裁判の記録 line
line
1997年
(平成9年)
 
line

 
line
1月22日 「父よ母よ!」和解事件
   東京地裁/和解
 書籍の題号に創作性があるかどうかで争われた事例。和解では道義的配慮を求めはしたものの、高度の独創性はないとした。
判例全文
line
1月30日 東日流外三郡誌関係書籍事件(2)
   仙台高裁/判決・一部変更、控訴一部棄却、新請求棄却(上告)
 紀伊半島熊野地方の石垣調査の写真を、偽書ともいわれる古書「東日流外三郡史」に城跡として無断利用され、また新聞報道にも使われたた事件。一審の青森地裁は、著作権・著作者人格権の侵害を認めたが、500万の円の請求に対し20万円を認めたが、新聞記事への著作権侵害は認めなかった。二審の仙台高裁も損害賠償金を40万円としたが、その他の請求は全て棄却し、「東日流外三郡史」の真偽については立ち入らなかった。
判例全文
line
1月30日 ミルクティー不競争法違反事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 
判例全文
line
2月14日 キャドシステム無断侵害事件(3)
   最高裁/判決・上告棄却
 汎用二次元作図のためのパソコン用キャドプログラムをめぐって、無断複製であったかどうかの事例。二審で、原審が認めた営業上の損害、信用損害を取り消された原告が控訴したものだったが、やはり、認められなかった。

line
2月27日 カラオケリース業者共同不法行為事件(2)
   大阪高裁/判決・取消(確定)
 一審で日本音楽著作権協会(JASRAC)の許諾を得ぬままに客に対しカラオケ装置による演奏を提供したとして損害賠償金126万4千円の支払いを命じられたカラオケスナック、カラオケリ−ス業者が、新規定(昭和62年4月1日施行)前にはカラオケ伴奏による演奏に著作物使用料規定は存在しなかった、またリース業者には及ばないとして控訴した。大阪高裁はその訴えを斥けたが、控訴審の審議中に請求債権額を自主的に支払っているころで、原審を破棄、JASRACの請求も棄却した。 
判例全文
line
3月13日 通販カタログ掲載広告の著作物性事件
   大阪地裁/判決・請求棄却
 類似のフッ素樹脂コーティングを施したアルミ製フライパンの通販売用カタログに掲載された二つの商品の広告について、先行した一方の「水なし?」「油なし!」のキャッチフレーズに著作物性があるかどうか、およびそれを表現した写真や説明文の構成に編集著作権が生じるかるかどうかで争われた事件。裁判所は、著作物性も,編集著作権も認めず、また不正競争防止法違反にもあたらないとして、請求を棄却した。

line
3月26日 誤報記事による名誉毀損事件
   千葉地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 
判例全文
line
3月31日 在宅介護に関する書籍7種の著作権帰属事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 夫婦関係にあった時代、夫が経営者で、夫妻が編集に関わった在宅介護書籍について、離婚後の著作権の帰属で争われた事件。裁判所は1点づつ妻の貢献度を検討して、妻に帰属を認めたものについては一部発行頒布の禁止、廃棄を命じたが、すでに頒布の終わっているものについては、話し合いによって問題を解決し一般に販売することを勧めた。
判例全文
line
4月4日 つくば市内パブの音楽著作権侵害事件(刑)
   土浦簡裁/判決・有罪
 つくば市の台湾人経営のパブが、平成6年12月にカラオケ装置を導入し、客や従業員に歌唱させていたので、JASRAC(日本音楽著作権協会)は、再三契約締結を求めた。しかしパブがそれに応じなかったので、提訴した。裁判所は,著作権侵害を認め,罰金20万円に処した。 
判例全文
line
4月25日 什器設計図の著作物性事件
   東京地裁/判決・請求棄却(確定)
 インテリア備品の設計図による製品に極めて類似したものが、設計図の著作権および名誉を侵害するか争われたが、裁判所は工業的に量産させる商品ための設計図には著作物にあたらないとしてこの請求を棄却した。
判例全文
line
5月12日 ドイツ写真家の出版許諾契約事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(確定)
 
判例全文
line
5月15日 「女優貞奴」と「春の波涛」事件(2)
   名古屋高裁/判決・控訴棄却(上告)
 一審では、日本放送協会が大河ドラマとして放送した「春の波涛」が原告の著作「女優貞奴」(新潮社)の放送権侵害、翻案権侵害、氏名表示権侵害にあたらないとされた。控訴審でも侵害の主張を確定すべき証拠はないとして棄却された。
判例全文
line
5月26日 ニフティサーブ会議室、女性会員誹謗中傷事件
   東京地裁/判決・本訴一部認容、一部棄却/反訴棄却(控訴)
 女性会員を誹謗中傷する文章を掲載したとして、山口県の男性、電子会議室を運営したシステム・オペレーター、ニフティの3者に計50万円の損害賠償を命じた。
判例全文
line
5月28日 著作権侵害絵画輸入差し止め事件(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却
 原告の輸入しようとした絵画3点(以下「本件各絵画」)が、著作権法違反を理由に関税定率法の輸入禁止制品にあたるとして積戻しが命じられた行政処分に対し、これを不服とする原告が本件各絵画は著作権侵害物品にあたらないとして、上記処分の取消しを求めたが、一審の大阪地裁は、本件各絵画は細部において若干の相違が見られるが、ピカソ、ボナール、ブラマンクの原画の複製物であるとし、輸入差し止めを認めた。高裁は、原画と贋作者として有名な、エルミア・ド・ホーリーの描いた輸入画とは明かな相違点があることは認めたものの、別個の独立した著作物ではなく、複製か二次的著作物にとどまるものとして、一審と同じく、輸入差し止めを認め、控訴を棄却した。
判例全文
line
6月10日 営業表示「ワールド」の不正競争防止法違反事件(3)
   最高裁(三小)/判決・上告棄却(確定)
 
判例全文
line
6月10日 偽商標運動靴の購入・販売事件(刑)
   大阪地裁/判決・有罪
 
判例全文
line
6月23日 SMAP追っかけ本事件A
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 人気タレントSMAPが、自宅の住所や電話番号などを記載する「おっかけ本」はプライバシーを侵害するものとして、事前に出版を差し止めた事件で、裁判長は「表現・出版の自由を考慮しても、タレントの人格的利益を侵害する違法な行為」として、発行元の鹿砦社に出版・販売の禁止を求める判決をいいわたした。出版社側は、出版しようとしている本の内容も直接証拠として提出を求めず、タレントの陳述書もないのに、このような重大な決定をしたのは、出版の自由の抑制に道を開くものであり、承服しがたいとして、控訴した。
判例全文
line
6月24日 印刷用書体ゴナU対新ゴチック体U事件
   大阪地裁/判決・請求棄却、反訴請求棄却(控訴)
 写真植字用ゴシック活字書体をめぐって、その著作物性が争われた事件である。裁判所は、従前通り、タイプフェイスは美術の著作物にはあたらないとし、また、不正な意図を持って模倣されるほどの特徴ある書体でもないので、不法行為にもならないとして、訴えを斥けた。
判例全文
line
6月27日 被爆写真、著作権確認事件
   広島地裁/判決・請求棄却(控訴)
 広島市が原爆に被爆した直後の救護所の様子を撮影した写真をめぐって、写真を撮影したとされる元中国新聞社カメラマンに対し、在横浜市元軍人が自分が撮影したものとして、著作権の確認を求めるとともに、著作人格権の侵害による慰謝料の支払いと、写真のオリジナル・ネガフィルムの引き渡しを求めたのに対し、広島地裁は、元軍人の請求を棄却した。元軍人が撮ったと認めるだけの証拠はないこと、カメラマンの撮影当時の供述に不自然な点はないことがその理由。
判例全文
line
6月27日 海賊版CD・ビデオテープの複製・販売事件(刑)
   東京地裁/判決・有罪
 
判例全文
line
7月17日 原稿無断改変・自己名義公表事件(3)
   最高裁(一小)/判決・上告棄却
 執筆依頼した地理学者の原稿を、無断で改変した上、自分の名義で論文集に発表したため、複製権、公表権、氏名表示権、同一性保持権の侵害、不法行為として訴えられた事件。一審では損害賠償を認め、二審ではさらに慰謝料や謝罪広告請求を認容した。その判決に審理不尽があるとした上告を、最高裁は原審の認定判断に違法はないとして棄却した。
判例全文
line
7月17日 ガレージキット事件
   京都地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 在社中、漫画キャラクターを使って制作したガレージキットの原型をもとに、模型販売会社が、種々に改変して販売しつづけていることに、元社員が著作物性と著作者人格権が 自身にあることを主張して、改変の廃止や損害賠償その他を請求した。裁判所は、元社員が著作者であることを認め、その要求の一部を認容した。
判例全文
line
7月17日 ポパイネクタイ事件(3)
   最高裁(一小)/判決・上告一部認容、一部棄却(確定)
 第一審は、漫画ポパイのと「POPEYE」の文字と結合させて商標登録をし、さらにそれを付したマフラー等の商品を製造・販売に対し、たとえ漫画ポパイが公表時起算では著作権消滅しているとしても、連載期間中は更新され保護期間は延長されるとし、著作権法違反を認めただけでなく、登録商標の使用であっても不競法にも違反する判断した。第二審も同じ判断を下したが、最高裁は、著作権については、連載漫画の主人公のキャラクターは第1回掲載の保護期間内で消滅するとした。
判例全文
line
7月17日 テレビゲーム「NEO・GEO」事件
   大阪地裁/主位的請求棄却、予備的請求一部認容、反訴請求棄却(控訴)
 テレビゲーム機「ネオジオ(NEO・GEO)」に接続するコントローラーを製造し、それにNEOという名前を付して販売したのに対し、著作権、著作者人格権侵害、不正競争防止法に違反したとして訴えられた事件に、裁判所は著作権、著作者人格権侵害の訴えは斥けたが、不正競争防止法の違反を認め、コントローラーの販売禁止と損害賠償を命じた。
判例全文
line
7月22日 「朝日新聞」実名不掲載記事の名誉毀損事件
   仙台地裁石巻支部/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 
判例全文
line
8月20日 パソコン用将棋ソフト著作権侵害事件
   神戸地裁/判決・請求棄却
 自社の将棋ソフトが他社の類似商品として仮処分の申請を受けたため、販売を妨害されたとして損害賠償を求めた。地裁は申請者のソフトを著作権侵害と判断、請求を棄却した。
判例全文
line
8月27日 「チボリ」標章使用差し止め事件
   神戸地裁/判決・請求棄却
 宝塚市でリゾートホテルなどレジャー施設を経営する「チボリ」が、倉敷市で「倉敷チボリ公園」を経営している「チボリ・ジャパン」を相手取り、不正競争防止法に基づき、「チボリ」の標章の使用差し止めなどを求めた。裁判長はチボリは世界的に有名なコペンハーゲンの都市型遊園地として広く認識されていることを理由に、請求を棄却した。

line
8月28日 フジテレビシンボルマーク事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却(確定)
 フジテレビのシンボルマークを自分のものであるとして実名登録されたもの抹消を求めた事件。裁判所は、一審と同じく実名登録の抹消を命じた。
判例全文
line
8月29日 歴史小説の解説文盗用事件
   名古屋地裁/和解
 竹中半兵衛を扱った歴史小説の解説に、自己の文章が盗用されたとして、著者の文藝評論家、出版社のPHP研究所が、郷土史家に著作権侵害を訴えられていた事件で、このたび和解が成立した。

line
8月29日 俳句の添削事件
   東京地裁/判決・請求一部却下、一部棄却(控訴)
 雑誌入選俳句が選者に改変されて掲載されたと、投稿した女性が著作者人格権侵害にあたるとして訴えた事件に、芭蕉の時代から添削は俳句の世界の慣行と請求を退けた。
判例全文
line
9月2日 元リクルート会長、プライバシー侵害小説事件
   東京地裁/和解
 元リクルート会長の実名小説から発展し作家と出版社を相手取り、出版の差し止めと慰謝料6千万円の支払いなどを求めた訴訟は、出版社が絶版を約束し詫びの文書を出すことで和解が成立した。

line
9月2日 看板・マッチ箱の無断使用事件
   宇都宮地裁/提訴
 栃木県出身の画家(故人)の作品が、看板やマッチ箱の図柄に無断使用されたとして、遺族3人が、京都の飲食店を訴えた。損害賠償請求額は、600万円。

line
9月5日 ダリ展覧会事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(確定)
 朝日新聞社主催のサルバドール・ダリらの絵画展をめぐり、ダリの全著作権を2004年まで限定譲渡を受けたと主張しているオランダ法人が朝日新聞社などに無断で著作をカタログに複製され、著作権を侵害されたと、損害賠償などを求めた訴訟で、東京地裁は適法引用の主張を斥け、朝日新聞社にカタログ複製頒布の差止と20万円の支払いを命じた。
判例全文
line
9月5日 「ミニ4駆」キャラクターの権利侵害事件
   東京地裁/第1回審尋
 人気の漫画「ミニ四駆」の著作権を管理するプロダクションと、同社に著作権料を支払っておもちゃやゲームソフトをそれぞれ製造、販売している模型メーカー及びコンピューター関連大手3社は、無断でミニ四駆の図柄をゲームソフトに使っていたゲームソフト製造販売会社を著作権侵害として訴え、ソフトの製造、販売の差し止めを求める仮処分を東京地裁に申請したので、第1回審尋が行われた。

line
9月8日 民族問題論文の無断利用事件
   東京地裁/提訴
 桜美林大助教授が2つの雑誌に発表した民族問題に関する論文の合計13カ所が一橋大教授に盗用されたとして1千万円の損害賠償と謝罪広告掲載を求めて告訴した。

line
9月12日 カーナビ・ソフト無断複製事件
   小倉簡裁/略式命令
 カーナビゲーション用ソフトを無断複製販売していたとして、著作権法違反の罪で略式起訴されていた事件で、山口市の会社員に罰金30万円の略式命令がなされた。

line
9月24日 わいせつ画像事件(刑)
   京都地裁/判決・有罪(控訴)
 インターネットを利用して不特定会員にわいせつ画像を送信したため、刑法に違反したとして提訴されていたパソコン通信運営の被告に、有罪の判決。電気信号による画像データーにまで、刑法のいうわいせつ画面に当たるかどうかで争われた。
判例全文
line
9月25日 外国著作物使用料の源泉税事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却(上告)
 アメリカで毎年開催されているゴルフトーナメントの放映権(放映の際に使用するビデをテープの提供も受ける)を仲介している業者が、そのアメリカの主催者に送金する放映権料、技術料が著作権使用料とみなされ、源泉税を取られるのを不服として訴えた事件。仲介業者の言い分は、契約は基本的にはゴルフ場に入って競技の撮影と放映ができる権利であり、その中で行われる代表撮影などは各国の契約者が共有して使用できるものであるため、著作権使用料ではないというもの。一審で業者の主張は斥けられたが、高裁でも、ビデオテープに収録された影像は、著作物の「物に固定された」要件を満たし、スポーツイベントの撮影は「映画の著作物」であると判断し、請求を棄却した。仲介業者は上告した。
判例全文
line
9月29日 アマミノクロウサギ生息分布調査開示請求事件
   鹿児島地裁/判決・請求一部認容、一部却下
 奄美大島住用村のゴルフ場開発の際に、鹿児島県教育委員会が業者に命じ作成させた、開発予定地に生息するアマミノクロウサギの調査報告書を、住用村村民が県情報公開条例を理由に開示を請求したものの拒否された事件で、鹿児島地裁は、決定処分の取消は認めたものの、特別の事情がない限り、裁判所が開示請求を認容することは行政庁の第1次判断権を害するため許されないとしとし却下した。開示拒否の理由の一つに、報告書の著作権が上げられていた。
判例全文
line
10月3日 ホームページ一部わいせつ改ざん事件(刑)
   大阪地裁/判決・有罪
 大阪朝日放送のホームページの天気予報の一部をわいせつな画像に改ざんしたとして、電子計算機損壊等業務妨害、わいせつ図画公然陳列罪に問われた会社員に求刑通り、懲役1年6月(執行猶予3年)の判決。

line
10月3日 町誌への無断転載事件
   長野地裁伊那支部/提訴
 長野県箕輪町が昭和61年に刊行した『箕輪町誌歴史編』に自己の著作が無断転載されたとして、大学短大講師が損害賠償と町誌の発行停止を求めて、訴えた。

line
10月7日 わいせつ画像事件(刑)(2)
   大阪高裁/控訴
 先に9月24日京都地裁で、インターネットを利用して不特定会員にわいせつ画像を送信したため、有罪判決を受けた被告が、パソコン通信を理解しない判決として、控訴。

line
10月8日 「甲山事件」モデル小説損害賠償等請求事件(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却(上告)
 「甲山事件」を題材とした清水一行著小説『捜査一課長』のモデルが、プライバシー侵害及び名誉侵害であるとして著者と出版者を訴えたが、一 審の大阪地裁では、原告が事件の犯人であるかのような印象を読者に与えるとして、名誉侵害のみめ認めて、著者と出版者に損害賠償支払を命じた。この判決を不服とした著者と出版者は控訴したが、大阪高裁は原審判決にさらに検討追加修正を加えた上ですべての控訴を棄却した。
判例全文
line
10月13日 ニフティサーブ会議室、女性会員誹謗中傷事件(2)
   東京高裁/控訴審第1回口頭弁論
 女性会員を誹謗中傷する文章を掲載したとして、山口県の男性、電子会議室を運営したシステム・オペレーター、ニフティの3者に計50万円の損害賠償を命じた東京地裁5月の判決を不服として被告の3者が控訴。

line
10月14日 東日流外三郡誌関係書籍事件(3)
   最高裁(三小)/判決・上告棄却(確定)
 紀伊半島熊野地方の石垣の写真を、「東日流外三郡史」に城跡として無断利用され、また新聞報道にも使われた事件で、一審は、著作権・著作者人格権の侵害を認めたが、新聞記事への著作権侵害は認めなかった。二審も損害賠償金以外の他の請求は全て棄却した。原告が上告したのは、二審の「翻案権侵害」解釈の誤りと、日経新聞記事の検討にも不備があるとしたためであるが、最高裁は二審の判決は正当であるとして上告を棄却した。
判例全文
line
10月14日 CM放映打ち切り事件(3)
   最高裁/原告敗訴
 反原発テロップが入るテレビCMの放映を打ち切ったのは表現の自由に違反するか、原告の食品会社と被告の民放との間で争われたもの。一、二審同様原告敗訴。

line
10月15日 無断複製洋画ビデオの無料上映事件(刑)
   徳島地裁/判決・有罪
 被告は昨年11月から今年の3月にかけて洋画7本を無断複製、67本のビデオテープを系列ホテルに販売、ホテルは無料上映していた。懲役1年(執行猶予1年)の判決。

line
10月22日 写真館撮影の婚礼写真の無断複製事件
   釧路地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 写真館が撮った婚礼写真を、他の写真スタジオが、新郎新婦の親族に勧誘して、無断で複製して販売した事例。このような写真に著作物性があるか、私的使用に当たらないかなどが争われたが、裁判所は著作権侵害とした。
判例全文
line
10月23日 老人ホーム・モニュメント事件
   岡山地裁/提訴
 東京都八王子市の彫刻家は23日、岡山市が今年4月に開設した養護老人ホームのモニュメントで自身のデザインの著作権侵害を受けたとして、岡山市と同ホームの設計事務所に、モニュメントの撤去と540万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。訴えによると、同市は昨年5月ごろホームの前庭に設置するモニュメントのデザインを彫刻家に依頼、採用されたにもかかわらず、12月ごろ設計事務所からそのデザインによる制作を取りやめる通知があり、デッサンも返却された。ところが、完成したモニュメントの台座の構図は、子供の性別、犬の姿勢と毛の長さ、ハトの向きが違うだけで、彫刻家のデザイン通りだという。同市によると、市はデザインを依頼しておらず、設計事務所に任せたという。

line
10月30日 類似包装デザイン事件
   大阪地裁/和解
 武田薬品が同社のヒットビタミン剤と似通った包装デザインのビタミン剤を販売した皇漢堂を、不正競争防止法他で訴えていた訴訟は、皇漢堂側のデザイン一部変更と和解金の支払いで和解した。武田は皇漢堂が昨年9月発売したビタミン剤が、同社のと同じように白地の上下に赤色の帯があり、主たる文字が中央に金色で書かれるなど、包装デザインが類似していると、製造・販売の差し止めと、5279万円の損害賠償を求めて今年2月、大阪地裁に提訴していた事件。皇漢堂は12月出荷分から、赤色の帯を三角形にするなどデザインを一部変更する。

line
10月31日 元連合赤軍死刑囚名誉毀損・著作権侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 元内閣安全保障室長の著書「連合赤軍『あさま山荘』事件」で名誉を傷つけられただけでなく、短歌の引用の際、無断で読点を加えたのは同一性保持権侵害に当たるとして、元連合赤軍死刑囚が著者と出版元に損害賠償と謝罪広告を求めた訴訟で、東京地裁は一部の名誉毀損を認めたが、同一性保持権侵害は認めはしたものの名誉侵害にまで到っていないと判断、著者らに35万円の支払いを命じた。
判例全文
line
11月6日 カラオケ教室の演奏権侵害事件
   福井地裁/仮処分申請
 日本音楽著作権協会は、カラオケ発表会を長年にわたって有料で開きながら、使用料を払わなかったカラオケ教室に、11月末に予定している発表会での演奏禁止を求める仮処分を福井地裁に申請。営業使用でないカラオケ教室受講者の演奏発表会にその会の主催者へ法的措置を音楽著作権協会が取ったのは、1971年の新著作権法施行以来初めて。

line
11月11日 キーホルダー模倣商品事件
   東京地裁/提訴
 台湾の玩具会社は、その販売会社(東京)とともに、1995年に商品化に成功、同年9月から日本で販売を始めた「フラッシュキーホルダー」の模倣商品として、「光るキーホルダー」の販売会社「バンダイ」を不正競争防止法により製造、販売の差止めと約2650万円の損害賠償などを求める訴訟を起こした。小さな円柱形の本体上にランプがあって、振動を受けると約3秒間に8回ランプが点滅する仕組みの商品だが、人気キャラクターのカバーをかぶせて販売するので、人気キャラクターが多いバンダイに提携を持ち掛けて断られたので、独自に販売。携帯電話のケース用などに使われ、96年12月までに約50万個を販売するほど人気があったが、バンダイが1996年12月ごろ、似通ったキーホルダーの販売を開始したので損害を受けたという。

line
11月13日 投稿書き直し非掲載事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 独協大学教授が、朝日新聞に国会の不戦決議に反対する立場から投稿の書き直しを求められ、それに応じたにも関わらず、さらに修正を求められた上、掲載されなかったのは表現の自由の否定で憲法違反だとして、損害賠償を求めた訴訟。東京地裁は、新聞には多数の投稿から原稿を選択して紙面に載せる自由があるとして、教授の請求をすべて棄却。教授側は朝日新聞の再修正要求は検閲と同じとして控訴。

line
11月20日 カラオケ教室の演奏権侵害事件
   福井地裁/和解
 先に日本音楽著作権協会が、使用料を払わなかったカラオケ教室の11月末に予定している発表会での演奏禁止を求めた仮処分に申請に対して、この日の審尋で、カラオケ教室側が1988年以降、20数回の著作物使用料約230万円と今後の発表会での使用料を払うことで和解成立。

line
11月27日 「ときめきメモリアル」無断改変事件A
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 ゲームソフト会社コナミ(東京)が開発した、高校生の恋愛のバーチャルリアリティ・ゲームソフト「ときめきメモリアル」の結末を、スペックコンピュータ(福岡市)、簡単に再現できるデータを記録したメモリーカードを販売したのは、ストーリーの無断改変、著作権法違反として、に約1千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決がでた。ゲームのデータが著作権法の対象になるかで争われた訴訟だが、判決はデータはゲームが予定している多種多様な展開の一つを見られるようにしたとして、ストーリーの改変は認めなかったが、登場人物の絵の無断使用で、被告側に14万6千円の支払いを命じた。さらにこの判決は、このゲームはプレー時間が長いので、途中データをカードに保存、再開できる仕組みのため、その保存データのカードを使うか、他人のデータ入りカードを使うかは、選択にすぎず改変には当たらないとしている。
判例全文
line
11月27日 「杵屋うどんすき」商標事件(2)
   東京高裁/判決・請求棄却(上告)
 「うどんすき」なる言葉は先代が考案した料理の名前であるとして、「杵屋うどんすき」の商標登録の無効を請求したのに対して、特許庁はすでに「うどんすき」なる言葉は、普通名詞で引用商標とは同じでないと、請求を認めなかった。高裁も同じく、類似性を否定した。
判例全文
line
11月28日 「週刊新潮」の鐘紡名誉毀損事件(3)
   最高裁(二小)/上告棄却
 「週刊新潮」は1986年6月19日号の記事で、元幹部社員らの話から鐘紡(東京)が粉飾決算をやったなどのほか、当時の同社会長個人やその経営手腕などを厳しく批判する記事を掲載。これに対して鐘紡は根拠不十分な内容によって名誉棄損されたと発行元である新潮社を訴えた。一審の東京地裁判決(1993年7月)は請求の一部認容、新潮社に 100万円の賠償を命じたが、二審判決は記事が与えた衝撃は重大だとして、賠償額を5倍の500万円に引き上げ、謝罪広告の掲載も認めた。両者より上告をされたが、最高裁第二小法廷は二審判決を支持し、新潮社と編集担当者らの上告を棄却した。名誉棄損訴訟では過去最高の賠償額。

line
12月3日 文革日記素材『大地に刻む』出版差し止め事件
   名古屋地裁/仮処分認容
 名古屋地裁は3日、日記の内容を著作に利用された結果、プライバシーや著作権を侵害されたとして、愛知県の夫妻が申請した元新聞編集委員の著書「大地に刻む」(新潮社)の出版、販売を差し止める仮処分を認めた。問題の著作は中国文化大革命期の女医の活動を描いたノンフィクション。申請者の女性は1953年に中国に渡り、文化大革命の中、農村医療活動に13年間従事、その体験を日記にした。その後、夫妻は著者に日記を提供し、著書にする判決はことを承知。著者は1980年、原稿を書き上げたが、夫妻はその内容が自身及び親族などの迫害を及ぼすとして、出版の中止を求めた。著者はやむをえないと判断して出版を取り止めていた。その後27年も経過し、中国の政治情勢や夫妻や家族の状況も変化したことから、夫妻らが迫害を受ける心配もなく、出版が可能な状態になったと判断して出版したもの。著者は日記を提供してくれた時点で著作権問題は解決済みとして、異議の申し立てをする予定。

line
12月12日 展示空間改変事件
   東京地裁/提訴
 東京都東久留米市の彫刻家は、展示された彫刻だけでなく、展示空間も著作者によって、デザインされたものであれば全体が著作物性を持ち、画廊が勝手に展示空間を改変することは、著作人格権―同一性保持権と複製権の侵害にあたるとして、中央区月島の画廊を訴えた。

line
12月12日 カラオケボックス著作権料不払い事件(差し止め請求)
   大阪地裁/決定・仮処分認容(確定)
 カラオケボックスは、個人が歌を楽しむ場所と主張して著作権料を支払わなかった大阪のカラオケボックスに対して、日本音楽著作権協会がカラオケ機器の使用の差し止め請求を起こしていた事件に、大阪地裁はカラオケボックスは不特定多数が利用する公共の場所として、カラオケ機器の使用禁止などを命じる仮処分の決定をした。著作権料を支払わないカラオケボックスに、機器の使用を禁止の仮処分決定はすでに4件あるが、裁判所がカラオケボックスを公の場所という判断を示したのは今回が初めて。
判例全文
line
12月15日 わいせつ画像のネット事件(刑)
   岡山地裁/判決・有罪(確定)
 岡山地裁は、取り外しが容易なモザイク処理したわいせつ画像をインターネットに提供した2被告に、わいせつ図画公然陳列罪の判決。被告たちは1996年12月から1997年4月にかけ、東京のプロバイダー2社のホストコンピューターのディスクに、画像の一部をモザイクでぼかした女性のヌード写真計285枚のデータを記憶させ、アクセスしてきた不特定多数に有料で閲覧さた。判決は、ソフトを使えばモザイクを容易に外せることは、修整がない画像と同一としたが、被告たちは、モザイクを外す情報は提供していないと主張。また一部学者も本判決は、刑法の対象を広げ過ぎて、自由なデータ発信を妨げる可能性があると批判している。
判例全文
line
12月24日 洋楽ヒット曲のCD無断制作事件
   東京地裁/提訴
 米国ソニー・ミュージック・エンタテインメントや海外大手レコード会社9社は、ジョイサウンド(東京都練馬区)、ウェイズ(同文京区)の2社に、許可なく有名歌手の1971年から93年までのヒット曲88曲を含む48種類のCDを制作、販売したのは著作権法違反だとして、販売の差止めと約1億5千9百万円の損害賠償を求める訴えを起こした。ジョイサウンド社など2社は米国の代理店から許可を得ていると反論。だがすでに、東京高裁は本年8月、大手9社の主張を認めて、これらのCDの制作などを禁止する仮処分決定を出している。

line
12月25日 漁網用の結節事件(2)
   名古屋高裁/判決・変更、附帯控訴棄却(確定)
 漁網の特許権者が特許権を侵害されたとして、漁網販売会社3社を訴えた事件。原審は特許権侵害を認め、差止請求、損害賠償請求等の一部を認容した。高裁は一審判決で一部認容した部分を取り消し、「原告の特許権を侵害するとしても、特許権侵害が問題となる程度ではない」とした。また、特許権者が附帯控訴で請求を拡げ、漁網の結節部分について美術の著作権を主張したことに対しては、「美的表現とか創造性といった要素は認められない」として否定した。
判例全文
line


 

日本ユニ著作権センター TOPページへ