裁判の記録 line
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2025年
(令和7年)
[7月〜10月]
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7月9日 文学館の“解説パネル”事件B(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 徳冨蘆花記念文学館の元職員である一審原告が群馬県渋川市に対し、文学館に展示されている本件解説文及び本件脚本の著作権は原告に帰属していると主張、展示などは著作権侵害にあたるとして、100万円の支払いを求めた事件の控訴審。一審東京地裁は、いずれの請求も棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁は、原審同様に解説文などは職務著作にあたり、著作権は文学館に帰属すると判示。原告が追加請求した不当利得の返還請求も棄却した。
 3件の前訴で原告が主張した、解説文などを含む図録が編集著作物か否かの争点と本事件との関係のほか、「法人等が自己の名義の下に公表するもの」という職務著作の要件を満たさないという主張も、著作物作成時に法人等の名義で公表が予定されていればよく実際に公表されたか否かに関わらないと解される、などとして退けた。
判例全文
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7月9日 インスタグラムの動画著作権侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 インスタグラムに投稿された原告の動画を被告が無断でスクリーンショットして静止画として自己のインスタグラムに投稿したのは著作権侵害、著作者人格権侵害だなどとして、235万円余の損害賠償を請求。
 裁判所は原告動画の著作物性を認め、本件の静止画には動画の素材写真に施したエフェクトなどが文章で映し出されており、本件動画の本質を感得できると判断、また原告の氏名表示もなかったとして、47万円余の支払いを命じた。その中で、発信者開示の費用として原告が請求した120万円余のうち、30万円も認められた。
判例全文
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7月17日 「生長の家」著作物の出版権確認請求事件
   大阪地裁/判決・請求却下
 原告である公益財団法人・生長の家社会事業団が、宗教法人・生長の家の根本教義を説いた「生命の實相」の著作権が原告にあることを、同宗教法人の退職者である被告との間で確認することを求めた事件。原告は、被告が同宗教法人の創始者から原告に譲渡された権利は印税受け取りについてのみで著作権すべてではないと広報誌で主張している、として訴えた。原告はこれまでも、同宗教法人などと「生命の實相」の権利関係を民事訴訟で争っていたが、原告に著作権があることの確認を求める請求は行われていなかった。
 裁判所は「確認の利益」は、原告被告間で原告の権利や法律上の地位に危険や不安が生じていて、これを除去するために必要かつ適切な場合だとしたうえで、被告は本件の著作権が被告にあると主張しているわけではなく、原告と争う関係にもないため、訴えは不適法で却下を免れないとした。加えて、原告が問題にしている被告の行為は「著作権によって直接規律できるわけではない言論行為」だとした。
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7月18日 日本美術院同人の著作権侵害不存在確認事件
   東京地裁/判決・請求却下
 日本美術院の院展に出品した作品が、先行する院展に出された別の同人の作品に酷似しているなどとして日本美術院の理事を解任された画家(原告)が、先行作品を描いた画家(被告)に対して著作権侵害にもとづく損害賠償請求権の不存在の確認を求めた事件。原告は著作者人格権(同一性保持権)侵害についても請求権の不存在の確認を求めていた。
 被告が裁判冒頭で著作権侵害にもとづく損害賠償を求めないと述べたことを踏まえ、裁判所は当事者間に紛争が存在し原告の権利または法律上の地位の不安、危険が存在しているとはいえず「即時確定の利益」があるとは認められないとして原告の請求を却下した。
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7月25日 “マークゴンザレス”ブランドのライセンシー事件B
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 米国在住スケートボーダーの氏名や彼の描いたイラストなどの商標権や著作権をめぐる事件。衣類等小売り業者である原告がスケートボーダーのブランド管理会社とマスターライセンシー契約を締結して製造・販売する各種関連製品に対し、締結前に商標登録した衣料品販売会社である被告が、著作権や商標権侵害を理由とした差止めなどの権利行使を表明した。これに対し原告は製品製造などの差止め請求権がないことなどの確認を本事件で求め、さらに、被告が原告が製造販売を委託した別の会社に製品の製造差止めなどを求める警告書を送ったことは、虚偽の事実の告知で不正競争にあたるとして1100万円余の損害賠償を求めた。
 東京地裁は、被告会社の主張は権利の濫用にあたると判示し、原告の債務不存在を認めたほか、不正競争について損害賠償110万円の支払いを命じた。謝罪広告などは認めなかった。
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7月28日 シャーペンのデザイン類似事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 「ペンシル楔」という名の木軸のシャープペンシルを製作、販売している一審原告が、木軸のシャープペンシルを製作、販売している一審被告に対し、被告が被告商品を販売する行為は原告の周知な商品等表示と同一又は類似な商品等表示を使用する不正競争行為であり、原告商品の著作権を侵害するとして、被告商品の譲渡等の差止め又は廃棄と、損害賠償金643万円余の支払いを求めた事件の控訴審。一審甲府地裁は原告の請求をいずれも棄却したが、原告が控訴した。
 尚、被告は原告代表者に対して、原告代表者によるブログ記事掲載等により被告の名誉が毀損されたとして損害賠償を求める訴訟を提起し、本裁判第一審はこの事件も本件に併合して審理しこの請求を棄却したが、被告は控訴しなかった。
 知財高裁は、原審同様、商品等表示性(不競法)、著作物性のいずれも否定して、控訴を棄却した。
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7月28日 ウェブサイト“エロコミックハンター”事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 いずれも漫画家である一審原告ら3人が、一審被告が原告らの漫画作品を被告の管理運営するサイトに無断で掲載し、原告らの著作権を侵害したとして、原告1に463万円余、原告2に203万円余、原告3に235万円余の支払いを請求した事件の控訴審。一審東京地裁は被告に対し、原告1、2、3にそれぞれ71万円余、25万円余、34万円余の支払いを命じたが、被告が控訴した。
 控訴審では、被告が控訴理由書を提出せず当審で控訴理由を主張しなかった上、原告らは控訴も附帯控訴もしなかったので、知財高裁は被告の控訴を棄却した。
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7月30日 KDDIへの発信者情報開示命令異議申立事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 原告KDDIが、東京地裁の、アダルト動画制作販売会社である被告が原告への発信者情報開示命令の申し立てに下した決定の取り消しを求めた事件の控訴審。一審東京地裁は被告の申し立てには理由があるから本件決定は相当であると認可したが原告が判決の取り消しを求めて控訴した。
 知財高裁は、原判決は相当であり、本控訴には理由がないとして控訴を棄却した。
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7月30日 KDDIへの発信者情報開示命令異議申立事件B(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 上記7月30日裁判と同日の、控訴人、被控訴人、裁判官を同じくする事件。知財高裁は原判決は相当であり、本控訴には理由がないとして控訴を棄却した。
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7月31日 「聖教新聞」の写真無断投稿事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 宗教法人「創価学会」(一審原告)が、その会員である一審被告に対し、被告がツイッターに、原告が出版する「聖教新聞」掲載の複数写真を複製し掲載した投稿を行ったことが、原告の著作権を侵害するとして、419万円余の損害賠償金を請求した事件の控訴審。一審東京地裁は、引用の抗弁を認めて原告の請求を棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁は、原審同様に引用の抗弁を認め、また原審では判断されていなかった付随対象著作物の利用の成否についても、原告の主張する令和2年改正前の規程適用を否定して、控訴を棄却した。
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8月6日 DMCAに基づくURL回復請求事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 複数のウェブサイトを経営する原告が、被告グーグルの検索サイトの検索結果に原告サイトのURLを表示させない措置が取られたことから、被告に対し、米国デジタルミレニアム法(DMCA)に基づき、上記措置を撤回して同URLの回復を求めた事件。
 裁判の管轄権、原被告間前訴裁判の蒸し返しか否か、削除URLの回復請求権が争われたが、裁判所は、我が国裁判所には管轄権がないという、また前訴の蒸し返しであるという被告の主張を退けたが、DMCAに基づく原告のURL回復請求は根拠がなく失当であるとして、原告の請求を棄却した。
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8月7日 シナリオ制作契約事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、附帯控訴棄却
 本件本訴事件は、小説等の執筆業者である一審原告が、弁理士であり同人誌発行者である一審被告が原告の制作したシナリオを漫画にした行為は、原告の著作権及び著作者人格権侵害であるとして、計400万円余の支払いを求めたもの。
 本件反訴事件は、原告による本訴の提起が不当訴訟に当たるとして不法行為に基づく賠償金250万円、及び原告による投稿が被告に対する名誉棄損等に当たるとして慰謝料等220万円の支払いを求めたものである。
 一審東京地裁は、原告は本件シナリオの漫画化及びその書籍化を許諾していたとして、本訴請求を認めず、反訴請求のうち名誉棄損の一部を認めて、原告に11万円の支払いを命じ、その余の請求を棄却したが、原被告双方が、敗訴部分を不満として控訴した。
 知財高裁は、原審の判断を維持し、双方の控訴を棄却した。
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8月21日 X投稿写真引用事件
   東京地裁/判決・請求認容
 インスタグラムに投稿した自撮り写真をX(旧ツイッター)に無断でポストされ、名誉権のほか、著作権や著作者人格権を侵害されたとして、原告が被告であるXを運営する米国法人に削除を求めた事件。裁判所は4件のポストのうち、原告がカルト宗教の信者であるなどとした3件で名誉権侵害を認めた。残りの1件の「カップを口元に寄せた思考中の表情」を自撮りした写真については、原告の表情を子細に表現できるよう構図などを工夫した点で創作性があるとして著作物と認定し、原告の複製権および公衆送信権が侵害されたとした。引用だとした被告の主張は、画像が大きく表示され、氏名表示もないことなどから退けた。
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8月22日 アニメ「セーラームーン」コスプレ事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 TikTokのショート動画で18万人のフォロワーがいる女性原告が、セーラームーンのコスプレ動画などを無断でインスタグラムに投稿されて著作権や名誉感情を侵害されたとして、投稿した被告に150万円余の損害賠償を求めた事件。
 裁判所は、TikTokのシェア機能を使ったからといって直ちに動画の著作権が制限されるわけではないとして原告の請求を認めた。一方で、容姿や年齢のほか、動画が加工されていることなどに言及した被告の投稿に原告が不快感などを覚えることは十分に推認できるとしながらも、誹謗中傷ないし人格攻撃と明確に理解できる記載はなく、原告が事務所に所属してフォロワーを募り、投稿のシェアやコメント自体を禁止してもいないなどとして、名誉感情の侵害を認めなかった。その結果、損害賠償は42万円余とされた。
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8月28日 ユーチューブ動画のパブリシティ権侵害事件(2)
   知財高裁/判決・変更
 ホストクラブの店頭モニターで動画を無断放映されパブリシティ権などを侵害されたとして、ユーチューバーとそのマネジメント会社がホストクラブに損害賠償を求めた事件の控訴審。
 一審東京地裁の口頭弁論にホストクラブ側が出頭せずユーチューバー側の請求が全部認容されたため、ホストクラブが控訴した。動画は、ユーチューバーが本件ホストクラブを体験するなかで感想などを述べるなどしている2本。
 知財高裁は、本件ユーチューバーのチャンネル登録者が84万人で顧客吸引力をもつとして一審同様、マネジメント会社に譲渡されているパブリシティ権の侵害を認めた。損害賠償額は、動画がYouTubeへの投稿の二次利用であることなどから減額された。
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8月28日 漫画無断配信取締役責任追及事件(2)
   知財高裁/判決・変更
 大量の漫画を許諾なくウェブサイトに掲載・無料公開された漫画家3人が、そのサイトで広告料を得ていた米国のレッド社による公衆送信権侵害だとして、同社代表に会社法などに基づいて1320万円の損害賠償をもとめた事件の控訴審。一審東京地裁は、レッド社または同社代表が掲載行為をしたとは認められないなどとして、いずれの請求を棄却したため漫画家らが控訴した。
 知財高裁は、本件サイトが同人誌に収録された漫画など1万作品超を無料公開し、同一の広告代理店による広告が掲載されていたと認定。レッド社は本件サイトの開設・運営に深く関与していたと推認できる、広告料の送金が本件サイト以外にあるとすれば、同社代表はそれを主張・立証できるはずだが何ら行っていないため、本件掲載はレッド社が自らか第三者と共謀して行ったものと認められると判示した。
 そのうえで、同社代表が掲載行為を防止する措置を取らなかったのは取締役の任務懈怠もしくは重大な過失であり、会社法により損害賠償義務を負うとした。サイトから漫画がダウンロードできないため、損害賠償額は減額された。
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9月4日 オプテージへの発信者情報開示命令異議申立事件D
   大阪地裁/判決・請求棄却
 原告オプテージが、大阪地裁の、映像ソフト制作販売会社である被告が原告への発信者情報開示命令の申し立てに下した決定の取り消しを求めた事件。裁判所は、被告の申し立てには理由があるとして、大阪地裁による本件決定を認可した。
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9月5日 ソフトバンクへの発信者情報開示命令異議申立事件
   東京地裁/判決・請求認容
 原告ソフトバンクが、東京地裁の、アダルト動画制作販売会社である被告が原告への発信者情報開示命令の申し立てに下した決定の取り消しを求めた事件。裁判所は、ビットトレントを使用した氏名不詳者の公衆送信権侵害を認め、被告が氏名不詳者に対して損害賠償請求をする予定であることから、被告が本訴訟係属中に取り下げた部分を除いて発信者情報の開示を原告に命じた。
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9月11日 投資信託をめぐる名誉棄損事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 投資詐欺の疑いがあった会社の援助で危機管理プラットフォーム制作会社を設立した原告が、「警視庁に自首したら」などと原告を指してXに投稿した被告を、名誉棄損や著作者人格権侵害などで訴えた事件。
 裁判所は、被告が投資詐欺の被害者で、原告も投資詐欺に関わっている可能性があると認識して投稿を始めたと認定。投稿が公共の利害に関するもので公益目的ではあるが、原告が投資詐欺に関わっているという裏付けられないことを真実と信じる相当な理由は十分でないため、30万円の慰謝料の支払いを命じた。原告が著作権をもつウェブサイトのスクリーンショットを添付した投稿など、著作権や肖像権などに関する損害賠償はいずれも認めなかった。
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9月26日 金沢ケーブルへの発信者情報開示命令異議申立事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 
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10月8日 “関ケ原検定事業”事件B(2)
   知財高裁/判決・控訴一部却下、一部棄却
 
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10月16日 オプテージへの発信者情報開示命令異議申立事件E
   大阪地裁/判決・請求棄却
 
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10月16日 You Tube動画の著作権等侵害通知事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 
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