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【事件名】「聖教新聞」の写真無断投稿事件
【年月日】令和6年9月26日
 東京地裁 令和5年(ワ)第70388号 損害賠償請求事件
 (口頭弁論終結日 令和6年8月8日)

判決
原告 創価学会
同訴訟代理人弁護士 西口伸良
同 堀田正明
同 長谷川伸城
同 甲斐伸明
同 大原良明
被告 A
同訴訟代理人弁護士 佃克彦
同訴訟復代理人弁護士 山縣敦彦


主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
 被告は、原告に対し、419万1500円及びこれに対する令和元年10月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要等
1 本件は、宗教法人である原告が、その会員である被告に対し、被告がインターネット上のいわゆる短文投稿サイトTwitter(以下「ツイッター」という。)において、原告が出版する聖教新聞に掲載された別紙写真目録記載の各写真(以下、同目録の番号順に「本件写真1」などといい、全ての写真を併せて「本件各写真」という。)を複製しこれを掲載したことが、原告保有に係る本件各写真の著作権(送信可能化権)を侵害すると主張して、不法行為に基づき、損害賠償金419万1500円及びこれに対する最後の不法行為日である令和元年10月21日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2 本件審理経過と中核的争点
 当事者双方は、侵害論、損害論とも、2往復で主張立証を終了し(第1回口頭弁論調書参照)、裁判所は、当事者の主張立証の内容を検討し、当事者双方に対し、その結果をレビュー期日(本件においては第5回口頭弁論期日をいい、裁判所の検討期間後にその検討結果を共有した上で今後の進行を協議する期日をいう。以下同じ。)で伝えることとした。
 そして、裁判所は、レビュー期日において、本件の中核的争点が引用の抗弁であるとして、その判断基準を示した上、原告に対しては、被告による利用行為が原告に及ぼす影響に限り、被告に対しては、本件各写真の利用目的等に限り、主張立証を補充するよう求めた(第5回口頭弁論調書参照)。
 上記主張立証の補充後、裁判所は、本件訴訟が裁判をするのに熟したものと判断し、弁論を終結した。
3 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実をいう。)
(1)当事者等
ア 原告は、宗教法人法に基づいて設立された宗教法人であり、聖教新聞の出版及び販売業を行っている。なお、本件各写真は、いずれも聖教新聞の紙面に掲載されたものである。
イ 被告は、原告(創価学会)の会員であり、聖教新聞を購読しており、聖教新聞の販拡(啓蒙)活動をしていたことがある。
(2)被告による投稿
 被告は、平成30年10月22日から令和元年10月21日までの間、別紙投稿記事目録記載の日時において、「@B」というアカウント名で、同目録記載の本文(以下「批評」という。)及び同目録記載の写真を併せてツイッターに投稿した(以下、「本件投稿1」ないし「本件投稿25」といい、全ての投稿を併せて「本件各投稿」という。)。
4 争点
(1)本件各写真の著作物性(争点1)
(2)著作権の帰属(争点2)
(3)複製の成否(争点3)
(4)引用の成否(争点4)
(5)付随対象著作物の利用の成否(争点5)
(6)損害額(争点6)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(本件各写真の著作物性)について
(原告の主張)
 別紙写真目録「著作物性の有無(原告)」欄記載のとおりである。
(被告の主張)
 別紙写真目録「著作物性の有無(被告)」欄記載のとおりである。
2 争点2(著作権の帰属)について
(原告の主張)
 本件各写真は、いずれも聖教新聞上に掲載された写真であるところ、各聖教新聞の上部に、原告の出版部門である聖教新聞社が「発行所」と記載されており、「(c)聖教新聞社」との著作権マークも表示されている(甲4)。したがって、著作権法14条により、原告が本件各写真の著作者と推定される。
 また、本件各写真は、いずれも聖教新聞社のカメラマンが職務上撮影した写真であって、原告の発意に基づき、原告の業務に従事する者が職務上作成する著作物で、原告が自己の著作の名義の下に公表するものであることから、職務著作に当たり、原告が著作者としてその著作権を有する。なお、原告の職員就業規則にも「職員が職務上の行為として著作した著作物の著作権は、法人に帰属する」との職務著作の規定がある(甲10)。
(被告の主張)
 原告は、職務著作の規定により本件各写真の著作権がいずれも原告に帰属し、本件各写真の撮影者が聖教新聞社又は原告の職員であると主張する。しかしながら、陳述書(甲9、10)には、「当社のカメラマン」、「聖教新聞社のカメラマン」といった漠然とした記載しかなく、実際のところ、本件各写真の撮影者が具体的に誰であるのか、全く明らかでない。
 なお、原告は、著作権法14条の規定により、原告が本件各写真の著作権者と推定される旨主張するが、著作者名として表示されているのは「聖教新聞社」であって、原告ではないため、原告が著作者であるとの推定は働かない。
3 争点3(複製の成否)について
(原告の主張)
 被告が掲載した写真の一部には、モノクロであったり、不鮮明であったり、歪みがあるものもあるが、各写真の創作性は十分看取することができるから、被告が本件各写真を撮影して投稿した画像は、本件各写真に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足り、本件各写真の複製といえる。
(被告の主張)
 本件各写真は、いずれも聖教新聞の紙面を素人がスマートフォンのカメラで撮影したものであることから、画像が極めて悪く、また、歪みや影などが多く入っており、もはや、元の写真の形式や内容を覚知させるに足りるものを再製したとはいえない。
4 争点4(引用の成否)について
(被告の主張)
 別紙被告主張目録「引用の抗弁等に関する再反論」欄記載のとおりである。
 なお、原告は、被告立証に係る膨大な無許諾利用を野放しにしておきながら、被告の利用についてのみ経済的不利益を主張しており、その原告の主張は、ためにする主張にすぎず、要するに、本件訴訟は、原告に対して批判的な被告の言論のみを狙い撃ちしたものであり、原告は、本件各写真の利用によって何ら経済的影響を受けるものではない。
(原告の主張)
 別紙原告主張目録「適法な引用(著作権法32条1項)、付随対象著作物の利用(著作権法30条の2)に該当しないこと」欄記載のとおりである。
 なお、被告による本件各写真の無断転載によって、原告は、少なくとも使用料相当額の損害を被っており、宗教法人の機関誌への掲載を前提とした報道写真である本件各写真については、無断使用によって、写真そのものの財産的価値が損なわれ、また、聖教新聞社の取材報道、創作活動に生じ得る支障も考慮されるべきである。
5 争点5(付随対象著作物の利用の成否)について
(被告の主張)
(1)本件投稿11
 被告は、本件写真10の写真を原告に対する批判のために利用しようとしたわけではない。その利用に当たり、批判の対象とした記事以外の箇所をトリミングして写真を撮影したり加工したりすることは、特に写真撮影やスマートフォンの操作に詳しくない被告にとっては困難であり、本件投稿11の公共性に照らし、この程度の写り込みは、原告が当然に受忍すべき限度内である。また、被告が掲載した聖教新聞の紙面を撮影した写真において、批判の対象とした記事以外の箇所は、文字や人物の顔が判読・判別困難なほどに不鮮明であって再製の精度が非常に低いこと等からして、「軽微な構成部分」といえる。したがって、本件写真10の利用については、「正当な範囲内」の利用といえ、著作権侵害にはならない。
(2)本件投稿21について
 (1)で主張したところは、本件投稿21における本件写真27及び28についても、同様である。
(3)本件投稿22について
 (1)で主張したところは、本件投稿22における本件写真29についても、同様である。
(原告の主張)
 別紙原告主張目録記事番号11、21、22の「適法な引用(法32条1項)、付随対象著作物の利用(法30条の2)に該当しないこと」欄に各記載のとおりである。
6 争点6(損害額)について
(原告の主張)
(1)使用料相当額
 原告は、被告に対して、著作権法114条3項に基づき、本件各写真に係る使用料相当額を損害として請求する。具体的には、原告には使用料規程が存在しないため、一般的な使用料規程を参考にするところ、全国紙である毎日新聞を発行する毎日新聞社の毎日フォトバンクの料金表(甲5)を参考として、使用料相当額を算定すると、下記計算表のとおり、合計254万1000円になる。
本件各記事 利用写真枚数 使用期間※令和5年6月21日時点 料金
カラー モノクロ 使用開始日 経過年数
\16,500 \8,250
1 1 H30.10.22 5年目 \82,500
2 1 H31.2.13 5年目 \41,250
3 1 H31.2.14 5年目 \41,250
4 1 H31.3.12 5年目 \82,500
5 1 H31.3.16 5年目 \82,500
6 1 H31.3.16 5年目 \82,500
7 1 H31.4.16 5年目 \82,500
8 1 H31.4.20 5年目 \82,500
9 1 H31.4.24 5年目 \82,500
10 1 R1.5.3 5年目 \82,500
11 2 R1.5.10 5年目 \165,000
12 1 R1.5.16 5年目 \41,250
13 3 R1.5.22 5年目 \247,500
14 1 R1.5.29 5年目 \82,500
15 1 R1.6.2 5年目 \41,250
16 2 R1.6.17 5年目 \165,000
17 2 R1.7.3 4年目 \132,000
18 1 R1.7.12 4年目 \66,000
19 1 R1.8.3 4年目 \33,000
20 1 R1.8.9 4年目 \66,000
21 5 R1.10.6 4年目 \165,000
22 1 R1.10.13 4年目 \66,000
23 4 R1.10.14 4年目 \264,000
24 3 R1.10.16 4年目 \198,000
25 1 R1.10.21 4年目 \66,000
合計金 \2,541,000
(2)無断使用による加算
 被告は、原告が著作権を有する合計37点に及ぶ多数の著作物を原告に無断で使用しているところ、現行著作権法114条3項が「侵害し得」を避けるために旧法にあった「通常」の文言を削除した趣旨に照らせば、被告による著作権侵害の程度が著しいこと、その行為態様が極めて悪質であること、被告が本件各投稿を削除せず掲載し続けており全く反省の態度が見られないこと、以上の事情に照らして、上記で算出した使用料相当額に50%を加算すべきである。
(3)被告の主張に対する反論
 被告は、原告に写真に関する使用料規程が存在しないことを理由に、原告が受けるべき経済的利益が存在しないと主張する。しかしながら、使用料規程が存在しないことが同項に基づく使用料相当額の請求を妨げる事情にはならない。そして、毎日新聞社は全国規模で発行されている日刊の新聞であるという点で聖教新聞と共通しているのに対し、京都新聞は写真をSNS上で利用することを禁止しており、ウェブサイト上での利用期間も最長1年間としていることから(甲13)、毎日新聞社の規定を参考とすることが相当である。
 また、被告は、ツイッターに投稿された写真に映し出された本件各写真は不鮮明であったことから、毎日新聞社の規定を根拠とすべきではないと主張するものの、写真の鮮明の程度は、新たな著作者人格権侵害を惹起することはあっても、使用料相当損害額を減額する理由にはならない。
(4)小括
 以上によれば、著作権法114条3項に基づく損害額は381万1500万円である。
(被告の主張)
(1)使用料規程
 原告の主張するとおり、原告には写真に関する使用料規程が存在しない。これは、原告において、一貫して使用料を徴収してこなかったことを示すものであり、被告が本件各写真を使用することに関し、原告が受けるべき経済的利益はそもそも存在しないというべきである。
 これに対して、原告は、「一般的な使用料規程」として、毎日新聞の使用料規程である証拠(甲5)を根拠として損害額を計算している。しかしながら、毎日新聞が一般紙であるのに対し、聖教新聞は宗教団体である原告の機関紙であり、その紙面の内容としても、原告の各種の行事・会合の内容や、池田名誉会長の指導、会員の信仰体験が主要な部分を占めており、原告の会員の信心の深化、確立を図り、日蓮大聖人の仏法を基調に平和・文化・教育運動を推進するという方針の下で編集されているものである。そして、掲載されている写真も、このような方針に基づいて掲載されている特殊な写真である(なお、創作性のある写真という趣旨ではない。)。一方で、一般紙である京都新聞の「基本料金表」(乙4)をみると、上記証拠(甲5)とは異なり、ホームページでの利用(期間についての記載はない。)について写真1点当たり3000円となっている。したがって、上記証拠(甲5)を根拠として損害額を算出するのは誤りである。
 なお、原告は、京都新聞はSNSへの掲載を禁止しているから本件の参考にならないと主張するものの、原告が引用する毎日新聞も同様に個人ブログやSNSへの掲載は禁止しているのであって(乙6)、原告指摘の点は理由とならない。
(2)被告が掲載した本件各写真の性質
 被告がツイートにおいて掲載した本件各写真は、もともと紙媒体の新聞本誌に掲載された画質の悪い写真を、職業カメラマンでもなく、写真撮影を趣味にしているわけでもない被告が、更に自身のスマートフォンで直接撮影したものにすぎず、被告が掲載した本件各写真の画質は、極めて不鮮明である。
 他方、新聞社の利用料規程が対象としている写真というのは、職業カメラマンが撮影し、紙媒体ではなく、電子データの状態で利用者に提供されるものであり、画質の面で大きな差がある。そのため、被告が掲載したような極めて不鮮明な写真を、第三者が更に複製等して使用することは考えられない。このように、各社の利用規程は、高画質の写真を前提にして利用料の額が設定されているのであるから、被告が掲載したような極めて不鮮明な写真の掲載について、新聞社の利用料規程を根拠にするのは、誤りである。
(3)被告による写真掲載の態様
 被告は、あくまで原告を批判するという正当な言論の目的で、聖教新聞の記事自体を掲載したものであって、本件各写真を自らが撮影したかのような態様で掲載したわけではない。この意味で、被告による写真掲載の態様は、悪質とはいえず、使用料相当額に50%を加算すべきだとする原告の主張は、失当である。
第4 当裁判所の判断
 本件審理経過に鑑み、中核的争点(第2の2参照)である争点4(引用の成否)をまず判断する。
1 認定事実
 証拠(後掲証拠のほか、甲1、3、4(いずれも枝番を含む。)、16、乙7)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。
(1)原告は、聖教新聞の出版及び販売等を行っている宗教法人であり、被告は、原告(創価学会)の会員である。かつて、被告は、聖教新聞の販拡(啓蒙)活動をしており、現在も聖教新聞を購読している。聖教新聞には、本件各写真が掲載されていたところ、本件各写真は、報道を視覚的に伝達するいわゆる報道写真であり(甲16)、独立の法人格のない聖教新聞社のカメラマンが職務上撮影したものであり、原告がその著作権を保有している(甲10)。
(2)被告は、原告(創価学会)の会員に身近な存在である聖教新聞を題材に意見を述べれば、被告が現在の原告(創価学会)に抱く意見を多くの人々に理解してもらい、原告(創価学会)が改善されるのではないかと思うようになった。そこで、被告は、自身が購読する聖教新聞のごく一部の記事(ただし写真のみの部分を含む。以下同じ。)をスマートフォンで撮影し、その記事に対する批評をツイッターに投稿することとした。
(3)そして、被告は、平成30年10月22日から令和元年10月21日までの間、「@B」というアカウント名を使用して、別紙投稿記事目録記載の日時において合計25回、同目録本文記載の批評及びこれに関連する1枚の写真をツイッターに併せて投稿した(本件各投稿)。なお、被告は、ツイッターに掲載した上記批評に聖教新聞からの引用である旨記載したり(本件投稿7、9、10、14、18、19、21ないし25)又は「聖教新聞」という文字を映り込ませてその写真を掲載したり(本件投稿10、11、13、21ないし24)した。
(4)被告がスマートフォンで撮影しその写真に映し出された聖教新聞の記事には、いずれも上記批評と関連するものが含まれており、上記記事は、上記批評をする目的でスマートフォンの写真1枚に写り込む限度で利用されたものである。そして、スマートフォンで撮影された上記記事には、聖教新聞に掲載された本件各写真が映されているものの、本件各写真の構図は総じてありふれたものであり、ツイッターに投稿された上記写真に映し出された本件各写真は、被告が聖教新聞の紙面に掲載されていたものをスマートフォンで撮影し更にツイッターに投稿したものであるから、全体として不鮮明であり、その画質は粗く細部は捨象されており、それ自体独立して鑑賞の対象となるものとはいえない。
(5)ツイッターに投稿された上記写真に映し出された本件各写真が、その後ツイッターの閲覧者等によってその画像がダウンロードされるなどして、二次的に利用された事実を認めるに足りない。
2 引用の成否に関する判断
 著作権法32条1項は、公表された著作物は、公正な慣行に合致し、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で、引用して利用することができる旨規定するところ、公正な慣行に合致し、かつ、引用の目的上正当な範囲内であるかどうかは、社会通念に照らし、他人の著作物を利用する目的のほか、その方法や態様、利用される著作物の種類や性質、当該著作物の著作権者に及ぼす影響の程度などを総合考慮して判断されるべきである。
 これを本件についてみると、前記認定事実によれば、原告(創価学会)の会員である被告は、被告が購読する聖教新聞のごく一部の記事をスマートフォンで撮影し、その写真とともに、上記記事に関する原告(創価学会)に対する批評をツイッターに投稿することとし、平成30年10月22日から令和元年10月21日までの間、別紙投稿記事目録記載の日時において合計25回、「@B」というアカウント名で、同目録記載の批評(本文)及び写真をツイッターに投稿(本件各投稿)したことが認められる。
 そして、前記認定事実によれば、スマートフォンで撮影された上記記事には、いずれも上記批評と関連するものが含まれており、上記記事は、上記批評をする目的でスマートフォンの写真1枚に写り込む限度で利用されたものである。のみならず、前記認定事実によれば、スマートフォンで撮影された上記記事には、聖教新聞に掲載された本件各写真が含まれているものの、本件各写真の構図は総じてありふれたものであり、ツイッターに投稿された上記写真に映し出された本件各写真は、被告が聖教新聞の紙面に掲載されていたものをスマートフォンで撮影し更にツイッターに投稿したものであるから、全体として不鮮明であり、その画質は粗く細部は捨象されていることが認められる。そうすると、仮に本件各写真に創作的表現部分があったとしても、ツイッターに投稿された上記写真に映し出された本件各写真は、そのごく僅かな部分を複製するものにすぎない。
 さらに、ツイッターに投稿された上記写真に映し出された本件各写真の上記態様に鑑みると、その不鮮明な本件各写真が独立して二次的に利用されるおそれは、極めて低いというべきであり、本件全証拠によっても、二次的に利用されたことによって原告が経済的利益を得る機会を現に失ったことを認めるに足りない。
 また、前記認定事実によれば、被告は、ツイッターに掲載した批評自体に聖教新聞からの引用である旨記載し又は「聖教新聞」という文字を上記写真に映り込ませてその投稿を継続していたことが認められる。そうすると、ツイッターに掲載された批評の内容が原告(創価学会)に対するものであり、原告(創価学会)の機関誌(聖教新聞)の報道写真としての性質を有する本件各写真の性質等を踏まえると、一般の読み手の普通の注意と読み方を基準とすれば、被告の一連の投稿内容に照らし、本件各写真の出所が聖教新聞であることは、十分にうかがわれるものといえる。
 これらの事情の下においては、上記認定に係る本件各写真の性質、その利用目的、ツイッターへの掲載態様、著作権者である原告に及ぼす影響の程度などを、社会通念に照らして総合考慮すれば、被告が聖教新聞掲載に係る本件各写真をスマートフォンで写してこれをツイッターに掲載して利用する行為は、公正な慣行に合致し、かつ、引用の目的上正当な範囲内であると認めるのが相当である。
 したがって、被告による本件各写真の利用は、著作権法32条1項にいう引用に該当するものであるから、違法なものとはいえない。
3 原告の主張に対する判断
(1)原告は、例えば別紙投稿記事目録記載1の本文が「最凶タッグ」との文言のみであるように、被告の批評及び投稿された写真によっては、その写真の利用目的を客観的に了知することができない旨主張する。しかしながら、原告主張に係る「最凶タッグ」という批評でいえば、被告が併せて投稿した写真は、一般の読み手の普通の注意と読み方を基準とすれば、「最凶タッグ」という批評の対象となる2名の人物を直接示すために使用されたものであることは明らかである。そうすると、原告の主張は、被告投稿に係るその余の写真を含め、被告のスマートフォンで撮影した記事が被告の批評と関連するものであるという上記認定を左右するものではない。したがって、原告の主張は、採用することができない。
(2)原告は、本件各写真を利用した目的につき、本件各写真を使用しなければその目的を達成できないものは1件もなく、聖教新聞の文章だけではなく、本件各写真まで引用しなければならない理由はないのであり、現に被告は、聖教新聞の写真を掲載せずに原告(創価学会)の活動を非難する投稿を頻繁に繰り返している旨主張する。しかしながら、スマートフォンで撮影された聖教新聞の記事が、少なくとも被告の批評と関連するものであることは、前記認定のとおりであり、原告の主張を踏まえても、その他の事情をも総合考慮すれば、原告の主張は、前記判断を左右するものとはいえない。したがって、原告の主張は、採用することができない。
(3)原告は、被告がツイッターに掲載した各批評と、本件各写真との関連性は低いため、関連性の低い写真は、紙片を置くなどして撮影したり、撮影後投稿前に無関係の写真をマスキングしたり、トリミング処理することは容易であるから、被告は、各批評と関連性の乏しい本件各写真を漫然と投稿するものであり、その利用の方法や態様は、悪質である旨主張する。しかしながら、スマートフォンで撮影された記事(これに含まれる本件各写真を含む。)は、スマートフォンの写真1枚に写り込む限度で利用されたものであることは、前記認定のとおりであり、原告の主張を考慮しても、その他の事情をも総合考慮すれば、前記判断は動くものではない。したがって、原告の主張は、採用することができない。
(4)原告は、被告が投稿した批評(本文)はいずれも短い文章で原告の活動に対する誹謗中傷又は抽象的かつ主観的な意見等を簡潔に記載するのみであり、本件各写真に関する論評は見当たらないことからすると、被告には、本件各写真それ自体を独立して鑑賞の対象とする目的があったことの証左であり、その利用方法や態様としても不適切である旨主張する。しかしながら、ツイッターに投稿された写真に映し出された本件各写真は、被告が聖教新聞に掲載されていたものをスマートフォンで撮影し更にツイッターに投稿したものであるから、全体として不鮮明であり、その画質は粗く細部は捨象されていることは、前記において説示したとおりである。上記認定に係る本件各写真の利用態様等を踏まえると、本件各投稿は、写真ではなく被告の批評に主眼があるものと認めるのが相当であり、本件各写真それ自体を独立して鑑賞の対象とする目的があるものとはいえず、原告の主張は、その前提を欠く。したがって、原告の主張は、採用することができない。
(5)原告は、ツイッターに投稿された聖教新聞の記事の一部には、聖教新聞が出所であることの明記がないことからすると、被告による本件各写真の利用は、公正な慣行に合致するものとはいえない旨主張する。しかしながら、被告は、ツイッターに掲載した批評自体に聖教新聞からの引用である旨記載し又は「聖教新聞」という文字を映り込ませたものもあり、被告の原告(創価学会)に対する批評の内容及び原告(創価学会)の機関誌(聖教新聞)の報道写真としての本件各写真の性質を踏まえると、被告の一連の投稿内容に照らし、本件各写真の出所が聖教新聞であることが十分にうかがわれることは、前記において認定したとおりである。そうすると、ツイッターに投稿された批評や当該投稿に係る写真に出所表示が明示されていないものが一部含まれることは、原告の主張のとおりであるものの、上記出所表示に関する認定のほか、社会通念に照らしその余の事情を総合すれば、原告の主張は、前記判断を左右するものとはいえない。したがって、原告の主張は、採用することができない。
(6)原告は、本件各写真につき、原告(創価学会)の活動を推進、啓蒙する機関誌(聖教新聞)に掲載する目的で、創意工夫を凝らして撮影されたものであるのに、被告は、いずれも、原告の活動を侮辱的、揶揄的に批評する目的で利用するものであるから、本件各写真の著作権者である原告の意図に明確に反しており、正当な引用として許されない旨主張する。しかしながら、被告の批評の内容が、侮辱的、揶揄的なものかどうかが名誉感情侵害や名誉権侵害という法的問題で考慮されるのは格別、表現の自由等の重要性に鑑みると、引用の成否という著作権法上の法的問題において、表現の自由の保障が等しく及ぶ批評につきその内容自体の当不当を直接問題とするのは相当ではなく、原告の主張は、少なくとも著作権上の引用の成否という法的問題においては、当を得ないものといえる。したがって、原告の主張は、採用することができない。
(7)原告は、本件各写真は多数転載(リツイート)されており、転載者や転載先の閲覧者において、画像をダウンロードするなどして原告の意に反して二次的に利用されることも容易に想定できる旨主張する。しかしながら、ツイッターに投稿された写真に映し出された本件各写真の態様に鑑みると、その不鮮明な本件各写真に創作的表現部分が仮に存在したとしても、これが独立して二次的に利用されるおそれは、極めて低いというべきであり、本件全証拠によっても、二次的に利用されたことによって原告が経済的利益を得る機会を現に失ったことを認めるに足りないことは、前記において説示したとおりである。そうすると、原告の主張は、前記判断を左右するものとはいえない。したがって、原告の主張は、採用することができない。
(8)その他に、原告提出に係る準備書面及び証拠の内容を改めて検討しても、原告の主張は、著作権法32条の法意を踏まえると、表現の自由等の重要性に照らしても、その余の主張を含め、いずれも前記判断を左右するに至らない。原告の主張は、いずれも採用することができない。
4 その他
 以上によれば、その余の点につき判断するまでもなく、原告の請求は、いずれも理由がない。
第5 結論
 よって、原告の請求は理由がないからこれらをいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第40部
 裁判長裁判官 中島基至
 裁判官 古賀千尋
 裁判官 坂本達也


別紙 投稿記事目録

(その他投稿記事目録省略)
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