坂の記述に対して、判決はその証拠と取材が不十分としたもの。

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7月10日 「ときめきメモリアル」無断改変事件B
   東京地裁/提訴
 ソフト制作者コナミは、人気ゲームソフト「ときめきメモリアル」の主役キャラクターを無断でアダルトビデオに使用され、著作権侵害とキャラクターの清純なイメージが損なわれたとして、ビデオを制作した男性を相手取り、販売差し止めと1000万円余の損害賠償を求める訴訟を起こした。訴えによると、この男性はゲームの人気キャラクター「藤崎詩織」とそっくりな人物を登場させたアダルトアニメを作成。昨年1月ごろからビデオ市販店に持ち込み、少なくとも900本も販売していたという。

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7月13日 映画「スウィートホーム」二次的使用契約事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却、拡張請求棄却
 映画「スウィートホーム」の監督黒沢清氏が無断ビデオ化と一部改変につき、同映画製作者伊丹プロダクションとビデオ販売の東宝に賠償を求めた控訴審で、東京高裁は、黒沢氏の請求を棄却した一審東京地裁判決を支持、控訴を棄却。判決は監督が契約時にビデオ化を十分認識していたこと、ビデオ化に伴う追加報酬の慣行が業界に無いことを指摘、改変もやむを得ない範囲と判断した。
判例全文
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7月14日 ダイエット広告の肖像権侵害事件
   東京地裁/提訴
 ダイエット用錠剤広告に自己の写真をに使われ、肖像権を侵害されたとして、都内の主婦が通信販売大手(京都市)とダイエット用錠剤販売会社(東京都)を相手取り、400万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。この主婦は、DM会社が本年5月全国に配布したカタログの中のダイエット用錠剤紹介に自分の上半身の写真を無断掲載されただけでなく、自身がこの錠剤によってダイエットに成功したような談話が掲載されていた。主婦は他から知らされるまで写真掲載の事実も知らず、錠剤を使用したこともないという。この広告は錠剤販売元が製作してDM会社に持ち込み、カタログに収録されたものという。

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7月15日 「週刊現代」の二谷友里恵さん名誉毀損事件
   東京地裁/提訴、東京地検/告訴
 元女優二谷友里恵さんは『週刊現代』5月30日号で顔写真を無断掲載されただけでなく、歌手郷ひろみさんとの離婚に関連して「本物のお嬢様とは似て非なる品性を世間に公表」という評論家のコメントの掲載で、名誉を傷つけられたとして、発行元の講談社と評論家を相手に計600万円の損害賠償を求めて提訴した。併せて『週刊現代』の編集人と評論家らに対し、侮辱容疑で東京地検に告訴した。

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7月16日 EN musubi事件
   東京地裁/判決・請求認容(控訴)
 人物の絵柄の使用が許諾期間終了後も継続されたことで、その相当額の支払いを請求した事件。デザイン、イラストや広告関連の企画制作を行う会社が、創作した人物絵の著作権侵害を理由に、その絵柄を弁当等のパッケージに使用していた製造販売会社に損害賠償請求を行った。裁判所は、広告制作会社が有する著作権の侵害を認め「通常使用料相当額の判定に当たり、原告の取引事例を基準に商品の末端小売価格の3%にその販売個数を乗じた額」として、約1730万円および未払い分の年利を含めた支払いを命じた。
判例全文
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7月17日 ベトナム報道批判評論事件(3)
   最高裁(二小)/判決・上告棄却(確定)
 月刊誌『諸君!』掲載の評論で、自著の内容をわい曲して引用され、名誉を傷つけられたとして本多勝一氏が、出版社文芸春秋と執筆者に計2200万の損害賠償と反論文掲載などを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第二小法廷は本多氏の請求を退けた一、二審判決を支持、上告を棄却した。判決理由で全体的には著作部分の引用をほぼ正確に伝えており、違法性はなく、不法行為に当たらないとし、内容の要約としては適切さを欠くが「改竄して引用された」とする本多氏の主張を退けた。
判例全文
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7月17日 「のびのび更年期」事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(確定)
 翻訳書から無断で文章を使用されたとして、翻訳家らが、著者とその著作を出版した海竜社(東京)に賠償を求めた訴訟で、東京地裁は原告側の請求を一部認め、著者に対し約34万円の支払いを命じた。1993年、海竜社から出版した著作には、翻訳家らの米国医師著作の翻訳書「のびのび更年期」(1988年11月)からの多数の無断使用個所があった。海竜社については『のびのび更年期』の出版が広く知られていないことを理由に、損害賠償を認めなかった。
判例全文
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7月17日 印刷用書体ゴナU対新ゴチック体U事件(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却(上告)
 写真植字用ゴチック書体をめぐり、美術の著作物として保護されるものかどうかを(株)写研と(株)モリサワとのあいだで争った裁判の控訴審。高裁は、一審判決を支持し「書体は純粋美術として成立する『書』とは趣を異にし、著作権の成立を認めることは困難である。また、著作権保護の対象とすると言語の著作物の利用に対する重大な支障になる」との判断を示し、控訴請求を斥けた。
判例全文
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7月21日 タカラジェンヌ、追っかけ本事件
   神戸地裁尼崎支部/口答弁論
 宝塚歌劇団14人が、一昨年出版された、自宅略地図、写真、本名、生年月日などを載せた『タカラヅカおっかけマップ』はプライバシーの侵害として、出版元の鹿砦社(西宮市)に昨年3月、出版差し止めなどを求めた訴訟の口頭弁論が開かれ、双方の代理人が和解の意思があることを明らかにした。和解に向けての話し合いは8月5日から始まる。

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7月22日 商標“ALWAYS”侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 
判例全文
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7月23日 読売新聞のドロボー報道事件
   東京地裁/提訴
 読売新聞社は週刊誌『週刊現代』の記事で名誉を傷つけられたとして、出版社講談社と同誌編集長を相手に謝罪広告と 1000万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。訴えによると、7月6日発売『週刊現代』は、参議院記者クラブで読売記者が朝日新聞社のファクスに送られてきた原稿を無断で持ち出しコピーし、関係者に見せたとしたことを「読売新聞記者が朝日の原稿を『ドロボー』した」と報じたのは事実に異なるとしている。

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7月24日 都写真展出版物の複製権侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 東京都写真美術館が開催した「アメリカン・ドキュメンツ−社会の周縁から」という写真展で許諾を得られないまま使用したアメリカ人写真家の写真の使用が、美術の著作物の展示に伴う「小冊子」(著作権法47条)かどうかで争われた。裁判所は、鑑賞用の画集・写真集と同視し得るものとして、「小冊子」という主張を斥けた。また、原告が督促にもかかわらず、返事をしなかったのは、当初のFAXにあるように、掲載の拒否であり、黙示の追認ではないと判断した。さらに、東京都にも監督責任を認めた。
判例全文
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7月24日 『アサバン職業別電話帳』事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 『アサヒ番号簿台東、葛飾、墨田、江戸川区版』なる職業別電話帳を作成して発行した出版社とその代表者が、NTTが、東京35区を五つに分けて、同じく職業別電話帳を発行した行為を、編集著作物の著作権、出版権のにあたるとして訴えた事件。もともとアサバン電話帳は、NTTが発行している職業別電話帳から、台東、葛飾、墨田、江戸川の4区の電話加入者を抽出してアイウエオ順にしたものである。サイバン所は分冊化に創作性ないし、NTTの分冊とは異なるので同一性もないとして、訴えを退けた。
判例全文
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7月28日 小林亜星vs服部克久盗作事件
   東京地裁/提訴
 作曲家小林亜星氏は同じく作曲家服部克久氏の作ったバラエティー番組のエンディングソング『記念樹』(1993)が、自作のブリヂストンのCMソング『どこまでも行こう』(1967)とそっくりで著作権を侵害されたとして、1億円の損害賠償を求めて告訴した。服部氏は、小林氏の3度にわたる質問状にその都度反論しているという。ビートも曲調も違い、明らかに別の曲、盗作であるはずがなく、近く『記念樹』が自身の著作物であることの法的確認を求める訴訟を起こす予定だという。『記念樹』が公表されてから5年を経た今問題にされるのは解せないという服部側の主張のように、日本音楽著作権協会(JASRAC)本部移転にからまる理事交替の騒動に端を発した可能性もあるが、服部氏が理事として抗議に対応しないことへの疑問も一方にあるようである。

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7月28日 デジタル音楽放送の中止請求事件(差し止め請求)
   東京地裁/提訴
 ビクター等大手レコード9社は、「日本デジタル放送サービス」(東京)と「第一興商」(同)がスカイパーフェクTVを通じてほぼ24時間流している音楽番組「スターデジオ」は、視聴者の高音質録音を実質前提としているので著作権違反になるとして、放送の一部差し止めと約1億3500万円の損害賠償を請求した。訴えによると、「スターデジオ」がナレーションを挟まず曲だけをデジタル放送するだけでなく、予定曲目を秒単位で記したプログラムを予め視聴者に提供しているのは、音楽をMDにコピーさせるための音楽配信サービスと同じだと主張。訴えた9社はまずは法的判断を求めるため、各社の人気曲を各1曲指定、それぞれの曲について放送差し止めを要求している。

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7月28日 児童文学無断脚色・上演事件(2)
   仙台高裁/和解
 福島県原町市などが上演した町おこしミュージカルに自分の作品が無断で使われたなどとして、福島市在住の児童文学者と原町市で争われていた事件。福島地裁が劇は児童文学の小説を「参考にした程度で、類似しているが著作権侵害とは言えない」とし請求を棄却したため、児童文学者側が340万円の慰謝料と謝罪広告掲載を求め上告していたもの。仙台高裁は「今後は劇の脚本や印刷物に新開さんの作品名を表示する」、また1989年のミュージカル上演の際、児童文学者から著作権侵害の指摘があった時、「(市側の)不手際でトラブルが発生したことに遺憾の意を表する」などの和解条件を提示、両者はそれを受け入れた。

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7月29日 昭和天皇コラージュ訴訟事件
   富山地裁/口答弁論
 富山県立近代美術館が1993年4月、昭和天皇と人体解剖図などを組み合わせたコラージュ(張り絵)を売却するなどしたのは表現の自由の侵害だとして、作者ら35人が富山県と同県教育長に計440万円の慰謝料支払いや作品の買い戻しなどを求めた訴訟の口頭弁論が行われた。判決は提訴から4年ぶりの12月26日にいいわたされる予定。この訴訟は原告が1986年の「86富山の美術」に上記連作10点を出品、同美術館は図録1千部作製、うち4点を購入したが、展覧会終了後、県議会で2議員が不快と批判、右翼団体なども天皇への不敬と抗議したため作品を非公開にした。さらに1993年4月、美術館は管理運営上の障害と天皇のプライバシー侵害の疑いを理由に作品を売却、図録の残部470冊を焼却処分。それに対して原告側が「作品を鑑賞してもらう権利」や「作品を知る・見る権利」を侵害されたとして、作品の買い戻しと図録の再発行を要求したもの。

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7月31日 ガレージキット事件(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却、附帯控訴棄却
 ライセンスを受け漫画のキャラクターを立体化した手作り模型(ガレージキット)を制作した模型・玩具販売会社と模型原型を制作した元社員との間で争われた裁判の二審。争点は模型原型の著作物性の有無、原型に対する著作者人格権の帰属(法人著作の成否)等。高裁は、一審判決と同様、模型原型の著作物性を認め、雇用契約上の義務に基づき制作された職務上の著作という会社側の主張は否定し、控訴を棄却した。
判例全文
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8月4日 俳句の添削事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却(上告)
 雑誌入選俳句が選者に改変されて掲載されたと、投稿した女性が著作者人格権(同一性保持権)の侵害にあたるとして訴えたが、一審では、芭蕉の時代から添削は俳句の世界の慣行と請求を退けた。二審の東京高裁でも、新聞、雑誌などの俳句欄で添削して掲載するのは一般的な慣習であるとして控訴を棄却した。
判例全文
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8月10日 鉄道料金ソフトの無断複製事件(刑)
   仙台地裁/判決・有罪
 仙台地検が鉄道料金などを調べるパソコンソフトを無断複製したとして7月2日、元東大大学院生を著作権法違反(複製権の侵害)で起訴した事件で、仙台地裁は被告はその豊富な知識を悪用して金もうけをするなど犯行は巧妙かつ悪質、また模倣姓が強く、社会に与えた影響も大きいとして、懲役10月(求刑・懲役10月)、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。ただ被告の反省と大学退学などの社会的制裁を考慮し執行猶予とした。
判例全文
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8月17日 米国映画無断複製・頒布事件(刑)
   徳島地裁/判決・有罪
 
判例全文
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8月19日 『きけわだつみのこえ』改変事件
   東京地裁/提訴
 戦没学生の遺稿集、日本戦没学生記念会−通称わだつみ会編『新版 きけわだつみのこえ』(岩波文庫)が勝手に改変されたとして、遺族二人が出版差し止めと総額1千万円の慰謝料、資料返還などを求めて、同会と岩波書店を告訴した。訴えたのは、わだつみ会元理事長の医師、元会員。訴えによると、元理事長の兄が記した日記や応召中父母にあてた手紙を収録した26ページ分中、原文の表現を変えたり脱落させたりした部分が計271カ所、元会員の兄の場合は日記9ページ分中計81カ所、過去3冊の本にはなかった改変、脱落などがあるという。漢字の開き、置き換え、誤記も含まれる。日本戦没学生記念会事務局長は意図的に内容を改竄することはあり得ないといい、岩波書店側は日本戦没学生記念会と相談のうえ慎重に対応したいと話している。

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8月27日 カラオケ著作権料不払い事件(埼玉県上尾市)
   東京地裁/判決・一部認容、一部棄却(控訴)
 カラオケ使用の著作権料不払いを理由に、日本音楽著作権協会が埼玉県上尾市のカラオケボックス経営者らに音楽の使用禁止などを求めた訴訟で、東京地裁はカラオケでの音楽再生は演奏権侵害、上映権侵害とし、その再生禁止やカラオケ機器の撤去、約550万円の賠償と、使用停止を実行するまで1カ月当たり約18万円の使用料の支払いを命じた。カラオケスナックでの使用をめぐる訴訟の判決では、客による歌唱が著作権侵害の対象とされたが、ボックス内で音楽を再生するだけで違法になると判断した判決は初めて。日本音楽著作権協会によると、著作権料未払いのカラオケボックスは全国で約3700店あるという。支払いや契約拒否で協会が提訴したのは今回のケースをはじめ7件あり、3件は和解。このほか仮処分申請が47件あるという。
判例全文
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8月28日 デジタル音楽放送の中止請求事件
   東京地裁/提訴
 ビクター等大手レコード9社が7月28日、スカイパーフェクTVを通じてほぼ24時間流している音楽番組「スターデジオ」を、著作権違反として放送の一部差し止めと約1億3500万円の損害賠償を請求した事件で、今度は「ソニー・ミュージックエンタテインメント」(東京)など8社が、前回と同じく各社の人気曲を各1曲指定、それぞれの曲について放送差し止めと計約1億6000万円の損害賠償を求めた。この2次提訴で同訴訟に加わっているレコード会社は計17社になった。ただ今回は問題を番組内容に絞るため、日本デジタル放送サービスは訴訟の相手から外された。

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9月3日 中古のゲームソフト販売事件B(アクト)
   大阪地裁/第1回口頭弁論
 中古ゲームソフト販売は著作権法違反として、大手ゲームソフトメーカー六社が、岡山市の販売会社「アクト」らに中古ソフトの販売差し止めなどを求めた訴訟の第一回口頭弁論が3日、大阪地裁で行われ、アクト側は中古ソフトは著作権法で売買を制限される対象ではないとして請求の棄却を求めた。ゲームソフトは著作権法上の映画の著作物で頒布権があるというメーカー側の主張に対し、アクト側はゲームソフトは映画と異なり、頒布権は適用されない。古物営業法でも中古ソフト販売は認められている。中古ソフトの売買を制限するのは独占禁止法にも違反すると主張した。

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9月10日 「女優貞奴」と「春の波涛」事件(3)
   最高裁(一小)/判決・上告棄却
 1985年に放映された日本放送協会(NHK)の大河ドラマやドラマのガイドブックが、自作の伝記「女優貞奴」(新潮社1982)の盗作であるとして、著者がNHK、日本放送出版協会、ドラマの脚本家の三者を相手に、総額1千万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めた訴訟で、最高裁第一小法廷は10日、主題・筋・題材など全体的に見て同一とはいえないとして請求を退けた二審・名古屋高裁判決を支持し、著者の上告を棄却した。 NHKの「春の波涛」は、作家杉本苑子さんの小説「マダム貞奴」「冥府回廊」をドラマ化したとされる。
判例全文
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9月10日 歌謡スナック「シャネル」の営業表示使用禁止事件(3)
   最高裁(一小)/判決・一部破棄自判、一部破棄差戻し、一部上告棄却
 千葉県松戸市のスナックがフランスの化粧品の高級ブランド「シャネル」と同じ名を店名として利用していることに対して、「シャネル」商標管理会社は、その使用をやめるよう求めて告訴し、会社側が名前を使わないよう求めていた裁判で、東京高裁は、このスナックは駅前のビルの中にあり一日に数組の客が来る店で、その名前を使っても、シャネルと関係があると誤解されるとは思えないとして訴えを退けた。そこでシャネル側が上告していたが、最高裁は、逆に営業の規模や内容は違っても、関係があると誤解されるおそれがあるとして、スナックの経営者に名前を使わないよう命じ、損害賠償などの金額については東京高裁に審理を差し戻した。
判例全文
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9月10日 ベアーズ・タオル模倣事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(確定)
 子グマをキャラクターにしたタオルセットを発売していたタオル販売会社(箕面市)が、デザインを模倣され売り上げが減少したとして、大手ギフト卸売会社「シャディ」(松原市)に、約1200万円の損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は両社の商品は人形の形態や商品の構成がほぼ同一、タオルのデザインも類似性が強いと認定、原告の商品が模倣されたと推定、不正競争防止法でシャディに約200万円の支払いを命じた。
判例全文
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9月11日 AV女優の肖像権侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 プライベートで撮ったヌード写真が雑誌に掲載され、肖像権が侵害されたとして、人気アダルトビデオ女優と所属事務所が、写真を撮ったライターと雑誌の出版元を相手取り、損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は、原告は自分がAV女優であることをライターに明かしておること、600枚を超える膨大な裸体写真を撮らせて売春に応じておることを指摘し、金銭目当てに撮影に応じたことがうかがわれるとして、肖像権侵害の主張を退けた。

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9月21日 小林亜星vs服部克久盗作事件(反訴)
   東京地裁/提訴
 作曲家服部克久氏は、「どこまでも行こう」を盗作されたとして作曲家小林亜星氏から1億円の損害賠償請求を起こされていたことに対して、著作権侵害とされた「記念樹」が自作であることの確認を求めて反訴した。服部氏の主張は、楽曲の同一性はメロディーの類似性だけでなく、曲の全体的な雰囲気や形式、和声、リズムなどを総合的に考慮して決定されるべきだというもの。その点で「記念樹」は「どこまでも行こう」とは、リズムもテンポも違い全く別の曲だとしている。服部側は、小林氏の損害賠償請求訴訟で小林氏の請求が否定された後の同種の紛争再燃を起こさないための提訴だと言明。小林氏の損害賠償訴訟は21日、東京地裁で第一回口頭弁論が開かれ、双方の訴えが確認された。

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9月22日 銃マークの無断使用事件
   東京地裁/提訴
 イタリアの銃メーカー、ファブリカ・ダルミ・ピエトロ・ベレッタ社と同社とマークなどの独占使用契約を結んでいるモデルガンメーカー、ウエスタンアームス社(東京)は、日本のモデルガンメーカー5社にマークとブランド名を無断使用してモデルガンを作ったとして、計約1億1千万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。訴えによると、問題とされたベレッタ社製短銃M92Fに似せて造られたモデルガンは、プラスチック弾を発射できるエアソフトガンと呼ばれる製品。モデルガンメーカー、東京マルイ(東京)など5社は、握りや銃身部分にベレッタ社のマークのほかBERETTAのブランド表示を無断使用して、1990年以降、1900円から25000円で約100万丁製造したという。 ベレッタ社は、ブランドイメージへのただ乗り、ウエスタンアームス社は、マークの独占使用権の侵害を提訴の理由としている。今後、銃のデザインの無断使用についての新たな提訴も準備中という。

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9月24日 『きけわだつみのこえ』改変事件
   東京地裁/第1回口頭弁論
 戦没学生の遺稿集『新版 きけわだつみのこえ』(岩波文庫)が勝手に原文を改変されたとして8月19日、わだつみ会元理事長の医師、元会員2人が、同会と出版元の岩波書店を相手に本の出版差し止めと総額1千万円の慰謝料、資料の返還などを求めて起こした訴訟の第一回口頭弁論が行われた。被告のわだつみ会側は、改ざんと指摘された大部分が漢字を仮名にしたり句読点を補充するなど著作権法で許された範囲の改訂で、『新版』の編集にあたっても可能な限り遺稿の原文に即した内容を目指したとする答弁書を提出。一方、原告側代理人も、次回口頭弁論までに、整理して漢字を仮名に直した部分に関する請求は撤回する意向を表明。閉廷後わだつみ会現理事長は、新版の編集にあたり原告側に原資料の提供を何度も求めたのに断られたこと、利用できたのはかつて原告側が編集にかかわった出版物など二次資料だけだったと反論。さらに提供を拒まれた原告側の兄の遺稿が訴訟で初めて提出されたことで、『旧版』の時に原告自身によって改変された部分も判明したこと。その改変部分は今後、原本に忠実に戻すと言明した。

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9月25日 古文単語の語呂合わせ侵害事件
   東京地裁/提訴
 受験生向けに考案した古文単語の語呂合わせをまねされ、著作権を侵害されたとして、古文単語集の著作者である大学受験予備校教師が、別の単語集の著作者を相手取り、約30万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。訴えた静岡市内の予備校教師が考案したのは、古語の「むつかし」という単語から現代語訳「いやだ」を連想させるのに、【「むつかし」い問題「いやだ」】という「語呂合わせ」で覚えさすもの。授業で生徒の反応を見ながら改良を加え、1989年以降2種類の単語集を出版。総計20万部に及んでいるという。 ところが昨年、別の予備校教師が同じく語呂合わせを利用した単語集を出版したが、酷似した語呂合わせも収録されたという。語呂合わせも著作権保護の対象になるかと報じられている。

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9月28日 「チューリップ」「コヒノボリ」等著作権確認・使用料請求事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 「チューリップ」「コヒノボリ」の作詞について、著作者近藤宮子によってその確認が争われ、平成5年3月12日、作詞者が近藤宮子であることは東京高裁で確定したが、著作権は懸賞募集時に教育音楽協会に譲渡され、近藤宮子には著作者人格権のみあるとされた。これに同情した同協会員その他が近藤宮子のために各種運動をし、近藤に著作権料を支払うよう確認書をかかせ、JASRACや教育音楽協会に、使用料の返還を求めた。裁判所は、確認書作成の諸事情を総合して、請求を棄却した。
判例全文
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9月28日 「湘南文学」誌掲載写真著作権帰属事件
   横浜地裁/判決・請求棄却、反訴請求棄却
 文芸誌「湘南文学」掲載写真が無断転載されたとして、その写真の著作権帰属をめぐり争われた。文芸誌の制作、販売を委託されていた出版社・かまくら春秋社が、発行を依頼した神奈川歯科大学を相手に訴えた。当該写真の撮影者はプロのカメラマンであった。原告の「カメラマンとの合意書を示して、著作権譲渡を受けた」という主張には、裁判所は「譲渡の実体を伴うとは認められない」との判断を示した。被告の「高額な撮影料を支払い、カメラマンとの黙示の合意により著作権を譲り受けた」という反訴の主張には、「合意があったことを認めるに足りる証拠はない」と斥けた。両請求には理由がないと棄却した。
判例全文
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9月29日 「フライデー」のパンチラ掲載事件
   東京地裁/提訴
 フジテレビは、同社が放送したバラエティー番組の録画写真を、『フライデー』が無断で掲載して著作権を侵害したとして、同誌と発行元の講談社に、2千万円の損害賠償と謝罪広告を求めて提訴した。訴えによると、今年5月7日放送のフジテレビのバラエティー番組の中で、椅子に腰掛けた女性ゲストの下着が見えるシーンが流れた。『フライデー』はこのシーンの録画写真を使用して、5月29日号で「14秒間パンチラを見たか」との見出しで記事にした。フジテレビ側は、今回の録画写真の利用は著作権法第41条の「時事の事件の報道」には当たらないと抗議したが、フライデー側は、 録画放送なのに不適切な映像をチェックできなかったという「時事の事件の報道」と主張したので、提訴に踏み切ったという。フジテレビ側は、これを機会にこれまであいまいにされてきた報道引用の基準判断を第三者機関にゆだねたと話している。

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9月29日 米国の教授父娘射殺報道事件(週刊文春)
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 週刊文春側に150万円の賠償命令。米カリフォルニア大サンディエゴ校医学部教授と長女が1996年5月、サンディエゴ市内の自宅前で射殺された事件をめぐり、同教授未亡人が告別式でマスコミに抗議の手紙を渡そうとした写真2枚を掲載した『週刊文春』の発行元文芸春秋社に損害賠償を求めた訴訟で、見出しや写真が原告の名誉を傷つけ、肖像権を侵害したとして、同社に150万円の支払いを命じる判決がおりた。判決は、記事の見出しなどについては、原告が真犯人ではないかという一般読者の誤解を招きかねないと指摘。また写真については、意に反して撮影されたもので、悲しみにうちひしがれた姿を公開されることは望まないとした。文芸春秋社側は、一連の報道は公平で、告別式での未亡人の姿は参列者の目にさらされていて、肖像権侵害にあたらないとし、ただちに控訴すると述べている。
判例全文
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10月9日 駅前記念建造物の改変事件
   千葉地裁佐倉支部/提訴
 JR岐阜駅前に建設中のモニュメントに採用されたデザインが無断改変、著作権侵害されたとして、同県出身の造形作家(千葉県佐倉市)は、岐阜県知事に約5千万円の損害賠償と新聞への謝罪広告掲載を求める訴えを起こした。訴えによると、岐阜県は昨年10月、モニュメント設置を含めた岐阜駅南口広場整備工事の全体イメージを発表。造形作家はこれを受けて県庁を訪れ、自らの創作したモニュメントのデザインを担当者らに提案。本年1月、担当者から案が採用されたとの連絡を受けたが、契約は県との間では結ばれず、同県が委託契約した東京都内の設計会社がそのデザインをもとに設計を進めることに決まった。だが2月になって、モニュメントの最終デザインが、色や使う素材などで当初の案と異なることが判明したため、様々な部分が無断で改変されていると、同県や同社に再三訴えたが聞き入れられなかった。一方2月までに、同社から岐阜駅南口意匠代金として約180万円が造形作家に支払われている事実があり、岐阜の自然をイメージしたデザインが歪められたとし提訴したもの。岐阜県側は契約を結んだのは設計会社。造形作家との間には契約上問題はなく、予算上最初のデザインから変化するのはよくあることと話している。

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10月14日 タカラジェンヌ、追っかけ本事件
   神戸地裁尼崎支部/和解
 宝塚歌劇団14人が、自宅地図などを載せた「追っかけ本」の出版はプライバシーの侵害だとして、1987年3月出版元の鹿砦社(西宮市)に出版差し止めと総額2800万円の損害賠償を求めた訴訟は、問題の本を絶版にしたうえ、今後、団員に関する情報は慎重に扱うことなどを条件に和解が成立。原告側は賠償請求は放棄した。和解条項には、承諾を得ないで原告の住所や本名などの情報を掲載した書籍を出版しないとの項目も盛り込まれた。和解後、同歌劇団理事長は、出版について将来的な拘束力があり、判決による勝訴以上のものを得たと評価する一方、鹿砦社側はこの和解で今後の出版活動が制約されるものではなく、芸能人のプライバシーと、出版差し止めの危険性を問う意味で今後も同様の本の出版を継続したいといっている。

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10月19日 「ジャイアンツ」商標事件(3)
   最高裁(二小)/決定・上告棄却(確定)
 「ジャイアンツ」の商標を、清涼飲料などに使うのは、巨人軍の商品と混同される恐れがあることを理由に、商標登録を拒否された名古屋の業者が、その取り消しを求めた訴訟で、最高裁第二小法廷は、業者側の上告受理申し立てを退ける決定をした。これによって第一審と東京高裁判決が確定した。この業者は1984年、清涼飲料などの商標として「ジャイアンツ」を出願、巨人軍側が異議を申し立て、特許庁も登録を拒否。業者はこれを不服として提訴したが、東京高裁は今年4月、「ジャイアンツ」の商標を使えば、消費者は巨人軍の商品と考える恐れがあるとして、訴えを退けていた。

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10月22日 漫画原稿返却拒否事件
   東京地裁/判決・一部認容、一部棄却(確定)
 7年ほど前出版した漫画の書籍を他社から出そうとして、漫画家が原稿の返却を求めたが拒絶された。そのため返却の仮処分の申請をし、認容された事件について、漫画家が改めて出版社の不法行為と債務不履行、復刻によって得られる予定だった印税相当額、慰謝料等を請求した。裁判所は、出版権設定契約でなく、許諾契約であったにせよ、出版継続中は、続行中は原稿を返却しないのが出版界の商慣習という被告側の主張を退け、原告の逸失利益を認めた。ただ慰謝料の請求は認めなかった。
判例全文
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10月26日 恐竜イラスト事件
   東京地裁/判決・一部認容、一部棄却(控訴)
 肉食恐竜ティラノサウルスのイラストを、カタログに掲載するとき、原作者の意図に反した改変が行なわれ、同一性保持権が侵害されたかどうかで争われた。とくに原告である著作者がどの程度改変を許可していたか、また、原作イラストの跡を残さず、改変とはいえないというのが、被告側の主張であった。裁判所は、著作者の同意を越えたものであり、改変であることに変わらないとして、同一性保持権の侵害にあたると認めた。しかし、イラスト管理業者とその代理店のみの過失として、カタログを依頼したオートバイ部品製造販売業者と広告代理店には注意義務違反はないと判断した。
判例全文
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10月29日 樹脂バンドひし目模様事件
   福岡地裁小倉支部/判決・請求棄却
 段ボールなどの梱包に使われる樹脂バンドにある微細なひし目模様で、樹脂バンド製造大手「積水樹脂」(大阪市)が北九州市の商社を相手取り、不正競争防止法違反に当たるとして類似製品の輸入販売の差し止めなどを求めていた請求は、模様自体独創的とはいえないとして棄却された。この模様はバンドの強度や段ボールに巻き付ける際の摩擦抵抗を増やすために表裏両面に付けられたもので、商社側は多くのメーカーが樹脂バンドに同様の模様を使っていると反論していた。

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10月29日 雑誌記事盗用本事件
   東京地裁/判決・一部認容、一部棄却(一部控訴、一部確定)
 人気アイドル・グループの生活ぶりなどを書いた本をめぐり、雑誌のインタビュー記事を盗用されたとして、雑誌発行4社とアイドル・グループが鹿砦社(西宮市)と同社社長に出版差し止めなどを求めた訴訟は、同書の発行禁止と損害賠償を命じる判決がくだった。 判決では、原告側の雑誌、『an・an』(マガジンハウス)や『JUNON』(主婦と生活社)など4誌が91年7月から95年3月にかけ掲載した記事から無断使用された計68カ所は、著作権侵害と認定された。損害賠償額は雑誌発行4社に計466万円。アイドル・グループの賠償請求は退けられた。鹿砦社側は人気の秘密を検証した著作で、雑誌のインタビューとは性格が異なる別の著作と反論していた。
判例全文
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10月29日 テレビゲーム「NEO・GEO」商標事件
   東京地裁/判決・請求棄却(確定)
 
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10月30日 「血液型と性格」要約引用事件
   東京地裁/判決・請求棄却(確定)
 『小さな悪魔の背中の窪み一血液型・病気・恋愛の真実一』(新潮社)が、『「血液型と性格」の社会史』(河出書房新社)の複製権、翻案権、同一性保持権、氏名表示権を侵害した (氏名表示権侵害は,被告書籍第1刷についてのみ)として、出版等差止と損害賠償の支払及び謝罪広告の掲載を求めた事件。裁判所は、被告が要約改変して使用したと認めはしたものの、適法引用内として、原告の請求を棄却した。
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10月30日 無断複製アダルトビデオ頒布事件
   東京地裁/判決・請求認容
 フランチャイズ方式のビデオ販売店が、無断で複製したアダルトビデオであることを知りながら販売したことに対して、その頒布、所持の差止めと破棄を求めた。販売店は、フランチャイジーが他から仕入れたもので、責任はないと主張した。裁判所はまず、無断複製したものであることが容易に判断できると指摘し、状況から被告が各店舗に大量に送った事実を認め、破棄させる必要があるとして、請求を認めた。
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10月30日 ELLEが商標権裁判A
   東京地裁/判決・請求認容(控訴)
 
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11月2日 偽ブランド品大量輸入事件A(刑)
   福岡地裁/判決・有罪
 海外の人気ブランドの偽物商品を輸入しようとして関税法違反の罪に問われた大阪の会社社長に、商標権を侵害し、わが国の国際的な信用を危うくさせ、輸入場所を変えるなど計画的かつ巧妙な犯行として、二つの実刑判決がいいわたされた。被告は平成7年7月から10月にかけ、香港で作らせた海外人気ブランドの偽物商品合わせて6万点余りを、福岡空港など国内3か所の空港から15回にわたって輸入しようとしたほか、平成9年10月には偽物の衣類合わせて3万点余りを名古屋港から3回にわたって輸入しようとしていた。被告は、福岡空港での事件の後、覚せい剤取締法違反の罪で確定判決を受けたにもかかわらず、さらに名古屋港での事件を起こしていたため、福岡地裁は刑を一つにまとめず、空港での罪について懲役2年、名古屋港での罪については1年2か月とする二つの実刑判決になったもの。

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11月2日 巨人軍によるホームページ閉鎖請求事件
   東京地裁/和解
 一部の美容外科医で構成されている日本美容外科医師会が、巨人選手の名前を無断使用した懸賞募集をホームページに掲載したのに対し、読売巨人軍がホームページの閉鎖を求めて仮処分を申請していた事件で、和解が成立した。ホームページの閉鎖と同医師会が巨人軍に迷惑をかけたことを認めるという内容のものである。同医師会の有志は今年8月から、巨人軍ルーキーを激励する形の名称を使い、同ルーキーの本塁打数などを当てる懸賞をホームページに掲載した。これに対し読売巨人軍は氏名権・肖像権は選手にとってかけがえのないもとし、仮処分申請した。9月に同地裁で審尋が開かれたが、最終的に同医師会側は、法的な問題になるとは知らなかったとして和解に応じた。

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11月4日 ケーキ商標登録名の権利乱用事件
   東京地裁/決定・仮処分認容
 ミルクレープの名を商標登録した洋菓子業製造業者ドゥリエール(港区)が、その名を使った菓子の販売禁止を要求するのは権利の乱用という、同じ業者ピー・エムファクトリー(港区)の申し立てを認め、その要求を禁じる仮処分を決定した。決定の理由は、ミルクレープは極薄のクレープを幾重にも重ね、間にクリームを挟んだケーキで、1980年代以降、日本で普通名称として広く認識されていたとする判断を示したため。ピー・エムファクトリーはドゥリエールから独立した会社で、社員の移籍などをめぐってトラブルが起き、ドゥリエールはピー・エムファクトリーに洋菓子の販売差し止めを求めて訴訟を起こすなど対立を続けていた。差し止め訴訟は97年暮に和解したが、98年1月に特許庁がミルクレープの商標登録を認め、ドゥリエールが全国の洋菓子店にミルクレープの名称を使わないよう求めたので争いが再燃し、今回の申し立てとなった経緯がある。

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11月9日 トンガ国王合成写真事件
   大阪地裁/証拠保全申請
 トンガ国王が女性と腕を組んでいる合成写真が勝手に合成され、観光用の広告などに使われた事件で、国王の肖像権が侵害されたとするトンガ政府の申し立てに基づき、広告代理店(大阪)に対して証拠を保全する手続きが取られ、裁判官が検証したが、問題の写真のネガなどはすべて廃棄されていた。
 トンガ政府によると、この代理店の依頼で1996年6月国王は宮殿での写真撮影に応じた。だが代理店はこれをもとに女性と腕を組んでいる合成写真を勝手に作り、観光用の雑誌の広告などに使い、国王の肖像権を侵害したとして合成写真に関する証拠保全を申し立てたという。トンガ政府は、国王は妃とでさえ人前で腕を組むようなことはありえない、このような合成写真でトンガの文化が傷つけられたと怒っている。一方、広告代理店は合成写真を作ることは当時口頭で説明。両国の友好のための広告だけに、このような結果になったのは残念といっている。

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11月10日 SMAP追っかけ本事件A(3)
   最高裁(三小)/決定・上告棄却
 人気タレントグループのメンバーが、自宅の住所や電話番号などが記載される予定だった「おっかけ本」について、出版・販売の差し止めを不服として、発行元の鹿砦社が起こした上告が棄却され一審・東京地裁の判決が確定した。一、二審の判決によると、鹿砦社は1996年9月、SMAPなど4の人気タレント・グループ18人に無断で、実家や自宅の所在地とその地図、周辺の写真などを掲載した「ジャニーズおっかけマップ」を出版した。そのうえで、同年12月にはさらに、より詳細な自宅の住所や電話番号などのデータを加えた「ジャニーズ・ゴールド・マップ」の出版を計画した。一審の東京地裁は、表現・出版の自由を考慮しても、平穏な私生活を送るタレントの人格的利益を優先して保護すべきであると判断して、人気タレントの訴えに基づき、出版・販売の差し止めを判決していた。それに不満な鹿砦社側の控訴を東京高裁が棄却したため、さらに上告していたもの。
判例全文
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11月16日 広告主vs制作プロダクション事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 受験指導の四谷大塚の通信教育システムを、新聞雑誌その他に広告するに際し、広告代理店からその製作を依頼されたプロダクションが、その後自社製作の広告が、無断で利用されているとして、四谷大塚を訴えた。裁判所は、使用広告に著作物性ありとして、謝罪広告以外の請求は認めた。
判例全文
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11月18日 パチンコ店、ピアノ演奏差し止め請求事件
   大阪地裁/提訴
 日本音楽著作権協会(JASRAC)は、住専の大口融資先の不動産会社が経営する大阪市のパチンコ店が著作権料を支払わず、ピアノの生演奏のほか、カラオケ教室を開いたとして、同社に店での演奏中止などを求める仮処分をに申し立てた。このパチンコ店は1995年9月開店以来、サービスとして休憩所で電子ピアノの生演奏をしたり、女性客向けのカラオケ教室を開催していた。JASRACは生演奏などは営利目的と判断して、著作権料の支払いを求めたが、不動産会社が拒否したので訴えたもの。未払いの著作権料は約360万円に上るという。同社はすでに前月から演奏をやめ、請求された著作権料の分割払いを検討中といっている。

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11月18日 教師用指導書、錦絵無断掲載事件
   大阪地裁/提訴
 江戸時代から明治時代の多色刷り木版画・錦絵の1万点所蔵しているコレクターが、教師用指導書に20年間無断使用されたとして、教科書出版社大阪書籍を相手に、約2千2百万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。コレクターによると、出版社などが自分の所蔵品を出版物や放送に使う場合、一定の使用料を受け取って許可している。大阪書籍に対しては、江戸末期から明治末期までの錦絵計8点を、小学校6年の社会科教科書への掲載に限って許可してきたという。ところが同社は、1978年度から今年度にかけて、教科書から毎年発行する教師用指導書に転載して、許諾外の写真使用を続けていたことが判明。同社に使用料の支払いを求めたが、「契約には関連出版物への使用も含まれるとして大半の支払いを拒否されたため提訴した。大阪書籍は事前交渉の過程での双方の主張が食い違うと話している。

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11月20日 バレエ振り付け、無断上演事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 フランス人舞踊家が自分の振りつけのバレエを無断で上演されたと訴えた裁判で、公演主催者が上演主体であると認定、著作権の侵害が認められ、損害賠償を命じた。この裁判は、フランス人舞踊家がマーラーの交響曲に合わせて振り付けた『アダージェット』というバレエを、ロシア・バレエ団の日本公演で無断で上演され、著作権を侵害されたとして、日本の二つの公演主催者に損害賠償を求めたもの。公演主催者側は、無断上演の責任はダンサーにあり、主催者に責任はないと反論していまた。判決では、観客の証言などから舞踊家の振り付けた踊り方だったとして著作権を侵害したことを認めた上、ダンサーだけでなく、公演の主催者にも内容を変更させなかった責任があるとして、二つの社に合わせて180万円余りの支払いを命じた。
判例全文
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11月26日 コーヒー・チェーンの写真無断複製事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(確定)
 コーヒーの栽培と生産をテーマにするプロの写真家が、フランチャイズ方式のコーヒー店ドトールコーヒーに、ディスプレー用に貸し出した写真を無断で複製され、著作権を侵害されたとして、同社に損害賠償を求めた訴訟で、同社に604万円の支払いを命じる判決がいいわたされた。判決によると、同社は1994年10月ごろ、プロ写真家の作品を二子玉川店の店内装飾用に使用したいと申し入れ、貸出書に1回の使用料10万円を払うことで合意をみたにもかかわらず、同社は借り受けたフィルムを使い、1997年11月ごろまでの間、同店だけでなく104店のディスプレイに利用したもの。
判例全文
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11月26日 在宅介護に関する書籍7種の著作権帰属事件(2)
   東京高裁/判決・変更(上告)
 夫婦関係にあった時代、夫が経営者で、夫妻が編集に関わった在宅介護書籍について、離婚後の著作権の帰属で争われた事件。一審の東京地裁は、1点づつ妻の貢献度を検討して、妻に帰属を認めたものについては一部発行頒布の禁止、廃棄を命じたが、すでに頒布の終わっているものについては、話し合いによって問題を解決し一般に販売することを勧めた。それに不満の元妻が、敗訴部分を不服として控訴したが、訴えの変更、事実認定の変更などはありはしたものの、大筋において一審の判断を認めた。
判例全文
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11月27日 歴史研究書籍著作権侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 日露戦争後にロシア将校らが起こした詐欺事件など20世紀初頭の歴史を取り上げた茨城大名誉教授の著書に対して、オーストラリア在住の歴史研究家がテレビ企画用に書いた原稿を無断使用され、著作権を侵害されたとして、教授と発行元の講談社に賠償などを求めた訴訟で、発行禁止と計80万円の支払いを命じる判決をいいわたされた。判決によると、詐欺事件を扱った記述のうち、事件の裁判記録や欧州の新聞を翻訳して紹介した部分などが原告の原稿とほぼ同一と判断(本文574頁のうち7、8頁分。教授と原告は、NHKが1991年4月に放映した歴史番組の企画段階で日露戦争や、問題の詐欺事件を共同研究しており、原稿はその際に歴史研究家から教授に渡されていた。もっとも訴訟では教授側は、原資料から翻訳したところ、結果的に同じ文になったと反論していた。判決では歴史研究家の意訳や補足部分まで利用されていると認定している。
判例全文
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11月27日 ギタリスト、名誉棄損事件
   大阪地裁/判決・請求棄却
 ギタリストのクロード・チアリ氏が、『週刊文春』でパソコンネットワークの独裁者などと書かれ名誉を傷つけられたとして、文芸春秋と記者に謝罪広告の掲載と3千万円の慰謝料を求めた訴訟で、請求を棄却する判決が下りた。判決によると、ギタリストはパソコン通信ネットPC−VAN(NEC系)内で情報交換の場を主宰。その「チアリ コンピュータワールド」に掲載された会員作成のフリーソフトが無断で販売されたことで、ソフトの著作権をめぐる議論が起きていた。この議論を『週刊文春』は1994年8月、パソコンネットワークの独裁者という記事を掲載。「フリーソフトには著作権がないと決めつけた」や「言論弾圧」などの表現で、ギタリストを批判した。判決は文春の記事は、原告の社会的評価を低下させる表現だが、その批判の前提とした事実は重要な部分で真実と認められるし、著名なギタリストの言動の報道目的は公益にかなうと判断している。
判例全文
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11月27日 プログラム使用許諾事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 コンピュータ・ソフトウエア会社が、雇用促進事業団の経営する小山職業訓練短期大学の使用するコンピュータ・プログラムをめぐって、その使用料と使用期間の終了によるその返還を求めて訴えた。裁判所は、書証から雇用促進事業団との契約はなく、また、そのプログラムを他から購入したものと認め、その請求を棄却した。
判例全文
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11月27日 ELLEが商標権裁判B
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴・取下)
 仏女性誌『ELLE』発行のアシェット社と、「ELLE」ブランドのバッグなどの製造、販売の日本の2社が、「ELLE CLUB」の商標権を持つ会社などを相手取り、不正競争防止法に基づく商標の使用差し止めなどを求めた訴訟の判決がでた。判決によれば、被告はELLEの著名性に便乗したとし、類似商標の使用禁止を命じた。
判例全文
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11月30日 ジャル、JAL使用禁止事件
   東京地裁/判決・請求認容
 埼玉の保険代理業ジャル合資会社が広告などに「JAL保険」や「ジャル保険」などと表示して営業していることに対し、日本航空が不正競争防止法の不正競争にあたるとして「ジャル」という表示の使用差し止めと140万円余りの損害賠償を求めた訴訟の判決がいいわたされた。判決は、日本航空が1951年の創立当初から『JAL』の表示を使い、その表示が全国的にも著名であることを認め、被告会社が営業のためにこうした表示を使うことは不正競争にあたるとし、その表示の使用差し止めと約55万円の損害賠償などを命じている。一昨年2月に設立された被告合資会社は、電話帳の広告にJAL保険としたほか、宣伝用看板や営業用自動車などに「ジャル」の表示を使い、原告の営業利益を侵害したと判断。 

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11月30日 虚偽事実の加筆事件
   奈良地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 スポーツ新聞に寄稿した自分の連載記事の一部に、過去に売春歴があるとの虚偽の事実を書き加えて掲載され、人格権を侵害されたとして、奈良市の女性フリーライターが、スポーツ新聞の発行元、産経新聞社に慰謝料など1100万円の賠償と謝罪広告の掲載を求めた訴訟の判決で、被告に80万円の支払いを命じた。判決によると、女性は昨年2月から3月まで6回にわたり、「サンケイスポーツ」に、金融会社勤務をやめパチプロになった体験を連載した。原告が読者の興味をそそるための新聞社側の加筆を認めていたが、過去に売春歴があるとまで書き加えたのは明確な人格権と名誉の侵害とした。産経新聞社側は、昨年4月、女性の抗議におわびの記事を掲載したが、損害賠償については5回目までの加筆には抗議しなかったため、原告が著作者人格権を放棄したとして、それには応じなかった。
判例全文
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11月30日 SMAP追っかけ本事件B
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 すでに鹿砦社が1996年9月に発行した、人気タレントグループSMAPのメンバーら「ジャニーズ事務所」に所属するタレントの住所などを掲載した「おっかけ本」は、最高裁まで争われ、販売が差し止められているが、今回のは同じく鹿砦社から1997年10月に出版された「ジャニーズおっかけマップ・スペシャル」が対象。やはり、SMAPのメンバーらがプライバシーを侵害されたとして、販売の差し止めなどを求めた訴訟。いち早く同年12月に、神戸地裁尼崎支部で販売禁止の仮処分を受けている。今回の判決の特徴は、「職業柄、一般人よりプライバシーの範囲が狭く解される場合があるとしても、けん騒状態の中に身を置くことが多い芸能人は、住居が知られることを望むはずがない」と同書の出版・販売禁止に加え、将来にわたって同種の出版物を出版・販売しないよう命じたことである。タイトルも決まらず出版予定もまだない書籍について、内容を指定して出版差し止めを命じる判決は珍しい。
判例全文
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11月30日 版画写真の著作物事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 版画雑誌用に作成された版画の写真、作家のポートレイト、記事を、編集に携わった外部者が『版画事典』に使用したことについて、著作権侵害として訴えられた事件。裁判所は、版画写真は平面的な作品の複製物であって創作性はないとしたが、作家のポートレイトには著作権があるとした。
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11月30日 パチンコ攻略本事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 『九星パチンコ術で大連チャン』という攻略本の記載によって、パチンコやギャンブルについて自分が著した書籍、雑誌の記述を複製または翻案されたとする著作者が、この攻略本の著者及び出版社を相手に、著作権侵害を理由として、印刷等の差止と損害賠償を求めた事案である。
 原告、被告双方の書籍とも、パチンコ機種名の画数に九星占術を応用して勝てる年や日、相性の強い人を明らかにするものであった。裁判所は、合わせて7か所の記述を対比して検証し、すべてが「表現形式上の特徴に類似性があるとはいえない」とした。そして、九星占術と姓名学を融合させパチンコに応用したことは、いずれもアイディアそのものであり、アイディアにおいて類似があったとしても著作権を侵害することにはならないと、その請求を棄却した。
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12月1日 「フライデー」のパンチラ掲載事件
   東京地裁/和解
 フジテレビが写真週刊誌「フライデー」を相手取り、放映したバラエティ番組の録画写真を無断掲載に、著作権侵害として発行元の講談社に総額2千万円の損害賠償と謝罪広告を求めた訴訟(9月29日)が和解成立。和解条項は講談社側が著作権侵害を認め、和解金として100万円を支払うことになった。問題とされたのは、フライデー側が主張するように、「14秒間パンチラを見たか」として載せた写真が、著作権法第41条の「時事の事件の報道」に当たるかどうかであった。フジテレビ側は、今回の和解で報道利用や引用の度を超えてテレビ画像の複写写真が雑誌などに掲載されている現状に一定のルールが引けたと評価している。

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12月9日 パソコン用プログラム無断複製・頒布事件(刑)
   山口地裁下関支部/判決・有罪
 
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12月16日 昭和天皇コラージュ訴訟事件
   富山地裁/判決・請求一部認容、一部棄却、一部却下(控訴)
 昭和天皇と人体解剖図などを組み合わせたコラージュを、富山県議2人と右翼団体などが不快と批判し、抗議したため、版画を所蔵していた富山県立近代美術館が作者に無断で売却、版画を載せた図録を焼却したのは、憲法の表現の自由に基づく作品を鑑賞する権利の侵害として、作者や美術評論家ら35人が、富山県にコラージュの買い戻し、400万円余りの損害賠償などを求めた訴訟の判決が、提訴してから4年ぶりにいい渡された。表現の自由をめぐり美術館の所蔵作品の取り扱いについての司法判断は初めて。判決では、県の条例に基づいく研究目的の作品鑑賞の申請を拒否する正当な理由はないとして、23万円の損害賠償を命じた。また天皇の肖像権については、象徴としての地位からプライバシー権、肖像権の保証は制約を受けるとし、このコラージュが昭和天皇の肖像権を侵害していないとの判断を示した。ただコラージュの買い戻しは、認めなかったため、著作者を含む28人は、名古屋高裁に控訴することを決めた。
判例全文
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12月21日 テレビゲーム「NEO・GEO」事件(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却
 テレビゲーム機のネオ、NEOという名前を付するのは、「新しい」という意味をつけたに過ぎないという主張に、同じテレビゲーム機NEO・GEOが不正競争防止法の違反になると訴えたのに対して、一審はそれを認め、損害賠償を命じた。それを不服とした被告は控訴したが、裁判所は訴えを棄却した。
判例全文
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12月25日 ゴルフクラブ販売差し止め事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 米国のゴルフ用品メーカー「キャラウェイ・ゴルフ・カンパニー」が「正規の流通ルート以外から自社商標の入ったクラブヘッドを輸入販売され、商標権を侵害された」などとして、スポーツ用品輸入販売会社(群馬県高崎市)を相手取り、販売差し止めと損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁はキャラウェイ社の請求を認めた。裁判長は「キャラウェイ社は完成品のゴルフクラブのみを販売、輸出し、部品を単体では販売していない。販売されたクラブヘッドは同社の意思に基づいて流通させた真正の商品とはいえない」と述べ、「ミニボックス」側にクラブヘッドなどの販売差し止めと約4200万円の支払いを命じた。
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12月28日 昭和天皇コラージュ訴訟事件(2)
   名古屋高裁金沢支部/控訴
 富山県立近代美術館が昭和天皇をあしらった版画を非公開にしたため、「作品を鑑賞する権利を奪われた」として美術評論家や版画の作者らが損害賠償を求めていた裁判で、原告側は一審の判決を不服として名古屋高裁金沢支部に控訴した。この問題は昭和61年、富山県立近代美術館が右翼団体の抗議を受けたあと版画作品を非公開とし、その後に売却していたもの。これに対し、原告側35人は県に400万円余りの損害賠償や作品の買い戻しを求めていた。一審の富山地裁は「県の条例に基づいて研究目的で作品を鑑賞する許可を申請した11人については、これを拒否する正当な理由がない」と述べて違法性を認め、県に23万円の損害賠償を命じた。しかし、版画作品の買い戻しを認めなかったため、原告側のうち版画の作者を含む28人が控訴したもの。

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