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【事件名】アニメ「セーラームーン」コスプレ事件
【年月日】令和7年8月22日
 東京地裁 令和7年(ワ)第70028号 損害賠償請求事件
 (口頭弁論終結日 令和7年6月9日)

判決
 当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり


主文
1 被告は、原告に対し、42万9000円及びこれに対する令和5年8月13日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを3分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求
 被告は、原告に対し、150万7000円及びこれに対する令和5年8月13日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 本件は、原告が、被告がソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「Instagram」のアカウント(以下「被告アカウント」という。)を用いてした別紙投稿記事目録1及び2記載の各画像(以下、これらを併せて「本件各画像」という。)を伴う投稿(以下、順に「本件投稿1」、「本件投稿2-1」及び「本件投稿2-2」といい、また、本件投稿2-1及び2-2を一括して「本件投稿2」と、これらと本件投稿1を一括して「本件各投稿」という。)が、いずれも別紙著作物目録記載1及び2の各動画(以下、順に「本件動画1」などといい、一括して「本件各動画」という。)に係る原告の著作権(複製権及び公衆送信権)及び名誉感情を侵害したと主張して、著作権侵害及び名誉感情侵害の不法行為(民法709条)に基づき、被告に対し、合計150万7000円の損害賠償及びこれに対する本件各投稿の日である令和5年8月13日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いがない事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。枝番号のあるものは、特に明示しない限り枝番号を含む。)
(1)当事者
ア 原告は、事務所に所属し、動画共有プラットフォーム「TikTok」上で「●(省略)●」の名称を使用してアニメキャラクター等のコスプレを中心とした短尺動画の投稿やライブ配信を行っている者であり、本件各投稿時点のフォロワー数は約18万人であった(甲1)。
イ 被告は、本件各投稿を行った者である。
(2)本件各動画
ア 本件動画1
 原告は、自ら、アニメ「セーラームーン」の登場キャラクター「●(省略)●」のコスプレをした上で、カメラの画素数、配置やポーズ等を考えて、本件動画1(全59秒。甲5)を撮影した。その上で、原告は、これをTikTok上の自己のアカウント(以下「原告アカウント」という。)に投稿した(甲6)。
 本件動画1は、「●(省略)●#セーラームーン#劇場版セーラームーン #劇場版美少女戦士セーラームーン cosmos#コスプレ #コスプレイヤー」と題するものである。
 原告は、本件動画1の著作者として、その著作権を有する。
イ 本件動画2
 原告は、主として自身の顔部を被写体として、カメラの画素数、配置や被写体の角度等を考え、原告による雑談を内容とする「●(省略)●」と題する本件動画2(全3時間40分2秒。甲8)を撮影した。その上で、原告は、これを原告アカウントに投稿した。
 原告は、本件動画2の著作者として、その著作権を有する。
ウ 原告は、遅くとも令和5年8月14日時点において、本件各動画を含む原告アカウントに投稿された各種コンテンツについて、原告に無断で転載することを禁止する旨表示している(甲1)。
(3)本件各投稿
ア 本件投稿1
 被告は、令和5年8月13日、Instagram上の被告アカウントに本件投稿1(甲4)を投稿した。
 本件投稿1は、本件動画1の55秒時点の画像(原告がセーラームーンのコスプレをして写っているもの。以下「本件画像1-1」という。)を右側に、その左側に画像の加工をしていない原告の顔写真(以下「本件画像12」という。)をそれぞれ配置し、「#●(省略)●歳?●(省略)●歳?頑張ってます! #コスプレエフェクトあり」という記載を付したものである(甲4)。
イ 本件投稿2
 被告は、前同日、被告アカウントに本件投稿2(甲7)を投稿した。
 このうち、本件投稿2-1(甲7の1)は、本件動画2の2時間32秒54秒時点の画像(以下「本件画像2-1」という。)を貼付する形で本件動画2を利用すると共に、「#●(省略)●エフェクトなし」、「#●(省略)●」との記載を付したものである。なお、上記画像のうち左側の被写体が原告である。
 他方、本件投稿2-2(甲7の2)は、本件動画2の1時間57秒16秒時点の画像(以下「本件画像2-2」という。)を貼付する形で本件動画2を利用すると共に、「#●(省略)● エフェクトなし」、「#●(省略)●」との記載を付したものである。なお、上記画像のうち左側の被写体が原告である。
(4)本件訴訟に至る経緯
ア 原告は、Instagramを管理・運営するMetaPlatforms,Inc.(以下「メタ社」という。)を相手方とする発信者情報開示命令の申立てをし、令和5年12月5日、本件各投稿に係る発信者情報開示命令の決定を得た(甲2の1)。これに基づき、原告は、同月13日、メタ社より、本件各投稿に係るIPアドレス及びログイン日時並びに投稿者の電子メールアドレスの開示を受けた(甲2の2)。
イ 原告は、上記IPアドレスの調査結果に基づき、経由プロバイダであるソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社(以下「SNC社」という。)を相手方とする発信者情報開示命令の申立てをし、令和6年6月5日、本件各投稿に係る発信者情報開示命令の決定を得た(甲3)。
 これに基づき、原告は、同月24日、SNC社より、本件各投稿に係る発信者の情報として、被告の配偶者の氏名、住所及び電話番号の開示を受け、その後、被告から、本件各投稿の投稿者が自身である旨の申出を受けた。
第3 争点及びこれに対する当事者の主張
1 争点
(1)著作権侵害の成否(争点1)
(2)名誉感情の侵害の成否(争点2)
(3)原告の損害額(争点3)
2 当事者の主張
(1)争点1(著作権侵害の成否)について
(原告の主張)
ア 本件各投稿は、いずれも原告の著作物である本件各動画の画像を被告アカウントにアップロードすることでそのサーバーに有形的に再製したものであり、原告の著作物を複製したものである。また、本件各投稿による本件各動画の画像のインターネットへのアップロードは、公衆によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うもののうち、公衆からの求めに応じて自動的に行うものであるから、原告の著作物を自動公衆送信したものといえる。
 したがって、本件各投稿は、本件各動画に係る原告の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害したものである。
イ TikTok等の動画配信プラットフォームの標準機能として搭載されているシェア機能は、単にリンクをコピーしたり他の媒体に投稿したりするものであって、著作物の有形的再製を伴うものではなく、本件各投稿はシェア機能とは性質の異なる行為である。
 また、原告は、本件各動画を含む各種コンテンツの無断転載を禁止しており、本件各動画の利用を許諾していない。本件各投稿は引用による利用その他の権利制限規定の適用もない。
(被告の主張)
 本件各投稿当時、原告のプロフィールには、本件各動画について転載禁止との記載はなかった。また、TikTokに投稿された本件各動画は、Instagramその他のSNSに簡単にシェアできる機能を備えており、それを被告アカウント上でシェアしたものであるから、本件各投稿は原告の著作権を侵害するものではない。
(2)争点2(名誉感情の侵害の成否)について
(原告の主張)
 本件投稿1には、原告のコスプレをした写真(本件画像1-1)としていない写真(本件画像1-2)を並べた上で、「コスプレエフェクトあり」と記載されており、本件画像1-1にはエフェクト(加工)が施されているが、本件画像1-2には加工が施されていないことが示唆されている。このような記載と共に、「●(省略)●歳?●(省略)●歳?頑張ってます!」という原告の年齢に言及する記載をすることで、本件投稿1は、原告の容姿は実際には優れておらず、加工をすることで容姿を誤魔化していると揶揄するものと理解される。
 これは、原告の女性としての尊厳を毀損するだけでなく、インフルエンサーとしての尊厳をも毀損するものであり、社会通念上許容される限度を超え、その名誉感情を侵害する違法なものである。
 本件投稿2も、「エフェクトなし」(加工なし)との記載があることにより、本件投稿1と同様に、原告の容姿は実際には優れておらず、加工をすることで容姿を誤魔化していると揶揄し、原告の女性としての尊厳及びインフルエンサーとしての尊厳を毀損するものであり、社会通念上許容される限度を超え、その名誉感情を侵害する違法なものである。
(被告の主張)
 被告は、本件各投稿のいずれについても、悪意や誹謗中傷をする意図はなく、整形手術後にそれを隠すことなく動画配信等を行う原告のファンの一人として、原告を応援する趣旨で投稿したものである。原告自身、女性ファンを欲しがっており、エフェクトあり・なしの動画を投稿していたこと、それによりファンが増えたと考えられることなども踏まえると、本件各投稿は、社会通念上許される限度を超えるものではない。
(3)争点3(原告の損害額)について
(原告の主張)
ア 著作権侵害に基づく損害の一種であるライセンス料相当額の算定に当たっては、本件の場合、当該著作物の価値(創作に要したコスト、当該著作物の収益性)や著作権侵害行為の態様等を考慮すべきである。
 まず、本件動画1の制作には、動画の構成から編集まで10時間程度、衣装代1万5254円を要した。他方、本件動画2は、配信動画であるため編集等のコストはかかっていないものの、その動画の時間だけで3時間以上あり、かなりの労力を費やして制作したものである。
 また、本件各動画を投稿した原告アカウントは年間1000万円ほどの利益を上げるものであるから、同アカウントを構成する本件各動画の経済的価値は極めて高い。
 加えて、本件各投稿は、いずれも原告の女性としての尊厳を損なうために無断で本件各動画を使用したものであり、その経済的価値をも毀損するものである。
 したがって、本件各動画の経済的価値及びその利用態様の悪質性に鑑みれば、本件各投稿により原告が受けたライセンス料相当額の損害額は30万円を下らない。
イ 名誉感情侵害による損害について、本件各投稿は、いずれも原告の容姿についてネガティブな印象を与えるものであり、原告のインフルエンサーとしての人気を低下させるだけでなく、女性の尊厳を損なう態様のものである。このような本件各投稿により原告が受けた名誉感情侵害による損害額は30万円を下らない。
ウ 原告は、匿名でなされた本件各投稿の発信者である被告の特定のため、弁護士に依頼して発信者情報開示請求手続を行った。これに要した弁護士費用は合計77万円である。インターネット上で権利を侵害された者は、加害者を特定するために発信者情報開示手続を行う必要があるところ、これには専門的な知識が不可欠であり、通常、弁護士に依頼して行うほかない。そうである以上、これに要した費用は発信者である被告が負担すべきである。
エ 小括
 このほか、これらの合計額137万円の損害賠償を求めるために必要となった弁護士費用は、その10%である13万7000円を下らない。
 したがって、被告の不法行為である本件各投稿により原告が受けた損害は、合計150万7000円を下らない。
(被告の主張)
 不知、否認ないし争う。
第4 当裁判所の判断
1 争点1(著作権侵害の成否)について
(1)前提事実(2)のとおり、本件各動画は、いずれも原告を著作者及び著作権者とするものである。
 他方、前提事実(3)のとおり、被告は、令和5年8月13日、被告アカウントに本件各画像を含む本件各投稿を行った。これは、本件各画像をInstagramのサーバーにアップロードすることにより、いずれも原告が著作権を有する著作物である本件各動画に依拠してこれを有形的に再製して複製した上、送信可能化したものといえる。
 したがって、本件各投稿は、原告の本件各動画に係る著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害した不法行為と認められる。
(2)この点、被告は、本件各投稿当時、原告のプロフィールに本件各動画について転載禁止との記載はなかったことや、シェア機能により被告アカウント上でシェアしたものであることを指摘して、本件各投稿は原告の著作権を侵害するものではない旨を主張する。しかし、TikTokの規約等によりこれに投稿された動画その他の著作物に係る著作権行使が直ちに制限されることを認めるに足りる証拠はないから、TikTok(及びその他のSNS)がシェア機能を備え、これにより容易に投稿を他のSNSを含めユーザー間でシェアできることをもって、TikTok上の投稿の利用が当然に著作権侵害とならないことを意味するとみるべき事情はない。仮に本件各投稿当時原告のプロフィールに原告が投稿した動画等の著作物の転載を禁止する旨の記載がなくとも、この点は異ならない。この点に関する被告の主張は採用できない。
2 争点2(名誉感情の侵害の成否)について
(1)ある表現が仮に他者に対する侮辱的表現を含むものであったとしても、それが、当該他者の人格的価値に関して、具体的事実を摘示してその社会的評価を低下させるものではなく、当該他者が自身の人格的価値について有する主観的な評価である名誉感情を侵害するにとどまる場合、直ちに法的保護に値するような人格的利益の侵害となるものではなく、それが社会生活上受忍すべき限度を超える侮辱行為であると認められる場合に初めて当該他者の人格的利益の侵害と認められ得るに過ぎないと解される(最高裁第1小法廷平成17年11月10日判決・民集59巻9号2428頁、最高裁第3小法廷平成22年4月13日判決・民集64巻3号758頁参照)。
(2)検討
ア 本件投稿1について
 本件投稿1は、右側に加工を施した原告のコスプレ動画の画像(本件画像1-1)を、左側に加工を施していない原告の顔写真(本件画像1-2)を並べた上で、「コスプレエフェクトあり」、「●(省略)●歳?●(省略)●歳?頑張ってます!」との記載を付した投稿をしたものである。
 このような本件投稿1は、女性である原告の容姿及び年齢に言及すると共に、コスプレ画像である本件画像1-1については加工が施されていることに殊更言及していること、これに加えて、「頑張ってます!」との記載をも付していることに鑑みると、原告が、本件投稿1をもって、原告の容姿や年齢等を揶揄する趣旨を含むものと理解し、これに不快感ないし嫌悪感を覚えることは、十分に推認し得る。
 もっとも、本件投稿1それ自体に原告に対する誹謗中傷ないし人格攻撃と明確に理解しうる記載はなく、また、本件投稿1の前後を含む被告アカウントの投稿内容全体からそのような趣旨のものと理解し得ることをうかがわせる具体的な事情も見当たらない。加えて、原告は、事務所に所属してTikTok上でコスプレを中心とした短尺動画の投稿やライブ配信を行い、フォロワーを募っている者であり、投稿のシェアやコメントそれ自体を禁止しているといった事情もうかがわれない。
 これらの事情を総合的に考慮すると、本件投稿1は、少なくとも社会生活上受忍すべき限度を超えて原告を侮辱するものとまではいえないとみるのが相当である。
そうである以上、本件投稿1は、原告の主観的評価である名誉感情を侵害するものであるとしても、なお法的保護に値する人格的利益を侵害するものとはいえないから、これをもって違法ということはできない。これに反する原告の主張は採用できない。
イ 本件投稿2について
 本件投稿2は、いずれも、原告が配信したライブ配信動画の画像を貼付した上で、「●(省略)●エフェクトなし」などと記載した投稿をしたものである。いずれも原告の容姿を示すと共に画像に対する加工の有無に言及している点で、本件投稿1と同じく、原告が原告の容姿や年齢等を揶揄する趣旨を含むものと理解し、これに不快感ないし嫌悪感を覚えることは合理的に推認し得る。
 もっとも、本件投稿2それ自体に原告に対する誹謗中傷ないし人格攻撃と明確に理解しうる表現はなく、また、本件投稿2の前後を含む被告アカウントの投稿内容全体からそのような趣旨のものと理解し得ることをうかがわせる具体的な事情も見当たらないこと、原告が、事務所に所属してTikTok上でライブ配信等を行っていることなどの事情があることも、本件投稿1の場合と同様である。
 これらの事情を総合的に考慮すると、本件投稿2についても、少なくとも社会生活上受忍すべき限度を超えて原告を侮辱するものとまではいえないとみるのが相当である。
 そうである以上、本件投稿2は、いずれも、原告の主観的評価である名誉感情を侵害するものであるとしても、なお法的保護に値する人格的利益を侵害するものとはいえないから、これをもって違法ということはできない。これに反する原告の主張は採用できない。
(3)小括
 以上より、本件各投稿のいずれについても、原告は、被告に対し、名誉感情侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権を有しない。
3 争点3(原告の損害額)について
(1)著作権侵害による逸失利益
 原告が本件各動画の利用を許諾する際のライセンス料の率又は額は、証拠上明らかでない。しかし、証拠(甲5、8、11)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件動画1の制作費用として少なくとも衣装代1万5254円を支出すると共に、本件各動画の制作に当たり相応の手間と長時間を要したことがうかがわれる。また、前記のとおり、本件各投稿は、少なくとも原告にとって不快感ないし嫌悪感を覚えさせる内容のものと理解し得ることから、仮にこのような態様での利用を許諾する場合のライセンス料は、そのような事情の存在しない通常の場合よりも高率ないし高額になるものとみるのが合理的である。このことと、本件各投稿時点である令和5年8月当時における原告のTikTokでのフォロワー数は18万人程度であったこと(前提事実(1)ア)や、本件各動画を含む原告アカウントによる令和5年度の売上が年間1000万円程度であること(甲12)、他方、本件各投稿による著作権侵害が認められる本件各画像は合計3枚にとどまること、本件各投稿に対するコメントとしては本件投稿1についての1件にとどまり、本件各投稿が「いいね」等のリアクション数を得た数やシェアされた数、具体的な掲載期間等は明らかでないことなどを総合的に考慮すると、本件において原告が「受けるべき金銭の額に相当する額」(著作権法114条3項)としては、本件各画像の1画像当たり3万円、合計9万円と認めるのが相当である。これに反する原告の主張は採用できない。
(2)発信者情報開示手続関係費用
 インターネット上の投稿の発信者の特定に当たっては、これに必要な情報の開示に向けた開示命令の申立て等各種手続を要するものであり、被害者が自らこのような手続を行うことは困難であることも少なくない。このため、被害者が上記手続を弁護士に委任した場合に要した費用は、相当因果関係の認められる範囲内において、当該投稿による損害と認めることができる。
 前提事実(4)のとおり、原告は、弁護士に委任して、メタ社及びSNC社を相手方とする発信者情報開示命令申立手続を順次行い、被告を特定し得る発信者情報の開示を受けたものである。また、証拠(甲9)及び弁論の全趣旨によれば、これらの一連の手続に係る弁護士費用として、原告が77万円を要したこと(ただし、その算定根拠の詳細は不明である。)が認められる。
 これら一連の裁判手続の経過、その委任事務の内容その他一切の事情を踏まえると、上記弁護士費用のうち30万円をもって本件各投稿と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。これに反する原告の主張は採用できない。
(3)弁護士費用相当損害額
 本件訴訟の経過、著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求の認容額その他一切の事情を考慮すると、被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用相当損害額については、3万9000円とするのが相当である。これに反する原告の主張は採用できない。
4 まとめ
 以上より、原告は、著作権侵害の不法行為に基づき、被告に対し、合計42万9000円の損害賠償請求権及び不法行為の日である令和5年8月13日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金請求権を有する。
第5 結論
 よって、原告の請求は、主文の限度で理由があるからその限度でこれを認容し、その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第47部
 裁判長裁判官 杉浦正樹
 裁判官 池田幸子
 裁判官 松尾恵梨佳


別紙 当事者目録
原告 X
同訴訟代理人弁護士 田中圭祐
同 吉永雅洋
同 蓮池純
被告 Y

(別紙投稿記事目録1、2及び著作権目録省略)
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