裁判の記録 line
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1999年
(平成11年)
[1月〜6月]
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1月14日 月刊誌「宝石」の虚報事件
   名古屋地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 1980年に起こった「富山・長野連続誘拐殺人事件」の犯人である女性死刑囚が、光文社発行の月刊誌「宝石」に虚偽の事実や事件に関係のないプライバシーを書かれたとして、同社と執筆者に慰謝料300万円と謝罪を求めていた訴訟で、名古屋地裁は同社と執筆者に総額30万円の支払いを命じた。判決は原告の訴えを認め、同社らに原告の被った精神的損害を賠償すべき義務があるとした。 

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1月14日 「女性セブン」のプライバシー侵害事件
   奈良地裁葛城支部/判決・請求一部認容、一部棄却
 タレントの堀ちえみさんとの離婚を裁判で命じられた医師が、週刊誌「女性セブン」に家庭内の問題を無断で書かれ、プライバシーを侵害されたとして、発行元の小学館に慰謝料など1千万円の損害賠償を求めていた訴訟で、裁判所は原告の主張を一部認め、同社に100万円の支払いを命じた。原告側は「子供の氏名や自分の診療所の写真が掲載され、私生活が侵害された」とし、小学館側は「原告はマスコミから多大な注目を受けることを承知で結婚したので、家庭生活のプライバシーを放棄した」と主張していた。

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1月26日 「河内ワイン」商標事件
   大阪地裁/請求棄却
 「河内ワイン」の商標権をもつ大阪・羽曳野市の製造会社「河内ワイン」が、同市の別の業者(「飛鳥ワイン」)に、同じ商品名の使用禁止と2700万円の損害賠償を求めていた訴訟で、大阪地裁は請求を全面的に退ける判決を言い渡した。判決は、金剛山や生駒山麓の河内地方が昭和初期から有名なブドウの産地であったことや、複数の業者が「河内ワイン」の名前でワインをつくっていた、と指摘し、「河内ワイン」社の商標は、「河内ワイン」という文字だけでなく、文字の配置や外観など全体のデザイン構成が一体となって初めて他社のワインと区別する機能をもつと認定した。「飛鳥ワイン」の社長は「この名称は一社が独占できるものではないと考えていた。今回、ハッキリと認められ、ホッとした」と話し、「河内ワイン」の専務は「名前を広めるために多額の宣伝費をかけるなど努力して商標も取得したのに、これでは何のためのライセンスか分からない」と嘆いている。

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1月27日 カラオケ無断使用事件(高松市)
   高松地裁/仮処分申請
 日本音楽著作権協会(JASRAC)四国支部は、高松市内の二つの飲食店が10年ほど前から契約を結ばないままカラオケを利用してきた行為は、著作権の侵害にあたるとして、演奏の差し止めとカラオケ機器の撤去を求める仮処分を高松地裁に申し立てた。日本音楽著作権協会が、カラオケ利用をめぐる著作権の侵害で仮処分申請をしたのは、四国では平成5年以来とのことだが、四国四県で契約をしていない店はおよそ30%、協会では順次、仮処分を申し立てるという。

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1月27日 「無断」文庫化事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 出版社が、著作者から委任を受けた編集プロダクションと出版権設定契約を取り交わして単行本を出版した。その1年後、著作者は他社から無断で文庫本を出版した。出版社は契約違反として、著作者と文庫版出版社に損害賠償請求をしたが、裁判所は、著作者と編集プロダクションとは出版権設定に関する正式な委任契約を取り交わしていないこと、また代わって出版権設定契約を取り交わした事実を著作者に知らせていないことを理由に、請求を斥けた。
判例全文
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1月28日 「ウルトラマン」裁判管轄事件
   東京地裁/判決・請求却下(控訴)
 タイ人実業家が、「ウルトラマン」のアイデアを提供したと称し、その著作権を共有していると主張し、タイでウルトラマンを商品化しているバンダイなどに警告書を送ったことに対して、著作権者円谷プロが事業を妨害されたとして提訴した。裁判所は、すでにタイ国で裁判が始められれていることを重視し、国際裁判管轄権がわが国に及ぶケースではないと判断した。
判例全文
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1月29日 古文単語の語呂合わせ侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 古文単語の語呂合わせ書籍を先行して著した著者が、7年ほど後に出された同種の大学受験用書籍を著した著者を、著作権侵害だと訴えた。古文の語呂合わせ文に著作物性があるかどうかが問われた。裁判所は、争点の著作物性の有無と複製権、翻案権、氏名表示権、同一性保持権侵害について検討を加え、一部個性的な表現を認め、著作物性を肯定した。侵害だとされた42語のうちの3点について原告書籍の依拠を認め、複製権・氏名表示権侵害に限り認定して、慰謝料と合わせ、計10万円の損害賠償を命じた。
判例全文
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1月31日 「杵屋うどんすき」商標事件(3)
   最高裁/上告棄却
 鍋料理「うどんすき」の登録商標をめぐる熱い論争が決着した。「本来はうちの料理だけを指す造語」と訴えていたのは大阪市の老舗「美々卯(みみう)」だが、裁判所は「長年広く使われ、すでに普通名称になっている」と判断した。敗訴は、かつての高級創作料理が70年を経て庶民にも支持される「おなじみの味」になった証ともいえる。「うどんすき」を考案したのは、現在の美々卯社長の祖父の代で1928年から29年にかけて完成させた。名称も独自に考案し、58年以降、「うどんすき」の文字を使った3種類の商標を登録した。他の店が「うどんすき」という名前を使っているのに美々卯が気づいたのは、昭和30年代で、これまでに百数十の業者に「うどんなべ」や「なべすき」などの名前に変えてもらい、コンビニエンスストアでのアルミ鍋入り「うどんすき」の販売も止めさせた。それでも多くの店のメニューに「うどんすき」が加わるようになっていったという。今回問題となっていたのは、全国に約500店をもつ外食大手産業の「グルメ杵屋」(大阪市)が登録した「杵屋うどんすき」という商標。法律で認められない類似商標にあたるかどうかが争点で、6年近く争っていた。97年11月の東京高裁の判決は「『うどんすき』という言葉は、考案当時は美々卯の商品を表示する機能があったが、次第に京阪神を中心にうどんを主材料にした鍋料理を意味する語として使用されるようになった」と指摘。「杵屋が商標登録した91年当時は、『うどんを主材料とし、魚介類、鶏肉、野菜類等の具を合わせて食べる鍋料理』を意味するものと広く認識されていた」と述べ、普通名称化したと認定した。そのうえで、「杵屋うどんすき」という商標のうち「杵屋」の部分に着目し、「類似商標ではない」と結論づけた。美々卯は上告したが、昨年12月、最高裁判決で確定した。裁判を終えて、杵屋側は「相乗効果で、それぞれの店のうどんすきが支持されればいい。あとは値段や中身でお客さんが選ぶこと」と話している。一方、美々卯側は「商標をめぐる法制度がもっと早く現在のように整備されていれば、次々に真似されるようにはならなかった」という。さらに「杵屋とのケースでは敗訴したが、『うどんすき』は依然としてうちの登録商標。むやみに使えるものではない」としている。

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2月4日 「甲山事件」モデル小説損害賠償等請求事件(3)
   最高裁(一小)/判決・上告棄却(確定)
 1974年に兵庫県西宮市の知的障害児施設で起きた「甲山事件」で殺人罪に問われた元保母の被告が、事件を題材にしたモデル小説で犯人扱いされ、名誉を傷つけられたとして、著者と出版社二社に損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第一法廷は計176万円の賠償を命じた二審判決を支持、著者らの上告を棄却した。判決理由で「この小説は事実を示すものであり、出版により名誉が棄損されたとした二審の判断は是認できる」とした。小説名は『捜査一課長』で、出版社は集英社と祥伝社。モデル小説と名誉棄損についての先例的な訴訟として注目された。一審は「素材の事実と虚構が混然となったモデル小説で、モデルの社会的評価を低下させれば違法。この小説は原告が事件の犯人との印象を与える」と著者らに賠償を命じた。二審も「プライバシーや名誉との関係で、小説の表現の自由が常に優先するとはいえない」と同様の判断をしていた。

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2月15日 「キューピー」著作権侵害事件A(日本興業銀行A)
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 「キューピー」人形の著作権を有するローズ・オニール遺産財団(アメリカ)が、日本興業銀行に対して、イラストおよび人形の複製禁止と破棄を求め、10億円の損害賠償請求を行った。弁論の途中で、財団は本件請求原因に係る著作権、不当利得返還請求権、損害賠償請求権を第三者に譲渡したとして、訴訟脱退を図った。その訴外第三者から同一内容の請求がなされ、銀行側は財団の訴訟脱退を承諾せず、裁判所は終局判決をするとして原告の請求を棄却した。
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2月19日 「スイングジャーナル」事件
   東京地裁/判決・請求棄却(確定)
 
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2月24日 キング・クリムゾン事件(2)
   東京高裁/判決・取消
 英国の有名なロックグループ「キング・クリムゾン」の写真などが、エフエム東京(東京都千代田区)の出版本に無断で使われたとして、グループの一人ロバート・フィリップ氏が同社に損害賠償などを求めた訴訟で、東京高裁は「著名人を紹介する出版物に肖像等が使用されることを著名人は原則的に甘受すべきだ」として、同社に40万円の支払いと販売中止を命じた一審判決を取消し、フィリップ氏の請求を棄却した。著名人が氏名やその肖像によって、顧客を引きつける効果を独占的に利用する権利(パブリシティ権)を、同書が侵害したか否かが争点となっていた。
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2月25日 「キャンディ・キャンディ」事件(アドワーク)
   東京地裁/判決・請求認容(控訴)
 人気漫画「キャンディ・キャンディ」をめぐり、原作者の水木杏子さんが漫画家のいがらしゆみこさんに出版などの差し止めを求めた訴訟で、東京地裁は水木さんにも著作権があることを認め、いがらしさんに出版などの差し止めを命じる判決を言い渡した。裁判長は「漫画は、原告が作成した原作の原稿を基に、いがらしさんが作成した。従って、水木さんの許諾なしにキャラクターを使用することはできない」と指摘した。いがらしさんは「水木さんの原稿を大幅に変更して漫画を作成した」と反論したが、判決は「いずれも細部の変更にすぎない」と退けた。両者は95年11月、「キャラクター使用には同意が必要」との契約を結んだが、いがらしさん側が契約を守らなかったという。水木さんの弁護士によると「共同著作の漫画をめぐり、原作者と漫画家との権利関係を明確にした判決は初めて」という。
判例全文
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2月25日 松本清張・映像化リストの著作権侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却(確定)
 映画化やテレビ化された故松本清張の小説リストを著作物に掲載したのは著作権侵害だとして、清張作品の映像化業務を行いリストを作った会社の元役員が、出版元の中央公論新社と作家の阿刀田高氏に著作物の出版差し止めなどを求めた訴訟で、東京地裁は元役員の請求を棄却した。原告側のリストが著作物にあたるかどうかが争点だった。判決は「映像化の事項以外は何ら言語的記載がなく、思想や感情を創作的に表現したとは言えず、著作物には当たらない」と指摘。「事実情報の選択や配列にも独自性はなく、リストが著作物として保護すべき創作性があるとは認められない」とした。
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2月25日 エアガンの模倣品事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 
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2月26日 宝石取引情報ソフト職務著作事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 
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3月8日 『名もなき道を』のプライバシー侵害事件(2)
   東京高裁/和解
 柴田錬三郎賞を受賞した小説『名もなき道を』で、著者の旧制高校時代の同級生の妹夫婦が、「兄を主人公のモデルにされ、プライバシーを侵害された」として、著者と出版元の講談社に慰謝料の支払いなどを求めていた訴訟は、控訴審の東京高裁で和解が成立した。原告が「精神的苦痛を受けた」ことを著者らが認め、妹夫婦に和解金を支払った。小説は、医師になることを期待された病院長の長男が、色覚異常のため医師になれず、司法試験に20回も挑戦した後、奇行をくりかえすようになるというもの。和解条項では、作品をドラマ化したり、書籍を宣伝する際には、主人公が「実在の人物とは一切関係のない」ことを明示するとしている。一審の東京地裁は「小説は実在の人物をモデルとしているが、創作過程において、デフォルム(変容)されており、プライバシー侵害の問題は生じない」と、原告の請求を退けていた。

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3月9日 中古のゲームソフト販売事件A(ドゥー)
   東京地裁/判決・請求認容
 中古の家庭用ゲームソフトウエアを無断で販売され、著作権を侵害されたとして、ソフトを製造、販売している「カプコン」(大阪市)など5社が、ソフト量販店の「ドゥー」(相模原市)に販売差し止めなどを求めた訴訟は、東京地裁の口頭弁論でドゥー側が請求を全面的に受入れ、終結した。ドゥー社は昨年5月、神奈川県内を中心にした約60店で、原告の5社が開発した中古品を買い取り、許可を受けずに新品の1〜9割の価格で販売したという。原告側は「莫大な投資でソフトを開発し作り上げた市場に、ただ乗りするもの」と批判していた。

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3月9日 国語副教材への作品無断使用事件(教材出版6社)
   東京地裁/仮処分申請
 教科書に掲載された作品が小学校向けの国語教材に無断使用されたとして、詩人の谷川俊太郎氏らから著作権の管理委託を受けた「日本ビジュアル著作権協会」(曽我陽三理事長)は、新学社や日本標準など大手教材出版会社6社に対して、教材の出版差し止めを求める仮処分を申請した。申請書などによると、6社は作者の許可を得ず、作者名も記載しないまま教材に作品を使用しているが、これは著作権の侵害にあたるとしている。このため谷川氏や詩人で作家の三木卓氏、児童文学作家の長崎源之助氏ら9人の作品、計27点が掲載された一学期分の教材について仮処分を申請した。著作権法では、教科書への作品使用は補償金を支払えば自由にできるが、教材に使うには著作者の許諾が必要となる。これまで教材会社側は「著作権法に認められている引用」として、教科書会社側に年間1億5千万円の謝金を支払うだけだった。しかし、日本図書教材協会の清水厚実専務理事は「適法な引用だとする従来の主張を改め、作家の団体と使用料を支払うための話し合いを始めている」としている。教材への文学作品の使用をめぐり、作家の側が著作権の侵害を主張して裁判所で争われるのは初めて。

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3月10日 小説『ブタペスト悲歌』改変放送事件(2)
   東京高裁/判決・変更(上告)
 小説『ブダペスト悲歌』(1989刊)などの作品で江差追分節のルーツを描いた元朝日新聞記者が、「無断でこの仮説に基づくテレビ番組を制作、放映された」として、NHKと担当職員らを相手に800万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、東京高裁は著作権侵害と名誉棄損の主張を認めてNHK側に総額240万円の支払いを命じた一審を変更し、改めて60万円の支払いを命じる判決を下した。裁判長は「放送内容は著作権の侵害に当たるが、元記者の仮説に対する社会的評価は確立しているとは認められない」と述べ、名誉棄損を理由とした請求部分を退けた。一、二審判決によると、元記者は「江差追分の源流はウラル地方にある」とする独創的な仮説を打ち出した。ところがNHK函館放送局は元記者に無断で著作の一部を翻案して「ほっかいどうスペシャル・遙かユーラシアの歌声−江差追分のルーツを求めて」と題する番組を制作し、90年10月18日に北海道で放送した。元記者は「判決がNHKの無断使用を認めながら、名誉棄損を認めなかったのは不服だ。上告の方向で検討している」と話した。
判例全文
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3月10日 菓子包装紙模倣事件
   静岡地裁/提訴
 各地の観光地で土産物として売られている菓子の包装をまねられ、損害を受けたとして菓子製造会社「一富士製菓」(静岡市)が、同じ菓子製造会社「世起」(愛媛県松前町)と同社長らに不正競争防止法に基づく約5000万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。一富士製菓は1996年からチーズクリームを挟んだケーキ「チーズブッセ」を製造し、神奈川、静岡、愛知の各県などの東名高速道路のサービスエリアや観光地の売店で販売している。世起は97年2月頃から、図柄や色の酷似した菓子の包装紙や手提げ袋を用い、名神高速道路のパーキングエリアの売店などで同社の菓子の販売を始めたとされる。世起側は「包装のデザインをまねたことは認めるが悪意はない。現在は使っていない。賠償の金額が適当と判断されれば裁判所の決定に従う」と話している。

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3月11日 胃腸薬名類似表示事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 胃腸薬「セイロガン糖衣A」を販売している大幸薬品(大阪府吹田市)が、類似した表示の製品を販売され、損害を受けたとして、「正露丸糖衣錠AA」の名称で胃腸薬を製造し、販売した富山市内の製薬会社二社(渡辺薬品工業、日新薬品)に対し、不正競争防止法に基づき約4200万円の損害賠償を求めた訴訟は、「類似した表示を使った二社には過失がある」として、両社に約1600万円の支払いを命じた。二社は95年から97年まで「正露丸糖衣錠AA」の名で約1億6000万円の売上げを得た。裁判長は二社の利益を売上の1割と認定し、これが大幸薬品の損害と判断した。

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3月11日 「チボリ」の商標権侵害事件(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却
 岡山県倉敷市にオープンしたテーマパーク「倉敷チボリ公園」をめぐり、兵庫県宝塚市のレジャー施設業者「チボリ」が、表示が類似するため営業上の利益や商標権を侵害するとして、経営主体の「チボリ・ジャパン」に名称や商号の使用禁止と1000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審は、一審に続いて請求棄却となった。一審の神戸地裁は97年8月、「チボリは世界的に有名なデンマークの都市型遊園地を示す名称で知られる。宝塚チボリ独自のものではない」と判断、チボリ側が控訴していた。

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3月15日 元リクルート会長のプライバシー侵害事件
   東京地裁/提訴
 リクルート社の元会長が、「妻との間の民事訴訟の記録を基にした記事を『週刊文春』に掲載され、プライバシーを侵害された」として、出版元の文芸春秋に1000万円の損害賠償を求める訴えを起こした。問題とされたのは、同誌の今年2月11日号に掲載された「あの前会長が法廷で夫人との泥沼訴訟合戦」と題する記事。前会長と夫人が、自宅の占有権をめぐって同地裁で争っていることを伝えた。

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3月17日 「函館新聞」商標登録事件(特許庁)
   特許庁/審決・請求不成立
 北海道新聞社が出願した「函館新聞」など4件の商標登録について、特許庁が登録を認めずに「拒絶査定」したことに対し、道新が不服申立の審判を求めていたが、同庁は道新の主張を退けて拒絶査定を支持し、審判請求は成り立たないとの審決を出した。審決では、道新が当初出願した9件(後に5件取り下げ)の商標について、(1)函館新聞(函館市)の創刊構想を知った直後に登録出願したのは、通常の企業行動からみて不自然(2)9件の出願は新聞業界の事情からしても異例に多いなどと指摘、その上で「函館新聞の創刊構想に対抗することが主たる動機とみるのが自然であり、公序良俗を害する恐れがある」として、同庁の登録拒絶に誤りはなかったとした。

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3月18日 「三国志V」事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却、新請求棄却(上告)
 パソコン用シミュレーションゲーム「三国志III」の登録プログラムに代わって、他社が新たな登場人物の能力値を設定できるFD「三国志IIIガイドブック」を制作発売したことが、「三国志III」の著作人格権侵害にあたるか争われた事件。東京地裁は、原告の訴えを斥けたが、高裁も改変にあたらないとし、さらに「三国志III」が映画の著作物であるという控訴審での原告の主張も、内容からそれに該当しないとして斥けた。
判例全文
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3月26日 イルカ写真事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(確定)
 イルカ等を撮影した写真家が、CD−ROM収録の作品を情報雑誌に無断転載をされたと発行元の毎日コミュニケーションズに対して損害賠償請求の訴えを起こした。判決では「写真家の許諾を得たという証拠がないことから複製権侵害」を認めた。併せて「氏名表示権侵害と、写真の上下左右を一部切断した掲載は同一性保持権侵害」と認定した。さらに、「著作権侵害、著作者人格権侵害に関する注意義務を怠った」として、慰謝料も含め178万円の支払いを命じ、謝罪広告掲載は認めなかった。
判例全文
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3月26日 旅行業務教科書の出版契約事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 国際観光論を専門とする学者と挿絵画家である妻が、教材執筆の印税等未払い分の支払いを求めて、旅行業務取り扱いに関する研修を主に行う社団法人を訴えた。教材の印税計算方法の変更や著作権譲渡の交渉が以前行われたが、双方の合意がなかったことで争議となった。地裁は「平成8年度の印税未払い請求を認め、別途原稿執筆の未払い分と合わせて150万4912円の支払い」を命じた。なお、妻の挿絵の同一性保持権侵害の主張は斥けた。
判例全文
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3月29日 舞台装置をめぐる名誉毀損事件
   東京地裁/判決・第一事件請求一部認容、一部棄却(控訴)
 /第二事件請求棄却(確定)
 第一事件では、舞台演劇『赤穂浪士』の舞台装置には著作権侵害があるとの記者会見を行った造形美術作家、評論家、大学教授の三名に対して、指弾された美術家と劇団「スコット」が、名誉毀損だと訴えた。第二事件は当該の造形美術作家が、舞台装置を担当した美術家と演出を担当した演出家および劇団「スコット」に対して、著作権侵害だと訴えたものである。第一事件の判決では「担当美術家の制作行為は著作権侵害には当たらないとして、十分に調査して他人の名誉を損なわないように注意すべきであった三名には過失があると、連帯して美術家と劇団『スコット』それぞれに50万円を支払うよう命じた。」なお、謝罪広告の掲載請求は認めず、また第二事件については「理由がない」と棄却した。
判例全文
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3月29日 出版権設定契約による文庫本事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 『空想科学読本』を発刊、翌年『空想科学読本2』を刊行、さらにその翌年、同時に両書籍を文庫化しようとした宝島社と該当書籍の執筆者との間で、交わされていた出版契約の記載条項の解釈をめぐり争いとなった。原告宝島社と3名の被告との契約では出版権が設定されていた。この条項の中に「被告は、本著作物を文庫本として刊行する第一優先権を、原告に与えるものとする」との定めがあった。この規定に基づき、被告らは文庫版を執筆者の了解を得ることなく発行しようとした原告に対抗し、文庫本発行、販売などの差止を申し立て、その求めを認める仮処分命令が発令されていた。
 裁判上で、原告は「設定された出版権は、単行本か文庫本かという判型の違いによって分割され得ない性質のものだ」と主張した。しかし、裁判所は「契約条項で第一優先権を出版者に与えると規定するのは、その前提として、各出版契約において認められる複製及び頒布の権利が該当書籍の文庫版に及ばないこととする旨の合意を含む趣旨である」と解するのが合理的だとの判断を示した。結論として、発行できなかった損害の賠償を求め文庫本を出版する権利の存在を確認する原告の請求には理由がないとして、請求を棄却した。
判例全文
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3月29日 ELLEが商標権裁判C
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 
判例全文
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4月8日 「キャンディ・キャンディ」事件(いがらしゆみこ美術館)
   東京地裁/仮処分申請
 少女漫画「キャンディ・キャンディ」の著作権をめぐる裁判で、原著作権があると認定された原作者の水木杏子さんが、「勝訴後も主人公の絵を無断使用した商品を販売している業者がある」として、この業者らに販売差し止めなどを求める仮処分を東京地裁に申し立てた。差し止めを求められたのは、岡山県倉敷市で「いがらしゆみこ美術館」を運営する東京都内の会社と、インターネット上のホームページを通じて商品を通信販売する都内の一男性。美術館の方は絵はがきやシールなど計46点が対象、インターネット接続業者には関係する画像データの削除などを求めている。2月25日の東京地裁の判決で敗訴した漫画家のいがらしゆみこさん側は、それを不服として東京高裁に控訴している。

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4月14日 「懐メロ」のCD輸入販売事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 「日本コロンビア」など大手レコード会社5社が、それぞれ専属契約を結んでいた歌手の「懐メロ」などを無断でCDなどに録音、販売され、著作権を侵害されたとして、CDの輸入販売会社3社に販売の禁止と約5500万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は販売の禁止と約4100万円の支払いを命じた。3社は「エー・アール・シー」「エフアイシー」「総通」で、藤山一郎、美空ひばりさんら歌手18人(うち13人は死去)のCDやカセットテープをチェコ共和国で製造して輸入し、約51万枚販売した。対象となった歌は、現行の著作権法が施行された1971年より前に録音されたため、旧著作権法上の著作権の存続期間が問題となったが、裁判長は本件著作隣接権(旧法では著作権)は法人のものではなく、歌手個人のものであり、「旧法の著作権は、歌手が死亡してから30年間存続するが、いずれの歌手(13人)も死亡してから30年経っていない」と述べ、存続を認めた。
判例全文
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4月14日 カラオケ無断使用事件(水戸市)
   水戸地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 カラオケパブが著作権料を支払わないのはカラオケ機器のリース業者にも責任があるとして、日本音楽著作権協会(JASRAC)がリース会社(茨城県つくば市)とパブ経営者(同県伊奈町)を相手に約1400万円の損害賠償などを求めていた訴訟で、水戸地裁は両者に約1250万円の支払いを命じた。同パブは1995年に著作権侵害差し止めの仮処分の執行を受けたが、その後も同じリース会社から新たに機器を借りて営業した。

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4月15日 カラオケ使用料逃れ事件(福岡県田川市)
   福岡地裁/提訴
 日本音楽著作権協会(JASRAC)は、「許可を受けずにカラオケを利用して著作権を侵害した」として、1998年7月に会社を清算した福岡県田川市のカラオケボックス経営者ら3人に、9年分の著作権料など約1200万円の損害賠償とカラオケ使用禁止を求める訴えを起こした。この店は会社清算後も同じ施設を使って営業を続けており、同協会は「著作権料支払いを逃れるための偽装解散」と主張している。同協会はこれまでに全国で25件の訴訟を起こしているが、「偽装解散」を理由として賠償を求めたのは初めて。

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4月15日 「函館新聞」商標登録事件(2)
   東京高裁/提訴
 北海道新聞社は「函館新聞」などの新聞題字4件の商標登録を拒絶し、道新の審判請求を退けた特許庁の審決を不服として、特許庁長官を相手取り審決の取消しなどを求める訴訟を東京高裁に起こし、判断を仰ぐことになった。道新は「将来、さまざまな形態の新聞を出す際に使用する題字の候補として商標を出願したもので、函館新聞社(函館市)の題字選択の幅を狭めたとする審決は誤り」、さらに「審決には事実認定に多くの誤りがある」と指摘している。

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4月22日 カードリーダー事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 
判例全文
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4月27日 「ときめきメモリアル」無断改変事件A(2)
   大阪高裁/判決・一部変更、一部控訴棄却(上告)
 ゲームソフトのストーリーを省略できるメモリーカードの販売は著作権の侵害にあたるとして、「コナミ」(神戸市)が「スペックコンピュータ」(福岡市)に約1000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は、請求の大半を退けた一審判決を変更、コナミ側の主張を全面的に認め、ス社に約150万円の支払いを命じた。裁判長は「データに保存された映像、音声を再生し、プレーヤーの主体的参加でゲームが進められる点で、『ゲーム映像』というべき著作物を形成している」と判断した。カードはソフト本体のデータを直接改変するものではないが、併用した場合は「内容の重大な改変をし、著作権の侵害にあたる」とした。一審は「許諾を得ず、ソフトの絵柄を使ったカードの販売は著作権の侵害」と、ス社に約15万円の賠償を命じたが、「カードの使用はプレーヤーの選択であり、ストーリーの改変とまではいえない」としていた。
判例全文
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4月27日 女性アナウンサーの紹介本、無断盗用事件
   東京地裁/提訴
 全国の女性アナウンサーを紹介した本から写真や談話を無断で盗用した本を出版され、著作権を侵害されたとして、株式会社「共同通信社」(通信社の関連会社)は、竹書房に1000万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求める訴えを起こした。共同通信社は『アナウンサーのすべて』という本をテレビ局や本人の了解を得て出版したが、竹書房の『女子アナ完全バイブル』はその本からの無断盗用というもの。

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4月28日 浪曲演目の著作権侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 『猫虎往生』という作品を著作・口演していた浪曲家(原告)が、ラジオ放送で同作品を『猫虎』と題名変更し、口演時間約30分のものを約23分30秒に短縮して口演した浪曲家(被告)を、著作権侵害だとして、損害賠償と謝罪広告を求めた事案である。
 裁判所は証拠を確認し、原告が『猫虎往生』を創作したと、著作権者であることを認めた。次に、被告のラジオ放送が無断での口演であったため、上演権、放送権を侵害するとし、時間短縮のため台詞削除などの改変を加えた行為は、同一性保持権を侵害するとも判断、損害額は10万、著作者人格権への慰謝料は10万円で計20万円の支払いを命じ、謝罪広告請求は棄却した。
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4月30日 国語副教材への作品無断使用事件
       (日本ビジュアル著作権協会)
   東京地裁/提訴
 詩人の谷川俊太郎さんらの作品が国語の教材に無断使用され、「著作権を侵害された」として争われている訴訟をめぐり、日本図書教材協会と新学社や日本標準など出版5社は「違法な仮処分の申立てや提訴で損害を受けた」として、「日本ビジュアル著作権協会」の曽我陽三理事長を相手に1億6000万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。訴状によると、「日本ビジュアル著作権協会」の行為は弁護士法に違反しているうえ、全国の教育委員会や学校長宛に「副教材は回収されることになり、使用すれば弊害が起きる」との文書を配付したという。

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5月7日 米国の教授父娘射殺報道事件(TBSほか)
   東京地裁/提訴
 1996年5月、米国カリフォルニア州で現地の大学教授と長女が射殺された事件の報道で、「名誉を傷つけられた」として、大学教授の夫人がTBSやテレビ朝日、スポーツニッポン新聞東京本社、AP通信社に総額2000万円の損害賠償を求める二件の訴訟を起こした。夫人は同様の訴訟をすでに7件起こしていて、今回で計9件となる。夫人が事件に関与したかのような報道や自宅の購入価格の公表、事実でない離婚記事などで、プライバシーが侵害されたとしている。夫人の救済申立てを受けた「放送と人権等権利に関する委員会」は昨年3月、「民法の放送に倫理上の問題はあったが権利侵害はなかった」と決定。原告側代理人は「決定で救済措置がとられず、その後テレビ局側が交渉に応じないので提訴した」としている。

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5月17日 「大真実!?」事件
   水戸地裁龍ヶ崎支部/判決・請求棄却(確定)
 被告が原告の書籍の記載、図絵を引用し、内容を検証・批評した書籍が適法引用に当たるかどうか争われた。裁判所は、批評する目的のもので、明瞭に区分された表記であり、主従の関係が認められ、出所の明示もあり、合理的な方法と程度で引用されたと認容した。
 また、図絵の加工は、「創作性が認められる部分については何らの加工をしていない」として同一性保持権侵害を認めず、原告の名誉・声望が損なわれたとする著作者人格権侵害と名誉毀損を訴えた原告の主張は理由がないと棄却した。
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5月19日 『コルチャック先生』無断舞台化放映事件
   大阪地裁/提訴
 名作『コルチャック先生』の著者が、朝日新聞社などが同作を無断で舞台化、NHKが放映して著作権を侵害されたとして、朝日新聞社とNHKなどに計1億円の損害賠償を求める訴えを起こした。『コルチャック先生』は第二次大戦中にポーランドで孤児を育て、ナチス・ドイツの犠牲となった教師を描いたもの。1990年に朝日新聞社から出版、95年に舞台化、さらに97年に内容の一部異なるものが原作者の表示なしで上演された。訴えは、97年の公演は著書の内容を断りもなく改変、舞台化したとして、朝日新聞社と脚本家、劇団に計8000万円を請求。NHKについては、95年公演を許可なく放映したとして1000万円の賠償を求めている。

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5月19日 昭和天皇コラージュ訴訟事件(2)
   名古屋高裁金沢支部/口頭弁論
 昭和天皇の写真を使ったコラージュ(はり絵)を富山県立近代美術館が非公開にしたうえ、作品を売却、掲載目録を焼却したのは違法として、作者らが県に損害賠償を求めた控訴審の口頭弁論が開かれた。一審の富山地裁は昨年12月、原告の請求を一部認め、県に23万円の支払いを命じた他、「天皇もプライバシーや肖像権が保障されるが、象徴として制約を受ける」と判示。原告被告双方が控訴している。

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5月20日 氏名の無断使用事件
   東京地裁/提訴
「警視庁の内部書類に情報提供の謝礼を渡した相手として、無断で名前を使われ、人格権(氏名権)が侵害された」として、東京都内の男性二人が東京都を相手取り、国家賠償法に基づいて総額240万円の支払いを求める訴えを起こした。この問題は講談社の写真週刊誌「フライデー」が4月23日号に帳簿類の写真を掲載して報じた。原告は50代と30代の会社員で、いずれも謝礼を受け取った相手として帳簿類に住所や氏名が記載されているという。その書類は警視庁銃器対策課の1997年3月分の「捜査費証拠書類(国費)」。原告2人は警察に情報を提供したり、謝礼を受け取ったりしたことは一切ないのに、表題の書類つづりや同課長代理名義の現金出納簿に、警部と警部補が「拳銃事件捜査費」として受け取った3万円と2万円を、都内の公園や駅で「情報謝礼」として原告2人にそれぞれ渡したと記されていたという。原告代理人の「東京市民オンブズマン」の佃克彦弁護士は「警視庁の職員が無関係の一般市民の名前を使って不正に書類を作り、捜査費の支払いを受けて裏金作りをしていた疑いがある」と主張している。

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5月26日 値札の不当表示事件
   福井地裁/提訴
 家電販売会社の「百満ボルト福井南」と「百満ボルト小松」は、値札に比較対象として表示された自社の製品価格が実売価格より高く、販売業務を妨害されたとして、家電量販会社「ヤマダ電機」(前橋市)に計4000万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。ヤマダ電機は4月、テレビなど自社商品の値札に「故障が多い」などと書かれ信用を傷つけられたとして、「百満ボルト福井南」などの親会社である「サンキュー高島屋」(福井市)など4社に、計1500万円の賠償を求める訴えを前橋地裁に起こしている。

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5月26日 SMAP追っかけ本事件C(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却
 人気タレントグループSMAPの生活ぶりなどを描いたおっかけ本『SMAP大研究』(鹿砦社)をめぐり、雑誌のインタビュー記事を盗用したとして、雑誌発行元の4社が鹿砦社側に出版差し止めなどを求めた訴訟の控訴審は、同書の発行禁止と466万円の損害賠償を命じた一審判決を支持、鹿砦社側の控訴を棄却した。鹿砦社側は「雑誌記事はインタビューの結果を事実として伝えたに過ぎず、引用しても著作権の侵害ではない」と主張したが、裁判長は「記事には作成者の個性が表れており、著作物と認められる」として退けた。 
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5月26日 「集会の自由」侵害事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 反戦集会を大阪府警に過剰警備され、参加者が写真撮影されるなどして、肖像権や憲法で保障された「集会の自由」が侵害されたとして、集会の主催者が大阪府に550万円の損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は「犯罪が発生する可能性が高くないのに、参加者を写真撮影したり、解散後も尾行したのは警備の許容範囲を超えており違法」とし、大阪府に慰謝料など15万円の支払いを命じた。裁判長は「集会の自由とは、集会に参加する自由だけでなく、集会を主催する自由も含まれる」とした上で、「行き過ぎた警備で、参加者に恐怖や不安を抱かせ、集会を主催する自由を侵害した」と判断した。原告代理人によると、主催者の権利侵害が認められるのは異例という。

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5月27日 住民票データ流出事件
   京都地裁/提訴
 京都府宇治市の住民票データが流出し、プライバシーを侵害されたとして、同市議の片岡英治さんら住民三人が宇治市(久保田勇市長)に慰謝料など約100万円の賠償を求める訴えを起こした。訴状によると、住民基本台帳などに基づいて作成されたデータが漏れ、インターネット上で販売された。市はデータが流出しないよう万全の注意をする義務があった、としている。片岡さんは「市の調査対策委員会のメンバーは市幹部ばかりで構成されており、内部の不祥事を追求するのに限界がある。訴訟で真相を明らかにしたい」と話している。

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5月27日 中古のゲームソフト販売事件(エニックス)
   東京地裁/判決・請求認容(控訴)
 中古のゲームソフト販売は著作権法違反に当たらないとして、ゲーム販売会社「上昇」(山口県下松市)が中古ソフトの販売中止を求めた大手ソフトメーカー「エニックス」(東京都渋谷区)に販売差し止め請求権の不存在確認を求めた訴訟で、東京地裁は「差し止め請求権はない」とする原告勝訴の判決を言い渡した。ゲームソフトの中古販売をめぐっては、ソフトを扱う業者と大手メーカーが他でも激しく対立しており、今回の司法判断が関係業界に与える影響は大きい。裁判長は「頒布権は『映画の著作物』にのみ認められている権利だが、ゲームソフトはプレイヤーが能動的にゲーム機を操作して、映像と音声効果を変化させることを特徴にしており、劇場用映画とは異なる」と指摘。さらにゲームソフトは「映画の著作物」には該当しないとした上で、「エニックスには頒布権がなく、販売差し止め請求権がない」と結論づけた。エニックス側は「映像や音楽で表現されたゲームソフトは、映画と同様の著作権上の保護を受け、頒布権がある」と主張していた。
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6月4日 偽「だんご3兄弟」Tシャツ事件
   岡崎簡裁/略式命令
 ヒット曲「だんご3兄弟」の偽キャラクターTシャツを作り、売ったとして、岡崎区検は著作権法違反の罪で名古屋市の衣料品製造販売会社の社員を略式起訴、岡崎簡裁は罰金30万円の略式命令を出した。その社員は使用許諾を得ずに、「だんご3兄弟」のイラストを描いた子供用Tシャツを837枚作り、うち452枚を約49万円で愛知県内の子供服販売会社に売った。

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6月8日 偽ブランド品大量輸入事件B(刑)
   福岡地裁/判決・有罪
 有名ブランドの偽物のセーターなど、約4万点を販売する目的で持っていたとして、商標法違反の罪で問われていた衣料販売会社の元社長に対して、福岡地裁は執行猶予5年の付いた懲役3年の有罪判決を言い渡した。元社長はアメリカの有名ブランド「ポロ」が商標登録している「ラルフ・ローレン」の商標に似たマークを付けた偽物のセーターなどを大量に保管していた。裁判長は「規模の大きい悪質な犯行であり、商標に対する信頼を損なわせた」とした。

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6月8日 図録写真の無断掲載事件
   東京地裁/和解
 自分の認めない展示写真を図録に無断で掲載されたとして、彫刻家(東京都在住)が画廊を相手取り、1000万円の損害賠償を求めていた訴訟は、東京地裁の勧告を両者が受入れ、和解が成立した。和解案は、(1)画廊側は彫刻家の意思と異なる写真を載せた行為を詫びる文書を、図録配付者に郵送する、(2)画廊側は彫刻家に和解金40万円を支払う、(3)両者に割り当てられた各100部を除く図録は、原告側の立会いのもとに廃棄する、などとなっている。

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6月9日 偽中村玉緒キーホルダー事件
   名古屋簡裁/略式命令
 「中村玉緒人形付きキーホルダー」の偽物を販売したとして、名古屋区検は不正競争防止法違反の罪で、雑貨卸業の経営者と玩具卸会社の取締役二名を略式起訴、名古屋簡裁は罰金50万円の略式命令を出した。

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6月9日 「新潮45」の被告少年の実名報道事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 
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6月11日 計算ソフト「ロータス1−2−3」無断複製販売事件
   長野地裁/和解
 パソコン用の表計算ソフト「ロータス1ー2ー3」の違法コピーで著作権を侵害されたとして、米ロータス・ディペロップメントが長野県信濃町のソフト会社「ディーアイシージャパン」に約2300万円の損害賠償を求めた訴訟で、ディー社が約2000万円の解決金を支払うことで和解が成立した。ディー社は自動車整備工場向けに自社開発した業務用ソフト「一等書記官」をパソコンとセット販売する際、ロータス社のソフトを無断でコピー、抱き合わせて販売していた。同社はその事実を認めたが、賠償額で争っていた。

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6月14日 読売新聞のドロボー報道事件
   東京地裁/提訴取り下げ
「読売新聞記者が朝日の原稿を『ドロボー』した!」との記事で名誉を傷つけられたとして、読売新聞社が「週刊現代」を発行する講談社に謝罪広告と1000万円の損害賠償を求めていた訴訟は、「週刊現代」の謝罪文掲載を受けて読売側が取り下げた。「週刊現代」1998年7月18日号は、参議院記者クラブに所属する読売記者が、クラブ内の朝日新聞のファクスに送られてきた同社の原稿を無断で持ち出しコピーしたと報じた。読売側は事実と違うと主張。「週刊現代」はこのほど発売の6月26日号で「調査の結果、事実の裏付けがなかった。名誉を傷つけご迷惑をかけたことをおわびします」との謝罪文を掲載した。

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6月14日 イラストの著作物性事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 デザイン、イラストの企画制作や広告企画、制作等を業とする会社(原告)が、ローン提携販売に関する融資や割賦購入のあっせん等を業とする会社(被告)を、著作権侵害を理由にイラストの使用差止めと損害賠償を求めて訴えた。係争となったイラストは多数の人物の表情を描いたものだが、被告会社が広告制作会社及びデザイナーと共同して新聞広告や広告宣伝物に使用しているイラストは、原告イラストに依拠して制作したものだという主張であった。
 裁判所は原告のイラストの特徴を吟味して、多数の人物イラストに共通する顔の輪郭、目、口、眉などが類型化された表現であり、これらのイラスト表現は抽象的概念ないし画風というべきものであって、具体的な表現ではないので創作的な表現すなわち著作物とはいえないとの判断を示した。そして、原告の請求には理由がないと棄却した。
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6月16日 「すだち酢」類似商品事件
   徳島地裁/提訴
 徳島県名産のスダチを使った酒をめぐり、日新酒類(徳島市)が類似の商品名を使われ損害を受けたとして、畑酒類(鳴門市)に類似商品名の使用中止と謝罪広告の掲載などを求めて提訴した。日新酒類はスダチと焼酎を原料とする「すだち酎」を発売、1993年に「阿波の香りすだち酎」という商品名で商標登録した。畑酒類は99年2月頃から「一番札すだち酎」という商品名で同じ原料の商品の販売を始めた。

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6月21日 『コルチャック先生』著作権侵害事件
   京都地裁/提訴
 ポーランドで孤児を育て、ナチス・ドイツの犠牲となった医師を描いた『コルチャック先生』の著者らは、『コルチャック先生と子どもたち』を1996年に出版した作家らに対し、計1600万円の損害賠償と作家の著書の出版差し止めなどを求める訴えを起こした。同書には『コルチャック先生』から無断で借用した箇所が多数あり、著作権が侵害されたとしている。著者は著書を無断で舞台化したとしてこれまでに戯曲の作者の他、NHKと朝日新聞社などを訴えている。

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6月21日 ソフトの違法コピー事件
   京都地裁/和解
 コンピューター・ソフトウェアの著作権保護団体「ビジネス・ソフトウェア・アライアンス」(BSA)は、ジャストシステムなど7社のソフトを大量に違法コピーしていた京都市内のメーカーが、総額1億円の和解金を支払うことなどを条件に7社と和解したことを明らかにした。和解金以外の条件は、違法コピーの全面廃棄や正規品の購入など。

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6月22日 『石に泳ぐ魚』のプライバシー侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 雑誌「新潮」に発表された小説『石に泳ぐ魚』で、登場人物のモデルになった女性が「無断で小説化され、プライバシー権を侵害された」として、著者と新潮社などを相手取り、1500万円の損害賠償と単行本化の差し止めなどを求めた訴訟の判決があった。裁判長は「原告が公開を希望せず、公開された場合に精神的苦痛を受ける私生活上の事実が作品に記載されており、プライバシーを侵害する」と述べ、被告側に130万円の支払いと、作品の出版、放送、映画化など一切の方法での公表禁止を命じた。作品は「新潮」94年9月号に掲載され、著者の友人だった30歳代の在日韓国人女性がモデルになっていて、顔に腫瘍があることや出身大学、父親の職業がそっくり描かれている。原告側弁護団によると「プライバシー侵害を理由に小説の出版差し止めを認めた判決は初めて」という。
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6月23日 パソコン通信でのプライバシー侵害事件
   神戸地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 大手パソコン通信の掲示板に実名や電話番号を公開され、プライバシーを侵害されたとして、横浜市内の眼科医が兵庫県芦屋市内の男性に対し、慰謝料など約180万円の損害賠償を求めた訴訟で、神戸地裁は男性に慰謝料など約20万円の支払いを命じた。裁判長は「電話帳は診療を希望する人が利用するのであって、一般には知られていない事柄。ネット上に公開されることまでは希望しておらず、保護されるべき利益にあたる」とし、さらに「ネット上での公開は、不特定多数の者に簡易迅速に伝達でき、電話帳掲載とは比較にならない大きないやがらせ発生の危険性をもたらす恐れがある」と判示、プライバシーの侵害を認めた。二人はオンライン情報サービス「ニフティサーブ」の会員。眼科医は「いたずら電話などで、予約業務や診療ができなくなった」として提訴、男性は「公開されている情報であり、プライバシーの侵害には当たらない」と裁判で反論していた。今回の司法判断は電話番号という一種の公開情報をネット上に第三者が掲示したことについてもプライバシーの侵害を認めた初の例で、掲示に至る経緯等を考慮して急速に広がるネット社会に一定の歯止めをかけたケースとして注目される。

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6月23日 色画用紙見本帳事件
   東京地裁/決定・申立却下(抗告)
 色画用紙の製造販売を行うリンテックがその見本帳を作成していたところ、同業の大王製紙が同様な見本帳を作成した。リンテックは色彩及び色名の選択に創作性があり編集著作物であるとの主張に基づき、大王製紙の見本帳は著作権(複製権)を侵害し、また著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権)を侵害するとして、見本帳作成、頒布等の差止めを求める訴えを申し立てた。
 リンテックは色名55のうち52が、色彩52のうち51が一致すると訴えたが、裁判所は、「編集著作物の保護とは素材の選択・配列という知的創作活動の成果である具体的な表現を保護するものである」との原則を判示した。そして、双方の見本帳は取扱商品の見本であり、その素材は色画用紙の商品情報であると指摘した。要するに取扱商品である色画用紙の色、材質、用途、サイズ、包装状態等の商品情報が該当見本帳の素材であって、純粋に色彩及び色名を素材にしたものではないとした。色彩や色名が表現されているとしても、各見本帳の用途や記載事項に照らすとこれらを素材とする編集物であるとは認められないとして、リンテックの、色彩、色名を素材とする編集著作物であることを前提とする主張は当たらないと申し立てを却下した。
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6月25日 著作権啓発本が著作権侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 著作権の啓発を目的に、中学生向けの冊子を発行した財団法人「消費者教育支援センター」が、同様の啓発本にストーリイなどを利用され、著作権を侵害されたとして、執筆者の男性と発行元の騎虎書房に損害賠償などを求めた訴訟で、東京地裁は計50万円の支払いを命じた。同センターは1997年、漫画や解説で『大事にしようあなたの創意』などと題した2冊を発行、被告らは読み物仕立てにして『中学生にもわかる著作権』を発行していた。裁判長は「冊子を複製した部分があり、この著作権侵害に過失があった」と認定した。
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6月25日 絵画取引事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 画家である原告と、絵画の売買等を営み美術関係図書の発行等を業とする会社の代表者でもある被告との間で、絵画の販売に関して争いとなった。絵画について販売委託契約が成立していたか、売買代金の支払い方法、ポストカード製作について承諾はあったか等についての主張が交わされた事件である。
 裁判所は、契約書が作成されず、取引形式や売買条件について具体的な協議がされていなかった経緯を確認しながらも、当事者間のやり取り等、判明した事実を検討して以下の判断を示した。原告は、被告に販売を委託する趣旨の下で、被告が販売した後にその分配金を受ける意思で絵画を引き渡したと解するのが合理的だと、販売委託契約の成立を認めた。次に、顧客への売却事実に基づき画料の未払い分を算定し、被告に95万円の支払いを命じた。ポストカード製作については、原告が事前に許諾していたとは認められないと、著作権の侵害を認め12万円余の損害賠償を命じ、カード製作・販売の禁止と印刷用原版の廃棄も命じた。
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6月29日 シチズン腕時計の模倣事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 大手メーカーのシチズン時計と系列の販売会社が「香港から輸入した腕時計の模倣品を販売され、損害を受けた」として、輸入販売会社を相手に総額5100万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は輸入商品の廃棄と200万円を支払うよう販売会社に命じた。裁判長は「輸入品はシチズン側の商品と実質的に同じで模倣と認められ、不正競争防止法に違反する」とした。

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6月29日 三宅一生・服飾デザインの類似事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(確定)
 三宅一生氏が代表を務める三宅デザイン事務所が、大ヒットした婦人服ブランド「プリーツ・プリーズ」の類似品の製造、販売で、著作権を侵害されたとして、名鉄百貨店と衣料メーカー「ルルド」に謝罪広告や損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は両者にそれぞれ10万円を支払うよう命じた。名鉄百貨店はルルドが製造した「ルルド・エレガンス」という婦人服の販売を94年4月から開始、三宅事務所側は「デザインが類似しているほか、ロゴマークや展示方法も真似た」と95年7月に提訴していた。裁判長は「商品は類似しており、購入者らが混同する恐れがある。不正競争行為に当たる」と述べたが、著作権については判断しなかった。
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6月29日 違法レンタルビデオ店事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 原告は、ビデオソフトの制作、販売を行う株式会社であり、被告はビデオソフトの貸与を主に行う株式会社である。被告が多数の顧客にビデオソフトをレンタルしていたことが、原告の著作権(映画著作物の頒布権)を侵害するとして損害賠償を求めた事案である。
 被告は「本件ビデオソフトがレンタル禁止とは知らなかった。『レンタル禁止』との表示がないものは訴訟の対象にはならない」と主張したが、裁判所は「映画の著作権者が頒布権の権利を行使するためには『貸与禁止』の旨を表示することが前提条件になるものではない」との判断を示し、侵害を認めた。損害額の算定においては、原告、被告双方が示した計算書等に基づき、売上額、変動経費等を勘案し被告の利益額は15万円が相当だとして、支払いを命じた。
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6月30日 「週刊文春」の少年法違反事件
   名古屋地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 
判例全文
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