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【事件名】NTTコムへの発信者情報開示請求事件AI
【年月日】令和6年8月30日
 東京地裁 令和5年(ワ)第70529号 発信者情報開示請求事件
 (口頭弁論終結日 令和6年5月15日)

判決
原告 株式会社NBENTERTAINMENT
同訴訟代理人弁護士 杉山央
被告 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
同訴訟代理人弁護士 五島丈裕


主文
1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
 主文同旨
第2 事案の概要等
1 事案の要旨
 本件は、原告が、電気通信事業を営む被告に対し、氏名不詳者(以下「本件氏名不詳者」という。)が、P2P方式のファイル共有プロトコルであるBitTorrent(以下「ビットトレント」という。)を利用したネットワーク(以下「ビットトレントネットワーク」という。)を介して、別紙作品目録記載の動画(以下「本件動画」という。)を複製して作成した動画ファイルを、公衆からの求めに応じ自動的に送信したことによって、本件動画に係る原告の著作権(公衆送信権)を侵害したことが明らかであり、本件氏名不詳者に対する損害賠償請求等のため、被告が保有する別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件各発信者情報」という。)の開示を受けるべき正当な理由があると主張して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)5条1項に基づき、本件各発信者情報の開示を求める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠(以下、特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)
(1)当事者
ア 原告は、著作物である本件動画の著作権者である(甲7の2、18の1)。
イ 被告は、インターネット接続サービス等を業とする株式会社である。
(2)ビットトレントの仕組み(甲4ないし6、9、28、弁論の全趣旨)
ア ビットトレントは、P2P方式のファイル共有プロトコルである。
 ビットトレントを利用したファイル共有は、その特定のファイルに係るデータをピースに細分化した上で、ピア(ビットトレントネットワークに参加している端末。「クライアント」とも呼ばれる。)同士の間でピースを転送又は交換することによって実現される。上記ピアのIPアドレス及びポート番号などは、「トラッカー」と呼ばれるサーバーによって保有されている。
 共有される特定のファイルに対応して作成される「トレントファイル」には、トラッカーのIPアドレスや当該特定のファイルを構成する全てのピースのハッシュ値(ハッシュ関数を用いて得られた数値)などが記載されている。そして、一つのトレントファイルを共有するピアによって、一つのビットトレントネットワークが形成される。
イ ビットトレントを利用して特定のファイルをダウンロードしようとする者は、インターネット上のウェブサーバー等において提供されている当該特定のファイルに対応するトレントファイルを取得する。端末にインストールしたクライアント用のソフトウェア(以下「クライアントソフトウェア」ということがある。)に当該トレントファイルを読み込ませると、当該端末はビットトレントネットワークにピアとして参加し、定期的にトラッカーにアクセスして、自身のIPアドレス及びポート番号等の情報を提供すると共に、他のピアのIPアドレス及びポート番号等の情報のリストを取得する。
 このような手順でピアとなった端末は、トラッカーから提供された他のピアに関する情報に基づき、他のピアとの間で、当該他のピアが現在稼動しているか否かや、当該他のピアのピース保有状況を確認するための通信を行い、当該他のピアがこれに応答することを確認した上(以下、この当該他のピアとの通信を「ハンドシェイクの通信」という。)、当該他のピアが当該ピースを保有していれば、当該他のピアに対して当該ピースの送信を要求し、当該ピースの転送を受ける(ダウンロード)。また、上記のピアは、他のピアから自身が保有するピースの転送を求められた場合には、当該ピースを当該他のピアに転送する(アップロード)。このように、ビットトレントネットワークを形成しているピアは、必要なピースを転送又は交換し合うことで、最終的に共有される特定のファイルを構成する全てのピースを取得する。
(3)株式会社utsuwa(以下「本件調査会社」という。)による調査(以下「本件調査」という。甲1の2、4、5、7の2、8の2、9、21)
 本件調査会社は、ビットトレントネットワーク上で共有されているファイルの中から、本件動画の品番等に基づいて、本件動画と同一であることが疑われる動画ファイルに対応するトレントファイルを入手した。
 本件調査会社は、ビットトレントに対応するクライアントソフトウェアである「μTorrent」(以下「本件ソフトウェア」という。)に、入手したトレントファイルを読み込ませ、当該トレントファイルに対応する動画ファイルをダウンロードし、本件ソフトウェアの実行画面に表示されたピアのIPアドレス等の情報を、端末のOS(オペレーティングシステム)のタスクバーに表示された時刻及び時刻表示ソフトウェアを用いて画面の右上に表示させた時刻と共に、スクリーンショットにより撮影した(以下、同スクリーンショットにより撮影された画像(甲1の2)を「本件スクリーンショット」という。)。
 本件調査会社は、ダウンロードした上記動画ファイル(以下「本件ファイル」という。)を再生し、本件動画と比較して、その同一性を確認した。
(4)本件ファイルは本件動画の複製物であること
 本件ファイルは、本件動画を複製して作成されたものである(甲7の2、8の2)。
(5)本件各発信者情報の保有
 被告は、本件各発信者情報を保有している。
3 争点
(1)特定電気通信による情報の流通によって原告の「権利が侵害されたことが明らかである」(プロバイダ責任制限法5条1項柱書、1号)か(争点1)
(2)本件各発信者情報の「開示を受けるべき正当な理由がある」(プロバイダ責任制限法5条1項2号)か(争点2)
4 争点に関する当事者の主張
(1)争点1(特定電気通信による情報の流通によって原告の「権利が侵害されたことが明らかである」(プロバイダ責任制限法5条1項柱書、1号)か)について
(原告の主張)
ア 別紙ピア目録記載の情報の正確性に問題はないこと
(ア)本件調査に用いられた端末は、インターネットを介して時刻を自動的に同期しているから、当該端末のOSの時計機能を用いて表示させた日時から把握した別紙ピア目録記載の日時は、極めて正確なものである。
(イ)本件ソフトウェアの実行画面には、本件調査会社の管理するピアに向けて本件ファイルを送信しているピアのIPアドレスが表示される。本件ソフトウェアは、ビットトレントを管理運営する会社が、自ら開発及び維持しているソフトウェアであるところ、本件ソフトウェアの実行画面に表示される情報が不正確であるとの事実はない。
 本件調査会社は、本件ソフトウェアの実行画面を撮影した本件スクリーンショットに記録された情報等に基づいて、本件ファイルの送信元であるピアのIPアドレス及びポート番号(以下、IPアドレス及びポート番号を合わせて「IPアドレス等」ということがある。)を機械的に把握しており、その過程に恣意が介在する可能性はない。本件調査会社は、このような手順で把握したIPアドレス等の正確性の検証もしている。
(ウ)以上のとおり、本件調査の信用性を疑わせる事情はなく、別紙ピア目録記載の日時及びIPアドレス等の正確性に問題はない。
イ 本件氏名不詳者により本件動画が自動公衆送信されたこと
(ア)ビットトレントネットワークにおいて共有されているファイルは、公衆の用に供されている電気通信回線であるインターネットに接続された他の者の管理するパソコン等の記録媒体に記録されたものであり、不特定のその他の者の求めに応じて自動的に送信される。
 そして、本件ソフトウェアは、他のピアから特定のファイルに係るピースをダウンロードしている際、実行画面の当該特定のファイルに係る「状態」欄に「ダウンロード中」との表示が、それ以外の場合には「ダウンロード中」以外の表示が、それぞれされる仕様となっている。また、本件ソフトウェアの実行画面に複数のピアが表示される場合、当該複数の全てのピアからファイルを構成するピアをダウンロードすることが確認できている。
(イ)本件調査会社が、本件調査に当たって、ビットトレントネットワークを介して本件ファイルを取得する際、本件調査会社の管理する端末で実行している本件ソフトウェアの画面には、本件ファイルについて「ダウンロード中」と表示されていた。
 したがって、本件調査会社の管理するピアが、別紙ピア目録記載の日時において、同IPアドレス等により特定される本件氏名不詳者の管理するピアから、本件ファイルを構成するピースをダウンロードしていたこと、すなわち、本件氏名不詳者が、同日時において、公衆からの求めに応じ、本件ファイルを構成するピースを自動的に送信したことは、明らかである。
ウ 本件氏名不詳者による本件動画の自動公衆送信に係る通信は特定電気通信に当たること
 本件ソフトウェアを利用すれば、誰でも本件ファイルをダウンロードすることができるから、別紙ピア目録記載の日時及びIPアドレス等により特定される通信は、「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信…の送信」(プロバイダ責任制限法2条1号)、すなわち、特定電気通信に当たる。
エ 違法性阻却事由の不存在
 本件氏名不詳者が本件動画を自動公衆送信したことに関し、違法性阻却事由に該当する事実は存在しない。
オ 小括
 以上によれば、特定電気通信による情報の流通によって原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことは明らかである(プロバイダ責任制限法5条1項柱書、1号)。
(被告の主張)
ア 本件調査会社による調査結果が信用性を有するとはいえないこと
 本件ソフトウェアを用いた調査は、プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会においてP2P型ファイル交換ソフトウェアによる権利侵害情報の流通に関する検出システムとして信頼性が認められると認定されたシステムを用いたものではない。また、別紙ピア目録記載の日時及びIPアドレス等により特定される通信が、本件ファイルを構成するピースをダウンロード又はアップロードした時の通信である等の原告の主張は、本件ソフトウェアを解析し、その実行手順を理解した上でされているものではない。
 そうすると、本件調査会社による調査結果が技術的に信用できるものとはいえないから、本件スクリーンショットの記録内容により、ピアに割り当てられているIPアドレス等の正確性や当該ピアが行っている通信の内容を認定できるとはいえない。
イ 別紙ピア目録記載の日時及びIPアドレス等により特定される通信がどのような情報を送信したものであるかは明らかでないこと
 ビットトレントネットワークを形成する各ピア間においては、ピースのやりとりに係る通信だけではなく、ハンドシェイクの通信も行われる。
 そして、本件調査の過程で本件調査会社が本件ソフトウェアの実行画面を撮影した本件スクリーンショットに記録されている日時及びIPアドレス等すなわち別紙ピア目録記載の日時及びIPアドレス等により特定される通信がどのような情報を送信したものであるかは何ら明らかではないから、これが本件ファイルの全部又は一部を送信する通信であるとはいえない。実際、本件スクリーンショットには、「下り速度」又は「上り速度」の表示が記録されていないところ、これは、本件氏名不詳者の管理するピアが本件調査会社の管理するピアに対して本件ファイルの全部又は一部を送信する通信を捉えていないことをうかがわせるものである。
ウ 別紙ピア目録記載の日時及びIPアドレス等により特定される通信により本件動画が自動公衆送信されたとはいえないこと
(ア)仮に別紙ピア目録記載の日時及びIPアドレス等により特定される通信によって本件ファイルを構成するピースが送信されたとしても、これにより本件動画が自動公衆送信されたと認められるためには、当該ピースの有する情報から本件動画の表現上の本質的特徴を直接感得できる必要がある。
 しかし、別紙ピア目録記載の日時及びIPアドレス等により特定される通信によって送信されたピースの有する情報が、本件動画の表現上の本質的特徴が直接感得できる程度のものであることの立証はされていない。
(イ)本件調査会社において、ビットトレントネットワーク上で共有されている本件ファイルをダウンロードし、本件ファイルを再生して表示される映像が本件動画の表現上の本質的特徴を直接感得できるものであることを確認したとしても、前記イのとおり、別紙ピア目録記載の日時及びIPアドレス等により特定される通信がどのような情報を送信したものであるのかが明らかでなく、別紙ピア目録記載の日時及びIPアドレス等により特定される本件氏名不詳者の管理するピアが本件ファイルを構成するピースを継続的に送信したとの事実を裏付ける的確な証拠もないから、別紙ピア目録記載の日時及びIPアドレス等により特定される通信により送信された情報によって本件動画の表現上の本質的特徴を直接感得できることが立証されているとはいえない。
エ 小括
 したがって、本件氏名不詳者により本件動画が自動公衆送信されたとは認められない。
(2)争点2(本件各発信者情報の「開示を受けるべき正当な理由がある」(プロバイダ責任制限法5条1項2号)か)について
(原告の主張)
 原告は、本件氏名不詳者に対し、損害賠償等を請求する予定であるが、そのためには、被告が保有する本件各発信者情報の開示を受ける必要がある。
 したがって、本件各発信者情報の「開示を受けるべき正当な理由がある」
(プロバイダ責任制限法5条1項2号)。
(被告の主張)
 不知ないし争う。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(特定電気通信による情報の流通によって原告の「権利が侵害されたことが明らかである」(プロバイダ責任制限法5条1項柱書、1号)か)について
(1)本件調査の結果が信用性を有するかについて
ア 前提事実(3)のとおり、本件調査会社は、本件ファイルに係るトレントファイルをダウンロードした上、本件ソフトウェアに同トレントファイルを読み込ませ、当該トレントファイルに対応する本件ファイルをダウンロードし、実際にダウンロードした本件ファイルを再生して表示される映像と、本件動画とを比較することにより、これらが同一の内容を有していることを確認したものであり、その過程において、本件ソフトウェアの実行画面に表示されたピアのIPアドレス等の情報を、端末のOSのタスクバーに表示された時刻及び時刻表示ソフトウェアを用いて画面の右上に表示させた時刻と共に、スクリーンショットにより撮影し、本件スクリーンショットの記録内容に基づいて別紙ピア目録記載の日時及びIPアドレス等を特定したものである。
 そして、本件全証拠によっても、このような過程を経て実施された本件調査の結果に不自然、不合理な点は認められない。
 したがって、本件調査の結果は信用性を有するといえる。
イ 被告は、本件調査が、いわゆる認定システムを用いたものではない点や、本件ソフトウェアを解析し、その実行手順を理解した上でされているものではない点を指摘して、本件スクリーンショットの記録内容に基づいてピアに割り当てられているIPアドレス等や当該ピアが行っている通信の内容を認定できるとはいえないと主張する。
 しかし、本件ソフトウェアは、ビットトレントの開発元であるBitTorrentInc.が現在も保守をしているソフトウェアであって、世界中の多数のユーザーによって実際に使用されていることが認められる(甲9、11)。他方で、本件ソフトウェアの実行画面に表示されるピアのIPアドレス欄に誤ったものが表示される等の問題が存在することを認めるに足りる証拠はない。
 そして、被告の上記主張は、本件調査の結果が信用できない可能性がある旨を抽象的に指摘するにとどまり、本件調査の結果が信用性を欠くものであることを示す具体的な事情を摘示するものとはいえない。
 したがって、被告の上記主張を採用することはできない。
(2)特定電気通信による情報の流通によって原告の権利が侵害されたかについて
ア 前提事実(2)のとおり、ビットトレントネットワークを形成するピアは、他のピアから自身が保有するピースの転送を求められた場合には、当該ピースを当該他のピアに転送(アップロード)するように動作する。また、前提事実(3)及び証拠(甲7の2、8の2)によれば、ビットトレントネットワーク上で共有されていた本件ファイルは、本件動画を複製して作成されたものであって、本件ファイルを再生して表示される映像は、本件動画の表現上の本質的特徴を直接感得できるものであると認められる。
 そして、前提事実(3)及び弁論の全趣旨によれば、本件調査会社は、別紙ピア目録記載の日時を端末のOSの時計機能を利用して表示させた時刻に基づき、同IPアドレス等を本件ソフトウェアの実行画面に表示されたピアのIPアドレス等の情報に基づき、それぞれ特定したことが認められる。
 このような手順で行われた本件調査は、別紙ピア記載の日時及びIPアドレス等によって特定されるピアが、本件調査会社の管理するピアに対し、本件動画を複製して作成された本件ファイルを構成するピースを継続的に送信している状態を捉えたものといえる。
イ また、特定のファイルに対応するトレントファイルは、インターネット上で公開されているのが通常であり、不特定の者において利用することができるから、同じトレントファイルを共有している各ピアの管理者も、不特定の者となるのが通常である。これに対し、本件ファイルが特定かつ少数の者の間でのみ共有されていたと認めるに足りる証拠はない。
 したがって、本件ファイルに係るトレントファイルを取得してビットトレントネットワークに参加した本件調査会社は、本件氏名不詳者との関係において、不特定の者であり、「公衆」(著作権法2条5項)に当たるといえる。
ウ そうすると、別紙ピア目録記載の日時において同IPアドレス等が割り当てられていた端末を管理する者により、本件動画が自動公衆送信されたと認められる。
エ (ア)被告は、別紙ピア目録記載の日時及びIPアドレス等により特定される通信が、どのような情報を送信したものであるかは何ら明らかでないから、これが本件ファイルの全部又は一部をダウンロードした時の通信であるとはいえないと主張する。
 しかし、前提事実(3)及び前記アのとおり、本件スクリーンショットが撮影されたのは、別紙ピア目録記載の日時及びIPアドレス等により特定されるピアが本件調査会社の管理するピアに対して本件動画の複製物である本件ファイルを構成するピースを継続的に送信している間であったといえるから、本件氏名不詳者は、原告が特定した別紙ピア目録記載の日時の時点において、同IPアドレス等を使用して、本件動画の自動公衆送信に係る通信を行っていたと認めることができる。
(イ)被告は、別紙ピア目録記載の日時及びIPアドレスにより特定される通信によって送信されたピースの有する情報が、本件動画の表現上の本質的特徴が直接感得できる程度のものであることが立証されていないと主張する。
 しかし、前記ア及び(ア)のとおり、本件氏名不詳者の管理するピアは、本件調査会社の管理するピアに対し、本件ファイルを構成するピースを継続的に送信し、本件調査会社の管理するピアが受信した当該ピースから再構成されたファイルは、本件動画の表現上の本質的特徴を直接感得できる程度に映像を再生し得るものであったことが認められる以上、本件氏名不詳者は、原告が特定した別紙ピア目録記載の日時の時点において、同IPアドレス等を使用して本件動画の自動公衆送信に係る通信を行っていたものと評価することができる。
 したがって、本件氏名不詳者の管理するピアが、本件調査会社の管理するピアに対して送信した本件ファイルを構成する個々のピースそれぞれについて、ピース単独の有する情報から本件動画の表現上の本質的特徴を直接感得できるか否かは、上記結論を左右するものとはいえない。
(ウ)このほか被告は種々の主張をするが、いずれも本件氏名不詳者が原告の特定した別紙ピア目録記載の日時の時点において、同IPアドレス等を使用して、本件動画の自動公衆送信に係る通信を行っていたとの認定を左右するものとはいえない。
オ 以上によれば、別紙ピア目録記載の日時において同IPアドレス等が割り当てられていた端末を管理する者により、本件動画が自動公衆送信されたと認められ、これは、特定電気通信である当該自動公衆送信に係る情報の流通によって、原告の著作権(公衆送信権)を侵害するものというべきである。
(3)違法性阻却事由の不存在について
 本件氏名不詳者が本件動画を自動公衆送信した行為について、違法性阻却事由が存在することは全くうかがわれない。
(4)小括
 以上によれば、別紙ピア目録記載の日時において、同IPアドレス等が割り当てられていたピアにより、本件動画が自動公衆送信されたと認められるから、当該ピアを管理する本件氏名不詳者によって、特定電気通信による情報の流通により、本件動画に係る原告の著作権(公衆送信権)「が侵害されたことが明らかである」(プロバイダ責任制限法5条1項柱書、1号)と認められる。
2 争点2(本件各発信者情報の「開示を受けるべき正当な理由がある」(プロバイダ責任制限法5条1項2号)か)について弁論の全趣旨によれば、原告は、本件氏名不詳者に対し、本件動画に係る原告の著作権が侵害されたことを理由として、不法行為に基づく損害賠償請求等をする予定であると認められ、その請求のためには、被告が保有する本件各発信者情報の開示を受ける必要があるといえる。
 したがって、本件各発信者情報の「開示を受けるべき正当な理由がある」(プロバイダ責任制限法5条1項2号)と認められる。
第4 結論
 以上によれば、原告の請求は理由があるからこれを認容することとし、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第29部
 裁判長裁判官 國分隆文
 裁判官 間明宏充5
 裁判官 木村洋一


(別紙)発信者情報目録
 別紙ピア目録記載の日時に同IPアドレス及び同ポート番号を割り当てられていた契約者の氏名又は名称、住所、電話番号及び電子メールアドレス
 以上

(別紙ピア目録 省略)
(別紙作品目録 省略)
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日本ユニ著作権センター
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