著作権トピックス line
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【事件名】芸人の“小道具”氏名表示権侵害事件(2)
【年月日】令和7年4月24日
【裁判所】知財高裁/判決・控訴棄却
【事件番号】令和6年(ネ)第10079号 損害賠償請求控訴事件
 (原審・東京地裁令和4年(ワ)第15760号)
 
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【要旨】 控訴人(X)は被控訴人(Y)のために小道具を作った者であり、Yは演芸家として活動する者である。YはXに対し、自己の演芸で使用する小道具の制作を複数回依頼し、演芸において本件小道具を使用した。Yは演芸の中で本件小道具の制作者名に言及することはなく、演芸が披露された劇場内、公演プログラムまたはテレビ番組放送中に、小道具の制作者名についてアナウンス等の表示はなかった。Xは、Yに対し、@氏名表示権侵害に基づき500万円の慰謝料請求、謝罪文の掲載を求めるとともに、AYとの間で、Xが小道具の制作者である旨をYが公表する旨の合意(本件合意)があったとして債務不履行に基づく同額の損害賠償請求を求めて訴訟を提起した。
 本件の争点は、本件小道具の著作物性、著作者性、氏名表示権侵害の成否、本件合意の成否であるが、原審は、本件小道具の著作物性、著作者性について判断することなく、@Xは著作者名を表示しないことに同意したと認められるから氏名表示権の侵害は認められない、AXY間で本件合意があったとは認められない、としてXの請求を棄却し、これに対し、Xが控訴した。
 知財高裁も、結論として原審と同じ理由によりXの控訴を棄却したが、原審が他の争点について判断しないことは公平を欠くとするXの主張に対し、原審の判断枠組みに違法はないとしつつ、事案に鑑み念のため、として本件小道具の著作物性と著作者性について、次のように判断した。
 まず、著作物性については、本件各小道具は、演芸に使用する目的で制作されたものではあっても、それぞれ手造りされたものであって、他に同一のものは存在しない。その意味において、本件各小道具は、一品物として制作者の個性を反映したものである。それが一般に想起される物や実在する物の形状に基づいたり、既存のイラストを参照したりして制作されたものであったとしても、デッドコピーではない以上、現実に三次元の物体として具体的に表現するに当たっては、形状、色彩等につき様々な選択肢がある。そして、選択された表現には制作者の個性が反映されており、視覚を通じて一定の美観を起こさせる一方、工業上利用することができる意匠として利用されることは予定されていないから、本件各小道具について美術の著作物性を否定することはできないというべきであるとして、著作物性を認めた。
 また、著作者性について、Yは小道具の一部について、着想したのはYであり小道具の制作を依頼する際、大きさ、形状、色等を具体的に指定して立体化作業を依頼した、と主張したが、裁判所は、Yの着想はアイデアにすぎず、また一定の形状を示すなどしたことはあったが、詳細な設計図が示されたわけではなく、実際に三次元の作品を制作するに当たり、選択可能な具体的表現行為の幅が制作者の著作者性を否定するほどのものであるとは到底認められないとして、本件小道具の著作者はXであると認めた。
 しかし、結論としてはXの控訴を棄却した。

大井法子(弁護士/虎ノ門総合法律事務所)
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【キーワード】著作物性、著作者性、氏名表示権
【参照条文】著法2条1項一号、二号、同10条1項四号、同19条
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判例全文概要目録
(2025年11月)
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