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【事件名】ニフティへの発信者情報開示請求事件H 【年月日】令和6年9月18日 東京地裁 令和6年(ワ)第70086号 発信者情報開示請求事件 (口頭弁論終結日 令和6年7月2日) 判決 原告 株式会社バンダイナムコミュージックライブ 同訴訟代理人弁護士 林幸平 同 笠島祐輝 同 尋木浩司 被告 ニフティ株式会社 同訴訟代理人弁護士 谷口悠樹 主文 1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 主文同旨 第2 事案の概要 本件は、原告が、被告が提供するインターネット接続サービスを介して、ファイル共有ネットワークであるBitTorrent(以下「ビットトレント」と表記する。)が使用され、原告がレコード製作者の権利を有する別紙著作物目録記載のレコード(以下「本件レコード」という。)が送信可能化されたことによって、原告の本件レコードに係る送信可能化権が侵害されたことが明らかであるとして、被告に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)5条1項に基づく発信者情報の開示を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実) (1)当事者について 原告は、レコードを製作して発売している株式会社である。被告は、インターネット接続サービスを提供する事業等を行っている株式会社である。 (2)本件レコードに係る原告の送信可能化権について(甲3) 原告は、Aが歌唱する楽曲を録音したレコードを製作の上、令和5年9月20日、本件レコードを日本全国で発売した。原告は、レコード製作者として、本件レコードに係る送信可能化権(著作権法96条の2)を有する。 (3)発信者情報の保有について 別紙発信者情報目録記載のインターネットプロトコルアドレス(以下「IPアドレス」という。)及びポート番号を用いて同目録記載の日時に行われた通信(以下「本件通信」という。)は、被告の電気通信設備を介して行われたものであり、被告は、本件通信を行った者(以下「本件発信者」という。)について同目録記載の各発信者情報を保有している。 (4)ビットトレントの仕組みについて(甲6、8) ビットトレントは、ピアツーピア形式のファイル共有のネットワークである。特定のファイルをダウンロードしようとするユーザは、ビットトレントの「クライアントソフト」を自己の端末にインストールした上で、「インデックスサイト」と呼ばれるウェブサイトにアクセスするなどして、目的のファイルの所在等についての情報が記載された「トレントファイル」を取得して自己の端末内のクライアントソフトに読み込む。これにより、同端末は、「トラッカー」と呼ばれる管理サーバと通信を行い、目的のファイル又は「ピース」と呼ばれるファイルを分割したデータを保有している他のユーザのIPアドレスを取得して、それらのユーザと接続し、当該ファイル又はピースのダウンロードを行う。目的のファイルのデータをダウンロードしたユーザは、自動的に「トラッカー」に登録され、他のユーザからの要求に応じて当該ファイルのデータをアップロードする。 (5)原告による調査について(甲2、3、5〜8) 株式会社Flow(以下「本件調査会社」という。)は、原告の依頼に基づき、本件レコードを対象として、ビットトレントを利用したファイル共有について、P2PFINDERという名称のシステム(以下「本件システム」という。)を用いて、概要、次のとおりの調査を行った(以下「本件調査」という。)。 本件調査会社は、@ダウンロードしようとする対象ファイル(以下「本件ファイル」という。)に対応するトレントファイルをインデックスサイトから入手し、クライアントソフトに取り込み、Aクライアントソフトからトラッカーと通信し、トラッカーに記録されている本件ファイルを保有しているユーザのIPアドレスの一覧を自動的に取得し、B当該IPアドレスが割り当てられている端末と順次通信を行い、本件ファイル全体を保有しているかどうかを確認し、C本件ファイル全体を保有していると判断することができた端末(シーダー)から、本件ファイルのピースをダウンロードし、当該ダウンロードに係る通信の日時、IPアドレス及びポート番号を記録した。 本件通信の日時、IPアドレス及びポート番号は、上記Cのダウンロードに係る通信の日時、IPアドレス及びポート番号である。 また、本件調査会社は、上記Cのダウンロードを行った後、上記@のトレントファイルに基づき、本件ファイル全体のデータを取得した。原告が本件調査会社により取得された本件ファイル全体のデータを確認したところ、当該データは本件レコードに係るデータであった。 2 争点 原告の送信可能化権が侵害されたことが明らかであるといえるか 3 争点に関する当事者の主張 (原告の主張) 本件システムは、対象ファイルの全部を保有している端末(シーダー)からのみ、対象ファイルのピースをダウンロードするものである。本件調査会社は、本件システムを用いて行った本件調査の結果として、本件通信の日時、IPアドレス及びポート番号を記録しており、本件発信者が本件レコードを送信可能化していたものといえる。 したがって、本件通信によって、原告の本件レコードに係る送信可能化権が侵害されたことが明らかである。 (被告の主張) 別紙発信者情報目録記載の日時に本件レコードが送信可能化されていたと認められるためには、当該日時にダウンロードされた本件ファイルのデータの一部が本件レコードの一部と一致する必要がある。しかし、本件調査においては、本件ファイルのピースのダウンロード後に、本件ファイル全体のデータが取得され、当該データと本件レコードの内容とが比較されているところ、ビットトレントの性質上、本件ファイル全体のデータは、本件発信者以外の者からダウンロードされた可能性があるため、本件発信者が本件ファイルを送信可能化していたものとはいえない。 したがって、本件通信によって、原告の本件レコードに係る送信可能化権が侵害されたことが明らかであるとはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(原告の送信可能化権が侵害されたことが明らかであるといえるか)について 証拠(甲6〜8)によれば、本件システムは、対象ファイル全体を保有していると判断することができた端末(シーダー)からのみ、対象ファイルのピースをダウンロードするものであると認められる。そして、本件システム及び本件システムを用いて行われた本件調査の正確性を疑わせる具体的な事情はうかがわれない。そうすると、本件調査の結果から、本件発信者は、本件通信を行った時において、本件ファイル全体を保有しており、本件ファイルを送信可能化していたと認められる。 これに加え、前記前提事実(5)のとおり、本件調査会社が取得した本件ファイルのデータは本件レコードに係るデータであることを踏まえれば、本件発信者は、本件通信を行った時において、本件レコードを送信可能化していたものと認められる。 したがって、本件通信によって、原告の本件レコードに係る送信可能化権が侵害されたことが明らかであるということができる。 2 弁論の全趣旨によれば、原告は本件通信を行った者に対して損害賠償請求権等を行使する予定であることが認められ、そのために、本件通信の発信者情報の開示を受ける必要があるといえるから、原告には、当該発信者情報の開示を受けるべき「正当な理由がある」(プロバイダ責任制限法5条1項2号)ということができる。 第4 結論 以上によれば、原告の請求は理由があるから、これを認容することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官 ●(はしごたか)橋彩 裁判官 杉田時基 裁判官 吉川慶 (別紙)発信者情報目録 (日時記載省略)に「(記載省略)」というインターネットプロトコルアドレス及び当該インターネットプロトコルアドレスと組み合わされたポート番号「(記載省略)」を使用してインターネットに接続していた者の氏名(又は名称)、住所、電話番号及び電子メールアドレス (別紙) (記載省略)著作物目録 |
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