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【事件名】「懐メロ」のCD輸入販売事件
【年月日】平成11年4月14日
 東京地裁 平成10年(ワ)第13872号  著作隣接権侵害差止等請求事件
 (口頭弁論終結の日 平成11年2月18日)

判決
原告 日本コロムビア株式会社
原告 ビクターエンタテインメント株式
原告 キングレコード株式会
原告 テイチク株式会社
原告 ポリドール株式会社
原告ら訴訟代理人弁護士 山本隆司
同 足立佳丈
被告 エー・アール・シー株式会社
被告 株式会社エフアイシー
被告 A
右被告三名訴訟代理人弁護士 中野博保
同 鹿野琢見
同 鹿野元
被告 株式会社総通
右訴訟代理人弁護士 北村行夫
同 内田法子


主文
一1 被告エー・アール・シー株式会社は、別紙三レコード目録1ないし21のコンパクトディスク及び同目録35ないし45のカセットテープを輸入し又は頒布してはならない。
2 被告エー・アール・シー株式会社は、前項のコンパクトディスク及びカセットテープを廃棄せよ。
3 被告エー・アール・シー株式会社は、別紙一表一記載の各原告に対し、同表記載の各金員を支払え。
二1 被告株式会社エフアイシーは、別紙三レコード目録22ないし34のコンパクトディスク及び同目録46ないし55のカセットテープを輸入し又は頒布してはならない。
2 被告株式会社エフアイシーは、前項のコンパクトディスク及びカセットテープを廃棄せよ。
3 被告株式会社エフアイシーは、別紙一表二記載の各原告に対し、同表記載の各金員を支払え。
三 被告Aは、別紙一表三記載の各原告に対し、同表記載の各金員を支払え。
四1 被告株式会社総通は、別紙三レコード目録1ないし9及び11のコンパクトディスク並びに同目録35ないし43及び45のカセットテープを頒布してはならない。
2 被告株式会社総通は、前項のコンパクトディスク及びカセットテープを廃棄せよ。
3 被告株式会社総通は、別紙一表四記載の各原告に対し、同表記載の各金員を支払え。
五 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
六 訴訟費用の負担については、別紙一表五のとおりとする。
七 この判決は、第一項1ないし3、第二項1ないし3、第三項、第四項1ないし3に限り、仮に執行することができる。

事実
第一 請求
一 主文第一項1ないし3と同旨
二1 主文第二項1及び2と同旨。
2 原告日本コロムビア株式会社、原告ビクターエンタテインメント株式会社、原告キングレコード株式会社、原告テイチク株式会社については、主文第二項3と同旨。
 被告株式会社エフアイシーは、原告ポリドール株式会社に対し、金五五万円及びこれに対する平成一〇年七月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 原告日本コロムビア株式会社、原告ビクターエンタテインメント株式会社、原告キングレコード株式会社、原告テイチク株式会社については、主文第三項と同旨。
 被告Aは、原告ポリドール株式会社に対し、金一五一万円及びこれに対する平成一〇年七月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四1 主文第四項1及び2と同旨。
2 被告株式会社総通は、原告日本コロムビア株式会社に対し、金八六三万円及びこれに対する平成一〇年七月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
3 被告株式会社総通は、原告ビクターエンタ一テインメント株式会社に対し、金七万円及びこれに対する平成一〇年七月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
4 被告株式会社総通は、原告キングレコード株式会社に対し、金四二万円及びこれに対する平成一〇年七月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
5 被告株式会社総通は、原告テイチク株式会社に対し、金二九〇万円及びこれに対する平成一〇年七月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
6 被告株式会社総通は、原告ポリドール株式会社に対し、金三五万円及びこれに対する平成一〇年七月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 当事者の主張
一 請求原因
1(一)原告らは、いずれもレコードの制作、販売等を業とする会社である。
(二)被告エー・アール・シー株式会社及び被告株式会社エフアイシーは、いずれもレコードの企画、制作、販売等を業とする会社であり、被告Aは、被告エーアール・シー株式会社及び被告株式会社エフアイシーの代表取締役である。
(三)被告株式会社総通は、通信販売等を業とする会社である。
2(一)別紙二表@ないしD記載の実演家は、同表記載の実演年月日に、同表記載の実演楽曲につき歌唱の実演(以下、別紙二表@ないしD記載の実演を「本件実演」という。)を行い、著作権法(明治三二年法律第三九号。以下「旧法」という。)に基づく歌唱の著作権を取得した。
(二)(1)別紙二表@ないしC記載の実演家は、レコード会社である同表記載の権利承継者との間において、レコード会社のためにレコードの吹込みを行い、レコードに吹き込まれた実演に関する歌唱の著作権をレコード会社に譲渡し、レコード会社は実演家に相当額の対価を支払うことを内容とする契約を締結した。同表記載の権利承継者は、同契約に基づき、同表記載の発行年月ころ、別紙二表@ないしC記載の各実演に関する歌唱の著作権を取得した。
(2)別紙二表B番号1ないし5、7、8、10の実演に関する歌唱の著作権は、その後、権利承継者であった大日本雄弁会講談社からレコード部門が分離独立したことに伴い、大日本雄弁会講談社から原告キングレコード株式会社に譲渡された。
(3)別紙二表D記載の実演家である東海林太郎は、昭和四五年一二月一一日、同表記載の権利承継者である原告ボリドール株式会社との間において、東海林太郎が、原盤に収録された同表記載の実演に関する歌唱の著作権を原告ポリドール株式会社に譲渡し、原告ポリドール株式会社が東海林太郎に相当額の対価を支払うことを内容とする契約を締結し、原告ボリドール株式会社は、同契約に基づき、同表記載の実演に関する歌唱の著作権を取得した。
(三)本件実演についての旧法上の著作権の存続期問は、実演家の死後三〇年であり、著作権法(昭和四五年法律第四八号。以下「現行法」という。)の施行日である昭和四六年一月一日現在において、本件実演についての旧法上の歌唱の著作権はいずれも存続していたから、この著作権は、現行法上、著作隣接権として保護される(現行法附則二条三項)。右著作隣接権の存続期間は、現行法附則一五条二項により、旧法上の保護期間である実演家の死後三〇年であり、現行法の施行日から起算して五〇年を経過する日である西暦二〇二〇年一二月三一日を上限とする。別紙二表@ないしD記載の実演家のうち既に死亡した者の死亡年月日は、同表記載のとおりであり、いずれも、死後三〇年を経過していない。
 したがって、本件実演についての著作隣接権は、存続している。
3(一)被告エー・アール・シー株式会社は、平成八年及び平成九年に、別紙三レコード目録1ないし21のコンパクトディスク及び同目録35ないし45のカセットテープをチェコ共和国において製造させた上、これの別紙四製造レコード目録記載の製造数量(製造数量は、別紙四製造レコード目録1ないし5に共通である。)全部を、日本国内において頒布する目的で輸入し、輸入の時において国内で作成したとしたならば著作隣接権の侵害となるべき行為によって作成され輸入された物であることを知りながら、日本国内において頒布した。
(二)被告株式会社エフアイシーは、平成八年及び平成九年に、別紙三レコード目録22ないし34のコンパクトディスク及び同目録46ないし55のカセットテープをチェコ共和国において製造させた上、これの別紙四製造レコード目録記載の製造数量全部を、日本国内において頒布する目的で輸入し、輸入の時において国内で作成したとしたならば著作隣接権の侵害となるべき行為によって作成され輸入された物であることを知りながら、日本国内において頒布した。
(三)被告Aは、被告エー・アール・シー株式会社及び被告株式会社エフアイシーの代表者として、右(一)及び(二)の行為を行った。
(四)被告株式会社総通は、平成八年及び平成九年に、輸入の時において国内で作成したとしたならば著作隣接権の侵害となるべき行為によって作成され輸入された物であることを知りながら、別紙三レコード目録1ないし9及び11のコンパクトディスク並びに同目録35ないし43及び45のカセットテープを、別紙四製造レコード目録記載の製造数量の半分、日本国内において頒布した。
4(一)原告らが、本件実演を収録したレコードの輸入を許諾する場合の通常の許諾料は、実演楽曲一曲、レコード一枚につき二〇円である。
(二)被告株式会社総通は、右3(四)の頒布により、コンパクトディスク一枚又はカセットテープー巻当たりー二〇〇円の利益を得たものであり、同被告が頒布したコンパクトディスク及びカセットテープの収録曲数は、いずれも一五曲であるから、同被告は、一曲当たり二〇円の利益を取得した。
5(一)原告日本コロムビア株式会社が被った損害の額は、次のとおりである。
(1)別紙三レコード目録1ないし34のコンパクトディスク及び35ないし55のカセットテープにおいて、原告日本コロムビア株式会社が著作隣接権を有する実演楽曲の収録曲数は、別紙四製造レコード目録1の収録曲数欄記載のとおりである。
(2)被告エー・アール・シー株式会社が輸入、頒布した別紙三レコード目録1ないし21のコンパクトディスク及び同目録35ないし45のカセットテープについての原告日本コロムビア株式会社の損害額は、別紙四製造レコード目録1の「エー・アール・シー」欄のとおり、二〇円に収録曲数と製造数量を乗じた金額であり、その合計は、二〇七二万円である。
(3)被告株式会社エフアイシーが輸入、頒布した別紙三レコード目録22ないし34のコンパクトディスク及び同目録46ないし55のカセットテープについての原告日本コロムビア株式会社の損害額は、別紙四製造レコード目録1の「エフアイシー欄のとおり、二〇円に収録曲数と製造数量を乗じた金額であり、その合計は、六四〇万円である。
(4)被告Aの行為による原告日本コロムビア株式会社の損害額は、右(2)及び(3)の合計額の二七一二万円である。
(5)被告株式会社総通が頒布した別紙三レコード目録1ないし9及び11のコンパクトディスク並びに同目録35ないし43及び45のカセットテープについての原告日本コロムビア株式会社の損害額は、別紙四製造レコード目録1の「総通1」欄のとおり、二〇円に収録曲数と製造数量の二分の一を乗じた金額であり、その合計は、八六三万円である。
(二)原告ビクターエンタテインメント株式会社が被った損害の額は、次のとおりである。
(1)別紙三レコード目録1ないし34のコンパクトディスク及び35ないし55のカセットテープにおいて、原告ビクターエンタテインメント株式会社が著作隣接権を有する実演楽曲の収録曲数は、別紙四製造レコード目録2の収録曲数欄記載のとお号でおりである。
(2)被告エー・アール・シー株式会社が輸入、頒布した別紙三レコード目録1ないし2lのコンパクトディスク及び同目録35ないし45のカセットテープについての原告ビクターエンタテインメント株式会社の損害額は、別紙四製造レコード目録2の「エー・アール・シー」欄のとおり、二〇円に収録曲数と製造数量を乗じた金額であり、その合計は、二〇万円である。
(3)被告株式会社エフアイシーが輸入、頒布した別紙三レコード目録22ないし34のコンパクトディスク及び同目録46ないし55のカセットテープにっいての原告ビクターエンタテインメント株式会社の損害額は、別紙四製造レコード目録2の「エフアイシー」欄のとおり、二〇円に収録曲数と製造数量を乗じた金額であり、その合計は、一〇万円である。
(4)被告Aの行為による原告日本コロムビア株式会社の損害額は、右(2)及び(3)の合計額の三〇万円である。
(5)被告株式会社総通が頒布した別紙三レコード目録1ないし9及び11のコンパクトディスク並びに同目録35ないし43及び45のカセットテープについての原告ビクターエンタテインメント株式会社の損害額は、別紙四製造レコード目録2の「総通1」欄のとおり、二〇円に収録曲数と製造数量の二分の一を乗じた金額であり、その合計は、七万円である。
(三)原告キングレコード株式会社が被った損害の額は、次のとおりである。
(1)別紙三レコード目録1ないし34のコンパクトディスク及び35ないし55のカセットテープにおいて、原告キングレコード株式会社が著作隣接権を有する実演楽曲の収録曲数は、別紙四製造レコード目録3の収録曲数欄記載のとおりである。
(2)被告エー・アール・シー株式会社が輸入、頒布した別紙三レコード目録1ないし21のコンパクトディスク及び同目録35ないし45のカセットテープについての原告キングレコード株式会社の損害額は、別紙四製造レコード目録3の「エー・アール・シー」欄のとおり、二〇円に収録曲数と製造数量を乗じた金額であり、その合計は、一二六万円である。
(3)被告株式会社エフアイシーが輸入、頒布した別紙三レコード目録22ないし34のコンパクトディスク及び同目録46ないし55のカセットテープについての原告キングレコード株式会社の損害額は、別紙四製造レコード目録3の「エフアイシー」欄のとおり、二〇円に収録曲数と製造数量を乗じた金額であり、その合計は、六〇万円である。
(4)被告Aの行為による原告キングレコード株式会社の損害額は、右(2)及び(3)の合計額の一八六万円である。
(5)被告株式会社総通が頒布した別紙三レコード目録1ないし9及び11のコンパクトディスク並びに同目録35ないし43及び45のカセットテープについての原告キングレコード株式会社の損害額は、別紙四製造レコード目録3の「総通1」欄のとおり、二〇円に収録曲数と製造数量の二分の一を乗じた金額であり、その合計は、四二万円である。
(四)原告テイチク株式会社が被った損害の額は、次のとおりである。
(1)別紙三レコード目録1ないし34のコンパクトディスク及び35ないし55のカセットテープにおいて、原告テイチク株式会社が著作隣接権を有する実演楽曲の収録曲数は、別紙四製造レコード目録4の収録曲数欄記載のとおりである。
(2)被告エー・アール・シー株式会社が輸入、頒布した別紙三レコード目録1ないし2lのコンパクトディスク及び同目録35ないし45のカセットテープについての原告テイチク株式会社の損害額は、別紙四製造レコード目録4の「エー・アール・シー」欄のとおり、二〇円に収録曲数と製造数量を乗じた金額であり、その合計は、九一二万円である。
(3)被告株式会社エフアイシーが輸入、頒布した別紙三レコード目録22ないし34のコンパクトディスク及び同自録46ないし55のカセットテープについての原告テイチク株式会社の損害額は、別紙四製造レコード目録4の「エフアイシー」欄のとおり、二〇円に収録曲数と製造数量を乗じた金額であり、その合計は、一三〇万円である。
(4)被告Aの行為による原告テイチク株式会社の損害額は、右(2)及び(3)の合計額一〇四二万円である。
(5)被告株式会社総通が頒布した別紙三レコード目録1ないし9及び11のコンパクトディスク並びに同目録35ないし43及び45のカセットテープについての原告テイチク株式会社の損害額は、別紙四製造レコード目録4の「総通1」欄のとおり、二〇円に収録曲数と製造数量の二分の一を乗じた金額であり、その合計は、二九〇万円である。
(五)原告ポリドール株式会社が被った損害の額は、次のとおりである。
(1)別紙三レコード目録1ないし34のコンパクトディスク及び35ないし55のカセットテープにおいて、原告ポリドール株式会社が著作隣接権を有する実演楽曲の収録曲数は、別紙四製造レコード目録5の収録曲数欄記載のとおりである。
(2)被告エー・アール・シー株式会社が輸入、頒布した別紙三レコード目録1ないし21のコンパクトディスク及び同目録35ないし45のカセットテープについての原告ポリドール株式会社の損害額は、別紙四製造レコード目録5の「エー・アール・シー」欄のとおり、二〇円に収録曲数と製造数量を乗じた金額であり、その合計は、九六万円である。
(3)被告株式会社エフアイシーが輸入、頒布した別紙三レコード目録22ないし34のコンパクトディスク及び同目録46ないし55のカセットテープについての原告ポリドール株式会の損害額は、別紙四製造レコード目録5の「エフアイシー」欄のとおおり、二〇円に収録曲数と製造数量を乗じた金額であり、その合計は、五〇万円である。
(4)被告Aの行為による原告ポリドール株式会社の損害額は、右(2)及び(3)の合計額一四六万円である。
(5)被告株式会社総通が頒布した別紙三レコード目録1ないし9及び(3)のコンパクトディスク並びに同目録35ないし43及び45のカセットテープについての原告ポリドール株式会社の損害額は、別紙四製造レコード目録5の「総通1」欄のとおり、二〇円に収録曲数と製造数量の二分の一を乗じた金額であり、その合計は、三五万円である。
6 よって、原告らは、被告らに対し、前記第一の請求記載のとおり、本件実演の著作隣接権に基づき、別紙三レコード目録のコンパクトディスク及びカセットテープの輸入又は頒布の差止め並びに右コンパクトディスク及びカセットテープの廃棄を求め、本件実演の著作隣権侵害に基づく損害賠償の支払を求める。
二 請求原因に対する認否及び被告らの主張
(被告エー・アール・シー株式会社、被告株式会社エフアイシー、被告A)
1 請求原因1(一)、(二)の事実は認める。
2(一) 同2(一)、(二)ないし(3)の事実は否認する。
(二)同2(三)のうち 別紙二表@ないしD記載の実演家のうち既に死亡した者の死亡年月日が同表記載のとおりであるこをは不知であり、その余の主張は争う。
(三)(1)ア レコード会社は、別紙二表@ないしDの各実演をレコードに写調することにより、旧法二二条の七に基づき、右レコードにつき、旧法上の著作権を取得した。これにより、別紙二表@ないしD記載の実演家は、日法五の歌唱の著作権を喪失した。
イ 別紙二表@ないしD記載の実演家は、レコード会社と雇用関係又はこれに準じる関係にあり、レコード会社の業務に従事する者ということができる。そして、本件実演を録音したレコードは、レコード会社の発意により制作されたものである上、職務上作成された著作物であって、レコード会社の著作の名義の下に公表されたものである。旧法下においても、現行法一五条と同様の要件により法人著作の成立が認められるから、本件実演については、レコード会社の法人著作が成立し、別紙二表@ないしD記載の実演家が旧法上の歌唱の著作権を取得することはない。
ウ したがって、原告ら及び大日本雄弁会講談社が、別紙二表@ないしD記載の実演家から契約に基づき旧法上の歌唱の著作権の譲渡を受けることはない。
(2)本件実演に関するレコードは、レコード会社の著作の名義をもって発行されたから、旧法六条により、発行後三〇年の経過によって著作権は消滅した。
3(一)同3(一)の事実のうち、被告エー・アール・シー株式会社が輸入の時において国内で作成したとしたならば著作隣接権の侵害となるべき行為によって作成され輸入された物であることを知っていたことは否認し、その余は認める。
(二)同3(二)の事実のうち、被告株式会社エフアイシーが輸入の時において国内で作成したとしたならば著作隣接権の侵害となるべき行為によって作成され輸入された物であることを知っていたことは否認し、その余は認める。
(三)同3(三)の事実は否認する。
4 同4(一)の事実は否認する。
5 同5(一)(1)ないし(4)、(二)(1)ないし(4)、(三)(1)ないし(4)、(四)(1)ないし(4)、(五)(1)ないし(4)の事実は否認し、主張は争う。
(被告株式会社総通)
1 請求原因1(一)、(三)の事実は認める。
2(一)同2(一)、(三)ないし(3)の事実は不知。
(二)同2(三)のうち、別紙二表@ないしD記載の実演家のうち既に死亡した者の死亡年月日が同表記載のとおりであることは不知であり、その余の主張は争う。
三(1)旧法下においても、現行法一五条と同様の要件のもとにおいて、法人著作は成立した。
 契約に基づくレコード会社と実演家の関係をみると、実演家はレコード会社に専属し、実演家に対する制限は、写調のみに限られず、あらゆる出演行為を包含するものとして定められていたこと、実演家は、自ら曲を選ぶのではなく、レコード会社から指定された曲の実演を行うこと、実演の日時場所はレコード会社が指定し、実演家はそれに従って実演を行うこと、写調について、実演家は、レコード会社が完全なものと認めるまで何回でも無償で歌唱を行う義務が定められていたことから、実演家はレコード会社と完全な支配従属関係にあったものと認められる。したがって、別紙二表@ないしD記載の実演家は、レコード会社と雇用関係に立つものであり、レコード会社の業務に従事する者といえる。
 その上、本件実演は、専らレコード会社の発意に基づき、職務上されたものであり、録音された歌唱はレコード会社の著作の名義の下に公表された。
 したがって、本件実演については、レコード会社の法人著作が成立し、その著作権が別紙二表@ないしD記載の実演家に帰属することはないから、原告ら及び大日本雄弁会講談社が、これらの実演家から契約に基づき旧法上の歌唱の著作権の譲渡を受けることはない。
(2)本件実演に関するレコードは、レコード会社の著作の名義をもって発行されたから、旧法六条により、発行後三〇年の経過によって著作権は消滅した。
3 同3(四)の事実のうち、被告株式会社総通が、平成九年五月から同年九月までの間に、別紙三レコード目録1ないし9及び11のコンパクトディスク一〇枚を一セットとして一九四三セット販売し、同目録35ないし43及び45のカセットテープ一〇巻を一セットとして一〇二四セット販売したことは認め、その余は否認する。
4 同4(2)の事実は否認する。
5 同5(一)(5)、(二)(5)、(三)(5)、(四)(5)、(五)(5)の事実は否認し、主張は争う。

理由
一 請求原因1(一)ないし(三)の事実は当事者間に争いがない。
二1 甲第一号証の一ないし四、第二号証の一ないし五、第三号証の一ないし一六、第四号証、第五号証の一ないし七、第六号証の一ないし六、第七号証の一、二、第八号証の一ないし四、第九号証の一ないし五、第一〇号証及び第一一号証の各一、二、第一二号証及び第一三号証の各一ないし五、第一四号証の一、二、第一五号証の一ないし四、第一六号証の一ないし一六、第一七号証の一、二、第一八号証の一ないし六及び弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。
(一) 別紙二表@ないしD記載の実演家は、同表記載の実演年月日に、同表記載の実演楽曲につき歌唱の実演を行った。
(二)(1)別紙二表@ないしC記載の実演家は、同表記載の契約年月日(ただし、同表の契約年月日欄に記載のないものについては、同表記載の発行年月ころ又はそれより前の時期に)、レコード会社である同表記載の権利承継者との間において、レコード会社のためにレコードの吹込みを行い、レコードに吹き込まれた実演に関する歌唱の著作権をレコード会社に譲渡し、レコード会社は実演家に相当額の対価を支払うことを内容とする契約を締結した(各契約についての認定の証拠は、別紙二表@ないしCの証拠欄記載の各証拠及び弁論の全趣旨である。)。
(2)大日本雄弁会講談社からレコード部門が分離独立したことに伴い、大日本雄弁会講談社が有していた歌唱の著作権は、昭和二一年七月、原告キングレコード株式会社に譲渡された。
(3)別紙二表D記載の実演家である東海林太郎は、昭和四五年一二月一一日、同表記載の権利承継者である原告ポリドール株式会社との間において、東海林太郎が、原盤に収録された同表記載の実演の歌唱の著作権を原告ポリドール株式会社に譲渡し、原告ポリドール株式会社が東海林太郎に相当額の対価を支払うことを内容とする契約を締結した。
2 右1証定の事実によると、(一)別紙二表@ないしD記載の実演家は、同表記載の実演年月日に、同表記載の実演楽曲につき歌唱の実演を行って、旧法に基づく歌唱の著作権を取得したこと、(2)同表@ないしC記載の各実演については、右1(二)(1)認定の契約に基づき、同表@ないしC記載の権利承継者が、同表@ないしC記載の実演家から、歌唱の著作権を取得したこと、(三)同表B番号1ないし5、7、8、10の実演に関する歌唱の著作権は、その後、大日本雄弁会講談社から原告キングレコード株式会社に譲渡されたこと、(四)原告ポリドール株式会社は、右1(二)(3)認定の契約に基づき、東海林太郎から、同表D記載の実演の歌唱の著作権を取得したことが認められる。
3 被告エー・アール・シー株式会社、被告株式会社エフアイシー、被告Aは、レコード会社は、別紙二表@ないしDの各実演をレコードに写調することにより、旧法二二条の七に基づき、右レコードにつき、旧法上の著作権を取得し、これにより、同表記載の実演家は、旧法上の歌唱の著作権を喪失したと主張し、乙第一号証の一ないし三の帝国議会議事速記録をその証拠として提出する。
 しかし、右帝国議会議事録には、レコード会社が旧法二二条の七に基づき写調により、レコードについて旧法上の著作権を取得することは記載されているものの、写調によって実演家が旧法上の歌唱による著作権を喪失することまで記載されているとは認められない。旧法二二条七に基づきレコード会社が取得する著作権と実演家の歌唱の著作権は、別個の権利であるから、旧法二二条の七に基づきレコード会社が著作権を取得するからといって、それによって実演家の著作権が消滅すると解すべき理由はない。旧法下において、レコード会社が旧法二二条の七に基づき著作権を取得しても、実演家の歌唱による著作権は消滅することはなく、レコード会社の右著作権と同時に存続するものと解すべきである。
4 被告らは、旧法下においても現行法一五条と同様の要件により法人著作の成立が認められ、別紙二表@ないしD記載の実演家は、レコード会社と雇用関係又はこれに準じる関係にあり、レコード会社に対する関係で、現行法一五条の業務に従事する者に該当すると主張する。
 甲第八号証の一ないし三、第九号証の一、二、第一〇号証の一、第一四号証の一、第一七号証の一によると、実演家とレコード会社との契約には、実演家は、契約期間中、レコード会社の専属芸術家として、その歌唱をレコード会社又はレコード会社の指定した者のためにのみ音盤類に写調する旨、実演者は、契約期間中は、レコード会社又はレコード会社の指定した者の他、何人のためにも音盤類に写調する目的をもってする歌唱をしないものとする旨、実演家は、レコード会社の指定する楽曲をレコード会社の指定する日時、場所において音盤類に写調するために歌唱するものとする旨、写調の結果がレコード会社において完全と認めるまでは、実演家は、何回でも無償でこれを歌唱するものとする旨、実演家の歌唱を写調するか否か及び写調した音盤類を複製しこれを発売頒布するか否かはレコード会社に一任するものとする旨、実演家は、レコード会社の指定するもの以外の音楽会等で実演しようとするときは、その実演の日より前に必ずレコード会社の許諾を得ることを要する旨など、レコード会社による実演家に対する歌唱についての制限が定められていることが認められる。しかし、右のような実演家に対する制限は、実演家の歌唱の写調をレコード会社に独占させるために加えられていたものということができ、それ以上に、勤務時間、勤務場所等の指定に当たるような制限が加えられていたと認めるに足りる証拠はない。なお、右の定めによれば、実演家は、レコード会社の指定するもの以外の音楽会等に出演しようとしても、レコード会社の許諾がないために出演することができない場合もあり得るが、実演家の出演する音楽会等をレコード会社がすべて初めから決定することが定められているわけではなく、むしろ、実演家が、出演しようとする音楽会等を第一次的に決めることを前提とし、レコード会社に許否の権限を定めているに過ぎないというべきである。
 他方、前記各証拠によると、右契約には、実演家が、歌唱に関する著作権をレコード会社に譲渡し、その登録について必要な書類をレコード会社に交付することが定められていると認められるが、これは、歌唱の著作権が実演家に生じることを前提としているものということができるし、前記各証拠によると、右契約には、レコード会社が実演家に支払う金銭に関し、定額の専属料の他、レコードの発行数等に応じた印税相当額を支払うものとされていることが認められる。このように、右契約には、実演家がレコード会社の単なる従業員とは異なることを前提とする規定が置かれているものと認められる。
 以上述べたところによると、実演家は、レコード会社との関係において、雇用関係又はこれに準じるような関係にあるとは認められず、現行法一五条の法人著作成立のための要件である「法人等の業務に従事する者」に該当しないというべきである。したがって、被告らの主張は、採用することができない。
5 被告らは、本件実演に関するレコードは、レコード会社の著作の名義をもって発行されたから、旧法六条により、発行後三〇年の経過によって著作権は消滅したと主張する。
 しかし、弁論の全趣旨によると、本件実演のレコードが別紙二表@ないしD記載の発行年月日に発行された際には、同表記載の実演家の氏名が、歌唱を行った者として記載されていたものと認められるから、本件実演に関するレコードは、右の各実演家が本件実演の著作者であることを明示して発行されたものというべきである。したがって、被告らの右主張は、採用することができない。
 本件実演についての旧法上の歌唱の著作権の存続期間は、実演家の死後三〇年である(旧法三条)。
6 弁論の全趣旨によると、別紙二表@ないしD記載の実演家のうち、現行法の施行日である昭和四六年一月一日現在において、既に死亡していた者は、岡晴夫のみであり、その死亡日は、昭和四五年五月一九日であったことが認められる。そうすると、本件実演についての旧法上の歌唱の著作権は、現行法の施行日である昭和四六年一月一日現在において、いずれも存続していたものと認められるから、右著作権は、現行法上、著作隣接権として保護される(現行法附則二条三項)。
 右著作隣接権の存続期間は、現行法附則一五条二項により、旧法によるこれらの著作権の存続期間の満了する日が現行法一〇一条の規定による期間の満了する日後の日であるときは、同条の規定にかかわらず、旧法による著作権の存続期間の満了する日までであり、現行法の施行日から起算して五〇年を経過する日である西暦二〇二〇年一二月三一日を超えることができないところ、弁論の全趣旨によると、本件実演の行われた年月日は、別紙二表@ないしDの実演年月日欄記載のとおりであり、別紙二表@ないしD記載の実演家のうち既に死亡した者の死亡年月日は、同表記載のとおりであることが認められる。そうすると、本件実演について、旧法による著作権の存続期間の満了する日は、いずれも、現行法一〇一条の規定による期間の満了する日すなわち別紙二表@ないしD記載の実演年月日から五〇年を経過した日よりも後であるから、本件実演についての著作隣接権は、別紙二表@ないしD記載の実演家の死亡日から三〇年を経過した日まで存続する(ただし、西暦二〇二〇年一二月三一日を上限とする)ものと認められる。
 したがって、別紙二表@ないしD記載の実演家のうち生存中である者の実演についての著作隣接権は、本件口頭弁論終結時に存続しており、既に死亡した者の実演についての著作隣接権も、死亡してから三〇年経過していないため、本件口頭弁論終結時に存続しているものと認められる。
三1 請求原因3(一)の事実のうち、被告エー・アール・シー株式会社が、平成八年及び平成九年に、別紙三レコード目録1ないし21のコンパクトディスク及び同目録35ないし45のカセットテープをチェコ共和国において製造させた上、これの別紙四製造レコード目録記載の製造数量全部を、日本国内において頒布する目的で輸入し、日本国内において頒布したこと、同3(二)の事実のうち、被告株式会社エフアイシーが、平成八年及び平成九年に、別紙三レコード目録22ないし34のコンパクトディスク及び同目録46ないし55のカセットテープをチェコ共和国において製造させた上、これの別紙四製造レコード目録記載の製造数量全部を、日本国内において頒布する目的で輸入し、日本国内において頒布したことは、いずれも当事者間に争いがない。
 右のコンパクトディスク及びカセットテープは、右輸入の時において国内で作成したとしたならば、原告らの著作隣接権の侵害となるべき行為によって作成された物であるということができるから、右輸入行為は、著作隣接権の侵害行為とみなされる。
2 弁論の全趣旨によると、被告Aは、被告エー・アール・シー株式会社及び被告株式会社エフアイシーの代表者として、右1の行為を行ったものと認められる。
 弁論の全趣旨によると、被告Aは、右1の行為を行うに当たって、実演家やレコード会社の許諾を得ていないことを知っていたが、乙第一号証の一ないし三の帝国議会議事速記録の記載を知って、右1の行為を行ったものと認められる。しかし、前記二3認定のとおり、乙第一号証の一ないし三の帝国議会議事速記録の記載は、原告らが本件実演について著作隣接権を有しないことを基礎づけるものということは到底できず、他に実演家やレコード会社の許諾を得ていないにもかかわらず、右1認定のコンバクトディスク及びカセットテープを右輸入の時において国内で作成したとしても著作隣接権の侵害とならないものと信じるべき事情は認められない(被告エー・アール・シー株式会社、被告株式会社エフアイシー及び被告Aの前記請求原因に対する認否及び被告らの主張2(三)(1)イ及び(2)の主張は、既に判示したとおり到底採用することができないものであって、右事情ということはできない。)から、被告Aは、右1認定のコンパクトディスク及びカセットテープが右輸入の時において国内で作成したとしたならば著作隣接権の侵害となるベき行為によって作成された物であることを知っていたものと認められる。
 そうすると、被告エー・アール・シー株式会社、被告株式会社エフアイシー及び被告Aには、右1の行為のうち輸入行為について故意が認められるとともに、右1の行為のうち頒布行為についても著作隣接権の侵害行為とみなされ、それについて故意が認められる。
 したがって、被告エー・アール・シー株式会社と被告A、被告株式会社エフアイシーと被告Aは、それぞれ、各原告らに対し、右1の行為によって生じた損害につき、その損害を賠償する責任を負うものと認められる。
3 請求原因3(四)の事実のうち、被告株式会社総通が、平成九年五月から同年九月までの間に、別紙三レコード目録1ないし9及び11のコンパクトディスク一〇枚を一セットとして一九四三セット販売し、同目録35ないし43及び45のカセットテープ一〇巻を一セットとして一〇二四セット販売したことは、当事者間に争いがない。
 被告株式会社総通が、別紙三レコード目録1ないし9及び11のコンパクトディス並びに同目録35ないし43及び45のカセットテープを右認定の数量を超えて頒布したことを認めるに足りる証拠はない。
4 弁論の全趣旨によると、被告株式会社総通は、被告エー・アール・シー株式会社が右1のとおり輸入したコンパクトディスク及びカセットテープを買い受けて右3のとおり販売したこと、被告株式会社総通代表者は、右3の行為を行うに当たって、実演家やレコード会社の許諾を得ていないことを知っていたが、被告Aから、乙第一号証の一ないし三の帝国議会議事速記録を見せられ、実演家やレコード会社が本件実演について著作隣接権を有することはない旨の説明を受けたことから、右3の行為を行ったこと、以上の事実が認められる。しかし、前記二3認定のとおり、乙第一号証の一ないし三の帝国議会議事速記録の記載は、原告らが本件実演について著作隣接権を有しないことを基礎づけるものということは到底できず、他に実演家やレコード会社の許諾を得ていないにもかかわらず、右3認定のコンパクトディスク及びカセットテープを右1の輸入の時において国内で作成したとしても著作隣接権の侵害とならないものと信じるべき事情、すなわち右の被告Aの説明の裏付けとなるような事情は認められない(被告株式会社総通の前記請求原因に対する認否及び被告らの主張2(三)(1)及び(2)の主張は、既に判示したとおり到底採用することができないものであって、右事情ということはできない。)から、被告株式会社総通代表者は、右3認定のコンパクトディスク及びカセットテープが右輸入の時において国内で作成したとしたならば著作隣接権の侵害となるべき行為によって作成された物であることを知っていたものと認められる。
 そうすると、被告株式会社総通の右3の行為は著作隣接権の侵害行為とみなされ、それについて故意が認められる。
 したがって、被告株式会社総通は、各原告らに対し、右3の行為によって生じた損害につき、その損害を賠償する責任を負うものと認められるところ、被告株式会社総通の右行為と右3認定のコンパクトディスク及びカセットテープに関する被告エー・アール・シー株式会社及び被告Aの右1の行為とは、互いに侵害行為であることを知りながら相手の行為を利用した関係にあるものということができるから、関連共同しており、共同不法行為に当たる。したがって、被告株式会社総通、被告エー・アール・シー株式会社及び被告Aは、各原告らに対し、連帯して右共同不法行為によって生じた損害を賠償する責任を負うものと認められる。
四1 被告株式会社総通が右三3認定の頒布により利益を得たこと及びその額を認めるに足りる証拠はない。
2 甲第二一号証及び弁論の全趣旨によると、本件実演を収録したコンパクトディスク又はカセットテープの輸入及び輸入後の国内における頒布を許諾する場合の許諾料は、実演楽曲一曲、コンパクトディスク一枚又はカセットテープ一巻につき、二〇円であることが認められる。
 したがって、原告らは、被告らの不法行為により、実演楽曲一曲、コンパクトディスク一枚又はカセットテープ一巻につき、二〇円の損害を被ったものと認められる。
五1(一)弁論の全趣旨によると、請求原因5(一)(1)ないし(4)の事実が認められ、原告日本コロムビア株式会社が被告エー・アール・シー株式会社の行為によって被った損害の額は二〇七二万円、被告株式会社エフアイシーの行為によって被った損害の額は六四〇万円、被告Aの行為によって被った損害の額は二七一二万円であることが認められる。
(二)被告株式会社総通が頒布した別紙三レコード目録1ないし9及び11のコンパクトディスク並びに同目録35ないし43及び45のカセットテープについての原告日本コロムビア株式会社の損害額は、別紙四製造レコード目録1の「総通2」欄のとおり、二〇円に収録曲数と右三3認定の頒布数量を乗じた金額であり、その合計は、一八九万八八八〇円である。被告株式会社総通は、この額の限度で、原告日本コロムビア株式会社に対して、被告エー・アール・シー株式会社及び被告Aと連帯して、損害賠償責任を負う。
2(一)弁論の全趣旨によると、請求原因5(二)(1)ないし(4)の事実が認められ、原告ビクターエンタテインメント株式会社が被告エー・アール・シー株式会社の行為によって被った損害の額は二〇万円、被告株式会社エフアイシーの行為によって被った損害の額は一〇万円、被告Aの行為によって被った損害の額は三〇万円であることが認められる。
(二)被告株式会社総通が頒布した別紙三レコード目録1ないし9及び11のコンパクトディスク並びに同目録35ないし43及び45のカセットテープについての原告ビクターエンタテインメント株式会社の損害額は、別紙四製造レコード目録2の「総通2」欄のとおり、二〇円に収録曲数と右三3認定の頒布数量を乗じた金額であり、その合計は、五万九三四〇円である。被告株式会社総通は、この額の限度で、原告ビクターエンタテインメント株式会社に対して、被告エー・アール・シー株式会社及び被告Aと連帯して、損害賠償責任を負う。
3(一)弁論の全趣旨によると、請求原因5(三)(1)ないし(4)の事実が認められ、原告キングレコード株式会社が被告エー・アール・シー株式会社の行為によって被った損害の額は一二六万円、被告株式会社エフアイシーの行為によって被った損害の額は六〇万円、被告Aの行為によって被った損害の額は一八六万円であることが認められる。
(2)被告株式会社総通が頒布した別紙三レコード目録1ないし9及び11のコンパクトディスク並びに同目録35ないし43及び45のカセットテープについての原告キングレコード株式会社の損害額は、別紙四製造レコード目録3の「総通2」欄のとおり、二〇円に収録曲数と右三3認定の頒布数量を乗じた金額であり、その合計は、三五万六〇四〇円である。被告株式会社総通は、この額の限度で、原告キングレコード株式会社に対して、被告エー・アール・シー株式会社及び被告Aと連帯して、損害賠償責任を負う。
4(一)弁論の全趣旨によると、請求原因5(四)(1)ないし(4)の事実が認められ、原告テイチク株式会社が被告エー・アール・シー株式会社の行為によって被った損害の額は九一二万円、被告株式会社エフアイシーの行為によって被った損害の額は一三〇万円、被告Aの行為によって被った損害の額は一〇四二万円であることが認められる。
(二)被告株式会社総通が頒布した別紙三レコード目録1ないし9及び11のコンパクトディスク並びに同目録35ないし43及び45のカセットテープについての原告テイチク株式会社の損害額は、別紙四製造レコード目録4の「総通2」欄のとおり、二〇円に収録曲数と右三3認定の頒布数量を乗じた金額であり、その合計は、六五万二七四〇円である。被告株式会社総通は、この額の限度で、原告テイチク株式会社に対して、被告エー・アール・シー株式会社及び被告Aと連帯して、損害賠償責任を負う。
5(一)弁論の全趣旨によると、請求原因5(五)(1)ないし(4)の事実が認められ、原告ポリドール株式会社が被告エー・アール・シー株式会社の行為によって被った損害の額は九六万円、被告株式会社エフアイシーの行為によって被った損害の額は五〇万円、被告Aの行為によって被った損害の額は一四六万円であることが認められる。
(二)被告株式会社総通が頒布した別紙三レコード目録1ないし9及び11のコンパクトディスク並びに同目録35ないし43及び45のカセットテープについての原告ポリドール株式会社の損害額は、別紙四製造レコード目録5の「総通2」欄のとおり、二〇円に収録曲数と右三3認定の頒布数量を乗じた金額であり、その合計は、二九万六七〇〇円である。被告株式会社総通は、この額の限度で、原告ポリドール株式会社に対して、被告エー・アール・シー株式会社及び被告Aと連帯して、損害賠償責任を負う。
六 よって、原告らの請求は、主文掲記の限度で理由があるから、これを認容し、その余は理由がないから、これを棄却し、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第二九部
 裁判長裁判官 森義之
 裁判官 榎戸道也
 裁判官 中平健は、填補のため署名押印することができない。

裁判長裁判官 森義之
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