著作権トピックス line
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【事件名】映画「天上の花」脚本改変事件(2)
【年月日】令和7年2月27日
【裁判所】大阪高裁/判決・取消
【事件番号】令和6年(ネ)第1431号 著作者人格権侵害差止等請求控訴事件
 (原審・大阪地裁令和5年(ワ)第531号)
 
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【要旨】 原告Xは本件映画の脚本原稿を執筆した者、被告Yは本件映画の最終脚本の作成に携わった映画脚本家である。本件では、Yの指導や助言の下でXが原稿を作成し、Yの紹介でX作成の第8稿をベースに映画の制作を進めることがX、Y、映画監督、映画プロデューサーが参加した会議で決定したこと、同会議でXは脚本家としてYを連名で加えることに同意をしたこと、その後Xが第10稿を作成し、Yは同稿を大幅に修正した第11、12稿を作成して同稿が決定稿となった事実には争いはない。
 原審の争点は、改変を加えることについての包括的同意の有無にあった。原審は、Xから包括的同意を得ていたとするYの主張に対し、Xは従前のYによる指導、助言の延長に当たる程度の改稿は想定し、そのような修正案があれば受け入れる意向を有していたことがうかがわれるが、Xが脚本の改変を包括的に同意したと認めるに足る証拠はないとして「他人の著作物における表現形式上の本質的な特徴を維持しつつその外面的な表現形式に改変を加える行為」があったとして同一性保持権侵害を認めた。
 他方、高裁は以下のとおり判示してXの請求を全部棄却した。高裁は、X作成の第10稿をYが改変して第11、12稿を作成した一連の経緯について、原審の認定事実に以下を例とする詳細な事実認定を加えた。Xは、Yが脚本家として連名とすることに同意し「最終的には脚本家として加わることを承諾した」こと、Xによる第10稿の作成後に、YはXに対してクライマックスシーンの修正案を電話で提案したり、様々な資料の提供を求めXがこれに応じるやりとりがあったこと、XはYが改変をした第11稿への不満を直接Yに話さなかったこと、Yから不満を告げられた映画監督も第11稿の変更を求める際にXが不満を持って修正を求めていることをXに一切話さなかったこと、第12稿を最終決定稿にして映画を撮影するという連絡にXが異論を述べなかったことなどであった。
 その上で、高裁は、Yは脚本家として映画プロデューサーから映画制作のために第10稿の見直し作業の業務委託を受けこれを履行した関係であり、第8稿から10稿に至る過程は5日程度で済んでいるのに対して、第10稿から11稿への変更作業は2か月にも及ぶ期間を要しており、その作業期間中の直接の変更作業をYが単独でしていたことや、Yがその作業期間中何らかの創作を伴う変更を加えようとしていることはXに対する調査依頼等の内容からも理解できたはずのものであること、そうであるのにXはこれに異議を述べることなくYの作業に協力をしていたことが認められることから、XはYが第10稿をYとしての創作も加えながら加筆、修正をして変更することを容認していたと認めることが相当であるとした。また、決定稿を決める権限は映画制作者側にありYにはないため決定稿となった第12稿を作成したことについてのYに法的責任を問うことはできない、Yが主張するXからの包括的同意とはYが加筆修正した原稿を映画制作者側に提供する前段階の作業内容についてのものと理解できる、とした。

杉浦尚子(弁護士/虎ノ門総合法律事務所)
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【キーワード】同一性保持権
【参照条文】著法20条、同115条
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判例全文概要目録
(2025年6月)
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