判例全文 line
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【事件名】シナリオ制作契約事件(2)
【年月日】令和7年8月7日
 知財高裁 令和7年(ネ)第10007号 著作権侵害差止等請求本訴・損害賠償請求反訴控訴事件、
 同第10026号損害賠償請求反訴附帯控訴事件
 (原審・東京地裁令和3年(ワ)第5411号、同4年(ワ)第9709号)
 (口頭弁論終結日 令和7年4月22日)

判決
控訴人兼附帯被控訴人(1審本訴原告・反訴被告) X
同訴訟代理人弁護士 大熊裕司
同 島川知子
被控訴人兼附帯控訴人(1審本訴被告・反訴原告) Y
同訴訟代理人弁護士 秋元隆弘


主文
1 本件控訴及び本件附帯控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は控訴人の、附帯控訴費用は附帯控訴人の各負担とする。

事実及び理由
 本判決において用いる略語は、次のとおりである(原判決で定義している略語は概ね、そのまま用いている。)。
 原告 控訴人兼附帯被控訴人(1審本訴原告・反訴被告)
 被告 被控訴人兼附帯控訴人(1審本訴被告・反訴原告)
 本件本訴 原審東京地方裁判所令和3年(ワ)第5411号著作権侵害差止等請求事件
 本件反訴 原審東京地方裁判所令和4年(ワ)第9709号損害賠償請求反訴事件
 本件漫画 原判決別紙漫画目録記載の漫画
 本件素案 平成30年5月頃、被告が制作した「RPG素案」と題するテキストファイル
 原告シナリオ 原告が本件素案を確認の上制作したシナリオ。
原告シナリオは、冒頭の共通ルートの後、ルート1、ルート2、ルート3の
三つにストーリーが分岐する構成になっている。
 本件メッセージ コミュニケーションツールDiscord上で行われた原判決別紙メッセージ一覧表記載の
平成30年8月24日の原被告間のやり取りのメッセージ。
各メッセージは同表「番号」欄記載の番号に従い「本件メッセージ1」などといい、
総称して「本件メッセージ」という。
 本件書籍 本件漫画を収録した書籍
 本件サーバー Discord上に作成されたサーバー「(省略)」
 本件投稿1 本件サーバーに被告が投稿した原判決別紙名誉毀損主張対比表の
「1 投稿1」の「対象となる投稿」欄記載の投稿。
各投稿は同表「No.」欄記載の番号(@E)に従い、それぞれ「本件投稿1@」などという。
 本件投稿2 本件サーバーに被告が投稿した原判決別紙名誉毀損主張対比表の
「2 投稿2」の「対象となる投稿」欄記載の投稿。
各投稿は「No.」欄記載の番号(@〜N)に従い、それぞれ「本件投稿2@」などという。
 本件投稿 本件投稿1及び本件投稿2の総称
 A
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴の趣旨
(1)原判決中、原告敗訴部分を取り消す。
(2)被告は、原告に対し、400万0160円及びこれに対する令和3年4月17日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
(3)前記敗訴部分に係る被告の反訴請求を棄却する。
2 附帯控訴の趣旨
(1)原判決中、被告敗訴部分を取り消す。
(2)原告は、被告に対し、250万円及びこれに対する令和4年5月7日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
(3)原告は、被告に対し、さらに209万円及びこれに対する令和3年1月24日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
(4)(2)、(3)について仮執行宣言
第2 事案の概要
1 事案の要旨
(1)本件本訴は、原告が被告に対し、被告が、原告の著作物である原告シナリオに依拠して本件漫画を制作した行為は、原告シナリオに係る原告の著作権(翻案権)を侵害し、被告が、本件漫画を書籍として頒布し、電子書籍として販売した行為は、本件漫画に係る原著作者としての原告の権利(複製権、譲渡権及び公衆送信権)を侵害し、さらに、被告のこれらの行為は、原告の著作者人格権(公表権、氏名表示権及び同一性保持権)を侵害すると主張して、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求として合計400万0160円(著作権侵害による損害200万0160円〔著作権法114条2項〕、著作者人格権侵害による慰謝料150万円及び弁護士費用相当損害金50万円の合計)並びにこれに対する不法行為後の日である令和3年4月17日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める(控訴の趣旨1(2)参照)事案である。
 本件反訴は、被告が原告に対し、原告による本訴提起は不当訴訟に当たると主張して、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求として合計250万円(逸失利益25万2580円、信用毀損による損害200万円及び応訴費用としての弁護士費用相当損害金24万7420円の合計)並びにこれに対する不法行為後の日である令和4年5月7日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める(控訴の趣旨2(2)参照)とともに、原告による本件投稿は、被告に対する名誉毀損又は侮辱に当たると主張して、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求として合計220万円(慰謝料200万円及び弁護士費用20万円の合計)並びにこれに対する不法行為後の日である令和3年1月24日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める(控訴の趣旨2(3)参照)事案である。
(2)原審は、本件本訴について、仮に本件漫画が原告シナリオの二次的著作物であったとしても、原告は被告に対し、被告が原告シナリオを書き直した上で漫画化し、本件漫画を制作するとともに、本件漫画を書籍として頒布し、電子書籍として販売することを許諾したと認められるから、被告が、原告の著作権を侵害したとはいえず、また、原告がこのように許諾していた以上、原告は、被告が原告シナリオを改変して本件漫画を制作することについて同意し、本件漫画及び本件書籍の販売の態様で本件漫画を公表することについて同意していたというべきであり、本件漫画における原告の創作的表現の貢献の度合いに照らせば「シナリオ協力」として原告の変名が表示されることが著作権法19条1項の変名としての著作者名の表示に当たらないということはできないから、原告の著作者人格権(同一性保持権、公表権、氏名表示権)侵害の事実も認められないとして、原告の本訴請求をいずれも棄却した。
 また、原審は、本件反訴について、原告が、主張した権利又は法律関係が事実的法律的根拠を欠くことを知りながら、又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど本件本訴提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くとまで認めることはできないから当該不法行為に基づく被告の反訴請求は理由がないが、本件投稿のうち本件投稿1@、1B、1E、本件投稿2G〜Nは、被告の名誉を毀損する違法な行為と認められるとして、当該不法行為に基づく被告の反訴請求を11万円(慰謝料10万円及び弁護士費用1万円)の限度で一部認容した。
(3)原判決に対し、原告が本件控訴を提起したところ、被告は本件附帯控訴を提起した。
2 前提事実、争点は、原判決「事実及び理由」第2の2、3(原判決3頁11行目から8頁20行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。なお、引用文中の「別紙」は、いずれも原判決別紙のことである(以下同じ。)。
3 争点に関する当事者の主張は、後記4に当審における当事者の補充主張を付加するほかは、原判決「事実及び理由」第3(原判決8頁21行目から22頁26行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
4 当審における当事者の補充主張
(1)争点1−1及び1−2(著作権・著作者人格権侵害の成否)
(1)−1 争点1−1−2(原告シナリオを漫画化すること等についての許諾の有無)
(原告の主張)
 平成30年8月24日の本件メッセージのやり取り全体からすると、「了解です。ありがとうございます。」との原告の返信は、報酬と支払方法の確認であり、漫画化の許諾ではない。同日夜の音声通話の交渉では、契約書を作成するか否かが問題となり、被告がこれを敬遠し拒否したことで交渉がまとまらなかったものである。
 また、原告と被告間で、文字単価基本2円としたのは、著作権譲渡が前提ではなく、執筆料にとどまる(甲2、63)。被告が主張する著作権買取りは裏付けを欠き、原告シナリオの漫画化の許諾は存在しなかった。
(被告の主張)
 原告は被告とのチャットログ(乙3)で28回「了解」を使用しており、被告の発言を「よく理解すること」「理解して承認すること」の意味で使用している。原告は、本件メッセージのやり取りで、被告がルート2部分を書き直して他者に漫画依頼しようと考えていることに了解したものである。別途音声通話で詳細を確認する前提はなく、その後の会話の立証もない。本件メッセージ以降の被告との金銭の支払に関するメッセージにおいても、漫画化の合意や正式な承諾がないとの「不満」は指摘されていない。原告から被告に対し、著作権譲渡なら別途料金を設定する告知はされておらず、裏付け証拠はない(甲63、乙45)。Aの証言も、陳述書と矛盾するなど信用性を欠く(甲44、60)。
(1)−2 争点1−2(著作者人格権侵害の成否)
(原告の主張)
 原告シナリオは、書き下ろしの未公表作品であり、被告は、原告の同意を得ずに漫画化し公開・販売したから、公表権侵害である。また、原告は、ストーリー全体を創作した著作者であるから、二次的著作物である本件漫画には「原作者」と表示されるべきところ、「シナリオ協力」と一部補助的な作業をした者という表示がされているから、氏名表示権侵害である。そして、本件漫画は、原告シナリオにつき意図しない改変が施されて作成されたから、同一性保持権侵害である(著作権法18〜20条)。
(被告の主張)
 争う。
(2)争点2−1(本訴提起による不法行為の成否)
(被告の主張)
 原告は、著作権買取りに同意し(乙47)、漫画化を許諾しており(乙3)、令和元年10月頃に被告と紛争になるまで本件漫画について何らのクレーム等はなく、良好な反応であった。にもかかわらず、原告は、紛争となると、被告を誹謗中傷し始め、本件本訴を提起したのであるから、主張した権利又は法律関係が事実的法律的根拠を欠くことを知り、又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのに訴えを提起したものである。
(原告の主張)
 原告は、著作権買取りに同意しておらず、領収書もシナリオ制作費(甲2)にとどまる。漫画化・二次利用も許諾していない。よって、本訴提起は適法である。
(3)争点3(本件投稿を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求の当否)
(3)−1 争点3−1(名誉毀損の成否)
(被告の主張)
ア 被告は、大規模なオフ会を開くなど、コミュニティ自体小さいものではなく、限定的なメンバーであっても、公然性が認められる。原告の誹謗中傷の対象が被告であることは、複数の者が理解していた(乙63)。
イ 本件投稿1Cは、社会的評価を低下させるものである。本件投稿1Dの「そんなヤツリアルにいるわけないでしょ」は、十数年前に2chで流行したインターネットミームに倣ったもの(「想像上の存在にすぎない」というフレーズにかけたもの)であり、社会的評価を低下させるものである。
ウ 本件投稿2@〜Bは、被告に対する誹謗中傷目的で行ったものであり、もっぱら公益を図る目的にでたという動機はないから、意見論評の域を逸脱したものである。本件投稿2E、Fは、意見論評に当たるとしても、被告の社会的評価を低下させるものである。
(原告の主張)
ア 閉鎖的コミュニティである本件サーバー上の投稿に「公然性」はなく、投稿の対象が被告であるとの「同定可能性」もない。投稿の多くも意見・感想であり、被告の「社会的評価を低下」させるような事実摘示には当たらない。
 すなわち、本件サーバーは、管理者・運営による限定メンバー招待制の閉鎖的コミュニティであるから不特定多数がアクセス可能な環境ではなく、25人程度とさほど大きくないコミュニティで実際の閲覧者はごく少数であり、相互の面識や繋がりを前提にしたメンバー構成であるから外部への転載・拡散は禁止されている蓋然性が高い。不特定多数のクリエイター等への伝播可能性も抽象的である。よって、本件投稿に「公然性」は認められない。
 また、本件投稿は、被告を直接名指ししておらず、文脈上「原告の作品を勝手に漫画化した人がいる」というにとどまる。メンバーの一部が事情を知っており「状況から被告だろう」と想像できたとしても、客観的に被告を特定できる情報が投稿文面にないため、一般閲覧者からは実態が不明であり、「同定可能性」はない。
イ 本件投稿1
(ア)本件投稿1@の「返事を待たずに勝手に…販売している」とは、明確な許諾を得ずに販売されたと感じたという驚き・不満の意見・感想を述べるだけであり、具体的事実を断定し被告の著作権侵害を弾じるものではないから社会的評価を低下させない。本件投稿1@は、著作権侵害という公共の利害に関わり、公益目的がある。また、契約書の作成を待たずに漫画化がされたことは事実であるから、原告において被告の行為が著作権侵害に当たると考えたことについては、真実性又は真実相当性があり、違法性又は責任が阻却されるべきである。
(イ)本件投稿1Bの「踏み倒した」とは、契約書も作成されず印税相当の報酬も未払であるとの取引上の不満の意見・感想を述べるだけである。公然性や同定可能性もない。
(ウ)本件投稿1Eの「被害総額が概算で400万オーバー」は、訴訟準備を進める中で試算した主張額を述べるにすぎず、意見・感想であるから、被告を誹謗中傷するものではなく、社会的評価を低下させない。公然性や同定可能性の点でも多数の第三者が閲覧するものではない。
ウ 本件投稿2
(ア)本件投稿2G〜Iの「全キックでコレですわ」「リライト費用踏み倒され中www」などは、原告が、被告との制作進行における見解の相違やトラブルの経緯における不満・主観的感想を述べたにすぎず、「企画書と合わないスチル」「スチル発注ミス…リライト費用踏み倒し」なども原告視点の状況説明であって、被告を誹謗し人格を傷つけるものではないから、社会的評価を低下させるものではない。公然性、同定可能性の要件も満たさない。
(イ)本件投稿2Jは、原告と被告間のリライト費用や発注ミスをめぐる個人的認識・意見を述べるものであり、「被告が不当に踏倒しをしている」と厳密な意味で断定するものではない。被告の社会的評価を低下させる重大な事実摘示とまではいえず、原告が被告に対して抱く不満や疑念を述べたにとどまる。公然性や同定可能性も十分に疑問があり、部分的に事実の摘示を含むとしても、意見論評の自由による違法性阻却が認められるべきである。
(ウ)本件投稿2K、Lの「2018年3月頭の納品から12月20日まで支払がなかったのに、被告が先払いと主張している」との部分は、契約の経緯や見解の相違の中で、原告の見解を示したものにすぎない。閉鎖的コミュニティ内での一方的な意見表明であるから、社会的評価を著しく低下させるとはいえず、仮に部分的に事実の摘示を含むとしても、真実と認められる可能性があり、意見論評の自由が尊重される。
 「未払金トータルが100万円超えている」との部分も、原告が認識する報酬・費用の試算にすぎず、制作費用トラブルを強調する原告の主観的表現であるから、社会的評価を低下させるものではない。閉鎖的コミュニティ内での意見発信として違法性は阻却される。
(エ)本件投稿2M、Nの「本来の製作費用よりも15万円も値下げした」や、「発注ミスのリカバリーで5000文字多く書かされた」「それを被告が大幅超過だと主張している」「バカすぎて笑えない」は、事実の存在を厳密に断定するのではなく取引上の不満を述べるものであり、取引トラブルに関する原告の意見・感想の表明である(数字は、原告の主観的評価である。)。被告の発注ミスは取引内部の評価次第である。加えて閉鎖的コミュニティでの文脈や、原告と被告の対立を知るメンバーが大半であることを踏まえると、社会的評価を深刻に損なうものとはいえず、名誉毀損が認められないか違法性が阻却される。
(3)−2 争点3−2(名誉感情侵害の成否)
(被告の主張)
 本件投稿は、被告に対する誹謗中傷目的でされた事実と異なる投稿であるから、名誉毀損が認定されない部分についても、社会生活上許される限度を超えた侮辱に当たる。
(原告の主張)
 本件投稿は、公然性が低く、公益目的による公共性の高い問題への批判的言説であり、暴力的脅迫や人格否定の中傷罵倒はないから、創作コミュニティ内での注意喚起であって、被告の不利益は受忍限度内である。
(3)−3 争点3−4(被告の損害の有無及びその額)
(被告の主張)
 本件の経緯からすると、精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は10万円では低すぎる。弁護士費用も、旧日弁連基準による最低着手金相当額の10万円は認められるべきである。
(原告の主張)
 本件投稿は違法性がないから、被告の精神的損害の請求は前提を欠く。社会的影響は極めて限定的であるし、原告は事実的基礎に基づき公益目的で注意喚起したものであり、悪意・重過失はない。旧日弁連報酬基準は2004年に廃止された内部規程であり、慰謝料算定に直接適用される法的根拠はない。同基準の額も弁護士報酬の目安に過ぎず、損害額算定基準ではない。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は、原判決と同様、本件本訴について、被告は原告の著作権及び著作者人格権を侵害したものと認めることはできないから、原告の本件本訴はいずれも理由がなく棄却すべきものであり、本件反訴について、原告による本件本訴の提起は違法なものではないが、原告による本件投稿1@、B及びE、本件投稿2G〜Nは被告の名誉を毀損する違法なものであるから、被告の本件反訴は11万円及び遅延損害金の支払を求める限度で理由があり一部認容すべきものであると判断する。
 その理由は、以下のとおりである。
2 争点1−1(著作権侵害の成否)、争点1−1−2(原告シナリオを漫画化すること等についての許諾の有無)について
(1)仮に、本件漫画が原告シナリオの二次的著作物であるとしても、原告は被告に対して原告シナリオを書き直して本件漫画を制作し書籍又は電子書籍として販売することについての許諾(以下「本件許諾」という。)をしていたと認められるから、被告が原告の著作権を侵害したとはいえないことは、原判決「事実及び理由」の第4の1(原判決23頁2行目から27頁20行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
(2)当事者の補充主張について
ア 原告は、平成30年8月24日の本件メッセージのやり取り全体からすると、「了解です。ありがとうございます。」との原告の返信は、報酬と支払方法の確認であって、漫画化の許諾ではなく、同日夜の音声通話の交渉では、契約書を作成するか否かが問題となり、被告がこれを敬遠し拒否したことで交渉がまとまらなかったなどと主張する。
 しかしながら、本件メッセージのやり取り全体を見ると、被告は、同日19時36分から19時39分までの間、原告に対し、原告シナリオを受領し原稿料の振込を行う予定であること(番号4)、さらに、ルート2の部分を被告が書き直して漫画にしようと考えているのでその点の了承をお願いしたいこと(番号8)、漫画の分量や構成は34〜36頁程度であり、ルート2と同様の展開であること(番号9)、漫画化する理由(番号10)及び漫画化を依頼する相手方(番号11)等を伝えた上で、振込について文字数2円(1000円単位切り上げ)で計算し(番号12)、週末に額を伝えて合意の上振り込むこと(番号13)を伝えており、これに対し、原告が20時34分に特段の留保なく「了解です。ありがとうございます。」(番号14)と回答していることが認められる。そうすると、番号14のメッセージについては、被告からの前記メッセージ全体を踏まえ、これを合理的に解釈すると、原告シナリオの報酬と支払方法の確認だけではなく、被告が原告シナリオを改変し、漫画家に依頼して漫画化した上、これを販売することも含め、原告が了承した旨を伝える本件許諾の意思表示であると解するのが相当というべきである(なお、ルート2の部分は、先行する冒頭の共通ルートと一体となって初めてストーリーとして成立するのであるから、本件許諾の範囲には、冒頭の共通ルート部分の漫画化も含まれる。)。
イ 原告は、本件メッセージのやり取りの後、同日夜の音声通話において、契約書の作成を求めたが被告が躊躇したために合意することができなかったなどと主張し、原審証人Aの証言及び同人作成の陳述書(甲44、60)及び原審における原告本人尋問の結果及び原告作成の陳述書(甲61)にはこれに沿うような供述又は陳述部分がある。しかしながら、そもそも、原審証人Aの証言によっても、Aは、原告に対し、契約書に関する助言をした日時を正確に記憶していたわけではなく、それが平成30年8月24日であったというのは、当時を回顧して推論を重ねた結果にすぎない。Aが、原審において、被告から依頼を受けて作成した(省略)という作品が平成30年8月にはコミックマーケットで発売されていたにもかかわらず、未だ発行されていなかったことを前提に供述した後、これに反する証拠を示されるや、すぐに修正していること(原審証人A尋問調書12〜13頁、乙48)などに照らすと、原被告間の前記音声通話がされた日時に関するAの供述の正確性には疑問がある。この点を措くとしても、Aは、音声通話の間、別の作業をしており(同4頁)、必ずしも常に原告と被告間の通話に集中していたものではなく、その記憶は断片的なものにすぎない(同16頁)。また、原告は、令和元年9月頃から被告との関係が悪化し、令和2年10月に本件投稿1を行っているが、本件漫画は、平成30年12月16日には、原告も参加していた被告のDiscordサーバー「(省略)」上に「シナリオ協力X´」の表示とともにサンプルが掲載されていた(乙36、41)ことが認められる。それにもかかわらず、被告との関係が悪化する令和元年9月頃までの間、原告が被告に対し、本件漫画の制作及び販売等に関して異議を述べたり契約書の作成を求めたりしていたことを認めるに足りる証拠はない。これらの点に照らすと、前記原審証人A及び原告本人の同年8月24日夜の音声通話に関する供述及び陳述部分は、にわかに採用することができず、他に同日夜に音声通話が行われた旨の原告の前記主張を認めるに足りる証拠はない。
3 争点1−2(著作者人格権侵害の成否)について
(1)被告が原告の著作者人格権を侵害したとはいえないことは、原判決「事実及び理由」の第4の2(原判決27頁21行目から29頁11行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
(2)当事者の補充主張について
 原告は、被告が原告シナリオを改変して本件漫画を制作し販売等した行為は、原告の公表権及び同一性保持権を侵害すると主張するが、前記2(1)のとおり、原告は、被告による原告シナリオの改変と漫画化、そして本件漫画の販売等について本件許諾をしていたと認められるから、原告の主張を採用することはできない。原告は、本件漫画には「原作者」として表示されるべきであったと主張するが、もともと原告シナリオ自体、被告が作成した本件素案に基づいて作成されたものであるという経緯があることを踏まえると、仮に本件漫画が原告シナリオを原著作物とし、これを改変した二次的著作物であるとした場合でも、「シナリオ協力」という表記が原著作物の著作者の表記として必ずしも不当とはいい難い。したがって、原告の主張を採用することはできない。
4 争点2(本訴提起を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求の当否)、争点2−1(本訴提起による不法行為の成否)について
(1)原告に本件本訴の提起による不法行為が成立しないことは、原判決「事実及び理由」の第4の3(原判決29頁12行目から30頁25行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
(2)当事者の補充主張について
 被告は、本件本訴の提起に至る経過によれば、原告は、その主張に係る権利又は法律関係が事実的法律的根拠を欠くことを知り、又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのに訴えを提起したから、不法行為が成立すると主張する。しかしながら、前記引用した原判決の前提事実によれば、本件シナリオの制作や本件漫画の制作、販売の経緯等においては、原告と被告間で合意内容を記載した書面を作成することはなく、もっぱらメッセージや口頭のやり取りにより作業を進めてきたことが認められる。本件許諾が認められるのは、このようなやり取り全体を総合的に評価した法的判断の結果であり、著作権買取りの同意又は本件許諾の存在を示す契約書等の直接的な証拠があったわけではない。そうすると、このような場合に原告が本件本訴を提起したとしても、それがおよそ事実的又は法律的根拠を欠くものであって裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものであるとまで認めることは困難というべきである。よって、被告の主張を採用することはできない。
5 争点3(本件投稿を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求の当否)、争点3−1(名誉毀損の成否)について
(1)原告による本件投稿のうち、本件投稿1@、B及びE、本件投稿2G〜Nについて名誉毀損が成立し、その余の本件投稿について名誉毀損が成立するとは認められないことは、原判決「事実及び理由」の第4の4(原判決30頁26行目から53頁2行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
(2)当事者の補充主張について
ア 公然性について
 原告は、本件サーバーは、管理者等による限定メンバー招待制の閉鎖的コミュニティであり、25人程度のメンバー中、実際の閲覧者はごく少数であって、メンバー構成も相互の面識や繋がりを前提とするから、外部への転載・拡散も禁止されている蓋然性が高いこと、不特定多数のクリエイター等への伝播可能性も抽象的であることなどから、公然性は認められないと主張する。しかしながら、本件サーバーにおいてメンバーに対し、投稿内容を外部に拡散しないよう厳しく管理していることを認めるに足りる証拠はない。また、本件サーバーは、メンバー構成が限定的で相互の面識や繋がりを前提とするものであっても、必ずしも少人数とはいえず、メンバーの入れ替わりがあり得ることを考慮すると、本件サーバーでの投稿内容が、所属している者から、同人誌掲載作品を含む各種作品の不特定多数の関係者に伝播する可能性は否定することはできない。よって、公然性を争う原告の主張を採用することはできない。
イ 同定可能性について
 原告は、本件投稿において、被告を直接名指ししておらず、文脈上「原告の作品を勝手に漫画化した人がいる」というにとどまり、客観的に被告を特定できる情報が投稿文面にないため、一般閲覧者からは実態が不明であって同定可能性はないなどと主張する。しかしながら、本件において一般閲覧者に相当するのは、本件サーバーに所属し各種作品等を通じて面識があるクリエーター等である。これらの者は、本件投稿で言及されている漫画の販売態様等から、本件サーバー等を通じた被告の一連の活動を具体的に推知することが可能であると考えられ、現に本件サーバーのメンバーが本件投稿の対象が被告であることを認識し得たとしていること(乙42、63)に照らすと、本件における一般読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、本件投稿の対象が被告であると特定することができたというべきである。よって、同定可能性を争う原告の主張を採用することはできない。
ウ 本件投稿1について
(原告の補充主張について)
(ア)原告は、本件投稿1@の「返事を待たずに勝手に…販売している」とは、明確な許諾を得ずに販売されたと感じたという驚き・不満の意見・感想を述べるものであるなどと主張する。しかし、一般の読者の普通の注意と読み方を基準にすると、前記表現は、許諾なしに漫画化されたという事実を前提として原告の作品の著作権が侵害されているとの法的見解を表明するものと解されるから、単なる驚きや不満を表現するものとはいい難い。
 また、原告は、本件投稿1@は、著作権侵害という公共の利害に関わり、公益目的があり、真実性又は相当性が認められると主張するが、仮に公共の利害に関し公益目的があるとしても、本件許諾が認められる以上、意見又は論評の前提となる事実の重要な部分について真実であることの証明があったと認めることはできない。なお、本件許諾のないことを前提として著作権侵害等を主張する本件本訴の提起自体は、およそ事実上又は法律上の根拠を欠くものとはいえず、不当訴訟とまではいえないことは前記のとおりであるが、だからといって、公然性の要件を満たす本件サーバー上で原告が行った名誉棄損行為の違法性又は責任が直ちに阻却されることにはならない。本件メッセージにおける原被告間のやり取りの内容に照らすと、名誉棄損の不法行為の成否との関係では、原告において、本件許諾の不存在が真実であると信ずることについて相当な理由があったとまでは認められず、他にこれを認めるに足りる主張立証はない。
 よって、原告の主張を採用することはできない。
(イ)原告は、本件投稿1Bの「踏み倒した」とは、契約書も作成されず印税相当の報酬も未払であるとの取引上の不満の意見・感想を述べるものであるなどと主張する。しかし、「著作物利用料(印税)全額踏み倒した」という事実は、論評を待つまでもなく、それ自体で被告の社会的評価を低下させる事実であることは明らかである。したがって、本件投稿1Bは、少なくとも事実の摘示による名誉棄損に該当し、当該事実について真実であることの証明もないから、違法性は阻却されない。これに反する原告の主張を採用することはできない。
(ウ)原告は、本件投稿1Eの「被害総額が概算で400万オーバー」は、訴訟準備を進める中で試算した主張額を述べるにすぎず、意見・感想を述べるものであると主張する。しかし、本件投稿1Eは、本件投稿1@、1Bなどを踏まえ、本件許諾がないのに被告が原告の著作物を漫画化したことを前提に原告の作品の著作権が侵害されており、その被害総額が400万円を超えるとの法的見解を表明するものと解される。したがって、それは被告の社会的評価を低下させるものである。よって、原告の主張を採用することはできない。
(被告の補充主張について)
(エ)被告は、本件投稿1Cは、社会的評価を低下させる表現であると主張する。しかし、本件投稿1Cは、被告が、弁護士に委任して訴えることも辞さないとの態度を示したという事実の摘示と、それに対する「マジもんのやべぇヤツ」という原告の論評からなるものである。弁護士に委任して訴えることは社会通念上正当な行為であるから、当該事実自体は、被告の社会的評価を低下させるものではない。また、これに対する原告の論評は、その当否は別として、被告が弁護士に委任することについての原告の否定的な意見を表明したものにすぎず、その表現振りを考慮しても、未だ被告の社会的評価を低下させるものとまではいい難いし、主題を離れて被告の人身攻撃に及ぶなど論評の域を逸脱しているということもできない。よって、被告の主張を採用することはできない。
(オ)被告は、本件投稿1Dの「そんなヤツリアルにいるわけないでしょ」はインターネットミームであり、社会的評価を低下させる表現であると主張する。しかし、本件投稿1Dは、それがインターネットミームを利用した表現だとしても、本件投稿1Cに続けて一体となり、問題となっている案件は弁護士に依頼して訴えるような案件ではない旨の原告の意見を述べたものにすぎない。すなわち、本件投稿1Dは、本件投稿1Cと同様、それだけでは被告の社会的評価を低下させるものとはいい難い。
 よって、被告の主張を採用することはできない。
エ 本件投稿2について
(原告の補充主張について)
(ア)原告は、本件投稿2G〜Iは、原告が、被告との制作進行における見解の相違やトラブルの経緯における不満・主観的感想を述べたにすぎず、「企画書と合わないスチル」「スチル発注ミス…リライト費用踏み倒し」なども原告視点の状況説明であって、被告を誹謗し人格を傷つけるものではないなどと主張する。しかし、一般の読者の普通の注意と読み方を基準にすると、本件投稿2G〜Iは、原告からの企画等の提案を被告が全く受け入れず、CGスチルの発注にミスがあっても、原告にプロットのリライトを求め、その費用を支払わなかったとの事実を摘示したものと解され、事実の摘示なしに単なる不満・感想を述べるものとはいい難い。そして、当該摘示に係る事実は、被告の社会的評価を低下させる事実であり、仮にそれが公共の利害に関する事実であり、原告において専ら公益を図る目的があったとしても、それが真実であることを認めるに足りる証拠はない以上、原告は名誉毀損による不法行為責任を免れない。
 よって、原告の主張を採用することはできない。
(イ)原告は、本件投稿2Jは、原告と被告間のリライト費用や発注ミスをめぐる個人的認識・意見を述べるものであり、「被告が不当に踏倒しをしている」と厳密な意味で断定するものではないなどと主張する。しかし、一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすると、本件投稿2Jは、本件投稿2G〜Iを踏まえて、被告がCGスチルの発注をミスしたのに、原告にプロットのリライトを求め、その費用を支払わなかったという被告の社会的評価を低下させる事実を再度摘示するものと解され、単なる個人的認識を述べるものとはいい難い。
 原告は、本件投稿2Jは、部分的に事実の摘示を含むとしても意見論評として違法性が阻却されるなどと主張するが、前記のとおり、当該事実が真実であることを認めるに足りる証拠はない。
 よって、原告の主張を採用することはできない。
(ウ)原告は、本件投稿2K、Lの「2018年3月頭の納品から12月20日まで支払がなかったのに、被告が先払いと主張している」「未払金トータルが100万円超えている」は、原告の認識する契約の経緯や見解の相違、報酬・費用の試算に関する意見を述べるにすぎないなどと主張する。しかし、一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすると、本件投稿2K、Lは、被告が作品の制作を依頼したのに報酬の支払が8か月遅れ、100万円を超える多額の報酬の未払があるという被告の社会的評価を低下させる事実を摘示するものと解されるから、原告の認識する意見を述べるにすぎないものとはいい難い。また、当該事実が真実であることを認めるに足りる証拠もない。よって、原告の主張を採用することはできない。
(エ)原告は、本件投稿2M、Nの「本来の製作費用よりも15万円も値下げした」「発注ミスのリカバリーで5000文字多く書かされた」「それを被告が大幅超過だと主張している」「バカすぎて笑えない」は、主観的な認識と取引上の不満を述べるものであるなどと主張する。しかし、一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすると、本件投稿2M、Nは、本件投稿2G〜Jを踏まえ、被告がCGスチルの発注をミスしたために、原告が回復のために作業量を大幅に増やしたが、被告は原告に原因があるような主張をしているという被告の社会的評価を低下させる事実を摘示するものと解されるから、単なる不満を述べるものとはいい難い。そして、公共の利害に関する事実であり、専ら公益を図る目的があるとしても、前記のとおり、被告がCGスチルの発注においてミスをしたと認めるに足りる証拠はない。
 よって、原告の主張を採用することはできない。
(被告の補充主張について)
(オ)被告は、本件投稿2@〜Bは、被告に対する誹謗中傷が目的であり、意見論評の域を逸脱したものであるなどと主張する。しかしながら、本件投稿2@〜Bは、原告が制作したアプリ用シナリオに関連するCG集を被告が原告に連絡することなく制作販売したという事実を摘示した上で、原告の法的見解(「著作権の侵害やりやがる」)及び論評(「やってることは同人ゴロ以下じゃないか」)を述べるものである。その前提となる摘示された事実の重要な部分は真実であると認められるところ、著作権の侵害であるという法的見解は人身攻撃に及ぶなど意見・論評の域を超えるものではない。また、「やってることは同人ゴロ以下」という論評も、あくまでも被告の行為(やってること)が「同人ゴロ以下」であると批判する点に主眼があるものと認められ、被告の人格を攻撃するものとまではいい難い。なお、本件投稿2@〜Bが公共の利害に関する事実に係るものであり、かつ、専ら公益を図る目的に出たものと認められることは、前記引用した原判決の「事実及び理由」の第4の4(5)キ(ウ)及び同ク(ウ)(原判決43頁5行目から21行目まで及び44頁21行目から45頁11行目まで)に記載のとおりである。したがって、被告の主張を採用することはできない。
6 争点3−2(名誉感情侵害の成否)について
(1)原告による本件投稿について、名誉感情侵害の不法行為が成立しないことは、原判決「事実及び理由」の第4の5(原判決53頁3行目から19行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
(2)なお、本件投稿1@、B及びE並びに本件投稿2G〜Nは、名誉棄損の不法行為が成立する行為であるが、用いられている表現は、侮辱行為の範疇に属するものとまではいえない。本件投稿のその他の各表現についても、前記引用した原判決において言及されている各表現のほか、「『…弁護士先生じゃなくてB先生に相談した方がいいですよ?』って言われましたわ…」(本件投稿1D)、「同人ゴロ絶対殺すマンとか自称してたくせにやってることは同人ゴロ以下じゃないか」(本件投稿2B)などの表現が散見されるが、これらの表現を伴った本件投稿が、被告の具体的な言動に対する批判を超えて、社会生活上許されない人格の侮辱行為に当たるとまで認めることはできない。
(3)よって、本件投稿について名誉感情侵害の不法行為が成立するものとは認められない。
7 争点3−4(被告の損害の有無及びその額)について
(1)被告の損害額は、11万円(慰謝料10万円、弁護士費用1万円)が相当であることは、原判決「事実及び理由」の第4の7(原判決53頁25行目から54頁9行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
(2)被告は、本件における精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は10万円では低額にすぎ、弁護士費用も旧日弁連基準に基づき最低10万円は認められるべきであるなどと主張する。
 しかし、不法行為が成立する本件投稿の回数や本件投稿の表現の内容・分量等を考慮すると、被告の損害額は11万円が相当というべきである。なお、旧日弁連基準はもともと裁判所を法的に拘束するものではない上、現在は廃止されていることを踏まえると、これに基づき不法行為と相当因果関係のある弁護士費用相当の損害額を算定すべき合理的理由もないから、同基準に基づく被告の主張を採用することはできない。
8 小括
 以上によれば、原告の本件本訴はいずれも理由がなく、被告の本件反訴は11万円及び遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余の請求は理由がない。そして、当事者の主張に鑑み本件記録を検討しても、前記認定判断を左右するに足りる的確な主張立証はない。
第4 結論
 よって、これと同旨の原判決は相当であるから、本件控訴及び本件附帯控訴をいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第2部
 裁判長裁判官 清水響
 裁判官 菊池絵理
 裁判官 頼晋一
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