著作権トピックス | ![]() |
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【事件名】将棋の棋譜動画配信事件(2) 【年月日】令和7年1月30日 【裁判所】大阪高裁/判決・取消、附帯控訴棄却、選択的追加請求棄却 【事件番号】令和6年(ネ)第338号、同第1217号 不正競争行為差止等請求控訴、同附帯控訴事件 (原審・大阪地裁令和4年(ワ)第11394号) |
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【要旨】 Y(一審被告、控訴人)は、日本将棋連盟等から王将戦及び銀河戦につき放送・配信する権利の許諾を受けインターネットによる有料配信を行う者である。X(一審原告、被控訴人)は、Yの配信を観戦し、ほぼ同時にXが配信する動画の盤面上に棋譜情報(盤面の推移と指し手順の情報)を即時に再現しYouTube等でライブ配信(本件動画)をした。なお、本件動画では、Yが有償配信した動画の映像、画像、音声そのものは表示されない。Yは、本件動画の配信元に対し、Xによる本件動画配信が著作権侵害であることを理由に、本件動画の削除申請をし、本件動画の配信が停止された。これに対しXは、Yが配信元に対して著作権侵害を理由に削除申請したこと(本件削除申請)は不正競争防止法2条1項21号の不正競争(営業誹謗行為)に当たるとして、Yに対し、著作権侵害であることを第三者に告げることの差止等を求めた。 本件の争点は、Xに営業上の利益があるか、すなわち、Xによる本件動画配信が不法行為に該当するかどうかである。なお、Yは、本事件において棋譜の著作物性を主張しなかったため、この点は争点となっていない。 一審判決は、棋譜の情報は公表された客観的事実であり、原則として自由利用の範疇に属する情報であるなどとして、Xの本件動画配信はYに対する不法行為に当たらないから、Xには保護される営業上の利益があるとして、前記差止め、信用回復措置及び損害賠償について一部を認めた。 これに対し本件控訴審判決は、以下の理由により一審判決を取り消し、Xの請求を棄却した。将棋はスポーツ競技のように大きな会場を用意して入場者から入場料を徴収することができないから会場を用意する主催者として物理的に独占できるリアルタイムの棋譜情報を日本将棋連盟がYのような放送配信事業者に利用許諾し、これを介して将棋ファンに提供することで対価を徴収し、これにより開催・運営費用等を賄うとともに利益を上げ、もって将棋文化の向上発展に寄与しようとするものと考えられる。そして、放送配信事業者であるYの収入構造も、このビジネスモデルに組み込まれたものということができる。これに対しXの本件動画配信は、自らは一視聴者としてYの配信を観戦しながらそこで得た棋譜情報をほぼ同時に将棋ファンに無料提供するものであり、対価を払ってYから配信を受けるファンを減少させ、ひいては日本将棋連盟の上記ビジネスモデルを阻害する。XはYの有償配信を受けており、この収益構造を知ったうえで故意にYに損害を与えている。他の動画配信者は棋戦主催者の定めるルールに従ってリアルタイムの棋譜情報配信はしなかったがXのみ一視聴者としての費用負担のみで収益を上げていることは自由競争の枠外の行為であり、Yに対する不法行為を構成し、これによって得られる利益は法律上保護される利益に該当しないから、本件動画の配信との関係では、Xには不正競争防止法によって保護されるべき「営業上の利益」も「営業上の信用」も存在するとはいえない。 |
亀井弘泰(弁護士/虎ノ門総合法律事務所) |
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【キーワード】棋譜の著作権、営業誹謗行為 【参照条文】不正競争防止法2条1項二十一号 |
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判例全文/概要目録 (2025年8月) |
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