判例全文 | ||
【事件名】漫画雑誌の不法保存事件(刑) 【年月日】令和6年7月25日 熊本地裁 令和6年(わ)第139号、第217号 著作権法違反事件 判決 主文 被告人A合同会社を罰金100万円に処する。 被告人Bを懲役1年6月及び罰金50万円に処する。 被告人Cを懲役1年及び罰金30万円に処する。 被告人B及び被告人Cにおいてその罰金を完納することができないときは、5000円を1日に換算した期間、その被告人を労役場に留置する。 この裁判が確定した日から、被告人B及び被告人Cに対し3年間それぞれその懲役刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実) 被告会社A合同会社(以下「被告会社」という。)は、東京都北区ab丁目c番d号eビルf号室に本店を置き、フィギュア、書籍等のアニメ関連商品の販売、個人輸出業等を業とするもの、被告人Bは、被告会社の代表社員として、その業務全般を統括するもの、被告人Cは、被告会社の従業員として雑誌の仕入れなどを行うものであるが、被告人B及び同Cは氏名不詳者と共謀の上、被告会社の業務に関し、法定の除外事由がなく、かつ著作権者の許諾を受けないで、別表【掲載省略】記載のとおり、令和6年1月24日午後1時18分頃から同月31日午前11時37分頃までの間に、6回にわたり、前記eビルf号室被告会社事務所において、Dらが著作権を有する著作物をスマートフォンを用いて撮影した上、その画像データを前記スマートフォンに記録・保存して複製し、もって前記Dらの著作権を侵害したものである。 (量刑の理由) 本件各犯行は、共犯者である氏名不詳者の依頼に応じ、正規の発売日前の漫画雑誌を入手して撮影し、その画像を保存するなどしたものであり、これらの画像が前記氏名不詳者によってSNS等を通じて国内外に広く流出する危険があることを認識しつつ及んだものである。同様の方法によって漫画作品の画像データ送信を継続する中で犯行を重ねたものであり、著作物によって得られるべき経済的利益を含め、著作権の保護制度を揺るがせかねない悪質な犯行である。 被告人Bは、被告会社を経営する立場において、インフルエンサーである前記氏名不詳者から被告会社をプロモートしてもらう見返りに犯行に及んだなどと供述するが、このような利益追求のためにその依頼に応じたという経緯、動機に酌量の余地はない。また、被告人Cを犯行に巻き込んだものであり、その責任は重い。 被告人Cは、従業員の立場で被告人Bからの依頼を受けて犯行に及んだものであり、従属的立場にあったといえるが、安易に加担し犯行を重ねたその経緯、動機は酌むべき事情に乏しく、その刑事責任は軽視できない。 以上の評価に加えて、被告人Bは反省の情を示し、情状証人として出廷した知人の支援を受けつつ、今後、被害者らからの賠償の求めがあれば可能な限りの対応をする旨述べていること、前科がないこと等の事情を考慮し、主文のとおりの懲役刑を量定の上、その執行を猶予する。 被告人Cは反省の情を示し、二度と犯罪に及ばない旨述べていること、前科は見当たらないこと等の事情も考慮し、主文のとおりの懲役刑を量定の上、その執行を猶予する。 そして、この種犯罪が経済的に見合わないことを知らしめるため、被告会社を含め、相応の額の罰金刑を科することとした。 (求刑−被告会社につき罰金100万円、被告人Bにつき懲役1年6月及び罰金50万円、被告人Cにつき懲役1年及び罰金30万円) 熊本地方裁判所刑事部 裁判官 中田幹人 |
日本ユニ著作権センター http://jucc.sakura.ne.jp/ |