判例全文 line
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【事件名】投資信託をめぐる名誉棄損事件
【年月日】令和7年9月11日
 大阪地裁 令和6年(ワ)第7131号 損害賠償等請求事件
 (口頭弁論終結の日 令和7年7月18日)

判決
原告 G
被告 I
同訴訟代理人弁護士 大塚芳典
同 大塚太雄


主文
1 被告は、原告に対し、30万円及びこれに対する令和6年1月31日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
2 本件訴えのうち、被告に対し、今後、X(旧Twitter)やその他インターネット上で、原告に対する誹謗中傷・名誉毀損及び脅迫、著作権侵害、肖像権侵害行為を行わないことを誓約することを求める訴えを却下する。
3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用はこれを50分し、その49を原告の、その余を被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
1 被告は、原告に対し、800万円及びこれに対する令和5年3月14日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
2 被告は、原告に対し、X(旧Twitter)上において、1年間又は原告が後日指定した日のいずれか早い日まで、プロフィールの一番上に投稿を固定する形で、別紙7「謝罪広告目録」記載の謝罪広告を掲載せよ。
3 被告は、原告に対し、X(旧Twitter)上に掲載している、すべての誹謗中傷・名誉毀損及び脅迫、著作権侵害並びに肖像権侵害に該当する投稿(別紙1ないし5の各目録の投稿日時欄記載の日時に投稿された投稿内容欄に記載のもの)を削除せよ。
4 被告は、今後、X(旧Twitter)やその他インターネット上で、原告に対する誹謗中傷・名誉毀損及び脅迫、著作権侵害、肖像権侵害行為を行わないことを誓約せよ。
5 被告は、今後、原告及びその周辺への接触、加害行為、接近行為、監視行為等を間接的直接的問わず行わないことを誓約せよ。
第2 事案の概要
 本判決において用いる呼称は、本文中において定義するほか、別紙8「呼称目録」記載のとおりである。
1 請求の法的根拠
(1)被告が、SNSサイトであるX(旧Twitter。以下「X」という。)において、別紙1「本件投稿目録1」記載の各投稿(以下、別紙1ないし6記載の各投稿を、別紙ごとにまとめて指すときには、「本件投稿〇」(〇は1ないし6)といい、そのうち、本件投稿1ないし5をまとめて「本件各投稿」と、本件投稿1ないし6をまとめて「本件アカウント投稿」という。また、個々の投稿を指すときは、別紙1ないし6の「番号」欄記載の番号を用いて、「番号〇」と特定する。なお、別紙1ないし6の「番号」欄記載の番号が同じものは、同一の投稿であることを意味する。)をしたことで、原告の名誉が毀損されたことを理由とする@民法709条(不法行為)に基づく230万円(名誉棄損による精神的苦痛に対する慰謝料180万円、原告の社会的評価の低下に伴う損害50万円)の損害賠償請求権及びこれに対する不法行為日である令和5年3月14日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金請求権(請求第1項に対応)、A民法723条に基づく別紙7「謝罪広告目録」記載の謝罪広告の掲載請求権(請求第2項に対応)、B人格権に基づく本件投稿1の削除請求権(請求第3項に対応)、C人格権に基づく誹謗中傷・名誉棄損行為の予防的差止請求権(請求第4項に対応)
(2)被告が、Xにおいて、本件投稿2の各投稿をし、原告を脅迫したことを理由とする@民法709条(不法行為)に基づく270万円(精神的苦痛に対する慰謝料180万円、脅迫行為に対応するための諸費用相当額90万円)の損害賠償請求権及びこれに対する不法行為日である令和5年3月14日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金請求権(請求第1項に対応)、A人格権に基づく別紙7「謝罪広告目録」記載の謝罪広告の掲載請求権(請求第2項に対応)、B人格権に基づく本件投稿2の削除請求権(請求第3項に対応)、C人格権に基づく脅迫の予防的差止請求権(請求第4項に対応)、D人格権に基づく接近等の予防的差止請求権(請求第5項に対応)
(3)被告が、Xにおいて、本件投稿3の各投稿をし、以て、原告の著作物である、原告が代表取締役であるZ社のウェブサイトの画像(スクリーンショッ卜)を原告に無断で転載したことが著作権侵害に該当し、原告に精神的苦痛を与えたことを理由とする@民法709条(不法行為)に基づく100万円の損害賠償請求権及びこれに対する不法行為日である令和5年3月14日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金請求権(請求第1項に対応)、A著作者人格権に基づく別紙7「謝罪広告目録」記載の謝罪広告の掲載請求権(請求第2項に対応)、B著作権に基づく本件投稿3の削除請求権(請求第3項に対応)、C著作権に基づく著作権侵害の予防的差止請求権(請求第4項に対応)
(4)被告が、Xにおいて、本件投稿4の各投稿をし、以て、原告が著作権を有する文書(以下「甲5文書」という。)を原告に無断で転載したことが原告の著作者人格権である公表権を侵害するとともに、原告が公開を望まない機密情報であったにもかかわらずこれを故意に流出させたものでもあり、原告に精神的苦痛を与えたことを理由とする@主位的に公表権侵害、予備的に機密情報流出による、民法709条(不法行為)に基づく100万円の損害賠償請求権及びこれに対する不法行為日である令和5年3月14日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金請求権(請求第1項に対応)、A著作者人格権に基づく別紙7「謝罪広告目録」記載の謝罪広告の掲載請求権(請求第2項に対応)、B主位的に著作者人格権、予備的に人格権に基づく本件投稿4の削除請求権(請求第3項に対応)、C著作者人格権に基づく著作者人格権侵害の予防的差止請求権(請求第4項に対応)
(5)被告が、Xにおいて、本件投稿5の各投稿を、原告の顔写真を添付して行ったことで、原告の肖像権を侵害し、原告に精神的苦痛を与えたことを理由とする@民法709条(不法行為)に基づく100万円の損害賠償請求権及びこれに対する不法行為日である令和5年3月14日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金請求権(請求第1項に対応)、A肖像権に基づく別紙7「謝罪広告目録」記載の謝罪広告の掲載請求権(請求第2項に対応)、B肖像権に基づく本件投稿5の削除請求権(請求第3項に対応)、C肖像権に基づく肖像権侵害行為の予防的差止請求権(請求第4項に対応)
2 前提事実(争いのない事実、掲記の証拠(枝番含む。以下同じ)及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)
(1)当事者
ア 原告は、危機管理プラットフォームの作成・運営・運用管理等を目的とするZ社の代表取締役である。なお、原告は、行政書士としての資格を保有している。(乙1、55)
イ 被告は、「■などのハンドルネームを用い、■のIDで、X上で投稿をしていた自然人である(甲1ないし7、25。以下、同IDに係る被告のアカウントを「本件アカウント」という。)。
(2)本件アカウント投稿
 被告は、インターネット上で主に短文を投稿することが可能なSNSサービスであるX上で、別紙1ないし6各記載のとおり、本件アカウント投稿をした。本件投稿5に添付された画像に映っている人物は、いずれも原告である。
 なお、番号1ないし32の各投稿は、令和6年6月22日までに、番号29、33及び35の各投稿は、令和7年2月2日までに、それぞれ、少なくとも別紙1ないし6の「閲覧回数」欄記載の回数だけ閲覧された。(甲1ないし4、6、23、29、37、38。原告が各投稿をスクリーンショットで保存した時点までの閲覧回数であるが、その具体的時期は不明である。)
(3)メタモグループ
 上記(2)の投稿で言及されているメタモ社は、MT社及びME社とグループ企業を形成しており(以下「メタモグループ」という。)、いずれも有価証券の運用、投資、売買及び保有等を目的とする会社である。MT社は令和2年6月24日に設立された会社で、A(本件アカウント投稿でも言及されている人物)及びBが代表取締役、Cが代表権のない取締役の地位に(乙3)、ME社は、令和3年3月2日に設立された会社で、Aが代表取締役、Bが代表権のない取締役の地位に(乙4)、メタモ社は、平成29年3月14日に設立された会社で、Aが代表取締役、B及びCが代表権のない取締役の地位にあった(乙2)。
 A及びCは、Z社の代表権のない取締役にも就任していたが、Aは、令和4年3月3日に退任し、Cは、令和5年2月17日に辞任した。
(4)違法な投資勧誘を理由とするメタモ社などへの責任追及
 メタモグループでは、MT社について、米国企業であるPT社に買収されることで株価が値上がりする、メタモ社について、株式上場の予定があるといった説明をし、各会社の株式の購入を勧誘したもので、これが虚偽の説明による違法な投資勧誘であったとの疑惑(以下、これらをあわせて「MT案件」という。)が浮上し、令和2年以降、MT社、メタモ社ほか、役員個人であるAなどに対して損害賠償の支払を求める民事訴訟が複数提起された(乙24、26〜28)。本件アカウント投稿が投資詐欺などとして言及しているのは、MT案件についてである。
 原告は、これら民事訴訟において、被告の立場となったことはなく、MT案件への関与を一貫して否定している。
(5)本件アカウント投稿の削除
 被告は、遅くとも令和7年4月24日までに、本件アカウントを削除し、これに伴い、本件アカウント投稿はすべて削除された(乙51。なお、証拠説明書では、令和4年4月24日付けのスクリーンショットで、本件アカウントが削除されたことを立証すると記載されているが、本件各投稿がなされた時期及び乙51の記載内容に鑑みれば、令和7年4月24日付けとの誤記であると認められる。)。
3 争点
(1)本件投稿1関係
ア 本件投稿1が原告の名誉を毀損するものであるか(争点A1)
イ 被告が、本件投稿1を投稿したことが名誉毀損に該当したとして、その違法性を阻却し、又は故意若しくは過失を否定すべき事由が認められるか(争点A2)
ウ 原告の損害(本件投稿1関係)(争点A3)
エ 謝罪広告の掲載の必要性(争点A4)
オ 人格権に基づく投稿削除請求権の有無(争点A5)
力 人格権に基づく名誉棄損行為等の予防的差止請求の可否(争点A6)
(2)本件投稿2関係
ア 本件投稿2が、原告を脅迫するものであるか(争点B1)
イ 原告の損害(本件投稿2関係)(争点B2)
ウ 謝罪広告の掲載の必要性(争点B3)
工 人格権に基づく投稿削除請求権の有無(争点B4)
才 人格権に基づく脅迫の予防的差止請求の可否(争点B5)
力 人格権に基づく接触等の予防的差止請求の可否(争点B6)
(3)本件投稿3関係
ア 本件投稿3にスクリーンショットが添付されたウェブサイトの著作物性(争点C1)
イ 原告が、本件投稿3にスクリーンショットが添付されたウェブサイトの著作権者であるか(争点C2)
ウ 被告が、本件投稿3をした際、Z社のウェブサイトのスクリーンショッ卜を添付したことが、著作権法上、許容される引用に該当するか(争点C3)
工 原告が著作権侵害を主張することが権利の濫用に該当するか(ウェブサイト関係)(争点C4)
才 原告の損害(本件投稿3関係)(争点C5)
カ 謝罪広告の掲載の必要性(争点C6)
キ 著作権に基づく投稿削除請求権の有無(争点C7)
ク 著作権に基づく著作権侵害の予防的差止請求の可否(争点C8)
(4)本件投稿4関係
ア 甲5文書に著作物性が認められるか(争点D1)
イ 原告が、甲5文書の著作者であるか(争点D2)
ウ 本件投稿4が、原告の甲5文書に関する公表権を侵害するものであるか(争点D3)
工 原告が著作者人格権侵害を主張することが権利の濫用に該当するか(甲5文書関係)(争点D4)
才 被告が、本件投稿4を投稿したことが、原告が公開を望まない機密情報を故意に流出させたもので、不法行為であると認められるか(争点D5)
カ 原告の損害(本件投稿4関係)(争点D6)
キ 謝罪広告の掲載の必要性(争点D7)
ク 著作者人格権又は人格権に基づく投稿削除請求権の有無(争点D8)
ケ 著作者人格権に基づく著作者人格権侵害の予防的差止請求の可否(争点D9)
(5)本件投稿5関係
ア 本件投稿5が、原告の肖像権を侵害するものであるか(争点E1)
イ 原告の損害(本件投稿5関係)(争点E2)
ウ 謝罪広告の掲載の必要性(争点E3)
エ 肖像権に基づく投稿削除請求権の有無(争点E4)
オ 肖像権に基づく肖像権侵害行為の予防的差止請求の可否(争点E5)
第3 争点についての当事者の主張
1 本件投稿1関係
(1)争点A1(本件投稿1が原告の名誉を毀損するものであるか)について
【原告の主張】
 本件投稿1は、原告を指して「犯罪行為」「資金洗浄」「マネーロンダリング」「資金は隠された」などと記載することで、原告が、犯罪行為の当事者であるとの虚偽の事実を摘示し、誹謗中傷するものであり、その内容に鑑みれば、原告の社会的評価を低下させるものである。
 また、本件投稿1は、インターネット上で広く閲覧可能なX上で投稿されている。
 よって、被告は、本件投稿1を投稿したことで、公然と原告に関する虚偽の事実を摘示し、原告の社会的評価を低下させ、もって、原告の名誉を毀損した。
【被告の主張】
 争う。
 本件投稿1は、原告が、MT案件に関与していた可能性があることから、原告に対し、自首等を勧める意見を述べたに過ぎず、原告が犯罪行為の当事者であるとの事実を摘示したものではない。
(2)争点A2(被告が、本件投稿1を投稿したことが名誉毀損に該当したとして、その違法性を阻却し、又は故意若しくは過失を否定すべき事由が認められるか)について
【被告の主張】
 本件投稿1が、原告の名誉を毀損するものであるとしても、以下のとおり、違法性を阻却し、又は故意若しくは過失を否定すべき事由が認められる。
ア 公共性について
 本件投稿1は、MT案件という投資詐欺事案について、原告が関与している可能性があったことから、その全容を解明するためになされたものであり、犯罪行為という公共の利害に関する事実について記載されたものである。
イ 公益目的について
 被告は、MT案件の被害者が多数いることを知り、このような被害者らに対する被害回復が実現されるよう、同案件に関与している可能性がある原告に対し真相を明らかにすることを促すために本件投稿1をなしたものであり、公益を図る目的で同投稿をなした。
ウ 意見論評行為としての非逸脱性及び真実性又は真実であると信じるについての相当な理由(以下「真実性等」という。)について
 本件投稿1は、原告自らMT案件について知るところを公に明らかにすることを促すべきであるとの意見を述べているに過ぎない。MT案件が多数の被害者を生んでいる重大な事案であることに鑑みれば、これに関与していると考えられる者に言及し、上記の意見を述べることは、表現の自由のーつとして保障されるべきものであり、意見ないし論評としての域を逸脱するものではない。
 また、本件投稿が、前提として事実の摘示を含むものであるとしても、当該事実について、真実性の証明ないし真実と信じるにつき相当な理由があったといえる。すなわち、MT社及びメタモ社が、MT案件の当事者として投資詐欺を行っていた疑いは極めて強く、現に、同旨の判決が複数言い渡されている。そして、以下の事情に鑑みれば、原告がMT案件に関与し、加担していたことが明らかであるし(違法性阻却事由)、被告が、原告がMT案件に関与していたと信じたのも当然であるというべきである(故意又は過失の欠缺)。
(7)原告が代表取締役に就任しているZ社は、令和2年9月頃から、MT社及びメタモ社に対し、Z社の本店所在地を無償貸与したり、令和3年3月24日から金銭的な支援をしたりしていた。また、MT社及びメタモ社の代表取締役又は取締役であったA及びCは、同各社が株式購入を勧誘していた頃、Z社の取締役の地位にあった。
(イ)原告は、令和2年頃から、メタモ社に出入りするなど、MT社及びメタモ社と密接な関係を有していた。また、メタモ社の、令和元年12月31日頃のIR記事には、原告が同社内で勤務している様子が掲載されていた。
(ウ)原告は、SNSサイト上で、MT案件で顧客に対する勧誘を行っていたDとつながっていた。
(エ)令和4年12月頃、インターネット上で、原告がMT案件に関与している可能性を指摘する記事が掲載された。
(才)MT案件の顧客は、令和3年8月頃、原告及びメタモ社が代表を務める会社の事務所に押し掛けた。原告は、危機管理のプロを自称しているにもかかわらず、その後もメタモ社やMT社との関係を継続し、令和5年4月17日頃、Aの指示に従い、メタモ社及びMT社が被害者から集めた資金を同各社から移し替えるための会社としか考えられない法人を設立するために、友人の実印及び印鑑証明書を差し出すことで、メタモ社及びMT社が不正に得た資金の洗浄(マネーロンダリング)に協力していた。
【原告の主張】
 本件投稿1は、原告の名誉を毀損するものであり、以下のとおり、違法性を阻却し、又は故意若しくは過失を否定すべき事由もない。
ア 公益目的について
 本件投稿1は、MT案件に関する具体的な分析や情報提供をしているものではなく、単に、原告を名指しで、「(Aとの)マッチポンプ」、「資金隠し」「マネーロンダリング会社」「犯罪行為」「大犯罪人と同罪」などと記載し、口悪く罵るものであり、MT案件の被害者への情報提供等を目的とするようなものとはいい難い。
 加えて、被告は、本件投稿1をする傍ら、MT案件の被害者救済を銘打って「債権回収をする」などといい、当事者からの連絡を受け付けるなど、弁護士法72条に違反する非弁行為を行っている。
 このように、本件投稿1は、被告の非弁行為の一環としてなされたものであり、かつ、その内容も被害者に対し、情報提供等を行うようなものとはなっていないことから、公益目的でなされたものとはいえない。
イ 意見論評行為としての非逸脱性及び真実性等について
 本件投稿1は、MT案件について冷静に分析したり、具体的な情報を提供したりするものではなく、単に原告を口悪く罵っている人身攻撃に及ぶものであり、社会通念上、意見論評行為としての域を逸脱しているものであり、そもそも、違法性を欠くような態様の表現行為とはいえない。
 そして、被告が本件投稿において摘示する事実は、いずれも、原告がMT案件に加担していたことを示す根拠としては薄弱なものであり、これらの事実から、原告がMT案件に関与していたとはいい難い。また、被告は、本件投稿1をなすに際し、何ら、具体的な証拠を示していない。
 加えて、被告は、令和5年5月15日頃、原告に対し、代理人を通して、原告とMT案件との関係を問い合わせていたが、被告は、その問合せに対する原告の回答に納得し、原告から提供される情報がMT案件の被害者救済につながる等、感謝の意を示していた。このように、被告は、原告がMT案件に関し、違法行為をしていないことを認識していた。
 よって、原告がMT案件に加担していたことは真実とは認められないし、また、被告がそのように信じるについて相当な理由もない。
(3)争点A3(原告の損害(本件投稿1関係))について
【原告の主張】
 被告が本件投稿1をなしたことで、原告は精神的苦痛を被り、かつ、原告の社会的評価が低下した。その損害を金銭評価するならば、以下の金額とすることが相当である。
ア 精神的苦痛に対する慰謝料 180万円
イ 社会的評価の低下に伴う無形損害 50万円
ウ 合計 230万円
【被告の主張】
 争う。
2 本件投稿2関係
(1) 争点B1(本件投稿2が、原告を脅迫するものであるか)について
【原告の主張】
 本件投稿2は、原告がMT案件に関与しているとの認識を前提に、原告に対し、同案件について自首をしないと告訴される、自首をしないと登記簿の住所を公表するとの内容を記載したものであり、原告に対し、告訴や住所の公開といった手段をほのめかすことで、虚偽の自白を強要するよう、不当な圧力をかける内容となっている。
 よって、本件投稿2は、原告を脅迫するものである。
【被告の主張】
 本件投稿2は、文言から明らかなように、登記簿の住所を公開することをほのめかす内容は含まれていない。また、本件投稿2は、原告に対し、MT案件について知るところを明らかにすることを促すものとして「自首」「告発」等の表現を用いたものであり、原告を脅迫するような内容ではない。
(2)争点B2(原告の損害(本件投稿2関係))について
【原告の主張】
 被告が本件投稿2をなしたことで、原告は精神的苦痛を被り、また、被告の脅迫行為に対応するため、自宅で行政書士事務所を開業しょうとしていたのに、オフィスを契約せざるを得なくなった。そのため、以下の損害が生じた。
ア 精神的苦痛に対する慰謝料 180万円
イ オフィス契約に要した費用 90万円
 原告が契約したオフィスの2年分の賃料相当額である。
ウ 合計 270万円
【被告の主張】
 争う。
3 本件投稿3関係
(1)争点C1(本件投稿3にスクリーンショットが添付されたウェブサイトの著作物性)
【原告の主張】
 本件投稿3にスクリーンショットが添付されたウェブサイトは、思想等を創作的に表現したものであり、著作物性が認められる。
【被告の主張】
 上記ウェブサイトは、メタモグループとの関係について認識・体験した事実を記載したものにとどまり、自己の思想等を創作的に表現したものではなく、著作物性は認められない。
(2)争点C2(原告が、本件投稿3にスクリーンショットが添付されたウェブサイトの著作権者であるか)について
【原告の主張】
 本件投稿3にスクリーンショットが添付されたウェブサイトは、Z社のみならず、原告も経費負担をして作成されたものであり、その著作権は、原告及びZ社の共有に属する。
【被告の主張】
 上記ウェブサイトは、MT案件とZ社の関係性についてのZ社としての見解などを表明したものである。よって、同ウェブサイトは、原告がZ社の代表取締役としての職務に従事する中で、Z社としての見解をZ社名義で公表したものであるから、その著作権はZ社に帰属するものであり、個人としての原告には帰属しない。
(3)争点C3(被告が、本件投稿3をした際、Z社のウェブサイトのスクリーンショットを添付したことが、著作権法上、許容される引用に該当するか)について
【被告の主張】
 被告が本件投稿3をした際、ウェブサイトのスクリーンショットを添付したことは、著作権法上許容される引用に該当する。
【原告の主張】
 本件投稿3は、原告に対して「どう転んでも犯罪」「小心者」「真黒」と記載した文書に上記ウェブサイトのスクリーンショットを添付してなされたものであるところ、この文書を記載するために同スクリーンショットを添付する必要性はない。
 また、上記ウェブサイトの記載内容に対する具体的な反論をしているものでもない。
 よって、被告が本件投稿3をした際、上記スクリーンショットを添付したことは、著作権法上許容される、公正な慣習に合致する引用とはいえない。
(4)争点C4(原告が著作権侵害を主張することが権利の濫用に該当するか(ウェブサイト関係))について
【被告の主張】
 本件投稿3にスクリーンショットが添付されたZ社のウェブサイトは、単に、MT案件についてZ社の弁解を記載したに過ぎず、財産的利益を得ることを目的とされるものでもなければ、高度の創作性を備えているものでもない。
 また、Z社は、被害者が多数存在するMT案件について、自ら、Z社が、かって、メタモ社及びMT社と関係していたことを明かしたうえで、ウェブサイト上で質問を募っていたところ、本件投稿3にスクリーンショットが添付されたウェブサイトの内容は、このように公募していた質問に対して回答したものである。よって、同ウェブサイトに関する著作権によって保護されるべき原告の利益は極めて小さい。
 一方で、本件投稿3は、多数の被害者が存在するMT案件について、その関与が疑われる原告に関する情報を発信するために行われたものであり、これによって得られる利益は極めて大きい。
 そうすると、原告の著作権侵害に関する主張は、極めて小さな法的利益を根拠として、それよりも大きな利益を実現しようとする被告の表現行為を論難するものであり、権利の濫用にあたる。
【原告の主張】
 争う。
(5)争点C5(原告の損害(本件投稿3関係))について
【原告の主張】
 被告が上記ウェブサイトを無断で転載したことで、原告には精神的損害が生じた。その精神的損害を金銭評価するならば100万円とすることが相当である。
【被告の主張】
 争う。
4 本件投稿4関係
(1)争点D1(甲5文書に著作物性が認められるか)について
【原告の主張】
 甲5文書は、原告が、被告訴訟代理人から、Z社とMT案件について質問されたことに対し、原告が認識する事実や、これに対する所見をまとめたものである。その内容は、原告が認識する事実を単に記述するにとどまらず、原告の意見を表明するものであり、原告の思想又は感情を創作的に表現したものであるから、著作物性が認められる。
【被告の主張】
 甲5文書は、Z社とMT案件の関与について、原告の認識を事務的に記述したものにすぎないから、原告の思想又は感情を創作的に表現したものとはいえない。特に、本件投稿4で記載された部分は、甲5文書を単に要約したものに過ぎないし、甲5文書の中でも、単なる事実認識を記載していた部分に過ぎない。
 よって、甲5文書(特に、本件投稿4で記載された部分)には著作物性が認められない。
(2)争点D2(原告が、甲5文書の著作者であるか)について
【原告の主張】
 甲5文書は、基本的には原告が個人として回答したものである。同文書には、原告個人の認識や見解のほか、Z社とMT案件の関係について、Z社としての見解も示されているが、それでも、原告とZ社の共有著作物であるというべきであり、原告が著作者であることは変わらない。
【被告の主張】
 甲5文書は、Z社とMT案件の関係について、原告が、Z社のウェブサイ卜で募集した問合せに対し、Z社の代表取締役の立場で回答したものであるから、Z社が著作者であり、原告は著作者ではない。
(3)争点D3(本件投稿4が、原告の甲5文書に関する公表権を侵害するものであるか)について
【原告の主張】
ア 甲5文書は、被告が、被告代理人弁護士(本件の被告訴訟代理人)を通じて、MT案件とZ社の関係について、Z社のウェブサイト上から問い合わせてきたことに対し、原告が回答をしたものである。
イ 原告は、甲5文書が不当に切り抜かれて転載されることを防止するため、被告代理人に対し、甲5文書の電子データは被告代理人限りの取扱いとし、被告本人にも転送しないことを求め、被告代理人もこれを認識、了解していた。しかし、被告代理人は、これを被告に提供し、被告は、甲5文書が公表されるべきものではないことを知りながら、甲5文書の内容を記載した本件投稿4をなした。
ウ このように、被告は、原告が公表しておらず、かつ、公表を望まない甲5文書を、原告に無断で公表し、原告の公表権を侵害した。なお、本件投稿4は、甲5文書を要約したものであるが、甲5文書の表現のまま記載された部分もあるから、公表権侵害が成立する。
【被告の主張】
ア 原告は、Z社のウェブサイト上で、MT案件とZ社の関係に関する問い合わせを募集していた。被告は、被告代理人を通じ、その氏名と住所を明らかにしたうえで、問い合わせをしたものであり、甲5文書はその回答文書である。
 ここで、原告は、Z社のウェブサイト上で、Z社に対する問い合わせは代理人を通じて行うことを求めていた。そのため、被告は、代理人を介して問い合わせたものであるが、代理人が、受任事件に関し重要な文書を入手したときに、これを依頼者に提供するというのは、当然のことであり、むしろ、提供しない方が問題とされる。そして、被告はもちろん、被告代理人は、甲5文書を被告に提供することや公表しないことに関する原告の申出を受け入れたことはない。
イ 被告は、以上の経緯で入手した甲5文書を踏まえ、これを吟味し、要約した本件投稿4をなしたものである。そして、本件投稿4は、甲5文書中、原告が、Z社のウェブサイトから、同社とMT案件の関与を示唆する部分を閲覧できないようにしたことから、これに対応する部分について、甲5文書を要約したものに過ぎず、同文書の内容がこの範囲で公開されることは、原告が甘受すべきものといえるし、投稿内容も、原告の公表権を侵害するようなものではない。
(4)争点D4(原告が著作者人格権侵害を主張することが権利の濫用に該当するか(甲5文書関係))について
【被告の主張】
 Z社のホームページに関し、原告の法的保護に値する利益が極めて小さいといった前記3(4)の被告の主張記載の点については、甲5文書にも同様であり、その他、同被告の主張と同旨の理由で、原告が甲5文書について著作者人格権侵害を主張することは、権利の濫用に該当する。
【原告の主張】
 争う。
(5)争点D5(被告が、本件投稿4を投稿したことが、原告が公開を望まない機密情報を故意に流出させたもので、不法行為であると認められるか)について
【原告の主張】
 上記(3)の原告の主張のとおり、甲5文書は、原告が、被告代理人限りのものとして提供したものであり、被告代理人が被告にこれを提供したことは、被告代理人のずさんな秘密管理による違法な情報流出である。
 そして、被告は、このような違法な情報流出の結果、甲5文書を取得したことを知りながら本件投稿4をなし、原告の甲5文書に対する秘密保持の利益を侵害したものである。
 このような秘密保持の利益は、法的保護に値するものであるから、被告が本件投稿4をなしたのは、不法行為と評価すべきである。
【被告の主張】
 争う。
 上記(3)の被告の主張のとおり、代理人が依頼者に対し、受任事件の処理に際して入手した資料を提供することは何ら咎められるものではないし、むしろ当然のことである。
 被告は、このような当然の過程を経て甲5文書を入手したのであるから、原告が主張するような秘密保持の利益の侵害はない。
(6)争点D6(原告の損害(本件投稿4関係))について
【原告の主張】
 被告の上記著作者人格権侵害により、これが認められないとしても秘密保持の利益侵害により、原告は精神的苦痛を被った。かかる精神的損害を金銭評価するならば、100万円とすることが相当である。
【被告の主張】
 争う。
5 本件投稿5関係
(1)争点E1(本件投稿5が、原告の肖像権を侵害するものであるか)について
【原告の主張】
 被告は、本件投稿5をなすに際し、原告に無断で、原告の写真を添付し、以て原告の肖像権を侵害した。
 確かに、原告が添付した写真は、Z社のウェブサイト等で公開されていたものである。しかし、本件投稿5は、原告に対する名誉毀損や誹謗中傷目的で原告の顔写真を添付しており、原告が、このような態様で原告の顔写真が使用されることまで甘受すべき理由はない。
 よって、本件投稿5は、原告の肖像権を侵害するものである。
【被告の主張】
 本件投稿5で添付されている原告の写真は、Z社のウェブサイト等で原告が自ら公にしていたものであり、何ら、原告の肖像権を侵害するようなものではない。
(2)争点E2(原告の損害(本件投稿5関係))について
【原告の主張】
 被告の上記肖像権侵害により、原告は精神的苦痛を被った。かかる精神的損害を金銭評価するならば、100万円とすることが相当である。
【被告の主張】
 争う。
6 非金銭請求関係(請求の具体的内容・対象と法的根拠は、本件各投稿によつて異なるものの、各当事者の主張としては共通するため、まとめて記載する。)
(1)争点A4・B3・C6・D7・E3(謝罪広告の掲載の必要性)について
【原告の主張】
 本件各投稿がxにおいて掲載され続けたことから、原告の人格権、著作権及び著作者人格権並びに肖像権は、長期間にわたり、著しく侵害された。
 このように侵害された各権利、利益を回復するためには、被告に対し、別紙7「謝罪広告目録」記載の謝罪広告を、本件アカウントにおいて掲載させる必要がある。
【被告の主張】
 争う。
(2)争点A5・B4・C7・D8・E4(本件各投稿の削除請求権の有無)について
【原告の主張】
 本件各投稿は、原告の著作権、著作者人格権及び人格的利益を著しく侵害するものであり損害の拡大を防止するためには、これらの投稿を削除させる必要があり、原告は本件各投稿の削除請求権を有する。
【被告の主張】
 争う。
 また、被告は、本件口頭弁論終結時に、既に本件アカウントを消去しており、これに伴って本件各投稿もすべて削除されているため、削除請求の前提を欠いている。
(3)争点A6・B5・C8・D9・E5(各侵害行為の予防的差止請求の可否)について
【原告の主張】
 本件各投稿は、原告の著作権及び著作者人格権、肖像権並びに人格的利益を著しく侵害するものであるが、被告が長期間にわたり、執拗に、そして、本件訴訟が提起されてからもなお、本件各投稿を削除しなかったこと等に鑑みれば、将来生ずべき侵害を予防するために、被告に対し、Xその他インターネット上で、原告に対する誹謗中傷・名誉毀損及び脅迫、著作権侵害、肖像権侵害行為をなすことを差し止めることができる。
【被告の主張】
 争う。
(4)争点B6(人格権に基づく接触等の予防的差止請求の可否)について
【原告の主張】
 被告が、原告に対し、長期間にわたり、執拗に、脅迫行為等を行っていたことに鑑みれば、原告に対する将来の人格権侵害を予防するために、被告に対し、原告及びその周辺に対する接触、加害行為、接近行為、監視行為等を間接的直接的問わず行うことを差し止めることができる。
【被告の主張】
 争う。
第4 当裁判所の判断
1 認定事実
 前記前提事実、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(1)原告によるZ社の事業とAとの関係
 原告は、行政書士の資格を取得した上で、種々の活動や人的交流などを重ねていたが、令和元年、メタモグループで役員を務めるAと知り合って関係を深めるとともに、自らが構想していた危機管理アプリなどに関する事業の立ち上げについても相談するようになった。原告は、令和2年3月には、Aからのアドバイスやメタモ社からの資金援助のもとで、危機管理アプリの作成などを目的とするZ社を設立し、その代表取締役として事業を開始した。また、Aのほか、同じくメタモグループで役員を務めるCが、Z社の取締役に就任した。
 原告は、Z社の設立準備段階からその設立以降も、主にメタモグループのオフィス内でZ社の事業を行っていた(令和元年12月末のメタモ社のIR記事には、メタモ社のオフィスに原告が稼働している状況を映した写真も掲載されている。)もので、Z社の法人登記簿上も、オフィスビル名の記載こそないものの、メタモ社の本店所在地と一致する地を、設立時の本店所在地として登録していた。Z社の本店所在地は、令和2年11月ころには別地に移転したものの、原告がZ社の事業をメタモグループのオフィス内で行うという状況は、令和5年2月中旬まで継続した。(甲1〜5、55、乙1、2、31)
(2)投資詐欺の疑惑発生と経過
ア メタモグループのMT社及びメタモ社の各株式については、かねてから販売勧誘が展開されていたが、その勧誘にあたっては、米国企業であるPT社によるMT社の買収、あるいは、メタモ社の株式上場の各予定が前提として説明されていた。しかし、メタモグループは、令和3年6月、それらの予定がいずれも遅延している旨の株主向けレターを発行し、その頃以降、これら株式の販売勧誘が、株価に影響を及ぼす重要な事実関係に関する虚偽の説明を伴う違法なものではないかとの疑惑が生じ、同年12月までに、その旨のインターネット上の匿名記事も複数公開された。
 令和3年11月には、上記株主向けレター上で遅延の原因を生じさせている人物であると言及されていたEが、令和2年12月ころ、MT社がPT社に買収される確たる見通しはないのに、このような見通しが存在し、買収された際にはMT社の株価が100倍に値上がりするなどという虚偽の説明のもとでMT社株式の購入を勧誘され、代金を送金したとして、MT社、メタモ社、A、B及びDに対し、損害賠償の支払を求める民事訴訟を東京地方裁判所に提起した。
 原告は、遅くとも令和3年8月ころには、メタモグループが上記のような投資詐欺の疑惑をかけられていることを認識したが、その後もAをはじめとするメタモグループとの事業上の関係を継続するとともに、メタモ社からZ社への資金援助について、他者を代表とする別会社を設立し、同社を経由する枠組みへと移行する提案を受け、これに対応すべく準備も進めた。
イ 東京地方裁判所は、上記民事訴訟のうち、Bに対する請求について、令和4年6月8日、Bが請求原因事実に対する認否を明らかにしないとして、擬制自白のもと、Eの請求を全部認容する判決を言い渡した。
 原告とAをはじめとするメタモグループとの関係は次第に悪化していき、Aが令和4年3月3日、Z社の取締役を退任し、Cが、令和5年2月17日、同社の取締役を辞任した頃には、事業上の協力関係が途絶えることとなった。同年3月14日には、メタモグループにおいて、原告が代表取締役を務めるZ社に対し、代表取締役の連帯保証を求めない形での資金援助、オフィスの無償貸与、A及びCによる社外取締役の無報酬就任といった支援をしてきたにもかかわらず、Z社から一方的かつ高圧的に債権放棄の提案を受けたとして、これを拒絶する旨のプレスリリース記事を公開した(被告が、本件アカウント投稿を開始したのは同日であった。)。
 Z社は、令和5年4月17日、自社のウェブサイト上で、東京地方裁判所の上記判決を踏まえて、メタモグループを匿名としつつも、出資者の地位にあった同グループとの関係を解消する方針を決定したこととともに、Z社の事業が同グループからの資金援助を前提としてものであったため、Z社の事業そのものも一時休止する旨を公表した。また、Z社は、同公表において、メタモグループから、Z社への資金援助について、他者を代表とする別会社を設立し、同社を経由する枠組みに移行する提案を受け、自らもこれに対応すべく準備するなど、投資詐欺の疑惑が生じた後も関係を続いていたことについて、Z社が資金面でメタモグループに依存する状態であったことや自らの未熟さを原因として挙げつつ、反省の弁を述べるとともに、Z社について、上記別会社が投資詐欺で得た資金を洗浄することを目的とする会社である旨のインターネット上での指摘を否定した。(甲5、26、乙5〜7、16、21、24)。
ウ 東京地方裁判所は、上記民事訴訟において、令和5年6月1日、MT社及びAに対し、DのEに対する発言内容や、MT社及びAが訴訟手続において、PT社がMT社を買収する具体的な見通しが立っていたことを示す証拠を提出しなかったことから、そのような見通しが存在していなかったことを認定した上で、Eの請求を全部認容する判決を言い渡した。
 Z社は、令和5年8月16日、自社ウェブサイトにおいて、同判決に加え、独自に収集した情報も踏まえ、A及びメタモグループの実名を出しっつ、PT社によるMT社の買収の予定がある旨の虚偽の説明によって個人投資家から資金を集めるという詐欺行為が行われた可能性が高い旨の見解を公表した。また、Z社は、同年10月6日には、自社ウェブサイトにおいて、メタモ社株式の購入勧誘においても、同社の上場予定につき、虚偽の説明によって個人投資家から資金を集める詐欺行為が行われた可能性が高い旨の見解とともに、本件アカウント投稿に対する法的措置を検討していることなどを公表した。(甲26、乙24)
エ メタモ社、MT社、A及びBは、令和5年及び令和6年、福岡地方裁判所において、令和5年、佐賀地方裁判所において、MT社がPT社に買収される見通しはないのに、このような見通しが存在し、買収された際にはMT社の株価が値上がりするという虚偽の説明をしたほか、令和3年頃、メタモ社が上場の見込みなどなかったにもかかわらず、近々、上場見込みであるから、メタモ社が発行するG種類株式を購入すれば巨額の配当金が得られるとの虚偽の内容の説明をし、メタモ社及びMT社の株式を購入させたとして、購入代金等の損害賠償を求める訴えを提起された。
 これらの訴訟において、メタモ社、MT社、A及びBは、口頭弁論期日に出頭せず、答弁書も提出しなかった。そのため、請求原因事実について自白したものとみなされ、原告らの請求を全部認容する判決が言い渡された。(乙26ないし28)
(3)被告による本件アカウント投稿及び情報源
ア 被告は、令和4年6月ころ、Fが行った投資セミナーに参加した際に勧誘を受け、同年7月28日から同年9月16日にかけて、メタモ社の種類株式6000株を300万円で、MT社の種類株式1万8000株を900万円で購入したが、後日、令和4年6月8日の前記東京地方裁判所判決の内容も含めたインターネット上の情報から、投資詐欺にあったとの認識を持つに至り、令和5年1月18日、弁護士を代理人とし、メタモ社、MT社及びAに対し、上記株式購入が投資詐欺であったことを理由として、1200万円の返金を求めた。この際には、被告以外にも3名が、各自の株式購入代金の返還を求めていた。
 被告は、同年3月8日には、MT社及びメタモ社から、1200万円全額の返金を受けたが、メタモグループによる投資詐欺が広く行われていたとの問題意識から、インターネットなどでの情報収集を継続した。被告は、インターネット上の情報から、原告及びZ社がメタモグループと人的物的に近い関係にあり、原告も投資詐欺に関わっている可能性があるとの認識を有していたが、同月14日には、メタモグループのウェブサイト上での上記(2)イのプレスリリースを閲覧し、メタモグループが詐取した金銭・利益がZ社に移されているなどの疑念を深めるとともに、同日、本件アカウント投稿を開始した。
 被告は、直ちにZ社の登記事項証明書を取得し、Z社の取締役にA及びCが就いていたこと、Z社のかつての本店所在地が、メタモ社の本店所在地と符合することも把握した。被告は、令和5年4月17日ころには、上記(2)イのZ社のウェブサイトにおいて公表された上記(2)イの情報・見解を閲覧し、さらに疑念を深めるとともに、新たな情報及びそれに基づく自らの理解を、本件アカウント投稿にも反映していった。本件投稿3に添付された画像は、いずれもZ社のウェブサイトの一部をスクリーンショットしたものであった。(乙1〜4、8〜12、16〜19、34〜39、46〜48)
イ 原告と被告訴訟代理人との間では、令和5年4月下旬以降、被告が被告訴訟代理人弁護士の名義を用いて、Z社のウェブサイトに設けられていた問い合わせフォームを通じて問い合わせたことを契機に、複数回のメールのやりとりが交わされた。原告は、同年5月15日、メタモグループによる投資詐欺やZ社ないし原告の関わりの有無などについての被告の質問への回答をまとめたものとして、甲5文書を被告訴訟代理人にメールで送付した。
 甲5文書は、追記部分を含み、全43ページのものであり、4ページ目から被告の質問に対する回答が記載されていたもので、作成名義の記載はない。甲5文書の冒頭部には、情報の拡散や切り取りなどによる原告に対する名誉棄損への懸念から、甲5文書そのものは被告訴訟代理人弁護士の参考資料の扱いとし、依頼者との関係では、甲5文書を見せるまでは問題ないものの、甲5文書そのものを提供したり、30文字程度のメモを超えてそのまま書き写したりという行為、さらには、SNSその他インターネット上に投稿するのは禁止する旨の記載があった。また、甲5文書は、全ページにおいて、右上余白部分に「confidential」との記載が付されるとともに、ページ中央部に、いわゆる透かし文字で「複製転載改変等禁止」との記載もされていた。他方、Z社ないし原告と被告訴訟代理人弁護士との間で、甲5文書の情報管理について、別段の合意が交わされたわけではなかった。
 被告は、そのころ、被告訴訟代理人弁護士から甲5文書の提供を受け、その内容を踏まえて、本件投稿4の投稿をした。また、甲5文書には、令和元年12月末のメタモ社のIR記事に、メタモ社の事務所で稼働する原告の映った写真が掲載されている旨の指摘を受けての回答として、原告が令和元年11月ころから令和5年2月中旬まで、メタモ社のオフィス内でZ社の事業を行っていた旨の記載もされていた。(甲5、乙23)
2 本件投稿1関係
(1)争点A1(本件投稿1が原告の名誉を毀損するものであるか)について
ア 原告は、本件投稿1が、原告が犯罪を行った旨の事実を摘示し、その名誉を毀損したものであると主張する一方、被告は、意見論評を行ったにとどまるとしつつ、原告に対する名誉棄損を否定するものでもある。
 そこで検討するに、ある記事や投稿等の意味内容が他人の社会的評価を低下させて名誉を棄損するものであるかはもちろんのこと、当該投稿等が事実を摘示するものか、意見論評によるものかの区別についても、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準とし、判断すべきものである(最高裁平成6年(オ)第978号同9年9月9日第三小法廷判決・民集第51巻8号3804頁)。
 そして、Xは、その性質上、散発的に短文の投稿が行われるものであり、かつ、原則として、新しい投稿が上位に表示されるという仕組みがとられている一方、投稿間の一定の時間差があったとしても、簡便な操作によって、過去の投稿を遡って閲覧することが可能である(公知の事実)。このような本件投稿1の媒体となったSNSの特質も踏まえて本件投稿1の各投稿を検討する。
イ まず、これら投稿は、いずれも比較的短い文書で、端的に結論を記載したものであり、一般の読者の普通の注意と読み方に照らせば、次のとおりの内容を発信するものであると理解することができる。
(ア)番号1の投稿
 Aが警視庁に自首すべき犯罪を行い、原告もAと共謀していること
(イ)番号2の投稿
 原告とAが、計画的に、海外に資金を移転させ、隠したこと
(ウ)番号3の投稿
 Z社の代表取締役である原告が、メタモ社及びAの個人投資家に対する詐欺によって得た金銭であると知りながら、その犯罪に加担したこと
(エ)番号4の投稿
 Z社は、メタモ社から、無関係の人物を代表にした別会社を設立するよう指示を受けたもので、この会社は資金洗浄を目的としていたこと
(オ)番号5の投稿
 原告が、Aから無関係の人物を代表にした別会社を設立するよう指示を受けたもので、これがAの資金洗浄目的の会社であると確信しており、原告の行為も犯罪であること
(カ)番号6の投稿
 Z社の債権放棄という手段によって、資金が隠されたこと
(キ)番号7の投稿
 原告が、令和元年頃、メタモ社のIR写真に、社員のように掲載されており、同社と共謀していたとの疑義が払拭できないこと
 以上の各投稿の記載内容に加え、本件アカウント投稿を全体として見ても、一貫して、Aやメタモ社ないしメタモグループによる投資詐欺を話題とし、これに原告及び原告が代表取締役であるZ社も関与していることに繰り返し言及するものとなっていることも踏まえれば、本件投稿1は、原告がZ社の代表取締役として、Aが行った犯罪行為である投資詐欺について、その事実を知りながら、Aと共謀して、詐取金の資金洗浄をし、もつて犯罪を行ったとの事実を摘示するものと認めるのが相当である(なお、番号6及び7の投稿日は不明であるが、その記載内容とZ社及びメタモグループがその内容に関連する情報を発信した時期に加え、本件各投稿全体の傾向を踏まえると、被告がそれら情報を知っていた令和5年3月14日ないし同年5月中旬ころからさほど時間をおいたものではなく、少なくとも、投稿日時が明らかとなっているうちで最後の投稿である番号5の投稿日である令和6年1月31日に後れるものではないものと推認される。)。
 この点、被告は、原告に対し投資詐欺に関する真相を明らかにすることを促す意見論評行為にとどまる旨主張するが、本件投稿1の文面は、上記のとおりであって、共謀について疑義という表現にとどめる部分があるとはいえ、一般の読者の普通の注意と読み方のもと、全体としては、断定的な表現を用いながら、上記事実摘示を行っているものというほかないから、被告の主張は採用できない。
 よって、本件投稿1は、原告が、Z社の代表取締役として、Aが行った犯罪行為である投資詐欺について、その事実を知りながら、Aと共謀して、詐取金の資金洗浄をし、もって犯罪を行ったとの事実を摘示したものであると認めることが相当である。
 そして、かかる事実の摘示は、一般の読者の普通の注意と読み方のもと、原告の社会的評価を低下させるものであることが明らかであるから、本件投稿1は、原告の名誉を毀損したものであると認められる。
(2)争点A2(被告が、本件投稿1を投稿したことが名誉毀損に該当したとして、その違法性を阻却し、又は故意若しくは過失を否定すべき事由が認められるか)について
ア 公共性及び公益目的について
 前記(1)のとおり、本件投稿1は、SNSであるXを通じ、原告がZ社の代表取締役として、Aが行った犯罪行為である投資詐欺について、その事実を知りながら、Aと共謀して、詐取金の資金洗浄をし、もって犯罪を行ったとの事実を摘示したものであるところ、犯罪行為という、公共の利害に関する事実に関するものであると認められる。
 また、本件投稿1における表現の態様は、穏当なものではなく、いわば煽るような表現がされているものではあるものの、摘示内容そのものとしては、投資詐欺によって不正に得られた金銭・利益が、別の会社・関係者を通じて資金洗浄されていることを周知するとともに、当該関係者の責任を明らかにしようとするものといえるから、これがもっぱら公益の目的によるものであることも否定できないといえる。
イ 真実性等について
(ア)まず、本件投稿1の摘示する事実は、メタモグループで役員の地位にあるAが犯罪行為である投資詐欺を行ったことを前提とするものであるが、前記認定事実のとおり、この点については、被告が本件アカウント投稿を開始する前の時点で、MT社の株式購入勧誘に係る投資詐欺を理由とする損害賠償請求訴訟において、東京地方裁判所がEのDに対する請求を全部認容する判決を言い渡し、被告もインターネット経由でこの情報に接していたことに加え、被告自身が、MT社及びメタモ社の株式を購入したものの、これが投資詐欺であったとの理由で購入代金の返金を求め、同社らから全額の返金を受けられたもので、他にも同様の被害を訴えて同じ弁護士を通じて返金を求める者が複数いたことを踏まえると、被告には、本件投稿1の投稿に際し、上記前提となる事実、すなわち、Aによる投資詐欺の事実について、真実であると信じるについて相当な理由があったものと認められる。
(イ)続けて、原告がZ社の代表取締役として、上記投資詐欺の事実を知りながら、Aと共謀して、詐取金の資金洗浄をし、もって犯罪を行ったとの事実の部分について検討する。
 前記認定事実のとおり、原告は、Z社の設立からその事業の開始、遂行にあたって、メタモグループから、広範な経営支援を受けていたもので、その具体的内容としては、全面的な資金援助のほか、メタモグループの役員であるA及びCがZ社の取締役も兼ねることやオフィスの無償貸与が含まれていた。このことは、令和5年3月14日のメタモグループのプレスリリースを通じて公にされ、被告も、本件アカウント投稿の開始に先立って知ることとなった。これらの情報は、Z社及びその代表取締役である原告にとって、メタモグループが、単なる事業上の取引相手という域を超えた密接な関係性を有していたことを示すものといえる。
 また、メタモグループがMT社及びメタモ社の各株式の売却で取得した金額規模やメタモグループからZ社への資金援助額などの詳細は明らかでないものの、双方の時期の近接性などに照らせば、原告の認識はともかくとして、客観的には、メタモグループからZ社への資金援助について、少なくともその一部が、投資詐欺との疑惑が生じていたMT社及びメタモ社の株式の売却代金を原資としていた可能性は十分にうかがわれ、被告も、メタモグループのプレスリリースを閲覧して、そのような疑念を深めたものであった。さらに、令和5年4月17日、Z社の公表情報によって、メタモグループからZ社への資金援助について、直接ではなく、新たに設立する別会社を介在させるという枠組みへの移行に向けた準備が、メタモグループとZ社との間で、少なくとも一時期進められていたことも判明したものであった。
 加えて、原告は、Z社の事業について、その設立前から、メタモグループのオフィス内を拠点とし続けていたもので、そのことは、被告においても、令和5年5月中旬の甲5文書の受領によって、明確に認識するに至ったものである。
 このように被告が、本件投稿1の投稿に先立って知っていた情報、さらには、その投稿を継続している最中に新たに知ることとなった情報を総合すれば、被告において、Aによる投資詐欺で詐取された金銭・利益について、原告もその資金洗浄に関与している可能性があるという相応の疑惑を抱くところまでは、理解できる面がある。
 しかし、以上の事実関係からいえることは、せいぜいそのような可能性が存在するという域にとどまるもので、それらの事実関係を踏まえても、原告が、真に事情を知らないまま、メタモグループから資金援助などの支援を受けていたもので、疑惑が生じて以降も、経済的に大きく依存していたがゆえに直ちに関係を絶つことが難しかったという原告の説明したとおりの経過であった可能性も十分存在していたといえる。そして、上記のとおり判明している事実関係を超えて、原告がAによる投資詐欺という事実を知りながら、その詐取金を原資とする資金援助を受けていた、さらに、資金洗浄の意図をもって、そのような資金援助の形式を利用していたなどといった事実を裏付けるような証言等の直接証拠は、本件投稿1の前後を問わず、存在していない。また、原告ないしZ社は、令和5年4月17日以降、Z社のウェブサイト上で、さらには同年5月15日に被告訴訟代理人弁護士に送付した甲5文書上で、メタモグループによる投資詐欺の疑惑について、自らに不利に解釈される可能性のある事実関係も明らかにしながら、資金洗浄などへの意図的な関与を一貫して否定していたものでもある。
 以上の検討に照らせば、被告が、本件投稿1をした際、原告がZ社の代表取締役として、上記投資詐欺の事実を知りながら、Aと共謀して、詐取金の資金洗浄をし、もって犯罪を行ったとの事実を断定的に摘示するほどに、当該事実が真実であると信じるに足りる相当の理由があったとは認められない。
 また、以上の検討に加え、本件投稿1がなされた以降も、原告の関与を裏付けるような事実や証拠が新たに判明したことを認めるに足りる証拠はないから、上記摘示の事実が真実であるとも認められない。
 よって、被告が本件投稿1で摘示した事実が真実であるとも、被告がこれを真実であると信じるについて相当な理由があったとも認められない。
(ウ)被告は、当裁判所の認定するものと概ね同様の事実関係に基づき、本件投稿1の摘示する事実を真実と信じるについて相当の理由があった旨主張するところ、被告自身の主観として、真にそのように認識、理解していたものとはうかがわれるが、SNS上で他人が犯罪を行った旨断定的に発信することを正当とするに十分な理由、根拠があったと認められないことは、前記(イ)のとおりである。
 この点、本件投稿1は、SNS上での個人の発信であり、新聞等の報道と性質を異にするものではあるものの、SNS上での発信は、ひとたびきっかけがあれば広範に拡散され、その内容の実際の真偽にかかわらず、真実であることを前提とした印象を不特定多数の人に与え得るものである。特に、本件のように、他人が犯罪に該当する行為を行ったとの事実を断定的に摘示するような場合は、当該他人の社会的評価に与える影響との衡量のもと、それに見合った根拠が求められるものというべきであり、このような観点からすると、被告の前提とした事情は、その摘示する事実を真実と信じるに十分なものであったとはいえない。
 よって、被告の上記主張は採用することができない。
ウ 小括
 以上の次第であり、被告が、本件投稿1によって原告の名誉を毀損したことにつき、その違法性を阻却すべき事由及び故意又は過失を否定すべき事由があるとは認められない。
(3)争点A3(原告の損害(本件投稿1関係))について
ア 本件投稿1が、本件アカウント投稿全体の中でなされたものであることに鑑みれば、本件投稿1は、全体として継続的な不法行為を構成するものとみることが相当である。以下、これを前提に、原告の損害を検討する。
イ 本件投稿1は、断定的表現をもって、原告が、Aの行った犯罪行為である投資詐欺について、その事実を知りながら、Aと共謀して、詐取金の資金洗浄をし、もって犯罪を行ったとの事実を摘示し続けていたものであり、その内容が原告の社会的評価に与える影響を軽視することはできない。また、本件アカウント投稿全体が、Aないしメタモグループによる投資詐欺があったことを前提に、原告につき、氏名だけでなく、その容貌を映した写真画像の添付をもって特定しながら、その詐取金の資金洗浄に関与していた旨を記載していたものであった。他方で、本件投稿1の閲覧回数は、原告が各投稿をスクリーンショットで保存するまで(令和6年6月22日以前であるが、具体的な時期は不明である)に、別紙1の閲覧回数欄に記載のとおりであったもので、その後これら投稿が削除されるまでに一定の追加閲覧があった可能性があることを踏まえても、本件投稿1全体として、閲覧者が広範囲に及んだとまではいえないことがうかがわれ、他にもこれら投稿が、上記規模感を超えて閲覧されたことを認めるに足りる証拠はない。
 以上に加え、その他本件における一切の事情を踏まえると、本件投稿1によって原告の名誉が毀損された結果、原告に生じた精神的損害に対する慰謝料は、本件投稿1全体を通じて、30万円と認めるのが相当である。
ウ なお、原告は、慰謝料とは別に、社会的評価が低下したことを理由とする無形損害の賠償を求めている。しかし、原告の社会的評価の低下は、前記イのとおり、慰謝料の算定において既に考慮されており、その中で評価し得ないような社会的評価の低下に伴う損害が発生したことを認めるに足りる証拠はない。
工 ところで、原告は、損害賠償の元本に対する遅延損害金の起算日を不法行為日である令和5年3月14日であると主張する。
 しかし、前記アのとおり、本件投稿1は、全体として継続的な不法行為を構成するものと解されるから、遅延損害金の起算日は、最終不法行為日であると解することが相当であるところ、本件投稿1の中で最後に投稿された番号5の投稿日である令和6年1月31日がこれに当たると認められる。
(4)小括
 以上の次第であり、原告の本件投稿1に関する損害賠償請求は、民法709条に基づき、30万円及びこれに対する継続的不法行為における最終不法行為日である令和6年1月31日から支払済みまで民法所定の年3パーセン卜の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余の請求は理由がない。
3 本件投稿2関係
(1)争点B1(本件投稿2が、原告を脅迫するものであるか)について
 原告は、本件投稿2が、告訴や原告の住所の公開といった手段をほのめかすことで、原告に対し、自首や虚偽の自白を強要するよう、不当な圧力をかけるものであり、もって、原告を脅迫するものであると主張する。
 この点、まず本件投稿2のうち番号10の投稿で、原告も刑事告訴対象であるとの趣旨が読み取れることは確かである。しかし、前記2で検討のとおり、被告においては、原告が、Aの行った犯罪行為である投資詐欺について、その事実を知りながら、Aと共謀して、詐取金の資金洗浄をし、もって犯罪を行ったとの事実について、これを直ちに真実と認めるに足りる相当の理由があったとまではいえないものの、原告がそのような資金洗浄に意図的に関わった可能性があるという相応の疑惑を抱くだけの事情はあったのであるから、MT社及びメタモ社の株式購入をめぐって前記認定事実のような立場にあった被告において、原告に対して刑事告訴を予告することをもって、直ちに違法な害悪の告知とはいえない。
 また、本件投稿2には、Z社の法人登記に係る登記事項証明書の画像が添付されており、同証明書自体には、Z社代表取締役である原告の住所も記載されていたものではあるものの、投稿の添付画像上では、同住所部分はマスキングされていた(甲2)もので、投稿文の内容を見ても、原告が被告の意に沿った行動をとらなければ、原告の住所を公開する旨告知するような文言とはなっていない。原告の立場からすれば、被告が原告の住所を把握している旨を知らされたことで、一定の畏怖の念を抱いたことはうかがわれるものの、被告の行為は、あくまでもZ社の法人登記に係る登記事項証明書を取得した上でのことで、その入手過程に違法性があるわけではなく、投稿全体を見ても、違法な害悪の告知があったとは認められない。
 なお、本件投稿2を、本件アカウント投稿全体の中で捉え、原告が、Aが行った犯罪行為である投資詐欺について、その事実を知りながら、Aと共謀して、詐取金の資金洗浄をし、もって犯罪を行ったとの事実を摘示する行為の一環とみる余地はあるものの、その点は、上記2(3)のとおり、本件投稿1による名誉毀損によって生じた損害を検討する際、本件アカウント投稿全体の文脈の中で評価しているから、脅迫の主張の中で別途考慮することはできない。
 よって、本件投稿2が原告を脅迫するものであるとの原告の主張は採用できない。
(2)小括
 以上の次第であり、争点B2について判断するまでもなく、原告の本件投稿2に関する損害賠償請求は理由がない。
4 本件投稿3関係
(1)争点C2(原告が、本件投稿3にスクリーンショットが添付されたウェブサイトの著作権者であるか)について
ア 原告は、被告が本件投稿3の各投稿にスクリーンショットを添付したウエブサイトは、全体として、原告がZ社とともに著作権を共有するものであるところ、上記投稿は、原告の著作権を侵害する旨主張する。
 しかし、証拠(甲3、17、26、乙22)によれば、本件投稿3でスクリーンショットが添付されたウェブサイトは、全て原告とは人格を異にする法人たるz社のウェブサイトの一部である。すなわち、このウェブサイトは、各ページの冒頭左上部分に、Z社の社名である「ZeroCrime」とのロゴが明記されていた上、ページの末尾には、「Copyright(c)2020ZeroCrimeCo.,LtdAllrightsReserved」と、同ウェブサイトの著作権が全てZ社に帰属する旨の表示も付されていた。また、ウェブサイ卜の内容としても、もっぱらz社の会社概要や製品を紹介するものとなっており、本件投稿で添付された部分も、メタモグループとの関係性や投資詐欺疑惑などについて、「弊社の見解」「弊社の対応」など、Z社が法人としての見解を公にするものとなっており、原告の個人的見解を述べる体裁、文面とはなっていない。一方、本件投稿3のうち番号16の投稿は、Z社の代表取締役である原告の経歴などを紹介するとともに、原告のみを正面から容貌が分かるように映した写真を掲載するページのスクリーンシヨットを添付しているものであるが、あくまでも同ウェブサイトの一部である上、原告が自身を紹介するような文面ではなく、Z社の代表取締役の経歴を客観的に記述する体裁をとっており、Z社がその法人情報の一部として公にしているものといえる(甲55)。
 以上からすると、本件投稿3にスクリーンショットが添付されたウェブサイトは、その公衆への提供の際に、Z社の社名を表示しているものとして、その著作者はZ社であると推定されるものである(著作権法14条)上、同ウェブサイト自体の中に、その著作権がZ社に帰属する旨明記されており、同ウェブサイトの内容もZ社に係る情報、見解を記載したものとして一貫しているのであるから、著作物性が認められるとした場合でも、その著作権は、原告個人ではなく、全てZ社に帰属するものと認められる(同ウェブサイトの実際の作成は、原告が担ったことがうかがわれるものの、Z社の代表取締役として作成したものといえ、職務著作(著作権法15条1項)として、Z社に著作者としての権利が帰属するものといえる。)。
イ この点、原告は、Z社が事業を実質的に停止して以降、上記ウェブサイ卜の維持管理に係る費用を原告が負担していることを理由に、同ウェブサイトの著作権が原告及びZ社の共有に属する旨主張するが、著作権の帰属主体に法的効果を及ぼす事情とはいえないため、原告の主張は採用できず、他に原告が、同ウェブサイトの著作権者であることを認めるに足りる証拠はない。
(2)小括
 以上の次第であり、争点C1、3ないしC5について判断するまでもなく、原告の本件投稿3に関する損害賠償請求は理由がない。
5 本件投稿4関係
(1)争点D3(本件投稿4が、原告の甲5文書に関する公表権を侵害するものであるか)について
 原告は、本件投稿4が、甲5文書に係る原告の公表権を侵害するものであると主張する。
 しかし、本件投稿4は、いずれも、被告が甲5文書に記載されている情報を断片的に要約ないし抜粋したものではあるものの、著作権法が保護対象とする表現として見ると、そのまま引き写すものとはなっていない。例えば、本件投稿4のうち番号19及び20の投稿は、甲5文書のうち、以下の部分に基づくものと認められる。
 「2020年11月頃にWeWork四谷から市ヶ谷駅近くの九段南ビルに移転しました。メタモグループにおいては、以前から■氏はオフィスを長期間空けることが度々ありましたが、移転以降は出社頻度がさらに減って行きました。2021年4月には■出身の新卒社員が2名入社しましたが、2021年の途中から■氏はほとんど出社しないようになったと記憶しています(月にもよりますが、月一回も出社しないこともざらでした)。」
 本件投稿4のうち番号19及び番号20の投稿と、甲5文書の上記部分とを対比すると、情報としては、前者は後者の内容をそのまま利用しているというべきではあるものの、言語表現としては、創作性が肯定できるだけのまとまりをもった表現部分について、両者間に同一性があるとは認められず、具体的表現としては異なるものというほかない。このことは、本件投稿4の他の投稿と、これに対応する甲5文書の表現部分とを対比しても同様である(甲5)。
 そして、本件投稿4について、甲5文書全体と対比しても、各投稿対応部分の上記のような表現上の差異に加え、本件投稿4の分量は甲5文書全体から見ると相当に限定的なもので、本件投稿4の表現から、甲5文書の表現の本質的な特徴が感得できるものでもない(甲5)。よって、本件投稿4は、甲5文書でなされた表現の全部又は一部を公表したものとは認められず、争点DI、D2、D4について判断するまでもなく、公表権侵害があったとする原告の主張は採用できない。
(2)争点D5(被告が、本件投稿4を投稿したことが、原告が公開を望まない機密情報を故意に流出させたもので、不法行為であると認められるか)について
 原告は、被告が本件投稿4を投稿したことが、甲5文書に含まれている原告が公開を望まない機密情報を故意に流出させたものであり、これが原告に対する不法行為を構成する旨主張する。
 この点、原告と被告ないし被告訴訟代理人弁護士との間で、甲5文書及びこれに含まれる情報の取扱いについて、特段の合意がされたことを認めるに足りる証拠はないところ、原告の上記主張は、これを前提とした場合であっても、被告による本件投稿4は、原告の法律上保護に値する利益を違法に侵害するもので、不法行為が成立する旨を主張するものと解されるので、以下、検討する。
ア まず、原告の主張は、本件投稿4が、原告の法律上保護に値する利益を損なうことを前提とするものであるが、かかる利益の具体的内容が判然としない。すなわち、本件投稿4の内容は、甲5文書に含まれていた情報のうち、Aの動向を中心としてメタモグループの業務等の経過を記述するものとなっており、原告のプライバシーや営業秘密など、これを公開されることによって、原告の私生活ないし業務上の支障を来すような情報であるとはうかがわれない。
 この点、原告は、甲5文書に、SNSなどインターネット上への投稿、公開を禁じる旨の記載をしていたものではあるものの、原告と被告ないし被告訴訟代理人弁護士との間でその旨の合意があったわけではなく、このような一方的な宣言によって、上記のような情報自体、あるいは、これを公開されない利益が、原告にとって法律上の保護に値するものとなるかについては、疑問があると言わざるを得ないし、仮にそのような法益性を認める余地があったとしても、その要保護性は高いものとはいえない。
イ 他方で、本件投稿4を含めた被告による本件アカウント投稿は、前記2で本件投稿1について検討したところと同様で、その表現態様に穏当でない面があるとはいえ、投資詐欺やその詐取金の資金洗浄といった公共の利害に関するものである上、これに関与、加担した者の行為や責任を明らかにしようという公益の目的によるものであることが否定できない。
 そうすると、上記アの記載のとおり、本件投稿4に含まれている情報あるいはこれを公開されない利益に関する原告の要保護性が高いものとはいえないこととの比較衡量のもと、被告が、本件投稿4の投稿をしたことは、甲5文書にSNSへの掲載を禁止する旨明示していた原告との関係で道義上の問題が生じる余地があり得るとしても、少なくともその内容、分量の限りにおいては、原告の法律上保護に値する利益を違法に侵害し、不法行為責任を発生させるような行為とは認められない。
ウ なお、原告は、被告訴訟代理人弁護士が、被告に対し、甲5文書を提供したことが、違法な情報流出である旨を前提として論を立てるものでもあるが、秘密保持について合意していたのであれば別段、そのような事実が認められない中で、原告の一方的な宣言によって、相手方の代理人弁護士に対し、保秘を求めたからといって、当該代理人弁護士の依頼者への情報共有について、法的な制約を課すことができると解するのは困難であるし、いずれにせよ、上記ア及びイで検討したところによれば、被告が甲5文書の内容に基づいて本件投稿4の投稿をしたことが、原告に対する不法行為を構成するものと認められないとの結論が左右されるものではない。
(3)小括
 以上の次第であり、争点DI、D2、D4及びD6について判断するまでもなく、原告の本件投稿4に関する損害賠償請求は理由がない。
6 本件投稿5関係
(1)争点E1(本件投稿5が、原告の肖像権を侵害するものであるか)について
 原告は、被告において、原告の写真を添付して本件投稿5の投稿をしたことは、原告の肖像権を侵害した旨主張する。この点、本件投稿5に添付されている2枚の写真は、いずれも人物として原告のみが大きく、正面から映っていて、その容貌が分かるものとなっている(甲6)。
 しかし、本件投稿5のうち番号16に添付された写真は、Z社のウエブサイト上で、代表取締役である原告の経歴等を紹介するページに掲載されていた写真のスクリーンショットである(甲6、55)ところ、同投稿に先立ち、原告の意思のもと、インターネット上で広く公開されていたものといえる。
 また、本件投稿5のうち番号9に添付された写真についても、原告の行政書士事務所のウェブサイトに掲載されていたもので(甲6、乙30、53、54)、原告の意思のもと、インターネット上で広く公開されていたものというほかない。
 そうすると、著作権上の問題が生じる余地があるかは別として、これら写真画像が添付された本件投稿5によって、原告の容貌がみだりに公にされたということはできず、その肖像権が違法に侵害されたものとは認められない。
 なお、原告は、本件投稿5に添付された写真画像が、原告に対する名誉棄損の文脈の中で用いられていた点を問題視するものとも理解されるが、この点については、本件投稿1に関する前記2のとおり、名誉棄損の不法行為による損害の額を判断するに当たって考慮したところであり、これとは別に、肖像権侵害の不法行為が成立する理由にまでなるものとはいえない。
(2)小括
 以上の次第であり、争点E2について判断するまでもなく、原告の本件投稿5に関する損害賠償請求は理由がない。
7 非金銭請求関係
(1)争点A4・B3・C6・D7・E3(謝罪広告の掲載の必要性)について
 原告は、被告に対し、1年間又は原告が後日指定した日のいずれか早い日まで、プロフィールの一番上に投稿を固定する形で、別紙6「謝罪広告目録」記載の謝罪広告を掲載することを請求しているが、謝罪広告の掲載期間について、「1年間」とある点は、本判決が確定する日の翌日を起算日とするものと解することができる一方、「原告が後日指定した日」という点について、原告は、本請求を掲げた訴訟提起時以降、本件口頭弁論終結時までに特段の指定をしなかったものであるから、本判決確定日の翌日を起算日として1年間の謝罪広告掲載を求める訴えとして解されるもので、このような解釈のもと、適法な訴えということができる。
 そこで検討するに、原告が求める謝罪広告のうち、脅迫行為と無断の肖像及び著作物の利用を認めて謝罪する部分については、前記3ないし6のとおり、謝罪広告請求の前提となっている原告主張の違法な権利侵害が認められないのであるから、原告の謝罪広告請求はいずれも理由がない。
 他方、原告が求める謝罪広告のうち名誉棄損を認めて謝罪する部分については、前記2のとおり、名誉棄損の不法行為が成立し、損害賠償請求が一部認容されるべきものではあるものの、現時点において、本件アカウントが削除され、本件投稿1を含む本件アカウントにおける投稿がすべて削除されたものである上、本判決自体をもって、原告の名誉の回復が図られることも踏まえれば、上記損害賠償に加え、更に、謝罪広告を掲載することを求める必要性があるとは認められず、やはり原告の謝罪広告請求は理由がない。
(2)争点A5・B4・C7・D8・E4(本件各投稿の削除請求権の有無)について
 前記前提事実のとおり、本件各投稿は、本件アカウントが削除されたことでいずれも削除されている。
 よって、本件口頭弁論終結時において、本件各投稿の削除請求は、その対象が存在するとは認められないから、同削除請求は理由がない。
(3)争点A6・B5・C8・D9・E5(各侵害行為の予防的差止請求の可否)について
ア 本件の予防的差止請求の訴えの適法性について
 原告は、被告に対し、今後、Xやその他インターネット上で、原告に対する誹謗中傷・名誉毀損及び脅迫、著作権侵害、肖像権侵害行為を行わないことを誓約することを請求しているところ、誓約との文言こそ用いているものの、被告による各侵害行為の予防的な差止めを求める給付請求であると解される。
 しかし、かかる請求は、被告が、本訴訟で原告の主張する各具体的侵害行為を行ったことを前提に、各侵害行為を一般的・規範的なものにまで抽象化した上で、対象行為を具体的に特定しないまま、抽象的に各侵害行為の将来的な禁止を求めるもので、いわゆる抽象的差止請求というべきものと解される(しかもその対象は、インターネット上の表現行為である。)。このような抽象的差止請求は、後の執行手続において、被告の具体的行為が債務名義上の抽象的な禁止対象行為(例えば、著作権侵害行為)に該当するかという実質的な判断を求めることを内包するもので、およそ強制執行としての実効性を欠き、ひいては、訴えとしての適法性を欠くものというほかない。
 したがって、上記の予防的差止請求は、不適法な訴えであり、却下を免れない(名誉棄損を除く各行為の差止めについては、前記3ないし6のとおり、差止請求の前提となる違法な権利侵害が認められないものでもある。)。
イ なお、以上は、あくまで抽象的な予防的差止請求の適法性を否定したものではあるものの、当然ながら、被告の再度の名誉棄損行為を容認する趣旨ではなく、被告が同様の名誉棄損行為に及べば、故意の違法行為と評価され、より重い責任が問われ得ることを付言する。
(4)争点B6(人格権に基づく接触等の予防的差止請求の可否)について
 原告は、被告に対し、今後、原告及びその周辺(「周辺」という意味は、原告が具体的な人物について特に主張していない以上、場所的な概念であると解される。)への接触、加害行為、接近行為、監視行為等を間接的直接的問わず行わないことを誓約することを請求しているところ、誓約との文言こそ用いているものの、原告の人格権に害が加えられることを予防する目的で、原告への接触、接近や監視といった行為の予防的な差止めを求める給付請求と解される。このような解釈に立てば、訴えとしての適法性までは否定されない。
 しかし、このような原告の請求は、被告から原告に対して違法な脅迫による人格権侵害があったことを前提にするものと解されるが、そのような侵害行為が認められないことは、前記3のとおりである。また、原告は、不法行為に該当するとして主張する被告の脅迫行為のほか、被告がLINE上で原告と直接連絡を取ることができるようにした、行政書士会の写真を投稿した(番号35の投稿)という主張もするが、そのような事実があり、原告として不快の念を抱いたとしても、いずれも人格権を違法に侵害するものとはいえず、他に、原告の上記請求の根拠となるような侵害行為があったことや将来そのような侵害行為に及ぶ蓋然性があることを認めるに足りる証拠はない。
 したがって、原告の上記請求は理由がない。
第5 結論
 よって、本件訴えのうち、各侵害行為の予防的な差止めを求める訴え(前記第1の4)は、不適法であるから却下することとし、被告に対し、民法709条に基づき、30万円及びこれに対する令和6年1月31日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める部分は理由があるから、これを認容することとし、その余の請求は、いずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。

大阪地方裁判所第21民事部
 裁判長裁判官 松川充康
 裁判官 島田美喜子
 裁判官 西尾太


(別紙1)本件投稿目録1
(別紙2)本件投稿目録2
(別紙3)本件投稿目録3
(別紙4)本件投稿目録4
(別紙5)本件投稿目録5
(別紙6)その他投稿目録
(別紙7)謝罪広告目録
(別紙8)呼称目録
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