著作権トピックス line
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【事件名】Tシャツのイラストの事件
【年月日】令和5年9月29日
【裁判所】東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
【事件番号】令和3年(ワ)第10991号 損害賠償請求事件
 
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【要旨】 本件は、「Fathom」のブランド名で衣料品販売を行う原告が、同様に「SEVENDAYS=SUNDAY」のブランド名で衣料品販売を行う被告に対し、被告が販売するTシャツ(被告製品)に付した被告イラストが、原告イラスト2に係る原告の著作権(複製権又は翻案権及び譲渡権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害しているとして、@著作権法112条1項に基づく原告イラスト2の複製、翻案及び譲渡の差止め、A著作権法112条2項に基づく被告製品の廃棄及び被告イラストの画像データの削除並びにB不法行為(民法709条)に基づく損害金合計412万2672円(著作権法114条1項による逸失利益262万2672円、著作者人格権侵害による無形損害100万円及び弁護士費用50万円)及び遅延損害金の支払を求める事案である。尚、原告は商標権侵害の主張もしている。
 原告イラスト2は、実用性を有する有体物であるTシャツ等に印刷して利用することが予定されていることから所謂「応用美術」に該当するが、裁判所は以下のとおり著作物性を認め、上記@〜Bの請求を認めた(Bは一部)。
 「ア 原告イラスト2が「著作物」として保護されるためには、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)であることが必要であるところ、著作権等の成立に審査及び登録を要せず、著作権等の対外的な表示も要求しない我が国の著作権制度の下において、上記の要件を充たすといえるためには、美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えていなければならないと解される(最高裁平成10年(受)第332号同12年9月7日第一小法廷判決・民集54巻7号2481頁参照)。そして、原告イラスト2は、実用性を有する有体物であるTシャツ等に印刷して利用することが予定されているところ(前提事実(4))、このような場合に上記の要件を充たすか否かを判断するに当たっては、実用性が当該有体物の機能に由来することに鑑み、実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して、美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている部分を把握できるか否かという基準によるのが相当である。これを原告イラスト2についてみると、証拠(甲2、10)によれば、原告イラスト2は、Tシャツ等の衣類の胸元等に印刷されていたことが認められるところ、当該Tシャツ等が上衣として着用して使用するための構成を備えていたとしても、イラストとしての美的特性が変質するものではなく、また、当該Tシャツ等が店頭等に置かれている場合はもちろん、実際に着用されている場合であっても、その美的特性を把握するのに支障が生じるものでもないから、実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して、美術鑑賞の対象となる美的特性を把握することが可能であるといえ、上記の要件を充たすものと認められる。」

雪丸真吾(弁護士/虎ノ門総合法律事務所)
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【キーワード】応用美術/分離可能性説/文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの
【参照条文】著法2条1項一号
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判例全文概要目録
(2024年3月)
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