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【事件名】You Tube動画の著作権等侵害通知事件
【年月日】令和7年3月11日
 東京地裁 令和5年(ワ)第70125号 損害賠償請求事件
 (口頭弁論終結日 令和6年12月18日)

判決
原告 A
原告 B
原告 C
原告ら訴訟代理人弁護士 重長孝志
同 加藤幸英
被告 D
同訴訟代理人弁護士 熊谷裕平


主文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由
第1 請求
1 被告は、原告Aに対し、136万0495円及びこれに対する令和5年5月8日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
2 被告は、原告Bに対し、110万円及びこれに対する令和5年5月8日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
3 被告は、原告Cに対し、110万円及びこれに対する令和5年5月8日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は、原告らが、被告に対し、被告がインターネット上の動画共有サイトであるYouTube(以下「ユーチューブ」という。)を運営するGoogleLLC(以下「グーグル」という。)に対して、原告らがユーチューブにおいて投稿した動画について、ユーチューブにおける動画の投稿が著作権侵害、プライバシー侵害又は名誉毀損に該当することを通知するためのフォームから通知をしたことが違法であると主張して、民法709条に基づき、原告A(以下「原告A」という。)は損害金136万0495円及び遅延損害金の支払を、原告B(以下「原告B」という。)は損害金110万円及び遅延損害金の支払を、原告C(以下「原告C」という。)は損害金110万円及び遅延損害金の支払をそれぞれ求める事案である。
1 前提事実(当事者間に争いのない事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。以下において、枝番号のある証拠について枝番号を記載しない場合は、全ての枝番号を含む。)
(1)当事者
ア 原告Aは、別表1〜3の「チャンネル名」欄記載のチャンネルを、原告Bは、別表4の「チャンネル名」欄記載のチャンネルを、原告Cは、別表5の「チャンネル名」欄記載のチャンネルを、それぞれユーチューブに開設し、動画を投稿していた者である(甲9〜11)。
イ 被告は、「D(D´)」とのチャンネルをユーチューブに開設し、株式会社Eに動画を投稿させていた者である(甲12)。
(2)動画の投稿
 原告らは、ユーチューブにおいて、原告Aについては別表1〜3の、原告Bについては別表4の、原告Cについては別表5の各「チャンネル名」欄記載のチャンネルから、「動画タイトル」欄記載のタイトルの各動画(以下、これらを総称して「本件各動画」といい、動画の番号に応じて、「本件動画1」などという。)をそれぞれ投稿し、「動画URL」欄記載のURLにおいて公開した(ただし、本件動画10、11、13、14、18及び20のタイトルは不明である。)。(甲13〜16、29)
(3)本件各動画についての通知
ア 別表1〜5の「通知年月日」欄記載の日において、ユーチューブのウェブサイト上には、ユーチューブにおける動画の投稿が著作権侵害、プライバシー侵害又は名誉毀損に該当することをグーグルに通知するためのフォーム(以下それぞれ「著作権侵害通知フォーム」、「プライバシー侵害通知フォーム」又は「名誉毀損通知フォーム」といい、これらを総称して「本件各通知フォーム」という。)が設けられていた。
イ 被告は、本件動画1及び26〜29について、著作権侵害通知フォームから、それぞれ別表1、4及び5の「通知年月日」欄記載の日に、「被告が通知した内容」欄記載の内容を通知した。
ウ 被告は、本件動画2〜9、12及び15〜22について、プライバシー侵害通知フォームから、それぞれ別表2の「通知年月日」欄記載の日に、「被告が通知した内容」欄記載の内容を通知した。
エ 被告は、本件動画23〜25について、名誉毀損通知フォームから、それぞれ別表3の「通知年月日」欄記載の日に、「被告が通知した内容」欄記載の内容を通知した。
オ 本件動画10、11、13及び14について、それぞれ別表2の「通知年月日」欄記載の日に、プライバシー侵害通知フォームから通知がされた(以下、これらの通知及び前記イ〜エの通知を併せて「本件各通知」といい、動画の番号に応じて「本件通知1」などということがある。被告が本件通知10、11、13及び14をしたかについては争いがある。)。
(4)本件各通知後の経緯
ア グーグルは、本件動画1及び26〜29について、前記(3)イのとおりの通知がされた後、上記各動画をユーチューブ上で再生することができないようにした(甲13、16、29)。
イ 原告Aは、本件動画2〜7、10、11、13、14、18及び20について、前記(3)ウ及びオのとおりの通知がされた旨の連絡を受け、自ら上記各動画を削除した。
 本件動画8、9、12、15〜17、19、21及び22は、前記(3)ウのとおりの通知がされた後も、ユーチューブ上で再生することができる。ウグーグルは、本件動画23〜25について、前記(3)エのとおりの通知がされた後、上記各動画を日本国内において再生することができないようにした(甲15の1〜3)。
2 争点及び当事者の主張
(1)被告が本件通知10、11、13及び14をしたか(争点1)
(原告Aの主張)
 本件通知10、11、13及び14がされた令和3年10月及び11月当時、原告Aはユーチューブにおいて主に被告に関する動画を投稿していた。また、上記各通知はプライバシー侵害通知フォームからされたところ、被告は原告Aのチャンネルに投稿された本件動画2〜9、12及び15〜22について、令和3年10月から11月にかけて、プライバシー侵害通知フォームから通知をしていた。
 以上によれば、被告が本件通知10、11、13及び14をしたことは明らかである。
(被告の主張)
 否認する。
(2)本件各通知が原告らに対する不法行為に当たるか(争点2)
(原告らの主張)(以下のイ及びウは、原告Aの主張)
ア 著作権侵害通知フォームからの通知(本件通知1及び26〜29)について
(ア)ユーチューブに動画を投稿した者は、正当な理由がないのに、当該動画をユーチューブ上で再生できないようにする措置(以下、グーグルによる、ユーチューブ上で再生できないようにする措置について「削除」という。)をとられないことについて、また、正当な理由がないのに通知されないことについて、法律上保護される利益を有する。
 グーグルは、著作権侵害通知フォームから通知を受けた場合、同フォームの必要事項に何らかの記載さえあれば、記載内容にかかわらず、無条件でユーチューブにおける動画を削除する。また、ユーチューブの通知フォームには、著作権やプライバシーの問題以外に「その他の法的問題」との選択肢が存在し、パブリシティ権侵害や肖像権侵害を通知する場合にはこの通知フォームを選択することができる。
 これによれば、著作権侵害を通知する場合を除き、著作権侵害通知フォームの必要事項に何らかの記載をして通知することは、動画を投稿した者の法律上保護される利益を侵害するものとして違法である。
(イ)被告は、著作権侵害を通知するものではないのに、著作権侵害通知フォームから本件通知1及び26〜29をした。仮に、被告が、著作権侵害通知フォームの必要事項に何らかの記載があれば、記載内容にかかわらず、無条件で動画が削除されることを知らなかったとしても、ユーチューブの規約を参照することにより、このことを知ることができた。これによれば、被告は、著作権侵害を通知する場合を除き、著作権侵害通知フォームの必要事項に何らかの記載をして通知してはならない注意義務を負っていたにもかかわらず、本件通知1及び26〜29をしたものであり、上記注意義務に違反したものである。
(ウ)また、被告は、登録者数が100万人を超えるユーチューバーであり、著作権侵害通知フォームの必要事項に何らかの記載があれば、記載内容にかかわらず、無条件で動画が削除されることを知っていた。そして、被告は、「その他の法的問題」の通知フォームを選択できたにもかかわらず、あえて、著作権侵害通知フォームから通知をした。また、被告の配偶者は、本件通知1及び26〜29がされた頃、被告が、批判的な動画の削除申請をし、ユーチューブがどんどん動画を削除している旨の発言をしており(甲17、18)、被告は、同じ頃、原告ら以外の者が投稿した動画について、著作権侵害通知をしていた(甲20〜22)。これによれば、被告が、被告を批判する動画を投稿する者に不当な圧力をかける目的で著作権侵害通知フォームを悪用したことは明らかであり、被告は、本件通知1及び26〜29により、原告らの法律上保護される利益を侵害した。
イ プライバシー侵害通知フォームからの通知(本件通知2〜22)について
(ア)ユーチューブに動画を投稿した者が、正当な理由がないのに、動画を削除されないこと及び通知をされないことについて、法律上保護される利益を有することは、前記ア(ア)のとおりである。
 ユーチューブのプライバシーガイドラインによれば、プライバシー侵害通知フォームからの通知を受け、ユーチューブからその旨の電子メールが送信されたにもかかわらず、48時間以内に通知に係る動画を削除しなかった場合には、ユーチューブによる確認作業がされ、当該動画が削除される場合がある。また、複数の動画にプライバシー侵害の通知がされると、通知に係る動画だけではなく、チャンネルが停止される可能性がある。
 これによれば、プライバシー権が侵害された事実がないのに、プライバシー侵害通知フォームから通知することは、動画を投稿した者の法律上保護される利益を侵害するものとして違法である。
(イ)被告は、ユーチューバーであり、その氏名がプライバシーに当たることはなく、本件動画2〜22によりプライバシー権が侵害されたといえないのに、本件通知2〜22をした。前記(ア)によれば、被告は、プライバシー権が侵害された事実がないのに、通知をしてはならない注意義務を負っていたにもかかわらず、本件通知2〜22をしたものであり、上記注意義務に違反したものである。
(ウ)また、本件通知2〜22には誹謗中傷についての記載があり、プライバシーと名誉権の判別が曖昧になっている。また、ユーチューブのプライバシーガイドラインによれば、侵害通知フォームから通知をするに際しては、動画を投稿した者に連絡をすることが前提とされているのに、被告は、原告Aに連絡していない。これによれば、被告が、被告を批判する動画を投稿する者に不当な圧力をかける目的でプライバシー侵害通知フォームを悪用したことは明らかであり、被告は、本件通知2〜22により、原告Aの法律上保護される利益を侵害した。
ウ 名誉毀損通知フォームからの通知(本件通知23〜25)について
(ア)ユーチューブに動画を投稿した者が、正当な理由がないのに、動画を削除されないこと及び通知をされないことについて、法律上保護される利益を有することは、前記ア(ア)のとおりである。
 ユーチューブヘルプにおいては、名誉毀損通知フォームから通知をするに当たり、具体性と確固とした根拠を要するとされ、審査により、ガイドラインに反するとされた場合に、グーグルは、動画を削除し、あるいは、日本国内で再生できないようにする措置(ブロック。以下、グーグルによる削除と併せて「削除等」という。)をとる。
 これによれば、法律上の名誉毀損又は侮辱がされた事実がないのに、名誉毀損通知フォームから通知することは、動画を投稿した者の法律上保護される利益を侵害するものとして違法である。
(イ)前記(ア)によれば、被告は、名誉毀損又は侮辱につき、法的な根拠を備えているか否かを十分に検討した上で、通知する注意義務を負っていたにもかかわらず、本件通知23〜25をしたものであり、上記注意義務に違反したものである。
(ウ)被告は、本件動画23〜25によって名誉毀損又は侮辱がされたとはいえないのに、名誉毀損通知フォームを悪用し、本件通知23〜25をして、原告Aの法律上保護される利益を侵害した。
(被告の主張)
ア グーグルは、ユーチューブの利用規約(以下「利用規約」ということがある。)において、コンテンツが第三者に損害を及ぼす可能性があると合理的に判断する場合、独自の裁量によりコンテンツを削除することができるものとしており、ユーチューブに動画を投稿した者も、当該利用規約に同意しているから、グーグルが動画を削除等したとしても、当該削除等による不利益は、法律上保護されるものではない。
 また、グーグルは、本件各通知フォームから通知を受けた場合、通知の対象となった動画を自動的に削除するものではなく、動画を削除するか否かについて、独自の裁量により判断を行っているから、通知が、グーグルを欺罔して合理的な判断を阻害したといえるような例外的な場合を除き、ユーチューブに動画を投稿した者との関係で違法になることはない。
イ 著作権侵害通知フォームからの通知(本件通知1及び26〜29)について
(ア)グーグルが、著作権侵害通知フォームの必要事項に何らかの記載があれば、記載内容にかかわらず、無条件で動画を削除することは否認する。
(イ)本件通知1及び26〜29は、パブリシティ権侵害(本件通知1及び26〜28)及び肖像権侵害(本件通知29)を通知するものである。
(ウ)被告が、不当な目的を有し、著作権侵害通知フォームを悪用したとの点及び原告らの主張する注意義務を負うことは否認する。被告は、通知フォームにおいて「その他の法的問題」との選択肢があることは知らず、適当なフォームが見当たらなかったため、著作権侵害通知フォームから通知をしたものである。
ウ プライバシー侵害通知フォームからの通知(本件通知2〜22)について
(ア)プライバシー侵害通知フォームによる削除をする際の判断は、厳密な法的判断を離れたグーグル独自の判断であり、プライバシー侵害通知フォームから通知するに当たり、講学上のプライバシー権侵害に当たることは要しない。
(イ)被告が、不当な目的を有し、プライバシー侵害通知フォームを悪用したとの点及び原告Aの主張する注意義務を負うことは否認する。
(ウ)本件動画2〜9、12及び15〜22には、被告の氏名又は画像が映っている。上記各動画について、プライバシー権侵害に当たらないとしても、被告の氏名を冒用されない権利を侵害するものである。被告は、上記各動画について、プライバシー侵害通知フォームの書式に従い通知をしたものである。
エ 名誉毀損通知フォームからの通知(本件通知23〜25)について
(ア)名誉毀損通知フォームによる削除をする際の判断は、厳密な法的判断を離れたグーグル独自の判断であり、名誉毀損通知フォームから通知するに当たり、法的に名誉毀損又は侮辱に当たることを要しない。
(イ)被告が名誉毀損通知フォームを悪用したとの点及び原告らの主張する注意義務を負うことは否認する。
(ウ)原告Aは、本件動画23〜25において、被告の名誉を毀損し、又は侮辱した。被告は、上記各動画について、名誉毀損通知フォームの書式に従い、通知をしたものである。
(3)損害の発生及びその額(争点3)
(原告Aの主張)
ア 慰謝料 100万円
(ア)原告Aが投稿した動画に対して本件通知1〜25がされたことにより、本件動画1が削除され、本件動画23〜25が日本国内において再生することができなくなり、また、原告Aのチャンネルの管理画面に、著作権侵害に関する警告が90日間にわたり表示された。
(イ)原告Aは、本件通知2〜22により本件動画2〜22が削除され、あるいは、原告Aのチャンネル全体が停止されることを避けるため、原告Aのチャンネルに投稿されていた合計約1200本の動画の内容を確認し、動画のタイトルを伏字にする、動画を削除するなどの作業を強いられた。
(ウ)本件通知1〜25による精神的苦痛に対する慰謝料としては100万円が相当である。
イ 逸失利益 24万0495円
 本件動画2〜7、10、11、13、14及び23〜25について、収益化されていたチャンネルから動画が削除され、あるいは、日本国内で再生できなくなったこと、本件動画8について、広告の適合性に関する制限が課せられたことにより、原告Aは、これらの動画の公開により、本来得られたはずの利益を得ることができなくなったものであり、その額は24万0495円である。
ウ 弁護士費用 12万円
(原告Bの主張)
ア 慰謝料 100万円
 原告Bが投稿した動画に対してされた本件通知26により、本件動画26が削除され、また、原告Bのチャンネルの管理画面において、著作権侵害に関する警告が90日間にわたり表示された。
 本件通知26による精神的苦痛に対する慰謝料としては100万円が相当である。
イ 弁護士費用 10万円
(原告Cの主張)
ア 慰謝料 100万円
 原告Cが投稿した動画に対してされた本件通知27〜29により、本件動画27〜29が削除され、また、原告Cのチャンネル全体が削除された。
 本件通知27〜29による精神的苦痛に対する慰謝料としては100万円が相当である。
イ 弁護士費用10万円
(被告の主張)
 損害の発生及びその額については、否認ないし争う。プライバシー侵害通知フォームからの通知によりチャンネル全体が停止されるおそれがあったとの原告Aの主張は憶測にすぎず、前記(原告Aの主張)ア(イ)の動画の確認等の作業と通知がされたこととの間に相当因果関係はない。
第3 当裁判所の判断
1 被告が本件通知10、11、13及び14をしたか(争点1)
(1)本件通知10、11、13及び14の内容並びに本件動画10、11、13及び14のタイトルやその内容がどのようなものであったかを示す証拠はなく、被告が上記各通知をしたと認めることはできない。
(2)原告Aは、本件通知10、11、13及び14がされた当時、原告Aが、主に被告に関する動画を投稿していたことや、被告が、原告Aのチャンネルの他の動画についてもプライバシー侵害通知フォームから通知をしていたことに照らし、被告が本件通知10、11、13及び14をしたことが明らかであると主張する。
 しかしながら、本件動画10、11、13及び14が被告に関する動画であったと認めるに足りる証拠はないし、原告Aの主張する事情から、被告が上記各通知をしたことを推認するには足りず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。したがって、原告Aの主張は採用することができない。
(3)よって、以下においては、本件通知10、11、13及び14を除く、本件各通知について検討する。
2 本件各通知(本件通知10、11、13及び14を除く。)が原告らに対する不法行為に当たるか(争点2)
(1)著作権侵害通知フォームからの通知(本件通知1及び26〜29)について
ア 前記前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実を認めることができる。
(ア)利用規約には次の趣旨の定めがある(乙10及び弁論の全趣旨)。
a 本契約の記載内容を理解又は承諾頂けない場合には、ユーチューブのサービスをご利用いただけません。
b コンテンツに対する責任は、そのコンテンツをユーチューブのサービスに提供した人物や組織が負うものとします。・・・お客様は、コミュニティガイドラインや法令への違反を含め、本契約を遵守していないと思われるコンテンツを見つけた場合、ユーチューブに報告できます。
c お客様がユーチューブチャンネルをお持ちの場合、本サービスにコンテンツをアップロードできます。・・・コンテンツをアップロードする際、本契約(ユーチューブコミュニティガイドラインを含みます)や法律を遵守していないコンテンツを本サービスに投稿することはできません。
d ユーチューブは、以下のいずれかに該当すると合理的に判断する場合、独自の裁量によりコンテンツを削除する権利を留保します。(1)コンテンツが本契約に違反している、又は、(2)コンテンツがユーチューブ、ユーザー若しくは第三者に損害を与える可能性がある。削除する場合、ユーチューブは、その理由とともに通知します。
e 本サービス上で自分の著作権が侵害されていると思われる場合は、ユーチューブに通知してください。通知を受けたユーチューブは、手続きに従って著作権侵害の申立てに対応します。ユーチューブのポリシーでは、侵害行為を繰り返すユーザーについては、状況に応じて本サービスへのアクセスを解除することが定められています。
f お客様による本契約への違反が深刻である、若しくは繰り返される場合、・・・又は他のユーザー、第三者、ユーチューブ、ユーチューブの関係会社のいずれかに不利益又は損害を与える(若しくはその可能性がある)行為が行われているとユーチューブが判断する場合、ユーチューブは、お客様のグーグルアカウント又はお客様の本サービスの全部若しくは一部へのアクセスを停止又は解除する権利を留保します。
(イ) ユーチューブの著作権ポリシー等
 グーグルは、ユーチューブについて、著作権侵害の防止と常習犯の根絶を目的とした次の著作権ポリシーを採用していた。(甲37・28頁)
a 著作権侵害による有効な削除通知を受けて、ユーチューブが動画を削除した場合、ユーザーにその旨を通知し、その動画をアップロードしたユーザーのアカウントに「著作権侵害の警告」を適用します。
b オンラインによる「コピーライトスクール」の受講を完了することにより、ユーザーは著作権について学び、アカウントへの違反警告の期限切れを待つ権利を取得します。
c 違反警告を3度受けた時点で、当該ユーザーのアカウントは停止され、そのアカウントにアップロードされた動画は全て削除されます。
 米国のデジタルミレニアム著作権法(DMCA)は、権利侵害を主張する者からの通知により、プロバイダが、権利侵害情報か否かの実体的な判断を経ずに、当該情報の削除の措置を行うことを含むノーティスアンドテイクダウン手続を定めているが、グーグルは、ユーチューブに投稿された動画について著作権保有者からDMCA削除要請が提出され、動画を投稿した者が、そのDMCA削除要請が不当であると考える場合は、著作権保有者が誤った要請を行った可能性があると反証する目的で、ウェブフォームで説明することができ、著作権保有者が動画を投稿した者に対し訴訟を起こさなければ、その動画は復元されることがあるとして、ノーティスアンドテイクダウン手続に準拠した手続を定めている。(甲32、甲37・30頁)
 そして、グーグルによれば、ユーチューブでは、著作権問題の一部はDMCA削除要請を通じて解決され、著作権保有者は、ユーチューブ著作権センターを通じて著作権侵害を理由とする削除通知を提出することができ、平成29年(2017年)にユーチューブが30万名以上の削除要請者から受け取ったDMCA削除要請は250万件を超え、大多数のケースでコンテンツが削除されるが、手続を誤解している申立て、手続を濫用している申立ても多数あり、ユーチューブは、これらの削除要請を慎重に審査し、追加情報を求めるか、30万以上の動画に対する削除要請を却下しているとされる(甲37・29頁)。
(ウ)ユーチューブの通知フォーム
 本件各通知の当時、ユーチューブに投稿された動画について通知するフォームには、「性的なコンテンツ」、「暴力的または不快なコンテンツ」等とともに、「権利の侵害」という選択肢があり、「権利の侵害」を選択すると、「著作権の問題」(著作権侵害通知フォーム)、「プライバシーの問題」(プライバシー侵害通知フォーム)、「商標権侵害」、「名誉毀損」(名誉毀損通知フォーム)、「偽造品」、「その他の法的問題」のうち、1つを選択する仕様になっていた(甲48の2)。
(エ)本件通知1及び26〜29
 本件通知1及び26〜28は、@著作権侵害通知フォームの「公演の種類」に「氏名」、A「著作権対象物のタイトル」に「D」又は「D D´」とそれぞれ記載され、B「補足情報」欄に、権利侵害の内容が「パブリシティ権侵害」であり、「顧客吸引力、宣伝、広告収益目的のためにタイトルに無断で氏名を使用し、経済的利益を害している」旨が記載されていた(前記前提事実(3)イ)。
 本件通知29は、著作権侵害通知フォームの「作品名」に「顔写真」と記載され、「作品の種類」について「写真」のチェックボックスが、「該当のコンテンツの位置」について「カスタムサムネイル」のチェックボックスが選択されていた(前記前提事実(3)イ)。
イ 本件通知1及び26〜29が、著作権侵害を通知するものではないことについては当事者間に争いがないところ、前記ア(エ)によれば、本件通知1及び26〜28は、いずれも被告の氏名が用いられたことにより、被告のパブリシティ権が侵害されていると思われる旨を通知するもの、本件通知29は、本件動画29のサムネイル画像において、被告の顔写真が用いられたことにより、被告の権利が侵害されていると思われる旨を通知するものであると理解することができる。
ウ 原告らは、グーグルは、著作権侵害通知フォームから通知を受けた場合、同フォームの必要事項に何らかの記載さえあれば、記載内容にかかわらず、無条件でユーチューブにおける動画を削除することを前提に、著作権侵害を通知する場合を除き、著作権侵害通知フォームの必要事項に何らかの記載をして通知することが違法であると主張する。
 前記ア(イ)によれば、グーグルは、著作権侵害について、ノーティスアンドテイクダウン手続に準拠した手続を定めており、著作権の帰属等の実体的判断をすることは想定されていなかったことがうかがわれる。もっとも、グーグルによれば、著作権保有者からの著作権侵害を理由とするDMCA削除要請を慎重に審査し、追加情報を求め、多数の動画に対する削除要請を却下しているとされ(前記ア(イ))、実際に、著作権侵害通知フォームからの通知について、内容が妥当であり、必要な全ての情報が含まれていることを確認するための審査が行われ、通知をした者に追加情報を要求し、著作権の存否を調査した上で申請を却下している例がある(乙11〜14)。よって、グーグルが、著作権侵害通知フォームの必要事項に記載があれば無条件に動画を削除していたとは認められない。
 そうすると、ユーチューブの侵害通知フォームに「その他の法的問題」の項目があることを踏まえても、著作権侵害を通知する場合でないのに、著作権侵害通知フォームの必要事項に何らかの記載をして通知することが、通知の対象者との関係で、直ちに違法であるということはできない。
 よって、これを前提に、本件通知1及び26〜29について故意又は過失による不法行為が成立するという原告らの主張を、採用することはできない。
エ もっとも、原告らは、@被告は、著作権侵害通知フォームの必要事項に何らかの記載があれば、記載内容にかかわらず、無条件で動画が削除されることを知っていたこと、A本件通知1及び26〜29が著作権侵害を通知するものではないこと、B被告は、「その他の法的問題」の通知フォームを選択できたこと、C被告の配偶者が、本件通知1及び26〜29がされた頃、被告が、批判的な動画の削除申請をし、ユーチューブがどんどん動画を削除している旨の発言をしたこと(甲17、18)、D被告が原告ら以外の者が投稿した動画について、著作権侵害通知をしたことなどを根拠として、被告が、被告を批判する動画を投稿する者に不当な圧力をかける目的で、著作権侵害通知フォームを悪用したとして、本件通知1及び2629が違法であるとも主張する。
 ユーチューブにおいて動画を投稿し、これを公開する行為は、当該動画を投稿した者の表現活動や事業活動に関わるものであるところ、利用規約では、侵害行為を繰り返すユーザーについては、状況に応じてユーチューブへのアクセスを解除することが定められ(前記ア(ア)e、f)、著作権侵害による有効な削除通知を受けて、ユーチューブが動画を削除した場合、ユーザーに著作権侵害の違反警告をし(同(イ)a)、ユーザーは、著作権侵害の違反警告を受けた場合には、オンラインによる「コピーライトスクール」の受講を完了することを要し(同b)、著作権侵害の違反警告を3度受けるとユーザーのアカウントは停止され、そのアカウントにアップロードされた動画は全て削除される(同c)ものとされているから、グーグルに対して著作権侵害通知フォームからの通知がされた場合には、動画を投稿した者は、相応の対応をする必要があり、対応をしなかった場合には当該動画を削除されたり、チャンネル全体を削除されたりするおそれがあるものといえる。そうすると、ユーチューブにおいて動画を投稿した者の表現活動や事業活動を妨害するなど、専ら不当な目的で著作権侵害通知フォームからの通知がされた場合、通知の回数、内容及び態様によっては、上記通知をすることが、当該動画を投稿した者の法律上保護される利益を侵害するものとして違法となる余地がある。
 そこで検討するに、前記イのとおり、本件通知1及び26〜29は、本件動画1及び26〜29により被告の権利が侵害されていると思われる旨通知するものであり、前記ア(エ)によれば、権利が侵害されていると思われるとする相応の事実関係及び根拠が記載されていたものと認められる。そして、本件動画1及び26〜28において被告の氏名が用いられていたこと(当事者間に争いがない。)、被告が開設しているチャンネルの登録者数は100万人を超えること(甲12)を考慮すれば、本件通知1及び26〜28について、殊更に虚偽の事実や法律関係に基づく通知をしたとはいえないし、本件動画29において、被告の顔写真が用いられていたこと(当事者間に争いがない。)、原告Cが、被告の顔写真の使用について、何らかの許諾を得た事情もうかがわれないことをも考慮すれば、本件通知29について、殊更に虚偽の事実や法律関係に基づく通知をしたとはいえない。また、ユーチューブの通知フォームにおいて、「その他の法的問題」は一番下に配置されていることからすれば(甲48の2)、適切なフォームがなかったことから、著作権侵害通知フォームから通知をしたとの被告の主張が不合理であるとまではいえない。
 上述したところに加え、前記ウに説示したところによれば、原告の主張する前記@の点は前提を欠き、前記A及びBの点から、被告が専ら不当な目的で著作権侵害通知フォームから通知をしたと認めることはできない。前記C及びDの点も、被告が専ら不当な目的で著作権侵害通知フォームから通知をしたことを推認させるには足りない。
 以上によれば、本件通知1及び26〜29について、専ら不当な目的でされたものということはできず、上記各通知をしたことが原告らの法律上保護される利益を侵害するものとして違法となる余地はない。
(2)プライバシー侵害通知フォームからの通知(本件通知2〜9、12及び15〜22)について
ア 前記前提事実及び後掲各証拠並びに弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実を認めることができる。
(ア)プライバシー侵害通知フォームとユーチューブヘルプ及びプライバシーガイドライン
a ユーチューブヘルプの「プライバシー侵害の申し立て手続き」には、動画によって自分のプライバシー又は安全性が侵害されている場合に通知できること、ユーチューブのコンテンツで自分が取り上げられていれば、それがどのようなものであっても不快に感じる可能性があることが記載されている(甲7の3)。
b プライバシー侵害通知フォームには、「自分の氏名が映っている」、「自分の画像が映っている」とのチェックボックスがある(甲7の4)。
c ユーチューブプライバシーガイドラインによれば、プライバシー侵害通知フォームからの通知から、48時間経過してもプライバシー侵害の疑いが解消されない場合は、ユーチューブが申立て内容を審査するとされ(甲7の1)、コンテンツを削除する基準において、ユーチューブは公益性、ニュースバリュー、コンセンサスを最終決定要因として考慮するとされている(甲7の2)。
d ユーチューブヘルプの「プライバシー侵害の申し立て手続き」には、通知をする前に、動画が自分のプライバシーを侵害したり、自分に不快感を与えたりする内容かどうか確認すること、動画を投稿した者は、自分が投稿した動画によって、嫌な思いをしている人がいることに気付いていない可能性があることから、動画を投稿した者に連絡をすることが記載され(甲7の3)、ユーチューブヘルプの「個人情報の保護」
には、動画を投稿した者に直接連絡したくない場合は、プライバシーガイドラインに沿って動画の削除をリクエストできることが記載されている(甲7の2)。
(イ)本件通知2〜9、12及び15〜21
 本件通知2〜9、12及び15〜21においては、プライバシー侵害通知フォームの「自分の氏名が映っている」のチェックボックスが選択され、本件通知22においては、「自分の画像が映っている」のチェックボックスが選択されていた(前記前提事実(3)ウ、甲7の4)。
イ 原告Aは、プライバシー権が侵害された事実がないのに、プライバシー侵害通知フォームから通知することは、動画を投稿した者の法律上保護される利益を侵害するものとして違法であるとして、ユーチューバーである被告の氏名がプライバシーに当たることはないから、被告は、プライバシー権が侵害された事実がないのに、本件通知2〜9、12及び15〜21をした旨主張する。
 前記(1)ア(ア)及び(ウ)並びに前記ア(ア)によれば、グーグルは、コンテンツが利用規約(コミュニティガイドラインを含む。)に違反し、又は、第三者に対して損害を及ぼす可能性があると合理的に判断する場合には、独自の裁量によりコンテンツを削除する権利を留保するとの定めを設けていたこと、プライバシー侵害を理由として、動画を削除するか否かの基準として、公益性、ニュースバリュー、コンセンサスを考慮するとし、自分の氏名ないし画像が映っていて、自分のプライバシー又は安全性が侵害されている場合や自分が取り上げられて不快に感じている場合には通知することができるようにプライバシー侵害通知フォームを設けていたことが認められる。
 これによれば、グーグルは、プライバシー侵害通知フォームから通知する際に、自分のプライバシー又は安全性が侵害されている場合や自分が取り上げられて不快に感じている場合に、自分の氏名ないし画像が映っていることを通知することを求めているにとどまり、当該通知に係る動画の内容が、法律上のプライバシー権侵害に当たることまでは求めていないというべきである。
 そうすると、法律上のプライバシー権侵害に当たる事実がないのにプライバシー侵害通知フォームから通知することが、通知の対象者との関係で、直ちに違法であるということはできない。
 よって、これを前提に、本件通知2、9〜12及び15〜21について故意又は過失による不法行為が成立するという原告Aの主張を、採用することはできない。
ウ もっとも、原告Aは、@本件動画2〜9、12及び15〜21は被告のプライバシー権を侵害するものではないこと、A通知には「動画のタイトルが私に対する事実無根の誹謗中傷である」とも記載され、プライバシーと名誉権の判別が曖昧になっていること、Bプライバシー侵害通知フォームからの通知に先立ち、動画を投稿した者に連絡をすることが前提とされているのに、被告は、原告Aに連絡をしていないことからすれば、被告が、被告を批判する動画を投稿する者に不当な圧力をかける目的で、プライバシー侵害通知フォームを悪用したことは明らかであると主張する。
 利用規約では、侵害行為を繰り返すユーザーについては、状況に応じてユーチューブへのアクセスを解除することが定められていること(前記(1)ア(ア)e、f)に加え、ユーチューブプライバシーガイドラインによれば、プライバシー侵害通知フォームからの通知から、48時間経過してもプライバシー侵害の疑いが解消されない場合は、ユーチューブが申立て内容を審査するとされていること(前記ア(ア)c)などからすれば、プライバシー侵害通知フォームからの通知がされた場合、動画を投稿した者は相応の対応をする必要があることがあり、対応をしなかった場合には当該動画を削除されたり、チャンネル全体を削除されたりするおそれがあるものといえる。そうすると、専ら不当な目的でプライバシー侵害通知フォームからの通知がされた場合、通知の回数、内容及び態様によっては、上記通知をすることが、動画を投稿した者の法律上保護される利益を侵害するものとして違法となる余地がある。
 そこで、検討するに、前記ア(イ)によれば、本件通知2〜9、12及び15〜21は、被告の氏名及び画像が用いられたことにより、被告のプライバシーが侵害されていると思われる旨通知するものであるが、前記イのとおり、利用規約において、プライバシー侵害通知フォームからの通知に係る動画の内容が、法律上のプライバシー権侵害に当たることまでは求められていない。そして、前記ア(イ)によれば、上記各通知には、被告がプライバシーを侵害されていると思われるとする相応の事実関係及び根拠が記載されていたといえる。また、本件動画2〜9、12、15〜17、及び21に被告の氏名が映っていたこと並びに本件動画22に被告の画像が映っていたこと(当事者間に争いがない。)をも考慮すれば、本件通知2〜9、12、15〜17、19、21及び22について、殊更に虚偽の事実や法律関係に基づく通知をしたとはいえない。本件動画18及び20については、タイトル及び内容が不明であるから、本件通知18及び20が、殊更に虚偽の事実や法律関係に基づく通知をしたものとは認められない。
 以上に加え、前記イに説示したところによれば、原告Aが主張する前記@及びAの点を考慮しても、被告が、専ら不当な目的でプライバシー侵害通知フォームからの通知をしたと認めることはできない。前記Bの点についても、前記ア(ア)dによれば、通知に先立って動画の投稿者に必ず連絡しなければならないとは解されず、被告が、専ら不当な目的でプライバシー侵害通知フォームからの通知をしたことを推認させる事情とはいえない。
 以上によれば、本件通知2〜9、12及び15〜22について、専ら不当な目的でされたということはできず、上記各通知について、原告らの法律上保護される利益を侵害するものとして違法となる余地はない。
(3)名誉毀損通知フォームからの通知(本件通知23〜25)について
ア 前記前提事実及び後掲各証拠並びに弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実を認めることができる。
(ア)名誉毀損通知フォームとユーチューブヘルプ
a ユーチューブヘルプの「名誉毀損」においては、名誉毀損の定義は世界中で異なるが、他の人物や会社の評判を傷つけるような動画は通常名誉毀損に当たること、グーグルが動画をブロックする際には、その地域の法律的な側面を考慮し、場合によっては、裁判所命令を要求することもあること、名誉毀損通知については、具体性と確固とした根拠を要することが記載されている(甲8の1)。
b 名誉毀損通知フォームには、誹謗中傷の対象を特定する情報として、自分の氏名、画像、声、ビジネス名、その他のチェックボックスがあり、「報告する文言」欄に具体的な文言を記載することになっている(甲8の3)。
c 名誉毀損通知フォームから通知がされた場合、直ちに対象とされた動画が削除されるわけではなく、グーグルの審査により、ガイドラインに反する場合にブロックの措置がされる。
(イ)本件通知23〜25
 本件通知23においては、「報告する文言」欄に「やっていることが実際詐欺なんだから」、「こういうDみたいな詐欺師」との文言が、本件通知24においては、「報告する文言」欄に、動画のタイトルに被告の名前を用いた上で「詐欺師かIQ3以下の無能」、サムネイルに「詐欺師」と明記された旨がそれぞれ記載され、名誉毀損及び侮辱であると記載されている。
 また、本件通知25においては、「報告する文言」欄に、被告及び被告の経営する「F」との名称の飲食店に言及する際に用いられた「絶対に成功しない」、「汚い鍋」との文言が記載され、名誉毀損であると記載されている。(前記前提事実(3)エ)
イ 前記(1)ア(ア)及び(ウ)並びに前記ア(ア)によれば、グーグルは、コンテンツが利用規約(コミュニティガイドラインを含む。)に違反し、又は、第三者に対して損害を及ぼす可能性があると合理的に判断する場合には、独自の裁量によりコンテンツを削除する権利を留保するとの定めを設けていたこと、他の人物や会社の評判を傷つけるような動画は通常名誉毀損に当たるが、動画をブロックする地域の法律的側面を考慮し、裁判所の命令を要求することもあるとしつつ、動画中の文言を特定して自分が誹謗中傷の対象となっていることを通知することができるように名誉毀損通知フォームを設けていたことが認められる。
 これによれば、グーグルは、名誉毀損通知フォームから通知する際に、動画中の文言を特定して、当該文言により自らが誹謗中傷されていることを通知することを求めているにとどまり、当該通知に係る動画の内容が、法律上の名誉毀損ないし侮辱に当たることまでは求めていないというべきである。
 そうすると、法律上の名誉毀損ないし侮辱に当たる事実がないのに名誉毀損通知フォームから通知することが、通知の対象者との関係で、直ちに違法であるということはできない。
 よって、これを前提に、本件通知23〜25について故意又は過失による不法行為が成立するという原告Aの主張を採用することはできない。
 なお、原告Aは、被告が、名誉毀損通知フォームを悪用して、本件通知23〜25をしたとも主張するが、本件動画23〜25が前記ア(イ)の「報告する文言」欄記載の文言を含んでいたこと(当事者間に争いがない。)に照らし、当該文言により自らが誹謗中傷されているとして前記ア(イ)のとおりの本件通知23〜25をすることが、名誉毀損通知フォームの悪用に当たるとする余地はない。
(4)小括
 以上によれば、被告が本件通知1〜9、12、15〜29をしたことが、原告らに対する不法行為に当たるとはいえないから、その余の点を判断するまでもなく、原告らの請求は理由がない。
第4 結論
 以上によれば、原告らの請求はいずれも理由がないから、これらを棄却することとして、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第46部
 裁判長裁判官 ●(はしごたか)橋彩
 裁判官 勝又来未子
 裁判官 吉川慶


別表1〜5は省略
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